特許第6013683号(P6013683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013683
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   H02K15/02 K
   H02K15/02 F
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-116798(P2012-116798)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-243889(P2013-243889A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】松林 敏
(72)【発明者】
【氏名】間普 浩敏
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−017075(JP,A)
【文献】 実開平04−137046(JP,U)
【文献】 特開昭61−052943(JP,A)
【文献】 特開2005−065485(JP,A)
【文献】 特開平03−107075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造方法において、
前記上型及び前記下型で前記鉄心本体を型締めする際に、前記下型と該下型を載せる下型載置台の間に形成された気体室に圧縮気体を供給し、前記下型を前記下型載置台に対して浮遊可能とし、前記上型の両側に設けられた断面矩形で先部がテーパー状となったガイドロッドからなる上ガイド部材と、前記下型に設けられ記ガイドロッドが嵌入する断面矩形のガイド穴からなる下ガイド部材とを用いて、前記鉄心本体を載せた前記下型と前記上型の位置合わせをすることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記気体室は複数あって、前記下型の中央部を中心として放射状に形成されていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記下型は金属製の下型本体と該下型本体の底部に設けられた断熱プレートを備えていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の積層鉄心の製造方法において、前記下型は、更に前記断熱プレートの下に金属製の底板プレートが設けられていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入して、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造装置において、
前記下型と該下型を載せる下型載置台の間に圧縮気体が供給されて、前記下型を前記下型載置台の上に浮遊させる気体室が設けられていると共に、前記上型の両側に設けられた断面矩形で先部がテーパー状のガイドロッドと、前記下型に設けられて前記ガイドロッドが嵌入する断面矩形のガイド穴とを備え、前記上型と前記鉄心本体を載せた前記下型とを位置合わせするガイド手段が設けられ、前記下型載置台に対して前記下型を浮遊して、前記ガイド手段によって、前記下型と前記上型の位置合わせを行うことを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項6】
請求項記載の積層鉄心の製造装置において、前記気体室は複数あって、前記下型の中央部を中心として放射状に形成されていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の積層鉄心の製造装置において、前記下型は金属製の下型本体と該下型本体の底部に設けられた断熱プレートを備えていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項8】
請求項記載の積層鉄心の製造装置において、前記断熱プレートの底部に金属製の底板プレートを備えていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造方法及び装置に係り、特に磁石挿入孔に入れた永久磁石を樹脂封止する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や家電製品に使用するモータの回転子積層鉄心(ロータコアともいう)の製造にあっては、鉄心本体の磁極数に対応して形成された複数の磁石挿入孔に、未磁化の永久磁石を入れて外側から樹脂を入れて樹脂封止にて固定することが行われていた。
この永久磁石の樹脂封止にあっては、例えば、特許文献1に示すように、磁石挿入孔に永久磁石が挿入された鉄心本体を上型及び下型との間で挟持し、上型及び下型のいずれか1に設けられた樹脂溜めポットから溶融した熱硬化性樹脂を充填して行っていた。
【0003】
この樹脂封止にあっては、回転子積層鉄心を中央に軸を有する搬送トレイに載せて、下型の上に位置決めして載せ、下型を上昇させて、搬送トレイに載った鉄心本体を上型と下型で型締めし、樹脂溜めポット内の樹脂をプランジャで押し出し、永久磁石の挿入された各磁石挿入孔に樹脂を充填している。そして、搬送トレイと上型との位置決めは、搬送トレイの中央に設けられた軸を、上型中央に設けられた凹部に嵌入させることによって行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−17075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、搬送トレイ及び上型は、繰り返し使用するので、位置合わせする部分が摩耗し、位置決め精度が徐々に悪くなり、更に、搬送トレイの搬送台と下型との位置合わせも同一部分を繰り返し使用するので摩耗して位置決め精度が悪くなるという問題があった。
また、搬送トレイと下型を位置合わせする場合、鉄心本体が載った搬送トレイを左右に動かす必要があり、鉄心本体が大型化すると、搬送トレイの移動は特別な道具や装置(例えば、ロボットハンド等)を必要とし、極めて作業性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、鉄心本体が載置された下型を容易に動かして位置決め可能な、積層鉄心の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造方法において、
前記上型及び前記下型で前記鉄心本体を型締めする際に、前記下型と該下型を載せる下型載置台の間に形成された気体室に圧縮気体(例えば、圧縮空気、圧縮窒素)を供給し、前記下型を前記下型載置台に対して浮遊可能とし、前記上型の両側に設けられた断面矩形で先部がテーパー状となったガイドロッドからなる上ガイド部材と、前記下型に設けられ記ガイドロッドが嵌入する断面矩形のガイド穴からなる下ガイド部材とを用いて、前記鉄心本体を載せた前記下型と前記上型の位置合わせをする。
【0008】
また、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記気体室は複数あって、前記下型の中央部を中心として放射状に形成されている。
【0009】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記下型は金属製の下型本体と該下型本体の底部に設けられた断熱プレートを備えている。
【0010】
第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記下型は、更に前記断熱プレートの下に金属製の底板プレートが設けられている。
【0011】
【0012】
【0013】
の発明に係る積層鉄心の製造装置は、複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入して、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造装置において、
前記下型と該下型を載せる下型載置台の間に圧縮気体が供給されて、前記下型を前記下型載置台の上に浮遊させる気体室が設けられていると共に、前記上型の両側に設けられた断面矩形で先部がテーパー状のガイドロッドと、前記下型に設けられて前記ガイドロッドが嵌入する断面矩形のガイド穴とを備え、前記上型と前記鉄心本体を載せた前記下型とを位置合わせするガイド手段が設けられ、前記下型載置台に対して前記下型を浮遊して、前記ガイド手段によって、前記下型と前記上型の位置合わせを行う。
【0014】
の発明に係る積層鉄心の製造装置は、第の発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記気体室は複数あって、前記下型の中央部を中心として放射状に形成されている。
【0015】
の発明に係る積層鉄心の製造装置は、第、第の発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記下型は金属製の下型本体と該下型本体の底部に設けられた断熱プレートを備えている。
【0016】
の発明に係る積層鉄心の製造装置は、第の発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記断熱プレートの底部に金属製の底板プレートを備えている。
【0017】
【0018】
なお、以上の積層鉄心の製造方法及び装置において、永久磁石が挿入された磁石挿入孔への樹脂を供給する樹脂溜めポットは、上型に設けられている場合と、下型に設けられている場合がある。
また、鉄心本体を載せる搬送トレイを用いることは自由であり、この場合、搬送トレイの搬送台は下型に設けられた複数の位置決めピンによって位置決めされる。従って、この場合は、鉄心本体と搬送トレイは一体となっており、下型を下型載置台に対して位置決めすることによって、鉄心本体と上型とを位置決めすることになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る積層鉄心の製造方法及び製造装置においては以下のような効果を有する。
(1)下型載置台に下型を浮遊可能に載せることができるので、下型の位置合わせ、即ち、鉄心本体を載せた下型の横移動が軽くなり、下型の上型に対する位置決めが容易となる。
【0020】
(2)特に、下型を金属製の下型本体とその底部に設けられた断熱プレートを有して構成すると、加熱された下型の熱の下型載置台への移動が防止され、熱効率が向上すると共に、下型載置台の無用な加熱が防止される。
(3)また、この断熱プレートの下に更に底板プレートを設けて下型を三重構造とすることで、下型を段変えする場合、断熱プレートと下型載置台が擦れて、断熱プレートが摩耗によって変形してしまうのを防止できる。
【0021】
(4)上型に型締め時に下型に設けられた下ガイド部材に嵌入する上ガイド部材が設けられ、上ガイド部材及び下ガイド部材(即ち、ガイド手段)を介して、上型と下型の位置合わせが行われるようにした場合は、確実に下型と上型の位置合わせができる。
(5)特に、上ガイド部材を断面矩形のガイドロッドとし、下型に設けられた下ガイド部材をこのガイドロッドが嵌入する断面矩形のガイド穴とした場合には、ガイドロッドの先部に適当なテーパーを設けることによって、より精密な位置合わせができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置の正面図である。
図2】同積層鉄心の製造装置の説明図である。
図3】(A)〜(C)は同積層鉄心の製造装置の下型の説明図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置の正面図である
図5】(A)〜(C)は同積層鉄心の製造装置の下型の説明図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置の下型の平面図である。
図7】同積層鉄心の製造装置の下型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置10は、上部を上部フレーム11に固定された4本のガイドポスト12に沿って昇降可能な下型載置台13を有している。そして、下型載置台13の上には下型14が載置され、下型14と対なって鉄心本体16を挟み、4本の補助ガイド部材17に沿って昇降可能な上型18を有している。なお、下型14及び上型18によって積層鉄心の製造装置10の金型が形成される。
【0024】
上型18の上には、補助ガイド部材17又はその他の支持部材によって支持される固定架台19を有し、固定架台19は、上部フレーム11に固定された油圧シリンダを用いる油圧アクチュエータ20の下部に設けられた複数のプランジャ21が嵌入するガイド孔22を有している。また、上型18には、それぞれのプランジャ21が嵌入する樹脂溜めポット23を備え、上型18と下型14で挟持した鉄心本体16を貫通する磁石挿入孔24にそれぞれ樹脂を注入している。
【0025】
鉄心本体16は中央に軸孔26を有し、搬送台27と軸28を有する搬送トレイ29に搭載され、図3(A)に示すように、下型14の上に対角配置された位置決めピン30、30aを搬送台27に設けられた位置決め孔30b、30cに嵌入し、搬送トレイ29の下型14に対する位置決めが行われている。なお、搬送トレイ29の軸28は鉄心本体16の軸孔26に嵌入するが、軸28は鉄心本体16の高さより長く、先部が上型18の底部に設けられたセンター用位置決め穴31で位置決め固定されている。
【0026】
図3(B)に示すように、下型14は、金属製(鋼製又はステンレス製)の下型本体33とその下部に配置された断熱プレート34とを有し、平面視して下型14の左右には、下ガイド部材の一例である断面矩形のガイド穴35、36が設けられている。このガイド穴35、36の間隔は搬送台27の幅より広く、搬送台27の外側に隙間を有して形成されている。なお、断熱プレート34は硬質のセラミックス又は耐熱性を有する繊維強化板(例えば、FRP)からなって、底部が平面となっているが、図3(C)に示すように、下側に気体(例えば、空気)を噴き出す窪み37〜41が設けられている。
【0027】
窪み37〜41は底部開放の気体供給路42に連結され、垂直通路43、44を介して下型本体33の側部に設けられた気体取り入れ口45、46に連結されている。窪み37〜41と気体供給路42は平面となった下型載置台13の表面と共にそれぞれ気体室を形成している。この複数の窪み37〜41及び複数の気体供給路42の全面積をSとし、気体取り入れ口45、46から供給される気体の圧力をPとした場合、P×Sの浮上力が下型14に働き、下型載置台13に対して下型14を浮上できる構造となっている。なお、下型本体33と断熱プレート34は図示しないボルトによって強固に連結されて一体構造となっている。
【0028】
ガイド穴35、36はこの実施の形態では、下型本体33を貫通している。一方、このガイド穴35、36には、上型18の下部両側に固定された上ガイド部材の一例である断面矩形のガイドロッド48、49が嵌入する構造となっている。従って、ガイドロッド48、49の先部(即ち、下部)はテーパー状となって、容易にガイド穴35、36に嵌入するようになっている。なお、ガイドロッド48、49の先部は下型14が下降した状態では、常にガイド孔35、36に挿入されている。これにより、ガイドロッド48、49の先部の摩耗を早めることがない。以上のガイド穴35、36とガイドロッド48、49とでガイド手段を構成している。
【0029】
下型14を上昇させて、ガイド穴35、36にガイドロッド48、49を嵌入させると、ガイドロッド48、49のテーパーによって位置決めが可能となっている。なお、軸28の頂部にもテーパーが設けられて、軸28が上型18の底部に設けられているセンター用位置決め穴31に嵌入し、下型14の軸心が上型18の軸心に一致するようになっている。
【0030】
この積層鉄心の製造装置10においては、下型14を下型載置台13上に浮上させながら、軸28とセンター用位置決め穴31、及びガイドロッド48、49とガイド穴35、36によって、下型14と上型18の位置決めを行い、搬送トレイ29と下型14は対となる位置決めピン30、30aと搬送台27に設けられた位置決め孔30b、30cとによって位置決めをしている。
【0031】
従って、この積層鉄心の製造装置10を用いる積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入孔24を有する鉄心本体16のそれぞれの磁石挿入孔24に永久磁石を挿入する。なお、この状態で、鉄心本体16は搬送トレイ29に搭載されている。搬送トレイ29と鉄心本体16の位置決めは、例えば、特開2010−17075号公報に記載のように、鉄心本体16の軸孔26の内側に左右対称に設けられた突出キーと、軸28の両側に設けられたキー溝によって行う。搬送トレイと鉄心本体の位置決めは、例えば、鉄心本体に重量軽減用の抜き孔がある場合は、この抜き孔に嵌入するピンを搬送トレイに設け、これらを利用して位置合わせをすることができる。
【0032】
この後、所定温度に加熱されて搬送トレイ29に載せた鉄心本体16を、下型14の上に対となる位置決めピン30、30aを搬送台27の位置決め孔30b、30cに装着して載せる。これによって、搬送トレイ29に載った鉄心本体16は下型14に対して位置決めして装着されることになる。
【0033】
次に、下型14の気体取り入れ口45、46から圧縮気体を下型14の窪み37〜41と平面状の下型載置台13によって形成される気体室に入れて、下型14を浮上させる。これによって、鉄心本体16の載った下型14は自由に動くので、所定の位置に移動させた後、下型載置台13を上昇させる。
これによって、下型14のガイド穴35、36にガイドロッド48、49の先部が嵌入し、更に、軸28の先部がセンター用位置決め穴31に嵌入して、上型18に対する下型14の位置決めが完了する。
【0034】
図2に示すように、この後、鉄心本体16の型締めが完了するまで、気体室への圧縮気体の供給を続けて、下型載置台13を更に上昇させて、鉄心本体16の型締め(即ち、鉄心本体16を上型18と下型14で挟持した状態)を行い、加熱されている上型18の樹脂溜めポット23内に樹脂を入れて加熱溶融し、油圧アクチュエータ20を作動させて、プランジャ21を押し下げ、樹脂溜めポット23内の樹脂を、鉄心本体16の各磁石挿入孔24に入れて、内部に挿入された永久磁石の樹脂封止を行う。
樹脂封止が完了した後は、下型載置台13を下降させ樹脂封止された鉄心本体16を搬送トレイ29に載せたまま積層鉄心の製造装置10(金型装置)から取り出し、この状態で永久磁石が樹脂封止された積層鉄心となる。また、下型載置台13を下降させる時も、気体室への圧縮空気の供給を行えば、ガイド孔35、36とガイドロッド48、49の摩耗が抑制される。
【0035】
続いて、図4図5(A)〜(C)に示す本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置52について説明する。この実施の形態においては、下型55が最上部の金属製の下型本体53と中間部の断熱プレート54とその下部にある金属製の底板プレート56を有する三重構造となっている。このように三重構造とすることで、下型55を段変えする場合、断熱プレート54と下型載置台57が擦れて、断熱プレート54が摩耗によって変形してしまうのを防止している。底板プレート56の底面は平面となって、下型載置台57に下型載置台57の中心を基準にして窪み58〜61が放射状(即ち、点対称)に複数設けられている。なお、その他の構成は、積層鉄心の製造装置10と同一であるので、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0036】
そして、下型載置台57には窪み58〜61に圧縮気体を供給する気体通路62〜65が設けられている。この気体通路62〜65の端部には、図示しない継手が設けられてホース等によって気体供給源に接続されている。
この実施の形態において、下型55の底面(底板プレート56の底面)と窪み58〜61によって気体室が形成され、この気体室に圧縮気体を供給することによって、鉄心本体16が搭載された下型55を浮上させている。なお、気体室は底板プレートの底面に窪みを形成し、下型載置台を平面状にして形成してもよい。
【0037】
断熱プレート54は加熱された鉄心本体16からの熱が逃げるのを防止し、下型本体53内にヒータが配置される場合は、ヒータからの熱放散を防止している。下型55を三重構造とすることで、ヒータからの熱放散をより効果的に防止できる。なお、下型本体53と断熱プレート54との連結は複数のねじ67によって、底板プレート56と断熱プレート54との連結は複数のねじ68によって行われている。また、熱による影響を少なくするため、ねじをスリーブ構造としてもよい。
【0038】
以上のようにすることで、下型55を下型載置台57に対して浮上させることができ、ガイド穴35、36にガイドロッド48、49を嵌合させ、かつ軸28の先部をセンター位置決め穴31に装着させる作業が容易に行え、鉄心本体16を載せた下型55と上型18の位置合わせが容易にできる。
【0039】
続いて、図6図7を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置70について説明する。この実施の形態において、積層鉄心の製造装置70は、鉄心本体16の各磁石挿入孔24に下から樹脂を注入する方法に用いる装置であって、下型載置台71の中央に開口部72を有し、図示しないガイド部材に沿って昇降するプランジャホルダー73が開口部72に入るようになっている。
【0040】
プランジャホルダー73は、平面視して下型載置台71の開口部72の周囲に設けられた複数の樹脂溜めポット74に挿通するプランジャ75を備えている。なお、樹脂溜めポット74は下型本体81に設けられている。プランジャホルダー73は金属製のホルダー本体76を有している。なお、78はフランジャホルダー73を昇降する油圧アクチュエータを示す。
【0041】
下型載置台71の上には、下型80が配置されている。この下型80は上部の金属製の下型本体81と中間部の断熱プレート82と下部の金属製の底板プレート83とを有し、断熱プレート82及び底板プレート83には、下型載置台71に形成されている開口部72と同一直径の開口部84が形成され、プランジャホルダー73が嵌入するようになっている。なお、下型本体81と断熱プレート82は複数のねじ85によって、断熱プレート82と底板プレート83及び下型本体81は複数のねじ86によって連結されている。また、熱による影響を少なくするため、ねじをスリーブ構造としてもよい。
【0042】
そして、この実施の形態においては、底板プレート83の底部には窪み87〜90が、下型80のセンターを中心にして放射状に複数設けられ、下型載置台71の上面は平面となって、窪み87〜90に圧縮気体を吹き込む気体通路91が設けられている。この窪み87〜90と下型載置台71の上面で、それぞれ気体室が形成され、下型載置台71に対して下型80を浮上させる構造となっている。
【0043】
なお、この実施の形態では窪みは、下型80の底部に設けられていたが、下型載置台71の表面に窪みを設け、底板プレートの底面を平面にすることもできる。この実施の形態においては、下型80に樹脂溜めポット74が形成され、この樹脂溜めポット74には、搬送トレイ93の搬送台94に形成された貫通孔95が連通している。この場合、搬送台94に設けられた貫通孔(位置決め孔)に、下型80に設けられ先部がテーパー状となった位置決めピン30、30aが装着されて、搬送トレイ93の位置決めが行われている。
【0044】
この状態で、気体室に圧縮気体を入れて下型80を浮上させて、下型80のガイド穴35、36にガイドロッド48、49の先部が嵌入し、更に、搬送トレイ93の中央の軸28の先部をセンター用位置決め穴31に嵌入させて(図1図2参照)、下型80の位置決めを行う。この状態で、下型80を上昇させて、鉄心本体16の型締めを図示しない上型(図1図2参照)と下型80で行う。
【0045】
そして、樹脂溜めポット74に入れた樹脂が溶融した後、プランジャホルダー73を更に上昇させて、樹脂溜めポット74の樹脂を、鉄心本体16の磁石挿入孔24に充填する。この後、樹脂を硬化させて下型載置台71を下げて、樹脂封止が完了し、鉄心本体16に各永久磁石が樹脂封止された積層鉄心(回転子積層鉄心)の製造がなされる。
【0046】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
例えば、第1〜第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置の一部の構成要素を他の実施の形態に応用する場合や、組み合わせる場合も本発明は適用される。
即ち、気体室に充填されるのは空気のみとは限定されず、他の気体(例えば、窒素等)であってもよい。
また、第1、第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造装置において、鉄心本体の上にダミー板を配置し、樹脂封止された鉄心本体の上に残る樹脂滓を容易に除去するようにする場合も、本発明は適用される。
また、上型に対する下型の位置決めは、この実施の形態では、ガイド穴にガイドロッドを嵌入させて、更に軸の先部をセンター用位置決め穴に嵌入させることによっても行ったが、いずれか一方のみで位置決めを行ってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10:積層鉄心の製造装置、11:上部フレーム、12:ガイドポスト、13:下型載置台、14:下型、16:鉄心本体、17:補助ガイド部材、18:上型、19:固定架台、20:油圧アクチュエータ、21:プランジャ、22:ガイド孔、23:樹脂溜めポット、24:磁石挿入孔、26:軸孔、27:搬送台、28:軸、29:搬送トレイ、30、30a:位置決めピン、30b、30c:位置決め孔、31:センター用位置決め穴、33:下型本体、34:断熱プレート、35、36:ガイド穴、37〜41:窪み、42:気体供給路、43、44:垂直通路、45、46:気体取り入れ口、48、49:ガイドロッド、52:積層鉄心の製造装置、53:下型本体、54:断熱プレート、55:下型、56:底板プレート、57:下型載置台、58〜61:窪み、62〜65:気体通路、67、68:ねじ、70:積層鉄心の製造装置、71:下型載置台、72:開口部、73:プランジャホルダー、74:樹脂溜めポット、75:プランジャ、76:ホルダー本体、78:油圧アクチュエータ、80:下型、81:下型本体、82:断熱プレート、83:底板プレート、84:開口部、85、86:ねじ、87〜90:窪み、91:気体通路、93:搬送トレイ、94:搬送台、95:貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7