【実施例】
【0043】
次に実施例等を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0044】
製 造 例 1
植物発酵物の製造(1):
以下の植物を原料として使用した。
(a)豆・穀類(大麦、黒大豆、赤米、黒米、小豆、はと麦、ヒエ、アワ、キビ)
(b)果実類(ミカン、ブドウ、リンゴ、ヤマブドウ、モモ、カキ、パパイヤ、ナシ、スイカ、ウメ、イチジク、カリン、カボチャ、キンカン、ユズ、ビワ、アンズ、ナツメ、クリ、マタタビ、スモモ)
(c)根菜類(紫イモ、菊芋、ニンジン、タマネギ、サツマイモ、里芋、自然薯、大根、赤カブ、ゴボウ、レンコン、ヤーコン、ユリ根、クワイ、しょうが、にんにく、ウコン)
(d)花・葉菜類(キャベツ、紫蘇、桑葉、どくだみ、ヨモギ、クマザサ、タンポポ)
(e)海草類(コンブ、ワカメ、モズク)
(f)種子類(黒ゴマ、クルミ、ギンナン)
(g)キノコ類(マイタケ、シイタケ)
【0045】
上記(c)、(d)および(g)の原料(730g)に対し、乳酸菌類(P. acidilacti, L. brevis, L. mesenteroides, L. plantarum, L. lactis, L. sakei, L. casei)が約1.0×10
5cfu/gの菌濃度となるように調製した培養液を0.2質量%接種し、30℃で50時間培養を行った。また上記(b)、(e)および(f)の原料(900kg)に対し、酵母類(S. cervisiae 5種、Z. rouxii 2種)が約1.0×10
5cfu/gの菌濃度となるように調製した培養液を0.4質量%接種し30℃で50時間培養を行った。(a)豆類および穀類系原料(1000kg)には、麹菌類(黄麹菌、黒麹菌、白麹菌)を0.1質量%接種して35℃で70時間培養を行った。次いでそれぞれの培養物を混合後、30℃で200時間培養を行った。発酵を終了したモロミについて固液分離操作を行い、得られた濾液を濃縮してペースト状にしたものを容器に分注し、更に1年間後発酵(熟成)させ植物発酵物を得た。
【0046】
製造例1で得られた植物発酵物は以下の性質を有するものであった。
(ア)一般分析値(100g当たり)
水分 25.2g
たんぱく質 11.8g
脂質 3.6g
灰分 2.1g
炭水化物 57.3g
ナトリウム 54.0mg
ビタミンB6 0.20mg
エネルギー 309kcal
【0047】
(イ)アミノ酸組成(100g当たり)
試料を6規定塩酸で加水分解したものをアミノ酸自動分析計によって分析した。シスチンについては過蟻酸酸化処理後、塩酸加水分解を用いた。トリプトファンは高速液体クロマト法を用いた。
アルギニン 0.33g
リジン 0.34g
ヒスチジン 0.22g
フェニルアラニン 0.51g
チロシン 0.32g
ロイシン 0.74g
イソロイシン 0.42g
メチオニン 0.13g
バリン 0.54g
アラニン 0.48g
グリシン 0.42g
プロリン 0.92g
グルタミン酸 2.25g
セリン 0.4g
スレオニン 0.36g
アスパラギン酸 0.84g
トリプトファン 0.06g
シスチン 0.15g
【0048】
(ウ)有機酸組成(100g当たり)
クエン酸 0.81g
リンゴ酸 0.31g
コハク酸 0.12g
乳酸 1.17g
ギ酸 0.03g
ピルビン酸 0.01g
遊離γ−アミノ酪酸 24mg
【0049】
(エ)ミネラル組成(100g当たり)
リン 262mg
鉄 2.65mg
カルシウム 72.1mg
カリウム 798mg
マグネシウム 97.8mg
亜鉛 1.19mg
ヨウ素 1.7mg
【0050】
製 造 例 2
植物発酵物の製造(2):
以下の植物を原料として使用した。
(a)豆・穀類(大麦、黒大豆、赤米、黒米、小豆、はと麦、ヒエ、アワ、キビ)
(b)果実類(ミカン、ブドウ、リンゴ、ヤマブドウ、モモ、カキ、パパイヤ、ナシ、スイカ、ウメ、イチジク、カリン、カボチャ、キンカン、ユズ、ビワ、アンズ、ナツメ、クリ、マタタビ、スモモ)
(c)根菜類(紫イモ、菊芋、ニンジン、タマネギ、サツマイモ、里芋、自然薯、大根、赤カブ、ゴボウ、レンコン、ヤーコン、ユリ根、クワイ、しょうが、にんにく、ウコン)
(d)花・葉菜類(キャベツ、紫蘇、桑葉、どくだみ、ヨモギ、クマザサ、タンポポ)
(e)海草類(コンブ、ワカメ、モズク)
(f)種子類(黒ゴマ、クルミ、ギンナン)
(g)キノコ類(マイタケ、シイタケ)
【0051】
上記(c)、(d)および(g)の原料(730g)に対し、乳酸菌類(P. acidilacti, L. brevis, L. mesenteroides, L. plantarum, L. lactis, L. sakei, L. casei)が約1.0×10
5cfu/gの菌濃度となるように調製した培養液を0.2質量%接種し、30℃で50時間培養を行った。また上記(b)、(e)および(f)の原料(900kg)に対し、酵母類(S. cervisiae 5種、Z. rouxii 2種)が約1.0×10
5cfu/gの菌濃度となるように調製した培養液を0.4質量%接種し30℃で50時間培養を行った。(a)豆類および穀類系原料(500kg)には、麹菌類(黄麹菌、黒麹菌、白麹菌)を0.1質量%接種して35℃で70時間培養を行った。次いでそれぞれの培養物を混合後、30℃で200時間培養を行った。発酵を終了したモロミについて固液分離操作を行い、得られた濾液を濃縮してペースト状にしたものを容器に分注し、更に1年間後発酵(熟成)させ植物発酵物を得た。
【0052】
製造例2で得られた植物発酵物は以下の性質を有するものであった。
(ア)一般分析値(100g当たり)
水分 31.7g
たんぱく質 14.6g
脂質 5.3g
灰分 2.8g
炭水化物 40.4g
ナトリウム 59.6mg
ビタミンB6 0.24mg
エネルギー 278kcal
【0053】
(イ)アミノ酸組成(100g当たり)
試料を6規定塩酸で加水分解したものをアミノ酸自動分析計によって分析した。シスチンについては過蟻酸酸化処理後、塩酸加水分解を用いた。トリプトファンは高速液体クロマト法を用いた。
アルギニン 0.46g
リジン 0.51g
ヒスチジン 0.28g
フェニルアラニン 0.63g
チロシン 0.43g
ロイシン 0.97g
イソロイシン 0.58g
メチオニン 0.16g
バリン 0.72g
アラニン 0.67g
グリシン 0.55g
プロリン 0.98g
グルタミン酸 2.65g
セリン 0.59g
スレオニン 0.51g
アスパラギン酸 1.26g
トリプトファン 0.10g
シスチン 0.18g
【0054】
(ウ)有機酸組成(100g当たり)
クエン酸 0.40g
リンゴ酸 0.10g
コハク酸 0.08g
乳酸 4.17g
ギ酸 0.02g
ピルビン酸 0.02g
遊離γ−アミノ酪酸 31mg
【0055】
(エ)ポリフェノール(
図1参照;μg/g)
カフェ酸(Cafeic acid) 36.9
α−アミノ安息香酸(o-aminobenzoic acid) 17.0
フェルラ酸(ferulic acid) 54.2
p−クマル酸(p-cumaric acid) 28.2
ダイゼイン(daizein) 53.8
ゲニステイン(genistein) 79.8
グリシテイン(glycitein) 4.6
クェルセチン(quercetin) 7.8
ヘスペレチン(hesperetin) 265.7
ナリンゲニン(narigenin) 42.5
(HPLC条件)
カラム:MCM(4.6x250mm;5μm)
カラム温度:35℃
移動相:移動相A:100mM リン酸ナトリウム、5%メタノール
移動相B:100mM リン酸ナトリウム、60%アセトニトリル、10%メ
タノール
グラジエント条件:移動相Bの直線グラジエントを0-45分、0〜6%、
移動相Bの直線グラジエントを6%〜14%、45〜60分、
移動相Bの直線グラジエントを14%〜30%、60〜90分
移動相Bの直線グラジエントを30%〜40%、90〜120分、
移動相Bの直線グラジエントを40%〜77%、120〜140分、
移動相Bのイソクタティックを85%まで、100分
流量:1.0ml/min
検出器:CoulArray, Model 5600A
(測定方法)
検体約80mgを正確に量りとり、内部標準液(17-α-エストラジオール100μg/mL)を100μL添加し、90%メタノール溶液を5mL加え、10分間振とうした後、35℃で30分間超音波抽出を行った。抽出後、遠心器(3000rpm, 10分)にて遠心分離後、上清を分取し窒素気流下にて濃縮後、0.1M酢酸ナトリウム緩衝液にて2mLに定容した。その溶液1mLにβ-グリコシダーゼ系酵素10mgを添加し、43℃で2時間酵素処理を行った。酵素処理後の溶液にメタノール500μL添加し、0.45μmフィルターでろ過した液を試験溶液とした。
【0056】
(オ)レスベラトロール(
図2参照)
レスベラトロールをトランス体とシス体の合計で0.022mg/g含有する(トランス体0.002mg/g、シス体0.02mg/g)。
検出器:UV(310nm)
カラム:野村化学 ODS-MG-3 3×100mm
カラム温度:40℃
移動相:薄めたリン酸(1→500)/アセトニトリル混液(4:1)
流量:0.4mL/min
(測定方法)
・NSKレスベラトロール(標準溶液)
1カプセル(330mg レスベラトロール 3.3mg相当)を70%メタノールで溶解し、100mLとした。この液を0.45μmのメンブランフィルターにてろ過し、ろ液を標準溶液とした。
・試料
約1gを水30mLにて溶解し、酢酸エチル20mLを加え、混合し、上澄み液を分取し減圧濃縮を行った。残留物に70%メタノール5mLを加えた。この液を0.45μmのメンブランフィルターにてろ過し、ろ液を試料溶液とした。
【0057】
赤ワインに含まれるレスベラトロールは、抗炎症作用や老化抑制作用、あるいはショウジョウバエの寿命を延長することが知られている。植物発酵物もSAMマウスにおける老化抑制作用および寿命延長作用を示したことから、レスベラトロールの影響の有無を確認するために、その含有量をHPLC標準品で分析した。結果は、トランス体0.002mg/g、シス体0.02 mg/g(トランス体とシス体の合計量0.022 mg/g)であった。この濃度では、老化抑制効果や寿命延長効果は期待できず、本植物発酵物の老化抑制作用と生存率の延長作用は別の物質に由来すると思われた。
【0058】
試 験 例 1 線虫に対する延命効果:
製造例1で得られた植物発酵物をイオン交換水で希釈し、2%(w/w)溶液を作り、オートクレーブによって121度、20分間滅菌した。線虫(Caenorhabditis elegans)として、酸素感受性変異株(mev-1)を用いた。mev-1株は培養中の酸素濃度が増加すると死亡しやすくなり、酸素濃度に依存した生存曲線のシフトが起こる。この変異株はミトコンドリアの呼吸鎖の中の複合体IIのシトクロームb560変異に由来するコハク酸―ユビキノン脱水素酵素の変異であることが証明されていて、長期間培養して老化した線虫は体内に空洞が観察され、さらには老化に伴うリポフスチンが蓄積することが証明されている。このようにmev-1変異株は、老化研究に適したモデル実験動物である。生存曲線は石井らの方法(非特許文献16)に準じて行った。すなわち、大腸菌K562株のトリプトン・ブロスで振盪培養した培養液を3.5cmファルコンプレートに加えたトリプトン寒天培地(TN培地)にパスツール・ピペットで1滴添加し、30℃で1晩培養すると、直径5mm程度の大腸菌のマットが出来上がる。別途直径9cmのペトリ皿のTN寒天培地に生育させた大腸菌を餌としてmev-1を生育させたものから、生育ステージL4を釣上げて、3.5cmプレート上の大腸菌マットに合計10匹の線虫を移植した。線虫を移植した4枚の3.5cmプレートをエアタイトバックに入れてから、酸素ガスで100%置換した。翌日から毎日実体顕微鏡で生存している線虫の数を記録した。観察後、再度酸素ガスで同様に置換した。
図3に示すように、得られた生存曲線は、簗瀬・石井の報告している最大80%酸素飽和の条件下よりさらに短寿命側にシフトしていて、実験は正常に行われていることが示された。酸素100%雰囲気における本酸素感受性変異株の寿命は、文献(非特許文献16)に報告されている簗瀬・石井のグラフと比較してみると、50%生存率を示す培養日数(日齢)は、石井らの80%酸素雰囲気下(約10日)よりさらに短縮し、約3日であった。コントロールの水群に比べて2%植物発酵物群は生存率約50%の付近で延命効果が見られた。t−検定を行ったところP=0.025で有意であった。mev-1変異株はミトコンドリアの呼吸鎖に欠陥があることが分かっているので、活性酸素に毒性が関与していることが強く示唆される。
【0059】
試 験 例 2
植物発酵物についての老化促進モデルマウス(SAMマウス)を用いた加齢に伴う老化抑制効果および生存率の延長効果、および腫瘤の発生抑制効果は以下のように試験を実施した。SAMマウス(SAM-P1/SkuSlc、10週齢、雄)はSAM研究会指定のブリーダーである日本エスエルシー株式会社が生産したものを購入した。餌は三協ラボサービス社から購入したγ線滅菌した固形飼料500Nを用いた。SAMマウスは、SPF専用動物室において、23±2℃、湿度50±10%の恒温・恒湿設備を用い、滅菌床敷きを敷いた日本クレア製の中型ポリカーボネート製使用ケージにて個別飼育した。照明は20:00~08:00の間消灯した。また腫瘤形成の比較のため、正常型のSAM-R1/SkuSlcについても同様に飼育した。
【0060】
製造例1の植物発酵物をイオン交換水で希釈し、2%および0.2%水溶液とし、飲料水として自由摂取させた。飼料は三協ラボサービス社から購入したγ線滅菌飼料、N500を用いた。各群8匹を用い、飼育当初は4匹/ケージとし、順次個別飼育に移行した。正常型SAM-R1は4匹を使用し、植物発酵物は投与せず、イオン交換水のみを自由摂取させた。個別飼育に移行してからは、週1回の評価・観察とケージ交換を実施した。一般的観測項目は、体重、飲水量(=サンプル摂取量)、摂餌量、外観とした。老化指標の観察は、SAM研究会指定の評価説明書に記載の標準的評価方式を用い、記載用紙はSAM研究会指定のシートを用いた。更に、SAM研究会の評価方式には含まれていないが、生存率の推移、体表から観察できる腫瘤の大きさ計測も実施した。
【0061】
SAM研究会指定の老化指標は、以下の方法である。
Behavious(2項目)
1.Reactivity(Grade 0−4)
マウスをケージの外に出した時に見られる探索行動
0:若齢マウスが示す動き
1:爪先立ち歩き(チョコチョコ歩き)もしくは興奮状態
2:ゆっくり歩く(ノソノソ歩く)
3:動かないがお尻をつつくと動き出す
4:全く動かない
2.Passivity(Grade 0−4)
マウスの首を真上からそっと押さえたときの逃避行動
0:若齢マウスが示す動き。力強くスッとにげる。
1:逃げ方が遅い
2:逃げない
3:逃げない。首をつかんで仰向けにすると寝返る
4:前肢、後肢をつかんでももがかない。
Gross Appearances(9項目)
Skin and Hair(4項目)
3.Glossiness(Grade 0−4)
毛のつや
0:真っ白でピカピカ(若齢マウスが示す毛つや)
1:0と1の間
2:はっきりと艶が無くなっているが、汚れてはいない。
3:2と4の間
4:非常に汚れきった状態
4.Coarseness(Grade0−4)
指先で被毛をなぜたときに感ずるゴワゴワした感触
面積で判断する。小さな潰瘍、皮膚炎がある場合がある
0:毛玉なし。スベスベ、ツルツル
1:頭、顔面あたりにあり
2:肩のあたりまで広がっている。
3:背中のあたりまで広がっている。
4:背中を越えて尻尾のあたりまで。
5.Loss of Hair (Grade 0−4)
被毛が薄くなった状態もしくはハゲている状態。腹部は毛が薄いので
背部で観察する。妊娠マウスは毛が薄くなるので明らかなハゲを見た
方がよい。
0:全く毛のロスが無い
1:A; ハゲが頭部程度の大きさ。
B; 毛の薄い部分が背部全体の約半分まで。
2:A; ハゲが背部全体の1/4以下
B; 毛の薄い部分が背部全体の1/2以上
3:ハゲが背部全体の大体1/4以上1/2以下
4:ハゲが背部全体の1/2以上
6.Skin Ulcers (Grade 0−4)
白い瘢痕も含む。身体全体を検索する。
0:全くなし
1:瘢痕(皮膚が白く肥厚している)や痂皮を伴う潰瘍。大きさは
問わない。
2:ズルズルに赤くただれた潰瘍。大体頭部の面積程度以下。
3:ズルズルに赤くただれた潰瘍。大体頭部の面積程度以上で背部
の面積の1/2程度以下。
4:ズルズルに赤くただれた潰瘍。大体背部の面積の1/2程度以上
。
Eyes (4項目)
左右別々に評価する。Total Scoreにはそのまま加算する。必要に応じて1
/2の係数をつけたり、評価しやすい項目のみを採用することも可能。角膜
病変や白内障の観察には、直接ペンライトを用いる。
7.Periophthalmic Lesions(Grade 0−3)
0:変化無。眼はパッチリ。
1:瞼が晴れて眼が閉じている。もしくは眼の周囲のみが爛れてい
る。
2:目の周囲の爛れが鼻先まで広がっている。
眼は大丈夫で鼻先だけの潰瘍のあるので注意。
3:顔全体に爛れが広がった状態
8.CorenealOpacity(Grade 0−3)
角膜の混濁。角膜が白く濁っているが表面はツルツル。
冷蔵庫に入れて白くなった“くずまんじゅう”のような状態。
0:病変なし
1:虹彩は見える
2:虹彩は見えないが網膜からの反射(黄金色―オレンジ色)はみ
える
3:反射光なし。
9.Ulcers of Cornea (Grade 0−3)
角膜は白濁し、表面はザラザラしている。
0:病変なし
1:眼裂部に一致するところに線状の白濁あり。
2:1と3の間。周囲から反射光あり。
3:殆ど角膜全体に広がり網膜の反射光が見られない。
10.Cataract(Grade 0−2)
白内障。白濁は透明な角膜を通して底の方に白く映る。側方から見
ると、角膜が透明なことがわかる。
0:白濁なし。網膜反射光は正常
1:反射光やや減弱。
2:全く反射無し。(黄金―オレンジ色が観察されない)
Spine(1項目)
11.Lordokyphosis(Grade 0−3)
撫でると首の所でひっかかる。
マウスの姿勢を首が伸びるようにする。
0:ひっかかりが無い。
1:優しく撫でるとひっかかるが、強くするとひっかからなくなる
。
2:強く撫でてもひっかかる。尻尾を引っ張って背筋を伸ばすとひ
っかからなくなる。
3:どうしてもひっかかる。
Total Score
すべてを単純に加算し、マウス個体の老化度評点とする。眼瞼が閉じてい
る場合、生理食塩水を注射器にとり、眼を洗浄すると開眼できるがやや侵
襲が強くなる。角膜病変が強く白内障が観察できない場合、厳密にはその
マウスは省かねばならない。
【0062】
SAM研究会の上記老化度評価法に従って各マウスを毎週1回評価し、研究会指定の記録用紙に記入した。同時に体重測定、飲水量(サンプル摂取量)の記録、摂餌量の記録を行った。SAM研究会の指定評価法には含まれないが、生存の記録と生存曲線を記録し、また60週齢以降では、鼠頚部に頻発するリンパ腫様の腫瘤の長径、短径、高さの計測から腫瘤体積(mm
3)を記録した。
【0063】
図4に生存曲線、
図5に生存率のカプラン・マイヤー解析、表1に植物発酵物とCoQ10およびCoQ10還元型三者の生存率の平均日数の比較表、表2に生存期間の平均値、中央値、最長成長期間、
図6に老化総合評点の推移、
図7に54週ならびに60週齢における老化総合評点の有意差解析、
図8に54週齢ならびに60週齢の背骨湾曲の比較を示す。また
図9に60週齢を越えて飼育した場合に頻発する腫瘤の体積の推移の比較を示す。
【0064】
図4から、植物発酵物2%群は植物発酵物0.2%群より生存率が高く、濃度依存性があることが明らかとなった。また
図5から、両者間の有意差検定の結果、Cox-Mantel-Henzelの有意差検定のP値=0.00461が算出され、植物発酵物2%群は有意に延命効果を有することが示された。
【0065】
カプラン・マイヤー解析(
図5)において算出された平均週齢(および平均日数)について、同一のマウス種(SAM-P1♂)を用いたCoQ10およびCoQ10還元型による試験結果(非特許文献14)と比較した(表1)。植物発酵物2%の平均日数(624.475日)は、CoQ10(517.89日)およびCoQ10還元型(519.64日)に比べて誤差の範囲を越えて長いようである。なお、CoQ10とCoQ10還元型の間に有意差はないと報告されている。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
図6に示すとおり、植物発酵物2%群は0.2%群に比べて、老化度の発現は遅延し、また老化総合点数も終始0.2%群に比べて低値であった。
【0069】
図6に示すとおり、全ての週齢で植物発酵物2%群の方が、老化指標総合点において0.2%群よりも低く、有意差検定を行った54週齢、60週齢とも2%群の方が0.2%群に比べてt-検定のP<0.05で有意に老化点数が低かった(
図7)。
【0070】
54週齢、60週齢とも、2%群の方が0.2%群より背骨老化指標点数が有意に低値を示し、植物発酵物は濃度依存的に加齢に伴う背骨湾曲異常を抑制することを示した(
図8)。
【0071】
マウスは一般的に60週齢を越えると腫瘍が自然発生することが知られており、多くはリンパ腫である。試験例2において70週齢以上では、正常型(SAM-R1)および老化促進型(SAM-P1)とも主に鼠頚部に腫瘤が発生したのでサイズを短径x長径x高さで近似的に体積の推移を計測した(
図9)。なお、癌腫に関する細胞診を実施していないので仮に「腫瘤」とした。老化促進型の植物発酵物2%群と正常型の腫瘤サイズの推移は同等であったが、老化促進型の植物発酵物0.2%群では、腫瘤サイズはこれらの群より上回る値で推移した。