(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁石のN極とS極を該磁石の移動方向に直交する方向に並設するとともに、前記N極磁気検出素子と前記S極磁気検出素子を前記磁石のN極とS極の配置に対応させて前記磁石の移動方向に直交する方向に配置したことを特徴とする請求項1記載の電動ステアリングロック装置。
前記磁石の前記N極磁気検出素子と前記S極磁気検出素子に対向する側の面にそれぞれ配置されたN極とS極に対して、反対側の面にそれぞれ極が異なるS極とN極を重ねて配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の電動ステアリングロック装置。
前記磁気検出手段をプリント基板上に配置し、該プリント基板の前記磁石に対向する面とは反対側の面に前記N極磁気検出素子又はS極磁気検出素子を配置し、前記磁石に対してそれぞれ反対の極の磁気を検出する磁気検出素子として構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電動ステアリングロック装置。
前記制御手段は、前記電動アクチュエータを駆動して所定時間が経過すると電動アクチュエータの駆動を停止することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電動ステアリングロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アンロック側の位置に複数の磁気検出素子を配置する方法では、ロック部材が移動しているときに不測の強電磁場の影響を受けると、ロック部材がアンロック位置にないにも拘らず、アンロック側の複数の磁気検出素子が全てOFF状態からON状態に切り替わり、ロック部材がアンロック位置に移動したものと誤検知され、ロック部材が途中で停止し、ステアリングホイールの回動がロックされたままの状態でエンジンが始動される可能性がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ロック部材のアンロック位置での誤検知を防いで、ステアリングホイールがアンロックの状態でエンジンが始動されることを確実に保障することができる電動ステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、
該ロック部材を作動させる電動アクチュエータと、
該電動アクチュエータの駆動力を前記ロック部材の進退力に変換する駆動機構と、
前記ロック部材と連動して移動する磁石と、
前記ロック位置とアンロック位置に対応する位置にそれぞれ配置されて前記磁石の磁力を検出する磁気検出手段と、
該磁気検出手段の検出結果に応じて前記ロック部材の位置を検出して前記電動アクチュエータの駆動を制御する制御手段と、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
アンロック位置に対応する位置に
近接して配置された
複数の前記磁気検出手段を、前記磁石のN極を検出してON
し、前記磁石のS極は検出しないN極磁気検出素子と、前記磁石のS極を検出してON
し、前記磁石のN極は検出しないS極磁気検出素子とを含んで構成し、
更に、前記磁石を前記N極磁気検出素子とS極磁気検出素子の配置に対応させてN極とS極を並設させた構成とし、
前記制御手段は、前記N極磁気検出素子と前記S極磁気検出素子が
同時に共にONしたときに前記ロック部材がアンロック位置に移動したものと判断して前記電動アクチュエータの駆動を停止することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記磁石のN極とS極を該磁石の移動方向に直交する方向に並設するとともに、前記N極磁気検出素子と前記S極磁気検出素子を前記磁石のN極とS極の配置に対応させて前記磁石の移動方向に直交する方向に配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記磁石の前記N極磁気検出素子と前記S極磁気検出素子に対向する側の面にそれぞれ配置されたN極とS極に対して、反対側の面にそれぞれ極が異なるS極とN極を重ねて配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記磁気検出手段をプリント基板上に配置し、該プリント基板の前記磁石に対向する面とは反対側の面に前記N極磁気検出素子又はS極磁気検出素子を配置し、前記磁石に対してそれぞれ反対の極の磁気を検出する磁気検出素子として構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記制御手段は、前記電動アクチュエータを駆動して所定時間が経過すると電動アクチュエータの駆動を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、磁気検出手段のN極磁気検出素子とS極磁気検出素子が共に
同時にONしたときにロック部材がアンロック位置に移動したものと判断するようにしたため、ロック部材がロック位置からアンロック位置へと移動しているときに外部から単極(N極又はS極)の電磁場が発生しても、N極磁気検出素子とS極磁気検出素子が同時にONすることがなく、少なくとも一方はOFF状態を維持する。このため、制御手段は、ロック部材がアンロック位置に移動したものと判断することなく電動アクチュエータの駆動を継続し、ロック部材はアンロック位置への移動を続行する。
【0016】
従って、ロック部材がアンロック位置に達していないにも拘わらず、ロック部材がアンロック位置に移動したものと誤検知されて該ロック部材の移動が途中で停止することがなく、ステアリングホイールの回動がロックされたままの状態でエンジンが始動されてしまうという不具合の発生が確実に防がれる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、磁石のN極とS極を該磁石の移動方向に直交する方向に並設するとともに、N極磁気検出素子とS極磁気検出素子を磁石のN極とS極の配置に対応させて磁石の移動方向に直交する方向に配置したため、磁石のN極とS極をその移動方向に長く配置することができる。このため、N極磁気検出素子とS極磁気検出素子が同時にONとなる状態を維持することができる磁石の移動範囲を長く取ることができ、アンロック位置における磁石の停止位置の設定可能範囲も広くなって設計の自由度が高められる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、磁石から極磁気検出素子に向かう方向に沿ってN極とS極を重ねて配置したため、磁気検出素子方向に磁界のループを長く延ばすことができ、磁気検出素子によって検出される磁界の強さを大きくしてロック部材の位置を確実に検出することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、磁気検出素子をプリント基板の磁石に対向する側とは反対側の面に配置したため、磁石に対して磁気検出素子の向きを天地逆転して配置することができる。即ち、磁気検出素子を通過する磁界の向きを逆転させることができ、N極磁気検出素子によって磁石のS極を検出することができるとともに、S極磁気検出素子によって磁石のN極を検出することができる。このため、磁気検出手段をN極磁気検出素子とS極検出素子の双方を含んで構成した場合であっても、例えば、S極磁気検出素子をN極検出素子として使用することができ、部品としてS極磁気検出素子のみで構成することができ、部品の管理工数や仕入れ単価を低減して電動ステアリングロック装置の製造コストを低く抑えることができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、ロック部材がアンロック位置に移動したにも拘わらず、故障等のために全ての磁気検出素子のONが検出できない場合には、制御手段は所定時間が経過すると電動アクチュエータの駆動を停止するようにしたため、電動アクチュエータが駆動され続けることによる不具合の発生が防がれる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図、
図2は同電動ステアリングロック装置のアンロック状態を示す縦断面図、
図3は同電動ステアリングロック装置の分解斜視図、
図4は電動ステアリングロック装置のシステム構成図、
図5は同電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図である。
【0024】
本発明に係る電動ステアリングロック装置1は、電動によって不図示のステアリングシャフト(ステアリングホイール)の回動をロック/アンロックするものであって、そのハウジング2は、非磁性体の金属(例えば、マグネシウム合金)で構成されたケース3と該ケース3の下面開口部を覆う金属製のリッド4によって構成されている。
【0025】
上記ケース3は矩形ボックス状に成形されており、その上部には円弧状の凹部3aが形成され、この凹部3aには不図示のコラムチューブが嵌め込まれ、このコラムチューブはケース3に結着される不図示の円弧状のブラケットによってケース3に固定される。尚、図示しないが、コラムチューブ内には前記ステアリングシャフトが挿通しており、該ステアリングシャフトの上端にはステアリングホイールが結着され、ステアリングシャフトの下端は操舵系を構成するステアリングギヤボックスに連結されている。そして、運転者がステアリングホイールを回動操作すれば、その回転はステアリングシャフトを経てステアリングギヤボックスに伝達され、不図示の操舵機構が駆動されて左右一対の前輪が転舵されて所要の操舵がなされる。
【0026】
又、
図3に示すように、ケース3の側部には矩形のコネクタ配設部3bが開口しており、このコネクタ配設部3bが形成された側面以外の他の3つの側面にはピン5が圧入される円孔状のピン孔3c(
図3には2つのみ図示)が形成されている。
【0027】
他方、前記リッド4は矩形平板状に成形されており、その内面(上面)には3つのブロック状のピン留め部4Aと3つの円柱状のカバー押さえ部4B及び有底筒状のギヤ保持筒部4Cが一体に立設されている。ここで、3つのピン留め部4Aはケース3の前記ピン孔3cの位置に対応する箇所に形成されており、これらには前記ピン5が圧入される円孔状のピン挿通孔4a(
図3には1つのみ図示)が形成されている。
【0028】
而して、リッド4は、
図1及び
図2に示すように、ケース3の下面開口部を下方から覆うようにケース3の下端部内周に嵌め込まれ、ケース3の側部に形成された3つの前記ピン孔3c(
図3参照)に挿通するピン5を該リッド4に立設された3つのピン留め部4Aに形成されたピン挿通孔4aに圧入することによってケース3に固定される。
【0029】
ところで、ハウジング2には、
図1及び
図2に示すように、ロック部材収納部2Aと基板収納部2Bが形成されており、ロック部材収納部2Aにはロック部材6が収納されている。このロック部材6は、下端部外周に雄ネジ部7aが刻設された略円筒状のドライバ7と、該ドライバ7内に上下動可能に収容されたプレート状のロックボルト8とで構成されている。ここで、ロックボルト8には上下方向に長い長孔8aが形成されており、ロックボルト8は長孔8aに横方向に挿通するピン9によってドライバ7に連結されている。尚、ピン9は、ドライバ7に横方向に貫設されたピン挿通孔7bに圧入によって挿通保持されている。
【0030】
そして、ロックボルト8は、ケース3に形成された矩形の挿通孔3d内に上下動可能に嵌合しており、これとドライバ7の隔壁7c間に縮装されたスプリング10によって常時上方に付勢され、通常はロックボルト8の長孔8aの下部がピン9に係合することによって該ロックボルト8はドライバ7と共に上下動する。
【0031】
又、ドライバ7の上部外周の相対向する箇所には水平に延びる係合部としてのアーム7Aと上下方向に長い回り止め部7Bが一体に形成されており、アーム7Aは、ハウジング2(ケース3)内に上下動可能に収容され、回り止め部7Bは、ケース3に形成された係合溝3eに係合してドライバ7の回転を阻止する。そして、アーム7Aの先端部には横断面矩形の磁石収納部7dが形成されており、この磁石収納部7dには四角柱状の磁石11(マグネット)が圧入によって収納されている。
【0032】
更に、
図1及び
図2に示すように、ハウジング2内に形成された前記ロック部材収納部2Aには円筒状のギヤ部材12が回転可能に収容されており、該ギヤ部材12の下部外周はリッド4の内面(上面)に立設された前記ギヤ保持筒部4Cによって回転可能に保持されている。そして、このギヤ部材12の下部外周にはウォームギヤ12aが形成されており、同ギヤ部材12の内周には雌ネジ部12bが形成されている。
【0033】
上記ギヤ部材12の内部には前記ドライバ7の下部が挿入されており、このドライバ7の下部外周に形成された前記雄ネジ部7aには、ギヤ部材12の内周に形成された前記雌ネジ部12bが噛合している。そして、リッド4のギヤ保持筒部4Cの中心部に形成された円柱状のスプリング受け4bとドライバ7の隔壁7cの間にはスプリング13が縮装されており、ロック部材6(ドライバ7とロックボルト8)はスプリング13によって常時上方に付勢されている。
【0034】
又、
図1及び
図2に示すように、ハウジング2に形成された前記ロック部材収納部2Aには電動アクチュエータである電動モータ14が横置き状態で収納されており、この電動モータ14の出力軸14aには小径のウォーム15が形成されている。そして、このウォーム15は、ギヤ部材12の外周に形成された前記ウォームギヤ12aに噛合している。ここで、ウォーム15とウォームギヤ12aは、電動モータ14の出力軸14aの回転力をロック部材6の進退力に変換する駆動機構を構成している。
【0035】
一方、
図1及び
図2に示すように、ハウジング2に形成された前記基板収納部2Bにはプリント基板16が収納されているが、このプリント基板16は、その内面がロック部材6の作動方向と平行となるように垂直に立設された状態で収納されている。そして、このプリント基板16の内面上下のロック位置とアンロック位置に対応する位置には、磁気検出手段である1つのホール素子17と2つのホール素子18,19がそれぞれ設けられており、これらのホール素子17〜19によって後述のようにロック部材6(ロックボルト8)の位置(ロック(Lock)/アンロック(Unlock)位置)が検出される。
【0036】
ここで、
図5に示すように、ホール素子17は、ロック位置において磁石11のS極を検出してONするS極磁気検出素子(以下、「SW_A」と記す)であり、ホール素子18,19は、アンロック位置において磁石11のS極、N極をそれぞれ検出してONするS極磁気検出素子(以下、「SW_B」と記す)、N極磁気検出素子(以下、「SW_C」と記す)である。尚、ホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19は、磁石11の移動方向に沿って上下に配置されている。
【0037】
次に、電動ステアリングロック装置1のシステム構成を
図4に基づいて以下に説明する。
【0038】
前記ホール素子17〜19は、電動モータ14を駆動制御する制御手段であるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略称する)20に電気的に接続されており、マイコン20は、通信インターフェイス(通信I/F)21及び車両の通信ライン22を経て車両に搭載された不図示のECUに電気的に接続されている。尚、
図3に示すように、基板16には通信インターフェイス21の機能を果たすコネクタ23が取り付けられており、このコネクタ23には、前記マイコン20(
図4参照)から延びる不図示の電気的接続線が接続され、ホール素子17〜19は上述のようにマイコン20に電気的に接続されている。
【0039】
図5に示すように、基板16のロック位置に配された1つのホール素子(SW_A)17は、ロック部材6(アーム7A)に設けられた磁石11のS極を検出するとOFF状態(Not Lock(OFF))からON状態(Lock(ON))に切り替わり、これによってロックボルト8がロック位置に移動したことがマイコン20によって判断される。
【0040】
これに対してプリント基板16のアンロック位置に配置された一方のホール素子(SW_B)18は、磁石11のS極を検出するとOFF状態(Not Unlock(OFF))からON状態(Unlock(ON))に切り替わり、他方のホール素子(SW_C)19は、磁石11のN極を検出するとOFF状態(Not Unlock(OFF))からON状態(Unlock(ON))に切り替わり、これによってロックボルト8がアンロック位置に移動したことがマイコン20によって判断される。
【0041】
又、
図4に示すように、車両に搭載されたバッテリ24には前記電動モータ(M)14がロックリレー25とアンロックリレー26を介して電気的に接続されており、ロックリレー25とアンロックリレー26はマイコン20から送信されるロック信号とアンロック信号によってそれぞれ駆動される。ここで、
図3に示すように、前記コネクタ23には上下2つのモータ給電端子27が突設されており、これらのモータ給電端子27は電動モータ14に接続されている。
【0042】
次に、以上のように構成された電動ステアリングロック装置1の動作(ロック/アンロック動作)について説明する。
【0043】
不図示のエンジンが停止している状態では、
図1に示すように、ロック部材6のロックボルト8は上限のロック位置にあって、その上端部がケース3のロックボルト挿通孔3dから凹部3aに突出して不図示のステアリングシャフトに係合している。この状態では、ステアリングシャフトの回動がロックしており、このロック状態においては不図示のステアリングホイールを回動操作することができず、これによって車両の盗難が防がれる。尚、このとき、アーム7Aに収容された磁石11は、基板16に設けられたホール素子(SW_A)17の近傍(
図5の破線位置)に位置しており、ホール素子(SW_A)17はON状態((Lock(ON))にあり、パソコン20はロックボルト8がロック位置にあることを認識している。尚、
図5に示す「ロック確定位置」とは,ロックボルト8とステアリングシャフトが確実に係合してステリングシャフトがロック状態となる位置である。又、「検知範囲A」は、ホール素子(SW_A)17が磁石11のS極を検出して、OFF状態(Not Lock(OFF))からON状態(Lock(ON))に遷移するバラツキを示す範囲である。即ち、ホール素子は同じ仕様のものでも個体毎にそれぞれ磁石の検出位置にバラツキがあり、磁石11の左側端部がこの「検出範囲A」の何れかにあるときにホール素子(SW_A)17はOFF状態からON状態に切り替わる。従って、
図5においては、説明の便宜上、「検出範囲A」の中央位置をホール素子(SW_A)17がOFF状態(Not Lock(OFF))からON状態(Lock(ON))に遷移する位置として図示している。
【0044】
上記状態から運転者が不図示のエンジンスタートスイッチをON操作すると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してアンロック要求信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1のマイコン20は、アンロックリレー26に対してアンロック信号を出力する。すると、
図4に示すアンロックリレー26は破線にて示す位置に切り替わり、ロックリレー25は実線位置にあるため、バッテリ24からの電流は
図4に実線にて示す経路を流れて電動モータ14が起動される。
【0045】
上述のように電動モータ14が起動されると、その出力軸14aの回転はウォーム15とウォームギヤ12aによって減速されつつ方向が直角に変換されてギヤ部材12に伝達され、該ギヤ部材12が回転されるため、該ギヤ部材12の内周に刻設された雌ネジ部12bに螺合する雄ネジ部7aが形成されたドライバ7がスプリング13の付勢力に抗して下動する。このようにドライバ7が下動すると、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が下動する。
【0046】
而して、上述のようにドライバ7のアーム7Aが下動してロックボルト8が
図2に示すように下限のアンロック位置に達すると、該ロックボルト8の上端部がケース3のロックボルト挿通孔3dの内部に退避するため、ロックボルト8のステアリングシャフトへの係合が解除され、ステアリングシャフトのロックが解除されてアンロック状態となり、運転者によるステアリングホイールの回動操作が可能となる。このとき、ドライバ7のアーム7Aに設けられた磁石11が
図5に示す破線位置へと移動すると、前述のようにアンロック位置近傍に設けられた2つのホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19は共にOFF状態(Not Unlock(OFF))からON状態(Unlock(ON))に替わるため、マイコン20は、ロックボルト8がアンロック位置に移動したことを認識し、電動モータ14の駆動を停止するとともに、
図4に示す通信I/F21及び通信ライン22を介して車体側のECUにアンロック完了信号を送信する。この結果、
図2に示すアンロック状態が維持され、車両のエンジン始動が可能となる。
【0047】
尚、
図5に示す、「アンロック確定位置」は、磁石11の右側端部がこの位置まで移動すると、ロックボルト8とステアリングシャフトとの係合が確実に解除されてアンロック状態となる位置である。又、「検出範囲B」は、磁石11のS極の右側端部がこの範囲の何れかにあるときにホール素子(SW_B)18がOFF状態(Not Unlock(OFF))からON状態(Unlock(ON))に切り替わる範囲であり、「検出範囲C」は、磁石11のN極の右側端部がこの範囲の何れかにあるときにホール素子(SW_C)19がOFF状態(Not Unlock(OFF))からON状態(Unlock(ON))に切り替わる範囲である。
【0048】
そして、車両が停止し、運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作してエンジンを切ると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してロック要求信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1のマイコン20は、ロック信号を出力して
図4に示すロックリレー25を破線位置に切り替え、アンロックリレー26は実線位置にあるため、バッテリ24からの電流は
図4に破線にて示す経路を流れて電動モータ14が逆転起動されてその出力軸14aが逆転する。
【0049】
上述のように電動モータ14の出力軸14aが逆転されると、その回転はウォーム15とウォームギヤ12aを経てギヤ部材12に伝達され、該ギヤ部材12が逆転するためにドライバ7が上動し、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が上動する。
【0050】
而して、上述のようにドライバ7のアーム7Aが上動して磁石11が
図5に示す破線位置に達すると、ロック位置近傍に設けられたホール素子(SW_A)17はOFF状態((Not Lock(OFF))からON状態(Lock(ON))に切り替わるため、マイコン20はロックボルト8がロック位置に移動したことを認識し、電動モータ14の駆動を停止するとともに、
図4に示す通信I/F21と通信ライン22を介して車体側のECUにロック完了信号を送信する。この結果、
図1に示すようにロックボルト8の上端部がケース3の凹部3aから突出して不図示のステアリングシャフトに係合するため、ステアリングシャフトの回動がロックされるロック状態となり、駐車時における車両の盗難が防がれる。尚、ロックボルト8のステアリングシャフトの係合溝への係合が良好に行われない場合には、該ロックボルト8に形成された長孔8a内をピン9が相対移動することができる範囲でロックボルト8がスプリング10の付勢力に抗して下動するため、ロックボルト8に過大な負荷が作用することがない。
【0051】
次に、ロックボルト8がロック位置からアンロック位置に移動中に強電磁場が発生した場合の動作について説明する。
【0052】
ロックボルト8がロック位置からアンロック位置へ向けて作動している間、ホール素子(SW_B)18と(SW_C)19は共にOFF状態(Not Unlock(OFF))となっている。このとき、例えば外部からS極の強電磁場が発生した場合、一方のホール素子(SW_B)18のみが誤作動してON(Unlock(ON))となるが、N極を検出してONする他方のホール素子(SW_C)19はOFF状態(Not Unlock(OFF))を維持している。このように、S極の強電磁場が発生した場合であっても、ホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19が同時にONすることがないため、マイコン20はロック部材6がアンロック位置に達したものと判断することはなく、電動モータ14の駆動が維持される。
【0053】
同様に外部からN極の強電磁場が発生した場合、S極を検出する一方のホール素子(SW_B)18はOFF状態(Not Unlock(OFF))を維持し、N極を検出してONする他方のホール素子(SW_C)19のみが誤作動してON(Unlock(ON))となる。このように、N極の強電磁場が発生した場合であっても、ホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19が同時にON(Unlock(ON))することがないため、マイコン20はロック部材6がアンロック位置に達したものと判断することはなく、電動モータ14の駆動が維持される。
【0054】
従って、ロックボルト8がロック位置からアンロック位置に作動中に強電磁場が発生した場合でも、ロックボルト8の位置が誤検知されてしまうことがなく、ロックボルト8がアンロック位置に至っていないにも拘らず、誤って電動モータ14の駆動が停止されてしまうことがない。
【0055】
そして、ロックボルト8(磁石11)がアンロック位置まで移動すると2つのホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)は共にON(Unlock(ON))するため、マイコン20は、ロックボルト8がアンロック位置に移動したことを認識し、電動モータ14の駆動を停止してECUにアンロック完了信号を送信する。ECUは、アンロック完了信号をマイコン20から受信すると、エンジンを始動させて車両の運転を可能とする。
【0056】
ところで、ロック部材6がアンロック位置
に移動したにも拘わらず、故障等のためにホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19のONが検出されない場合には、マイコン20は、電動モータ14を起動してから所定時間(ロック部材6がアンロック位置まで確実に移動することができる時間(例えば、1秒))
が経過した後に電動モータ14を停止させ、ECUに対して異常信号を送信する。ECUは、異常信号をマイコン20から受信すると、エンジンの始動を中止して車両のメータパネル等に配置された警告灯を点灯し、運転者に対して異常の発生を報知する。
【0057】
又、ロックボルト8がアンロック位置からロック位置に移動したにも拘わらず、故障等のためにホール素子(SW_A)17のONを検出することができない場合においても、マイコン20は、電動モータ14を起動してから所定時間(ロック部材6がロック位置まで確実に移動することができる時間(例えば、1秒))経過した後に電動モータ14を停止させ、ECUに対して異常信号を送信する。ECUは、異常信号をマイコン20から受信すると、エンジン停止後に車両のメータパネル等に配置された警告灯を点灯し、運転者に対して異常の発生を報知する。
【0058】
以上のように、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、アンロック位置に配置されたホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19が共にONしたときにロック部材6がアンロック位置に移動したものと判断するようにしたため、ロック部材6がロック位置からアンロック位置へと移動しているときに外部から単極(N極又はS極)の電磁場が発生しても、ホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19が同時にONすることがなく、少なくとも一方はOFF状態を維持する。このため、マイコン20は、ロック部材6がアンロック位置に移動したものと判断することなく電動モータ14の駆動を継続し、ロック部材6はアンロック位置への移動を続行する。
【0059】
従って、ロック部材6がアンロック位置に達していないにも拘わらず、ロック部材6がアンロック位置に移動したものと誤検知されて該ロック部材6の移動が途中で停止することがなく、ステアリングホイールの回動がロックされたままの状態でエンジンが始動されてしまう不具合の発生が確実に防がれる。
【0060】
又、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、ロック部材6がロック位置又はアンロック位置に移動したにも拘わらず、故障等のためにホール素子(SW_A)17又はホール素子(SW_B)18及びホール素子(SW_C)19のONが検出できない場合には、マイコン20は所定時間が経過すると電動モータ14の駆動を停止するようにしたため、電動モータ14が駆動され続けることによる不具合の発生が防がれる。
【0061】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を
図6に基づいて説明する。
【0062】
図6は本発明の実施の形態2に係る電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図であって、本実施の形態及び以下に示す実施の形態3〜5に係る電動ステアリングロック装置の基本構成は前記実施の形態1に係る電動ステアリングロック装置1のそれと同じであるため、これについての再度の説明は省略し、以下の説明では実施の形態1において使用した符号をそのまま使用する。
【0063】
本実施の形態は、磁石11のN極とS極を該磁石11の移動方向(
図6の左右方向)に直交する方向(
図6の上下方向)に並設するとともに、S極磁気検出素子であるホール素子(SW_B)18とN極磁気検出素子であるホール素子(SW_C)19を磁石11のS極とN極の配置に対応させて磁石11の移動方向に直交する方向に配置したことを特徴とし、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0064】
而して、本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様の効果が得られるが、本実施の形態では、磁石11のS極とN極をその移動方向に長く配置することができ
るため、ホール素子(SW_B)18とホール素子(SW_C)19が同時にONとなる状態を維持することができる磁石11の移動範囲を実施の形態1よりも長く取ることができ、アンロック位置における磁石11の停止位置の設定可能範囲も広くなって設計の自由度が高められるという効果が得られる。例えば、アンロック位置における磁石11の停止位置の設定可能範囲が広くなると、ロック部材6をアンロック状態(ホール素子18とホール素子19とが共にONの状態)に維持するために、その状態を維持する範囲でロック部材6を強制的にストップさせるようなストッパ等を設ける必要もなくなり、構成も簡略化することができる場合もある。
【0065】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3を
図7に基づいて説明する。
【0066】
図7は本発明の実施の形態3に係る電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図であり、本実施の形態においては、アンロック位置における磁気検出素子(ホール素子)の配置が実施の形態1のそれとは異なっている。
【0067】
即ち、アンロック位置においては、3つのS極検出素子であるホール素子(SW_B)28、(SW_C)29及び(SW_D)30を配置しているが、2つのホール素子(SW_B)28とホール素子(SW_C)29はプリント基板16の磁石11に対向する面(
図7の上面)に配置され、1つのホール素子(SW_D)30はプリント基板16の磁石11に対向する面とは反対側の面(
図7の下面)に配置され、このホール素子(SW_D)30は、そのN極検出面が磁石11に対向しているためにN極磁気検出素子とし機能する。
【0068】
而して、本実施の形態においても、ロック部材6と共に磁石11がアンロック位置に移動すると、ホール素子(SW_B)28とホール素子(SW_C)29は磁石11のS極を検出してONし、ホール素子(SW_D)30は磁石11のN極を検出してONするため、前記実施の形態1と同様の効果が得られるが、本実施の形態では次のような効果が得られる。
【0069】
即ち、本実施の形態では、ホール素子(SW_D)30をプリント基板16の磁石11に対向する側とは反対側の面に配置したため、磁石11に対してホール素子(SW_D)30の向きを天地逆転して配置することができる。即ち、ホール素子(SW_D)30を通過する磁界の向きを逆転させることができ、S極磁気検出素子であるホール素子(SW_D)30によって磁石11のN極を検出することができる。このため、ホール素子(SW_D)30をN極磁気検出素子として機能させることができ、部品としてホール素子(SW_B)28、(SW_C)29及び(SW_D)30をS極磁気検出素子のみで構成することができ、部品の管理工数や仕入れ単価を低減して電動ステアリングロック装置1の製造コストを低く抑えることができる。
【0070】
尚、本実施の形態では、部品としてホール素子(SW_B)28、(SW_C)29及び(SW_D)30をS極磁気検出素子のみで構成したが、これらをN極磁気検出素子のみで構成しても良く、この場合はホール素子(SW_D)30がS極磁気検出素子として機能する。
【0071】
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4を
図8に基づいて説明する。
【0072】
図8は本発明の実施の形態4に係る電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図であり、本実施の形態においては、アンロック位置に配置された3つのホール素子(SW_B)31、(SW_C)32及び(SW_D)33のうち、プリント基板16の幅方向片側(
図8の下側)に配された2つのホール素子(SW_B)31と(SW_D)33をS極磁気検出素子で構成し、プリント基板16の幅方向他側(
図8の上側)に配されたホール素子(SW_C)32をN極磁気検出素子で構成している。又、ロック位置に配置された1つのホール素子(SW_A)17をS極磁気検出素子で構成している。
【0073】
そして、磁石11のS極磁気検出素子であるホール素子(SW_A)17、(SW_B)31と(SW_D)33に対向する側の面にS極を配置し、N極磁気検出素子であるホール素子(SW_C)32に対向する側の面にN極を配置し、これらのS極とN極の上にそれぞれ逆極のN極とS極をそれぞれ配置している。つまり、磁石11は4分割されており、互いに隣り合うもの同士の極が異なるよう構成されている。
【0074】
而して、本実施の形態においても、ロック部材6と共に磁石11がアンロック位置に移動すると、ホール素子(SW_B)31とホール素子(SW_D)33は磁石11のS極を検出してON(Unlock(ON))し、ホール素子(SW_C)32は磁石11のN極を検出してON(Unlock(ON))するため、前記実施の形態1と同様の効果が得られるが、本実施の形態では次のような効果が得られる。
【0075】
即ち、本実施の形態では、磁石11にN極とS極を重ねて配置したため、プリント基板16の方向に磁界のループを長く延ばすことができ、ホール素子(SW_A)17、(SW_B)31、(SW_C)32及び(SW_D)33によって検出される磁界の強さを大きくすることができ、ロック部材6の位置を確実に検出することができる。
【0076】
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5を
図9に基づいて説明する。
【0077】
図9は本発明の実施の形態5に係る電動ステアリングロック装置のホール素子によるロック部材の位置検知を説明する図であり、本実施の形態においては、アンロック位置に配置された3つのホール素子(SW_B)34、(SW_C)35及び(SW_D)36のうち、プリント基板16の幅方向に並設された2つのホール素子(SW_B)34と(SW_C)35をS極磁気検出素子で構成し、それらの下方(
図9の右方)に配置された1つのホール素子(SW_D)36をN極磁気検出素子で構成している。又、ロック位置に配置された1つのホール素子(SW_A)17をS極磁気検出素子で構成している。
【0078】
そして、磁石11がロック位置とアンロック位置にそれぞれ移動したときに、S極磁気検出素子であるホール素子(SW_A)17、(SW_B)34と(SW_C)35に対向する側の面にS極を配置し、N極磁気検出素子であるホール素子(SW_D)36に対向する側の面にN極を配置し、これらのS極とN極の上にそれぞれ逆極のN極とS極をそれぞれ配置している。つまり、磁石11は4分割されており、互いに隣り合うもの同士の極が異なるよう構成されている。
【0079】
而して、本実施の形態においても、前記実施の形態4と同様に、磁石11にN極とS極を重ねて配置したため、プリント基板16の方向に磁界のループを長く延ばすことができ、ホール素子(SW_A)17、(SW_B)34、(SW_C)35及び(SW_D)36によって検出される磁界の強さを大きくすることができ、ロック部材6の位置を確実に検出することができる。その他、本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様の効果が得られる。