特許第6013779号(P6013779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013779
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ろう付品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/19 20060101AFI20161011BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20161011BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20161011BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20161011BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20161011BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20161011BHJP
   B23K 101/14 20060101ALN20161011BHJP
   B23K 103/10 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   B23K1/19 E
   B23K35/22 310D
   B23K35/363 L
   B23K35/363 H
   B23K1/00 330L
   F28F21/08 A
   !C22C21/00 J
   B23K101:14
   B23K103:10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-118805(P2012-118805)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-244499(P2013-244499A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】勝又 真哉
(72)【発明者】
【氏名】兵庫 靖憲
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−188264(JP,A)
【文献】 特開2003−094165(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/110532(WO,A1)
【文献】 特開2012−086258(JP,A)
【文献】 特開2008−284565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00−3/00
B23K 35/22
B23K 35/363
F28F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si粉末、Zn含有フラックスおよびバインダを含むろう付用塗膜が予め表面に形成され、前記Si粉末の塗布量が1〜5g/m、前記Zn含有フラックスの塗布量が3〜20g/m、前記バインダの塗布量が0.2〜8.3g/mであるアルミニウム合金製のろう付部材の、少なくとも、乾燥した前記ろう付用塗膜上に、ろう付前に、さらに、K−Al−F系フラックス、Al−F系フラックス、K−Si−F系フラックス、Cs−Al−F系フラックスおよびK−Zn−F系フラックスのうちの1種または2種以上を含む後塗りフラックスを塗布し、前記後塗りフラックスが塗布された前記ろう付部材をろう付することを特徴とするろう付品の製造方法。
【請求項2】
前記ろう付品が熱交換器で、前記ろう付部材が熱交換器用のチューブであり、前記ろう付において、前記チューブと熱交換器用のフィンとをろう付けすることを特徴とする請求項1記載のろう付品の製造方法。
【請求項3】
前記後塗りフラックスが、前記ろう付の7日前から前記ろう付の間に、前記ろう付部材の少なくとも前記ろう付用塗膜上に塗布されることを特徴とする請求項1または2に記載のろう付品の製造方法。
【請求項4】
前記ろう付部材が、保管用容器に収納されて保管されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のろう付品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付により製造されるろう付品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ろう付によって製造されるアルミニウム合金製熱交換器では、これまで芯材にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたブレージングシートが広く使用されてきている。また、Si粉末とフラックスとバインダとの混合物を押出管などのチューブの表面に塗布したものを使用することによって安価に製品が製造できるようになっている。
【0003】
また、上記混合物にZn含有フラックスを加えることで、ろう付時のZn拡散による犠牲層をチューブ表面に形成させ、チューブに腐食が生じた場合でも全面腐食となって貫通孔の発生が抑制され、孔食発生によるチューブの冷媒漏れや強度低下を抑制することができる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−330233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記Si粉末とZn含有フラックスとを含むろう付用塗膜が形成されたチューブは、通常、大気中の酸素などによるろう付用塗膜の特性の劣化を防止するため、通常は、アルミニウム箔などの保管容器に収納し密封した状態で流通し、使用に備えて保管される。しかし、保管容器に収納した状態でも、ろう付用塗膜が吸湿などによって経時的に劣化し、その結果、ろう付に際し、十分な接合性が得られないことがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、Si粉末とZn含有フラックスとを含むろう付用塗膜をろう付部材に形成した後、ろう付を行うまでの期間によらず、優れたろう付性を得ることができるろう付品の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明のろう付品の製造方法のうち第1の本発明は、Si粉末、Zn含有フラックスおよびバインダを含むろう付用塗膜が予め表面に形成され、前記Si粉末の塗布量が1〜5g/m、前記Zn含有フラックスの塗布量が3〜20g/m、前記バインダの塗布量が0.2〜8.3g/mであるアルミニウム合金製のろう付部材の、少なくとも、乾燥した前記ろう付用塗膜上に、ろう付前に、さらに、K−Al−F系フラックス、Al−F系フラックス、K−Si−F系フラックス、Cs−Al−F系フラックスおよびK−Zn−F系フラックスのうちの1種または2種以上を含む後塗りフラックスを塗布し、前記後塗りフラックスが塗布された前記ろう付部材をろう付することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明のろう付品の製造方法は、前記第1の本発明において、前記ろう付品が熱交換器で、前記ろう付部材が熱交換器用のチューブであり、前記ろう付において、前記チューブと熱交換器用のフィンとをろう付けすることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明のろう付品の製造方法は、前記第1または第2の本発明において、前記後塗りフラックスが、前記ろう付の7日前から前記ろう付の間に、前記ろう付部材の少なくとも前記ろう付用塗膜上に塗布されることを特徴とする。
第4の本発明のろう付品の製造方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記ろう付部材が、保管用容器に収納されて保管されたものであることを特徴とする。
【0010】
本発明は、ろう付の対象を特定するものではないが、チューブをフィンなどとろう付する熱交換器の製造方法として好適に適用することができる。アルミニウム合金製のチューブに対し、フィンのほか、ヘッダーパイプなどがろう付により接合されて熱交換器を得ることができる。
【0011】
ろう付部材は、その形状、成形方法などは特に限定されるものではないが、例えば、熱交換器用として扁平な多穴管状の押出管などを用いることができる。
また、ろう付部材は、アルミニウム合金製であれば特に材料が限定されるものではないが、好ましい合金組成としては、質量%で、Mn:0.05〜1.2%、Si:0.01〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を挙げることができる。
【0012】
また、上記ろう付部材とろう付けされるフィン、ヘッダーパイプなどの相手部材の形状、成形方法、合金組成なども、特に限定されるものではない。
【0013】
上記アルミニウム合金製のろう付部材の表面には、Si粉末、Zn含有フラックス、およびバインダを含むろう付用塗膜が予め形成される。以下、ろう付用塗膜に含まれる各成分について説明する。
【0014】
Si粉末
Si粉末は、ろう付時に溶融してろう液となり、このろう液にフラックス中のZnが均一に拡散してチューブ表面に均一に広がる。ろう液のような液相中でのZnの拡散速度は、固相中でのZnの拡散速度よりも著しく大きいため、チューブ表面のZn濃度がほぼ均一となり、その結果、均一なZn拡散層が形成され、チューブの耐食性を向上することができる。
【0015】
なお、ろう付用塗膜におけるSi粉末の塗布量は1〜5g/mとする。これは、Si粉末の塗布量が1g/m未満では、ろう材量が不足して十分なろう付強度が得られず、さらにZnの拡散が不十分になり、塗布量が5g/mを超えると、チューブ表面でのSi濃度が高くなり、腐食速度が速まるためである。
【0016】
また、Si粉末は、最大粒径が30μm以下であることが好ましい。これは、最大粒径が30μmを超えると溶融したSiによるエロージョン深さが増加するためである。
なお、Si粉末の最大粒径が0.1μm未満であると、Si粉末の凝集が起こり、同様にエロージョン深さが増大する。
【0017】
Zn含有フラックス
Zn含有フラックスとしては、ZnF、ZnCl、KZnFなどのZn化合物の単体またはこれらの混合物を例示することができる。また、ろう付用塗膜を構成する材料には、Zn含有フラックス以外にZn非含有フラックスを含んでいても良い。Zn非含有フラックスとしては、LiF、KF,CaF、AlF、SiFなどのフッ化物や、前記フッ化物の錯化合物であるKAlF、KAlF・5HO、KAlFの単体またはこれらの混合物を例示することができる。
チューブ表面に予め形成されるろう付用塗膜にZn含有フラックスを含有させることで、ろう付後のチューブ表面にZn拡散層が形成され、このZn拡散層が犠牲陽極層として機能することによりチューブの防食効果を高めることができる。
【0018】
なお、ろう付用塗膜におけるZn含有フラックスの塗布量は3〜20g/mとする。これは、Zn含有フラックスの塗布量が3g/m未満では、Zn拡散層の形成が不十分となって防食効果が十分に得られず、塗布量が20g/mを超えると、チューブと他の部品との接合部であるフィレット部に過剰のZnが集中し、その接合部において腐食速度が速まるためである。なお、同様の理由により、Zn含有フラックスの塗布量は、4〜10g/mとすることが好ましい。
【0019】
バインダ
バインダとしては、アクリル系樹脂などを例示することができる。ろう付用塗膜は、Si粉末およびZn含有フラックスとともにバインダを含有することで、チューブに固着することができる。バインダは、通常、ろう付加熱時において、フラックスの活性化前に分解蒸発する。
【0020】
バインダの塗布量は0.2〜8.3g/mとする。これは、バインダの塗布量が0.2g/m未満では、塗膜の強度や密着性が低下し、熱交換器の組付け工程で塗膜が剥離しろう付不良の原因となることがあり、塗布量が8.3g/mを超えると、ろう付加熱時における分解蒸発が不十分となりバインダ残渣が残存しろう付不良の原因となることがあるためである。なお、同様の理由により、バインダの塗布量は、0.5〜5g/mとすることが好ましい。
【0021】
本発明では、ろう付を行う前に、さらに、ろう付用塗膜が予め表面に形成されたチューブに、後塗りフラックスを塗布する。後塗りフラックスは、K−Al−F系フラックス、Al−F系フラックス、K−Si−F系フラックス、Cs−Al−F系フラックス、およびK−Zn−F系フラックスのうちの1種または2種以上を含むものである。
【0022】
ここで、K−Al−F系フラックスは、少なくともK、Al、フッ素を構成成分とするフラックスである。具体的には、KAlF、KAlF、KAlF、KAlF・5HOなどの単体またはこれらの混合物を例示することができる。
また、Al−F系フラックスは、Kを含まず、少なくともAlとフッ素を構成成分とするフラックスである。具体的には、AlFなどを例示することができる。
また、K−Si−F系フラックスは、少なくともK、Si、フッ素を構成成分とするフラックスである。具体的には、KSiFなどを例示することができる。
また、Cs−Al−F系フラックスは、少なくともCs、Al、フッ素を構成成分とするフラックスである。具体的には、Cs1−3AlF4−6などを例示することができる。
また、K−Zn−F系フラックスとは、少なくともK、Zn、フッ素からなるフラックスである。具体的には、、KZnFなどを例示することができる。
【0023】
本発明では、ろう付用塗膜が予め表面に形成されたチューブに、上記後塗りフラックスを塗布することにより、良好なろう付け性が得られる。
【0024】
なお、後塗りフラックスの塗布は、好適にはろう付7日前からろう付までの間に行う。ろう付7日前よりも前の時点で後塗りフラックスを塗布したままにすると、後塗りフラックスが経時的に劣化しやすくなる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、Si粉末、Zn含有フラックス、およびバインダを含むろう付用塗膜が予め表面に形成され、前記Si粉末の塗布量が1〜5g/m2であり、前記Zn含有フラックスの塗布量が3〜20g/m2であり、前記バインダの塗布量が0.2〜8.3g/m2であるアルミニウム合金製のチューブの、少なくとも、乾燥した前記ろう付用塗膜上に、ろう付前に、さらに、K−Al−F系フラックス、Al−F系フラックス、K−Si−F系フラックス、Cs−Al−F系フラックス、およびK−Zn−F系フラックスのうちの1種または2種以上を含む後塗りフラックスを塗布し、前記後塗りフラックスが塗布された前記チューブとフィンとをろう付するので、ろう付性を回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に用いるチューブを示す図であり、(a)はろう付用塗膜が形成されたチューブを示す図、(b)は後塗りフラックス塗布後のチューブを示す図である。
図2】同じく、後塗りフラックスが塗布されたチューブの一例についてフラックス塗膜を強調して示す図である。なお、図では示されていないが、後塗りフラックスはチューブ全面に塗布される場合もある。
図3】同じく、チューブ、フィン、およびヘッダーパイプの組付けを行った熱交換器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図1図3に基いて説明する。
熱交換器用のチューブには、質量%で、Mn0.05〜1.2%、Si0.01〜1.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有するAl合金を用いることができる。該Al合金を常法により溶製し、通常は押出加工を経てチューブ1とされる。この実施形態では、チューブ1は、図1に示すように、扁平な多穴管構造とされ、内部に、複数の通路2が形成されている。
【0028】
上記チューブ1の表面には、Si粉末、Zn含有フラックス、およびバインダを含み、必要に応じて溶剤を加えたろう付用組成物が塗布されて、図1(a)に示すようにろう付用塗膜3が形成される。ろう付用塗膜3中のSi粉末としては、好適には、最大粒径が30μm以下、0.1μm以上で、平均粒径が1〜10μmのものを用いることができる。
Si粉末は、塗布量が1〜5g/mとなるように調整される。
【0029】
Zn含有フラックスとしては、ZnF、ZnCl、KZnFなどのZn化合物の単体またはこれらの混合物を用いることができ、所望によりこれに加えて、LiF、KF,CaF、AlF、SiFなどのフッ化物や、前記フッ化物の錯化合物であるKAlF、KAlF・5HO、KAlFの単体またはこれらの混合物を混合して用いることができる。Zn含有フラックスは塗布量が3〜20g/mとなるように調整される。
【0030】
また、バインダとしては、アクリル樹脂系バインダを用いることができる。バインダは塗布量が0.2〜8.3g/mとなるように調整される。
【0031】
上記ろう付用組成物は、適宜の方法によりチューブ1表面に塗布される。ろう付用組成物の塗布方法は特に限定をされるものではなく、スプレー法、シャワー法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法などを適宜採用することができる。なお、塗布物の塗布後、乾燥工程により、チューブ1上の塗布物を乾燥させることができる。
【0032】
上記ろう付用塗膜が予め表面に形成されたチューブは、大気中の酸素などによるろう付用塗膜の特性の劣化を防止するため、例えば、アルミニウム箔などの保管容器に収容し、流通に供して、使用先などで使用に備えて保管することができる。使用先では、保管容器からチューブを取り出してろう付を行う。
【0033】
ろう付を行う際には、ろう付用塗膜3が形成されたチューブ1を保管容器から取り出した後、図1(b)に示すように、該チューブ1に後塗りフラックス4を塗布する。後塗りフラックス4としては、K−Al−F系フラックス、Al−F系フラックス、K−Si−F系フラックス、Cs−Al−F系フラックス、およびK−Zn−F系フラックスのうちの1種または2種以上を含むものを用いる。
【0034】
K−Al−F系フラックスとしては、KAlF、KAlF、KAlF、KAlF・5HOなどの単体またはこれらの混合物を用いることができる。また、Al−F系フラックスとしては、AlFなどを用いることができる。また、K−Si−F系フラックスとしては、KSiFなどを用いることができる。また、Cs−Al−F系フラックスとしては、Cs1−3AlF4−6などを用いることができる。また、K−Zn−F系フラックスとしては、KZnFなどを用いることができる。
【0035】
後塗りフラックス4の塗布は、ろう付7日前からろう付直前の間に行うことが望ましい。
後塗りフラックス4の塗布方法は特に限定をされるものではなく、スプレー法、シャワー法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法などを適宜採用することができる。なお、後塗りフラックス4の塗布後、乾燥工程により、チューブ1上の後塗りフラックス4を乾燥させることができる。
後塗りフラックスは、塗布量1〜20g/mとなるように調整される。
【0036】
上記後塗りフラックス4が塗布されたチューブ1、1間には、図3に示すように、フィン7が配置されるとともに、チューブ1の端部がヘッダーパイプ5の差込用穴6に挿通されて互いに組み付けられ、ろう付けに供される。
【0037】
ろう付けに際しては、不活性雰囲気、真空雰囲気、大気下などの適宜の雰囲気で適温に加熱して、ろう付を行う。なお、本発明としては、雰囲気、加熱温度、加熱保持時間などは特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。
ろう付に際しては、良好なろう付け性が得られる。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例について説明する。
質量%で、Mn:0.5%、Si:0.7%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金を溶製し、均質化処理後、熱間押出によりチューブを作製した。
その後、上記チューブ表面に、Si粉末、Zn含有フラックス、およびバインダを含む塗布物をロールコーター法により塗布し、乾燥させて、ろう付用塗膜を形成した。なお、Si粉末としては、最大粒径10μm、平均粒径5μmのものを用いた。Zn含有フラックスとしては、KZnFを用いた。バインダとしては、アクリル樹脂バインダを用いた。また、各成分の塗布量は、それぞれ表1に示すとおりとした。
ろう付用塗膜が形成されたチューブは、後塗りフラックスの塗布を行うまで、包装しない状態で、30℃、相対湿度98%の環境下で7日保管した。
【0039】
ヘッダーパイプとしては、7072合金/3003合金/4045合金をクラッドしてなるブレージングシートと3003合金/4045合金をクラッドしてなるブレージングシートを成形し組み合わせて、外径18mm、板厚1.5mmのものを用意した。
【0040】
フィンとしては、A3003合金を溶製し、均質化処理後、熱間圧延と冷間圧延にて0.07mm厚さの板とし、その後、コルゲート加工を行ったものを用意した。
【0041】
ろう付を行うに先立ち、ろう付用塗膜が形成されたチューブには、スプレー法および浸漬法により後塗りフラックスを塗布し、乾燥させた。後塗りフラックスの種類および塗布量、ならびに後塗りフラックスの塗布後ろう付までの時間は、それぞれ表1に示すとおりとした。
後塗りフラックスが塗布されたチューブは、ろう付までの間、包装しないままの状態で、30℃、相対湿度98%の環境下で3〜8日保管した。
【0042】
後塗りフラックスを塗布してから表1に示す日数後、チューブ、ヘッダーパイプ、フィンを用いて図3に示す組み立てを行い、不活性雰囲気の炉中で600℃、3分保持のろう付を行った。
【0043】
上記ろう付後のろう付品について、次式によってフィン接合率を求めた。フィン接合率の算出結果を表1に示した。なお、フィン接合率が95%であれば、ろう付性に優れるものであると評価した。
フィン接合率(%)=(フィンとチューブの総ろう付長さ/フィンとチューブの総接触長さ)×100
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、実施例1〜17では、いずれもフィン接合率が95%以上となり、優れたろう付性が得られるとともに、耐食性について問題が生じることはなかった。
他方、比較例1、2、5〜9では、いずれもフィン接合率が95%を下回り、十分なろう付性を得ることができなかった。フィン接合率が低下したのは、比較例1では、ろう材不足のためであり、比較例2では、酸化皮膜を除去するためのフラックス不足のためであり、比較例5では、塗膜に剥離が発生したためであり、比較例6では、バインダ残渣が発生したためであり、比較例7、9では、塗膜が劣化したためであり、比較例8では、ろう付前後の塗膜厚さの変化が大きいためである。また、比較例2では、腐食速度を速めるSi残渣が発生した。
また、後塗りフラックスを塗布しなかった比較例10では、フィン接合率が著しく低い結果となった。
なお、比較例3、4ではフィン接合率は高かったものの、比較例3では、Znによる防食層の形成が不足して耐食性が劣る結果となり、また、比較例4では、腐食によるフィンの早期脱落が発生した。
【符号の説明】
【0046】
1 チューブ
2 通路
3 ろう付用塗膜
4 後塗りフラックス
5 ヘッダーパイプ
6 差込用穴
7 フィン
図1
図2
図3