特許第6013734号(P6013734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013734
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】キノロン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20161011BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C07D401/14
   A61K31/4709
   A61P31/04
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2011-529013(P2011-529013)
(86)(22)【出願日】2009年9月23日
(65)【公表番号】特表2012-508161(P2012-508161A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】US2009005276
(87)【国際公開番号】WO2010036329
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年9月24日
【審判番号】不服2015-9253(P2015-9253/J1)
【審判請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】61/194,083
(32)【優先日】2008年9月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511118805
【氏名又は名称】メリンタ セラピューティクス、インク
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ハンセルマン、ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】リーブ、マクスウェル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、グラハム
【合議体】
【審判長】 井上 雅博
【審判官】 冨永 保
【審判官】 中田 とし子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−508309(JP,A)
【文献】 特表2008−535925(JP,A)
【文献】 Organic Process Research & Development,(2006),Vol.10,No.4,p.803−807
【文献】 Organic Process Research & Development,(2006),Vol.10,No.4,p.751−756
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D401/14
CA(STN),REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスクロロキノロン化合物またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルを、塩素化剤および酸と反応させる工程を含む、キノロン化合物の調製方法であって、
前記塩素化剤がN−クロロスクシンイミドであって、前記デスクロロキノロン化合物に対する前記N−クロロスクシンイミドのモル比は1より大きく、
デスクロロキノロン化合物またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルに対する前記酸のモル比が、0.008〜0.012であり、
前記キノロン化合物が、1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−8−クロロ−6−フルオロ−7−(3−ヒドロキシアゼチジン−1−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルであり、
前記デスクロロキノロン化合物が、1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−6−フルオロ−7−(3−ヒドロキシ−アゼチジン−l−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルであり、
前記キノロンの面積パーセント基準で0.40%未満の二量体不純物が生成するキノロン化合物の調製方法。
【請求項2】
前記二量体不純物が、下記の化合物、またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルである請求項1記載の方法。
【化1】
【請求項3】
前記反応が0℃〜30℃の温度で実施される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒として酢酸エステルを使用する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酢酸エステルが、酢酸メチル、酢酸エチルおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項記載の方法。
【請求項6】
前記酢酸エステルが酢酸メチルである請求項記載の方法。
【請求項7】
前記キノロン化合物を塩基と反応させる工程を更に含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が水酸化物塩基である請求項記載の方法。
【請求項9】
前記水酸化物塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項記載の方法。
【請求項10】
前記水酸化物塩基が水酸化カリウムである請求項記載の方法。
【請求項11】
溶媒としてイソプロパノールと水の混合物を使用する請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗感染性化合物の合成分野に関する。より詳細には、本発明は、抗感染剤として有用なキノロン化合物ファミリーの合成に関する。本発明は、キノロン化合物の調製方法を含み、前記キノロンの約0.40%未満の二量体不純物が生成する。
【背景技術】
【0002】
1920年代におけるペニシリンと1940年代におけるストレプトマイシンの発見以来、抗生物質製剤として使用される多くの新規化合物が発見され、または具体的に設計されてきた。このような治療薬の使用により、以前は、感染症は完全に制御、または根絶可能であると考えられていた。メチシリン耐性ブドウ球菌、ペニシリン耐性連鎖球菌およびバンコマイシン耐性腸球菌等のグラム陽性菌の耐性菌が進化してきており、かかる耐性菌に感染した患者に対し重篤で、致命的でさえある結果を引起こし得る。マクロライド系抗生物質、即ち、14〜16員ラクトン環を主体とする抗生物質に耐性を有する細菌が出現している。また、インフルエンザ菌およびカタラリス菌等のグラム陰性菌の耐性菌も同定されている。例えば、F.D.Lowry,”Antimicrobial Resistance:The Example of Staphylococcus aureus,”J.Clin.Invest.,2003,111(9),1265−1273;およびGold,H.S. and Moellering,R.C.,Jr.,”Antimicrobial−Drug Resistance,”N.Engl.J.Med.,1996,335,1445−53を参照されたい。
【0003】
抗生物質耐性の増加についての問題にもかかわらず、リネゾリドとして公知であり、商標名Zyvox(登録商標)(化合物Aを参照)として販売されているオキサゾリジノン環含有抗生物質であるN−[[(5S)−3−[3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチルアセトアミドが2000年に米国で承認されて以来、新たな主要分類の抗生物質は臨床用途に対して開発されていない。R.C.Moellering,Jr.,’Linezolid:The First Oxazolidinone Antimicrobial,’Annals of Internal Medicine,2003,138(2),135−142を参照されたい。
【0004】
【化1】
【0005】
リネゾリドは、グラム陽性生物に対する活性な抗菌剤としての使用に対し承認された。残念ながら、生物のリネゾリド耐性菌は既に報告されている。Tsiodras et al.,Lancet,2001,358,207;Gonzales et al.,Lancet,2001,357,1179;Zurenko et al.,Proceedings Of The 39th Annual lnterscience Conference On Antibacterial Agents And Chemotherapy(ICAAC);San Francisco,CA,USA,(September 26−29,1999)を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記にかかわらず、新たな抗感染剤とそれらを製造する方法に対する必要性が継続して存在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】酢酸エチル(EtOAc)を溶媒とする場合の、二量体不純物4の量についての予測プロファイラ(prediction profiler)を示す。これは最初の実験計画に基づく。各図中の中央線は予測値を示し、中央線の側面に位置する2本の線は約±95パーセントの信頼水準を表す。水平方向の点線は二量体4の水準0.235094パーセントを示す。垂直方向の点線は、N−クロロスクシンイミド(NCS)1.05当量、硫酸3.5モルパーセント、17℃、溶媒中の水含有量0.05パーセント、およびNCS添加速度0.1体積/分に対する変数を示す。95パーセント信頼限界は、前文に示した値については±0.040991である。
図2】二量体不純物4の水準についてのHSOと時間の影響を示す。
図3】DoEのロバストネス、即ち、2番目の実験計画における二量体不純物4の量の予測プロファイラにおける最悪の場合のシナリオを示す。各図中の中央線は予測値を示し、中央線の側面に位置する2本の線は約±95パーセントの信頼水準表す。水平方向の点線は二量体4の水準0.1045パーセントを示す。垂直方向の点線は、N−クロロスクシンイミド(NCS)1.04当量、21℃、NCS添加速度30分、および硫酸0.8モルパーセントに対する変数を示す。95パーセント信頼限界は、前文に示した値については±0.009339である。
図4】最初の実験計画の実験テーブルを示す。
図5a図4の最初の実験計画における予測値に対する実測値の図を示す。
図5b図4の最初の実験計画における当てはめの要約を示す。
図5c図4の最初の実験計画における分散分析を示す。
図5d図4の最初の実験計画におけるパラメータ推定値を示す。
図5e図4の最初の実験計画における予測値に対する残差の図を示す。
図5f図4の最初の実験計画におけるソートしたパラメータ推定値を示す。
図6a図4の最初の実験計画における予測プロファイラを示す。
図6b図4の最初の実験計画における交互作用プロファイルを示す。
図7】2番目の実験計画での実験のロバスト設計についての実験テーブルを示す。
図8a図7の2番目の実験計画における予測値に対する実測値の図を示す。
図8b図7の2番目の実験計画における当てはめの要約を示す。
図8c図7の2番目の実験計画における分散分析を示す。
図8d図7の2番目の実験計画における当てはまりの悪さ(lack of fit)を示す。
図8e図7の2番目の実験計画におけるパラメータ推定値を示す。
図8f図7の2番目の実験計画における予測値に対する残差の図を示す。
図8g図7の2番目の実験計画における予測プロファイラを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、抗感染性化合物の合成分野に関する。より詳細には、本発明は、抗感染剤として有用なキノロン化合物ファミリーの合成に関する。
【0009】
本発明は、デスクロロ(des−chloro)キノロン化合物またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルを、塩素化剤および酸と反応させる工程を含む、キノロン化合物の調製方法であって、分析用HPLCで定量される面積パーセント基準で前記キノロンの約0.40%未満の二量体不純物が生成するキノロン化合物の調製方法に関する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、前記デスクロロキノロン化合物が、1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−6−フルオロ−7−(3−ヒドロキシ−アゼチジン−l−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルであり、前記キノロン化合物が、1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−8−クロロ−6−フルオロ−7−(3−ヒドロキシアゼチジン−1−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルである方法に関する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が、化合物1−アミノ−3−(アゼチジン−3−イルオキシ)−プロパン−2−オール−ビス(N,N’−キノロンカルボン酸)、またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルである方法に関する。別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物がモノエステルである方法に関する。別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物がジエステルである方法に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、前記塩素化剤がN−クロロスクシンイミドである方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、トリフリン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、または過塩素酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記酸が硫酸である方法に関する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、前記反応が約0℃〜約30℃の温度で実施される方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記反応が約15℃〜約25℃の温度で実施される方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記反応が、約13℃〜約21℃の温度で実施される方法に関する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、デスクロロキノロンに対するN−クロロスクシンイミドのモル比が約1より大きい方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、デスクロロキノロンに対するN−クロロスクシンイミドのモル比が約1.05〜約1.2である方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、デスクロロキノロンに対するN−クロロスクシンイミドのモル比が約1.04〜約1.07である方法に関する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、デスクロロキノロンに対する硫酸のモル比が約0.005〜約0.05である方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、デスクロロキノロンに対する硫酸のモル比が約0.007〜約0.02である方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、デスクロロキノロンに対する硫酸のモル比が約0.008〜約0.012である方法に関する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、溶媒が酢酸エステルである方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記酢酸エステルが、酢酸メチル、酢酸エチルおよびこれらの混合物からなる群から選択される方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記酢酸エステルが酢酸メチルである方法に関する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、前記キノロン化合物を塩基と反応させる工程を更に含む方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記塩基が水酸化物塩基である方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記水酸化物塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記水酸化物塩基が水酸化カリウムである方法に関する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、C−Cアルコールと水の混合物を溶媒として使用する方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記C−Cアルコールがイソプロパノールである方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記方法が商業規模の方法である方法に関する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、キノロン化合物またはその塩もしくはエステルを含み、前記キノロン化合物の約0.40%未満の二量体不純物を有する組成物、に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記キノロン化合物が、1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−8−クロロ−6−フルオロ−7−(3−ヒドロキシ−アゼチジン−1−イル)−4−オキソ−l,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルである組成物に関する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が、1−アミノ−3−(アゼチジン−3−イルオキシ)−プロパン−2−オール−ビス(N,N’−キノロンカルボン酸)、またはその薬剤的に許容可能な塩もしくはエステルである組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記組成物が商業規模の組成物である組成物に関する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.35%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.30%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.25%未満である方法または組成物に関する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.20%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.15%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.10%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.05%未満である方法または組成物に関する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.04%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.03%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.02%未満である方法または組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、前記二量体不純物が約0.01%未満である方法または組成物に関する。
【0024】
発明の詳細な説明
キノロン類
本発明の方法および組成物はキノロン化合物を含む。
【0025】
本明細書中で有用なピリドンカルボン酸誘導体等のキノロン化合物は、その合成、製剤および使用を含めて、2000年12月5日にYazaki et al.に対し発行された米国特許第6,156,903号、ならびに2001年11月13日付けおよび2001年12月11日付けのその訂正証明書;2000年10月17日にYazaki et al.に対し発行された米国特許第6,133,284号;1999年12月7日にYazaki et al.に対し発行された米国特許第5,998,436号、ならびに2001年1月23日、2001年10月30日、および2002年12月17日付けのその訂正証明書;2006年10月19日に発行されたアボット・ラボラトリーズのPCT出願の国際公開第2006/110815号;2006年4月20日に発行されたアボット・ラボラトリーズのPCT出願の国際公開第2006/042034号、2006年2月9日に発行されたアボット・ラボラトリーズのPCT出願の国際公開第2006/015194号;2001年5月17日に発行された湧永製薬株式会社のPCT出願の国際公開第01/34595号;および1997年3月27日に発行された湧永製薬株式会社のPCT出願の国際公開第97/11068号に記載されている。
【0026】
本発明のピリドンカルボン酸誘導体には、以下の構造(ピリドンカルボン酸誘導体1)に相当する化合物:
【0027】
【化2】
【0028】
式中、Rは水素原子またはカルボキシル保護基であり;Rはヒドロキシル基、低級アルコキシ基、または置換もしくは未置換のアミノ基であり;Rは水素原子またはハロゲン原子であり;Rは水素原子またはハロゲン原子であり;Rはハロゲン原子または所望により置換された飽和環状アミノ基であり;Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、または所望により保護されたアミノ基であり;X、YおよびZは同一でも異なっていてもよく、各々、窒素原子、CHまたはCR(ここで、Rは低級アルキル基、ハロゲン原子、またはシアノ基である)であり、但し、X、YおよびZの少なくとも1つは窒素原子であり、Wは窒素原子またはCR(ここで、Rは水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基である)であり、但し、Rが水素原子であり、Rがアミノ基であり、RおよびRがフッ素原子であり、Rが水素原子であり、Xが窒素原子であり、YがCR(ここで、Rはフッ素原子である)であり、ZがCHであり、およびWがCR(ここで、Rは塩素原子である)である場合には、Rは3−ヒドロキシアゼチジン−1−イル基ではなく;またはその薬剤的に許容可能な塩、エステル、もしくはプロドラッグ、が含まれる。
【0029】
先の段落に記載したように、Rがカルボキシル保護基の場合には、Rは比較的容易に開裂して対応する遊離のカルボキシル基を生成する、いずれのカルボン酸エステル残基であってよい。典型的なカルボキシル保護基には、加水分解、接触還元および温和な条件下での他の処置により脱離し得る、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびへプチル基等の低級アルキル基;ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、およびヘプテニル基等の低級アルケニル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基およびナフチル基等のアリール基のような保護基;ならびにアセトキシメチル基およびピバロイルオキシメチル基等の低級アルカノイルオキシ低級アルキル基;メトキシカルボニルオキシメチル基および1−エトキシカルボニルオキシエチル基等の低級アルコキシカルボニルオキシ低級アルキル基;メトキシメチル基等の低級アルコキシメチル基;フタリジル等のラクトニル基;1−ジメチルアミノエチル基等のジ低級アルキルアミノ低級アルキル基;および(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル基のような部分において容易に脱離し得る保護基が含まれる。
【0030】
置換基R、R、R、R、R、R、R、R、R、A、J、J、J、W、X、Y、Z、e、f、およびgは、ピリドンカルボン酸誘導体の化学構造に関して、本明細書中で便宜上定義することに留意されたい。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、ピリドンカルボン酸誘導体1の構造において、WがCRであり、Rが水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基であるピリドンカルボン酸誘導体の調製方法に関する。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、ピリドンカルボン酸誘導体1の構造において、Rが次式(a)または(b)で表される基であるピリドンカルボン酸誘導体の調製方法に関する:
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
式中、Aは酸素原子、硫黄原子またはNR(ここで、Rは水素原子または低級アルキル基である)であり、eは3〜5の数であり、fは1〜3の数であり、gは0〜2の数であり、J、JおよびJは互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基、アミノ低級アルキル基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級アルコキシ基、またはハロゲン原子である。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、ピリドンカルボン酸誘導体1の構造において、Rが式(a)で表される基であるピリドンカルボン酸誘導体の調製方法に関する。
【0037】
【化5】
【0038】
別の実施形態では、本発明は、ピリドンカルボン酸誘導体1の構造において、式(a)中のeが3または4であるピリドンカルボン酸誘導体の調製方法、に関する。
【0039】
【化6】
【0040】
別の実施形態では、本発明は、ピリドンカルボン酸誘導体1の構造において、Rが水素原子であり;Rがアミノ基、低級アルキルアミノ基、またはジ低級アルキルアミノ基であり;Rがハロゲン原子であり;Rがハロゲン原子であり;Rが水素原子であり;Xが窒素原子であり;YおよびZがCHまたはCR(ここで、Rは低級アルキル基またはハロゲン原子である)であり;ならびにWがCR(ここで、Rはハロゲン原子または低級アルキル基である)であるピリドンカルボン酸誘導体の調製方法に関する。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、ピリドンカルボン酸誘導体1の構造において、Rがアミノ基であり;Rがフッ素原子であり;Rがフッ素原子であり;YがCFであり;ZがCHであり;WがCR(ここで、Rは塩素原子、臭素原子またはメチル基である)であり、式(a)中のeが3であるピリドンカルボン酸誘導体の調製方法、に関する。
【0042】
【化7】
【0043】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造:
【0044】
【化8】
【0045】
に相当するピリドンカルボン酸、またはその薬剤的に許容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグの調製方法に関する。この上述したピリドンカルボン酸は、公開されたコードネームであるアボット・ラボラトリーズのABT−492、湧永製薬株式会社のWQ 3034、リブ−エックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド(Rib−X Pharmaceuticals,Inc.)のRX−3341、合衆国承認名称であるデラフロキサシンとしても公知であり、化学名1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロ−2−ピリジニル)−8−クロロ−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−7−(3−ヒドロキシ−1−アゼチジニル)−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸、1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロ−2−ピリジニル)−8−クロロ−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−7−(3−ヒドロキシアゼチジン−1−イル)−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸、3−キノリンカルボン酸、1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロ−2−ピリジニル)−8−クロロ−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−7−(3−ヒドロキシ−1−アゼチジニル)−4−オキソ、および1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−8−クロロ−6−フルオロ−7−(3−ヒドロキシアゼチジン−1−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸としても公知である。この化合物のカルボン酸形態は、CAS登録番号189279−58−1に相当する。更に、先に引用した国際公開第2006/042034号には、この化合物のD−グルシトール塩[D−グルシトール1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロ−2−ピリジニル)−8−クロロ−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−7−(3−ヒドロキシ−1−アゼチジニル)−4−オキソ−3−キノリンカルボキシレート(塩)]、およびこの化合物のD−グルシトール塩の三水和物[D−グルシトール1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロ−2−ピリジニル)−8−クロロ−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−7−(3−ヒドロキシ−1−アゼチジニル)−4−オキソ−3−キノリンカルボキシレート三水和物(塩)]が開示されている。前記D−グルシトール塩およびD−グルシトール塩三水和物は、それぞれCAS登録番号352458−37−8および883105−02−0に相当する。D−グルシトールはCAS登録番号6284−40−8に相当する。国際公開第2006/042034号には、Cu−Ka放射線を用い約25℃で測定した場合に、図1に示す粉末回折パターンにより特徴付けられるD−グルシトール塩の結晶形(国際公開第2006/042034号を参照)、およびCu−Ka放射線を用い約25℃で測定した場合に、図2に示す粉末回折パターンによるD−グルシトール塩三水和物の結晶形(国際公開第2006/042034号を参照)も開示されている。これらのD−グルシトール塩は本発明において有用である。A.R.Haight et al.,’Synthesis of the Quinolone ABT−492:Crystallizations for Optimal Processing’,Organic Process Research&Development(2006),10(4),751−756も参照されたい。
【0046】
「商業規模の方法」および「商業規模の組成物」なる用語は、それぞれ少なくとも約100グラムの単一バッチとして実施または製造される方法および組成物を指す。
【0047】
デラフロキサシンの開発における二量体不純物の同定および抑制
Hanselmann,R.,et al.,’Identification and Suppression of a Dimer Impurity in the Development of Delafloxacin’,Organic Process Research&Development,vol.13,pages54−59(2009)を参照されたい。
【0048】
【化9】
【0049】
デラフロキサシンは、リブ−エックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドで開発中の6−フルオロキノロン抗生物質である。デラフロキサシン(delafloxacin)を調製するための初期のスケールアップの実施の間に、最後から2番目の塩素化工程において0.43%以下の新たな不純物が生じた。これは、デラフロキサシンの二量体付加物と同定された。続いて実験計画法(DoE)を適用し、この不純物に関与する要因の同定に至った。DoEから得た知見を実行することにより、この不純物を許容可能なレベルまで再現可能に抑制することができた。
【0050】
多剤耐性菌種の継続的な出現により、共同体と病院での環境における抗菌耐性に対する公衆衛生の懸念が増大しつつある。(a)Cosgrove,S.E.;Carmeli,Y.Clin.Infect.Dis.2003,36,1433、(b)Seybold,U.;Kourbatova,E.V.;Johnson,J.G.;Halvosa,S.J.;Wang,Y.F.;King,M.D.;Ray,S.M.;Blumberg,H.M.Clin.Infect.Dis.2006,42,647、および(c)Tenover,F.C;McDougal,L.K.;Goering,R.V.;Killgore,G.;Projan,S.J.;Patel,J.B.;Dunman,P.M.J.Clin.Microbiol.2006,44,108を参照されたい。
【0051】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、米国における病院の集中治療室で最も頻繁に単離される病原体として位置し、MRSAの発生頻度は1992年の35.9%から2003年の64.4%に増加した。Klevens,R.M.;Edwards,J.R.;Tenover,F.C;McDonald,L.C;Horan,T.;Gaynes,R.Clin.Infect.Dis.2006,42,389を参照されたい。
【0052】
ほぼ40年前にナリジクス酸が導入されて以来、キノロン抗生物質は多くの抗生物質の中でも突出した地位を占めてきた。シプロフロキサシンのような6−フルオロキノロンは、その用途が広範囲であることから、感染症の治療における役割が特に拡大してきた。(a)Bush,K.Clin.Microbiol.Infect.2004,10(Suppl.4),10、および(b)Emmerson,A.M.;Jones,A.M.J.Antimicrob.Chemother.2003,51(Suppl.S1),13を参照されたい。
【0053】
デラフロキサシンは、メチシリン感受性の黄色ブドウ球菌とMRSAの両方を含むグラム陽性生物に対し優れた抗菌活性を有する6−フルオロキノロン抗生物質である。現在、臨床試験第二相が進行中である。デラフロキサシンは当初、湧永製薬株式会社およびアボット・ラボラトリーズにより開発され、その後リブ−エックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドによりライセンスされた。
【0054】
デラフロキサシンの合成は、当初、アボット・ラボラトリーズにより開発され(スキーム1)、この合成における主要工程は官能性を持たせたキノロン1(デスクロロキノロン)の8位に対する選択的塩素化である。(a)Haight,A.R.;Ariman,S.Z.;Barnes,D.M.;Benz,N.J.;Gueffier,F.X.;Henry,R.F.;Hsu,M.C.;Lee,E.C.;Morin,L.;Pearl,K.B.;Peterson,M.J.;Plata,D.J.;Willcox,D.R.Org.Process Res.Dev.2006,4,751、および(b)Barnes,D.M.;Christesen,A.C.;Engstrom,K.M.;Haight,A.R.;Hsu,M.C.;Lee,E.C.;Peterson,M.J.;Plata,D.J.;Raje,P.S.;Stoner,E.J.;Tedrow,J.S.;Wagaw,S.Org.Process Res.Dev.2006,4,803を参照されたい。
【0055】
この方法では、1の、酢酸メチル(MeOAc)と酢酸エチルの混合物中溶液を、3.5モル%HSOの存在下でNCSを用いて塩素化し、2を生成させる。その後溶媒交換を行い、KOHを用いてけん化して3を生成させる。N−メチル−D−グルカミンを用いて塩を形成後、デラフロキサシンを得る。
【0056】
【化10】
【0057】
この方法の実施は、最初は成功したが、3を単離した後のRRT1.60でのHPLCにより0.43面積%以下の新たな不純物が検出されたという点で、この工程のスケールアップに際する困難に直面した。更に、この新たな不純物は、最後の塩形成の過程でのパージが困難であることが判明した。従って、この不純物を同定し、どのようにしてこの不純物が形成されていたのかを理解し、その生成を抑制するための研究を開始することを決定した。
【0058】
結果および考察
分取HPLCを用いたこの新たな不純物を単離する多くの試みにもかかわらず、この不純物を単離することはできず、HPLC−MSにより分子量を880Daと立証できただけであった。この不純物の測定された分子量は酸3のちょうど2倍であり、この化合物の二量体誘導体であることを示唆した。塩素化反応の基質の純度プロフィールを厳密に調べても、二量体構造であると同様に特定できるいかなる不純物も検出することはできず、従ってその形成は塩素化−加水分解系列に起因した。この工程で生じる可能性のある、4を含む多くの二量体付加物を考慮したが、これは1単位の3中のアゼチジン部分が開裂し、別の単位中のヒドロキシル基と反応することに由来するのであろう。この可能性を更に検討するため、4の合成に着手した。
【0059】
【化11】
【0060】
逆合成的には(スキーム2)、分子4は適切に保護されたアミノアルコール5とキノロン6に直ちに分離する。後者は公知化合物である。断片5は市販のアゼチジン−3−オール塩酸塩7から調製できる。(a)Yazaki,A.;Niino,Y.;Ohshita,Y.;Hirao,Y.;Amano,H.;Hayashi,N.;Kuramoto,Y.のPCT国際出願の国際公開第9711068号、1997年、CAN:126,305587、および(b)Yazaki,A.;Aoki,S.のPCT国際出願の国際公開第2001034595号、2001年、CAN:134,366811を参照されたい。
【0061】
このように合成は7から開始し、窒素がベンジルカルバメートとして保護され、定量的収率で8が生成した。この付加物はラセミ体エピクロロヒドリンでアルキル化され、84%の収率で9が生成した。アンモニアにより9のエポキシドが開環して10が生じ、10は精製することなく6と縮合し、全収率83%で11が生じた。水素化条件下でCbz基を脱保護して93%の収率で12が生じた。6との2回目の縮合により、二量体化合物13が71%の収率で形成した。けん化の後に、不純物4と推定されるものを98%の収率で得た。
【0062】
【化12】
【0063】
手元にある合成した4を用いて、デラフロキサシンの汚染バッチ中の未知の不純物を、スパイキング実験とHPLC−MSおよびHPLC−UVを用いた比較により、合成した4と比較した。喜ばしいことに、合成した4はデラフロキサシンの既製バッチ中で見られた未知の不純物と明らかに一致した。
【0064】
不純物4の形成の動特性を理解するために、実験計画法(DoE)による検討において塩素化反応を更に調べることを決定した。レゾリューション(resolution)IVのDoEにおいては、指定された範囲にわたり、以下の因子を選択して検討した:温度(15〜25℃)、NCS量(1.05〜1.2当量)、HSO量(2〜5モル%)、溶媒中の水含有量(0〜0.5%)、溶媒体積(2〜3倍体積)、溶媒(酢酸メチル/酢酸エチル)およびNCSの添加速度(0.05〜0.3体積/分)。図4図5a、5b、5c、5d、5eおよび5f、図6aおよび6b、図7、ならびに図8a、8b、8c、8d、8e、8fおよび8gを参照されたい。全部で19の塩素化反応を、オハイオ州43240、コロンバス、ポラリスパークウェイ1900、Mettler−Toledo,Inc.より入手可能なMultiMaxTM反応器内で実施した。
【0065】
各ケースにおいて、反応により得た試料を5時間後にクエンチし、KOHを用いてけん化して、粗反応混合物をHPLCにより分析した。4の量を測定するために、塩素化した試料2をケン化して3とした。各ケースで得られた不純物4の面積%の値を、DoEソフトウェアを用いて処理し分析した。実験計画および分析は、JMP, Design of Experiments, Version 7, SAS Institute Inc., Cary, NC, 1989−2007を用い、ステップワイズによる当てはめ(stepwise fit)とこれに続く標準的な最少二乗法を用いて行った。
【0066】
データ処理により、R2が0.997という優れた相関が得られた。主な影響の中でも、より多量のNCS、温度の低下、NCS溶液のより早い添加、および乾燥溶媒の使用は、不純物4の量の抑制に最も有利な影響を与えた(図1)。DoEでの適切な実験に必要とされる調節を行う前に、500ppm未満の水を含む酢酸メチルを使用した。更に、ほんのわずかに過剰なNCSが使用される場合に酢酸メチルが好ましいという点において、NCSと溶媒の量の間に強い交互作用が観察された。2の過剰な塩素化を抑制するためには、1.05当量のNCSが好ましく、そのため酢酸メチルがこの工程に最適な溶媒として選択された。より詳細な分析は図4図5a、5b、5c、5d、5eおよび5f、図6aおよび6b、図7、ならびに図8a、8b、8c、8d、8e、8fおよび8gに見出すことができる。
【0067】
機構的な観点からすると、不純物4は、最初の酸触媒によるアゼチジン環の活性化に起因し、これによりイソ酪酸エステル/塩化物により誘導される16への開環系列が誘発されるものと仮定する。その後のけん化の過程では、16は加水分解中間体17または3と反応して4に至る(スキーム4)。3または17との縮合に先立つけん化とこれに続く16のエポキシド形成は無視することが出来ない。この系列の有効性は、けん化前の粗塩素化反応物のその後のHPLC−MS分析により更に強化された。ここで、分子量574Daの不純物は16と一致し、この不純物はけん化後の4とほぼ等量で検出された。
スキーム4:不純物4の反応機構案
【0068】
【化13】
【0069】
この仮定的な反応機構に基づくと、塩素化プロセスの過程における4の形成の時間依存性を無視することは出来ず、DoEによる検討では反応時間は一定に維持されることから、このパラメータを独立して評価することを決定した。塩素化反応を3.5%HSOと溶媒としての酢酸メチルを用いて15℃で実施し、反応が完了したと見なした後に試料をクエンチした。2時間後と6時間後に更なる試料をクエンチし、ケン化して、HPLCにより分析した。驚く程ではないが、時間と共に不純物4の着実な増加が見られた。4の形成を最小限とするためには、この反応をHPLCによりモニタリングするための適切な応答時間が必要であるという点で、この結果は塩素化プロセスの制御に影響を与えるものである。しかし、その後の実験では、HSOの量を1%まで低下させると、塩素化反応時間または3の特性に重大な影響を与えることなく時間と共に生成した不純物4の量が低下することが示された(図2)。このようにして、触媒として1%HSOの濃度を採用する場合には、プロセス内制御(in−process control)として許容可能な応答時間が達成できる。
【0070】
この不純物の形成に関する重要なパラメータを十分に理解した後に、予想したプロセスの操作範囲における反応のロバストネスを試験するために2番目のDoEによる検討を開始した。ここで、レゾリューションIVのDoEによる検討は、変動する以下の因子を用いて設計した:温度(13〜21℃)、NCSの量(1.04〜1.07当量)、NCSの添加速度(30〜75分)、およびHSO(0.8〜1.2モル%)。全部で10の塩素化反応をMultiMaxTM反応器内で実施した。各ケースにおいて、試料をクエンチし、プロセス内制御を経た後にケン化した。得られた4の面積%をDoEソフトウェアを用いて処理し、分析した。予想した通り、温度、NCSおよびHSOの量は、検討したパラメータ範囲において、不純物4の量に統計的に顕著な影響を与えた。しかし、予測プロファイラで最悪のケースのシナリオを想定すると、不純物4の値は0.11面積%±0.01%であり、この値はデラフロキサシンの毒性学的バッチ(toxicological batch)で立証された許容可能な限界内に十分入るものである(図3)。
【0071】
この反応の実験室での1000回の実施(kilo lab runs)を2回続けることにより、パラメータ変化の有効性を確認し、ケン化後には、不純物4の濃度が0.07%の高品質材料が得られた。
【0072】
結論として、デラフロキサシンのスケールアップの過程で検出された二量体不純物を同定することに成功した。これに続くDoEの実験により、実験室での1000回の実施におけるのと同様にスモールスケールにおいても、この不純物を許容可能な濃度にまで制御する手段を確認することが可能となった。
【0073】
(実施例)
実施例1:1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−イル)−8−クロロ−6−フルオロ−7−(3−ヒドロキシ−アゼチジン−1−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸、3、改善された手順:
1(3.1 kg、6.15mol)の酢酸メチル(8.6kg)中懸濁液に、HSO(5.9g、62mmol)とNCS(0.88kg、6.46mol)の酢酸メチル(14.4kg)中溶液を、10〜17℃にて45分以内で添加した。この溶液を13〜19℃で2時間撹拌し、1.6%NaHCO水溶液(12.6kg)でクエンチし、有機層を11%NaSO水溶液(7kg)で洗浄した。酢酸メチル溶液を、50℃、減圧下にて2−プロパノールに溶媒交換し、次いでKOH(1.1kg、19.7mol)の水(24.8kg)溶液を添加し、この混合物を55℃で3時間撹拌した。13%酢酸水溶液(2.6kg)を40℃で添加し、この溶液に3(27g、61mmol)をシードした。この懸濁液を40℃で1時間撹拌し、次いで13%酢酸水溶液(11.7kg)をゆっくりと添加した。更に1時間40℃にて撹拌した後に、この懸濁液を室温まで冷却し、ろ過し、水(41kg)で洗浄し、60℃減圧下で乾燥して、3を黄色結晶(2.5kg、91%)として得た。単離した3は報告されたものと同一の分光学的特性を有していた。
【0074】
実施例2:1−アミノ−3−(アゼチジン−3−イルオキシ)−プロパン−2−オール−ビス(N,N’−キノロンカルボン酸)、4
【0075】
3−ヒドロキシ−アゼチジン−1−カルボン酸ベンジルエステル、8:
アゼチジン−3−オール塩酸塩7(25g、0.23mol)の水(150mL)およびTHF(300mL)中溶液に、KCO(63.1g、0.46mol)を添加した。この混合物を20〜25℃で30分撹拌した。次いで、クロロギ酸ベンジル(40.9g、0.24mol)を0〜5℃にて30分以内で添加し、その後この混合物を20〜25℃で一晩撹拌した。THFをロータリー・エバポレータで30℃、減圧下にて除去し、この混合物を酢酸エチル(2x150mL)で抽出した。合わせた有機層を水(1x50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥して濃縮した。残渣を、フラッシュ・カラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で酢酸エチル−ヘプタン1:1および4:1で溶離させて精製し、8を透明オイル(47.3g、100%)として得た。H NMR(300MHz,CDCl):δ3.72(1H,d,J=6.2Hz),3.85(2H,dd,J=9.5,4.4Hz),4.17(2H,dd,J=9.5,6.7Hz),4.49−4.57(1H,m),5.06(2H,s),7.31−7.38(5H,m);13C NMR(75MHz,CDCl):δ59.2,61.6,66.9,127.9,128.1,128.5,136.5,156.6;IR:(薄膜)3406,1686,1438cm−1;ES−HRMS m/z:(M++1H)計算値 C1114NO 208.0968、測定値 208.0967
【0076】
3−オキシラニルメトキシ−アゼチジン−1−カルボン酸ベンジルエステル、9:
8(30g、0.15mol)のDMSO(250mL)中溶液に、NaOH(9.9g、0.25mol)の水(195mL)溶液を15〜25℃でゆっくりと添加した。エピクロロヒドリン(93.8g、1.01mol)を添加し、混合物を20〜25℃で24時間撹拌した。この混合物を水(300mL)で希釈し、酢酸エチル(2x150mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2x50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥して濃縮した。残渣を、フラッシュ・カラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で酢酸エチル−ヘプタン3:2で溶離させて精製し、9を透明オイル(32.1g、84%)として得た。H NMR(300MHz,CDCl):δ2.60(1H,dd,J=4.8,2.6Hz),2.81(1H,dd,J=4.9,4.2Hz),3.09−3.16(1H,m),3.25(1H,dd,J=11.4,6.2Hz),3.68(1H,dd,J=11.5,2.5Hz),3.89−3.97(2H,m),4.15−4.24(2H,m),4.29−4.37(1H,m),5.09(2H,s),7.28−7.36(5H,m);13C NMR(75MHz,CDCl):δ44.2,50.4,56.7,56.9,66.7,68.6,70.0,128.0,128.1,128.5,136.6,156.5;IR:(薄膜)2951,1709,1420cm−1;ES−HRMS m/z:(M++1H)計算値 C1418NO 264.1230、測定値 264.1230
【0077】
1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロ−ピリジン−2−イル)−7−[3−(1−ベンジルオキシカルボニル−アゼチジン−3−イルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアミノ]−8−クロロ−6−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸エチルエステル、11:
濃NHOH(380mL)中の9(19g、72.2mmol)とMeOH(86mL)中の7M NHの混合物を室温で5時間撹拌した。この透明溶液を濃縮し、トルエンで共沸乾燥した。残留した透明オイルと6(20g、48.1mmol)をNMP(150mL)に溶解させた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(12.4g、96.2mmol)を添加し、この溶液を70℃で3時間撹拌した。この溶液を1Nクエン酸/氷(300mL)に注ぎ、酢酸エチル(2x150mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2x100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥して濃縮した。残渣を、フラッシュ・カラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で酢酸エチル−ヘプタン1:1で溶離させ、その後酢酸エチル−MeOH95:5で溶離させて精製し、11を黄色気泡(27.1g、83%)として得た。H NMR(300MHz,CDCl):δ1.35(3H,t,J=7.1Hz),3.35−3.52(4H,m),3.62−3.77(1H,m),3.84−3.91(2H,m),3.95−4.08(1H,m),4.15(2H,dd,J=9.3,6.5Hz),4.23−4.30(1H,m),4.35(2H,q,J=7.1Hz),4.85−5.13(3H,br.s),5.08(2H,s),7.18−7.25(1H,m),7.31−7.35(5H,m),7.99(1H,dd,J=13.7,3.1Hz),8.31(1H,s);13C NMR(75MHz,CDCl):δ14.4,48.5(d,JF=10Hz),56.6,61.1,66.9,68.6,69.3,70.8,107.2,111.5,112.6(d,JF=24Hz),113.2(m),120.6,128.0,128.1,128.5,134.1(d,JF=5Hz),134.7(m),136.5,139.2(d,JF=13Hz),144.9(d,JF=253Hz),144.4(d,JF=13Hz),145.6(dd,JF=262,4Hz),149.9(d,JF=246Hz),150.0,156.5,164.7,172.9;IR:(KBr)2949,1700,1615cm−1;ES−HRMS m/z:(M++1H)計算値 C3130ClF 676.1780、測定値 676.1762
【0078】
1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−7−[3−(アゼチジン−3−イルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアミノ]−8−クロロ−6−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸エチルエステル、12:
10%パラジウム炭素(2.1g)のMeOH(20mL)中スラリーに、11(13.7g、20.3mmol)のMeOH(230mL)溶液を添加した。この混合物を1気圧で1時間水素化し、Hyfloを用いてろ過し、留去して12をベージュの結晶(10.3g、93%)として得た。Mp.148〜152℃;H NMR(300MHz,DMSO−d):δ1.27(3H,t,J=7.1Hz),3.27(1H,d,J=5.0Hz),3.28−3.80(10H,m),4.19(1H,br.s),4.21(2H,q,J=7.1Hz),5.86(1H,s),6.74(2H,s),7.84(1H,d,J=13.8Hz),7.94(1H,dd,J=9.7,9.0Hz),8.43(1H,s);13C NMR(75MHz,CDC1):δ14.1,48.4(d,JF=10Hz),53.6,60.2,68.4,70.4(d,JF=4Hz),72.1,106.4(d,JF=6Hz),111.0,111.3(d,JF=23Hz),113.6(dd,JF=23,21Hz),118.9(d,JF=6Hz),133.8(d,JF=13Hz),134.2,139.5(d,JF=12Hz),143.3(dd,JF=248,4Hz),145.0(dd,JF=259,5Hz),145.6(d,JF=14Hz),149.3(d,JF=245Hz),149.5,163.5,171.0;IR:(KBr)1697,1614,1496,1457cm−1;ES−HRMS m/z:(M++1H)計算値 C2324ClF 542.1413、測定値 542.1391
【0079】
1−アミノ−3−(アゼチジン−3−イルオキシ)−プロパン−2−オール−ビス(N,N’−キノロンジエステル)、13:
12(9.6g、17.7mmol)、6(7.8g、18.6mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.6g、35.4mmol)のNMP(150mL)中溶液を55℃で3時間撹拌した。この溶液を1Nクエン酸/氷(300mL)に注ぎ、酢酸エチル(3x100mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2x100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥して濃縮した。残渣を、フラッシュ・カラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で酢酸エチル−MeOH95:5で溶離させて精製した。得られた黄色気泡をCHCl−MeOH9:1(160mL)で結晶化し、13をベージュの結晶(11.8g、71%)として得た。Mp.184〜187℃;H NMR(300MHz,DMSO−d):δ1.26(6H,t,J=7.1Hz),3.29−3.48(3H,m),3.49−3.62(1H,m),3.73−3.82(1H,m),4.12−4.30(3H,m),4.21(4H,q,J=7.1Hz),4.52−4.65(2H,m),5.13−5.22(1H,m),5.83−5.92(1H,m),6.72(4H,s),7.73(1H,d,J=13.9Hz),7.82(1H,d,J=13.9Hz),7.92(1H,t,J=9.6Hz),7.93(1H,t,J=8.7Hz),8.41(2H,s);13C NMR(75MHz,CDCl):δ12.3(2x),46.4(d,JF=11Hz),58.4(2x),61.9(2x),66.7,67.3(d,JF=4Hz),69.1,103.4(d,JF=6Hz),104.6(d,JF=6Hz),108.7(d,JF=23Hz),109.2,109.4(d,JF=23Hz),109.5,111.7(dd,JF=25,24Hz),111.8(dd,JF=25,24Hz),117.1(d,JF=7Hz),117.8(d,JF=6Hz),132.1(dd,JF=17,4Hz),132.2,132.5,133.5,137.7(d,JF=12Hz),139.4(d,JF=12Hz),141.0(dd,JF=247,5Hz),141.5(dd,JF=248,5Hz),143.0(dd,JF=259,5Hz),143.3(dd,JF=259,5Hz),143.8(2x,d,JF=15Hz),147.5(d,JF=245Hz),147.7,147.8,148.1(d,JF=247Hz),161.7(2x),169.1,169.2;IR:(KBr)1728,1615,1491,1448cm−1;ES−HRMS m/z:(M++1H)計算値 C4033Cl 937.1697、測定値 937.1696
【0080】
1−アミノ−3−(アゼチジン−3−イルオキシ)−プロパン−2−オール−ビス(N,N’−キノロンカルボン酸)、4:
13(17.0g、18.1mmol)の2−プロパノール(75mL)中懸濁液に1NKOH溶液(127mL、126.7mmol)を添加した。この混合物を55℃で3.5時間撹拌後、溶液を30℃まで冷却し、水(94mL)に溶解させたAcOH(12.4g、206.5mmol)溶液を1時間以内で添加した。この懸濁液を室温で2時間撹拌し、ろ過し、水(3x40mL)で洗浄して、50℃/減圧下で乾燥して4を黄色結晶(15.7g、98%)として得た。Mp.198〜205℃(分解);H NMR(300MHz,DMSO−d):δ3.28−3.45(2H,m),3.45−3.78(2H,m),3.79−3.88(1H,m),4.16−4.33(3H,m),4.61−4.75(2H,m),5.25(1H,br.s),6.23−6.35(1H,m),6.76(4H,s),7.79(1H,d,J=13.7Hz),7.90(1H,d,J=13.8Hz),7.93(2H,dd,J=9.7,2.4Hz),8.70(1H,s),8.71(1H,s),14.59(2H,br.s);13C NMR(75MHz,CDC1):□48.1(d,JF=11Hz),63.8,68.4,69.0(d,JF=5Hz),70.6(d,JF=6Hz),104.5(d,JF=6Hz),105.9(d,JF=7Hz),107.8,108.2,109.8(d,JF=23Hz),110.8(d,JF=23Hz),113.4(d,JF=23Hz),113.7(d,JF=23Hz),115.8(d,JF=8Hz),116.6(d,JF=8Hz),133.3(dd,JF=14,3Hz),133.5(dd,JF=14,4Hz),134.8,135.9,141.0(d,JF=12Hz),142.1(d,JF=12Hz),142.8(dd,JF=249,5Hz),143.3(dd,JF=249,5Hz),145.1(dd,JF=259,5Hz),145.4(dd,JF=260,5Hz),145.6(2x,d,JF=15Hz),149.5(d,JF=248Hz),150.1(2x),150.2(d,JF=249Hz),164.7,164.8,175.8(d,JF=3Hz),175.9(d,JF=3Hz);IR:(KBr)1727,1622,1489,1439cm−1;ES−HRMS m/z:(M++1H)計算値 C3625Cl 881.1071、測定値 881.1090
【0081】
更なる実験材料
DoEによる検討の実験テーブルおよび分析法を図4図5a、5b、5c、5d、5eおよび5f、図6aおよび6b、図7、ならびに図8a、8b、8c、8d、8e、8fおよび8gに更に提示する。
【0082】
製剤および投与
任意の適切な担体を用いて本発明の化合物を送達させることにより、本発明の化合物を実施することができる。活性化合物の投与量、投与方法および適切な担体の使用法は、目的とする患者または被験者および標的とする微生物、例えば標的細菌性生物に依存するであろう。本発明に係る化合物の、ヒト医学的用途および獣医学的用途の両方のための製剤には、典型的には、薬剤的に許容可能な担体と関連させた上記化合物が含まれる。
【0083】
前記担体は、本発明の化合物と適合し得るものであり、レシピエントに対して有害ではないという意味で「許容可能である」必要がある。この点において、薬剤的に許容可能な担体は、医薬品投与と適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、吸収遅延剤等を含むことを意図する。このような媒体および薬剤を薬剤的に活性な物質のために使用することは当該技術分野で公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物に不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物(本発明に従い同定され、もしくは設計されたもの、および/または当該技術分野で公知のもの)も同様に、組成物中に取り込むことができる。製剤は単位投与剤形で好都合に提供でき、薬学/微生物学の技術分野で周知のいずれかの方法で調製可能である。一般に、前記化合物を液状担体もしくは微細固体担体またはその両方と組み合わせ、次いで必要ならば生成物を所望の製剤に成形することにより、いくつかの製剤を調製する。
【0084】
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤する必要がある。溶液剤または懸濁剤は、以下の成分を含み得る:水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;アセテート、シトレートまたはホスフェート等の緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはブドウ糖等の張度調節剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基を用いて調節できる。
【0085】
例えば静脈内への投与製剤および投与方法を含む種々様々な製剤および投与方法を、S.K.Niazi,ed.,Handbook of Pharmaceutical Formulations,Vols.1−6[Vol.1 Compressed Solid Products,Vol.2 Uncompressed Drug Products,Vol.3 Liquid Products,Vol.4 Semi−Solid Products,Vol.5 Over the Counter Products, and Vol.6 Sterile Products],CRC Press,April 27,2004に見出すことができる。
【0086】
経口または非経口投与に有用な溶液は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, l8th ed.(Mack Publishing Company,1990)に記載された、医薬品分野で周知のいずれかの方法により調製できる。非経口投与用の製剤には、頬側投与用のグリココレート、直腸投与用のメトキシサリチレート、または膣内投与用のクエン酸も含まれ得る。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与用バイアル中に封入可能である。直腸投与用の座剤は、カカオ脂、他のグリセリド、または室温では固体であり、体温では液体である他の組成物等の非刺激性賦形剤と薬剤を混合することによっても調製できる。製剤には、例えばポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物性オイル、および水添ナフタレンも含まれ得る。直接投与用製剤には、グリセロールおよび他の高粘度組成物が含まれ得る。これらの薬剤に有用となる可能性のある他の非経口担体には、エチレン−酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋込み型注入システムおよびリポソームが含まれる。吸入投与用の製剤は、賦形剤として、例えばラクトースを含むことができ、または例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココレートおよびデオキシコレートを含む水溶液、または点鼻薬の形態での投与用のオイル状溶液、または鼻腔内に適用されるゲルであり得る。直腸送達用に停留浣腸を使用することもできる。
【0087】
経口投与に適する本発明の製剤は、以下の形態であり得る:カプセル剤、ゼラチンカプセル剤、サシェ剤、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤等の、各々が所定量の薬剤を含む個別単位;粉末状または顆粒状の組成物;水性液体または非水性液体の溶液または懸濁液;または水中油型エマルションもしくは油中水型エマルション。薬剤は、ボーラス、舐剤、またはペーストの形態で投与することもできる。錠剤は、所望により1または複数の副成分と共に薬剤を圧縮または成形して製造できる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒等の易流動性形態の薬剤を、所望により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合して、適切な機械で圧縮することにより調製できる。成形錠剤は、不活性な液状希釈剤で湿らせた粉末薬剤と適切な担体との混合物を、適切な機械で成形することにより製造できる。
【0088】
一般に、経口組成物には不活性希釈剤または食用担体が含まれる。経口治療投与のために、活性化合物を賦形剤と組み合わせることができる。口腔洗浄薬として使用するための液体担体を用いて調製された経口組成物は、液体担体中の化合物を含み、口に含み、うがいをして、吐き出すかまたは飲み込む。薬剤的に適合可能な結合剤および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることもできる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分のいずれか、または類似した性質を有する化合物を含むことができる:微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン等の結合剤;デンプンまたはラクトース等の賦形剤;アルギン酸、プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロート類(Sterotes)等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;スクロースまたはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ風味等の香味剤。
【0089】
注射用途に適する医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液を即座に調製するための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、クレモフォアELTM(ニュージャージー州、パーシッパニー、BASF)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。前記担体は、製造および保管の条件下で安定である必要があり、細菌および真菌等の微生物の汚染作用に対し保存される必要がある。前記担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。例えばレシチン等のコーティングの使用、分散液の場合に必要とされる粒径を維持することにより、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。多くの場合、組成物中に、例えば糖質、マニトール(manitol)、ソルビトール等のポリアルコール、塩化ナトリウムのような等張剤を含むことが好ましい。吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含ませることにより、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0090】
滅菌注射液は、先に列挙した成分の1つまたはその成分の組み合わせと共に、必要量の活性化合物を適切な溶媒に混合し、必要に応じて、その後ろ過滅菌することにより調製できる。一般に分散液は、塩基性分散媒体と先に列挙した成分からの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに活性化合物を混合することにより調製する。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合には、調製方法には、真空乾燥および凍結乾燥が含まれ、活性成分と追加的な所望成分の粉末を予め滅菌ろ過したその溶液から生成する。
【0091】
関節内投与に適する製剤は、微結晶形態、例えば水性微結晶懸濁液の形態となり得る薬剤の滅菌水性製剤の形態となり得る。リポソーム製剤または生分解性ポリマーシステムは、関節内と眼内の両投与用の薬剤を提供するのにも使用できる。
【0092】
眼治療を含む局所投与に適する製剤には、リニメント剤、ローション剤、ゲル剤、貼用剤(applicants)等の液状もしくは半流動性の製剤、クリーム、軟膏またはペースト等の水中油型もしくは油中水型エマルション;または点滴剤等の液剤もしくは懸濁剤が含まれる。皮膚表面への局所投与用製剤は、ローション、クリーム、軟膏またはセッケン等の皮膚科学的に許容可能な担体に薬剤を分散させることにより調製できる。塗布物を局部に留め、移動を抑制するために、皮膚上に皮膜または層を形成し得る担体が有用である。内部組織表面への局所投与のためには、液状組織接着剤または組織表面への吸着を強化することが知られる他の物質に薬剤を分散させることができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノーゲン/トロンビン溶液を使用すると有益となり得る。別法として、ペクチン含有製剤等の組織コーティング溶液を使用できる。
【0093】
吸入治療のために、スプレー容器、ネブライザーまたはアトマイザーで噴霧する粉末の吸入(自力吸入またはスプレー製剤)を使用できる。かかる製剤は、粉末吸入器または自力吸入粉末分配製剤からの肺内投与用の微粉末の形態であり得る。自力吸入溶液およびスプレー製剤の場合、所望のスプレー特性を有する(即ち、所望の粒径を有するスプレーを生じさせる能力があること)バルブの選択によるか、または制御された粒径の懸濁粉末として活性成分を組み込むことによるか、のいずれかによって効果を達成できる。吸入投与のために、適当な噴霧剤、例えば二酸化炭素等のガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で化合物を送達することもできる。
【0094】
全身投与は、経粘膜または経皮手段であってもよい。経粘膜または経皮投与のために、透過すべき障壁に適した浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は、一般に当該技術分野で公知であり、例えば経粘膜投与には、洗浄剤および胆汁酸塩が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは座薬の使用により達成され得る。経皮投与のためには、典型的には、当該技術分野で一般に公知の軟膏、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤に活性化合物を製剤化する。
【0095】
インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤のように、身体からの急速な排出に対して化合物を保護する担体と共に活性化合物を調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーが使用できる。かかる製剤の調製方法は当業者に明らかである。リポソーム懸濁液を薬剤的に許容可能な担体として使用することもできる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているような当業者に公知の方法に従い調製することができる。
【0096】
経口または非経口組成物は、投与を容易にし、投与量を均一とするために、単位投与剤形に製剤化することができる。単位投与剤形は、処置される被験体に対する単回投与量に適合させた物理的に別個の単位を意味する;各単位は、必要な医薬担体と共に所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位投与剤形についての詳細は、活性化合物特有の特性および達成されるべき治療効果、ならびに個人の治療のためにかかる活性化合物を配合する技術分野に内在する制限により影響され、これらに直接依存する。更に、投与はボーラスの定期的な注射により行うことができるか、または外部貯蔵容器(例えば、点滴バッグ)からの静脈内、筋肉内もしくは腹腔内投与により、更に継続的に行うことができる。
【0097】
組織表面への接着が所望される場合には、組成物は、フィブリノーゲン−トロンビン組成物または他の生体接着物質に分散させた薬剤を含むことができる。次いで、化合物を所望の組織表面に塗布し、スプレーし、または別の方法で適用する。別法として、例えば所望の効果を誘発するのに十分な時間、標的組織に適当な濃度の薬剤を提供する量のような有効量で、ヒトまたは他の哺乳動物に対する非経口または経口投与用に薬剤を製剤化することができる。
【0098】
活性化合物が移植操作の一部として使用される予定である場合、組織または器官をドナーから摘出する前に、移植される生体組織または器官に活性化合物を提供することができる。化合物はドナー宿主に提供することができる。別法として、またはこれに付け加えて、ドナーから摘出した時点で、活性化合物を含む保存溶液中に器官または生体組織を入れることができる。全ての場合において、活性化合物は、組織への注射等により所望の組織に直接投与することができるか、または本明細書中に記載され、および/または当該技術分野で公知の方法および製剤のいずれかを用いて、経口または非経口投与のいずれかにより全身的に提供することができる。薬剤が組織または器官の保存溶液の一部を構成する場合、市販の保存溶液のいずれも有利に使用することができる。例えば、当該技術分野で公知の有用な溶液には、コリンズ溶液、ウィスコンシン溶液、ベルザー溶液、ユーロコリンズ溶液および加乳酸リンゲル溶液が含まれる。
【0099】
本発明の方法と組み合わせて、薬理ゲノム学(即ち、個人のゲノム型と、外来化合物または薬剤に対するその個人の反応との間の関係の研究)を考慮することができる。治療薬における代謝の差異は、薬理学的に活性な薬剤の投与量と血中濃度との間の関係が変化することにより、重大な毒性または治療の失敗をもたらし得る。従って、医師または臨床医は、薬剤を投与するか否かを決定し、ならびに薬剤治療の投与量および/または治療の計画を作成する際に、関連する薬理ゲノム学の研究で得られた知識を適用することを考慮できる。
【0100】
一般に、活性化合物の有効投与量は、約0.1〜約100mg/体重kg/日、より好ましくは約1.0〜約50mg/体重kg/日の範囲である。投与される量は、手術または侵襲的医療処置の種類、患者の全体的健康状態、送達される化合物の相対的生物学的効率、薬剤の製剤化、製剤中の賦形剤の存在および種類、ならびに投与経路等の変数にもおそらく依存するであろう。また、所望の血中濃度または組織濃度を迅速に達成するために、投与される初期投与量は上記の上限を超えて増加させてもよく、または初期投与量は最適値よりも少なくてもよいことを理解すべきである。
【0101】
活性化合物の限定されない投与量は、投与量当たり約0.1〜約1500mgである。患者に対し好都合に投与するための単位投与量として製剤化され得る投与量の限定されない例には以下が含まれる:約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、約1050mg、約1075mg、約1100mg、約1125mg、約1150mg、約1175mg、約1200mg、約1225mg、約1250mg、約1275mg、約1300mg、約1325mg、約1350mg、約1375mg、約1400mg、約1425mg、約1450mg、約1475mg、および約1500mg。上述した投与量は、本発明の方法に従い本発明の化合物を投与するのに有用である。
【0102】
当業者の1人により理解されるように、一般的に、投与量が薬剤的に活性であると記載される場合には、その投与量は、母体部分または活性部分を基準として示される。従って、塩、水和物または母体部分もしくは活性部分の別形態を使用する場合には、投与量はやはり送達される母体部分または活性部分を基準として言及されるが、化合物の重量に対応するような調節がなされる。限定されない例としては、対象となる母体部分または活性部分が分子量250のモノカルボン酸である場合、および酸のモノナトリウム塩を同じ投与量で送達することが望ましい場合には、モノナトリウム塩の分子量が約272であろうと認識するような調整がなされる(即ち、マイナス1Hまたは1.008原子質量単位およびプラス1Naまたは22.99原子質量単位)。従って、母体化合物または活性化合物の投与量250mgはモノナトリウム塩約272mgに相当し、この量は母体化合物または活性化合物250mgを送達することにもなる。前記の別の例であるモノナトリウム塩約272mgは、母体化合物または活性化合物の投与量250mgに等しいものとなる。
【0103】
本明細書中で使用する全てのパーセンテージおよび比率は、別途指摘しない限り、重量基準である。二量体不純物のパーセントは、分析用HPLCにより典型的に定量されるように面積パーセント基準である。明細書の記載を通して、組成物が特定の成分を有する、含むまたは包含すると記載する場合には、組成物が記載された成分から本質的になること、またはその成分からなることを意図する。同様に、方法またはプロセスが特定のプロセス工程を有する、含むまたは包含すると記載する場合には、そのプロセスは、同様に、記載されたプロセス工程から本質的になるか、またはその成分からなる。更に、工程の順序またはある行為を実行する順序は、発明が実施可能であり続ける限り重要ではないことを理解すべきである。加えて、2またはそれ以上の工程または行為を同時に行うことができる。
【0104】
製剤例
静脈内投与用の製剤
【0105】
【化14】
【0106】
静脈内投与用のこの製剤は、注射用蒸留水を約60℃まで加熱することにより製剤化する。次に、クエン酸ナトリウム、クエン酸およびブドウ糖を添加し、溶解するまで撹拌する。抗菌化合物の溶液または水性スラリーを前記混合物に添加し、溶解するまで撹拌する。この混合物を撹拌下で25℃まで冷却する。pHを測定し、必要に応じて調整する。最後に、必要に応じて注射用蒸留水を用い、この混合物を所望の体積とする。この混合物をろ過し、所望の容器(バイアル、シリンジ、注入容器等)に入れ、上部を覆い、最終的に加圧蒸気滅菌する。
この製剤は、ボーラスまたは注入のいずれかで患者に静脈内投与するのに有用である。
【0107】
経口投与用錠剤
【0108】
【化15】
【0109】
抗菌化合物(所望の送達強度、例えば錠剤当たり50〜1500mgに相当する化合物のいずれか)を、微結晶性セルロースNFの1/3および無水ラクトースNFの1/2と、リボンブレンダー中で20RPMにて5分間事前混合する。この事前混合物に、微結晶性セルロースNFの残り2/3と無水ラクトースNFの残り1/2を添加する。これを20RPMにて10分間混ぜる。混ぜた粉末にクロスカルメロースナトリウムを添加し、20RPMにて5分間混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウムを90メッシュのスクリーンを通して混合物に添加し、20RPMにて更に5分間混ぜる。潤滑させた混合物を圧縮し、活性成分500mgの錠剤を得る。
これらの錠剤は患者に対する経口投与に有用である。
【0110】
参考文献の取込み
本明細書中で言及した訂正証明書、特許出願書面、科学論文、政府報告書、ウェブサイトおよび他の参考文献を含む各特許書面の全開示を、全ての目的に対してその全体を参照することにより取り込むものとする。用語が矛盾する場合には、本願明細書の記載が優先される。
【0111】
均等物
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。従って、上述した実施形態は、全ての点において、本明細書中に記載した本発明を限定するというよりも例示するものと見なすべきである。故に、本発明の範囲は、上述した記載よりも添付した特許請求の範囲により示されるものであり、請求の範囲の均等物の意味および範囲内に入る全ての変更は、その中に包含されることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6a
図6b
図6b-1】
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図8f
図8g