(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013807
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】スプレー塗装システム
(51)【国際特許分類】
B05B 7/24 20060101AFI20161011BHJP
B05B 15/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
B05B7/24
B05B15/02
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-149933(P2012-149933)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-12238(P2014-12238A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】内藤 孝和
(72)【発明者】
【氏名】露木 寿
(72)【発明者】
【氏名】中岡 豊人
(72)【発明者】
【氏名】市川 昭人
(72)【発明者】
【氏名】佐井 啓介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 徹
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−001154(JP,A)
【文献】
特開2006−000769(JP,A)
【文献】
特開平06−285406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/00〜 7/32
15/00〜15/12
B05D 1/00〜 7/26
B05C 1/00〜21/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料噴射通路及び霧化エア噴射通路を有する複数のスプレーノズルを具備した多ノズル式スプレーヘッドと、
前記複数のスプレーノズルの塗料噴射通路に至る塗料供給系に単一の第一切り替え弁を介して接続され、前記第一切り替え弁が前記塗料供給系の塗料の流通を遮断した状態で前記複数のスプレーノズルの塗料噴射通路に溶剤及び圧縮空気を選択的に流通させる塗料流路洗浄装置と、
前記複数のスプレーノズルの霧化エア噴射通路に至る霧化エア供給系に単一の第二切り替え弁を介して接続され、前記第二切り替え弁が前記霧化エア供給系の霧化エアの流通を遮断した状態で前記複数のスプレーノズルの霧化エア噴射通路に溶剤及び圧縮空気を選択的に流通させる霧化エア流路洗浄装置と、を備えることを特徴とするスプレー塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二流体ノズルを使用したエア霧化式のスプレー塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吹き付け塗装の塗着効率(通常50〜60%程度)を向上させるには、スプレーパターンを極力絞って霧化された塗料粒子の被塗装物方向への慣性力を高くする必要があり、その一つの手段として至近距離で塗料を吹き付けることが有効である。すなわち、スプレーノズルを塗装面から数センチメ−トルの距離で移動させながら吹き付け塗装することで、霧化された塗料粒子を高い塗着速度で塗装面へ衝突させることが可能となり、その結果、塗着効率を90%以上確保することが可能となる。
【0003】
一方、スプレー距離が小さい場合(スプレーノズルと塗装面とが近い場合)、塗装面積を確保するにはスプレーノズルの移動速度を極端に高くする必要があり、非実用的である。
一回のスプレーノズル移動操作で吹き付けられるウェット塗膜を適度に薄くするには、スプレーノズルの吐出量を小さくする必要がある。この場合、生産速度を落とさず塗装面積を拡大するために、複数のスプレーノズルを具備した多ノズル式スプレーヘッドを用いることがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−167446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二流体ノズルとしてのスプレーノズルは、塗料噴射通路と霧化エア噴射通路とを並列に有している。このようなスプレーノズルを備えたエア霧化式のスプレー塗装システムにおいて、塗料噴射通路の先端開口(塗料噴射口)の塗料詰まりを防止するために、所定のタイミングで塗料噴射通路に溶液及び圧縮空気を流通させる洗浄装置を備えることがある。
【0006】
しかし、上記洗浄装置では、霧化エア噴射通路の先端開口(霧化エア噴射口)周辺の付着塗料(塗料ダスト)までは除去できない。すなわち、塗装面に近付いて吹き付け塗装を行う多ノズル式スプレーヘッドでは特に、塗装面からはね返った塗料が霧化エア噴射口の周辺を含むノズル先端に付着し易く、この付着塗料が上記洗浄装置では除去できない。霧化エア噴射口の周辺に付着塗料が堆積すると、霧化エアの噴射流に乱れが生じると共に、他のスプレーノズルの塗料及び霧化エアのバランスも崩れて、塗装パターンに乱れが生じる。塗装パターンが乱れると塗装膜厚が不均一になり所定の性能を確保できないため、霧化エア噴射口周辺の付着塗料の確実な除去が課題となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塗料噴射通路及び霧化エア噴射通路を有するスプレーノズルを備えたスプレー塗装システムにおいて、霧化エア噴射口周辺の付着塗料を確実に除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決手段として、本発明は、塗料噴射通路及び霧化エア噴射通路を有する
複数のスプレーノズル
を具備した多ノズル式スプレーヘッドと、前記
複数のスプレーノズルの塗料噴射通路に至る塗料供給系に
単一の第一切り替え弁を介して接続され、前記第一切り替え弁が前記塗料供給系の塗料の流通を遮断した状態で前記
複数のスプレーノズルの塗料噴射通路に溶剤及び圧縮空気を選択的に流通させる塗料流路洗浄装置と、前記
複数のスプレーノズルの霧化エア噴射通路に至る霧化エア供給系に
単一の第二切り替え弁を介して接続され、前記第二切り替え弁が前記霧化エア供給系の霧化エアの流通を遮断した状態で前記
複数のスプレーノズルの霧化エア噴射通路に溶剤及び圧縮空気を選択的に流通させる霧化エア流路洗浄装置と、を備えることを特徴とするスプレー塗装システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗料噴射通路及び霧化エア噴射通路を有するスプレーノズルを備えたスプレー塗装システムにおいて、霧化エア噴射口周辺の付着塗料を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態におけるスプレー塗装システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すスプレー塗装システム1は、複数(
図1では四つ)のスプレーノズル11を具備した多ノズル式スプレーヘッド10と、各スプレーノズル11の塗料噴射通路12に塗料を供給する塗料供給系2と、各スプレーノズル11の霧化エア噴射通路13に霧化エアを供給する霧化エア供給系3と、塗料供給系2の流路に第一切り替え弁21を介して接続される塗料流路洗浄装置20と、霧化エア供給系3の流路に第二切り替え弁31を介して接続される霧化エア流路洗浄装置30とを備える。
【0012】
各スプレーノズル11は、塗料噴射通路12の外周に霧化エア噴射通路13を並列に配置した構成を有する。塗料噴射通路12の先端開口である塗料噴射口12aの周囲には、霧化エア噴射通路13の先端開口である霧化エア噴射口13aが配置される。
【0013】
多ノズル式スプレーヘッド10は、その本体15に、塗料供給系2の流路を接続する例えば単一の塗料供給口16と、霧化エア供給系3の流路を接続する例えば単一の霧化エア供給口17とを有する。多ノズル式スプレーヘッド10の本体15内には、塗料供給口16から複数のスプレーノズル11に合わせて分岐して各スプレーノズル11の塗料噴射通路12に至る塗料供給多岐流路18が形成されると共に、霧化エア供給口17から複数のスプレーノズル11に合わせて分岐して各スプレーノズル11の霧化エア噴射通路13に至る霧化エア供給多岐流路19が形成される。なお、多ノズル式スプレーヘッド10に設けるスプレーノズル11の数や配列等は種々選択可能である。
【0014】
各スプレーノズル11は、塗料供給多岐流路18から塗料噴射通路12に塗料が供給されると共に、霧化エア供給多岐流路19から霧化エア噴射通路13に霧化エア(圧縮空気)が供給されることで、塗料噴射口12aから噴射した塗料を霧化エア噴射口13aから噴射した霧化エアによって霧化して噴霧する。噴霧された塗料粒子は、各スプレーノズル11の噴射方向に例えば円錐状のスプレーパターンPを形成しつつ塗装面に吹き付けられる。
【0015】
塗料供給系2は、不図示の塗料タンクから各スプレーノズル11の塗料噴射通路12に向けて塗料を送液する。
霧化エア供給系3は、不図示のコンプレッサから各スプレーノズル11の霧化エア噴射通路13に向けて霧化エア(圧縮空気)を供給する。
【0016】
第一切り替え弁21は、塗料供給系2の流路の中間部に介設され、該流路を前記塗料タンク側の上流側流路2aと各スプレーノズル11側の下流側流路2bとに区分する。第一切り替え弁21は、上流側流路2a及び下流側流路2b間を互いに連通させて各スプレーノズル11に塗料を供給可能とする通常連通状態と、上流側流路2a及び下流側流路2b間の連通を遮断すると共に下流側流路2bと塗料流路洗浄装置20の溶剤供給系22とを連通させる溶剤連通状態と、上流側流路2a及び下流側流路2b間の連通を遮断すると共に下流側流路2bと塗料流路洗浄装置20の圧縮空気供給系23とを連通させるエア連通状態とに態様を切り替える。
【0017】
第二切り替え弁31は、霧化エア供給系3の流路の中間部に介設され、該流路を前記コンプレッサ側の上流側流路3aと各スプレーノズル11側の下流側流路3bとに区分する。第二切り替え弁31は、上流側流路3a及び下流側流路3b間を互いに連通させて各スプレーノズル11に霧化エアを供給可能とする通常連通状態と、上流側流路3a及び下流側流路3b間の連通を遮断すると共に下流側流路3bと霧化エア流路洗浄装置30の溶剤供給系32とを連通させる溶剤連通状態と、上流側流路3a及び下流側流路3b間の連通を遮断すると共に下流側流路3bと霧化エア流路洗浄装置30の圧縮空気供給系33とを連通させるエア連通状態とに態様を切り替える。
【0018】
各切り替え弁21,31の態様の切り替えは、制御盤等によって予め設定したタイミングで各スプレーノズル11の洗浄と共に自動で行ってもよく、あるいは各スプレーノズル11の洗浄タイミングに合わせて手動で行ってもよい。各スプレーノズル11の洗浄は、例えば数時間毎、塗装開始時及び終了時、休憩時間、並びに作業途中の適当なタイミング等に、自動又は手動により行われる。
【0019】
塗料流路洗浄装置20による洗浄は、まず、第一切り替え弁21を溶剤連通状態に切り替え、溶剤供給系22と塗料噴射通路12とを連通させて、塗料噴射通路12内に残る塗料を洗い流す。次いで、第一切り替え弁21を前記通常連通状態からエア連通状態に切り替え、圧縮空気供給系23と塗料噴射通路12とを連通させて、塗料噴射通路12内の塗料等を吹き飛ばす。以上により、塗料噴射通路12及び塗料噴射口12aの洗浄が完了する。
【0020】
霧化エア流路洗浄装置30による洗浄は、まず、第二切り替え弁31を前記通常連通状態から溶剤連通状態に切り替え、溶剤供給系32と霧化エア噴射通路13とを連通させて、霧化エア噴射口13a周辺の付着塗料を溶解させる。次いで、第二切り替え弁31をエア連通状態に切り替え、圧縮空気供給系33と霧化エア噴射通路13とを連通させて、前記溶解させた付着塗料を吹き飛ばす。その後、第二切り替え弁31を再度溶剤連通状態に切り替え、溶剤供給系32と霧化エア噴射通路13とを連通させて、霧化エア噴射口13a周辺に残る塗料を洗い流す。さらにその後、第二切り替え弁31をエア連通状態に切り替え、圧縮空気供給系33と霧化エア噴射通路13とを連通させて、霧化エア噴射口13a周辺の溶剤等を吹き飛ばす。以上により、霧化エア噴射通路13及び霧化エア噴射口13a周辺の洗浄が完了する。
【0021】
霧化エア噴射通路13の洗浄は、付着塗料が固着し易いことから、塗料噴射通路12の洗浄と異なり、溶剤及び圧縮空気の噴射量、噴射圧及び噴射時間を所定以上に設定することが好ましい。霧化エア噴射通路13の洗浄と塗料噴射通路12の洗浄とは、同タイミングに行っても別タイミングに行ってもよい。霧化エア噴射通路13の洗浄及び塗料噴射通路12の洗浄は、各スプレーノズル11を塗装面に向けたままで行うと塗装面を汚してしまうため、各スプレーノズル11をドレン溝等に向けた状態で行い、溶剤及び除去した塗料を洗浄と同時に処分することが好ましい。
【0022】
以上説明したように、上記実施形態におけるスプレー塗装システム1によれば、スプレーノズル11の霧化エア噴射通路13に至る霧化エア供給系3に第二切り替え弁31を介して接続され、霧化エア噴射通路13に溶剤及び圧縮空気を選択的に流通させる霧化エア流路洗浄装置30を備えることで、霧化エア噴射口13a周辺の付着塗料を確実に除去することができる。この点は、塗装面に対して近距離で吹き付け塗装を行う多ノズル式のスプレー塗装システム1では特に有効である。
【符号の説明】
【0023】
1 スプレー塗装システム
2 塗料供給系
3 霧化エア供給系
10 多ノズル式スプレーヘッド
11 スプレーノズル
12 塗料噴射通路
13 霧化エア噴射通路
20 塗料流路洗浄装置
21 第一切り替え弁
30 霧化エア流路洗浄装置
31 第二切り替え弁