(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
≪カメラモジュール部品≫
本実施形態のカメラモジュール部品は、特定のポリアミド(A)を含む。また、本実施形態のカメラモジュール部品は、特定の強化材(B)をさらに含むことが好ましい。
【0017】
<ポリアミド(A)>
本実施形態に用いられるポリアミド(A)は、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むジカルボン酸(a)と、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むジアミン(b)とからなる単位を含有する。
なお、本実施形態において、ポリアミドとは、主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
【0018】
〈ジカルボン酸(a)〉
本実施形態に用いられるジカルボン酸(a)は、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含む。ジカルボン酸として脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むことにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。そして、該ポリアミドを用いることにより、耐熱性、耐衝撃性、流動性、低塵埃性などを同時に満足するカメラモジュール部品を得ることができる。
【0019】
脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される)としては、特に限定されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
【0020】
脂環族ジカルボン酸としては、ポリアミドの耐熱性、低吸水性、及び強度などの観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であることが好ましい。また、脂環族ジカルボン酸として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いることにより、最終的に得られるカメラモジュール部品の耐熱性及び耐衝撃性が向上する傾向にある。
脂環族ジカルボン酸としては1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本実施形態に用いられるジカルボン酸(a)において、脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0023】
芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
該種々の置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩などが挙げられる。
【0024】
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、ポリアミドの耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などの観点で、好ましくは脂肪族ジカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸である。
中でも、ポリアミドの耐熱性及び低吸水性などの観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。中でも、ポリアミドの耐熱性などの観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ジカルボン酸(a)成分として、さらに本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。多価カルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ジカルボン酸(a)中の脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。脂環族ジカルボン酸の割合は50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましく、さらに好ましくは70〜100モル%であり、特に好ましくは、100モル%である。ジカルボン酸(a)中の脂環族ジカルボン酸の割合が少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、低吸水性、及び強度などに優れるポリアミドとすることができる。
ジカルボン酸(a)中の脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
【0027】
ジカルボン酸(a)成分として炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が0.1〜50モル%であることが好ましく、脂環族ジカルボン酸が60〜95モル%及び炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が5〜40モル%であることがより好ましく、脂環族ジカルボン酸が80〜95モル%及び炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が5〜20モル%であることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態において、ジカルボン酸(a)としては上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
【0029】
〈ジアミン(b)〉
本実施形態に用いられるジアミン(b)は、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含む。
【0030】
ジアミン(b)として主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むことにより、流動性、靭性、及び強度などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。そして、該ポリアミドを用いることにより、耐衝撃性、流動性、低塵挨性などを同時に満足するカメラモジュール部品を得ることができる。
主鎖から分岐した置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
【0031】
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミンなどの炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、ポリアミドの耐熱性及び強度などの観点で、2−メチルペンタメチレンジアミンであることが好ましい。また、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとして2−メチルペンタメチレンジアミンを用いることにより、最終的に得られるカメラモジュール部品の耐熱性及び耐衝撃性が向上する傾向にある。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本実施形態に用いられるジアミン(b)の主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0033】
脂肪族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0034】
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される)としては、特に限定されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミンなどが挙げられる。
【0035】
芳香族ジアミンとしては、芳香族を含有するジアミンであり、特に限定されないが、例えば、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0036】
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、ポリアミドの耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などの観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは、炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは、炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、よりさらに好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ジアミン(b)成分としてさらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ジアミン(b)中の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合(モル%)は、上述したとおり、少なくとも50モル%である。ジアミン(b)中の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは80〜100モル%であり、さらに好ましくは85〜100モル%であり、さらにより好ましくは90〜100モル%であり、特に好ましくは100モル%である。ジアミン(b)中の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、及び強度に優れるポリアミドとすることができる。
ジアミン(b)中の主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
なお、本実施形態において、ポリアミド(A)中の各成分の割合は、
1H−NMR測定により以下のように定量することができる。まず、ポリアミド(A)を約5質量%の濃度になるように重ヘキサフルオロイソプロパノールで加熱して溶解し、溶液を得る。次に、得られた溶液について、日本電子製核磁気共鳴分析装置JNM ECA−500を用いて
1H−NMRの分析を行う。当該分析で得られたデータにおける各積分比に基づき、ポリアミド(A)中の各成分の割合を算出することができる。
【0039】
〈ジカルボン酸(a)及びジアミン(b)の添加量〉
ポリアミド(A)を製造する際、ジカルボン酸(a)の添加量とジアミン(b)の添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中のジアミン(b)の反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、ジカルボン酸(a)全体のモル量1に対して、ジアミン(b)全体のモル量は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.10であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
【0040】
〈ジカルボン酸(a)及びジアミン(b)の組み合わせ〉
ジカルボン酸(a)及びジアミン(b)の組み合わせは特に限定されないが、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含有するジカルボン酸、及び2−メチルペンタメチレンジアミンを少なくとも50モル%含有するジアミンの組み合わせが好ましく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を少なくとも50モル%含有するジカルボン酸及び2−メチルペンタメチレンジアミンを少なくとも50モル%含有するジアミンの組み合わせがより好ましい。
これらの組み合わせをポリアミドの原料成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度に優れることを同時に満足するポリアミドとすることができる。
【0041】
〈ポリアミド(A)の製造方法〉
ポリアミド(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むジカルボン酸(a)と、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むジアミン(b)とを重合させる工程を含む、ポリアミドの製造方法により製造することができる。
ポリアミド(A)の製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程をさらに含むことが好ましい。
【0042】
ポリアミド(A)の具体的な製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下に例示する種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある)。
3)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある)。
4)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある)。
5)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いたて重合させる方法(以下、「溶液法」と略称する場合がある)。
【0043】
ポリアミド(A)の製造方法において、重合形態としてはバッチ式でも連続式でもよい。
ポリアミド(A)の製造方法に用いる重合装置としては特に限定されるものではなく、公知の装置(例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器など)が挙げられる。
【0044】
ポリアミド(A)のより具体的な製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造する方法が挙げられる。
まず、例えば水を溶媒として、ポリアミドの原料成分(上記(a)及び(b)成分)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、該オートクレーブにおける圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、該オートクレーブ内部から水及び/又はガス成分を抜きながら、該オートクレーブの圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、該オートクレーブ内部の温度が約250〜350℃に達した時点で、該オートクレーブの圧力を大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。該オートクレーブの圧力を大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、該オートクレーブ内部から副生する水を効果的に除くことができる。その後、該オートクレーブ内部を窒素などの不活性ガスで加圧し、該オートクレーブからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてポリアミドペレットを得る。
【0045】
また、ポリアミド(A)は、以下に記載する連続式の熱溶融重合法によってポリアミドを製造することもできる。
まず、例えば水を溶媒としてポリアミドの原料成分(上記(a)及び(b)成分)を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出する。その後、フラッシャー内の圧力を大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。フラッシャー内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は、フラッシャー内から押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされポリアミドペレットとなる。
【0046】
<強化材(B)>
本実施形態に用いられる強化材(B)は、アスペクト比(平均長辺/平均短辺)が20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。また、強化材(B)のアスペクト比の下限は、特に限定されないが、例えば、1以上である。アスペクト比が前記範囲内の強化材(B)をさらに含有させることにより、低塵埃性により優れ、寸法異方性のより小さいカメラモジュール部品を得ることができる。
アスペクト比が前記範囲内の強化材(B)を得る方法としては、例えば、無機フィラーやガラス繊維を粉砕する方法などが挙げられる。
また、本実施形態のカメラモジュール部品において、強化材(B)を含有させる場合、強化材(B)の含有率は、カメラモジュール部品の低塵埃性及び表面平滑性の観点から、20〜60重量%の範囲であることが好ましく、20〜40重量%の範囲であることがより好ましく、20〜30の範囲であることがさらに好ましい。
【0047】
本実施形態に用いられる強化材(B)としては、特に限定されないが、例えば二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、タルク、雲母等の層状無機化合物;ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、ボロン酸ウィスカ、メタケイ酸カルシウムウィスカー、ウォラストナイト等の無機繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の有機繊維;アルミナ、シリカ等の無機粒子;などが挙げられる。
これら強化材(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ここで本明細書における強化材(B)のアスペクト比は以下の方法により求められる。
まずポリアミド樹脂組成物又はカメラモジュール部品を電気炉に入れて有機物を焼却処理し、処理後の残渣から任意に100本以上の強化材を収集する。次に収集した各強化材における短辺と長辺とを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察測定し、該100個以上の測定値を平均して平均短辺と平均長辺とを求める。さらに計算によりアスペクト比(平均長辺/平均短辺)を求める。
なお、本明細書において、短辺とは、各強化材における最も短い部分の長さを意味し、長辺とは、各強化材における最も長い部分の長さを意味する。例えば、強化材が円柱形状(円柱の直径≦円柱の長さ)の場合、短辺は「円柱の直径」を意味し、長辺は「円柱の長さ」を意味し、アスペクト比は「平均長さ/平均直径」となる。
【0049】
≪カメラモジュール部品の製造方法≫
本実施形態のカメラモジュール部品は、例えば、上述したポリアミド(A)と強化材(B)とを含有するポリアミド樹脂組成物を製造し、該ポリアミド樹脂組成物を成形することにより製造することができる。
本実施形態に用いられるポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えばポリアミド(A)と強化材(B)とをヘンシェルミキサーなどを用いて混合し溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にしたポリアミド(A)にサイドフィーダーから強化材(B)を配合する方法などが挙げられる。
【0050】
本実施形態に用いられるポリアミド樹脂組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂組成物に慣用的に用いられる添加剤を含有させることもできる。該添加剤としては、特に限定されないが、例えば顔料及び染料などの着色剤(着色マスターバッチを含む)、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、核剤、ゴム、並びに他のポリマー等が挙げられる。
【0051】
本実施形態のカメラモジュール部品は、上述したポリアミド(A)と強化材(B)を含有するポリアミド樹脂組成物を公知の成形方法で成形することにより得ることができる。該成形方法としては、特に限定されないが、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法が挙げられる。
≪カメラモジュール≫
カメラモジュールとしては、例えば、
図1に示すような、撮像素子1(イメージセンサー)を組み込んだ基材2と、撮像素子1を覆うホルダ3と、1つ以上のレンズ4からなるレンズユニット5と、そのレンズユニット5を保持するバレル6とで構成されるカメラモジュールが挙げられる。ホルダ3は筒状になっておりIRフィルター7が嵌め込まれている。筒状のホルダ3の上部は開いており、この口の開いた上部にバレル6が蓋をする形で勘合している。
本実施形態のカメラモジュール部品は、特に限定されないが、ホルダ3やバレル6として用いることが好ましい。本実施形態のカメラモジュール部品は、低塵埃性に優れるため、ホルダ3やバレル6として用いても摺動運動等による塵埃の発生を抑制でき、高品質のカメラモジュールを提供することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
【0053】
[原材料]
本実施例において下記化合物を用いた。
<ポリアミド(A)の原料成分>
ジカルボン酸(a)としてイーストマンケミカル製1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジアミン(b)として東京化成工業製2−メチルペンタメチレンジアミンを用いた。
【0054】
<強化材(B)>
強化材として日本電気硝子製のガラス繊維(以下「GF」とも記す。)、NYCO製のウォラストナイト(ワラストナイト)(以下「MD」とも記す。)を用いた。
【0055】
<LCP>
本比較例において下記製品を用いた。
比較例1:ガラス繊維(GF)で強化したポリプラスチック(株)製のLCP(製品名:ベクトラ、グレード:E130i)
比較例2:ガラス繊維(GF)及びウォラストナイト(MD)で強化したポリプラスチック(株)製のLCP(製品名:ベクトラ、グレード:E463i)
なお、ポリプラスチック(株)製のLCPは、通常下記式(1)に示される繰り返し単位を有するポリマーを主成分とする。
【化1】
【0056】
[成形方法]
下記測定に用いた試験片は、実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物等を射出成形することによって作製した。射出成形機には住友重工製SE−50を用い、成形条件は、樹脂温度340℃、金型温度120℃とした。
【0057】
[測定方法]
<ポリアミド(A)中の各成分の割合>
実施例で得られたポリアミド(A)中の各成分の割合は、
1H−NMR測定により以下のように定量した。まず、ポリアミド(A)を約5質量%の濃度になるように重ヘキサフルオロイソプロパノールで加熱して溶解し、溶液を得た。次に、得られた溶液について、日本電子製核磁気共鳴分析装置JNM ECA−500を用いて
1H−NMRの分析を行った。当該分析で得られたデータにおける各積分比に基づき、ポリアミド(A)中の各成分の割合を算出した。
<強化材の含有量及びアスペクト比>
上記成形方法で得られた試験片を20gるつぼに入れ、600℃の電気炉で有機物を焼却処理し、焼却前後の重量差から強化材の含有量(重量%)を下記式より計算した。
【数1】
前記焼却処理後の残渣から任意に100本以上の強化材を収集した。次に、収集した各強化材における径と長さとを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察測定した。その後、該100個以上の測定値を平均して平均径と平均長さとを求め、アスペクト比(平均長さ/平均径)を計算により求めた。
【0058】
<荷重撓み温度>
上記成形方法で得られた試験片を用い、ISO75に準じて荷重撓み温度を測定した。荷重条件は0.45MPaとした。荷重撓み温度が高いほど耐熱性に優れると評価した。
【0059】
<ピン摩耗>
上記成形方法で平板試験片を作製した。該平板試験片を用いて以下のとおりピン摩耗試験を行った。該ピン摩耗試験におけるピンとしては、ステンレス(SUS)製のピンと、液晶ポリマー(LCP)製のピンとを用いた。
また、ピン摩耗試験において、ピンを固定することができる上部治具と、平板試験片を固定することができる下部治具とを組み合わせたピン摩耗試験機を使用した。ピン摩耗試験機の上部治具にピンを固定し、下部治具に平板試験片を固定した。次に、上部治具におもりを載せて、一定荷重(荷重1500g)でピンを平板試験片に押し付けた。その後、下部治具を、モーター及びギアにより一定の速度(摺動速度30mm/秒)で一定の直線距離(移動距離10mm)を往復運動(往復回数5000回)させて、平板試験片の摩耗深さを測定した。各種ピンと平板試験片との組み合わせでの摺動性を評価した。平板試験片の摩耗深さが浅いほど、摺動性に優れ、摺動運動による塵埃の発生が抑制できると評価した。
【0060】
<成形収縮率及び寸法の異方性>
縦:60mm、横:60mm、厚さ:1mmの平板を上記成形方法で作製した。3日後に、該平板の流動方向(MD)と流動の直角方向(TD)とについて寸法を測定し、該平板の成形に用いた金型の寸法からの収縮率(成形収縮率)を計算した。さらにMD/TDで寸法の異方性を計算した。
【0061】
[ポリアミド(A−1)の重合]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸896gと2−メチルペンタメチレンジアミン604gとを蒸留水1500gに溶解させた。得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、オートクレーブ内の液温(内温)が50℃になるまで加温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内(以下、単に「槽内」とも記す。)の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する)、約2.5kg/cm
2になるまで、液温を約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった)。槽内の圧力を約2.5kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm
2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった)。槽内の圧力を約30kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら300℃になるまで加熱を続けた。液温が300℃まで上昇した後に加熱を続けながら、槽内の圧力を大気圧になるまで120分ほどかけながら降圧した。
その後、オートクレーブ内の樹脂温度(液温度)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度を約350℃に維持したまま、槽内を真空装置で約53.3kPa(400torr)の減圧下に30分維持して重合物を得た。その後、槽内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から重合物をストランド状で排出し、さらに、該ストランド状の重合物を、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミド(A−1)のペレットを得た。得られたポリアミド(A−1)中の各成分について上記方法により分析したところ、該ポリアミド(A−1)は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(脂環族ジカルボン酸)100モル%と、2−メチルペンタメチレンジアミン(主鎖から分岐した置換基を持つジアミン)100モル%とからなる単位を含有していた。
[実施例1]
上記方法で重合したポリアミド(A−1)を用いて上記成形方法により試験片を作製し、該試験片について上記測定方法で評価した。該評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
ポリアミド(A)として上記方法で重合したポリアミド(A−1)と強化材(B)としてガラス繊維(GF)とを、東芝機械製二軸押出機TEM35(L/D=47.6、D=37mmφ)で溶融混練することによりポリアミド樹脂組成物を得た。具体的には、押出し温度347℃、スクリュー回転数300rpmで、前記押出機最上流部に設けられたトップフィード口より、前記ポリアミド(A)及び強化材(B)を供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物を用いて上記成形方法により試験片を作製し、該試験片について上記測定方法で評価した。該評価結果を表1に示す。
[実施例3]
表1に示すとおり強化材(B)の種類及び含有量を変更した以外は、実施例2と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物を用いて上記成形方法により試験片を作製し、該試験片について上記測定方法で評価した。該評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
上記材料(ガラス繊維(GF)で強化したポリプラスチック(株)製のLCP(製品名:ベクトラ、グレード:E130i))を用いて上記成形方法により試験片を作製し、該試験片について上記測定方法で評価した。該評価結果を表1に示す。
[比較例2]
上記材料(ガラス繊維(GF)及びウォラストナイト(MD)で強化したポリプラスチック(株)製のLCP(製品名:ベクトラ、グレード:E463i))を用いて上記成形方法により試験片を作製し、該試験片について上記測定方法で評価した。該評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】