(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グランドハンドリング装置では、固定するスキッドと車輪とが干渉しないように、車輪の水平左右方向(水平面上における航空機の左右方向)の位置がスキッドと異なるようにオフセットして配置される。ただし、1の車輪をスキッドの水平左右方向にオフセットして配置するだけでは、スキッドを片持ちすることとなり荷重バランスが悪くなる。そこで、通常、スキッドの接地部を跨いで対称的に2つの車輪を配置し、スキッドを両持ちする構成とすることが多い。
【0006】
車輪の大きさは、航空機の荷重によって決まるため、車輪の大きさによっては、搭乗者が航空機に搭乗する際に用いられるパッセンジャステップと車輪とが干渉してしまう。したがって、航空機の移動時にはグランドハンドリング装置を取り付けるために、パッセンジャステップを取りはずさなければならなかった。
【0007】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、パッセンジャステップと車輪との干渉を避け、煩雑な作業を回避して、航空機の地上での移動効率の向上を図ることが可能なグランドハンドリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のグランドハンドリング装置は、航空機が着地している際に地面に当接して航空機を支持するスキッドに固定される本体と、本体に連結されて、スキッドの接地部を跨いで配置され、航空機を移動自在に支持可能な複数の車輪と、を備え、複数の車輪は、スキッドの水平左右方向内側にある
少なくとも一つの車輪が、スキッドの水平左右方向外側にある車輪より小径であり、接地面の鉛直方向の位置が等しいことを特徴とする。
また、複数の車輪は、スキッドの水平左右方向の内側にある車輪の数が、スキッドの水平左右方向外側にある車輪の数より多いとしてもよい。
【0009】
本体に設けられた掛止部と、航空機と掛止部とを連結し、航空機とスキッドとを引張する引張ストラップと、をさらに含んでもよい。
【0010】
掛止部は、スキッドに対して、鉛直上方かつ水平左右方向外側に位置するとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パッセンジャステップと車輪との干渉を避け、煩雑な作業を回避して、航空機の地上での移動効率の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(航空機1)
図1は、航空機1の概略的な構成を示す説明図である。ここでは、航空機1として回転翼機(ヘリコプター)を例示する。航空機1は、機体10と、メインロータ12と、テールロータ14と、スキッド16と、パッセンジャステップ18とを含んで構成される。
【0015】
機体10は、内燃機関(例えばジェットエンジンやレシプロエンジン)やその制御装置等が搭載され、パイロット等搭乗者を収容する。メインロータ12は、機体10の鉛直上方に位置し、内燃機関により回動することで鉛直方向への揚力を生じさせ、航空機1が大気中に浮上した状態を維持する。テールロータ14は、水平方向への揚力を生じさせることで、メインロータ12が鉛直軸を中心に航空機1を回転させる反トルクを打ち消す。
【0016】
スキッド16は、機体10の鉛直下方に位置し、機体10の前後方向に延びる一対のソリで構成され、航空機1が着地している際に地面に当接し航空機1を支持する。また、スキッド16は、着陸時の衝撃を緩和するための弾性を有している。パッセンジャステップ18は、スキッド16の鉛直上方かつスキッド16の水平左右方向内側(スキッド16に対して機体10中心方向)に位置し、機体10の前後方向に延びるバーで構成され、搭乗者が機体10に搭乗する際の足場として用いられる。
【0017】
本実施形態のような回転翼機等の航空機1は地上での移動手段を有していないので、格納庫への航空機1の格納および搬出を自発的に行うことができない。したがって、航空機1を水平方向へ移動自在に支持するグランドハンドリング装置をスキッド16それぞれに一つずつ固定し、航空機1の荷重をグランドハンドリング装置にかけた状態で航空機1を牽引する。
【0018】
(グランドハンドリング装置100)
図2は、グランドハンドリング装置100の概略的な構成を示した斜視図である。グランドハンドリング装置100は、本体110と、車輪112(
図2中では、112a、112bで示す)と、昇降機構114と、掛止部116と、引張ストラップ118とを含んで構成される。
【0019】
本体110は、鉛直下部がスキッド16に当接し、固定具によってスキッド16に固定される。車輪112は、本体110に連結されて、スキッド16の接地部16aを跨いで機体10の水平左右方向に複数配置され、航空機1を移動自在に支持することができる。昇降機構114は、油圧により動作する油圧シリンダ114aと、油圧シリンダ114aと車輪112とを連結する連結部材114bとからなる。
【0020】
図3は、昇降機構114を説明するための側面図である。かかる側面図は、グランドハンドリング装置100をスキッド16の内側から視ている。グランドハンドリング装置100をスキッド16に固定した時点では、車輪112(112aおよび112b)は
図3(a)のように、退避位置に維持されている。そして、
図3(b)に白抜き矢印で示すように、油圧シリンダ114aに油圧をかけることで、連結部材114bは実線矢印のように回動する。
【0021】
すると、昇降機構114は、スキッド16と、地面と当接する車輪112(
図3中では112a、112b)との相対位置を変化させる。すなわち、
図3(b)において黒で塗りつぶした矢印のように、スキッド16を通じて航空機1を上昇させる。こうして、スキッド16と地面との接触を解除し、車輪112のみによって支持された航空機1を水平方向に移動させることが可能となる。
【0022】
図2に戻って、掛止部116は、本体110に設けられ、スキッド16に対して鉛直上方かつ水平左右方向外側(スキッド16に対して機体10の中心と逆方向)に位置し、引張ストラップ118の一端を掛止可能に設けられる。引張ストラップ(MRSS:Maintenance Roll Stabilizer Strap)118は、一端を掛止部116に、他端を機体10に掛止し、スキッド16を機体10側に引張することでスキッド16の揺動を防止する。以下、グランドハンドリング装置100の車輪112と掛止部116について詳述する。
【0023】
(車輪112)
図4は、グランドハンドリング装置における車輪の配置を説明するための正面図である。従来のグランドハンドリング装置30は、固定するスキッド16と車輪30aとが干渉しないように、車輪30aの水平左右方向の位置がスキッド16と異なるようにオフセットして配置される。ただし、1の車輪30aをスキッド16の水平左右方向にオフセットして配置するだけでは、スキッド16を片持ちすることとなり荷重バランスが悪くなる。そこで、
図4(a)のように、スキッド16の接地部16aを跨いで対称的に2つの車輪30aを配置し、スキッド16を両持ちする構成としていた。
【0024】
車輪30aの大きさは、航空機1の荷重によって決まるため、車輪30aが比較的大きくなると、スキッド16の水平左右方向内側にある車輪30aが、パッセンジャステップ18と干渉してしまう。したがって、従来では、航空機1の移動時には、一旦、パッセンジャステップ18を取り外してからグランドハンドリング装置30を取り付けていた。本実施形態では、車輪112の配置を工夫することで、作業効率の向上を図る。
【0025】
具体的に、本実施形態のグランドハンドリング装置100では、
図4(b)に示すように、スキッド16の接地部16aを跨いで対向する複数の車輪112のうち、スキッド16の水平左右方向内側にある車輪112aが、スキッド16の水平左右方向外側にある車輪112bより小径である。ここでは、いずれの車輪112も鉛直下部が地面に接することを前提としているので(接地面の鉛直方向の位置が等しいので)、車輪112aの回転軸の高さや頂部の高さが、車輪112bよりも低くなる。ここでは、車輪112aの径を車輪112bの径の1/2としているので、車輪112aの回転軸の高さや頂部の高さも1/2となっている。
【0026】
このように、スキッド16の水平左右方向内側にある車輪112aの高さを低く設定することで、
図4(b)に示すように、航空機1を上昇させた(持ち上げた)状態においても、パッセンジャステップ18と車輪112aとが干渉しない。したがって、パッセンジャステップ18の煩わしい取り外し作業を行わなくとも、容易かつ迅速に航空機1を移動させることが可能となる。
【0027】
ただし、車輪112aを車輪112bと比べて単純に小径にすると、車輪112aに対する航空機1の荷重負担が高まってしまう。そこで、本実施形態では、1のグランドハンドリング装置100につき、小径の車輪112aの数を車輪112bの数より多く配置することで(ここでは、車輪112aを2つ)、航空機1の荷重負担を分散する。
【0028】
(掛止部116)
ところで、航空機1の格納や搬出には、メインロータ12におけるブレードの収容等、航空機1に対する個々の作業が必要となる。このような作業中に、スキッド16が有する弾性によって機体10が不要に揺動する場合がある。そこで、このような揺動を抑制すべく、引張ストラップ118が設けられる。
【0029】
図5は、グランドハンドリング装置における掛止部116の位置を説明するための正面図である。従来の引張ストラップ32は、
図5(a)のように、引張ストラップ32の一端がスキッド16に直接掛止されていた。しかし、
図5(a)に示すように、スキッド16と機体10の掛止部位との直線上には、パッセンジャステップ18が存在する。したがって、引張ストラップ32を単にスキッド16に掛止すると、パッセンジャステップ18と引張ストラップ32とが干渉してしまう。
【0030】
引張ストラップ32は、スキッド16を機体10側に引張する役割を担っているので、パッセンジャステップ18と引張ストラップ32とが干渉すると、その引張力を調整できないばかりか、パッセンジャステップ18に引張ストラップ32から押圧力が印加されてしまう。そのような事象を回避すべく、従来、航空機1の移動時には、一旦、パッセンジャステップ18を取り外してから引張ストラップ32を取り付けていた。
【0031】
また、引張ストラップ32が取り付けられている間、スキッド16において外装可能な領域が引張ストラップ32に占有され、上記グランドハンドリング装置30を配置することができなかった。したがって、航空機1を移動させる際には、グランドハンドリング装置30を取り付けるために、パッセンジャステップ18のみならず、引張ストラップ32も取り外さなければならなかった。そのため、航空機1の移動後に引張ストラップ32を用いた作業を行う場合には、取り外した引張ストラップ32を再度取り付けるといった煩わしい作業を伴っていた。
【0032】
本実施形態では、引張ストラップ118をグランドハンドリング装置100に一体化し、引張ストラップ118を掛止する掛止部116の位置を工夫することで、作業効率の向上を図る。
【0033】
具体的に、本実施形態のグランドハンドリング装置100では、
図5(b)に示すように、掛止部116を、スキッド16に対して鉛直上方かつ水平左右方向外側に位置させる。こうして、
図5(b)に示すように、引張ストラップ118のスキッド16との連結位置が、本体110を介し、鉛直上方かつスキッド16の水平左右方向外側にオフセットするので、パッセンジャステップ18と引張ストラップ118との干渉を回避することができる。したがって、パッセンジャステップ18を取り外す作業を伴うことなく、パッセンジャステップ18を利用できる状態で、スキッド16を機体10側に引張することができる。
【0034】
また、引張ストラップ118をグランドハンドリング装置100に一体化することで、引張ストラップ118を取り外す作業を伴うことなく、また、上述したようにパッセンジャステップ18を取り外す作業を伴うことなく、航空機1を移動させることもできる。したがって、引張ストラップ118が常にスキッド16を引張していることとなるので、引張ストラップ118を用いた作業を容易かつ迅速に行うことができ、また、パッセンジャステップ18を常時利用することが可能となる。
【0035】
(航空機1の格納手順)
図6は、航空機1の格納手順を説明するためのフローチャートである。ここでは、航空機1が着陸してから、本実施形態のグランドハンドリング装置100を用い、航空機1を格納庫に格納する手順を説明する。
【0036】
まず、航空機1が着陸すると、そのスキッド16にグランドハンドリング装置100の本体110を当接し、グランドハンドリング装置100を固定する(S1)。そして、引張ストラップ118の一端を掛止部116に、他端を機体10に掛止し、スキッド16を機体10側に引張する(S2)。このとき、従来のように、パッセンジャステップ18を取り外す必要はない。
【0037】
続いて、メインロータ12におけるブレードの収容等、引張ストラップ118を用いた作業を実行する(S3)。次に、昇降機構114の油圧シリンダ114aに油圧をかけて、航空機1を地面に対して上昇させ、車輪112のみによって航空機1を支持する(S4)。そして、パッセンジャステップ18や引張ストラップ118を取り外すことなく、航空機1を牽引し、格納庫に格納する(S5)。こうして、容易かつ迅速に作業を実行することができる。
【0038】
ここでは、航空機1の格納手順を説明したが、航空機1の搬出手順は、格納手順を逆に辿れば済み、格納手順同様、容易かつ迅速に作業を実行することができる。
【0039】
以上、説明したように本実施形態のグランドハンドリング装置100や航空機1の格納手順(搬出手順)によれば、パッセンジャステップ18と車輪112aとの干渉を避け、煩雑な作業を回避して、航空機1の地上での移動効率の向上を図ることが可能となる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0041】
なお、本明細書の航空機1の格納手順の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。