【文献】
Pharmaceutical Research, Vol.15, No.9, Page.1348-1355, 1998
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
5.7〜6.3の範囲のpHを有し、且つ5〜30mMの範囲の濃度のクエン酸塩;1%(w/w)〜10%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;20mM〜200mMの範囲の濃度のNaCl;0.01%(w/w)〜0.05%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
5.7〜6.3の範囲のpHを有し、且つ5〜30mMの範囲の濃度のクエン酸塩;1%(w/w)〜10%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;20mM〜200mMの範囲の濃度のNaCl;0.01%(w/w)〜0.05%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80;及び0.2%(w/w)〜0.6%(w/w)の範囲の濃度のエタノールを含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の製剤。
6のpHを有し、且つ20mMの濃度のクエン酸塩;5%(w/w)の濃度のHBCD;80mMの濃度のNaCl、0.025%(w/w)の濃度のポリソルベート−80、及び0.4%(w/w)の濃度のエタノールを含む、請求項12に記載の製剤。
5.9〜6.2の範囲のpHを有し、且つ10〜25mMの範囲の濃度のクエン酸塩;4%(w/w)〜6%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;70mM〜100mMの範囲の濃度のNaCl;0.018%(w/w)〜0.035%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80;及び0.3%(w/w)〜0.45%(w/w)の範囲の濃度のエタノールを含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の製剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、長期間にわたる保存の間に、含まれるアデノウイルスの量及び効力を保護することにより、アデノウイルスの安定性を向上させる製剤を見出す必要が当技術分野に存在する。アデノウイルスの安定性は、輸送の間の撹拌ストレス、又は製造若しくは臨床使用の間のせん断力の場合に、及び広範囲の気候条件、とりわけ高温下で、又は繰り返された凍結/解凍サイクルの後でも維持されなければならない。さらに、製剤は、意図される投与経路に好適で、忍容性が良好で、好ましくはできるだけ少ない成分の組成を有さなければならない。本発明の目的は、そのようなアデノウイルスの製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アデノウイルスの量及び効力(感染力)及び質を保護することにより、先に開示された製剤に比べてアデノウイルスの安定性を向上させたアデノウイルスの製剤を見出し、本明細書に記載する。意外なことに、5.5〜6.5の範囲のpHを有するクエン酸緩衝剤と、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD)との組み合わせは、アデノウイルスの量、効力(感染力)、及び質を保護し、それにより、当技術分野に公知である他の製剤に比べて全体的なアデノウイルスの安定性を向上させる、優れた製剤を生み出す。
【0009】
製剤開発に使用される全ての賦形剤と同様に、本発明による製剤に存在する成分の一部は、従来技術に別々に引用されている。しかし、本発明の製剤に優れた性質及び安定化能力を与えるのは、まさにいくつかの成分の特定の組み合わせである。本発明によるまさにその製剤は従来技術に開示されていなかった。さらに、この本質的に予測不可能な分野における従来技術に基づいては、前記製剤がアデノウイルスに対するそのような向上した安定性を与えることを予測できなかったであろう。
【0010】
したがって、本発明は、例えば、遺伝子治療及び/又はワクチン用途に使用できる安定化されたアデノウイルス製剤及び関連する医薬製品に関する。
【0011】
本発明による製剤は、5.5〜6.5の範囲のpHのクエン酸緩衝剤を含み、さらにヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD)を含む。製剤は、塩及び非イオン性洗剤をさらに含む。任意選択で、本発明による製剤は、2又は4−炭素アルコールをさらに含む。本発明のアデノウイルス製剤は、2℃〜8℃又は−65℃以下で、6か月超、1年、1.5年、2年、又はそれを超える長期の保存に適している。
【0012】
本発明のアデノウイルス製剤は、a)組換え型アデノウイルスをb)クエン酸緩衝溶液中に含み、さらに、c)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD);d)塩;及びe)非イオン性洗剤を含む。アデノウイルス安定性を保護するために、この製剤のpHが5.5〜6.5の範囲であることが必須である。
【0013】
好ましくは、本発明による製剤は、約1×10
7vp/mL〜1×10
13vp/mLの範囲の力価のアデノウイルスを含む。
【0014】
本発明による好ましい実施形態において、製剤中のクエン酸塩濃度は、約5mM〜30mMの範囲である。
【0015】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD)が好ましい凍結保護剤である。HBCDは、好ましくは、約1%(w/w)〜10%(w/w)の範囲の濃度で存在する。
【0016】
塩化ナトリウム(NaCl)が好ましい塩であり、好ましくは、約20mM〜200mMの範囲の濃度で存在する。
【0017】
ポリソルベート−80が好ましい非イオン性洗剤であり、好ましくは、約0.005%(w/w)〜0.5%(w/w)の範囲の濃度で存在する。
【0018】
本発明による、より好ましい実施形態において、製剤は、約5.7〜6.3の範囲のpHを有し、且つ約5〜30mMの範囲の濃度のクエン酸塩;1%(w/w)〜10%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;20mM〜200mMの範囲の濃度のNaCl;約0.01%(w/w)〜0.05%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80を含む。
【0019】
本発明による別の好ましい実施形態において、製剤は、約5.8〜6.2の範囲のpHを有し、且つ約15〜25mMの範囲の濃度のクエン酸塩;3%(w/w)〜8%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;50mM〜100mMの範囲の濃度のNaCl;約0.01%(w/w)〜0.03%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80を含む。
【0020】
さらにより好ましい実施形態において、本発明による製剤は約6のpHを有し、且つ約20mMの濃度のクエン酸塩;約5%(w/w)の濃度のHBCD;約75mMの濃度のNaCl;約0.02%(w/w)の濃度のポリソルベート−80を含む。
【0021】
2又は4−炭素アルコール、とりわけエタノールの本発明の製剤への添加が、意外にも、アデノウイルスを凍結/解凍の損傷から強く保護し、その結果凍結保護剤として作用することが本明細書において示された。
【0022】
したがって、好ましい一実施形態において、本発明による製剤は、2又は4−炭素アルコールをさらに含む。さらにより好ましい実施形態において、本発明による製剤はエタノールを含む。エタノール濃度は、好ましくは、約0.1%(w/w)〜1%(w/w)の範囲である。
【0023】
本発明による好ましい実施形態において、製剤は、約5.7〜6.3の範囲のpHを有し、且つ約5〜30mMの範囲の濃度のクエン酸塩;1%(w/w)〜10%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;20mM〜200mMの範囲の濃度のNaCl;約0.01%(w/w)〜0.05%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80;及び約0.2%(w/w)〜0.6%(w/w)の範囲の濃度のエタノールを含む。
【0024】
本発明による別の好ましい実施形態において、製剤は、約5.8〜6.2の範囲のpHを有し、且つ約15〜25mMの範囲の濃度のクエン酸塩;3%(w/w)〜8%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;50mM〜100mMの範囲の濃度のNaCl;約0.01%(w/w)〜0.03%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80;及び約0.2%(w/w)〜0.6%(w/w)の範囲の濃度のエタノールを含む。
【0025】
さらにより好ましい実施形態において、本発明による製剤は約6のpHを有し、且つ約20mMの濃度のクエン酸塩;約5%(w/w)の濃度のHBCD;約75mMの濃度のNaCl、約0.02%(w/w)の濃度のポリソルベート−80、及び約0.4%(w/w)の濃度のエタノールを含む。
【0026】
別の好ましい実施形態において、本発明による製剤は約6のpHを有し、且つ約20mMの濃度のクエン酸塩;約5%(w/w)の濃度のHBCD;約80mMの濃度のNaCl、約0.025%(w/w)の濃度のポリソルベート−80、及び約0.4%(w/w)の濃度のエタノールを含む。
【0027】
さらにより好ましい実施形態において、本発明による製剤は約6のpHを有し、且つ約20mMの濃度のクエン酸塩;約5%(w/w)の濃度のHBCD;約80mMの濃度のNaCl、約0.025%(w/w)の濃度のポリソルベート−80、及び約0.4%(w/w)の濃度のエタノールを含む。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態において、製剤は(凍結)液体製剤である。さらに別の実施形態において、本発明の製剤は、非経口使用に好適である。
【0029】
一実施形態において、本発明による製剤はバイアルに収容されている。別の実施形態において、製剤は、バッグ又はボトルに収容されている。さらに別の実施形態において、製剤は、シリンジ又はカートリッジに収容されている。
【0030】
本発明は、本発明による製剤を調製することを含む、アデノウイルスを保護する方法にも関する。
【0031】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される製剤を調製すること及び前記製剤を2℃〜8℃の範囲の温度で保存することを含む、アデノウイルスを保護する方法に関する。
【0032】
幅広い温度範囲にわたる増大した長期安定性は、本明細書に開示されるウイルス製剤の長期の保存寿命をもたらし、ウイルス効力の低下を許容できるものにしながら(すなわち、2〜8℃で2年あたり0.3log以下)、好ましくは約1〜2年の期間、又はそれを超える期間にわたるこれらの製剤の保存及び最終的な宿主投与を可能にする。さらに、本発明の製剤は、高温、長期の凍結/解凍サイクル、及び撹拌への曝露の間に安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上述の通り、長期間にわたる保存の間に、含まれるアデノウイルスの量及び効力を保護することにより、アデノウイルスの安定性を向上させる製剤を見出すことが当技術分野に必要とされている。
【0035】
いくつかの参考文献は、アデノウイルスの製剤のための特定の成分の使用を開示している。Altaras et al.は、フリーラジカル酸化の阻害剤になり得るものの膨大なリストの一部としてクエン酸塩を開示している。前記リストは、EDTAとエタノールとの組み合わせ(EDTA/エタノール)も含むが、それは、フリーラジカル酸化のさらなる阻害剤として特定されている。本発明の製剤は、クエン酸塩を酸化防止剤としてではなく緩衝剤として使用する。
【0036】
Renteria et al.は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD)を、特定のタンパク質の安定性を高め、鼻腔内投与中の凝集を避けるために使用される添加剤の1つとして特定している。Renteria et al.は、粘膜取込みを増大させる鼻腔内投与に適切な製剤に関連して、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの使用を開示している。タンパク質は全て、アデノウイルスなどの生きているウイルスと比べて、構造、電荷、及びサイズの点で非常に異なっている。その結果、タンパク質の安定化機構を考慮すると、アデノウイルスのための安定化機構は、完全に異なり、予測不可能である。
【0037】
国際公開第029024号パンフレットは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを、凍結乾燥製剤の調製に使用される凍結乾燥保護剤になり得るものの膨大なリストの一部として、開示している。国際公開第029024号パンフレットは、本発明に開示される液体組成物とは異なり、凍結乾燥された組成物に関する。液体製剤の利点は、あまり費用がかからず、投与前の取り扱いにあまり時間がかからず、臨床の投薬又は再構成の間違いを起こしにくいことである。さらに、凍結乾燥プロセスの規模拡大は、厄介な試みになり得る。
【0038】
本発明者らは、先に開示された製剤に比べて、アデノウイルスの量及び効力(感染力)並びに質を保護することにより、アデノウイルスの安定性を向上させるアデノウイルスの製剤を見出し、本明細書に記載する。
【0039】
本発明の製剤は、少なくとも1種の組換え型アデノウイルスを含む。アデノウイルスベクターの構築は、当技術分野に十分に理解されており、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989),Watson et al.,Recombinant DNA,2d ed.,Scientific American Books(1992),and Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,NY(1995)、及び本明細書に言及される他の参照文献に記載されている技法など、標準的な分子生物学的技法の使用を含む。手短に言うと、アデノウイルスベクターは、ウイルス複製に必要なアデノウイルスゲノムのE1領域、例えば、E1a領域及び/又はE1b領域の少なくとも1つの必須な遺伝子機能を欠損し得る。アデノウイルスを製造する当業者に公知である通り、アデノウイルスゲノムからの必須領域の欠失の場合、これらの領域によりコードされる機能は、組換え型アデノウイルスを製造する際に、好ましくは、例えばゲノムに一体化された産生細胞により、又はいわゆるヘルパーアデノウイルス若しくはヘルパープラスミドの形態で、トランスに与えられなくてはならない。
【0040】
組換え型アデノウイルスの増殖は、米国特許第6,492,169号明細書、又は国際公開第03/104467号パンフレット、米国特許第5,559,099号明細書、同第5,837,511号明細書、同第5,846,782号明細書、同第5,851,806号明細書、同第5,994,106号明細書、同第5,994,128号明細書、同第5,965,541号明細書、同第5,981,225号明細書、同第6,040,174号明細書、同第6,020,191号明細書、及び同第6,113,913号明細書、並びにVirology,B.N.Fields et al.,eds.,3d ed.,Raven Press,Ltd.,New York(1996)のそれぞれ67章及び68章のThomas Shenk,“Adenoviridae and their Replication”,M.S.Horwitz,“Adenoviruses”に詳記されており、これは引用により本明細書に組み込まれる。複製欠損アデノウイルスベクターは、ベクターDNAの源として、アデノウイルス又はキメラのアデノウイルスのあらゆる種、菌株、サブタイプ、又は種、菌株、若しくはサブタイプの混合物を使用して生成できる(例えば、国際公開第96/26281号パンフレット、同第00/03029号パンフレット参照)。本発明の特定の実施形態において、ヒトアデノウイルスの血清型は、血清型2、4、5、7、11、26、34、35、36、48、49、若しくは50、又はあらゆるハイブリッド若しくは変異型アデノウイルス血清型のいずれか1つを含む。本発明の好ましい一実施形態において、組換え型アデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型5、26、又は35由来である。
【0041】
さらなる実施形態において、本発明のアデノウイルスは、サルアデノウイルス、好ましくは、チンパンジー又はゴリラアデノウイルスである。これらのアデノウイルスは、一般的に、ヒトの集団において低い血清有病率及び/又は低い既存の中和抗体価を有する。
【0042】
さらなる実施形態において、本発明のアデノウイルスは、さらに、非相同核酸を含む。好適な非相同核酸は当業者に周知であり、例えば、導入遺伝子オープンリーディングフレーム、例えば、ベクターがワクチン接種目的で使用される場合に免疫応答が望まれるポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、例えば、全て当業者に周知である、マラリア(例えば、国際公開第2004/055187号パンフレット参照)、HIV、結核(例えば、国際公開第2006/053871号パンフレット参照)、特定のウイルスなどに対する免疫応答を発生させるのに好適な導入遺伝子を含み得る。実際には、導入遺伝子の性質は本発明にとって重要でなく、どのような非相同の核酸配列でもよいため、ここではさらなる詳述は必要ない。
【0043】
本明細書での用語「安定性」は、期待される有用性の時間尺度での、アデノウイルス粒子の効力を保持する製剤中でのその分解に対する相対的な抵抗を指す。効力が、2〜8℃で2年あたり0.3log以下の減少を示すことが好ましい。
【0044】
本明細書での用語「効力」は、以下で説明されるセルベースの効力アッセイで測定される感染単位で表されるアデノウイルス活性の尺度を指す。
【0045】
本発明による組成物は、25℃±2℃で1〜3か月間の製剤のインキュベーションにより実施される加速安定性試験において、60日あたり0.4log以下の効力の減少及び60日あたり0.3log以下の力価の減少を示す。
【0046】
本発明による組成物は、バイアルが、反復される凍結/解凍サイクルと、それに続いて、室温で、200rpmで水平方向の24時間の撹拌に付される試験において、10サイクルあたり0.2log以下の効力の減少も示す。
【0047】
「薬学的に許容できる賦形剤」とは、望ましい又は簡便な剤形を調製するためにウイルスなどの活性分子と組み合わされる、あらゆる不活性な物質を意味する。「薬学的に許容できる賦形剤」は、利用される用量及び濃度で受容者にとって非毒性であり、ウイルス調製物を含む製剤の他の成分と適合性のある賦形剤である。賦形剤の例は、凍結保護剤、非イオン性洗剤、緩衝剤、塩、及びフリーラジカル酸化の阻害剤である。
【0048】
用語「副生成物」は、所与の製剤中の治療的/予防的なアデノウイルスの比率を減じるか、又は減少させる望まれない生成物を含む。典型的な副生成物には、例えば、タンパク質変性、脱アミド、加水分解、又はこれらに組み合わせから生じるアデノウイルスの凝集物及びアデノウイルスの断片がある。典型的には、凝集物は、単離されたウイルス粒子よりも分子量が大きい複合体である。
【0049】
本明細書で「安定製剤」とも称される、アデノウイルスの安定性を向上させる製剤は、その中のアデノウイルスが、保存時にその物理的及び/若しくは化学的完全性並びに/又は生物学的活性を基本的に保持している製剤である。安定性は、特定の保存条件下である期間にわたり、(製剤中のアデノウイルスの)量、製剤中のアデノウイルスの効力、及び/又は他の質的な側面などの種々の特性を決定することにより評価できる。アデノウイルス製剤のこれらの特性は、高温(実時間での温度を予測する)でも、他のストレス条件下でも測定でき、例えば、保存寿命を最大にする異なる製剤の影響を試験するために、製剤を、25℃でのインキュベーションに付すことも、凍結/解凍サイクル及び撹拌に付すこともできる。安定性を決定する前記特性は、目視検査、ウイルス粒子定量的ポリメラーゼ連鎖反応(vp−QPCR)、QPCR系効力アッセイ(QPA)、逆相高速液体クロモトグラフィー(Chromotography)(RP−HPLC)、及び頻度別遠心沈降法(DCS)、熱融解アッセイ(TMA)、濁度測定、並びに内部蛍光からなる群から選択される方法の少なくとも1つにより決定できる。
【0050】
ウイルス粒子定量的ポリメラーゼ連鎖反応(vp−QPCR)
vp−QPCRは、アデノウイルスベクター内に存在する導入遺伝子カセットのCMVプロモーターの100bp領域を標的にするプライマーを利用するアデノウイルス粒子の定量化のために開発された。簡単に言うと、このQPCR法は、Taqポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に基づいており、それは、100bpアンプリコンの真中でアニールされた特定の蛍光プローブの分解を起こす。このプローブは発光体及び消光体に共有結合しており、その分解は、発光体を消光体から解放し、その結果、テンプレートの量に比例する蛍光発光が生じる。定量値は、蛍光シグナルの増加が閾値を超えるサイクルである閾値サイクル(Ct)から得られる。DNA系の蛍光の検出の閾値は、バックグラウンドよりわずかに高く設定される。蛍光が閾値を超えるサイクルの数は閾値サイクル(Ct)と呼ばれ、或いは、MIQEガイドラインによると、定量化サイクル(Cq)と呼ばれる(Bustin et al,2009)。対数増殖期の間に、標的DNA配列はサイクルごとに2倍になる。例えば、Ctが別の試料のCtより3サイクル高いDNA試料は、2
3=8倍多くのテンプレートを含んでいた。したがって、高いCt値はより少量の標的DNAを表し、低いCt値は標的DNAの高いアベイラビリティを表す。絶対的な定量化は、濃度が260nmでの光学濃度(OD
260)により決定されたストックアデノウイルスの段階希釈液により作成された標準曲線を比較することにより実施できる。試験物質のCt値は、標準曲線のCt値に対してプロットされ、ベクター粒子の正確で精密な数がもたらされる。
【0051】
E1コンピテントセル上でのインキュベーション後に読み取られたまま使用される場合(QPA、以下参照)、より分解した試料はより高いデルタ(t=0が引かれている)Ct値につながり、より安定化する製剤はより低いCt値につながるであろう。
【0052】
QPCR系効力アッセイ(QPA)
QPAは、アデノウイルス効力を定量化するためにQPCRを組織培養系感染力アッセイと組み合わせるものである。アッセイは、新たに合成されたウイルスDNAの出現が、細胞単層の接種後、非常に急速であり、幅広い感染多重度(MOI)にわたってウイルス投入(input)濃度に比例するという実験観察に基づいている。試料の希釈液(非終点希釈)は、96ウェルプレート中のHEK293細胞単層に接種される。35℃で3時間感染が進行する。ウェルは吸引され、アデノウイルスを含まない培地で満たされる。プレートがさらに42時間インキュベートされてから、アデノウイルスDNAを放出するために、Triton X−100溶液により細胞溶解され、1回の凍結/解凍工程にかけられる。QPCRは、上述の方法に従って、希釈された細胞ライセートに対して実施される。感染価は、終点滴定(endpoint titration)により決定される、既知の感染力の試料のCt値により作成された標準曲線との比較により計算される。或いは、感染価、又は効力がCt値に直接相関しているため、デルタ効力はCt値として直接表現できる。特に、製剤間の効力の相対的な違いを比較する際には、これは、迅速で信頼できる方法である。
【0053】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)
アデノウイルスのいくつかの質の側面を決定するために、アデノウイルスタンパク質プロファイルを逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により分析できる。HPLCは、試料と、移動相(緩衝剤又は溶媒)と、固定相(カラム中のクロマトグラフィーの充填材)との間の種々の化学的相互作用を利用して、混合物の成分を分離する。高圧ポンプは、移動相をカラム内に移動させ、検出器は、280nmでのUV吸光度検出を利用して分子の保持時間(t
R;試料注入とピーク極大の出現の間の時間)を示す。RP−HPLCの分離は、疎水性の違いに基づいている。非極性の固定相は、疎水性アルキル鎖(鎖長:C4、C8、及びC18)でできている。極性の移動相は、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む水である。カラムに結合する化合物は、増加する濃度の0.1%TFA含有アセトニトリルを使用して溶離する。一般に、疎水性表面積が大きい分析物がより長い保持時間を有する一方で、極性基の存在は保持時間を短くする。典型的なアデノウイルスのRP−HPLCプロファイルは、コアタンパク質(VII)、ペントンベース(III)、及びヘキソン(II)を含む10又は14タンパク質からなる。
【0054】
頻度別遠心沈降法(DCS)
DCSは、沈降により粒径分布(凝集)を測定する方法である。ディスク型遠心分離機において、粒子は、ストークスの式に従い、高重力の下で、スクロース勾配(既知の粘度及び密度)中で沈殿する。沈降速度は、粒径の二乗と共に増加し、そのため、大きさがわずか数パーセント異なる粒子が、著しく異なる速度で沈殿する。検出器に到達するのに要する時間が、粒子の大きさの計算に使用される。この方法の測定範囲は約0.02〜30ミクロンである。
【0055】
熱融解アッセイ(TMA)
熱融解アッセイ(TMA)を利用して、ウイルスのカプシドが変性する温度である、実験的製剤中のアデノウイルスの融解温度(T
m)を測定できる。このウイルスの崩壊は、dsDNA挿入蛍光色素を使用してリアルタイムに測定できる。この蛍光色素はDNAに結合した時のみ蛍光シグナルを与えるが、DNAはウイルス粒子が崩壊する時に放出される。カプシド融解時の指数関数的な蛍光の増加は、通常のQPCR機を利用して、段階的な温度上昇の間に測定できる。試料は、特定の製剤中で同じ濃度(範囲は、4×10
9〜1×10
12vp/mL)に希釈され、50μLの体積のSYBRGreen色素(1×最終濃度)と混合される。温度は、30℃から出発して79℃まで、30秒あたり0.5℃上昇された。蛍光生データから、一次導関数及び二次導関数が計算され、融解温度が、二次導関数のx軸との切片で読み取られる。高い融解温度(T
m)は、より安定化する製剤を示し得る。
【0056】
濁度アッセイ
濁度測定は、試料中の分子が光を吸収しない波長(例えば、タンパク質が主な発色団である試料では350nm)で検出される、試料中の粒子の散乱による透過光(見かけの吸光度)の強度の低下を測定するものである。分子が凝集するか、又は超分子複合体を形成すると、別々な粒子から来る場合にはランダムであった光散乱がコヒーレントになり、そのため測定される強度が増加する。これにより、光散乱及び濁度測定は、凝集及び複合体の形成又は分離を検出する有用な技法になる。
【0057】
濁度アッセイにおいて、試料は、三連で、UV透過平底マイクロプレートに移される。プレートはUV透過シールで覆われる。吸光度スペクトルが、マイクロプレートリーダーにより、230と500nmの間で記録され、975nmでの吸光度が測定されて、光路長の差が決定され、おそらくそれに対して補正される。アデノウイルスを含まない製剤からなる対照試料がアッセイに含められて、必要な場合、散乱又は吸収マトリックス成分に対して補正される。350nmでの見かけの吸光度が、濁度の定量的な尺度として使用される。
【0058】
濁度アッセイは、アデノウイルス試料の安定性を示すものである。ウイルスの凝集は濁度の上昇をもたらし、カプシドの分離は低下をもたらす。アッセイの精度は、1NTUを超える濁度値で5%(CV%)未満である。
【0059】
ストレスを受けた試料に関して得られた濁度は、常に対照試料と比較しなければならない。ストレスを加えた後の上昇又は低下は分解経路に依存し、各医薬品原体(API)に特異的であるため、それは予測できない。t=0試料に比較した変化(上昇でも低下でも)は、安定性の低い製剤を示す。t=0試料に同等な、ストレスを受けた試料は、より安定であると予測される。
【0060】
内部蛍光アッセイ
アデノウイルスのカプシドタンパク質は、励起の後に光を再び発する芳香族アミノ酸、とりわけトリプトファンを含み、程度は低いがチロシン及びフェニルアラニンも含む。トリプトファンの発光極大及び量子収量は、その環境の極性に強く依存する。極性水性環境(例えば、球状のタンパク質の表面)中では量子収量は比較的低く、無極性環境(例えば、凝集物の内部)中では量子収量は増加する。この特徴のため、トリプトファン蛍光は、タンパク質の配座変化、凝集、及び分子相互作用の研究に有用なツールである。
【0061】
内部蛍光アッセイにおいて、試料は、三連で、UV透過平底マイクロプレートに移される。プレートはUV透過シールで覆われる。トリプトファンの蛍光は、中心波長が280nmでバンド幅が10nmである励起フィルター及び中心波長が340nmでバンド幅が10nmの発光フィルターを利用して、マイクロプレートリーダーにより測定される。シール及びメニスカス形状の影響を最小限にするため、底部光学部品(Bottom optic)が使用される。
【0062】
蛍光強度は、アデノウイルス安定性の感度の良い尺度であることが当技術分野に公知である。ストレスを受けると、試料中で起こる変化の性質に依存して、増加か減少のいずれかが観察され得る。タンパク質のアンフォールディング及びカプシドの分離は内部蛍光の減少につながると予測され、凝集は増加につながると予測される。アッセイの精度は、利用された範囲で5%(CV%)未満である。
【0063】
ストレスを受けた試料に関して得られた蛍光は、常に対照試料と比較しなければならない。ストレスを受けた後の増加又は減少は分解経路に依存し、各医薬品原体(API)に特異的であるため、それは予測できない。t=0試料に比較した変化(上昇でも低下でも)は、安定性の低い製剤を示す。t=0試料値に近いままでいる、ストレスを受けた試料は、より安定である。
【0064】
アデノウイルスは、とりわけ量及び効力の点で最小限の低下(すなわち0.3log/2年)を示し、大きなタンパク質修飾を全く示さない場合、医薬製剤中で「その物理的安定性を保つ」。さらに、目視調査で、凝集、沈殿、色の変化及び/又透明性の徴候が全く観察されてはいけない。
【0065】
本願で使用される「約」は、特記されない限り、±10%を意味する。
【0066】
本発明は、好ましくは、遺伝子治療及び/又はワクチン用途に使用するための、アデノウイルスを安定化させる製剤及び関連する医薬製品に関する。本明細書に開示される好ましい安定化されたウイルス含有製剤は液体アデノウイルス製剤であり、非経口投与にも適合性がある一方で、約2〜8℃の範囲で保存される場合向上したアデノウイルスの安定性を示す。しかし、これらの製剤は、より低温で、例えば、−20℃以下、−40℃以下、−65℃以下、−80℃以下でも保存できる。それらは、8℃を超える温度、例えば、25℃以上でもより安定であり得る。
【0067】
アデノウイルスを安定化できるこれらの製剤は、クエン酸緩衝剤、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD)、塩、及び非イオン性洗剤、並びに加えられるウイルスに対する安定性を増大させる任意選択の追加成分を含む。前記緩衝剤のpHは、5.5〜6.5である。
【0068】
本発明の製剤は、種々のウイルス濃度、一価又は多価のアデノウイルスに安定性を与え、種々の脊椎動物生物、好ましくは哺乳動物、特にヒトに投与できる。安定化された本発明のウイルス製剤は、例えば、以前に感染していない個体に予防的な利点を与え、且つ/又は治療効果を与え得るワクチンとして投与できるアデノウイルス系の組成物である。
【0069】
本発明の好ましい態様は、約1×10
7vp/mL(ウイルス粒子/mL)〜約1×10
13vp/mLの範囲のウイルス濃度で本明細書に記載される増大した安定性特性を示す、組換え型アデノウイルス(すなわち、当業者に利用可能なあらゆる哺乳類/ヒトの遺伝子治療系又は遺伝子ワクチン接種系の方法におけるなど、宿主投与の後に標的宿主内で発現される導入遺伝子の全体又は一部を含むアデノウイルス)のための製剤である。より好ましい範囲は、約1×10
9〜1×10
13vp/mLであり、特に好ましいウイルス濃度は約1×10
10〜5×10
12vp/mLである。本発明の製剤の治療的又は予防的な組成物は、それぞれの疾病を治療又は予防するのに十分な量で個体に投与できる。もちろん、ヒト投与の有効量は、個体の状態、体重、性別、及び年齢などの種々の因子により様々になり得る。他の因子には、投与様式がある。好ましい一実施形態において、本発明の製剤は、非経口使用に好適である。
【0070】
本発明の製剤は、5.5〜6.5の範囲のpHを有するクエン酸緩衝溶液であり、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD)をさらに含み、任意選択で2又は4炭素アルコールを含む。意外にも、前記組み合わせが、本明細書に示される通り、アデノウイルスの量、効力(感染力)、及び質の保護のための優れた製剤であることが判明した。
【0071】
好ましい一実施形態において、クエン酸塩の濃度は、約5mM〜30mM、例えば、約5mM〜25mM、例えば、約10mM〜25mMの範囲、例えば、約20mMである。
【0072】
広い温度範囲にわたり長期の保存期間の間ウイルス安定化に寄与する、これらの製剤中の別の必須成分はHBCDであり、凍結保護剤として使用される。好ましい一実施形態において、HBCDの濃度は約1%(w/w)〜10%(w/w)、例えば、約3%(w/w)〜8%(w/w)、例えば、約4%(w/w)〜6%(w/w)の範囲、例えば、約5%(w/w)である。
【0073】
本発明の製剤の追加成分は塩である。塩はウイルスの安定性を増大させる。製剤に塩を含める目的は、所望のイオン強度又は重量オスモル濃度を得て、さらに静電相互作用を最適化することである。塩は、宿主にとって生理的に許容し得る重量オスモル濃度で存在する。イオン強度への寄与は、緩衝性化合物により作られるイオン並びに非緩衝性の塩のイオンから生じ得る。本発明の製剤に適切な塩には、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl
2)、又は塩化マンガン(MnCl
2)があるが、これらに限定されない。従来技術とは対照的に、塩化マグネシウム(MgCl
2)はアデノウイルスの安定性に有害であることが示された。したがって、好ましい一実施形態において、本発明による製剤は塩化マグネシウムを含まない。
【0074】
好ましい一実施形態において、本発明によるウイルス製剤は、塩化ナトリウム(NaCl)を含む。好ましい一実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約10mM〜250mM、例えば、約20mM〜200mM、例えば、約30mM〜150mM、例えば、約50mM〜100mMの範囲、例えば、約80mMである。
【0075】
本発明の製剤は、容器表面への吸着を減らし、できればウイルス安定化の増大を与える(例えば、凝集の減少により)ために加えられる少なくとも1種の非イオン性洗剤(非イオン性界面活性剤とも称される)を含む。本発明の製剤に使用するための非イオン性洗剤には、ポリソルベート−80(ツイン80(登録商標))、ポリソルベート−60(ツイン60(登録商標))、ポリソルベート−40(ツイン40(登録商標))、及びポリソルベート−20(ツイン20(登録商標))を含むがこれらに限定されないポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、並びに非イオン性界面活性剤のプルロニックシリーズ(例えば、プルロニック121)があるが、これらに限定されない。
【0076】
好ましい一実施形態において、非イオン性洗剤の濃度は、約0.001%(w/w)〜1%(w/w)、例えば、約0.005%(w/w)〜0.5%(w/w)、例えば、約0.01%(w/w)〜0.1%(w/w)、例えば、約0.01%(w/w)〜0.05%(w/w)、例えば、約0.015%(w/w)〜0.03%(w/w)の範囲、例えば、約0.025%(w/w)である。
【0077】
好ましい一実施形態において、本発明によるウイルス製剤はポリソルベート−80を含む。ポリソルベート−80の濃度は、好ましくは、約0.001%(w/w)〜1%(w/w)、例えば、約0.005%(w/w)〜0.5%(w/w)、例えば、約0.01%(w/w)〜0.1%(w/w)、例えば、約0.01%(w/w)〜0.05%(w/w)、例えば、約0.015%(w/w)〜0.03%(w/w)の範囲、例えば、約0.025%(w/w)である。
【0078】
好ましい一実施形態において、本発明によるウイルス製剤はEDTAをさらに含む。より好ましい実施形態において、EDTAの濃度は、約0.05mM〜0.2mM、例えば、約0.05mM〜0.15mM、例えば、約0.08mM〜0.12mMの範囲、例えば、約0.1mMである。
【0079】
別の好ましい実施形態において、本発明によるウイルス製剤はエタノールをさらに含む。より好ましい実施形態において、エタノールの濃度は、約0.1%(w/w)〜1%(w/w)、例えば、約0.2%(w/w)〜0.8%(w/w)、例えば、約0.2%(w/w)〜0.6%(w/w)の範囲、例えば、約0.4%(w/w)である。
【0080】
好ましい一実施形態において、本発明によるウイルス製剤がエタノールを含む場合、必ずしも同時にEDTAを含む必要はない。
【0081】
上記の議論を考慮すると、本発明は、当技術分野に公知である最良の製剤(Evans et al.2004に開示)に比べて向上した安定性を示し、少なくとも、クエン酸緩衝剤、凍結保護剤としてのHBCD、塩、及び界面活性剤を含む、例えば、遺伝子治療及び/又は遺伝子ワクチン接種用途に使用できる組換え型Ad5、Ad26、又はAd35などのアデノウイルスを含む製剤に関する。
【0082】
本発明の特定の実施形態は、クエン酸塩により5.5〜6.5の範囲のpHに緩衝され、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HBCD)、塩、非イオン性洗剤、及び2又は4−炭素アルコールをさらに含む、そのような組換え型アデノウイルス製剤に関する。
【0083】
本発明による好ましい実施形態において、製剤は、約pH5.5〜pH6.5の範囲のpHを有するクエン酸緩衝剤を含み、凍結保護剤としてのHBCD、塩としてのNaCl、界面活性剤としてのポリソルベート−80、及び前例のない追加の凍結保護剤としての2−又は4−炭素アルコールを含む。
【0084】
本発明による別の好ましい実施形態において、製剤は、約pH5.5〜pH6.5の範囲のpHを有するクエン酸緩衝剤を含み、凍結保護剤としてのHBCD、塩としてのNaCl、界面活性剤としてのポリソルベート−80、及びEDTAを含む。
【0085】
本発明による別の好ましい実施形態において、製剤は、約pH5.5〜pH6.5の範囲のpHを有するクエン酸緩衝剤を含み、凍結保護剤としてのHBCD、塩としてのNaCl、界面活性剤としてのポリソルベート−80、及び前例のない追加の凍結保護剤としてエタノールを含む。
【0086】
本発明による別の好ましい実施形態において、製剤は、約pH5.5〜pH6.5の範囲のpHを有するクエン酸緩衝剤を含み、凍結保護剤としてのHBCD、塩としてのNaCl、界面活性剤としてのポリソルベート−80を含む。この製剤はエタノールをさらに含み、EDTAを含まない。
【0087】
本発明による好ましい実施形態において、製剤は、約5.9〜6.2の範囲のpHを有し、約10〜25mMの範囲の濃度のクエン酸塩;4%(w/w)〜6%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;70mM〜100mMの範囲の濃度のNaCl;約0.018%(w/w)〜0.035%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80;及び約0.3%(w/w)〜0.45%(w/w)の範囲の濃度のエタノールを含む。
【0088】
本発明による別の好ましい実施形態において、製剤は約5.8〜6.2の範囲のpHを有し、約15〜25mMの範囲の濃度のクエン酸塩;3%(w/w)〜8%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;50mM〜100mMの範囲の濃度のNaCl;約0.01%(w/w)〜0.03%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80;及び約0.05mM〜0.15mMの範囲の濃度のEDTAを含む。
【0089】
本発明による別の好ましい実施形態において、製剤は約5.9〜6.2の範囲のpHを有し、約10〜25mMの範囲の濃度のクエン酸塩;4%(w/w)〜6%(w/w)の範囲の濃度のHBCD;70mM〜100mMの範囲の濃度のNaCl;約0.018%(w/w)〜0.035%(w/w)の範囲の濃度のポリソルベート−80;及び約0.05mM〜0.15mMの範囲の濃度のEDTAを含む。
【0090】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、製剤は約20mMのクエン酸塩により約6のpHに緩衝され;HBCDは約5%(w/w)の濃度で存在し;NaClは約80mMの濃度で存在し;界面活性剤は約0.025%(w/w)の濃度のポリソルベート−80であり;EDTAは約0.1mMの濃度で存在する。
【0091】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、製剤は約20mMのクエン酸塩により約6のpHに緩衝され;HBCDは約5%(w/w)の濃度で存在し;NaClは約80mMの濃度で存在し;界面活性剤は約0.025%(w/w)の濃度のポリソルベート−80であり;エタノールは約0.4%(w/w)の濃度で存在する。さらに、上述の要素の組み合わせが使用できる。
【0092】
一実施形態において、本発明による製剤は、例えば、DIN 2RタイプIホウケイ酸塩ガラスバイアルなどのバイアルに収容されている。別の実施形態において、製剤はバッグに収容されている。本発明の製剤を収容するバッグは、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)又はエチルビニルアルコール(EVOH)でできた層を含み得る。本発明のさらに別の実施形態において、製剤はシリンジに収容されている。
【0093】
本明細書に記載される組換え型ウイルス製剤は、脊椎動物宿主(好ましくは、哺乳類の宿主、特にヒト受容者)に、当技術分野に公知であるあらゆる手段で投与できる。これらの送達経路には、筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内注射、吸入若しくは鼻腔内送達、経口送達、舌下投与、皮下投与、経皮投与、皮内投与、唾液腺管内(intraductal salivary gland)投与、経皮(transcutaneous)投与、又は経皮(percutaneous)投与があるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態において、本発明の製剤は非経口投与に適合性がある。
【0094】
本明細書に開示される製剤によると、本発明は、アデノウイルスを保護する方法であって、非経口投与、特にヒトへの非経口投与にも適合性がある一方で、−65℃未満及び約2〜8℃の範囲及び恐らくこれより高温で保存される場合に向上したウイルス安定性をもたらす、本明細書に開示されるウイルス含有製剤を調製することを含む方法にも関する。
【0095】
したがって、本発明の別の態様は、アデノウイルスを保護する方法であって、本明細書に開示される製剤を調製すること及び前記製剤を2℃〜8℃の範囲の温度で保存することを含む方法に関する。
【0096】
以下の実施例は、本発明を限定せずに、本発明を説明するために与えられる。
【実施例】
【0097】
実施例1.
実験計画及び方法論
いくつかの異なる製剤を試験した後で、1つの製剤が他の製剤より優れていた。この新たな製剤は「製剤B」とされ、pH6.0で、5%(w/w)のHBCD、20mMのクエン酸塩、0.02%(w/w)のPS−80、及び75mMのNaClを含む。
【0098】
2種のアデノウイルス(Ad35.TB−S及びAd26.Mos1.Gag−Pol)の調製物(1つは血清型35アデノウイルス(Ad35)を含み、1つは血清型26アデノウイルス(Ad26)を含む)を、PD−10カラム(GE Healthcare)を使用して緩衝剤交換して製剤Bにした。
【0099】
両アデノウイルス調製物を、Evans et al.2004に記載され、今のところ利用可能な最良の製剤である「対照製剤」にも製剤した。前記「対照製剤」は、pH7.4で、10mMのトリス、10mMのヒスチジン、1mMのMgCl
2、75mMのNaCl、5%(w/w)のスクロース、0.02%(w/w)のPS−80、0.1mMのEDTA、0.4%(w/w)のEtOHを含む。
【0100】
製剤あたり、12本のカラムを使用した。溶出液を貯め、滅菌濾過し、ガラス瓶中で、2〜8℃で保存した。vp−QPCRによるウイルス価決定のために試料を取出し、全力価を、適切な緩衝製剤により1.7×10
11vp/mLに調整した。その後に、製剤をガラスバイアルに充填し(バイアルあたり0.7mL)、栓をして、蓋をした。
【0101】
t=0試料(対照、1群あたり6バイアル)を、−65℃以下で直接保存した。その後に、1群あたり6つのバイアル(n=6)を25℃でインキュベートし、QPAによる試料分析を試料あたり三連で実施するまで、t=10、20、30、40、50、60、65、70、75、80、及び90日で、−65℃以下で凍結した。
【0102】
さらに、両製剤中のベクターのt=0試料をTMA(熱融解アッセイ)により分析して、カプシド融解温度を決定した。より高い融解温度は、ウイルスカプシドのより高い熱安定性に関連する。終点試料(t=90日)は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)及び頻度別遠心沈降法(DCS)によっても分析して、t=0対照と比べた。
【0103】
結果及び結論
試験の完了後、全試料をQPAにより分析し、t=0値を引くことにより効力の低下をデルタとして表した。本発明による製剤B(白菱形)は、有意に(p=1.44E−05)対照製剤(黒丸)より優れ、両アデノウイルス(
図1及び2)で、時間経過に伴う分解が少なく、予測される保存寿命が長かった(表1)。Statistical Analysis System(SASソフトウェア)により、一次(Ad26)及び二次(Ad35)モデルを、時間及び時間の二乗を固定効果として使用して、効力データにフィッティングした。固定された「時間」効果は効力の直線的な減少を表す一方で、固定された「時間×時間」効果はこの減少の曲率を表す。両効果をモデルに使用して、その重要性を評価した。赤池情報量基準(AIC)は、モデルの複雑さ及びそのフィットの正確度を考慮した統計モデルの相対的な質の尺度である。AICが小さいほど、モデルは良好にフィットする。線形モデルでは、傾きは効力低下速度を表わす。傾きを比較すれば、最良の緩衝剤(最低の傾き)を特定できる。
【0104】
保存寿命は、この間隔の下限が所与の仕様を下回る(すなわち効力の低下)時点に相当する。二次モデルでは、保存寿命を計算するために、平均の周りの両側95%信頼区間をとった。保存寿命評価の下限のみを維持すると、評価は、一変量の低い信頼区間で97.5%信頼水準につながる。切片(t=0での効力を反映)を平均化し、生データ及びモデルから除いた。保存寿命を両製剤に関して計算した。
【0105】
【表1】
【0106】
RP−HPLCは、アデノタンパク質修飾の徴候も酸化の徴候も全く示さなかった。DCSは、凝集の徴候を全く明らかにしなかった。さらに、本発明による製剤は、対照製剤に比べて、Ad26(
図3)とAd35(
図4)の両方で著しく高い融解温度をもたらし、製剤B中のアデノウイルスの増大した安定性を示している。
【0107】
実施例2
実験計画及び方法論
実施例1に記載した実験の後、1種又は数種の成分(NaCl、エタノール、EDTA、又はこれらの組み合わせ)の添加又は省略により、製剤Bを改変して、8つの実験的製剤(A〜H、表2参照)を生み出し、対照製剤(Evans et al.に記載、本明細書中上記に詳述)と比べた。製剤は全て、5%のHBCD、20mMのクエン酸塩、及び0.02%のPS−80を含む。表2に示される通り、製剤は、75mMのNaCl、0.1mMのEDTA、及び/又は0.5%のエタノール(EtOH)をさらに含む。アデノウイルス(Ad26)を、これらの9種の製剤中で、25℃で69日間若しくは35℃で16日間インキュベートするか、又は30サイクルの凍結/解凍とそれに続く撹拌(室温で1日)に付した。効力低下をQPAにより評価し、デルタ(t=0を差し引く)Ct(閾値サイクル)値として表した。さらに、350nmでの吸光度を、濁度の尺度として読み取り、内部蛍光を測定して、タンパク質の配座変化及び凝集を検出した。最後に、TMA及びvp−QPCRを実施して、融解温度及びvp/IU比を決定した。
【0108】
【表2】
【0109】
結果及び結論
図5に示される25℃安定性結果に基づき、EDTA(C及びD)又はエタノール(E及びF)と組み合わせたNaClの添加は、ウイルスの安定性にとって明らかに有益であり、エタノールは明らかにEDTAより優れていると結論付けることができる。意外にも、EDTAとエタノールとの組み合わせは、NaClがあってもなくても、より安定な製剤をもたらさない(G及びH)。これは、EDTA/EtOHの具体的な組み合わせが通常フリーラジカル酸化の阻害剤であり、それによりアデノウイルスの安定性の優れた促進剤であると称される従来技術、例えば、Altaras et al,2005及びEvans et al.2004から予測されたこととは逆である。
【0110】
35℃で16日間のより過酷なモデルに移ると、
図6に見られる通り、識別力がより顕著になる。明らかに、NaClの添加は安定性を向上させており、エタノールの有益な効果は
図6に確認される。驚くべきことに、EDTAとエタノールとの組み合わせは、NaClがあってもなくても、ウイルスの安定性に明らかな負の効果を有する。これは、EDTA/EtOHの組み合わせが、フリーラジカル酸化の阻害剤として良好に作用する(例えば、Altaras et al.2005及びEvans et al.2004)という通常の認識の逆である。まとめると、両方の熱ストレッサーは、この特定の製剤におけるEDTAかエタノールのいずれかと組み合わせたNaClの有益な効果を示している。
【0111】
異なる分解経路を有する製剤の性能を調査するために、前記製剤(A〜H)を凍結/解凍サイクル及び撹拌ストレスに曝した(
図7)。観察される効果は、顕著であり、意外でもある。明らかに、EDTA(C及びD)には全く効果がなかった。他方で、エタノールは、凍結/解凍の損傷から強力に保護し、その結果、凍結保護剤として作用した(E〜H)。
【0112】
これらの予測不可能な結果を、濁度測定アッセイにおいて350nmでの吸光度の読み取りにより確認した(
図8)。凍結/解凍(
図8の白四角)は、エタノールを含まない製剤において、t=0に比べて濁度の減少をもたらした。この減少は、おそらくは、ウイルス粒子の崩壊によるものであった。これらの観察と一致して、加速温度ストレス(
図8の黒三角)は、エタノール不含製剤において、やはり濁度の減少をもたらしたが、エタノールを含む製剤、具体的には製剤Fは、t=0試料(
図8の黒丸)に比べて著しい変化を全く示さない。
【0113】
さらに、内部蛍光(
図9)は、先の観察をさらに確認する。エタノールを含まない製剤は、t=0に比べて、凍結/解凍ストレス後にトリプトファン蛍光の著しい減少を生じ(
図9の白四角)、ウイルスカプシド中の激しい配座変化を示す。それとは際立って対照的に、エタノールを含む製剤は、このストレッサーからウイルスを保護している。熱ストレスは、エタノールを含む製剤に、わずかな影響しか与えなかった。
【0114】
TMAデータは、対照製剤に比べて、製剤Fの融解温度の著しい上昇を明らかにしたが(
図10)、これは、製剤F中のより安定なウイルスカプシドを示している。
【0115】
重要なことに、ウイルス調製物の感染性を反映するvp/IU比(ウイルス粒子の質を示す)が、加速された温度(25℃)に曝露された後、製剤Fに比べて対照製剤におけるより高い値(粒子の総量あたり感染性粒子が少ない)を明らかにした。表3を参照されたい。これは、製剤Fが、対照製剤に比べてはるかに高くアデノウイルスの感染力を保護できることを示す。
【0116】
【表3】
【0117】
実施例3.
実験計画及び方法論
製剤緩衝剤設計空間を定義するために、各賦形剤のロバスト性範囲を評価した。因子を選択した後、表4に報告される通り各成分に対して実験範囲を定義した。
【0118】
実験計画法(DOE)の手法に従って、実験空間をマッピングした。6つの因子のそれぞれの低水準と高水準の設計を利用して(表4)、3つの中心値を含む15の製剤を調製し、各因子の影響及び因子間のあり得る相互作用を高い検出力で試験した(表5)。
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
各賦形剤及びpHの適切な水準を評価するために(製剤ロバスト性)、各群をガラスバイアルに充填し、10の凍結/解凍(F/T)サイクルとそれに続く200rpmで室温での(RT)の1日の撹拌及び35℃で7日間の保存(加速劣化モデル)に付した。次いで、QPAによる効力(n=3)を、読み取ったまま使用した。
【0122】
Ad26調製物を、PD−10カラム(GE Healthcare)を使用して緩衝剤交換し、表5に列記した製剤のそれぞれにした。各製剤の溶出液を貯め、滅菌濾過し、ガラス瓶中で2〜8℃で保存した。vp−QPCRによるウイルス価決定のために試料を取出し、全力価を、適切な製剤により1×10
11vp/mLに調整した。その後に、製剤をガラスバイアルに充填し(バイアルあたり0.75mL)、栓をして、蓋をした。t=0試料(対照、1群あたり6バイアル)を、−65℃以下で直接保存した。その後に、1群あたり4つのバイアル(n=4)を、QPAによる試料分析を試料あたり三連で実施するまで、インキュベートし、凍結/解凍し、撹拌し、35℃で7日間保存した(表6)。
【0123】
結果及び結論
試験の完了後、全試料をQPAにより分析し、t=0値を引くことにより効力の低下をデルタとして表した。このデータを統計分析に使用した。
【0124】
統計分析のアウトプットは成功確率であったが、成功は、選択された重要品質特性(CQA):効力のための仕様セットを満たす安定な製剤であると定義される。同等性検定を、T0とストレス後の間で実施して、同等性を比較し、受容基準を、許容され得る効力(IU/mL)の最大低下の上に定義した。この実験では、許容される効力低下は、Δ効力限界≧−0.30logIU/mLであると定義した。
【0125】
得られた実験データを表6に示すが、これを使用して実験領域を減らし、効力に基づいて、設計空間を計算した。
【0126】
データは45の観察結果を含む。三連で試験された12の異なる緩衝剤及び3回別々に調製された追加の1つがあり、独立した調製物のそれぞれは三連で試験した(中心値)。
【0127】
【表6】
【0128】
【表7】
【0129】
以下のモデルをデータにフィッティングした:
【数1】
式中、アルファ−r−バッチはランダムなバッチを表し、シグマは残差を表す。
【0130】
モデルから予測を得てリスクベースの設計空間手法を得るために、ベイズの枠組みを採用したが、それは、製剤パラメーターを考慮するとCQAの予測する同時分布が容易に誘導できるからである(Peterson et al.及びLebrun et al.参照)。リスクベースの設計空間は、以下の確率の記述を使用して定義される。
【数2】
【0131】
言い換えると、設計空間は実験領域χ(しばしば知識空間と呼ばれる)の領域であり、CQAが仕様内である事後確率(Λ)は、観察されたデータを考慮すると、明示される品質水準πより高い。この表記は、統計モデルに含まれる不確実性の包含を暗黙のものにする。確率は、共同で仕様を満たす保証の直接的な尺度である。この確率を計算するために、統計モデルを、以下の一般的な線形方程式として書くことができる。j番目のCQAに関して、モデルは以下の通り調整される:
【数3】
式中、y
iは、良好な統計パラメーターを得るために、i番目のCQAに適用される任意の変換(例えば、恒等変換、対数変換、又はロジット変換)であり、i=1,...,7である。モデルパラメーターb
i及び
【数4】
が評価されるものとする(上記の項目参照)。
【0132】
式(1)の事後確率は、以下のスチューデント分布として特定される、新たな応答の予測分布から計算される(添え字iは、簡潔のために略される)。
【数5】
【0133】
この3パラメータースチューデント分布は、n−p自由度(nの観察結果及びpのモデルパラメーターに関する)を有し、平均回帰直線
【数6】
を中心とし、
【数7】
の通常の最小二乗推定から計算される。
【0134】
【数8】
式中、パラメーターaは残差平方和であり、すなわち、
【数9】
である。このように、Sは、スチューデント分布の規模を定義する。分散推定量はS/(n−p)として計算される。
【0135】
実験領域を調査するには、5つの因子でグリッドを作ることは推奨されない(次元性の問題のため:因子あたり2水準が評価される場合、それは25のサイズのグリッドになるであろう;因子あたり10水準では、それは105サイズのグリッドになるであろう、など)。代りに、いくつかの無作為標本を作り、以下の通り調査した:
a)実験領域内で、多数のランダムな(χにわたって不均一に分布する)動作条件(operating conditions)(因子設定)
【数10】
を選択する。
b)各操作状態に関して:多数のシミュレーションを実施する:
各CQAに関して、n
*試料
【数11】
を式(3)の通り予測分布から抜き出す。
c)CQA予測の異なるシミュレーションから、仕様内にある試料の比率を計算する。
【0136】
この比率は、重要品質特性及びその仕様を考慮して品質のアウトプットを得る事後確率推定である。最後に、二次元空間中での結果の投影のペアプロット上でランダムな動作分布(operating distribution)を目視評価し、設計空間(
図11)を特定することが提案される。
【0137】
次いで、計算を適合させ、因子範囲を減らして、これらの範囲中でCQA効力の成功確率を最大にするが(表7)、これはいわゆる正常動作範囲(NOR)及び設計空間を反映する。表7に示されている範囲は、安定な製剤を有する最高の成功確率を確実にする。そのため、これらの範囲は、最適な製品安定性を確実にする。
【0138】
【表8】
【0139】
参考文献
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