特許第6013728号(P6013728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013728
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ニーエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/206 20110101AFI20161011BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20161011BHJP
【FI】
   B60R21/206
   B60R21/2338
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-268455(P2011-268455)
(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2013-119327(P2013-119327A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 幸広
(72)【発明者】
【氏名】木内 陽平
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−264788(JP,A)
【文献】 特開2010−000825(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02410925(GB,A)
【文献】 特開2011−136682(JP,A)
【文献】 特開2004−196024(JP,A)
【文献】 特開2013−035473(JP,A)
【文献】 特開2000−142297(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0109070(US,A1)
【文献】 特開2011−068306(JP,A)
【文献】 特開2003−226218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータにより供給されたガスにより、インストルメントパネルにおける車体フロア面に対向する下面側取付部より膨張展開した後、前記インストルメントパネルにおける乗員に対向する縦壁面部と乗員下肢部との間に膨張展開するエアバッグを有するニーエアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、前記乗員側に対向する乗員対向部および前記インストルメントパネル側に対向する車体対向部を有するように袋状に形成されて、前記インストルメントパネルの下面取付部より突出展開する引出状基礎部と、前記乗員下肢部に対向して前記インストルメントパネルの縦壁面部に沿って上向きに展開する下肢部保護部位とから構成された上で、前記引出状基礎部に対して前記下肢部保護部位を前記縦壁面部に沿って上向きに屈曲させるように形成された転向屈曲部位とを備えてり、
前記引出状基礎部および前記転向屈曲部位の各気室同士を気体の流れが阻害されないように連通すべく前記乗員対向部と前記車体対向部とを共に縫着することにより前記引出基礎部に形成された重合縫着部を有し、前記引出状基礎部における前記乗員対向部側に前記下面側取付部に両端が取着された膨張抑制帯体を添設することにより、前記引出状基礎部における前記乗員対向部側が前記車体フロア面側に膨出するのを抑制するとを特徴とするニーエアバッグ装置。
【請求項2】
前記転向屈曲部位は、前記引出状基礎部における前記乗員対向部側に折返し襞部を形成たことを特徴とする請求項1に記載のニーエアバッグ装置。
【請求項3】
前記重合縫着部は、前記引出状基礎部における外周部より内方側に向かって縫着することにより形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニーエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インフレータにより供給されたガスにより、インストルメントパネルにおける車体フロア面に対向するフロア対向下面側取付部より膨張展開した後、前記インストルメントパネルにおける乗員に対向する縦壁面部と前記乗員下肢部との間に膨張展開するエアバッグを有して構成したニーエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のニーエアバッグ装置は、例えば、インストルメントパネルの助手席前方のグローブボックス付近などにおけるインストルメントパネル内に設けたケース体内に袋状のエアバッグを折り畳んだ状態で収納して構成されており、車両の前方衝突などの衝撃を検出した際に、当該エアバッグにインフレータからガスを供給し、エアバッグをケース体から突出させ、さらにインストルメントパネルの縦壁面部と乗員下肢部との間に膨張展開させて乗員下肢部の保護を図ったものである。
【0003】
そして、この種の従来のニーエアバッグ装置は、多くの場合、当該エアバッグがインストルメントパネルの縦壁面部から突出して膨張展開するように構成している。この場合、インストルメントパネルの縦壁面部には、エアバッグを突出させるための開口部が設けられることになる。
【0004】
かかることから、インストルメントパネルの縦壁面部に設けた開口部は、通常状態では蓋体により閉成されているにしても、乗員から視認されてしまうことになって、インストルメントパネルの非常に美観上重要な部分を司る縦壁面部にデザイン的な課題を残していることになる。このため、最近の乗用自動車などの車両においては、エアバッグがインストルメントパネルにおける車体フロア面に対向するフロア対向下面側取付部から突出させるように構成するものが提案されるようになってきている。
【0005】
このように、ニーエアバッグ装置において、エアバッグがインストルメントパネルのフロア対向下面側取付部に設けた開口部から突出させた後、乗員下肢部側へ膨張展開するように構成するには、どうしても、当該エアバッグは、先ずインストルメントパネルのフロア対向下面側取付部側に位置するインストルメントパネル側接続部位を、フロア対向下面側取付部から車体フロア面および乗員下肢部の前方に向かった下方斜めに傾斜するように突出した後、略上向きに屈曲転向することによって、インストルメントパネルの縦壁面部と乗員下肢部との間に膨張展開するように略上向きに屈曲転向させる必要がある。
【0006】
かかる事情を考慮して提案された従来のニーエアバッグ装置は、例えば、図7に示す技術が知られている。図7によれば、かかる技術におけるエアバッグaは、折り畳まれた状態で、インストルメントパネルbの車体フロア面cに対向するフロア対向下面側取付部dに設けたケース体e内に収納して、ケース体e内に設けたインフレータfから突出したガスにより、フロア対向下面側取付部dに形成した開口部gから突出するようにしている。そして、開口部gから突出したエアバッグaは、一旦屈曲して上向きに転向させた上で、さらに、インストルメントパネルbの縦壁面部と乗員下肢部iとの間に膨張展開するようになっている。
【0007】
したがって、上記従来のニーエアバッグ装置におけるエアバッグaは、インストルメントパネルbのフロア対向下面側取付部dより突出展開するインストルメントパネル側接続部位jと、乗員下肢部iに対向してインストルメントパネルbの縦壁面部hに沿って上向きに展開する下肢部保護部位kと、インストルメントパネル側接続部位jに対して下肢部保護部位kを縦壁面部hに沿って上向きに転向屈曲させるようにインストルメントパネル側接続部位jと下肢部保護部位kとを連続させる転向屈曲部位mとを備えて構成していることになる。
【0008】
このように構成する従来のニーエアバッグ装置は、図8に示すように、車両の前面衝突などを感知した場合には、先ず図8の(a)に示すように、エアバッグaが、開口部gよりインストルメントパネル側接続部位jがフロア面に向かって下向きに膨張展開する。その後、エアバッグaは、転向屈曲部位mがインストルメントパネルbの縦壁面部hに沿うように転向屈曲して(図8の(b)の状態)、下肢部保護部位kを縦壁面部hと乗員下肢部iとの間に沿って上向きに膨張展開させて(図8の(c)の状態)、乗員下肢部iを捕捉することになる。このように乗員の下肢部iを捕捉した状態で、乗員は、図示しない助手席用エアバッグ装置あるいは運転席用エアバッグ装置によって捕捉保護されるようになっている。
【0009】
そして、かかるエアバッグaの膨張展開過程において、インストルメントパネル側接続部位jから円滑に転向屈曲して下肢部保護部位kが、的確に縦壁面部hと乗員下肢部iとの間に沿って上向きに膨張展開させるために、上記従来のニーエアバッグ装置におけるエアバッグaは、転向屈曲部位mにおいて、車体フロア面c側に膨出するエルボ部位nを設けて構成している。
【0010】
さらに、上記従来のニーエアバッグ装置は、エアバッグaにおけるインストルメントパネル側接続部位jおよび転向屈曲部位mの間、転向屈曲部位mと下肢部保護部位kとの間、加えて下肢部保護部位k内においては、それぞれオリフィスoが形成されたバッフルpによって、各気室を画成することにより構成して、エアバッグaがインストルメントパネル側接続部位jから転向屈曲部位mで屈曲されて下肢部保護部位kを確実に縦壁面部hと乗員下肢部iとの間に沿って屈折させながら膨張展開するように構成している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2011/0109070A1公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した構成を有する従来のニーエアバッグ装置は、図8の(a)において明らかなように、エアバッグaの展開初期において、インストルメントパネル側接続部位jを開口部gから車体フロア面に向かって下向きに突出展開させることになる。この結果、エアバッグaは、インストルメントパネル側接続部位jから転向屈曲部位mへと展開していく間において、インストルメントパネル側接続部位jに車体フロア面に向かって膨出する膨出部位qを形成させてしまうことになり(図8の(b)、(c)を参照)、かかる膨出部位qが形成されることによって、エアバッグaが、下肢部保護部位kまで至る膨張展開時間に影響を及ぼす結果となってしまう。
【0013】
また、上記した構成を有する従来のニーエアバッグ装置におけるエアバッグaは、各バッフルpの存在により、インストルメントパネル側接続部位j、転向屈曲部位mそして下肢部保護部位kへと膨張展開する過程において、ガスが各バッフルpに設けたオリフィスoを通過しながら、膨張展開していくことになって、バッフルpの存在によりその分膨張展開時間に影響されることになってしまう。
【0014】
そこで、この発明は、上記従来の技術における課題に鑑み、エアバッグの膨張展開時間の早期化を図った上で、引出状基礎部(エアバッグがインストルメントパネル側接続部位)から転向屈曲部位によって転向屈曲した後下肢部保護部位を確実にインストルメントパネルの縦壁面部と乗員の乗員下肢部との間を沿って確実に膨張展開するように構成したニーエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係るニーエアバッグ装置は、ンフレータにより供給されたガスにより、インストルメントパネルにおける車体フロア面に対向する下面側取付部より膨張展開した後、前記インストルメントパネルにおける乗員に対向する縦壁面部と乗員下肢部との間に膨張展開するエアバッグを有するニーエアバッグ装置であって、前記エアバッグが、前記乗員側に対向する乗員対向部および前記インストルメントパネル側に対向する車体対向部を有するように袋状に形成されて、前記インストルメントパネルの下面取付部より突出展開する引出状基礎部と、前記乗員下肢部に対向して前記インストルメントパネルの縦壁面部に沿って上向きに展開する下肢部保護部位とから構成された上で、前記引出状基礎部に対して前記下肢部保護部位を前記縦壁面部に沿って上向きに屈曲させるように形成された転向屈曲部位とを備えてり、前記引出状基礎部および前記転向屈曲部位の各気室同士を気体の流れが阻害されないように連通すべく前記乗員対向部と前記車体対向部とを共に縫着することにより前記引出基礎部に形成された重合縫着部を有し、前記引出状基礎部における前記乗員対向部側に前記下面側取付部に両端が取着された膨張抑制帯体を添設することにより、前記引出状基礎部における前記乗員対向部側が前記車体フロア面側に膨出するのを抑制するとを特徴とする。
【0016】
かかる構成により、この発明におけるエアバッグは、その展開初期において引出状基礎部を下面側取付部から車体フロア面および乗員下肢部の前方に向う下方斜めに傾斜するように突出した後、略上向きに屈曲転向させることによって、インストルメントパネルの縦壁面部と乗員下肢部との間に膨張展開するように略上向きに屈曲転向する際に、インストルメントパネルの下面側取付部に両端が取着された膨張抑制帯体が引出状基礎部における乗員対向部側に添設されていることから、引出状基礎部における乗員対向部側が車体フロア面側に膨出することが抑制されることになる。この結果、膨張抑制帯体の存在により、エアバッグは、引出状基礎部が車体フロア面側に膨出するような膨出部を形成することなく、転向屈曲部位へと膨張展開していくことになる。これに加えて、下肢保護部位をインストルメントパネルの縦壁面に沿って上向きに屈曲させる転向屈曲部位が存することから、従来のようなバッフルを敢えて設けなくても例えば適宜テザーベルトなどを設けることだけで、下肢部保護部位をインストルメントパネルの縦壁面部と乗員下肢部との間に沿って早期に膨張展開させることができることになる。
【0017】
また、この発明に係るニーエアバッグ装置は、実施の態様として、転向屈曲部位引出状基礎部における乗員対向部側に折返し襞部を形成することにより構成している。
【0018】
かかる構成により、この発明は、上記発明が奏する作用効果に加えて、例えば予めエアバッグにおける車体対向部側を構成する基布に対して、乗員対向部側を構成する基布の全長を長寸法に構成した上で、当該乗員対向部側の基布における該周縁部位に折返し襞部を形成することにより、転向屈曲部位を簡単に形成することができて、しかも当該転向屈曲部位がエアバッグの膨張展開後に確実に屈曲して、エアバッグの下肢部保護部位の膨張展開を円滑に行わせることができる。
【0019】
また、この発明に係るニーエアバッグ装置は、実施の態様として、重合縫着部が引出状基礎部における外周部より内方側に向かって縫着することにより形成されて構成している。
【0020】
かかる構成により、この発明は、上記発明が奏する作用効果に加えて、引出状基礎部における重合縫着部の存在により、膨張抑制帯体と相俟って、当該引出状基礎部に車体フロア面側に膨出するような膨出部を形成することなく、転向屈曲部位へと膨張展開させていくことができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成するこの発明に係るニーエアバッグ装置は、その展開初期において引出状基礎部を下面側取付部から車体フロア面および乗員下肢部の前方に向う下方斜めに傾斜するように突出した後、略上向きに屈曲転向させることによって、インストルメントパネルの縦壁面部と乗員下肢部との間に膨張展開するように略上向きに屈曲転向する際に、インストルメントパネルの下面側取付部に両端が取着された膨張抑制帯体が引出状基礎部における乗員対向部側に添設されていることから、引出状基礎部における乗員対向部側が車体フロア面側に膨出することが抑制されることになる。この結果、膨張抑制帯体の存在により、エアバッグは、引出状基礎部が車体フロア面側に膨出するような膨出部を形成することなく、転向屈曲部位へと膨張展開していくことになる。これに加えて、下肢保護部位をインストルメントパネルの縦壁面に沿って上向きに屈曲させる転向屈曲部位が存することから、従来のようなバッフルを敢えて設けなくても例えば適宜テザーベルトなどを設けることだけで、下肢部保護部位をインストルメントパネルの縦壁面部と乗員下肢部との間に沿って早期に膨張展開させることができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の一実施例に係るニーエアバッグ装置をエアバッグの膨張展開状態において描画した概略側面図である。
図2図1に描画したエアバッグを構成すべく袋状に縫製された基布における、インストルメントパネルの下面取付面より突出展開するインストルメントパネル側接続部位を展開して描画した拡大平面図である。
図3図2に示す基布に膨張抑制帯体を添設した状態を展開させて描画した平面図である。
図4図1に描画したエアバッグの展開した状態における縦断面図である。
図5図1におけるエアバッグを構成する車体対向部側を構成する基布を描画した平面図である。
図6図1におけるエアバッグを構成する乗員対向部側を構成する基布を描画した平面図である。
図7】従来のニーエアバッグ装置をエアバッグの膨張展開状態において描画した概略側面図である。
図8図7に示すニーエアバッグ装置において、エアバッグの膨張展開過程を描画した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明に係るニーエアバッグ装置は、エアバッグの膨張展開時間の早期化を図った上で、エアバッグがインストルメントパネル側接続部位から転向屈曲部位によって転向屈曲した後下肢部保護部位を確実にインストルメントパネルの縦壁面部と乗員下肢部との間沿って確実に膨張展開するように構成している。
【0024】
次に、この発明のニーエアバッグ装置に係る実施例について、図を用いて説明する。
【0025】
図1に示すように、ニーエアバッグ装置1は、インフレータ2が装備されたエアバッグ3を折り畳んだ状態でケース体4内に収納することにより構成している。ケース体4は、インストルメントパネル5における車体フロア面6に対向する下面側取付部5aに設置されて、エアバッグ3を下面側取付部5aに設けた開口部5a−1より突出展開するように構成している。
【0026】
そして、エアバッグ3は、図4に示すように、乗員側に対向する乗員対向部3−1を構成する基布3−1aとインストルメントパネル5の縦壁面部5bに対向する車体対向部3−2を構成する基布3−2aとを互いに重ね合わせた後、当該両基布3−1a、3−2aにおける周縁部同士を縫製することにより袋状に形成している。
【0027】
さらに、エアバッグ3は、図1及び図4に示すように、その膨張展開時において、インストルメントパネル5の下面側取付部5aより突出展開する引出状基礎部3Aと、乗員下肢部7に対向してインストルメントパネル5の縦壁面部5bに沿って上向きに展開する下肢部保護部位3Bとを備えて構成していると共に、引出状基礎部3Aに対して下肢部保護部位3Bを縦壁面部5bに沿って上向きに屈曲させるように引出状基礎部3Aおよび下肢部保護部位3Bは、転向屈曲部位3Cを介して連続している。
【0028】
転向屈曲部位3Cは、乗員対向部3−1側において、図に示すエアバッグ3における車体対向部3−2を構成する基布3−2aの高さ寸法L1に対して、図6に示す乗員対向部3−1を構成する基布3−1aの高さ寸法L2を、長寸法に形成することにより、基布3−1aの略中央部に図4に示すように折返し襞部3C−1が形成できるように構成されている。
【0029】
引出状基礎部3Aにおける乗員対向部3−1側には、図1に示すように、インストルメントパネル5のフロア対向下面側取付部5aに両端がビスなどの締着具8によって取着された膨張抑制帯体9が縫着などにより添設されている。また、膨張抑制帯体9は、図3に示すように、ほぼ全長に渡る膨張抑制帯体縫製部9aによって、基布3−1a側に縫着されていると共に、平面視略T字形を呈することによって一体に形成された延出帯部9−1がループ状縫製部9bにより基布3a−1に縫着されている。膨張抑制帯体9は、この実施例においては、エアバッグ3を構成する基布3−1a、3−2aと同様の織布により構成しているが、金属板やプラスチック板などにより構成することも可能である。
【0030】
さらに、引出状基礎部3Aにおける乗員対向部3−1側の基布3−1aと車体対向部3−2の基布3−2aとは、膨張抑制帯体9を縫着する前に図2に示すように、引出状基礎部3Aおよび転向屈曲部位3Cの各気室同士が流れる気体を阻害しない状態において引出状基礎部3Aには、外周部側から内方に向かって略U字状に重合縫着することによって、重合縫着部3A−1が形成されている。
【0031】
なお、引出状基礎部3Aにおける基布3−1aには、図2及び図6に示すように、インフレータ2を取着すべく、長手方向に互いに対向する一対のインフレータ挿入孔3A−2が形成されていると共に、インフレータ挿入孔3A−2に並設して、不図示の取付ボルトを挿入するインフレータ取付孔3A−3が互いに対向するように一対を一組として2組互いに並んで形成されている。また、引出状基礎部3Aにおける基布3−2aには、図5に示すように、インフレータ挿入孔3A−2及びインフレータ取付孔3A−3に対応して、一対のインフレータ挿入孔3A−4及び一対を一組とするインフレータ取付孔3A−5が形成されている。そして、引出状基礎部3Aにおける基布3−1aは、その端部を図2及び図6に示す破線視部から外側に山折状に折り返することによって、一対のインフレータ挿入孔3A−2、3A−4および二組一対のインフレータ取付孔3A−3、3A−5同士を互いに重合連通させて、インフレータ2が発するガスをエアバッグ3内に導入すべく、図4に示すガス導入孔3A−5が形成された状態で、インフレータ取付孔3A−3、3A−5を使用してインフレータ2をエアバッグ3に取着することになる。
【0032】
また、図4に示すように、エアバッグ3における下肢部保護部位3Bには、転向屈曲部位3Cとの境界部や中途部において、それぞれ、膨張展開状態のエアバッグ3の姿勢状態を整えるべく、テザーベルトTがそれぞれ橋渡し張設されている。
【0033】
上記のように構成するこの発明における実施例においては、エアバッグ3は、その展開初期において引出状基礎部3Aを下面側取付部5aの開口部5a−1から車体フロア面6および乗員下肢部7の前方に向う下方斜めに傾斜するように突出した後、転向屈曲部位3Cによって下肢部保護部位3Bを略上向きに屈曲転向させて、インストルメントパネル5の縦壁面部5bと乗員下肢部7との間に膨張展開することになる。
【0034】
そして、引出状基礎部3Aが開口部5a−1より突出する際、インストルメントパネル5の下面側取付部5aには、両端が取着された膨張抑制帯体9が引出状基礎部3Aにおける乗員対向部3−1側に添設されていることから、インストルメントパネル側接続部位3Aにおける乗員対向部3−1側が車体フロア面6にほぼ平行して膨張展開することになる。
【0035】
この結果、膨張抑制帯体9の存在により、エアバッグ3は、インストルメントパネル側接続部位3Aが車体フロア面6側に膨出する従来のような膨出部位qを形成することなく、転向屈曲部位3Cへと膨張展開していくことになる。これに加えて、転向屈曲部位3Cが存することから、従来のようなバッフルを敢えて設けなくても例えば適宜テザーベルトTを張設などするだけで、下肢部保護部位3Bをインストルメントパネル5の縦壁面部5bと乗員下肢部7との下に沿って早期に膨張展開させることができることになる。
【0036】
また、上記実施例における転向屈曲部位3Cは、例えば予めエアバッグ3における車体対向部3−2側を構成する基布3−2aに対して、乗員対向部3−1側を構成する基布3−1aの全長を長寸法に構成した上で、乗員対向部3−1側の基布3−1aにおける外周縁部位に折返し襞部3C−1を形成することにより簡単に形成することができて、しかも折返し襞部3C−1の存在によってエアバッグ3の転向屈曲部位3Cの膨張展開をさらに円滑に行わせることになる。
【0037】
また、上記実施例においては、乗員対向部3−1と車体対向部3−2とを共に縫着することにより形成した重合縫着部としてのループ状縫製部9bの存在により、膨張抑制帯体9と相俟って、エアバッグ3における引出状基礎部3Aが車体フロア面6側に膨出するような膨出部を形成することなく、転向屈曲部位3Cへと膨張展開させていくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明は、エアバッグの膨張展開時間の早期化を図った上で、エアバッグが引出状基礎部から転向屈曲部位によって転向屈曲した後下肢部保護部位を確実にインストルメントパネルの縦壁面部と乗員の乗員下肢部との間を沿って膨張展開するように構成したことにより、インフレータにより供給されたガスにより、インストルメントパネルにおける車体フロア面に対向するフロア対向下面側取付部より膨張展開した後、前記インストルメントパネルにおける乗員に対向する縦壁面部と前記乗員下肢部との間に膨張展開するエアバッグを有して構成したニーエアバッグ装置等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0039】
1 ニーエアバッグ装置
2 インフレータ
3 エアバッグ
3−1 乗員対向部
3−2 車体対向部
3A 引出状基礎部
3A−1 重合縫着部
3B 下肢部保護部位
3C 転向屈曲部位
5 インストルメントパネル
5a フロア対向下面側取付部
5b 縦壁面部
6 車体フロア面
7 乗員下肢部
9 膨張抑制帯体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8