(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のシリンダボアの圧縮機径方向内側にはセンタボアが形成され、センタボアは、前記凹部をなす第1ボアと、前記滑り軸受を支持する第2ボアと、第2ボアとバルブプレートとの間に配置され、バルブプレート側の領域の周壁が第2ボアより径方向外側に配置された第3ボアと、を備え、
前記放圧通路は、第1ボアと、第1ボアの底壁に開口し吸入室に向かって延設されて第3ボアと連通する第1通路と、第3ボアと、第3ボアと吸入室とを連通する第2通路と、を備え、
前記第2通路は駆動軸の軸線よりも重力方向の上側の位置で第3ボアに開口していることを特徴とする、請求項1または2に記載の往復動圧縮機。
前記変換機構は駆動軸の軸線に対して傾角が可変となるように駆動軸に摺動自在に取り付けられた斜板を備えており、往復動圧縮機は、さらに吐出室とクランク室とを連通する圧力供給通路と、圧力供給通路の開度を調整する制御弁と、放圧通路の途上の前記第2通路に配設された絞りと、を備えた可変容量型の圧縮機であって、
前記第1ボア、前記第1通路及び前記第3ボアは圧力供給通路と放圧通路の共通の通路を形成しているとともに、第3ボアが圧力供給通路と放圧通路の分岐空間を形成しており、第3ボアと吐出室とを連通する圧力供給通路の途上に制御弁が配設されていることを特徴とする、請求項3に記載の往復動圧縮機。
駆動軸の他端はフロントハウジングから外側に突出して駆動軸の他端側はフロントハウジングに装着された軸封装置により封止され、フロントハウジングには軸封装置を潤滑するための潤滑通路が2つ形成されており、
前記隣り合うシリンダボア間の中心と駆動軸の軸線とで規定される平面でフロントハウジングを分けたとき、前記平面は2つの潤滑通路のクランク室側の開口端の間に位置することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の往復動圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランク室内に多量のオイルがある状態で圧縮機が高速回転領域で運転されると、斜板等の回転部品によってオイルが攪拌、せん断されて発熱し、オイルの粘性が低下して圧縮機内部の摺動部位の潤滑状態が悪化する。
【0005】
したがって、圧縮機が低速回転領域あるいは中速回転領域で運転されているときは圧縮機外に持ち出されるオイルを低減して空調システムの冷凍能力を向上させ、圧縮機が高速回転領域で運転されているときはクランク室内部に多量のオイルが貯留されないようにすることが求められている。
【0006】
上記特許文献1に示された技術は、オイルセパレータ及び遠心力で動作する開閉弁を付加して上述の課題を達成しようとするものであるが、この手法には、構造が複雑で、コストが著しく増大してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に示された技術では、圧力供給通路(給気通路)を経由して吐出室からクランク室に流入する冷媒に含まれるオイルによって積極的に圧縮機内部の摺動部位を潤滑することは何ら考慮されていない。吐出室からクランク室に還流されたオイルによる潤滑にはまだ改善の余地がある。
【0008】
そこで本発明の課題は、圧縮機が低速回転領域あるいは中速回転領域で運転されているときには圧縮機外に持ち出されるオイルが少なく、かつ圧縮機が高速回転領域で運転されているときにはクランク室内部に多量のオイルが貯留されないようにした、簡易な構造の往復動圧縮機を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、吐出室からクランク室に還流されたオイルを圧縮機内部の潤滑に積極的に寄与させることができるようにした往復動圧縮機を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る往復動圧縮機は、環状に配列された複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックと、
シリンダブロックの一端側を閉塞し、シリンダブロックとの協働によりクランク室を画成するフロントハウジングと、
シリンダブロックの他端側を閉塞し、シリンダボアと連通する吐出孔及び吸入孔が形成されたバルブプレートと、
バルブプレートを挟んでシリンダブロックと対向して設けられ吐出室と吸入室とが区画形成されたシリンダヘッドと、
複数のシリンダボアにそれぞれ配設されたピストンと、
一端側が滑り軸受を介してシリンダブロックにラジアル支持された駆動軸と、
駆動軸の回転をピストンの往復運動に変換する変換機構と、
クランク室と吸入室とを連通する放圧通路と、を備え、
吸入室からシリンダボアに吸入された冷媒を圧縮して吐出室に吐出する往復動圧縮機において、
複数のシリンダボアの圧縮機径方向内側にはクランク室と接続し周壁と底壁によって形成された凹部が設けられ、
前記放圧通路は、駆動軸よりも重力方向の上側の位置であって、複数のシリンダボアのうち重力方向の上側の最も高い位置にあるシリンダボアとこのシリンダボアに隣接したいずれか一方のシリンダボア間の中心と駆動軸の軸線とで規定される平面と、前記凹部の底壁との交線上に開口していることを特徴とするものからなる。
【0011】
このような本発明に係る往復動圧縮機においては、クランク室と接続する凹部がクランク室の径方向中心領域に設けられ、この凹部の底壁の駆動軸よりも上位の位置に、冷媒とともにオイルを吸入室側に逃がすことが可能な連通路としての放圧通路が開口されているので、この凹部が形成されていない場合に比べて、さらに放圧通路の開口が駆動軸よりも下位の位置に設けられている場合に比べて、クランク室内のオイルは吸入室側には流出しにくくなる。したがって、往復動圧縮機が低速回転領域や中速回転領域で運転されており、クランク室内の回転部品による冷媒・オイルの攪拌の程度が弱いときには、クランク室内にオイルが十分に確保されて圧縮機内部の摺動部位の潤滑が効果的に行なわれると共に、吸入室側を介しての圧縮機外へのオイルの過度の流出が抑制されて空調システムの性能向上に寄与することが可能になる。また、圧縮機が高速回転領域で運転されており、クランク室内の冷媒・オイルの攪拌の程度が上記低速回転領域や中速回転領域の場合よりも強くなるときには、オイルが放圧通路を介して適度に吸入室側に流出され、クランク室内のオイルが低速回転領域や中速回転領域の場合より減少するので(つまり、オイルが過度にクランク室内に貯留されることが回避され)、斜板等の回転部品によってオイルが攪拌、せん断されて発熱し、オイルの粘性が低下して圧縮機内部の摺動部位の潤滑状態が悪化することが回避される。このとき同時に、オイルが吸入室側に、ひいては圧縮機外に、過度に流出することも抑制されるので、空調システムの性能向上もはかられる。
【0012】
上記本発明に係る往復動圧縮機においては、駆動軸に向かって凸曲面をなす複数のシリンダボアの形成壁が、上記凹部の周壁を形成しており、上記凹部の底壁に開口する放圧通路は、上記隣り合うシリンダボアの形成壁の接続領域に隣接した位置に開口している構造を採ることができる。
【0013】
このような構造を採用すれば、凹部内において放圧通路の開口端を駆動軸から最も遠ざかった位置に配置でき、また上記接続領域に隣接した位置であるので底壁や周壁に付着したオイルが流入しにくくなり、吸入室側へのオイルの流出がより抑制される。
【0014】
また、上記本発明に係る往復動圧縮機においては、上記凹部の底壁に開口する放圧通路の開口端の周縁が、上記凹部の周壁に隣接した上記凹部の底壁の他の領域よりもクランク室側に突出している構造を採ることができる。
【0015】
このような構造を採用すれば、放圧通路の開口端に凹部の底壁の他の領域に付着したオイルが流入し難くなり、吸入室へのオイルの流出がさらに抑制される。
【0016】
また、上記本発明に係る往復動圧縮機においては、複数のシリンダボアの圧縮機径方向内側にはセンタボアが形成され、センタボアは、上記凹部をなす第1ボアと、上記滑り軸受を支持する第2ボアと、第2ボアとバルブプレートとの間に配置され、バルブプレート側の領域の周壁が第2ボアより径方向外側に配置された第3ボアと、を備え、
上記放圧通路は、第1ボアと、第1ボアの底壁に開口し吸入室に向かって延設されて第3ボアと連通する第1通路と、第3ボアと、第3ボアと吸入室とを連通する第2通路と、を備え、
上記第2通路は駆動軸の軸線よりも重力方向の上側の位置で第3ボアに開口している構造を採ることができる。
【0017】
このような構造を採用すれば、第3ボアにオイルを適度に貯留することができ、吸入室へのオイルの流出がさらに一層抑制できる。この第3ボアに貯留されたオイルは滑り軸受と駆動軸の外周面との隙間を介して徐々にクランク室に還流されるので、クランク室の潤滑に寄与することができる。
【0018】
また、上記本発明に係る往復動圧縮機においては、上記変換機構は駆動軸の軸線に対して傾角が可変となるように駆動軸に摺動自在に取り付けられた斜板を備えており、往復動圧縮機は、さらに吐出室とクランク室とを連通する圧力供給通路と、圧力供給通路の開度を調整する制御弁と、放圧通路の途上の前記第2通路に配設された絞りと、を備えた可変容量型の圧縮機であって、
上記第1ボア、上記第1通路及び上記第3ボアは圧力供給通路と放圧通路の共通の通路を形成しているとともに、第3ボアが圧力供給通路と放圧通路の分岐空間を形成しており、第3ボアと吐出室とを連通する圧力供給通路の途上に前述の制御弁が配設されている構造を採ることができる。
【0019】
このような構造を採用すれば、吐出室からクランク室へガスが流れている時は、吐出ガスに含まれるオイルは圧縮側の斜板の面とシューとの摺動面の潤滑に直接的に寄与するとともに、フロントハウジング側の特定の部位の潤滑にも寄与することができる。
【0020】
また、上記本発明に係る往復動圧縮機においては、駆動軸の他端はフロントハウジングから外側に突出して駆動軸の他端側はフロントハウジングに装着された軸封装置により封止され、フロントハウジングには軸封装置を潤滑するための潤滑通路が2つ形成されており、
上記隣り合うシリンダボア間の中心と駆動軸の軸線とで規定される平面でフロントハウジングを分けたとき、この平面は上記2つの潤滑通路のクランク室側の開口端の間に位置する構造を採ることができる。
【0021】
このような構造を採用すれば、吐出ガスに含まれるオイルが軸封装置に効率よく効果的に供給されるので、軸封装置の潤滑に寄与することができる。
【0022】
このような本発明に係る往復動圧縮機は、車両用空調システムに使用されて好適なものであり、その場合に、とくに本発明で規定した放圧通路の開口位置を満足するようにエンジンに取り付けられればよい。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明に係る往復動圧縮機によれば、圧縮機が低速回転領域や中速回転領域で運転されているときには圧縮機外に過度にオイルが持ち出されるのを抑えて空調システムの性能向上に寄与することが可能になり、圧縮機が高速回転領域で運転されているときには、クランク室内のオイルが放圧通路を介して適度に吸入室側に流出されるようにし、オイルが過度にクランク室内に貯留されることを回避して、クランク室内での回転部品によるオイルの攪拌、せん断による発熱、オイルの粘性低下に起因して圧縮機内部の潤滑状態が悪化することを、効果的に回避でき、同時に、オイルが圧縮機外に過度に流出することも抑制できるため、空調システムの性能向上をはかることができる。また、本発明では、吐出室からクランク室に還流されたオイルを圧縮機内部の潤滑に積極的に寄与させることも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)圧縮機全体構成(
図1)
図1は、本発明の一実施態様に係る往復動圧縮機としての、車両用空調システムに使用される可変容量圧縮機100を示している。可変容量圧縮機100はクラッチレス圧縮機であって、環状に配列された複数のシリンダボア101aとその径方向内側に配置されたセンタボア101bとが区画形成されたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端にバルブプレート103を介して設けられたシリンダヘッド104とを備えている。
【0026】
シリンダブロック101と、フロントハウジング102とによって規定されるクランク室140内を横断して、駆動軸110が設けられ、その中心部の周囲には、斜板111が配置されている。斜板111は、駆動軸110に固定されたロータ112とリンク機構120を介して連結し、駆動軸110に沿ってその傾角が変化可能となっている。
【0027】
リンク機構120は、ロータ112から突設された第1アーム112aと、斜板111から突設された第2アーム111aと、一端側が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに対して回動自在に連結され、他端側が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに対して回動自在に連結されたリンクアーム121から構成されている。
【0028】
斜板111の貫通孔111bは斜板111が最大傾角と最小傾角の範囲で傾動可能となるように形状が形成されており、貫通孔111bには駆動軸110と当接する最小傾角規制部が形成されている。斜板111が駆動軸110に対して直交するときの斜板の傾角を0°とした場合、貫通孔111bの最小傾角規制部は斜板111をほぼ0°まで傾角変位可能なように形成されている。尚ほぼ0°とは−0.5°より大きく0.5°より小さい範囲を指す。
【0029】
ロータ112と斜板111の間には斜板111を最小傾角に向けて最小傾角に至るまで付勢する傾角減少バネ114が装着され、また、斜板111とバネ支持部材116との間には斜板111の傾角を増大する方向に付勢する傾角増大バネ115が装着されている。最小傾角において傾角増大バネ115の付勢力は傾角減少バネ114の付勢力より大きく設定されているので、斜板111は駆動軸110が回転していないときは、傾角減少バネ114と傾角増大バネ115の付勢力がバランスする、最小傾角より大きな傾角に位置する。
【0030】
駆動軸110は一端側がセンタボア101bに挿通されてラジアル方向に滑り軸受131で支持され、また一端面がスラストプレート132で支持されている。また駆動軸110の他端側はラジアル方向に滑り軸受133で支持され、スラスト方向は駆動軸110に固定されたロータ112が軸受134で支持されている。駆動軸110の一端面とスラストプレート132との隙間は調整ネジ135により所定の隙間に調整されている。
【0031】
尚、駆動軸110の他端側は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通して外側まで延在し、動力伝達装置150に連結されている。駆動軸110とボス部102aとの間には、軸封装置130が挿入され、内部と外部とを遮断している。外部駆動源(エンジン)からの動力が動力伝達装置150に伝達され、駆動軸110は動力伝達装置150の回転と同期して回転可能となっている。
【0032】
シリンダボア101a内には、ピストン136が配置され、ピストン136のクランク室140側に突出している端部の内側空間には、斜板111の外周部が収容され、斜板111は一対のシュー137を介して、ピストン136と連動する構成となっている。したがって斜板111の回転によりピストン136がシリンダボア101a内を往復動することが可能となる。
【0033】
シリンダヘッド104には、中央部に吸入室141及び吸入室141を環状に取り囲む吐出室142が区画形成され、吸入室141は、シリンダボア101aとは、バルブプレート103に設けられた吸入孔103a、吸入弁(図示せず)を介して連通し、吐出室142は、シリンダボア101aとは、吐出弁(図示せず)、バルブプレート103に設けられた吐出孔103bを介して連通している。
【0034】
フロントハウジング102、シリンダブロック101、バルブプレート103、シリンダヘッド104が、図示しないガスケットを介して複数の通しボルト105によって締結されて圧縮機ハウジングが形成される。
【0035】
シリンダヘッド104には吸入通路104aが形成され、吸入室141は吸入通路104aを介して空調システムの吸入側冷媒回路と接続されている。
【0036】
また、シリンダヘッド104には図示しない吐出通路が形成され、吐出室142は吐出通路を介して空調システムの吐出側冷媒回路と接続されている。尚吐出通路の途上には図示しない逆止弁が配置されている。逆止弁は上流側(吐出室142)と下流側(吐出側冷媒回路)との圧力差に応答して動作し、圧力差が所定値より小さい場合は吐出通路を遮断し、圧力差が所定値より大きい場合に吐出通路を開放する。
【0037】
シリンダヘッド104にはさらに制御弁300が設けられている。制御弁300は吐出室142とクランク室140とを連通する圧力供給通路145の開度を調整し、クランク室140への吐出ガス導入量を制御する。制御弁300には連通路146により吸入室141の圧力が導かれ、制御弁300は吸入室141の圧力及び内蔵されるソレノイドの通電量に応答して動作する。またクランク室140内の冷媒は放圧通路147を経由して吸入室141へ流れ、放圧通路147にはバルブプレート103に形成されたオリフィス103cが配設されている。
【0038】
したがって、制御弁300によりクランク室140の圧力を変化させ、斜板111の傾斜角、つまりピストン136のストロークを変化させることにより可変容量圧縮機100の吐出容量を可変制御することができる。
【0039】
空調作動時、つまり可変容量圧縮機100の作動状態では、外部信号に基づいて制御弁300に内蔵されるソレノイドの通電量が調整され、吸入室141の圧力が所定値になるように吐出容量が可変制御される。制御弁300は、外部環境に応じて、吸入圧力を最適制御することができる。
【0040】
また空調非作動時、つまり可変容量圧縮機100の非作動状態では、制御弁300に内蔵されるソレノイドの通電をOFFすることにより圧力供給通路145を強制開放し、可変容量圧縮機100の吐出容量を最小に制御する。
【0041】
可変容量圧縮機100は、フロントハウジング102及びシリンダヘッド104の外方に車両エンジン側への取り付けを行うためのボルト挿通孔を有する取付部102b及び104bを介して車両のエンジンに装着される。このエンジンに取り付けられた状態にて、本発明における各種上下位置関係が満たされるようになっている。
【0042】
(2)放圧通路
図2に示すように、シリンダブロック101に形成されたセンタボア101bは、クランク室140に接続する第1ボア101b1と、滑り軸受131を支持する第2ボア101b2と、第2ボア101b2とバルブプレート103との間に配置され、バルブプレート103側の領域の周壁が第2ボア101b2より径方向外側に配置された第3ボア101b3とを備えている。
【0043】
クランク室140と吸入室141とを連通する放圧通路147は第1ボア101b1と、第1ボア101b1の底壁101cに開口し第3ボア101b3と連通する第1通路101dと、第3ボア101b3と、第3ボア101b3と吸入室141とを連通する第2通路148とを備えている。
【0044】
第3ボア101b3はバルブプレート103を間に挟んで吸入室141と隣接しているので、第2通路148は、第3ボア101b3と吸入室141との間に配設されている部材(吸入弁が形成された吸入弁形成板、バルブプレート103、吐出弁が形成された吐出弁形成板、ガスケット)に貫通孔を形成すれば容易に形成できる。この第2通路148に配設される絞りとしてのオリフィス103cは、本実施態様ではバルブプレート103に形成してあるが、第2通路148を形成する他の部材に形成してもよい。
【0045】
第1ボア101b1は複数のシリンダボア101aの内側に形成され、駆動軸に向かって凸曲面をなすシリンダボアの各形成壁(101b11、101b12、・・・)(
図3)が周壁をなし、第2ボア101b2と接続する底壁101cとで構成される凹部である。
【0046】
図3は、複数のシリンダボア101aをクランク室140側(
図1の左方向)から見た状態を示すもので、Uは取付部(102b及び104b)のエンジン側の端面で規定される平面Tと平行で駆動軸の軸線Oを含む平面であり、Vは平面Uと直交し駆動軸の軸線Oを含む平面である。図中の平面U(及び平面T)の上下方向は可変容量圧縮機100をエンジンに装着した状態で重力方向にほぼ一致している。尚、実際の装着状態においては、平面Uは重力方向に対して多少傾斜している場合が多いが、その傾斜は例えば30°以内なので平面U(及び平面T)を重力方向と見なしても差し支えない。
【0047】
また、Wは複数のシリンダボア101aの内重力方向の上側にある最も高い位置にあるシリンダボア101a1とこのシリンダボア101a1に隣接した一方のシリンダボア101a2間の中心と駆動軸110(滑り軸受131)の軸線Oとで規定される平面である。尚、
図1(及び
図2)の圧縮機内部の断面は平面Wの切断面である。
【0048】
第1通路101dのクランク室140側開口端は、駆動軸110より重力方向の上側であって、平面Wと前記凹部(第1ボア101b1)の底壁101cとの交線上であって、隣り合うシリンダボアの形成壁(101b11、101b12)の接続領域101eに隣接した位置に開口している。また、第2通路148は、平面Vより重力方向上側で第3ボア101b2に開口している。
【0049】
(3)圧力供給通路
吐出室142とクランク室140とを連通する圧力供給通路145は、吐出室142と第3ボア101b3とを連通する第3通路145aと、第3ボア101b3と、第1通路101dと、第1ボア101b1とを備えている。尚制御弁300は、シリンダヘッド104内において、第3通路145aの途上に配置されている。
【0050】
つまり、第1ボア101b1、第1通路101d及び第3ボア101b3は、圧力供給通路145と放圧通路147との共通の通路となっており、第3ボア101b3が圧力供給通路145と放圧通路147の分岐空間となっている。第3通路145aは、平面Vより重力方向下側で第3ボア101b3に開口している。
【0051】
尚、第1通路101dは圧力供給通路145と放圧通路147との共通の通路となっているので、その孔径は例えば5〜8mm程度と一方向流れの場合の孔径より大きく設定してある。
【0052】
(4)クランク室から吸入室へのガスの流れ
例えば制御弁300が閉じると圧力供給通路145が遮断され、その結果ピストン136がガスを圧縮する際に発生するブローバイガスが放圧通路147を介してクランク室140から吸入室141に流れる。このときクランク室140内のオイルもガスの流れに沿って吸入室141に流れようとするが、以下の理由により第1通路101dへのオイルの流入が抑制される。
【0053】
・第1ボア101b1はクランク室140よりも凹んでおり、かつクランク室140の径方向中心領域に存在するので、第1ボア101b1内はクランク室140よりもオイルプアな領域である。
・第1通路101dのクランク室140側の開口端は底壁101cの重力方向の上側に配置されており、底壁や周壁に付着したオイルが流入しにくい。
・第1通路101dのクランク室140側の開口端は平面Wと底壁101cとの交線上にあるので、駆動軸110から最も遠ざかる位置に配置でき、底壁や周壁に付着したオイルがさらに流入しにくい。また、シリンダボアの形成壁(101b11、・・・)は駆動軸110に向かって凸となる曲面であり、シリンダボアの形成壁101b11、101b12に付着したオイルは、その凸曲面に沿って接続領域101eから左右方向に移動して接続領域101eの直下にある第1通路101dのクランク室140側の開口端にオイルが流入しにくくなる。
【0054】
また、第1通路101dに流入したオイルは、一旦第3ボア101b3に貯留されるので、吸入室141へオイルが流出することが抑制される。第3ボア101b3に貯留されたオイルは、駆動軸110の外周面と滑り軸受131との間の微小な隙間を介して徐々にクランク室140に還流される。
【0055】
したがって、可変容量圧縮機100が低速回転領域(中速回転領域を含む)で運転されているときは、斜板111等の回転部品やピストン136によるクランク室140内の冷媒・オイルの攪拌の程度が弱く、クランク室140内のオイルが第1通路101dに流入することが抑制されてクランク室140内のオイルが確保され、摺動部位の潤滑が効果的に行なわれる。同時に吸入室141へのオイルの流出、つまり圧縮機外へのオイルの流出が抑制されて空調システムの性能向上に寄与する。
【0056】
また、可変容量圧縮機100が高速回転領域で運転されているときは、斜板111等の回転部品やピストン136によるクランク室140内の冷媒・オイルの攪拌の程度が上記低速回転領域の場合より強くなり、クランク室140内のオイルが第1通路101dに流入しやすくなって、クランク室140内に確保されるオイルが低速回転領域の場合より減少して過度にオイルがクランク室140内に貯留されることが回避され、同時にオイルが吸入室に過度に流出することが抑制される。したがって、斜板111等の回転部品によってオイルが攪拌、せん断されて発熱し、オイルの粘性が低下して圧縮機内部の摺動部位の潤滑状態が悪化することは無い。
【0057】
(5)吐出室からクランク室へのガスの流れ
例えば制御弁300が閉じた状態から制御弁300が開放されると、吐出室142からクランク室140に向けた吐出ガスの流れが発生する。
【0058】
吐出ガスは第3通路145a、第3ボア101b3、第1通路101d及び第1ボア101b1を経由してクランク室140に流入するが、吐出ガスにはオイルも含まれているので吐出ガスの噴流に沿ってオイルが飛散して摺動部位を潤滑する。
【0059】
第1通路101dのクランク室140側の開口端は底壁101cの中で重力方向の上側の最も高い位置に配置されており、これによって斜板111とシュー137との摺動面に近接した位置に吐出ガスの噴流に沿ってオイルが飛散し、特に圧縮側の斜板111とシュー137との摺動面の潤滑に寄与する。
【0060】
また、
図4は可変容量圧縮機100の内部を平面Wで切断したもので、斜板111の下死点位置が平面Wに一致する状態を示したものである。第1通路101dの軸線は平面Wに一致する。尚、斜板111の下死点位置とはピストン136による吸入工程が終了する位置を指す。
【0061】
第1通路101dのクランク室140側の開口端から噴射された吐出ガスの主流(矢印)は、傾斜した斜板111に衝突し、斜板111の遠心力により斜面に沿ってクランク室140の内壁の図中上方向に向きを変え、圧縮側の斜板111の面とシュー137との摺動面を潤滑する。平面Wは隣り合うシュー137及びピストン136の間にあるので、噴射された吐出ガスの一部は隣り合うシュー137及びピストン136との間を抜けてクランク室140の内壁に衝突しフロントハウジング102の底壁102cに向かう流れとなり、軸受134の潤滑に寄与する。
【0062】
フロントハウジング102の底壁102cには、
図5に示すように、軸封装置130が収容されている空間に向けて潤滑通路102d1、102d2が2つ形成されており、平面Wは2つの開口端(オイル捕捉溝)102e1、102e2の間にあるので、斜板111の下死点位置が平面Wに近い領域では吐出ガスの噴流に含まれるオイルは2つのオイル捕捉溝102e1、102e2に捕捉されて軸封装置130の潤滑にも寄与する。
【0063】
以上説明したように、可変容量圧縮機100が低速回転領域や中速回転領域で運転され、クランク室140から吸入室141へガスが流れているときは、クランク室140内のオイルが確保され、摺動部位の潤滑が効果的に行なわれると共に、圧縮機外へのオイルの流出が抑制されて空調システムの性能向上に寄与する。また、高速回転領域で運転されているときは、クランク室140内のオイルが低速回転領域や中速回転領域の場合より減少するが、過度に流出することが抑制され、斜板111等の回転部品によってオイルが攪拌、せん断されて発熱し、オイルの粘性が低下して圧縮機内部の摺動部位の潤滑状態が悪化することは無い。
【0064】
さらに、吐出室142からクランク室140へガスが流れているときは、吐出ガスに含まれるオイルで圧縮側の斜板111の面とシュー137との摺動面の潤滑のみならず軸封装置130等の潤滑にも寄与する。
【0065】
尚、可変容量圧縮機100が吐出容量制御状態で制御弁300の開度が全閉と全開の間の任意の開度にあるときは第3ボア101b3に制御された量の吐出ガスが流入するので、その導入される吐出ガス量によって圧力供給通路145と放圧通路147との共通の通路に双方向の流れが生じ、これによってクランク室140の圧力を変化させ、斜板111の傾斜角、つまりピストン136のストロークを変化させることにより吐出容量を可変制御することができる。
【0066】
図6(B)は、可変容量圧縮機100を試験設備で運転したときの空調システムを流れる冷媒循環量に対するオイル循環率を示したもので、
図6(A)における位置Aは本発明の第1連通路101dの位置を示し、位置Bは比較例としての第1連通路の位置を示している。位置Bは、底壁101c内の重力方向の最も下側に第1連通路が配置されている状態である。
【0067】
図6(B)に示すように、第1連通路が位置Aにある場合、位置Bにある場合に比べて明らかにすべての圧縮機回転数においてオイル循環率が小さくなっており、圧縮機外へのオイルの流出が抑制されて空調システムの性能向上に寄与することが確認された。オイル循環率は空調システムの性能の観点から1%以下が望ましいが、本発明により常用回転数領域(アイドリング相当回転数〜3000rpm)では1%以下のオイル循環率を達成できていることが確認された。
【0068】
また、高速回転領域(5000rpm、8000rpm)では、800rpm、3000rpmの回転数領域に比べてオイル循環率が増大し、クランク室に過度にオイルが貯留されることがなく、かつ圧縮機外への過度なオイルの流出が抑制されていることも確認できた。
【0069】
なお、上記空調システム(少なくとも、上記圧縮機とエバポレータを含む空調システム)における試験の条件を表1に示す。
【0071】
上記実施態様では、平面Uはシリンダボア101a1と101a2間の中心にあるが、これをシリンダボア101a1と101a3(
図3)間の中心と駆動軸の軸線とで規定される平面Uとしてもよい。
【0072】
また、凹部(第1ボア101b1)の底壁101cには凹凸があってもよい。例えば
図7に示すように、凹部の底壁101cに開口する第1通路101dの開口端の周縁101c1を他の底壁の領域101c2(特に周壁に近接した領域)よりクランク室140側に向かって突出させてもよい。このようにすれば、他の底壁の領域101c2に付着したオイルが第1通路101dの開口端に流入し難くなり、吸入室141へのオイルの流出がさらに抑制される。
【0073】
また、前記実施態様では圧力供給通路145と放圧通路147との共通の通路が形成されているが、共通の通路構成が必要とされない構造の場合には、圧力供給通路と放圧通路が別々に形成されている可変容量圧縮機としてもよい。
【0074】
さらに、前記実施態様では、クラッチレス圧縮機としたが、電磁クラッチを使用した圧縮機としてもよい。また、本発明は固定容量圧縮機にも適用可能である。