(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013753
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】軒樋曲り継手
(51)【国際特許分類】
E04D 13/068 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
E04D13/068 502Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-80003(P2012-80003)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209823(P2013-209823A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】船引 尚人
(72)【発明者】
【氏名】薮田 直己
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−204727(JP,A)
【文献】
実開平07−019449(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/068、13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁と、両端部に形成された軒樋嵌合部と、を備えた平面形状が略L字形の軒樋曲り継手であって、
上記曲り継手の入隅部が湾曲壁で形成されているか、又は、上記入隅側の側壁と上記底壁との角部及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成されており、この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増していることを特徴とする軒樋曲り継手。
【請求項2】
上記底壁の入隅部から出隅部に向かって山部が形成され、この山部の幅が底壁の入隅部に近くなるほど漸増していることを特徴とする請求項1に記載の軒樋曲り継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の軒先の出隅部に設置されて軒樋を直角に接続する軒樋曲り継手に関し、更に詳しくは、温度変化に伴う軒樋の伸縮により圧縮力や引張力が繰り返し作用しても亀裂や破壊が生じ難い軒樋曲り継手に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、従来の一般的な軒樋曲り継手100は、平面形状が略L字形の底壁1と、この底壁1の出隅側の側端から立ち上がる出隅側の側壁2と、底壁1の入隅側の側端から立ち上がる入隅側の側壁3と、両端部に形成された軒樋嵌合部4,4とを備えた、平面形状が略L字形の継手である。かかる軒樋曲り継手100は家屋の軒先の出隅部に設置され、両端の軒樋嵌合部4,4に双方の軒樋(不図示)の端部が嵌合接着されて直角に接続されるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記の軒樋曲り継手100は、入隅側の側壁3が底壁1の入隅側の側端から略直角に立ち上り、該側壁3が曲り継手100の入隅部5で水平方向に略90°屈曲しているため、両端の軒樋嵌合部4,4に嵌合接着された双方の軒樋が温度変化により伸縮を繰り返して圧縮力や引張力が曲り継手100に作用すると、その応力が曲り継手100の入隅部5や、入隅側の側壁3と底壁1との角部6に沿って、入隅部5の下端5aに集中し、曲り継手100の入隅部5の下端5a付近から亀裂や破壊が生じるという問題があった。
【0004】
これに対し、曲り継手の入隅部に、出隅側に膨らんだ円弧状の壁を設け、この円弧状の壁の両側部を、入隅部と軒樋嵌合部とが滑らかに連続するように入隅側に膨らんだ円弧状の壁で形成した曲り継手が知られている(特許文献1)。この曲り継手は、入隅部に設けられた出隅側に膨らむ円弧状の壁と、その両側の入隅側に膨らむ円弧状の壁とで、応力の集中を緩和し、亀裂や破壊の防止を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3373034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示すような従来の軒樋曲り継手100において、入隅部5の下端5aへの応力集中を効果的に緩和するためには、この入隅部下端5aに近くなるほど応力の分散作用が大きくなるような応力緩和手段を設けることが理想的である。けれども、前記特許文献1の曲り継手において応力緩和手段として採用されている前記円弧状の壁は、上端から下端まで曲率半径が一定しているため、上端から下端まで応力分散作用がほぼ一定して発揮されると考えられるものであり、入隅部の下端に近くなるほど応力分散作用が大きくなるものではないので、改良する余地があった。
【0007】
また、前記特許文献1の曲り継手のように、入隅部に形成された円弧状の壁が出隅側に膨らみ、この円弧状の壁の両側部に形成された円弧状の壁が入隅側に膨らんでいると、曲り継手の入隅側の側壁全体が波形に蛇行した形状となるため、曲り継手の内部における水の流れが悪くなり、ゴミや土埃が溜まりやすくなるという問題もあった。
【0008】
本発明は上記事情の下になされたもので、その目的とするところは、応力が最も集中する曲り継手の入隅部の下端に近づくほど応力分散作用が大きくなる、雨水の流れが良好な特定の応力分散手段を設けることにより、曲り継手の入隅部下端への応力集中を効果的に緩和して亀裂や破壊を防止できるようにすると共に、雨水の流れを良くしてゴミや土埃の滞溜も防止できるようにした軒樋曲り継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る軒樋曲り継手は、平面形状が略L字形の底壁と、この底壁の出隅側及び入隅側の側端から立ち上がる出隅側及び入隅側の側壁と、両端部に形成された軒樋嵌合部と、を備えた平面形状が略L字形の軒樋曲り継手であって、上記曲り継手の入隅部
が湾曲面で形成されているか、又は、上記入隅側の側壁と上記底壁との角部
及び上記入隅部の双方が湾曲壁で形成され
ており、この湾曲壁の曲率半径が上記曲り継手の入隅部の下端に近くなるほど漸増していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の軒樋曲り継手においては、上記底壁の入隅部から出隅部に向かって山部が形成され、この山部の幅が底壁の入隅部に近くなるほど漸増していることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の軒樋曲り継手のように、入隅部
が湾曲壁で形成されているか、又は、入隅側の側壁と底壁との角部及び入隅部の双方が湾曲壁で形成され、その曲率半径が入隅部の下端に近くなるほど漸増していると、両端の軒樋嵌合部に嵌合接着された双方の軒樋が温度変化により伸縮して圧縮力や引張力が曲り継手に繰り返し作用しても、上記の湾曲壁によって応力が分散され、この湾曲壁による応力分散作用は、曲り継手の入隅部下端に近づいて湾曲壁の曲率半径が大きくなるほど強くなる。従って、本発明の軒樋曲り継手は、入隅部下端への応力集中を上記の湾曲壁によって効果的に分散、緩和できるので、入隅部の下端付近から亀裂や破壊が生じるのを防止することができる。
【0012】
また、軒樋曲り継手の入隅部や、入隅側の側壁と底壁との角部が、上記のような湾曲壁で形成されていると、流水抵抗が減少して軒樋曲り継手の内部における雨水の流れが良くなるため、軒樋曲り継手の内部にゴミや土埃などが溜まるのを防止することができる。そして、曲り継手の入隅部や上記の角部が丸くなって角がとれるため、曲り継手の側壁の外面に降りかかった雨水が入隅部の下端や上記の角部から落滴し難くなる。
【0013】
また、上記底面の入隅部から出隅部に向かって山部が形成され、この山部の幅が底面の入隅部に近くなるほど漸増している軒樋曲り継手は、この山部によって応力が更に分散され、曲り継手の入隅部下端への応力集中が一層緩和されるので、亀裂や破壊をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る軒樋曲り継手を斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】(a)は
図3のA−A線に沿った部分断面図、(b)は
図3のB−B線に沿った部分断面図である。
【
図5】(a)は
図2のC−C線に沿った部分断面図、(b)は
図2のD−D線に沿った部分断面図である。
【
図6】(a)は
図2のE−E線に沿った部分断面図、(b)は
図2のF−F線に沿った部分断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る軒樋曲り継手の平面図である。
【
図8】従来の軒樋曲り継手を斜め下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る軒樋曲り継手を斜め下方から見た斜視図、
図2は同軒樋曲り継手の平面図、
図3は同軒樋曲り継手の側面図、
図4の(a)は
図3のA−A線に沿った部分断面図、
図4の(b)は
図3のB−B線に沿った部分断面図、
図5の(a)は
図2のC−C線に沿った部分断面図、
図5の(b)は
図2のD−D線に沿った部分断面図、
図6の(a)は
図2のE−E線に沿った部分断面図、
図6の(b)は
図2のF−F線に沿った部分断面図である。
【0017】
この実施形態に係る軒樋曲り継手10は合成樹脂で一体に射出成形したものであって、
図1〜
図3に示すように、平面形状が略L字形の底壁1と、底壁1の出隅側の側端から立ち上がる出隅側の側壁2と、底壁1の入隅側の側端から立ち上がる入隅側の側壁3と、これらの底壁1及び側壁2,3の両端部に形成された軒樋嵌合部4,4と、を備えた平面形状が略L字形の継手である。
【0018】
この軒樋曲り継手10は家屋の軒先の出隅部に設置され、
図2に示すように両端の軒樋嵌合部4,4に双方の軒樋20,20の端部が嵌合接着されて直角に接続されるようになっている。両端の軒樋嵌合部4,4は、
図1〜
図3に示すように、それぞれの軒樋20の端部を嵌め受ける略U字形の軒樋受部4aと、この軒樋受部4aの内側に形成されて軒樋20の端部を内側から押える軒樋押え部4bと、この軒樋受部4aの両側上端に形成されて軒樋20の両側の耳部を押える耳押え部4c,4cとを備えたものである。
【0019】
この軒樋曲り継手10の大きい特徴は、入隅部5の下端5aへの応力集中を効果的に緩和するために、曲り継手の入隅部5、
及び、入隅側の側壁3と底壁1との角部6を、円弧状に湾曲した曲率半径が徐々に変化する湾曲壁50,60で形成している点にある。
【0020】
即ち、この軒樋曲り継手10の入隅部5は、出隅側に向かって円弧状に凸湾曲する湾曲壁50で形成されており、
図1,
図3,
図4の(a)(b)に示すように、この湾曲壁50の曲率半径Rと幅は、曲り継手10の入隅部5の下端5aに近くなるほど徐々に大きくなっている。そして、この軒樋曲り継手10の入隅側の側壁3と底壁1との角部6は、当該継手の外側に向かって円弧状に凸湾曲する湾曲壁60で形成されており、
図1,
図2,
図5の(a)(b)に示すように、この湾曲壁60の曲率半径Rと幅も、曲り継手10の入隅部5の下端5aに近くなるほど徐々に大きくなっている。
【0021】
上記のように湾曲壁50,60の曲率半径Rが軒樋曲り継手10の入隅部5の下端に近くなるほど漸増していると、これらの湾曲壁50,60による応力分散作用は、曲率半径Rが大きくなるほど、換言すれば、入隅部5の下端5aに近づくほど強くなるため、軒樋20,20の伸縮によって生じる応力が入隅部5の下端5aに集中するのを効果的に分散、緩和することができる。従って、軒樋曲り継手10の入隅部5の下端5a付近から亀裂や破壊が生じるのを十分防止することができる。
【0022】
また、軒樋曲り継手10の入隅部5と角部6の双方が、上記のような湾曲壁50,60で形成されていると、流水抵抗が減少して軒樋曲り継手10の内部における雨水の流れが良くなるため、軒樋曲り継手10の内部にゴミや土埃などが溜まるのを防止することができる。そして、曲り継手10の入隅部5や上記の角部6が丸くなって角がとれるため、曲り継手10の側壁3の外面に降りかかった雨水が入隅部5の下端5aや角部6から落滴し難くなる。
【0023】
なお、この軒樋曲り継手10は、入隅部5と角部6の双方を上記の湾曲壁50,60で形成しているが、入隅部5
のみを上記の湾曲壁5
0で形成するようにしてもよく、その場合でも入隅部5の下端5aへの応力集中が十分緩和されるので、亀裂や破壊を防止することができる。
【0024】
更に、この実施形態の軒樋曲り継手10は、
図1,
図2に示すように、底面1の入隅部から出隅部に向かって山部7が形成され、この山部7の幅Wと高さは、
図6の(a)(b)に示すように底面1の入隅部に近くなるほど徐々に大きくなっている。このように底面1の入隅部に近くなるほど幅Wと高さが漸増する山部7が底面に形成されていると、この山部7によって応力が更に分散され、曲り継手10の入隅部下端5aへの応力集中が一層緩和されるので、亀裂や破壊をより確実に防止することができる。
【0025】
また、この実施形態の軒樋曲り継手10は、
図1、
図2に示すように、入隅側の側壁3が軒樋嵌合部4,4の入隅側の側壁4d,4dより出隅側へオフセットした状態で形成されている。このように、入隅側の側壁3が出隅側へオフセットした状態で形成されていると、入隅側の側壁3と軒樋嵌合部4の入隅側の側壁4dとを連結する段差部分の壁により、軒樋の熱伸縮によって生じる応力が緩和される効果がある。また、
図7に示す実施形態の軒樋曲り継手のように、入隅側の側壁3と軒樋嵌合部4の入隅側の側壁4dとを斜壁4eで連結してもよい。このような斜壁4eを設けると、熱伸縮によって生じた応力が斜壁4eで分散、緩和される効果があり、しかも、斜壁4eによって雨水の流れが良くなり、軒樋曲り継手の内部にゴミや土埃などが溜まるのを防止できる効果もある。更に、これらの実施形態のような軒樋外曲り継手においては、気温の低下に伴う軒樋の収縮により両端の軒樋嵌合部4,4が引っ張られた場合でも、入隅側の側壁3が建物の軒先の出隅部と接触することがないため、接触による割れを防止できる効果もある。
【0026】
なお、
図7に示す実施形態に係る軒樋曲り継手の上記以外の構成は、前述した
図1〜6の実施形態の軒樋曲り継手の構成と実質的に同じであるので、
図7において対応する箇所に対応する符合を付し、重複する説明は省略する。前記山部7は
図7には表記していないが、前記山部7を形成しても勿論よい。
また、
図1においては、湾曲壁50,60及び山部7の凹凸形状を分かりやすく示すために、便宜的に複数本の凹凸形状表示線Lを付記したが、このような凹凸形状表示線Lは本発明の軒樋曲り継手においては勿論存在しない。
【0027】
以上の説明から理解できるように、本発明の軒樋曲り継手は、その入隅部、
又は、入隅側の側壁と底壁との角部
及び入隅部の双方に形成された前記の湾曲壁と、望ましくは底壁に形成される前記の山部によって、応力を効果的に分散し、入隅部の下端への応力集中を緩和して亀裂や破壊を十分防止すると共に、雨水の流れを良くしてゴミや土埃の滞溜も防止することができるといった顕著な効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0028】
1 底壁
2 出隅側の側壁
3 入隅側の側壁
4 軒樋嵌合部
5 入隅部
5a 入隅部の下端
6 入隅側の側壁と底壁との角部
7 山部
50 入隅部に形成された湾曲壁
60 入隅側の側壁と底壁との角部に形成された湾曲壁
10,100 軒樋曲り継手