(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013744
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-41038(P2012-41038)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-179112(P2013-179112A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小田嶋 智
(72)【発明者】
【氏名】細野 則義
【審査官】
儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−205817(JP,A)
【文献】
特開2011−171418(JP,A)
【文献】
特開2006−032488(JP,A)
【文献】
特開2006−306458(JP,A)
【文献】
特開2007−096085(JP,A)
【文献】
特開2011−159864(JP,A)
【文献】
特開2010−283098(JP,A)
【文献】
特開2011−119427(JP,A)
【文献】
特開2012−023270(JP,A)
【文献】
特開2007−242655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックグラインドされた可撓性の薄い半導体ウェーハに、剛性付与用の半導体ウェーハ用治具を粘着する半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
半導体ウェーハ用治具は、半導体ウェーハの片面周縁部に対向するリング形の基材層と、この基材層の半導体ウェーハの片面周縁部に対向する対向面に設けられて半導体ウェーハの片面周縁部に剥離可能に粘着する一対の粘着層とを含み、基材層を半導体ウェーハよりも僅かに拡径に形成し、この基材層の外周縁を半導体ウェーハの周縁部から3mm以内で周縁部に沿うよう近接し、基材層の周方向には、加工時の半導体ウェーハを位置決め固定する複数の固定孔を所定の間隔で穿孔し、一対の粘着層を平面略半円弧形にそれぞれ湾曲形成し、この一対の粘着層を半導体ウェーハの片面周縁部に対向する基材層の対向面の大部分に積層粘着するとともに、一対の粘着層の両端部を基材層の対向面の大部分以外の残部において隙間を介し対向させ、基材層の対向面の残部と一対の粘着層の両端部との間の空隙を、基材層の固定孔が位置する剥離契機部に区画形成し、各粘着層をシリコーンゴムあるいはフッ素ゴムにより形成してその半導体ウェーハの片面周縁部に粘着する粘着面の平均表面粗さRaを0.5〜5μmの範囲とし、
バックグラインドされた可撓性の薄い半導体ウェーハの片面周縁部に半導体ウェーハ用治具の粘着層を加圧しながら剥離可能に粘着し、半導体ウェーハにストレスリリーフ、PVD、又はCVDの何れかの処理を施した後、半導体ウェーハ用治具をその剥離契機部から引き上げることにより、半導体ウェーハから半導体ウェーハ用治具を剥離することを特徴とする半導体ウェーハの取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造工程で使用される
半導体ウェーハの取り扱い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における半導体ウェーハは、バックグラインド工程で図示しない薄い半導体パッケージに適合させるため、裏面がバックグラインドされ、ダイシング工程でキャリア治具の粘着テープに粘着支持された後、ダイシングブレードで個々の半導体チップに分離されることにより、多数の半導体チップを形成する(特許文献1、2、3、4参照)。半導体ウェーハのバックグラインド工程においては、半導体ウェーハが回転砥石により100μm以下、時には30〜50μm程度の厚みに薄く削られるが、そうすると、半導体ウェーハが非常に薄く脆く撓みやすくなるので、ハンドリングや搬送に支障を来たすおそれがある。
【0003】
係る点に鑑み、従来においては、(1)半導体ウェーハをバックグラインドする際、半導体ウェーハの周縁部を残しながらその内側領域をバックグラインドし、残存する周縁部により半導体ウェーハの剛性を確保して撓みを抑制する方法、(2)半導体ウェーハの周縁部に剛性確保リングを接着剤により位置決め固定し、この剛性確保リングにより、半導体ウェーハに剛性を付与して撓みを抑制防止する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260219号公報
【特許文献2】特開2009−164476号公報
【特許文献3】特開2005−191039号公報
【特許文献4】特許第4239974号公報
【特許文献5】特開2011−159864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、(1)の方法を採用する場合には、半導体ウェーハの強度を向上させて反りを低減することができるものの、半導体ウェーハの周縁部を残存させるため、専用の装置が必要になり、製造設備やコストの削減を図ることができないという問題が新たに生じることとなる。
【0006】
これに対し、(2)の方法の場合、(1)の問題を解決することができるので、実に便利である。しかしながら、半導体ウェーハの周縁部に剛性確保リングを重ねて位置決めする際、剛性確保リングを前後左右に少しずつずらしながら徐々に位置合わせするが、剛性確保リングの固定に接着剤を使用すると、接着剤による汚染を回避しなければならないので、微調整しながらの位置合わせが困難になるおそれが少なくない。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、半導体ウェーハの剛性を向上させ、製造設備やコストの削減を図ることができ、しかも、半導体ウェーハの周縁部に微調整しながら位置決めすることのできる
半導体ウェーハの取り扱い方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、
バックグラインドされた可撓性の薄い半導体ウェーハに、剛性付与用の半導体ウェーハ用治具を粘着する半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
半導体ウェーハ用治具は、半導体ウェーハの片面周縁部に対向するリング形の基材層と、この基材層の半導体ウェーハの片面周縁部に対向する対向面に設けられて半導体ウェーハの片面周縁部に剥離可能に粘着する一対の粘着層とを含み、基材層を半導体ウェーハよりも僅かに拡径に形成し、この基材層の外周縁を半導体ウェーハの周縁部から3mm以内で周縁部に沿うよう近接し、基材層の周方向には、加工時の半導体ウェーハを位置決め固定する複数の固定孔を所定の間隔で穿孔し、一対の粘着層を平面略半円弧形にそれぞれ湾曲形成し、この一対の粘着層を半導体ウェーハの片面周縁部に対向する基材層の対向面の大部分に積層粘着するとともに、一対の粘着層の両端部を基材層の対向面の大部分以外の残部において隙間を介し対向させ、基材層の対向面の残部と一対の粘着層の両端部との間の空隙を、基材層の固定孔が位置する剥離契機部に区画形成し、各粘着層をシリコーンゴムあるいはフッ素ゴムにより形成してその半導体ウェーハの片面周縁部に粘着する粘着面の平均表面粗さRaを0.5〜5μmの範囲とし、
バックグラインドされた可撓性の薄い半導体ウェーハの片面周縁部に半導体ウェーハ用治具の粘着層を加圧しながら剥離可能に粘着し、半導体ウェーハにストレスリリーフ、PVD、又はCVDの何れかの処理を施した後、半導体ウェーハ用治具をその剥離契機部から引き上げることにより、半導体ウェーハから半導体ウェーハ用治具を剥離することを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハは、φ150、200、300、450mmタイプ等を特に問うものではない。この半導体ウェーハの片面は、半導体ウェーハの表面でも良いし、裏面でも良い。また、基材層と粘着層とは、同じ厚さや幅でも良いし、異なる厚さ・幅でも良い。これら基材層と粘着層とは、一体成形しても良いし、別々に形成することもできる。
【0013】
基材層は、主にリング形に形成されるが、半導体ウェーハの周縁部にフラットなオリフラが形成されている場合には、半導体ウェーハの周縁部に沿う形状に形成される。この基材層は、透明、不透明、半透明、着色、可撓性の有無を特に問うものではない。粘着層は、単数複数を問うものではない。さらに、半導体ウェーハに施す所定の処理には、
ストレスリリーフ、PVD、CVDが該当する。
【0014】
本発明によれば、薄い半導体ウェーハに剛性を付与して所定の処理を施す場合には、薄い半導体ウェーハの片面を上面とし、この半導体ウェーハの片面周縁部に半導体ウェーハ用治具の粘着層を軽く重ねて位置合わせし、この半導体ウェーハ用治具を加圧して着脱自在に粘着する。
【0015】
この際、粘着層の粘着面における平均表面粗さRaが0.5μm以上なので、半導体ウェーハ用治具を軽く重ねただけでは粘着せず、半導体ウェーハ用治具を必要なだけずらして適切に位置合わせすることができる。また、Raが5μm以下であるから、加圧すれば、半導体ウェーハの片面周縁部に対して半導体ウェーハ用治具を適切に粘着することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体ウェーハの剛性を向上させ、製造設備やコストの削減を図ることができるという効果がある。また、半導体ウェーハの片面周縁部に半導体ウェーハ用治具を接着剤により剥離不能に固着するのではなく、弱粘着性の粘着層を利用してその粘着面の表面粗さを数値限定するので、半導体ウェーハに半導体ウェーハ用治具を重ねてその位置を手作業で繰り返しながら微調整し、正確に位置合わせすることができる。具体的には、粘着層の粘着面における平均表面粗さRaが0.5μm以上なので、半導体ウェーハ用治具を軽く重ねただけでは粘着せず、半導体ウェーハ用治具を必要なだけずらして適切に位置合わせすることが可能になる。また、平均表面粗さRaが5μm以下であるから、加圧すれば、半導体ウェーハの片面周縁部に対して半導体ウェーハ用治具を適切に粘着することができる。
また、半導体ウェーハ用治具の剥離契機部に指先等を干渉させて持ち上げることができるので、半導体ウェーハの周縁部から密着状態の半導体ウェーハ用治具を簡単、かつ安全に取り外すことができる。
また、基材層を半導体ウェーハよりも僅かに拡径に形成するので、ハンドリング装置の位置決め治具等が薄い半導体ウェーハのエッジに直接接触し、チッピングやクラック等が発生するのを有効に抑制することが可能になる。さらに、基材層の複数の固定孔を利用すれば、加工時に半導体ウェーハを位置決め固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に
係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【
図2】本発明に
係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるダイシング状態を模式的に示す断面説明図である。
【
図3】本発明に
係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハと半導体ウェーハ用治具との関係を模式的に示す斜視説明図である。
【
図4】本発明に係る半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハと半導体ウェーハ用治具との関係を模式的に示す正面説明図である。
【
図5】本発明に係る
半導体ウェーハの取り扱い方法の
実施形態における半導体ウェーハ用治具を模式的に示す裏面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における半導体ウェーハ用治具は、
図1ないし
図5に示すように、薄い半導体ウェーハ1の裏面に対向するエンドレスの基材層10と、この基材層10に積層されて半導体ウェーハ1の裏面周縁部に剥離可能に粘着する一対の粘着層14とを二層構造に備え、基材層10の大部分に一対の粘着層14を積層し、大部分以外の残部13を粘着層14の存在しない一対の剥離契機部16とし、各粘着層14の粘着面15の平均表面粗さRaを所定の範囲内に設定するようにしている。
【0019】
半導体ウェーハ1は、
図1ないし
図3に示すように、例えばφ200mmの平面円形のシリコンウェーハからなり、表面に回路パターンが形成されており、裏面が図示しない汎用のバックグラインド装置でバックグラインドされることにより、100μm以下の厚さに薄化される。この半導体ウェーハ1は、バックグラインドされた裏面に回路パターンが必要に応じて形成され、周縁部に、結晶方向の判別や整列を容易にする平面略V字形のノッチ2が切り欠かれる。
【0020】
半導体ウェーハ用治具の基材層10と粘着層14とは、
図4や
図5に示すように、例えば基材層10と粘着層14とが同じ幅に形成されるが、製造や作業の便宜を図りたい場合等には、基材層10の幅が粘着層14の幅よりもやや広く形成される。
【0021】
基材層10は、
図1ないし
図5に示すように、所定の材料により薄い平面リング形に形成され、加工時に半導体ウェーハ1を位置決め固定する複数の固定孔11が周方向に所定の間隔で穿孔されており、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に対向する。この基材層10の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばシリコン、ガラスエポキシ樹脂やガラスクロス複合材、カーボン繊維強化プラスチック、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、金属(アルミニウム、SUS、タングステン、鉄−ニッケル合金(42アロイ等))、その他の合金等があげられる。これらの中でも、機械的特性、吸湿性、強度、熱伝導率、耐熱温度、電気的特性に優れるガラスエポキシ樹脂の採用が最適である。
【0022】
基材層10は、半導体ウェーハ1と同径か、あるいは僅かに拡径に形成される。基材層10は、半導体ウェーハ1と同径の場合には、外周縁が半導体ウェーハ1の周縁部に整合するよう揃えられ、半導体ウェーハ1よりも僅かに拡径の場合には、外周縁が半導体ウェーハ1の周縁部から3mm以内で周縁部に沿うよう近接する。基材層10が半導体ウェーハ1よりも僅かに拡径に形成される場合、図示しないハンドリング装置の位置決め治具等が薄い半導体ウェーハ1のエッジに直接接触し、チッピングやクラック等が発生するのを有効に抑制することができる。
【0023】
一対の粘着層14は、
図1、
図4、
図5に示すように、弱粘着性等に優れる所定の材料により厚さ200μm以下(例えば、100μm程度)の薄い平面略半円弧形にそれぞれ湾曲形成され、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に対向する基材層10の平坦な対向面12に積層粘着されており、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に着脱自在に粘着する。
【0024】
各粘着層14の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、60℃程度で剥離強度が低下し、しかも、耐熱性等に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴム等があげられる。これらの材料には必要な所定のフィラーが添加される。このような一対の粘着層14は、基材層10の対向面12の大部分に積層粘着され、両端部が対向面12の大部分以外の残部13において隙間を介し対向する。
【0025】
各剥離契機部16は、
図4や
図5に示すように、対向面12の残部13と一対の粘着層14の両端部との間に空隙として区画形成され、半導体ウェーハ1から粘着した半導体ウェーハ用治具を剥離する際のきっかけとなる。各剥離契機部16には、基材層10の固定孔11が作業用の目印として選択的に位置する。
【0026】
各粘着層14の半導体ウェーハ1の裏面周縁部に粘着する粘着面15は、粘着層14が金型による成形法で成形される場合、金型のキャビティによる転写法、あるいは成形材料にシリカからなるフィラーを添加する等の方法により粗く形成される。この粘着面15の平均表面粗さ(算術表面粗さ)Raは、専用の表面粗さ測定機、レーザ顕微鏡、又は三次元走査型電子顕微鏡等の測定により、0.5〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0027】
これは、粘着面15の平均表面粗さRaが0.5μm未満の場合には、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に半導体ウェーハ用治具を重ねて位置決めする際、半導体ウェーハ用治具を軽く重ねるだけでも粘着し、半導体ウェーハ用治具を前後左右に滑らせる作業に重大な支障を来たすからである。また、Raが5μmを超える場合には、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に対して半導体ウェーハ用治具が粘着しなくなるからである。
【0028】
上記構成において、バックグラインドされた厚さ100μm以下の薄い半導体ウェーハ1に剛性を付与してダイシング処理を施す場合には、先ず、バックグラインドされた薄い半導体ウェーハ1の裏面を上面とし、この半導体ウェーハ1の裏面周縁部に半導体ウェーハ用治具の粘着層14を軽く重ねて前後左右に位置合わせし、この半導体ウェーハ用治具をローラ等により加圧して隙間なく着脱自在に粘着する(
図3参照)。
【0029】
この際、粘着面15の平均表面粗さRaが0.5μm以上なので、半導体ウェーハ用治具を軽く重ねただけでは粘着せず、半導体ウェーハ用治具を幾度もずらして適切に位置合わせすることができる。また、Raが5μm以下であるから、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に対して半導体ウェーハ用治具を確実に粘着することができる。半導体ウェーハ1の周縁部に半導体ウェーハ用治具の外周縁を位置決めする場合、半導体ウェーハ1のノッチ2に半導体ウェーハ用治具の剥離契機部16を対向させることが可能である。
【0030】
次いで、強度が増した半導体ウェーハ1にストレスリリーフ、PVD、CVD、エッチング、ハンダバンプの形成等、必要な処理を施し、半導体ウェーハ1をキャリア治具20の粘着テープ21に粘着し、キャリア治具20をチャックテーブル22上に真空吸着する(
図1参照)。
【0031】
チャックテーブル22にキャリア治具20を真空ポンプ23で真空吸着したら、半導体ウェーハ1の裏面周縁部から半導体ウェーハ用治具を剥離する。この場合、半導体ウェーハ用治具の剥離契機部16に指先等を係止して引き上げれば、半導体ウェーハ1の裏面周縁部から粘着層14が徐々に剥がれ、半導体ウェーハ用治具を完全に取り外すことができる。
【0032】
この際、60℃程度で剥離強度が低下する粘着層14の特性を利用すれば、半導体ウェーハ用治具の取り外しが簡易になる。そしてその後、半導体ウェーハ1に裏面側から高速回転するダイシングブレード24でダイシング処理(
図2参照)を施せば、半導体ウェーハ1の破損を招くことなく、多数の半導体チップを容易に得ることが可能となる。
【0033】
上記構成によれば、バックグラインドされた薄い半導体ウェーハ1の周縁部に半導体ウェーハ用治具を沿わせて粘着することにより、半導体ウェーハ1の強度を増大させることができるので、半導体ウェーハ1の反りや撓みを有効に抑制防止し、後のハンドリングや搬送の円滑化を図ることができる。したがって、半導体ウェーハ1の周縁部を残しながらその内側領域をバックグラインドする必要がなく、専用の装置を確実に省略することができるので、製造設備やコストの大幅な削減が期待できる。
【0034】
また、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に半導体ウェーハ用治具を接着剤により剥離不能に固着するのではなく、弱粘着性の粘着層14を利用してその粘着面15の表面粗さを数値限定するので、半導体ウェーハ1に半導体ウェーハ用治具を重ねてその位置を手作業で繰り返しながら微調整し、正確に位置合わせすることができる。
【0035】
また、汚染の原因となる接着剤を何ら要しないので、作業の遅延や煩雑化を招くこともない。また、作業毎に半導体ウェーハ用治具を廃棄することなく、再利用等することも可能となる。さらに、剥離契機部16に指先等を干渉させて持ち上げることができるので、半導体ウェーハ1の周縁部から密着状態の半導体ウェーハ用治具を簡単、かつ安全に取り外すことができ、作業の遅延や煩雑化のおそれを有効に排除することが可能になる。
【0036】
なお、上記実施形態では半導体ウェーハ1の裏面周縁部に半導体ウェーハ用治具の粘着層を粘着したが、半導体ウェーハ1の表面周縁部に半導体ウェーハ用治具の粘着層を粘着し、半導体ウェーハ1の裏面に回路パターン等を形成しても良い。また、半導体ウェーハ1の裏面周縁部に半導体ウェーハ用治具の粘着層14を粘着した後、半導体ウェーハ用治具を剥離して半導体ウェーハ1の表面周縁部に再び粘着しても良い。
【0037】
また、粘着層14を複数に分割(例えば、三分割、四分割等)してこれら複数の粘着層14を隙間を介して突き合わせ、この複数の粘着層14間の隙間をそれぞれ剥離契機部16としても良い。さらに、基材層10の全対向面12に一対の粘着層14ではなく、平面リング形の粘着層14を積層粘着して剥離契機部16を省略しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に
係る半導体ウェーハの取り扱い方法は、半導体製造の分野等で使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体ウェーハ
10 基材層
12 対向面
13 残部
14 粘着層
15 粘着面
16 剥離契機部
22 チャックテーブル