特許第6013707号(P6013707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013707
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ゴムクローラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   B62D55/253 D
   B62D55/253 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-98183(P2011-98183)
(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公開番号】特開2012-228941(P2012-228941A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年3月28日
【審判番号】不服2015-16950(P2015-16950/J1)
【審判請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 小原 一郎
【審判官】 一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−14783(JP,U)
【文献】 再公表特許第2008/015734(JP,A1)
【文献】 特開2006−46630(JP,A)
【文献】 特開2009−41674(JP,A)
【文献】 特開2009−126396(JP,A)
【文献】 特開平10−236347(JP,A)
【文献】 特開平8−142942(JP,A)
【文献】 再公表特許第2005/002952(JP,A1)
【文献】 特開2001−334970(JP,A)
【文献】 特開2005−240870(JP,A)
【文献】 特開平6−156331(JP,A)
【文献】 実開平5−65780(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/00 - 55/32
E02F 9/00 - 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料で形成された無端帯状のクローラ本体と、
該クローラ本体にクローラ周方向に間隔をあけて配設された複数の芯金と、を備え、
該芯金は、前記クローラ本体に埋設された翼部と、該翼部から前記クローラ本体の内周面側に向けて突出する突起部と、を備えるゴムクローラを形成するゴムクローラの製造方法であって、
前記翼部および前記突起部のうち、前記突起部に設けられた凸部を、前記翼部に設けられた凹部に圧入させることにより、前記翼部と前記突起部とを連結する圧入工程を有し、
該圧入工程の際、前記突起部の硬度を、前記翼部の硬度よりも低くしておくことを特徴とするゴムクローラの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のゴムクローラの製造方法であって、
前記圧入工程は、前記凸部の先端部を、前記凹部に、該凹部の軸線方向に沿った一方側から進入させ、
該圧入工程の前に、前記凸部、その先端部から反対側の基端部に向けて漸次拡径しており、または前記凹部、前記一方側に位置する一端部からその反対側の他端部に向けて漸次縮径していることを特徴とするゴムクローラの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴムクローラの製造方法であって、
前記翼部を鍛造により形成するとともに、前記突起部を鋳造により形成する部材形成工程を有していることを特徴とするゴムクローラの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のゴムクローラの製造方法であって、
前記翼部と前記突起部との連結体を熱処理する熱処理工程を有していることを特徴とするゴムクローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧ショベル等の建設機械や農機、その他のクローラ式車両に装着されるゴムクローラの製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
従来からゴムクローラとして、ゴム材料で形成された無端帯状のクローラ本体と、該クローラ本体にクローラ周方向に間隔をあけて配設された複数の芯金と、を備え、芯金が、クローラ本体に埋設された翼部と、該翼部からクローラ本体の内周面側に向けて突出する突起部と、を備える構成が知られている。
ここで、この種のゴムクローラであって、芯金の翼部と突起部とを別部材で形成するゴムクローラの製造方法として、例えば下記特許文献1に示されるような方法が知られている。この方法では、ゴムクローラに、突起部を一対設けるとともに、これらの突起部同士を連結部により連結する。そして、これらの突起部および連結部が一体に形成されてなる片部と、翼部と、を、ボルトおよびノックピンで連結することにより芯金を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−65780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のゴムクローラの製造方法では、片部と翼部との連結にボルトおよびノックピンを用いることから部品点数が多くなり、さらに、ボルト用のタップを切る等の作業が必要であることから、製造に手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ゴムクローラを簡便に形成することができるゴムクローラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るゴムクローラの製造方法は、ゴム材料で形成された無端帯状のクローラ本体と、該クローラ本体にクローラ周方向に間隔をあけて配設された複数の芯金と、を備え、該芯金は、前記クローラ本体に埋設された翼部と、該翼部から前記クローラ本体の内周面側に向けて突出する突起部と、を備えるゴムクローラを形成するゴムクローラの製造方法であって、前記翼部および前記突起部のうち、前記突起部に設けられた凸部を、前記翼部に設けられた凹部に圧入させることにより、前記翼部と前記突起部とを連結する圧入工程を有し、該圧入工程の際、前記突起部の硬度を、前記翼部の硬度よりも低くしておくことを特徴とする。
【0007】
また、前記ゴムクローラの製造方法により形成されたゴムクローラで、前記翼部と前記突起部とは、前記凸部が前記凹部に圧入されることにより連結されている。
【0008】
これらの発明によれば、前記凸部を前記凹部に圧入させることにより翼部と突起部とを連結する圧入工程を有しているので、例えばノックピンや締結部材等を用いて翼部と突起部とを連結する場合と比べて、タップを切る等の作業を削減するとともに部品点数を低減することが可能になり、ゴムクローラを簡便に形成することができる。
【0009】
また圧入工程の際、突起部の硬度が、翼部の硬度よりも低くなっているので、突起部が損傷するのを抑えることが可能になり、高品質なゴムクローラを形成することができる。
すなわち、凸部を凹部に圧入させるとき、突起部および翼部に応力が生じるが、突起部のクローラ幅方向およびクローラ周方向に沿った横断面積は、翼部の前記横断面積に比べて小さいことから、突起部に生じる応力が、翼部に生じる応力よりも大きくなり易く、翼部に比べて突起部が損傷し易い。しかしながら突起部の硬度が、翼部の硬度よりも低くなっていることにより、突起部に生じる応力を緩和することが可能になり、突起部が損傷するのを抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係るゴムクローラの製造方法では、前記圧入工程は、前記凸部の先端部を、前記凹部に、該凹部の軸線方向に沿った一方側から進入させ、該圧入工程の前に、前記凸部、その先端部から反対側の基端部に向けて漸次拡径しており、または前記凹部、前記一方側に位置する一端部からその反対側の他端部に向けて漸次縮径していてもよい。
【0011】
この場合、圧入工程の際、凸部が、先端部から基端部に向けて漸次拡径している、または凹部が、一端部から他端部に向けて漸次縮径しているので、凸部を凹部に圧入させるために要する力を、凸部の凹部への進入に伴って徐々に高めていくことが可能になり、凸部を凹部に円滑に圧入させることができる。
【0012】
また、本発明に係るゴムクローラの製造方法では、前記翼部を鍛造により形成するとともに、前記突起部を鋳造により形成する部材形成工程を有していてもよい。
【0013】
この場合、部材形成工程の際、翼部を鍛造により形成するとともに、突起部を鋳造により形成するので、突起部の硬度を、翼部の硬度よりも低くなるように、突起部および翼部を形成し易くすることが可能になり、圧入工程の際、突起部が損傷するのを確実に抑えることができる。
【0014】
また、翼部を鍛造により形成するので、例えば翼部を鋳造により形成する場合に比べて、翼部を薄肉にしても翼部の強度の低下を抑え、翼部を軽量化することが可能になり、ゴムクローラ全体の軽量化を図ることができる。
またこのように、翼部を薄肉にしても翼部の強度の低下を抑えることができるので、ゴムクローラ全体の肉厚を同等に維持した状態で、翼部を薄肉にする一方でクローラ本体を厚肉にすることが可能になり、ゴムクローラの耐久性を向上させることができる。
また、突起部を鋳造により形成するので、突起部が複雑な形状をなす場合であっても高精度に形成することが可能で、かつ例えば母材料を除去加工することにより突起部を形成する場合などに比べて容易に形成することが可能になり、突起部の設計の自由度を確保することができる。
【0015】
また、本発明に係るゴムクローラの製造方法では、前記翼部と前記突起部との連結体を熱処理する熱処理工程を有していてもよい。
【0016】
この場合、前記熱処理工程を有しているので、圧入工程の後に、例えば翼部および突起部の各硬度や各強度を向上させる等、芯金の機械的性質を調整することができる。
またこのように、圧入工程の後に、翼部および突起部の各硬度を向上させることができるので、圧入工程の際、翼部および突起部の各硬度を、製品状態の翼部および突起部に比べて低く抑えておくことができる。これにより圧入工程の際、凸部の凹部への圧入を容易なものにすることができるとともに、突起部が損傷するのを確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゴムクローラを簡便に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るゴムクローラの縦断面図である。
図2図1に示すゴムクローラを構成する芯金の縦断面図であって、図1に示す縦断面図とは異なる方向に沿った縦断面図である。
図3図1に示すゴムクローラを形成するゴムクローラの製造方法を説明する一工程図である。
図4図1に示すゴムクローラを形成するゴムクローラの製造方法を説明する一工程図である。
図5図1に示すゴムクローラを形成するゴムクローラの製造方法を説明する一工程図である。
図6図1に示すゴムクローラを形成するゴムクローラの製造方法を説明する一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るゴムクローラを説明する。
図1に示すように、ゴムクローラ20は、ゴム材料で形成された無端帯状のクローラ本体21と、クローラ本体21にクローラ周方向Lに間隔をあけて配設された複数の芯金22と、を備えている。
クローラ本体21の外周面21bには、複数のラグ23が突設されている。
芯金22は、クローラ本体21に埋設された翼部25と、該翼部25からクローラ本体21の内周面21a側に向けて突出するとともに互いにクローラ幅方向Hに間隔をあけて配置された一対の突起部26と、を備えている。
【0020】
翼部25は、クローラ幅方向Hに沿って延びており、翼部25のクローラ幅方向Hの中央部には、前記一対の突起部26が配設されている。なおクローラ本体21内において、翼部25よりもこのクローラ本体21の外周面21b側には、突起部26よりもクローラ幅方向Hに沿ったクローラ本体21の外側に位置する各部分に、クローラ周方向Lに連続して延びる一対のスチールコード層27が埋設されている。
【0021】
突起部26は、クローラ本体21と一体に形成されたゴム膜32によって覆われている。また図1および図2に示すように、複数の突起部26の各頂面26aは、クローラ幅方向Hおよびクローラ周方向Lの両方向に沿って延在しており、これらの頂面26aは、クローラ周方向Lの全周にわたって連続して延びる左右一対の転輪通過面Sを構成している。転輪通過面S上では、図示しない転輪が、ゴムクローラ20のクローラ周方向Lに沿う送り移動に伴って転動させられる。
【0022】
ここで翼部25および突起部26は、互いに別部材で構成され、芯金22は、これらの翼部25および突起部26が連結されることにより構成されている。突起部26には、クローラ本体21の外周面21b側に突出する凸部35が同一材料で一体に設けられるとともに、翼部25には、クローラ本体21の内周面21a側に開口する凹部33が設けられており、翼部25と突起部26とは、凸部35が、凹部33に圧入されることにより連結されている。
【0023】
凹部33は、翼部25のクローラ幅方向Hの中央部のうち、該突起部26と対応する部分に一対配設されている。また凹部33は、クローラ本体21の外周面21b側には開口しておらず、該翼部25をクローラ本体21の厚さ方向Tに非貫通となっている。
なお、図1および図2は模式的に描いたものであり、凸部35が、凹部33の内壁面の全面にわたって圧接しているが、これに限られない。
【0024】
次に、以上のように構成されたゴムクローラの製造方法について説明する。
まず、翼部25を鍛造により形成するとともに、突起部26を鋳造により形成する部材形成工程を行う。このとき翼部25を、例えば軟鋼や硬鋼、合金鋼などで型鍛造により形成するとともに、突起部26を、例えば鋳鉄や鋳鋼、銅合金などで形成する。
これにより、凹部33が設けられた翼部25、および凸部35が同一材料で一体に設けられた突起部26が形成される。なおこれらの翼部25および突起部26は、熱処理されていない未熱処理のいわゆる生材であり、生材としての突起部26および凸部35の硬度は、例えばブリネル硬度でHB120〜250程度にすることが可能である。
【0025】
以上のように形成された翼部25および突起部26は、図3および図4に示すように、凸部35が、先端部35aからその反対側の基端部35bに向けて漸次拡径しているとともに、凹部33が、その軸線方向に沿ったクローラ本体21の内周面21a側(一方側)に位置する一端部33aからその反対側の他端部33bに向けて漸次縮径している。さらに図5および図6に示すように、凸部35の先端部35aの外径は、凹部33の他端部33bの外径よりも大きくなっているとともに、凸部35の基端部35bの外径は、凹部33の一端部33aの外径よりも小さくなっている。
【0026】
なお図示の例では、凸部35は、直方体状に形成され、凸部35のクローラ幅方向Hおよびクローラ周方向Lの両方向に沿った横断面視形状は、クローラ周方向Lに長い矩形状となっている。また凹部33は、直方体状に窪んでおり、凹部33の前記横断面視形状は、クローラ周方向Lに長い矩形状となっている。
【0027】
その後、突起部26に設けられた前記凸部35を、翼部25に設けられた前記凹部33に圧入させることにより、翼部25と突起部26とを連結する圧入工程を行う。このとき図3および図4に示すように、凸部35と凹部33とを同軸に位置させるとともに、凸部35の先端部35aを、凹部33に一端部33aから進入させて圧入する。
ここで本実施形態では、この圧入工程の際、突起部26の硬度を、翼部25の硬度よりも低くしており、このとき、突起部26と同一材料で一体に設けられた凸部35が、翼部25に設けられた凹部33に比べて大きく変形することとなる。
【0028】
そして、翼部25と突起部26との連結体を熱処理する熱処理工程を行い、例えば翼部25および突起部26の各硬度および各強度を向上させる等、芯金22の機械的性質を調整する。この熱処理により、翼部25の硬度を、例えばロックウェル硬度でHRC20〜55程度とし、突起部26の硬度を、例えばブリネル硬度でHB250〜500程度とすることが可能である。
なお、熱処理工程を行って翼部25および突起部26の各硬度を向上させることにより、突起部26の硬度が、翼部25の硬度よりも低いままであってもよく、突起部26の硬度が、翼部25の硬度よりも高くなってもよい。
【0029】
以上のように芯金22を形成した後、芯金22と、前記スチールコード層27と、前記クローラ本体21となる図示しない複数のゴム層と、を互いに積層して図示しないゴムクローラの成形体を形成し、その後、この成形体を加硫することによりゴムクローラ20を形成する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係るゴムクローラの製造方法およびゴムクローラ20によれば、前記凸部35を前記凹部33に圧入させることにより翼部25と突起部26とを連結する圧入工程を有しているので、例えばノックピンや締結部材等を用いて翼部25と突起部26とを連結する場合と比べて、タップを切る等の作業を削減するとともに部品点数を低減することが可能になり、ゴムクローラ20を簡便に形成することができる。
【0031】
また圧入工程の際、突起部26の硬度が、翼部25の硬度よりも低くなっているので、突起部26が損傷するのを抑えることが可能になり、高品質なゴムクローラ20を形成することができる。
すなわち、凸部35を凹部33に圧入させるとき、突起部26および翼部25に応力が生じるが、突起部26のクローラ幅方向Hおよびクローラ周方向Lに沿った横断面積は、翼部25の前記横断面積に比べて小さいことから、突起部26に生じる応力が、翼部25に生じる応力よりも大きくなり易く、翼部25に比べて突起部26が損傷し易い。しかしながら突起部26の硬度が、翼部25の硬度よりも低くなっていることにより、突起部26に生じる応力を緩和することが可能になり、突起部26が損傷するのを抑えることができる。
【0032】
また圧入工程の際、凸部35が、先端部35aから基端部35bに向けて漸次拡径しているとともに、凹部33が、一端部33aから他端部33bに向けて漸次縮径しているので、凸部35を凹部33に圧入させるために要する力を、凸部35の凹部33への進入に伴って徐々に高めていくことが可能になり、凸部35を凹部33に円滑に圧入させることができる。
【0033】
また圧入工程の際、凸部35が、先端部35aから基端部35bに向けて漸次拡径しているとともに、凹部33が、一端部33aから他端部33bに向けて漸次縮径しているので、部材形成工程の際に型枠を用いる場合、該型枠を凸部35および凹部33から容易に離型させることができる。
【0034】
また部材形成工程の際、翼部25を鍛造により形成するとともに、突起部26を鋳造により形成するので、突起部26の硬度を、翼部25の硬度よりも低くなるように、突起部26および翼部25を形成し易くすることが可能になり、圧入工程の際、突起部26が損傷するのを確実に抑えることができる。
【0035】
また、翼部25を鍛造により形成するので、例えば翼部25を鋳造により形成する場合に比べて、翼部25を薄肉にしても翼部25の強度の低下を抑え、翼部25を軽量化することが可能になり、ゴムクローラ20全体の軽量化を図ることができる。
またこのように、翼部25を薄肉にしても翼部25の強度の低下を抑えることができるので、ゴムクローラ20全体の肉厚を同等に維持した状態で、翼部25を薄肉にする一方でクローラ本体21を厚肉にすることが可能になり、ゴムクローラ20の耐久性を向上させることができる。
また、突起部26を鋳造により形成するので、突起部26が複雑な形状をなす場合であっても高精度に形成することが可能で、かつ例えば母材料を除去加工することにより突起部26を形成する場合などに比べて容易に形成することが可能になり、突起部26の設計の自由度を確保することができる。
【0036】
また、前記熱処理工程を有しているので、圧入工程の後に、例えば翼部25および突起部26の各硬度や各強度を向上させる等、芯金22の機械的性質を調整することができる。
またこのように、圧入工程の後に、翼部25および突起部26の各硬度を向上させることができるので、圧入工程の際、翼部25および突起部26の各硬度を、製品状態の翼部25および突起部26に比べて低く抑えておくことができる。これにより圧入工程の際、凸部35の凹部33への圧入を容易なものにすることができるとともに、突起部26が損傷するのを確実に抑えることができる。
【0037】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、凹部33は、翼部25を前記厚さ方向Tに非貫通であるものとしたが、貫通していてもよい。
【0038】
また前記実施形態では、圧入工程は、凸部35を、凸部35の先端部35aから基端部35bに向けて漸次拡径させて、かつ凹部33が、一端部33aから他端部33bに向けて漸次縮径させて行うものとしたが、これに限られず、凸部35が拡径していて、凹部33が一端部33aから他端部33bに向かう全長にわたって同径であってもよく、凸部35が先端部35aから基端部35bに向かう全長にわたって同径であり、凹部33が縮径していてもよい。
さらに凸部35を、先端部35aから基端部35bに向かう全長にわたって同径とし、かつ凹部33を、一端部33aから他端部33bに向かう全長にわたって同径とし、これらの凸部35および凹部33の外径を互いに同等とすることにより、凹部33に凸部35を圧入させてもよい。
さらにまた、凸部35が直方体状ではなく、例えば円柱状であってもよく、また凹部33が、直方体状に窪んでいるのではなく、例えば円柱状に窪んでいてもよい。
【0039】
また前記実施形態では、翼部25に凹部33が設けられるとともに、突起部26に凸部35が設けられているものとしたが、これに限られず、突起部に凹部が設けられるとともに、翼部に凸部が設けられていてもよい。つまり圧入工程の際、翼部および突起部のうち、一方に設けられた凸部を、他方に設けられた凹部に圧入させることにより、翼部と突起部とを連結する他の構成に適宜変更することが可能である。
【0040】
また、熱処理工程はなくてもよい。
さらに前記実施形態では、部材形成工程の際、翼部25を鍛造で形成するとともに、突起部26を鋳造で形成するものとしたが、これに限られるものではない。
さらにまた、突起部26を、翼部25を形成する材料よりも比重が高い軽量化金属により形成することにより、芯金22の軽量化を図ることも可能である。前記軽量化金属としては、例えばアルミニウムおよびアルミニウム合金等が挙げられる。なおアルミニウムの硬度は、例えばビッカース硬度でHv30〜130程度となっている。
【0041】
また、スチールコード層27およびゴム膜32はなくてもよい。
さらに前記実施形態では、転輪通過面Sは、突起部26の頂面26aにより構成されているものとしたが、これに限られない。例えば転輪通過面Sが、クローラ本体の内周面側において、芯金の各突起部よりもクローラ幅方向の外側に位置する部分に形成されていてもよい。
【0042】
また芯金に、クローラ周方向に互いに隣り合う芯金同士が、クローラ幅方向に相対的に位置ずれするのを規制する脱輪防止機構が設けられていてもよい。脱輪防止機構の一例としては、芯金からクローラ周方向の一方側に向けて突出するとともにクローラ幅方向に沿ったクローラ本体の内側に位置する第1機構と、芯金からクローラ周方向の他方側に向けて突出するとともにクローラ幅方向に沿ったクローラ本体の外側に位置する第2機構と、により構成され、クローラ周方向で隣り合う芯金同士の第1機構と第2機構とが、クローラ幅方向で対向する構成などが挙げられる。
【0043】
また、前記実施形態では、芯金22は、一対の突起部26を備えているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば1つの突起部を、翼部におけるクローラ幅方向の中央部に備える構成であっても良い。
【0044】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
20 ゴムクローラ
21 クローラ本体
22 芯金
25 翼部
26 突起部
33 凹部
33a 一端部
33b 他端部
35 凸部
35a 先端部
35b 基端部
L クローラ周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6