(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パルス生成部は、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とのそれぞれに、制御周期の等しい信号を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
上式(2)により前記容量負荷電圧が前記第1所定値より大きい場合の前記Duty値を算出する際に、前記容量負荷電圧に補正値を加算して前記Duty値を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の電力変換装置。
前記第1モードでは、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との一方を、第1所定期間においてOFFとし、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との他方を、前記第1所定期間において、ONとOFFとを交互に繰り返すことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の電力変換装置。
前記第3モードでは、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との一方を、第2所定期間においてONとし、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との他方を、前記第2所定期間において、ONとOFFとを交互に繰り返すことを特徴とする請求項1〜3、13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
第3所定期間における、前記第1スイッチング素子をONとしていた時間の累積値と、前記第2スイッチング素子をONとしていた時間の累積値とは等しいことを特徴とする請求項1〜3、13、14のいずれか1項に記載の電力変換装置。
前記第3モードにおける前記指令値は、前記第1モードにおける前記指令値、及び、前記第2モードにおける前記指令値よりも大きいことを特徴とする、請求項18に記載の電力変換装置。
前記第2モードにおいて、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との一方のON期間を一定とし、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との他方のON期間を変更することにより、前記電流値が前記指令値となるように制御することを特徴とする、請求項18又は19に記載の電力変換装置。
前記第2モードにおいて、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とのうち、ON期間を一定とした前記スイッチング素子のDuty値を50%以下とすることを特徴とする、請求項20に記載の電力変換装置。
前記第2モードにおいて、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子を共にOFFとするタイミングにおける前記電流値が、前記指令値となるように制御することを特徴とする、請求項18〜21のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0028】
<第1実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、公称電圧が12Vである鉛バッテリ等の二次電池と、公称電圧が数百Vであるリチウムイオンバッテリ等の高電圧蓄電池とを備えるハイブリッドカーに搭載される。
【0029】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置の回路図である。本実施形態に係る電力変換装置は、DCDCコンバータ10と、DCDCコンバータ10の入力端に接続された直流電源である二次電池20と、DCDCコンバータ10の出力端に並列接続された容量負荷30(平滑コンデンサ)と、DCDCコンバータ10の出力端に設けられた接続端子40a、40bを含んでいる。二次電池20に蓄積された電力はDCDCコンバータ10により変圧され、接続端子40a、40bから出力される。接続端子40a、40bから入力された電力は、DCDCコンバータ10により変圧され、二次電池20に入力される。接続端子40a、40bには、図示しない高電圧蓄電池、電気負荷、発電機等が接続されており、二次電池20との間で電力の授受が可能となっている。
【0030】
DCDCコンバータ10は、チョークコイル11と、トランスTrと、ブリッジ回路14と、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2とを備えている。
【0031】
トランスTrは、互いに磁気的に結合した第1コイルL1と第2コイルL2とにより構成され、第1コイルL1は、センタータップ13を有している。第2コイルL2の巻数は、第1コイルL1の巻数のN/2倍である。すなわち、第2コイルL2の巻数が、第1コイルL1のいずれか一方の端からセンタータップ13までの巻数のN倍となっている。第2コイルL2は、ブリッジ回路14、及び、DCDCコンバータ10の出力端を介して、容量負荷30に接続されている。
【0032】
ブリッジ回路14は、スイッチング素子及びダイオードを備えており、第1コイルL1側から第2コイルL2側へ電力を供給する際には整流回路として機能し、第2コイルL2側から第1コイルL1側へ電力を供給する際にはスイッチング回路として機能する。
【0033】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はMOSFETであり、第1コイルL1の両端は、それぞれ、第1スイッチング素子Q1のソース、第2スイッチング素子Q2のソースに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q1のドレイン及び第2スイッチング素子Q2のドレインは、共に、所定接続点12に接続されている。所定接続点12には、チョークコイル11の出力端が接続され、チョークコイル11の入力端は、DCDCコンバータ10の入力端を介して二次電池20の正極に接続されている。また、第1コイルL1のセンタータップ13は、DCDCコンバータ10の入力端を介して、二次電池20の負極に接続されている。なお、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2は、それぞれ、逆方向に並列接続された第1寄生ダイオードD1、第2寄生ダイオードD2を有している。
【0034】
DCDCコンバータ10は、入力電圧検出手段15、容量負荷電圧検出手段16、パルス生成部17、駆動回路18を備えている。入力電圧検出手段15は、二次電池20からチョークコイル11へ入力される電圧である入力電圧Vinを検出する。容量負荷電圧検出手段16は、容量負荷30の電圧である容量負荷電圧Vcを検出する。
【0035】
入力電圧検出手段15が検出した入力電圧Vin、及び、容量負荷電圧検出手段16が検出した容量負荷電圧Vcは、パルス生成部17に入力される。パルス生成部17は、入力された入力電圧Vin及び容量負荷電圧Vcに基づいて、第1スイッチング素子Q1の駆動信号である第1PWM信号、及び、第2スイッチング素子Q2の駆動信号である第2PWM信号を生成し、駆動回路18へ送信する。
【0036】
駆動回路18は、パルス生成部17から受信した第1PWM信号に基づいて第1スイッチング素子Q1を駆動し、第2PWM信号に基づいて第2スイッチング素子Q2を駆動する。
【0037】
本実施形態では、二次電池20に蓄積された電力により容量負荷30の充電を行う。この際に、DCDCコンバータ10は、電流入力型プッシュプルDCDCコンバータとして機能する。充電は、車両の電源がONとなった場合に、車両に搭載されているECU内で充電開始指令が生成され、開始される。一方、充電は、高電圧蓄電池の電圧に近い電圧を目標電圧とし、容量負荷電圧Vcが目標電圧となるまで行われる。なお、目標電圧は、ECU内のメモリに記憶されている値を用いてもよいし、高電圧蓄電池の電圧の測定値に基づいて目標電圧を演算してもよい。なお、充電開始指令、及び目標電圧の値を、車両外部から取得する手段を採用することもできる。
【0038】
図2(a)は、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2の両方をONとした場合の、回路に流れる電流の経路を示している。また、
図2(b)は、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2の両方をONとした場合の、等価回路を示している。この状態では、第1コイルL1は短絡状態であるため、第1コイルL1の電圧はゼロである。したがって、チョークコイル11には入力電圧Vinが印加される。
【0039】
チョークコイル11に流れる電流の単位時間あたりの増加量ΔI(A/s)は、チョークコイル11の自己インダクタンスをL(H)とすると、次式(3)で表される。
【0040】
ΔI=Vin/L…(3)
すなわち、チョークコイル電流は、直線的に増加する。なお、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2の両方をONとする期間を、期間αとする。
【0041】
図3(a)は、第1スイッチング素子Q1をONとし、第2スイッチング素子Q2をOFFとした場合の、回路に流れる電流の経路を示している。また、
図3(b)は、第1スイッチング素子Q1がONであり、第2スイッチング素子Q2がOFFである場合の等価回路を示している。ここで、DCDCコンバータ10は定常状態であり、トランスTrの第2コイルL2から出力される電圧である出力電圧Voutと、容量負荷電圧Vcが等しくなっているものとする。この状態では、入力電圧Vinと、容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値との大小関係によって、チョークコイル11に印加される電圧が正の値となるか、負の値となるかが決定される。チョークコイル11に印加される電圧が正の値となれば、チョークコイル電流は増加し、負の値となれば、チョークコイル電流は減少する。なお、第1スイッチング素子Q1がOFFであり、第2スイッチング素子Q2がONである場合にも、
図3(b)と同様の等価回路となる。なお、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2のいずれか一方をONとする期間を、期間βとする。
【0042】
チョークコイル電流の単位時間あたりの増減量ΔI(A/s)は、次式(4)で表される。
【0043】
ΔI=(Vin−Vc/N)/L…(4)
すなわち、入力電圧Vinが、容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値より大きければ、ΔIが正の値をとるため、チョークコイル電流は増加する。一方、入力電圧Vinが、容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値より小さければ、ΔIが負の値をとるため、チョークコイル電流は減少する。このことは、容量負荷30への充電の開始時等、容量負荷電圧Vcが小さい場合には期間βにおいても、容量負荷30への充電が行われるのに対し、容量負荷30への充電が進行し、容量負荷電圧Vcが大きくなれば、チョークコイル電流は減少し、期間βでの充電速度が低下することを意味する。
【0044】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方をOFFとした場合、チョークコイル11には入力電圧Vinとは逆極性の逆起電圧が生じ、チョークコイル電流は減少することとなる。なお、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2の両方をOFFとする期間を、期間γとする。
【0045】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の制御は、制御周期の長さがTsである第1モード、第2モード、及び、第3モードにより制御が行われる。第1モード、第2モード、及び、第3モードでは、それぞれ、第1スイッチング素子Q1のON期間の長さ、及び、第2スイッチング素子Q2のON期間の長さを、制御周期の長さTsで除算した値であるDuty値が異なっている。第1モード、第2モード、及び、第3モードは、容量負荷電圧Vcの値と、第1所定値V1、及び、第1所定値V1より小さい値である第2所定値V2との大小関係に基づいて、切り替えられる。
【0046】
容量負荷電圧Vcが第2所定値V2以下の場合には、第1モードで制御が行われ、容量負荷電圧Vcが第2所定値V2より大きく、且つ、第1所定値V1以下の場合には、第2モードで制御が行われ、容量負荷電圧Vcが第1所定値V1より大きい場合には、第3モードで制御が行われる。
【0047】
ここで、第2所定値V2は、期間βにおいてチョークコイル11に流れる電流が増加するように設定されている。すなわち、上式(4)で表されるΔIが正の値となるように設定されている。一方、第1所定値V1は、期間βにおいて、チョークコイル11に流れる電流が減少するように設定されている。すなわち、上式(4)で表されるΔIが負の値となるように設定されている。
【0048】
このとき、パルス生成部17が実行する一連の処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。
図4のフローチャートに係る制御は、所定の制御周期で実行される。
【0049】
まず、起動要求を取得したか否かを判定する(S101)。この起動要求の指令信号は、例えば、上位の制御装置であるECU等から送信される。起動要求を取得していない場合(S101:NO)、一連の制御を行わず、待機状態を継続する。
【0050】
起動要求を取得すれば(S101:YES)、容量負荷電圧Vcを取得し(S102)、その容量負荷電圧Vcが第2所定値V2以下であるか否かを判定する(S103)。容量負荷電圧Vcが第2所定値V2以下であれば(S103:YES)、第1モードでの制御を行う(S104)。容量負荷電圧Vcが第2所定値V2以下でなければ(S103:NO)、続いて、容量負荷電圧Vcが第1所定値V1以下であるか否かを判定する(S105)。容量負荷電圧Vcが第1所定値V1以下であれば(S105:YES)、第2モードで制御を行う(S106)。一方、容量負荷電圧Vcが第1所定値V1以下でなければ(S105:NO)、第3モードで制御を行う(S107)。
【0051】
第1モード、第2モード、第3モードのいずれかの制御が所定時間行われた後、制御の終了判定を行う(S108)。S108の処理では、例えば、再度容量負荷電圧Vcを取得し、その容量負荷電圧Vcが所定の上限値以上となったか否かを判定すればよい。なお、容量負荷電圧Vcが所定の上限値以上となったか否かの判定は、S105で否定的な判定がなされた後に行うものとしてもよい。制御を終了すると判定した場合(S108:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。制御を終了すると判定しない場合(S108:NO)、終了要求を取得したか否かを判定する(S109)。この終了要求の指令信号は、ECU等の上位の制御装置から送信される。終了要求を取得すれば(S109:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。終了要求を取得しなければ(S109:NO)、S102以降の処理を再度実行する。
【0052】
なお、
図4のフローチャートでは、容量負荷30への充電制御に関する制御のみを示しているが、DCDCコンバータ10は容量負荷30への充電制御以外の電力変換も行う。例えば、接続端子40a,40bを介して供給される電力を降圧し、二次電池20への充電を行う制御が挙げられる。その制御は、周知の制御であるため、説明を省略する。
【0053】
図5(a)は、第1モードで制御を行う際のPWM信号を示している。第1モードでは、第1PWM信号と第2PWM信号との位相差は、Ts/2差である。第1PWM信号と第2PWM信号は、共に、長さT1のON期間と、長さ(Ts−T1)のOFF期間とにより1制御周期が構成され、ON期間の長さT1は、Ts/2未満である。すなわち、T1/Tsにより示されるDuty値は、0.5未満である。したがって、第1モードでは、長さがT1の期間βと、長さが(Ts/2−T1)の期間γが交互に繰り返されることとなる。
【0054】
第1モードでは、期間βにおいて容量負荷30への充電が行われるとともに、チョークコイル電流が増加する。一方、期間γでは、期間βにおいて増加したチョークコイル電流が回路中で消費される。なお、ON期間の長さT1は、期間γにおいてチョークコイル電流がゼロとなるように設定されている。
【0055】
図5(b)は、第2モードで制御を行う際のPWM信号を示している。第2モードでは、第1PWM信号と第2PWM信号との位相差は、Ts差である。第1PWM信号と第2PWM信号は、共に、長さT2hのON期間から開始し、長さ(Ts−T2h)のOFF期間により終了する第1制御周期と、長さT2lのON期間から開始し、長さ(Ts−T2l)のOFF期間により終了する第2制御周期とが交互に繰り返される。すなわち、第1PWM信号の長さT2hのON期間が開始されるタイミングと、第2PWM信号の長さT2lのON期間が開始されるタイミングとは同じタイミングであり、第1PWM信号の長さT2lのON期間が開始されるタイミングと、第2PWM信号の長さT2hのON期間が開始されるタイミングとは同じタイミングである。さらに、第1制御周期における第1Duty値であるT2h/Tsの値と、第2制御周期における第2Duty値であるT2l/Tsとの和は、1未満である。
【0056】
したがって、第2モードでは、1制御周期の間に長さがT2lの期間α、長さが(T2h−T2l)の期間β、長さが(Ts−T2h)の期間γの順に繰り返されることとなる。
【0057】
第2モードでは、期間αにおいて、チョークコイル電流が増加し、期間βにおいて、入力電圧Vinと、容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値との大小関係に基づいて、チョークコイル電流が増加若しくは減少する。そして、期間γにおいて、期間α及び期間βにおいて増加したチョークコイル電流、若しくは、期間βにおいゼロとならなかったチョークコイル電流が回路中で消費される。なお、ON期間の長さT2h及びT2lは、期間γにおいてチョークコイル電流がゼロとなるように設定されている。
【0058】
図5(c)は、第3モードで制御を行う際のPWM信号を示している。第3モードでは、第1PWM信号と第2PWM信号との位相差は、Ts/2差である。第1PWM信号と第2PWM信号は、共に、長さT3のON期間と、長さ(Ts−T3)のOFF期間とにより、1制御周期が構成され、ON期間の長さT3は、制御周期の半分の長さであるTs/2より大きい。すなわち、T3/Tsにより示されるDuty値は、0.5より大きい。したがって、第3モードでは、長さが(T3−Ts/2)である期間αと、長さが(Ts−T3)である期間βとが、交互に繰り返されることとなる。
【0059】
第3モードでは、期間αにおいてチョークコイル電流が増加する。一方、期間βにおいて、チョークコイル電流が減少し、チョークコイル電流の減少に伴い、容量負荷30への充電が行われる。なお、ON期間の長さT3は、期間αにおけるチョークコイル電流の増加量と、期間βにおけるチョークコイル電流の減少量が等しくなるように設定されている。
【0060】
第3モードにおけるDuty値であり、0.5より大きい値であるDuty3は、容量負荷30への充電の進行に伴って変更される。また、Duty3は、第2モードから第3モードへと切り替わった際には、0.5より大きい初期値であるDuty0に設定される。
【0061】
第3モードでは、期間αにおける電流の増加量と、期間βにおける電流の減少量が等しくなる。したがって、上式(3)で表される、期間αにおける単位時間当たりの電流の増加量に、期間αの長さ(T3−Ts/2)を乗算した値と、上式(4)で表される、期間βにおける単位時間当たりの電流の増加量に、期間βの長さ(Ts−T3)を乗算した値との合計値はゼロとなるため、次式(5)が得られる。なお、この場合においては、容量負荷電圧Vcと出力電圧Voutが異なる場合を想定するため、上式(4)において、容量負荷電圧Vcを出力電圧Voutへと置換している。
【0062】
(T3−Ts/2)×Vin+(Ts−T3)×(Vin−Vout/N)=0…(5)
ここで、第3モードにおける、PWM信号のDuty値であるDuty3を用いて、上式(5)を変形すると、トランスTrの出力電圧Voutは、次式(6)で表される。
【0063】
Vout=N×Vin/(2×(1−Duty3))…(6)
ここで、第2モードから第3モードへと切り替わった場合、出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとの間に乖離が生じていた場合、回路が抵抗の無い理想的な回路であると仮定すると、大きさが無限大の突入電流が生じることとなる。また、回路が理想的な回路でなくても、突入電流が生じるおそれがある。
【0064】
そこで、第2モードから第3モードへと切り替わる条件である第1所定値V1について、第2モードから第3モードへと切り替わった際に、容量負荷電圧Vcの閾値である第1所定値V1と出力電圧Voutが等しくなるように、上述したDuty0を用いて次式(1)により設定する。
【0065】
V1=N×Vin/(2×(1−Duty0))…(1)
すなわち、第2モードから第3モードへと切り替わる際の容量負荷電圧Vcの値である第1所定値V1と、トランスTrの出力電圧Voutが等しくなるようにする。
【0066】
ここで、上述したように、第3モードにおけるDuty値であるDuty3の値は、容量負荷30の充電の進行に伴って変更される。そのため、Duty3の値の変更に伴い、出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとの間に乖離が生じた場合、回路が抵抗の無い理想的な回路であると仮定すると、大きさが無限大の突入電流が生じることとなる。また、回路が理想的な回路でなくても、突入電流が生じるおそれがある。そのため、上式(6)について、式を変形し、出力電圧Voutを容量負荷電圧Vcへと置換する。そして、得られた次式(2)によりDuty3の値を設定する。
【0067】
Duty3=1−N×Vin/(2×Vc)…(2)
すなわち、容量負荷電圧VcとトランスTrの出力電圧Voutが等しくなるようにDuty3を設定する。
【0068】
なお、容量負荷電圧Vcの初期値及び目標値によっては、第1〜第3モードのすべてが行われるわけではない。すなわち、容量負荷電圧Vcの初期値が第2所定値V2以下であり、且つ、容量負荷電圧Vcの目標値が第1所定値V1より大きい場合にのみ、第1〜第3モードにより、充電が行われる。一方、容量負荷電圧Vcの初期値が第2所定値V2以下でない場合、及び/又は、容量負荷電圧Vcの目標値が第1所定値V1以下の場合には、以下の制御が行われる。
【0069】
・容量負荷電圧Vcの目標値が、第2所定値V2以下である場合には、第1モードで充電を開始し、第2モード及び第3モードへ移行せず、第1モードで充電を終了する。
【0070】
・容量負荷電圧Vcの初期値が、第2所定値以下であり、容量負荷電圧Vcの目標値が、第2所定値V2より大きく、第1所定値V1以下である場合には、第1モードで充電を開始し、第3モードへ移行せず、第2モードで充電を終了する。
【0071】
・容量負荷電圧Vcの初期値が、第2所定値V2より大きく、第1所定値V1以下であり、容量負荷電圧Vcの目標値が、第2所定値V2より大きく、第1所定値V1以下である場合には、第1モードを経ず、第2モードで充電を開始し、第3モードへ移行せず、第2モードで充電を終了する。
【0072】
・容量負荷電圧Vcの初期値が、第2所定値V2より大きく、第1所定値V1以下であり、容量負荷電圧Vcの目標値が、第1所定値V1より大きい場合には、第1モードを経ず、第2モードで充電を開始し、第3モードで充電を終了する。
【0073】
・容量負荷電圧Vcの初期値が、第1所定値V1より大きい値である場合には、第1モード及び第2モードを経ず、第3モードで充電を開始し、第3モードで充電を終了する。
【0074】
上記構成により、本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0075】
・容量負荷30への充電の開始時等、容量負荷電圧Vcが小さい場合において、第1モードの制御を行うことにより、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のいずれか一方がOFFである期間βと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にOFFである期間γとを設けている。そのため、期間βにおいて増加したチョークコイル11の電流を、期間γで減少させることができる。よって、チョークコイル11に流れる電流が増加し続けることを防ぐことができ、ひいては、DCDCコンバータ10の劣化及び故障を抑制することができる。
【0076】
・容量負荷電圧Vcが第2所定値V2より大きくなった場合において、第2モードの制御を行うことにより、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にONである期間αと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のいずれか一方がOFFである期間βと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にOFFである期間γとを設けている。そのため、期間αでチョークコイル11に流れる電流を大きくすることができ、容量負荷30への充電速度を向上させることができる。また、期間γでチョークコイル11の電流を減少させることができる。よって、チョークコイル11に流れる電流が増加し続けることを防ぐことができ、ひいては、DCDCコンバータ10の劣化及び故障を抑制することができる。
【0077】
・容量負荷30への充電が進行した場合等、容量負荷電圧Vcが第1所定値V1より大きくなった場合には、第3モードの制御を行うことにより、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にONである期間αと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のいずれか一方がONである期間βを設けている。したがって、期間αにおいてチョークコイル11に流れる電流を増加させることができ、期間βにおいて、チョークコイル11に流れる電流を減少させることにより、充電が進行した容量負荷30への充電を迅速に行うことができる。
【0078】
・容量負荷電圧Vcが第1所定値V1を超えた際に、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとに差が生じていた場合、回路が抵抗値を有しない理想的な回路であると仮定すると、突入電流が生じるおそれがあり、これにより回路の破壊につながる可能性が高まる。本実施形態では、容量負荷電圧Vcが第1所定値V1を超えた際に、出力電圧Voutが容量負荷電圧Vcと等しくなるように第1所定値V1を設定しているため、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとの間に電位差が生じず、それにより、突入電流の発生を抑制することができる。
【0079】
・第3モードで制御を行う場合に、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとに差が生じていた場合、回路が抵抗値を有しない理想的な回路であると仮定すると、突入電流が生じるおそれがあり、これにより回路の破壊につながる可能性が高まる。本実施形態では、第3モードで制御を行う場合に、出力電圧Voutが容量負荷電圧Vcと等しくなるようにDuty3を設定しているため、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとの間に電位差が生じず、それにより、突入電流の発生を抑制することができる。
【0080】
<第2実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置と同様の回路であり、その制御方法が異なっている。本実施形態に係る電力変換装置では、第2モードでの制御を実施せず、第1モードで容量負荷電圧Vcが第1所定値V1となるまで充電を行い、容量負荷電圧Vcが第1所定値V1より大きくなれば、第3モードで充電を行う。ここで、第1所定値V1、及び、第3モードにおけるDuty値であるDuty3の値は、第1実施形態と同様に設定される。
【0081】
なお、容量負荷電圧Vcの初期値及び目標値によっては、第1モード及び第3モードが共に行われるわけではない。すなわち、容量負荷電圧Vcの初期値が第1所定値V1以下であり、且つ、容量負荷電圧Vcの目標値が第1所定値V1より大きい場合にのみ、第1モード及び第3モードにより、充電が行われる。一方、容量負荷電圧Vcの初期値が第1所定値V1より大きい場合、又は、容量負荷電圧Vcの目標値が第1所定値V1以下の場合には、以下の制御が行われる。
【0082】
・容量負荷電圧Vcの初期値が、第1所定値V1より大きい値である場合には、第1モードを経ず、第3モードで充電を開始し、第3モードで充電を終了する。
【0083】
・容量負荷電圧Vcの目標値が、第1所定値V1以下であった場合には、第1モードで充電を開始し、第3モードへ移行せず、第1モードで充電を終了する。
【0084】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置に準じた効果を奏する。
【0085】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る電力変換装置の回路図を示している。本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置と同様に、DCDCコンバータ10と、DCDCコンバータ10の入力端に接続された直流電源である二次電池20と、DCDCコンバータ10の出力端に並列接続された容量負荷30(平滑コンデンサ)と、DCDCコンバータ10の出力端に設けられた接続端子40a、40bとを含んでいる。
【0086】
DCDCコンバータ10は、チョークコイル11と、トランスTrと、ブリッジ回路14と、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2とを備えている。
【0087】
トランスTrは、互いに磁気的に結合した第1コイルL1と第2コイルL2とにより構成され、第1コイルL1は、センタータップ13を有している。第2コイルL2は、ブリッジ回路14、及び、DCDCコンバータ10の出力端を介して、容量負荷30に接続されている。
【0088】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2はMOSFETであり、第1コイルL1の両端は、それぞれ、第1スイッチング素子Q1のドレイン、第2スイッチング素子Q2のドレインに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q1のソース及び第2スイッチング素子Q2のソースは、共に、所定接続点12に接続されている。また、所定接続点12は、DCDCコンバータ10の入力端を介して、二次電池20の負極に接続されている。チョークコイル11の入力端は、DCDCコンバータ10の入力端を介して二次電池20の正極に接続され、チョークコイル11の出力端は、センタータップ13に接続されている。なお、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2は、それぞれ、逆方向に並列接続された第1寄生ダイオードD1、第2寄生ダイオードD2を有している。
【0089】
本実施形態に係る電力変換装置では、第1実施形態に係る電力変換装置の制御と同様の制御、又は、第2実施形態に係る電力変換装置の制御と同様の制御が行われる。そして、第1実施形態に係る電力変換装置と同様の効果、又は、第2実施形態に係る電力変換装置と同様の効果を奏する。
【0090】
<第4実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態又は第3実施形態に係る電力変換装置と同様の回路を用いており、第1モードにおけるDuty値の設定方法と、第2モードにおけるDuty値の設定方法とをより具体化している。本実施形態では、チョークコイル電流について、DCDCコンバータ10の劣化等のおそれが少なく許容することができる最大値として、第1モードについて第1許容最大値Imax1を設けており、第2モードについて第2許容最大値Imax2を設けている。この第1許容最大値Imax1及び第2許容最大値Imax2は、図示しないメモリ等に記憶されている。
【0091】
図7は、第1モードにおけるDuty値と第1許容最大値Imax1との関係を示している。上式(4)で表される期間βにおける単位時間当たりの電流の増加量ΔIに、期間βの長さT1、すなわち、制御周期であるTsとDuty値であるDuty1との積を乗算した値が、第1許容最大値Imax1となるように、次式(7)によりDuty1を設定する。なお、このとき、期間βにおいて、入力電圧Vin、容量負荷電圧Vc、及び、チョークコイルの自己インダクタンスであるLは、一定であると見なしている。
【0092】
Duty1=Imax1×L/{Ts(Vin−Vc/N)}…(7)
したがって、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とのいずれか一方をONとした後、期間βの長さT1経過後に、チョークコイル電流が第1許容最大値Imax1となる。
【0093】
図8は、第2モードにおけるDuty値と第2許容最大値Imax2とを示している。第2モードでは、期間αにおけるチョークコイル電流の増加量と、期間βにおけるチョークコイル電流の増加量との合計が、第2許容最大値Imax2となるように、期間αにおけるDuty値であるDuty2lと、期間αと期間βとの合算値に対応するDuty値であるDuty2hとを設定する。
【0094】
期間αにおけるチョークコイル電流の増加量は、上式(3)で表される期間αにおける単位時間当たりの電流の増加量ΔIに、期間αの長さT2lを乗算した値となる。このとき、期間αの長さT2lは、制御周期であるTsとDuty値であるDuty2lとの積として表される。そのため、期間αにおけるチョークコイル電流の増加量が第2許容最大値Imax2よりも小さくなるように、Duty2lを次式(8)により設定する。
【0095】
Duty2l<Imax2×L/(Ts×Vin)…(8)
一方、期間βにおけるチョークコイル電流の増加量は、上式(4)で表される期間βにおける単位時間当たりの電流の増加量ΔIに、期間βの長さ(T2h−T2l)を乗算した値となる。このとき、期間βの長さT2hは、制御周期であるTsと、Duty値の差分(Duty2h−Duty2l)との積として表される。そして、期間αにおけるチョークコイル電流の増加量と、期間βにおけるチョークコイル電流の増加量との合計値が、第2許容最大値Imax2となるように、次式(9)により、Duty2hを設定する。このとき、上式(8)で設定したDuty2lを用いる。なお、期間α及び期間βにおいて、入力電圧Vin、容量負荷電圧Vc、及び、チョークコイルの自己インダクタンスであるLは、一定であると見なしている。
【0096】
Duty2h=(Imax2×L−Vc×Duty2l×Ts/N)/{Ts(Vin−Vc)/N}…(9)
したがって、第2モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にONとした後、期間αと期間βとの合計の長さT2h経過後に、チョークコイル電流が第2許容最大値Imax2となる。
【0097】
なお、第1許容最大値Imax1と第2許容最大値Imax2とは、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。また、本実施形態を、第2実施形態に係る電力変換装置に適用した場合には、第1モードの制御について、上述したDuty1の設定を行えばよい。
【0098】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1〜3実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0099】
・第1モード、第2モードのそれぞれにおいて、チョークコイル電流が第1許容最大値Imax1、第2許容最大値Imax2を超えないように、Duty値であるDuty1、Duty2l、Duty2hを設定している。ゆえに、チョークコイル電流が過剰に増加することがなく、DCDCコンバータ10の劣化や故障を抑制することができる。
【0100】
<第5実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態又は第3実施形態に係る電力変換装置と同様の回路を用いており、その制御方法が異なっている。本実施形態に係る電力変換装置では、第1実施形態と同様に第1〜第3モードの制御を行うものの、各モードにおける制御信号が異なっている。
【0101】
図9(a)は、本実施形態における第1モードの制御信号を示している。第1モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とのそれぞれに、制御周期Tsが共通しており、互いに制御周期Tsの半周期の位相差をもつ制御信号を送信する。なお、制御信号は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のそれぞれに対して、ON状態とOFF状態との一方を指示する、ON信号とOFF信号の一方である。
【0102】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の制御信号は、それぞれ、制御周期Tsの半周期において、長さT1(<Ts/4)のON期間と、長さ(Ts/4−T1)のOFF期間とが交互に2回ずつ繰り返される。続く半周期(第1所定期間)では、OFF状態が継続される。
【0103】
すなわち、第1モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方のOFF状態を継続し、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の他方のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す制御を行う。こうすることにより、第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方がONであり、他方がOFFである期間βと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方がOFFである期間γとが、交互に繰り返されるものとすることができる。
【0104】
図9(b)は、本実施形態における第2モードの制御信号を示している。第2モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とのそれぞれに、制御周期Tsが共通しており、互いに制御周期Tsの半周期の位相差をもつ制御信号を送信する。
【0105】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の制御信号は、それぞれ、制御周期Tsの半周期において、長さT2h(<Ts/4)のON期間と、長さ(Ts/4−T2h)のOFF期間とが交互に2回ずつ繰り返される。続く半周期(第1所定期間)では、長さT2l(<Ts/4)のON期間と、長さ(Ts/4−T2l)のOFF期間とが交互に2回ずつ繰り返される。このとき、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の制御信号のそれぞれにおいて、長さT2hのON期間が開始されるタイミングと、長さT2lのON期間が開始されるタイミングとは、互いにTs/2周期ずれている。したがって、第1スイッチング素子Q1のON期間が開始されるタイミングと、第2スイッチング素子Q2のON期間が開始されるタイミングとは、一致する。
【0106】
こうすることにより、第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方がONである期間αと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方がONであり、他方がOFFである期間βと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方がOFFである期間γとが、順に繰り返されるものとすることができる。
【0107】
図9(c)は、本実施形態における第3モードの制御信号を示している。第3モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とのそれぞれに、制御周期Tsが共通しており、互いに制御周期Tsの半周期の位相差をもつ制御信号を送信する。
【0108】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の制御信号は、それぞれ、制御周期Tsの半周期において、長さT3’(<Ts/4)のON期間と、長さ(Ts/4−T3’)のOFF期間とが交互に2回ずつ繰り返される。続く半周期(第1所定期間)では、OFF状態が継続される。
【0109】
すなわち、第3モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方のON状態を継続し、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の他方のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す制御を行う。こうすることにより、第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2が共にONである期間αと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方がONであり、他方がOFFである期間βとが、交互に繰り返されるものとすることができる。
【0110】
なお、第1〜第3モードにおいて、1/2制御周期において、ON期間をそれぞれ2回ずつ設けるものとしているが、3回以上設けるものとしてもよい。
【0111】
加えて、第1〜第3モードにおける第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON期間の長さは、第1実施形態と同様に設定すればよい。また、第1モード及び第2モードにおける第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON期間の長さは、第4実施形態と同様に設定してもよい。
【0112】
また、第2実施形態のごとく、第1、第3モードの制御のみを実施し、第2モードを実施しないものとしてもよい。
【0113】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、上記各実施形態に準ずる効果を奏する。
【0114】
<第6実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態又は第3実施形態に係る電力変換装置と同様の回路を用いており、その制御方法が異なっている。本実施形態に係る電力変換装置では、第1実施形態と同様に第1〜第3モードの制御を行うものの、各モードにおける制御信号が異なっている。
【0115】
図10(a)〜(c)は、それぞれ、本実施形態における第1〜第3モードの制御信号を示している。
【0116】
図10(a)に示すように、第1モードでは、t0〜t2の所定期間(第1所定期間)において、第2スイッチング素子Q2のOFF状態を継続し、第1スイッチング素子Q1のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す。また、t1〜t4の所定期間(第1所定期間)は、第1スイッチング素子Q1のOFF状態を継続し、第2スイッチング素子Q2のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す。さらに、t3〜t5の所定期間(第1所定期間)は、第2スイッチング素子Q2のOFF状態を継続し、第1スイッチング素子Q1のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す。
【0117】
このとき、第1スイッチング素子Q1のOFF状態を継続する所定期間と、第2スイッチング素子Q2のOFF状態を継続する所定期間とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。また、第1スイッチング素子Q1のOFF状態を継続する所定期間のそれぞれについても、同じ長さであっても、異なる長さであってもよい。第2スイッチング素子Q2についても同様である。加えて、一方をOFF状態としている間における、他方のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す回数は、何回でもよく、また、それぞれは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。例えば、
図10(a)におけるt0〜t2の所定期間(第1所定期間)に、第1スイッチング素子Q1を1回ないし2回ON状態としてもよく、t1〜t4の所定期間(第1所定期間)に、第2スイッチング素子Q2を複数回ON状態としてもよい。
【0118】
すなわち、第1モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方のOFF状態を継続し、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の他方のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す制御を行う。こうすることにより、第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方がONであり、他方がOFFである期間βと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方がOFFである期間γとが、交互に繰り返されるものとすることができる。
【0119】
図10(b)に示すように、第2モードでは、t0において第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にONとし、t1において、第2スイッチング素子Q2をOFFとし、t2において、第1スイッチング素子Q1をOFFとする。このOFF期間はt3まで継続される。したがって、t0〜t1は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2が共にONである期間αとなり、t1〜t2は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方のみがONである期間βとなり、t2〜t3は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2が共にOFFである期間γとなる。同様に、t3において第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にONとし、t4において、第2スイッチング素子Q2をOFFとし、t5において、第1スイッチング素子Q1をOFFとする。このOFF期間はt6まで継続される。
【0120】
続いて、t6において第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にONとし、t7において、第1スイッチング素子Q1をOFFとし、t8において、第2スイッチング素子Q2をOFFとする。ゆえに、T7〜t8の期間βでは、ON状態であるスイッチング素子が、t1〜t2の期間β及びt4〜t5の期間βと、異なっている。
【0121】
なお、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の一方を、常に先にOFFとする制御をおこなってもよい。
【0122】
すなわち、第2モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にONとする制御と、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方をONとし、他方をOFFとする制御と、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にONとする制御とが、順に繰り返されるものとすることができる。
【0123】
図10(c)に示すように、第3モードでは、t0〜t2の所定期間(第2所定期間)において、第2スイッチング素子Q2のON状態を継続し、第1スイッチング素子Q1のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す。また、t1以後の所定期間(第2所定期間)は、第1スイッチング素子Q1のON状態を継続し、第2スイッチング素子Q2のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す。
【0124】
このとき、第1スイッチング素子Q1のON状態を継続する所定期間と、第2スイッチング素子Q2のON状態を継続する所定期間とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。また、第1スイッチング素子Q1のON状態を継続する所定期間のそれぞれについても、同じ長さであっても、異なる長さであってもよい。第2スイッチング素子Q2についても同様である。加えて、一方をON状態としている間における、他方のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す回数は、何回でもよく、また、それぞれは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。例えば、
図10(c)におけるt0〜t2の所定期間(第2所定期間)に、第1スイッチング素子Q1を1回のみ、もしくは3回以上ON状態としてもよく、t1以後の所定期間(第1所定期間)に、第2スイッチング素子Q2を1回のみ、もしくは3回以上ON状態としてもよい。
【0125】
すなわち、第3モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方のON状態を継続し、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の他方のON状態とOFF状態とを交互に繰り返す制御を行う。こうすることにより、第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方がONである期間αと、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方がONであり、他方がOFFである期間βとが、交互に繰り返されるものとすることができる。
【0126】
本実施形態での、第1モード及び第2モードにおける第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON期間は、上記第4実施形態のごとく、チョークコイル電流が第1許容最大値Imax1及び第2許容最大値Imax2を超えないように設定してもよい。また、第3モードにおける第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のON期間は、上記第1実施形態のごとく設定してもよい。
【0127】
なお、
図10(a)〜(c)で示した制御信号は一例に過ぎず、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の制御は、第1〜第3モードが実行できればよい。
【0128】
加えて、本実施形態では、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2について、それぞれのON時間の累積値を算出するタイマをさらに備えている。そして、所定期間(第3所定期間)において、第1スイッチング素子Q1のON時間の累積値と、第2スイッチング素子Q2のON時間の累積値が等しくなるように、制御を行う。こうすることにより、DCDCコンバータ10の偏磁を防ぐことができるとともに、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の損失及び発熱を均等化することができる。
【0129】
このとき、第1〜第3モードのそれぞれにおいて、第1スイッチング素子Q1のON時間の累積値と、第2スイッチング素子Q2のON時間の累積値とが等しくなるようにしてもよい。また、所定期間(第3所定期間)が複数のモードに亘ってもよい。この場合には、例えば、第1モードにおいて、一方のON時間の累積値と他方のON時間の累積値との間に差が生じていれば、第2モードや第3モードにおいて、その差を埋めるように制御を行えばよい。
【0130】
また、容量負荷30への充電が終了した時点で、第1スイッチング素子Q1のON時間の累積値と、第2スイッチング素子Q2のON時間の累積値との間に差が生じていれば、次回の充電の際に、その差を埋めるように制御を行えばよい。
【0131】
なお、第1スイッチング素子Q1の累積ON時間と第2スイッチング素子Q2の累積ON時間とが等しくなるように制御を行うものの、「等しくなる」という概念は、完全に一致することのみを意味するわけではなく、所定の誤差を許容する。
【0132】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、上記各実施形態に準ずる効果を奏する。
【0133】
<第7実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置と回路構成が一部異なっており、且つ、パルス生成部17が実行する処理が異なっている。
図11に本実施形態に係る電力変換装置の回路図を示す。
【0134】
電力変換装置は、電流検出手段19をさらに備えている。この電流検出手段19は、チョークコイル11に流れる電流であるリアクトル電流ILを検出し、パルス生成部17に入力する。なお、その他の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、電力変換装置を、
図6で示した第3実施形態に係る回路構成に準ずるものとしてもよい。
【0135】
続いて、本実施形態に係るパルス生成部17が実行する処理について、
図12を用いて説明する。
【0136】
定電流制御部50では、第1モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第1指令値Iref1と、第2モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第2指令値Iref2と、第3モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第3指令値Iref3とを、メモリから読み出して制御に用いる。
【0137】
第1指令値Iref1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方がONである状態から、共にOFFである状態へと遷移した場合に、第1指令値Iref1の値に基づいて発生するアバランシェ電流が過剰とならないように、設定されている。この第1指令値Iref1は、そのまま、定電流制御部50から出力される。
【0138】
第2指令値Iref2は第1指令値Iref1と同じ値でもよく、異なる値でもよい。すなわち、アバランシェ電流が過剰なものとならないように、第2指令値Iref2が設定されている。
【0139】
一方、電流補正部51には、入力電圧Vin及び容量負荷電圧Vcが入力され、第2指令値Iref2に加算する補正値を出力する。この補正値は、加算部52において第2指令値Iref2に加算され、第2補正指令値Iref2’を出力する。なお、入力電圧Vin及び容量負荷電圧Vcと、第2指令値Iref2に加算する補正値との関係は、演算により求めてもよく、記憶されたテーブルに基づいて得るものとしてもよい。
【0140】
この第2指令値Iref2に基づいて制御される第2モードでは、第1スイッチング素子Q1のDuty値は50%に固定し、第2スイッチング素子Q2のDuty値を変更している。具体的には、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2がONである期間αにおいて、リアクトル電流ILが補正された第2補正指令値Iref2’となり、第1スイッチング素子Q1がONであり、第2スイッチング素子Q2がOFFである期間βにおいてリアクトル電流ILが第2指令値Iref2となるように、第2スイッチング素子Q2のDuty値を変更している。
【0141】
第2指令値Iref2と第2補正指令値Iref2’との関係について、
図13(a)〜(c)を用いて詳述する。
【0142】
図13(a)は、入力電圧Vinが、容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値よりも大きい場合のリアクトル電流ILを示している。この場合では、第1スイッチング素子Q1がONであり、第2スイッチング素子Q2がOFFである期間βにおいて、リアクトル電流ILが増加する。そのため、第2スイッチング素子Q2をOFFとするタイミングでのリアクトル電流ILを第2指令値Iref2とした場合、リアクトル電流ILが過剰となるおそれがある。そこで、第1スイッチング素子Q1をOFFとするタイミングにおいて、リアクトル電流ILが第2指令値Iref2となるように、期間αに相当する第2スイッチング素子Q2のON期間を設定する。
【0143】
図13(b)は、入力電圧Vinが、容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値と等しい場合の、リアクトル電流ILを示している。この場合では、期間βにおいて、リアクトル電流ILは増減しない。このため、第2指令値Iref2と第2補正指令値Iref2’とは等しい値となる。
【0144】
図13(c)は、入力電圧Vinが、容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値よりも小さい場合のリアクトル電流ILを示している。この場合では、期間βにおいて、リアクトル電流ILは減少する。そのため、第2スイッチング素子Q2をOFFとするタイミングでのリアクトル電流ILを第2指令値Iref2とした場合、期間βでのリアクトル電流ILの減量に伴い、充電時間が増加することとなる。そこで、第1スイッチング素子Q1をOFFとするタイミングにおいて第2指令値Iref2となるように、期間αに相当する第2スイッチング素子Q2のON期間を設定する。
【0145】
第3指令値Iref3は、フィードバック制御部53に入力される。この第3指令値Iref3は、第1指令値Iref1及び第2指令値Iref2よりも十分に大きい値としている。フィードバック制御部53は、加えて、リアクトル電流ILの実電流である平均値IL_aveを取得する。この平均値IL_aveは、電流検出手段19により検出されたリアクトル電流ILを所定期間蓄積し、その値を平均化したものである。第3指令値Iref3と平均値IL_aveは加算部54に入力され、加算部54は、第3指令値Iref3と平均値IL_aveの差分をとる。この差分はPI制御器55に入力され、リミッタ56へ入力される。このリミッタ56では、PI制御器55の出力値が上限値よりも大きければ、その出力値を上限値に制限する。リミッタ56からの出力値は、加算器57において第3指令値Iref3に加算され、フィードバック制御部53から出力される。
【0146】
一方、電流補正部58には、入力電圧Vin及び容量負荷電圧Vcが入力され、第3指令値Iref3の補正値を出力する。この補正値は、加算部59において第3指令値Iref3に加算され、第3補正指令値Iref3’を出力する。これは、第2モードと同様に、第1スイッチング素子Q1がONであり第2スイッチング素子Q2がOFFである期間βでは、入力電圧Vin及び容量負荷電圧Vcにより、リアクトル電流ILの減少量が変化するため、この減少量を考慮した補正値を加算する必要があるためである。加えて、後述するスロープ補償部73により生ずる、第3指令値Iref3と平均値IL_aveとの乖離を補正する必要もあるためである。
【0147】
定電流制御部50から出力された第1指令値Iref1、第2補正指令値Iref2’、及び第3補正指令値Iref3’は、モード選択部60に入力される。モード選択部60には、さらに、容量負荷電圧Vcも入力され、その容量負荷電圧Vcと、第1所定値V1及び第2所定値V2とを比較し、第1指令値Iref1、第2補正指令値Iref2’、及び第3補正指令値Iref3’のいずれを出力するかを決定して出力する。
【0148】
モード選択部60から出力された第1指令値Iref1、第2補正指令値Iref2’、及び第3補正指令値Iref3’のいずれかは、ピーク電流制御部70に入力される。これら第1指令値Iref1、第2補正指令値Iref2’、及び第3補正指令値Iref3’のいずれかは、DA変換器71においてアナログ値に変換され、コンパレータ72のマイナス端子に入力される。
【0149】
一方、ピーク電流制御部70のスロープ補償部73は、レジスタの値により得られるスロープ信号を生成し、DA変換器74に入力する。このスロープ信号は、各制御周期において0Aから直線的に単調増加する鋸歯状波の信号である。そして、DA変換器74によりアナログ波形とされたスロープ信号とリアクトル電流ILとを、加算部75において加算して、コンパレータ72のプラス端子に入力する。なお、スロープ補償部73は、直接アナログ波形を生成し、DA変換器74を介さずコンパレータ72に入力するものとしてもよい。
【0150】
このスロープ補償部73は、第1モード及び第2モードでは、スロープ信号の値をゼロとし、第3モードでは、上述した鋸歯状波のスロープ信号を出力するものとしている。これは、第1モード及び第2モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にOFFとするタイミングにおいて、リアクトル電流ILがゼロとなり、その結果として低調波発振現象が発生しないためである。
【0151】
コンパレータ72は、マイナス端子に入力された、第1指令値Iref1、第2補正指令値Iref2’、第3補正指令値Iref3’のいずれかと、プラス端子に入力された、リアクトル電流ILにスロープ信号が加算された値との比較を行う。そして、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも小さい期間において、ハイ状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力し、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも大きい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力する。また、RSフリップフロップ77のR端子には、クロック76からクロック信号が入力される。
【0152】
RSフリップフロップ77は、第1モードにおいて、入力された信号がハイ状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の一方をONとし、他方をOFFとする信号を送信する。一方、第1モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を共にOFFとする信号を出力する。
【0153】
RSフリップフロップ77は、第2モードにおいて、入力された信号がハイ状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にONとする信号を送信する。一方、第2モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号であれば、制御周期の半周期まで、すなわち、Duty値が50%となるまでは、第1スイッチング素子Q1をONとし、第2スイッチング素子Q2をOFFとする信号を出力する。そしてDuty値が50%を超えれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を共にOFFとする信号を出力する。なお、入力された信号がロー状態の信号である場合において、Duty値が50%となるまで第1スイッチング素子Q1をONとする制御を、Duty制限部78により処理により行ってもよい。
【0154】
RSフリップフロップ77は、第3モードにおいて、入力された信号がハイ状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを共にONとする信号を送信する。一方、第3モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号であれば、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との一方をONとし、他方をOFFとする信号を出力する。
【0155】
RSフリップフロップ77の出力は、Duty制限部78によってDuty値の上限値及び下限値を設定された上で、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を駆動する駆動回路18に出力される。具体的には、第1モードでは、第1スイッチング素子Q1のON期間と第2スイッチング素子Q2のON期間とが重ならないように、それぞれのDuty値の上限値を50%以下とする。第2モードでは、上述したとおり、第1スイッチング素子Q1のDuty値を50%としている。このため、第2モードでは、第2スイッチング素子Q2のDuty値が第1スイッチング素子Q1のDuty値よりも大きくならないように、上限値を設定する。第3モードでは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のON期間とが重なる期間が生ずるように、Duty値の下限値を50%よりも大きい値とする。
【0156】
上記構成により、本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0157】
・ピーク電流制御部70において、定電流制御部50から入力された第1指令値Iref1、第2補正指令値Iref2’、及び第3補正指令値Iref3’を用いて定電流制御を行っている。これにより、入力電圧Vinに変化が生じた場合等において、過電流に対するロバスト性を向上させることができる。
【0158】
・第2モードにおいて、一方のスイッチング素子のDuty値を固定し、ピーク電流制御を、他方のスイッチング素子のON期間を変更することにより行っている。そのため、2つのスイッチング素子Q1,Q2のDuty値を共に変更する場合と比べて制御を簡略化することができる。ひいては、過電流に対するロバスト性を向上させることができる。
【0159】
・第2モードにおいて、固定したDuty値を50%以下としているため、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2が共にOFFである期間γを十分に長くとることができる。ゆえに、期間γにおいて、トランスTrに流れる励磁電流を十分に減少させることができ、トランスTrの偏磁、飽和を抑制することができる。
【0160】
・第1モードの第1指令値Iref1、及び、第2モードの第2指令値Iref2と、第3モードの第3指令値Iref3とを、乖離した値としている。これにより、第1モード及び第2モードでは、リアクトル電流ILが過剰とならない。ゆえに、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を共にOFFとした場合に、リアクトル電流ILに基づいて生ずるアバランシェ電流が過度に大きくならず、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の故障及び劣化を抑制することができる。加えて、第3モードでは第3指令値Iref3をより大きな値とすることにより、充電時間を短縮することができる。
【0161】
・第2モードの定電流制御において、容量負荷電圧Vcと入力電圧Vinとを用いて第2指令値Iref2を補正し、第2補正指令値Iref2’を得ている。そして、この第2補正指令値Iref2’により、第2スイッチング素子Q2のON期間を定めている。これにより、入力電圧Vinが容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値よりも大きい場合には、第2補正指令値Iref2’は第2指令値Iref2よりも小さくなり、期間βにおいてリアクトル電流ILが増加した後、第2指令値Iref2となる。そのため、アバランシェ電流が過剰に大きくなる事態を抑制することができる。一方、入力電圧Vinが容量負荷電圧Vcを巻数比Nで除算した値よりも小さい場合には、第2補正指令値Iref2’は第2指令値Iref2よりも大きくなり、期間βにおいてリアクトル電流ILが減少した後、第2指令値Iref2となる。そのため、期間αにおいて、リアクトル電流ILをより大きくすることができ、充電期間を短縮することができる。
【0162】
<変形例>
・上記第1実施形態において、第2モードから第3モードへと切り替える際に、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとが等しくなるように第1所定値V1を設定した。しかしながら、第1所定値V1を所定の補正値ΔV1を用いて補正し、第1所定値V1を次式(7)により設定してもよい。
【0163】
V1=N×Vin/(2×(1−Duty0))−ΔV1…(7)
トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとに差が生じていたとしても、実際には直ちに大電流が生じるとは限らない。すなわち、容量負荷30、配線、第1コイルL1、第2コイルL2の抵抗、各スイッチング素子における損失や、各PWM信号の指令値と実際のDuty値との差異等によって、実際の出力電圧Voutと、理論値との間に差が生じる。そのため、実際には、電流値が無限大となることはない。そして、その電流値が回路中の素子の耐電流より小さい電流値であるならば、その発生を許容することができる。
【0164】
ところで、第3モードの制御を行った場合、上述したとおり、容量負荷30への充電速度を上昇させることができる。したがって、第1所定値V1から正の補正値であるΔV1を減算し、第3モードの制御をより早期に開始することにより、第1所定値V1として理論値を用いる場合と比較して、容量負荷30への充電速度を上昇させることができる。
【0165】
なお、補正値ΔV1は、負の値とすることもできる。この場合は、第1所定値V1が大きくなり第3モードへの移行が遅れるため、容量負荷30への充電速度は低下する。一方、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとの差により発生する電流を、より一層抑制することができ、回路中の素子へ負荷をかけない回路とすることができる。
【0166】
・上記第1実施形態において、第3モードの制御を行う際に、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとが等しくなるようにDuty3を設定した。しかしながら、容量負荷電圧Vcを所定の補正値ΔVcを用いて補正し、Duty3を次式(8)により設定してもよい。
【0167】
Duty3=1−N×Vin/(2×(Vc+ΔVc))…(8)
上述の通りトランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとに差が生じていたとしても、実際には直ちに大電流が生じるとは限らない。そこで、Duty3を算出する際に、容量負荷電圧Vcに補正値ΔVcを加算することにより、Duty3を理論値より大きくすることができる。これにより、チョークコイル11への入力電圧Vinの印加時間を長くして充電に用いる電流をより大きくすることができ、ひいては、充電の速度をより上昇させることができる。また、補正値ΔVcは、上記の補正値ΔV1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また、補正値ΔVcを、容量負荷電圧Vcの上昇に伴って変化させてもよい。
【0168】
なお、補正値ΔV1は、負の値とすることもできる。この場合は、Duty3の値が小さくなり、チョークコイル11の電流が増加する期間である期間αが短くなるため、容量負荷30への充電速度は低下する。一方、トランスTrの出力電圧Voutと容量負荷電圧Vcとの差により発生する電流を、より一層抑制することができ、回路中の素子へ負荷をかけない回路とすることができる。
【0169】
・上記第1実施形態において、出力電圧Voutが第2所定値V2以下の場合に第1モードとし、出力電圧Voutが第2所定値V2より大きく第1所定値V1以下の場合に第2モードとし、出力電圧Voutが第1所定値V1より大きい場合に第3モードとした。しかしながら、出力電圧Voutが第2所定値V2より小さい場合に第1モードとし、出力電圧Voutが第2所定値V2以上であり第1所定値V1より小さい場合に第2モードとし、出力電圧Voutが第1所定値V1以上の場合に第3モードとしてもよい。第3実施形態についても同様である。
【0170】
・上記第1実施形態において、第1モード、第2モード、及び、第3モードの制御周期は、等しい値であるとしたが、各モードにおいて、制御周期が異なっていてもよい。すなわち、各モードにおいて、第1PWM信号の制御周期と第2PWM信号の制御周期とが等しければよい。また、上記第2実施形態において、第1モードと第3モードの制御周期を異なる値としてもよい。第3実施形態についても同様である。
【0171】
・上記各実施形態において、第1モードの期間γの終了時においてチョークコイル電流がゼロとなるように、ON期間の長さT1を設定することが好ましいが、必ずしもこの限りではない。期間γの終了時にチョークコイル電流がゼロとならないように、ON期間の長さT1を設定した場合には、第1モードの制御が繰り返されることにより、チョークコイル電流は漸増する。この場合には、漸増するチョークコイル電流が、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の定格電流値を超えないように、ON期間の長さT1を設定すればよい。
【0172】
・上記第1実施形態及び第3実施形態において、第2モードの期間γの終了時にチョークコイル電流がゼロとなるように、ON期間の長さT2h及びT2lを設定することが好ましいが、必ずしもこの限りではない。期間γの終了時にチョークコイル電流がゼロとならないように、ON期間の長さT2h及びT2lを設定した場合には、第2モードの制御が繰り返されることにより、チョークコイル電流は漸増する。この場合には、漸増するチョークコイル電流が、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の定格電流値を超えないように、ON期間の長さT2h及びT2lを設定すればよい。
【0173】
・上記各実施形態において、期間αにおけるチョークコイル電流の増加量と、期間βにおけるチョークコイル電流の減少量が等しくなるように、ON期間の長さT3を設定することが好ましいが、必ずしもこの限りではない。期間αにおけるチョークコイル電流の増加量よりも、期間βにおけるチョークコイル電流の減少量が小さくなるように、ON期間の長さT3を設定した場合には、第3モードの制御が繰り返されることにより、チョークコイル電流は漸増する。この場合には、漸増するチョークコイル電流が、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の定格電流値を超えないように、ON期間の長さT3を設定すればよい。
【0174】
・上記第1実施形態の第1モードにおいて、第1スイッチング素子Q1をONとするタイミングから、次に第1スイッチング素子Q1をONとするタイミングまでを1制御周期と定義しているが、制御周期の定義はこれに限られない。例えば、第1スイッチング素子Q1をOFFとするタイミングから、次に第1スイッチング素子Q1をONとするタイミングまでを1制御周期としてもよい。他のモードにおいても同様に、制御周期の定義は、上記の実施形態に限られることはない。また、上記第5実施形態における1制御周期の定義も、上記の例に限られることはない。例えば、
図8(a)に示した第1モードの制御において、1/4制御周期としている、期間βと期間γをそれぞれ1回ずつ含む制御周期を、1制御周期として定義してもよい。また、この場合においても、制御周期の始期を、スイッチング素子をOFFとするタイミングとしてもよい。
【0175】
・上記第7実施形態において、第2指令値Iref2を補正するものとしたが、この補正を行わないものとしてもよい。この場合には、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の一方をOFFとしたタイミングで、リアクトル電流ILが第2指令値Iref2となる。また、このような制御を行う場合では、ON期間の短いほうのスイッチング素子のON期間を一定とし、他方のスイッチング素子のON期間を変更するものとしてもよいし、両方のスイッチング素子のON期間を可変としてもよい。
【0176】
・上記第7実施形態において、第2実施形態のごとく、第2モードの制御を行わないものとしてもよい。
【0177】
・上記各実施形態において、電力変換装置がハイブリッドカーに備えられるものとしたが、ハイブリッドカー以外においても適用可能である。また、DCDCコンバータ10を、双方向に電力の授受を可能なものとしたが、第1コイルL1側から第2コイルL2側への電力の供給のみが可能なものとしてもよく、その場合には、ブリッジ回路14をダイオードブリッジ回路とすればよい。