特許第6013738号(P6013738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013738
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】暖房装置
(51)【国際特許分類】
   F24D 7/00 20060101AFI20161011BHJP
   F24D 3/10 20060101ALI20161011BHJP
   F24H 4/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F24D7/00 F
   F24D3/10 A
   F24H4/02 Q
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-2283(P2012-2283)
(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-142488(P2013-142488A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2013年11月18日
【審判番号】不服2014-17558(P2014-17558/J1)
【審判請求日】2014年9月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 務
(72)【発明者】
【氏名】渡會 立樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 克也
(72)【発明者】
【氏名】林 泰平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
【合議体】
【審判長】 千壽 哲郎
【審判官】 田村 嘉章
【審判官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−343058(JP,A)
【文献】 特開2009−287898(JP,A)
【文献】 特開2001−82803(JP,A)
【文献】 特開2002−206805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 7/00
F24D 3/10
F24H 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気から吸熱して熱媒を加熱するヒートポンプと、
熱媒を貯めるタンクと、
ヒートポンプとタンクの間で熱媒を循環させる蓄熱循環路と、
熱媒から放熱して暖房を行う暖房端末と、
暖房端末とタンクの間で熱媒を循環させる放熱循環路と、
タンクの上部に貯められた熱媒の温度を検出する上部タンクサーミスタと、
タンクの中間部に貯められた熱媒の温度を検出する中部タンクサーミスタと、
タンクの下部に貯められた熱媒の温度を検出する下部タンクサーミスタを備えており、
ヒートポンプの加熱能力が、少なくとも、第1段階と、第1段階よりも強い第2段階と、第2段階よりも強い第3段階のいずれかに段階的に切換可能であり、
ヒートポンプを停止させることなく駆動し続けながら暖房端末で暖房を行う際に、
ヒートポンプの加熱能力が第1段階または第2段階のときに、上部タンクサーミスタの検出温度が第1所定温度以下である場合、あるいは中部タンクサーミスタの検出温度が第2所定温度以下である場合に、ヒートポンプの加熱能力を第3段階に切り換え、
ヒートポンプの加熱能力が第3段階のときに、上部タンクサーミスタの検出温度が第3所定温度を超えて、かつ中部タンクサーミスタの検出温度が第4所定温度を超える場合に、ヒートポンプの加熱能力を第2段階に切り換え、
ヒートポンプの加熱能力が第2段階または第3段階のときに、中部タンクサーミスタの検出温度が第5所定温度を超えて、かつ下部タンクサーミスタの検出温度が第6所定温度を超える場合に、ヒートポンプの加熱能力を第1段階に切り換え、
ヒートポンプの加熱能力が第1段階のときに、中部タンクサーミスタの検出温度が第7所定温度以下である場合、あるいは下部タンクサーミスタの検出温度が第8所定温度以下である場合に、ヒートポンプの加熱能力を第2段階に切り換え、
第4所定温度および第6所定温度は第2所定温度および第8所定温度よりも高く、第1所定温度および第7所定温度は第4所定温度および第6所定温度よりも高く、第3所定温度および第5所定温度は第1所定温度および第7所定温度よりも高い、暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房装置に関する。特に、大気から吸熱するヒートポンプを熱源として利用する暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、大気から吸熱するヒートポンプを熱源として利用する暖房装置が開示されている。この暖房装置は、熱媒を貯めるタンクと、熱媒を加熱するヒートポンプと、熱媒を放熱させて暖房を行う暖房端末を備えている。タンクとヒートポンプとの間は、熱媒を循環させる蓄熱用の循環経路によって接続されており、タンクと暖房端末の間は、熱媒を循環させる暖房用の循環経路によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−240341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートポンプを駆動しながら暖房端末における暖房を行う場合、タンクでの放熱ロスを防ぐ観点からは、暖房端末での放熱量とヒートポンプでの加熱量をバランスさせることが好ましい。冷媒として二酸化炭素を使用するヒートポンプでは、加熱能力を連続的に変化させることができず、加熱能力は段階的に切り換えられる。しかしながら、暖房端末における放熱量は、暖房の状況に応じて連続的に変動する。このため、暖房端末における放熱量に応じてヒートポンプを制御しようとすると、ヒートポンプの発停や加熱能力の切り換えを頻繁に行う必要が生じる。ヒートポンプの発停や加熱能力の切り換えを頻繁に行うと、ヒートポンプを構成する部品の劣化を早めてしまう。
【0005】
本明細書は、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、大気から吸熱するヒートポンプを熱源として利用する暖房装置において、ヒートポンプの発停や加熱能力の切り換えの回数を抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する暖房装置は、大気から吸熱して熱媒を加熱するヒートポンプと、熱媒を貯めるタンクと、ヒートポンプとタンクの間で熱媒を循環させる蓄熱循環路と、熱媒から放熱して暖房を行う暖房端末と、暖房端末とタンクの間で熱媒を循環させる放熱循環路と、タンクの上部に貯められた熱媒の温度を検出する上部タンクサーミスタと、タンクの中間部に貯められた熱媒の温度を検出する中部タンクサーミスタと、タンクの下部に貯められた熱媒の温度を検出する下部タンクサーミスタを備えている。その暖房装置では、ヒートポンプの加熱能力が、少なくとも、第1段階と、第1段階よりも強い第2段階と、第2段階よりも強い第3段階のいずれかに段階的に切換可能である。その暖房装置では、ヒートポンプを停止させることなく駆動し続けながら暖房端末で暖房を行う際に、ヒートポンプの加熱能力が第1段階または第2段階のときに、上部タンクサーミスタの検出温度が第1所定温度以下である場合、あるいは中部タンクサーミスタの検出温度が第1所定温度より低い第2所定温度以下である場合に、ヒートポンプの加熱能力を第3段階に切り換え、ヒートポンプの加熱能力が第3段階のときに、上部タンクサーミスタの検出温度が第1所定温度より高い第3所定温度を超えて、かつ中部タンクサーミスタの検出温度が第2所定温度より高い第4所定温度を超える場合に、ヒートポンプの加熱能力を第2段階に切り換え、ヒートポンプの加熱能力が第2段階または第3段階のときに、中部タンクサーミスタの検出温度が第5所定温度を超えて、かつ下部タンクサーミスタの検出温度が第5所定温度より低い第6所定温度を超える場合に、ヒートポンプの加熱能力を第1段階に切り換え、ヒートポンプの加熱能力が第1段階のときに、中部タンクサーミスタの検出温度が第5所定温度より低い第7所定温度以下である場合、あるいは下部タンクサーミスタの検出温度が第6所定温度より低い第8所定温度以下である場合に、ヒートポンプの加熱能力を第2段階に切り換える。ここで、第4所定温度および第6所定温度は第2所定温度および第8所定温度よりも高く、第1所定温度および第7所定温度は第4所定温度および第6所定温度よりも高く、第3所定温度および第5所定温度は第1所定温度および第7所定温度よりも高い。
【0007】
上記の暖房装置では、ヒートポンプを駆動しながら暖房端末で暖房を行う際に、上部タンクサーミスタの検出温度、中部タンクサーミスタの検出温度、下部タンクサーミスタの検出温度と現在のヒートポンプの加熱能力に基づいて、ヒートポンプの加熱能力を切り換える。上記のように、暖房端末とヒートポンプの間にタンクが介在する暖房装置では、タンクが暖房端末における放熱量の変動を緩衝する役割を果たすので、暖房端末における放熱量の変動に対してヒートポンプの加熱能力を即座に追従させて切り換える必要がない。このため、上部タンクサーミスタの検出温度、中部タンクサーミスタの検出温度および下部タンクサーミスタの検出温度と現在のヒートポンプの加熱能力に基づき、タンクの蓄熱状態に応じてヒートポンプの加熱能力を切り換える構成とすることで、ヒートポンプの発停や加熱能力の切り換えを頻繁に行うことなく、暖房端末における放熱量とヒートポンプにおける加熱量を長期的にバランスさせることができる。このような構成とすることで、ヒートポンプの発停や加熱能力の切り換えの回数を抑制することができる。
【0008】
本明細書が開示する別の暖房装置は、大気から吸熱して熱媒を加熱するヒートポンプと、熱媒を貯めるタンクと、ヒートポンプとタンクの間で熱媒を循環させる蓄熱循環路と、熱媒から放熱して暖房を行う暖房端末と、暖房端末とタンクの間で熱媒を循環させる放熱循環路と、タンクの上部に貯められた熱媒の温度を検出する上部タンクサーミスタと、タンクの中間部に貯められた熱媒の温度を検出する中部タンクサーミスタと、タンクの下部に貯められた熱媒の温度を検出する下部タンクサーミスタと、蓄熱循環路においてタンクからヒートポンプへ流れる熱媒の温度を検出する蓄熱往路サーミスタと、蓄熱循環路においてヒートポンプからタンクへ流れる熱媒の温度を検出する蓄熱復路サーミスタを備えている。その暖房装置では、ヒートポンプの加熱能力が、少なくとも、第1段階と、第1段階よりも強い第2段階と、第2段階よりも強い第3段階のいずれかに段階的に切換可能である。その暖房装置では、ヒートポンプを停止させることなく駆動し続けながら暖房端末で暖房を行う際に、ヒートポンプの加熱能力が第1段階または第2段階のときに、タンクの蓄熱量が第1所定値以下である場合に、ヒートポンプの加熱能力を第3段階に切り換え、ヒートポンプの加熱能力が第3段階のときに、タンクの蓄熱量が第1所定値よりも高い第2所定値を超える場合に、ヒートポンプの加熱能力を第2段階に切り換え、ヒートポンプの加熱能力が第2段階または第3段階のときに、タンクの蓄熱量が第2所定値よりも高い第3所定値を超える場合に、ヒートポンプの加熱能力を第1段階に切り換え、ヒートポンプの加熱能力が第1段階のときに、タンクの蓄熱量が第3所定値よりも低く第2所定値よりも高い第4所定値以下である場合に、ヒートポンプの加熱能力を第2段階に切り換える。その暖房装置では、タンクの蓄熱量が、上部タンクサーミスタ、中部タンクサーミスタ、下部タンクサーミスタおよび蓄熱復路サーミスタの平均検出温度と、蓄熱往路サーミスタの検出温度の差に、タンクの容量を乗算することによって、あるいは、上部タンクサーミスタ、中部タンクサーミスタおよび下部タンクサーミスタの平均検出温度と、蓄熱往路サーミスタの検出温度の差に、タンクの容量を乗算することによって、算出される。
【0009】
上記の暖房装置によれば、タンクの蓄熱量が減少して湯切れ状態になりそうな場合にはヒートポンプの加熱能力を増強させ、タンクの蓄熱量が増加して満蓄状態になりそうな場合にはヒートポンプの加熱能力を低減させることで、タンクが湯切れ状態や満蓄状態になることを抑制することができる。暖房端末における放熱量の変動を緩衝する役割を、常にタンクに担わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1参考例の給湯暖房システム10(実施例の給湯暖房システム100)の構成を模式的に示す図である。
図2】ヒートポンプユニット20を運転しながら暖房を行うときの熱媒の流れを示す図である。
図3】暖房端末90の要求する熱媒の温度に対して、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度が高い場合の熱媒の流れを示す図である。
図4】暖房端末90の要求する熱媒の温度に対して、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度が低い場合の熱媒の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態では、暖房用の熱媒に、水又は不凍液を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、ヒートポンプで使用する冷媒に、二酸化炭素を用いることが好ましい。
【実施例】
【0013】
(参考例)
本発明の参考例について、図面を参照しながら説明する。図1は、参考例の給湯暖房システム10を示している。図1に示すように、給湯暖房システム10は、ヒートポンプユニット20と、タンクユニット28と、給湯暖房ユニット80と、暖房端末90を備えている。
【0014】
ヒートポンプユニット20は、大気から吸熱して、タンクユニット28から送られる熱媒を加熱するヒートポンプである。ヒートポンプユニット20は、図示省略するが、圧縮機、放熱器、膨張弁、蒸発器と、それらを順に接続する冷媒循環経路を備えている。その他、蒸発器に送風するファンや、それを駆動するモータ等も設けられている。冷媒循環経路内には、冷媒である二酸化炭素が充填されている。ヒートポンプユニット20の詳細については、公知のものと同じであるので、ここでは説明を省略する。ヒートポンプユニット20は、加熱能力を段階的に切換可能である。本参考例では、ヒートポンプユニット20は、加熱能力を弱い順に「小」、「中」および「大」の3段階で切換可能である。また、ヒートポンプユニット20には、ヒートポンプユニット20とタンクユニット28との間で熱媒を循環させる循環ポンプ22が設けられている。
【0015】
タンクユニット28は、熱媒を貯めるタンク30を備えている。本参考例の熱媒は、不凍液である。本参考例のタンク30は、一例であるが、30リットルの容量を有している。タンク30には、上部タンクサーミスタ42a,中部タンクサーミスタ42b,下部タンクサーミスタ42cが設けられている。上部タンクサーミスタ42aはタンク30の上部(例えばタンク30の頂部から10リットルの位置)に設けられており、中部タンクサーミスタ42bはタンク30の中間部(例えばタンク30の頂部から15リットルの位置)に設けられており、下部タンクサーミスタ42cはタンク30の下部(例えばタンク30の頂部から20リットルの位置)に設けられている。上部タンクサーミスタ42a,中部タンクサーミスタ42b,下部タンクサーミスタ42cは、タンクユニット28のコントローラ54に接続されている。なお、タンク30内の熱媒の温度を検出するサーミスタは、上記の3つに限定されるものではなく、2つ設けられていてもよいし、4つ以上設けられていても良い。
【0016】
タンク30は、蓄熱用往路34と蓄熱用復路32を介して、ヒートポンプユニット20に接続されている。蓄熱用往路34は、タンク30からヒートポンプユニット20へ熱媒を送る管路であり、タンク30の底部に接続されている。蓄熱用復路32は、ヒートポンプユニット20からタンク30へ熱媒を戻す管路であり、タンク30の頂部に接続されている。蓄熱用往路34と蓄熱用復路32は、ヒートポンプユニット20とタンク30との間で熱媒を循環させる循環経路を構成している。当該循環経路には、前述した循環ポンプ22が設けられている。本参考例の循環ポンプ22は、ヒートポンプユニット20に内蔵されているが、循環ポンプ22の位置は特に限定されない。
【0017】
蓄熱用往路34には、手動弁24と、蓄熱往路サーミスタ44が設けられている。同様に、蓄熱用復路32にも、手動弁24と、蓄熱復路サーミスタ46が設けられている。蓄熱往路サーミスタ44と蓄熱復路サーミスタ46は、タンクユニット28のコントローラ54に接続されている。コントローラ54は、蓄熱往路サーミスタ44による検出温度から、ヒートポンプユニット20による加熱前の熱媒の温度を把握し、蓄熱復路サーミスタ46による検出温度から、ヒートポンプユニット20による加熱後の熱媒の温度を把握することができる。
【0018】
暖房端末90は、タンク30からの熱媒を放熱させて暖房を行う。暖房端末90は、例えば、パネルヒータ、パネルラジエータ、床暖房、ファンコンベクタ、温水式ルームエアコンである。暖房端末90は、暖房用往路56と暖房用復路60を介して、タンク30に接続されている。暖房用往路56は、タンク30から暖房端末90へ熱媒を送る管路であり、タンク30の頂部に接続されている。暖房用復路60は、暖房端末90からタンク30へ熱媒を戻す管路であり、タンク30の底部に接続されている。暖房用往路56と暖房用復路60は、タンク30と暖房端末90との間で熱媒を循環させる循環経路を構成している。
【0019】
暖房用復路60には、手動弁52を有する排水管50が接続されている。また、暖房用復路60には、膨張タンク70が設けられている。本参考例では、熱媒の循環する回路が密閉回路とされているので、熱媒の熱膨張を吸収するために、膨張タンク70が用意されている。なお、膨張タンク70を接続する位置は、暖房用復路60に限定されず、例えば暖房用往路56や他の経路に接続してもよい。
【0020】
暖房用往路56は、給湯暖房ユニット80を経由して、暖房端末90に接続されている。給湯暖房ユニット80は、燃焼式の熱源機であり、可燃性ガスを燃焼させる二つのバーナー84、86を有する。一方のバーナー84は、給湯用のものであり、給湯管路82を流れる上水を加熱する。他方のバーナー86は、暖房用のものであり、必要に応じて、暖房用往路56を流れる熱媒を加熱する。また、給湯暖房ユニット80は、コントローラ88を有している。また、給湯暖房ユニット80には、暖房端末90とタンクユニット28との間で熱媒を循環させる循環ポンプ87が設けられている。なお、循環ポンプ87を設ける位置は、給湯暖房ユニット80に限られず、特に限定されない。この構成によると、暖房用往路56を通って暖房端末90に送られる熱媒の温度が低すぎるときは、バーナー86で暖房用往路56を流れる熱媒を加熱することにより、暖房端末90に送られる熱媒の温度を上昇させることができる。
【0021】
暖房用往路56と暖房用復路60の間は、バイパス経路64を介して接続されている。それにより、暖房用復路60を流れる熱媒の一部又は全部を、タンク30を経由することなく、暖房用往路56へ送ることができるように構成されている。また、暖房用復路60とバイパス経路64との分岐位置には混合弁66が設けられており、暖房用復路60からバイパス経路64を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量と、暖房用復路60からタンク30を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量の比率を調整できるようになっている。混合弁66は、コントローラ54に接続されており、その動作はコントローラ54によって制御される。この構成によると、暖房用往路56を通って暖房端末90に送られる熱媒の温度が高すぎるときは、暖房用復路60を流れる放熱後の熱媒を、暖房用往路56を流れる熱媒に合流させることによって、暖房端末90に送られる熱媒の温度を低下させることができる。
【0022】
暖房用往路56には、第1暖房往路サーミスタ48、第2暖房往路サーミスタ58が設けられている。第1暖房往路サーミスタ48は、バイパス経路64が暖房用往路56に合流する合流点よりも上流側に設けられており、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度を検出する。第2暖房往路サーミスタ58は、バイパス経路64が暖房用往路56に合流する合流点よりも下流側に設けられており、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒とバイパス経路64から暖房用往路56に送られる熱媒が混合した後の温度を検出する。暖房用復路60には、暖房復路サーミスタ62が設けられている。暖房復路サーミスタ62は、暖房用復路を流れる熱媒の温度を検出する。第1暖房往路サーミスタ48、第2暖房往路サーミスタ58および暖房復路サーミスタ62は、タンクユニット28のコントローラ54に接続されている。コントローラ54は、第1暖房往路サーミスタ48、第2暖房往路サーミスタ58および暖房復路サーミスタ62の検出温度に基づいて、混合弁66の動作を制御することで、暖房端末90に送られる熱媒の温度を所望の温度に調整することができる。
【0023】
図2は、ヒートポンプユニット20を運転しながら暖房を行うときの熱媒の流れを示している。図2に示すように、暖房端末90には、タンク30の上部から暖房用往路56を通じて高温の熱媒が送られる。暖房端末90に送られた高温の熱媒は、暖房端末90において放熱した後に、暖房用復路60を通じてタンク30の下部へ戻される。一方、ヒートポンプユニット20には、タンク30の下部から蓄熱用往路34を通じて低温の熱媒が送られる。ヒートポンプユニット20に送られた低温の熱媒は、ヒートポンプユニット20において加熱された後に、蓄熱用復路32を通じてタンク30の上部へ戻される。
【0024】
図3は、暖房端末90の要求する熱媒の温度に対して、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度が高い場合の熱媒の流れを示している。この場合には、混合弁66を制御して、暖房用復路60からバイパス経路64を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量を増加させ、暖房用復路60からタンク30を介して暖房用往路56へ送られる熱媒の流量を減少させる。これにより、暖房用往路56から暖房端末90へ送られる熱媒の温度を、暖房端末90の要求する熱媒の温度に調整することができる。暖房端末90の要求する熱媒の温度が低下した場合でも、ヒートポンプユニット20の加熱能力を変化させることなく、暖房端末90における要求の変化に速やかに対応することができる。
【0025】
図4は、暖房端末90の要求する熱媒の温度に対して、タンク30から暖房用往路56に送られる熱媒の温度が低い場合の熱媒の流れを示している。この場合には、バーナー86で暖房用往路56を流れる熱媒を加熱する。バーナー86における加熱量を調整することで、暖房用往路56から暖房端末90へ送られる熱媒の温度を、暖房端末90の要求する熱媒の温度に速やかに調整することができる。暖房端末90の要求する熱媒の温度が上昇した場合でも、ヒートポンプユニット20の加熱能力を変化させることなく、暖房端末90における要求の変化に速やかに対応することができる。
【0026】
参考例の給湯暖房システム10では、ヒートポンプユニット20を運転しながら暖房を行っている間、タンク30の蓄熱量に基づいて、ヒートポンプユニット20の加熱能力を切り換える。本参考例では、タンク30の蓄熱量を、以下によって算出する。
【0027】
タンク30の蓄熱量=((上部タンクサーミスタ42a、中部タンクサーミスタ42b、下部タンクサーミスタ42cおよび蓄熱復路サーミスタ46の平均検出温度)−蓄熱往路サーミスタ44の検出温度)×タンク30の容量
【0028】
なお、タンク30の蓄熱量は、蓄熱復路サーミスタ46の検出温度を用いることなく、以下によって算出してもよい。
【0029】
タンク30の蓄熱量=((上部タンクサーミスタ42a、中部タンクサーミスタ42bおよび下部タンクサーミスタ42cの平均検出温度)−蓄熱往路サーミスタ44の検出温度)×タンク30の容量
【0030】
参考例の給湯暖房システム10では、タンク30の蓄熱量に基づいて、ヒートポンプユニット20の加熱能力を以下のように切り換える。
【0031】
ヒートポンプユニット20の加熱能力が「小」または「中」のときに、タンク30の蓄熱量が第1所定値(例えば150kcal)以下となると、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「大」に切り換える。その後、ヒートポンプユニット20の加熱能力が「大」のときに、タンク30の蓄熱量が第2所定値(例えば225kcal)を超えると、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「中」に切り換える。
【0032】
また、ヒートポンプユニット20の加熱能力が「中」または「大」のときに、タンク30の蓄熱量が第3所定値(例えば450kcal)を超えると、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「小」に切り換える。その後、ヒートポンプユニット20の加熱能力が「小」のときに、タンク30の蓄熱量が第4所定値(例えば300kcal)以下となると、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「中」に切り換える。
【0033】
以上のようにヒートポンプユニット20の加熱能力を切り換えることで、本参考例の給湯暖房システム10は、以下のように動作する。ヒートポンプユニット20を運転しながら暖房端末90での暖房を行う場合、通常はヒートポンプユニット20の加熱能力は「中」に設定されている。暖房端末90における放熱量に比べて、ヒートポンプユニット20における加熱量が小さい場合には、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が減少していく。そこで、タンク30の蓄熱量が第1所定値以下となったときにヒートポンプユニット20の加熱能力を「大」に切り換えることで、タンク30に供給される熱量を増大させて、タンク30が湯切れ状態となることが抑制されている。ヒートポンプユニット20の加熱能力を「大」に切り換えることで、暖房端末90における放熱量に比べてヒートポンプユニット20における加熱量が大きくなると、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が増加していく。そして、タンク30の蓄熱量が第2所定値を超えると、ヒートポンプユニット20の加熱能力は「中」に戻される。
【0034】
上記とは異なり、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「中」として暖房端末90での暖房を行っている際に、暖房端末90における放熱量に比べて、ヒートポンプユニット20における加熱量が大きい場合には、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が増大していく。そこで、タンク30の蓄熱量が第3所定値を超えたときにヒートポンプユニット20の加熱能力を「小」に切り換えることで、タンク30に供給される熱量を減少させて、タンク30が満蓄状態となることが抑制されている。ヒートポンプユニット20の加熱能力を「小」に切り換えることで、暖房端末90における放熱量に比べてヒートポンプユニット20における加熱量が小さくなると、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が減少していく。そして、タンク30の蓄熱量が第4所定値以下となると、ヒートポンプユニット20の加熱能力は「中」に戻される。
【0035】
以上のように、本参考例では、暖房端末90とヒートポンプユニット20の間にタンク30を介在させ、タンク30の蓄熱量に応じてヒートポンプユニット20の加熱能力を切り換えている。タンク30が暖房端末90における放熱量の変動を緩衝する役割を果たすので、暖房端末90における放熱量の変動に対してヒートポンプユニット20の加熱能力を即座に追従させて切り換える必要がない。ヒートポンプユニット20の加熱能力を段階的にしか切り換えできない場合であっても、暖房端末90における放熱量とヒートポンプユニット20における加熱量を長期的にバランスさせることができる。このような構成とすることで、ヒートポンプユニット20が不必要に発停や加熱能力の切り換えを繰り返す事態を防ぐことができる。
【0036】
実施例
本実施例の給湯暖房システム100は、図1に示す参考例の給湯暖房システム10と同様の構成を備えているが、ヒートポンプユニット20の加熱能力の切り換え方法が参考例の給湯暖房システム10とは異なる。本実施例の給湯暖房システム100では、上部タンクサーミスタ42a、中部タンクサーミスタ42bおよび下部タンクサーミスタ42cの検出温度に応じて、ヒートポンプユニット20の加熱能力を以下のように切り換える。
【0037】
ヒートポンプユニット20の加熱能力が「小」または「中」のときに、上部タンクサーミスタ42aの検出温度が第1所定値(例えば70℃)以下となった場合、あるいは中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第2所定値(例えば30℃)以下となった場合、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「大」に切り換える。その後、ヒートポンプユニット20の加熱能力が「大」のときに、上部タンクサーミスタ42aの検出温度が第3所定値(例えば75℃)を超えて、かつ中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第4所定値(例えば40℃)を超えると、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「中」に切り換える。
【0038】
また、ヒートポンプユニット20の加熱能力が「中」または「大」のときに、中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第5所定値(例えば75℃)を超えて、かつ下部タンクサーミスタ42cの検出温度が第6所定値(例えば40℃)を超えた場合、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「小」に切り換える。その後、ヒートポンプユニット20の加熱能力が「小」のときに、中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第7所定値(例えば70℃)以下となった場合、あるいは下部タンクサーミスタ42cの検出温度が第8所定値(例えば30℃)以下となった場合に、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「中」に切り換える。
【0039】
以上のようにヒートポンプユニット20の加熱能力を切り換えることで、給湯暖房システム10は以下のように動作する。暖房端末90における放熱量に比べて、ヒートポンプユニット20における加熱量が小さい場合には、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が減少していく。そこで、上部タンクサーミスタ42aの検出温度が第1所定値以下となった場合、あるいは中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第2所定値以下となった場合に、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「大」に切り換えることで、タンク30が湯切れ状態となることが抑制されている。ヒートポンプユニット20の加熱能力を「大」に切り換えることで、暖房端末90における放熱量に比べてヒートポンプユニット20における加熱量が大きくなると、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が増加していく。そして、上部タンクサーミスタ42aの検出温度が第3所定値を超えて、かつ中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第4所定値を超えると、ヒートポンプユニット20の加熱能力は「中」に弱められる。
【0040】
上記とは異なり、暖房端末90における放熱量に比べて、ヒートポンプユニット20における加熱量が大きい場合には、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が増大していく。そこで、中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第5所定値を超えて、かつ下部タンクサーミスタ42cの検出温度が第6所定値を超えた場合に、ヒートポンプユニット20の加熱能力を「小」に切り換えることで、タンク30が満蓄状態となることが抑制されている。ヒートポンプユニット20の加熱能力を「小」に切り換えることで、暖房端末90における放熱量に比べてヒートポンプユニット20における加熱量が小さくなると、時間の経過とともにタンク30の蓄熱量が減少していく。そして、中部タンクサーミスタ42bの検出温度が第7所定値以下となるか、あるいは下部タンクサーミスタ42cの検出温度が第8所定値以下となると、ヒートポンプユニット20の加熱能力は「中」に強められる。
【0041】
以上のように、本実施例では、暖房端末90とヒートポンプユニット20の間にタンク30を介在させ、タンク30に設けられた上部タンクサーミスタ42a、中部タンクサーミスタ42b、下部タンクサーミスタ42cの検出温度に応じてヒートポンプユニット20の加熱能力を切り換えている。タンク30が暖房端末90における放熱量の変動を緩衝する役割を果たすので、暖房端末90における放熱量の変動に対してヒートポンプユニット20の加熱能力を即座に追従させて切り換える必要がない。ヒートポンプユニット20の加熱能力を段階的にしか切り換えできない場合であっても、暖房端末90における放熱量とヒートポンプユニット20における加熱量を長期的にバランスさせることができる。このような構成とすることで、ヒートポンプユニット20が不必要に発停や加熱能力の切り換えを繰り返す事態を防ぐことができる。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0043】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10 給湯暖房システム
20 ヒートポンプユニット
22 循環ポンプ
24 手動弁
28 タンクユニット
30 タンク
32 蓄熱用復路
34 蓄熱用往路
42a 上部タンクサーミスタ
42b 中部タンクサーミスタ
42c 下部タンクサーミスタ
44 蓄熱往路サーミスタ
46 蓄熱復路サーミスタ
48 第1暖房往路サーミスタ
50 排水管
52 手動弁
54 コントローラ
56 暖房用往路
58 第2暖房往路サーミスタ
60 暖房用復路
62 暖房復路サーミスタ
64 バイパス経路
66 混合弁
70 膨張タンク
80 給湯暖房ユニット
82 給湯管路
84 バーナー
86 バーナー
87 循環ポンプ
88 コントローラ
90 暖房端末
100 給湯暖房システム
図1
図2
図3
図4