特許第6013814号(P6013814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013814光伝送体の製造方法及び照明装置の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013814
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】光伝送体の製造方法及び照明装置の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20161011BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20161011BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G02B6/44 301A
   G02B6/02 391
   G02B6/00 326
   G02B6/02 366
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-155837(P2012-155837)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-16580(P2014-16580A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】中山 真洋
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真悠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英治
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−347997(JP,A)
【文献】 特開2010−027337(JP,A)
【文献】 特開2007−241252(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/036
6/10
6/245−6/25
6/44−6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッド材の内部に、流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物とを少なくとも充填し、上記充填したポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物を反応させ、それによって、非流動化処理を施してコア材を形成した後、上記クラッド材の外周に、メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体を基本とした構成のものからなる光透過性樹脂被覆を押出成形によって形成することを特徴とする光伝送体の製造方法。
【請求項2】
上記メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体を基本とした構成のものが、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン共重合体であることを特徴とする請求項1記載の光伝送体の製造方法。
【請求項3】
上記クラッド材が、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光伝送体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3何れか記載の光伝送体の製造方法によって得られた光伝送体と、光源とを有する照明装置の製造方法であって、上記光伝送体の少なくとも一端において、上記光源からの光が上記光透過性樹脂被覆に直接導入されないように遮光手段備えることを特徴とする照明装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送体と、この光伝送体を用いた照明装置、及び、上記光伝送体の製造方法に係り、特に、柔軟で可撓性に優れることから容易に任意の形状に配設することが可能であるとともに、長期間の優れた耐候性を有することにより、優れた出射特性を長期間安定して維持することができ、且つ、平面等への配設に際して、より容易且つ確実に固定が行えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の照明装置に用いられる光伝送体としては、例えば、透明なコア材と、このコア材よりも屈折率の小さなクラッド材とからなり、コア材中に散乱性粒子が分散された構成のものがある。ここで、コア材としては、メチルメタクリレート(MMA)等の(メタ)アクリル系ポリマー、クラッド材としては、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系ポリマーが、好ましい材料として挙げられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
又、別の光伝送体としては、樹脂製コア材と、このコア材よりも低屈折率の樹脂製クラッド材とからなり、コア材中に微粒子が混合された構成のものがある。ここで、コア材としては、シリコーンゴム、クラッド材としては、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂が、好ましい材料として挙げられている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
又、別の光伝送体としては、クラッド材とクラッド材内に収容されクラッド材よりも屈折率の高い非晶質コア材から構成されたものが、当該出願人から出願されている。ここで、コア材としては、ポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物からなる重合体が、好ましい材料として挙げられている(例えば、特許文献3〜特許文献6参照。)。
【0005】
又、上記のような光伝送体と光源とを組合せた照明装置に関する技術としては、例えば、特許文献7〜特許文献10などが挙げられる。また、関連技術として、特許文献11などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−131529号公報:ブリヂストン
【特許文献2】特開2000−321444号公報:日立電線
【特許文献3】国際公開第03/021309号公報:クラベ
【特許文献4】特開2004−333539号公報:クラベ
【特許文献5】特開2004−347997号公報:クラベ
【特許文献6】特開2004−361831号公報:クラベ
【特許文献7】特開2004−146225号公報:クラベ
【特許文献8】特開2004−219921号公報:クラベ
【特許文献9】特開2006−189498号公報:クラベ
【特許文献10】特開2001−297603号公報:ブリヂストン
【特許文献11】特開2000−39520:ブリヂストン
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような光伝送体を平面等へ配設する際、光伝送体の断面形状が円形であると、固定をする際の施工性が不十分であったため、より容易且つ確実に固定が行えるものについて検討が必要となっている。そのために、例えば、上記特許文献5,6,11のようにクラッド材や、その外周に形成される被覆について、取付け部分を有するような断面異型形状にすることも考えられている。しかしながら、クラッド材は、コア材との屈折率の関係上、材料が制限され、押出成形性が悪い材料を選ばざるを得ないこともあって、特許文献5,11のように断面異型形状にすることが困難であった。また、特許文献6のように、クラッド材の外周に被覆を形成する場合、この被覆の材料についても適切なものを選択しなければならない。材料によっては、被覆材料が経時劣化して透明性を失っていき、出射特性が低下していってしまったり、硬く可撓性の低い被覆材料によって、光伝送体自体も硬く可撓性の低いものになってしまったりすることもある。
【0008】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、柔軟で可撓性に優れることから容易に任意の形状に配設することが可能であるとともに、長期間の優れた耐候性を有することにより、優れた出射特性を長期間安定して維持することができ、且つ、平面等への配設に際して、より容易且つ確実に固定が行うことが可能な光伝送体とそれを使用した照明装置、及び光伝送体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく、本発明による光伝送体の製造方法はクラッド材の内部に、流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物とを少なくとも充填し、上記充填したポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物を反応させ、それによって、非流動化処理を施してコア材を形成した後、上記クラッド材の外周に、メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体を基本とした構成のものからなる光透過性樹脂被覆を押出成形によって形成することを特徴とするものである。
また、上記メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体を基本とした構成のものが、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン共重合体であることが考えられる
また、上記クラッド材が、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体からなることを特徴とするが考えられる。
また、本発明による照明装置の製造方法は、上記の光伝送体の製造方法によって得られた光伝送体と、光源とを有する照明装置の製造方法であって、上記光伝送体の少なくとも一端において、上記光源からの光が上記光透過性樹脂被覆に直接導入されないように遮光手段を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、柔軟で可撓性に優れることから容易に任意の形状に配設することが可能であるとともに、光透過性樹脂被覆が長期間の優れた耐候性を有することにより、優れた出射特性を長期間安定して維持することができる。また、光透過性樹脂被覆を所定の異型形状にすることで、平面等への配設に際して、より容易且つ確実に固定が行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例を表わす図で、光伝送体を示す一部切欠斜視図である。
図2】実施の形態の一例を表わす図で、光伝送体を示す断面図である。
図3】実施の形態の一例を表わす図で、光伝送体を示す断面図である。
図4】実施の形態の一例を表わす図で、光伝送体を示す断面図である。
図5】実施の形態の一例を表わす図で、光伝送体を示す断面図である。
図6】実施の形態の一例を表わす図で、照明装置を示す断面図である。
図7】側面出射型光伝送体における出射特性(初期特性)を示すグラフである。
図8】可撓性の試験の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における光伝送体は、クラッド材と、上記クラッド材内に収容されクラッド材よりも屈折率の高い非晶質コア材と、上記クラッド材の外周に形成された光透過性樹脂被覆と、から構成されている。このような光伝送体であれば、クラッド材とコア材の界面において光の全反射が起こりやすくなるとともに、コア材が非晶質であることから透明度をより向上させることができるため、光伝送損失を低減させることが可能となる。
【0013】
クラッド材の構成材料としては、プラスチックやエラストマーなどのように可とう性があり、成形が容易なものであれば何でも良く特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、天然ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン(PFA)、ポリクロルトリフルオロエチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンプロピレンゴム、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、ポリパーフルオロブテニルビニルエーテル、TFE−パーフルオロジメチルジオキソラン共重合体、フッ素化アルキルメタクリレート系共重合体、フッ素系熱可塑性エラストマーなどのフッ素系ポリマーが挙げられる。これらは、単独、又は、2種以上をブレンドして用いることができる。
【0014】
上記したクラッド材を構成する材料の中でも、例えば、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、エチレン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体などが、透明性と機械的特性に優れることから好ましい。特に、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)は、コア材や光透過性樹脂被覆との密着性をより向上させることができるため、曲げ半径を小さくして光伝送体を曲げたときや光伝送体に繰返しの屈曲を加えたときに、部分的にコア材とクラッド材が剥離したり、光透過性樹脂被覆とクラッド材が剥離したりすることを防止できることから更に好ましい。
【0015】
コア材の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明グレードなど、光透過性材料として使用されるものを選択することができる。このような材料の中でも、柔軟性と高温高湿下での経時特性の点から、ポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物の重合体が構成成分の一つとして使用されたものであることが好ましい。
【0016】
ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレンポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、シリコーン変性ポリエーテルポリオール等の変性ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、又は、これらの共重合体又は混合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシプロピレンポリオールは、高温高湿度の条件や温水中でも優れた出射特性を示すことから好ましい。
【0017】
上記ヒドロキシ基反応性多官能化合物としては、N−カルボニルラクタム基を持つ化合物、ハロゲン化物、イソシアネート基を持つ化合物、イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物などが挙げられる。イソシアネート基を持つ化合物としては、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネートなどが挙げられる。イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物としては、例えば、イソシアネートをラクタム等公知の方法でブロックしたブロックイソシアネート、イソシアネート基を公知の方法で多量化したイソシアヌレートを持つ化合物などが挙げられる。これらは、単独、又は、2種以上をブレンドして用いることができる。これらの中でも、イソシアネート基を持つ化合物、又は、イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物は、高温高湿の条件下や温水中でも優れた側面出射特性を示すことから好ましい。イソシアネート基を持つ化合物の中でも脂環族ポリイソシアネートは更に好ましい。イソシアネート基から誘導される官能基を持つ化合物の中でもイソシアヌレート結合を有するものは更に好ましい。
【0018】
上記コア材に微粒子を分散させることにより、光散乱機能を付与し、入射された光を周方向(側面)から出射させる側面出射型光伝送体としても良い。
微粒子としては、まず、無機材料として、石英ガラス、多成分ガラスなどのガラス微粒子、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムなどの金属酸化物粒子、硫酸バリウムなどの硫酸塩粒子、炭酸カルシウムなどの炭酸塩粒子などが挙げられる。次に、有機材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子などやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン(PFA)、ポリクロルトリフルオロエチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンプロピレンゴム、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、ポリパーフルオロブテニルビニルエーテル、TFE−パーフルオロジメチルジオキソラン共重合体、フッ素化アルキルメタクリレート系共重合体、フッ素系熱可塑性エラストマーなどのフッ素系ポリマーの粒子などが挙げられる。これらは、使用するコア材の構成材料や非流動化処理条件、光伝送体の長さ、側面出射光量、使用条件、又は、微粒子の真比重、形状、粒径、濃度、屈折率などを考慮して適宜に選択すれば良い。
【0019】
微粒子の粒径としては、50μm以下のものが、非流動化処理時に微粒子が均一な分散状態を保持することができ、ムラのない側面出射特性が得られることから好ましい。但し、粒径は上記の数値に限定されることはなく、例えば、使用するコア材の構成材料や非流動化処理条件、光伝送体の長さ、側面出射光量、使用条件、又は、微粒子の真比重、形状、濃度、屈折率などを考慮して適宜に選択すれば良い。要は、非流動化処理時に、微粒子が均一な分散状態を保持することができるような条件を吟味して選択すれば良い。
【0020】
上記クラッド材の外周には、光透過性樹脂被覆が形成される。光透過性樹脂被覆の構成材料としては、柔軟性メタクリル樹脂が使用される。柔軟性メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体を基本とした構成のものである。これに、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−エチルマレイミド、N−
シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のマレイミド化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物を適宜重合したものも考えられる。また、柔軟性メタクリル樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含有していても良い。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸亜鉛共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の加水分解物などのエチレン系重合体;ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体などのプロピレン系重合体;ブタジエン重合体、イソプレン重合体などの共役ジエン重合体;ブタジエン重合体の水素添加物、イソプレン重合体の水素添加物などの共役ジエン重合体水素添加物などが挙げられる。また、必要に応じて他の重合体や添加剤を含有してもよい。含有し得る添加剤の例としては、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤;耐熱性、耐候性等の向上または増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維または有機繊維;熱安定剤;酸化防止剤;光安定
剤;粘着剤;粘着付与剤;可塑剤;帯電防止剤;発泡剤などを挙げることができる。これらの添加量については、必要とする特性に応じて適宜設定すればよい。また、充分な出射光量が得られる範囲で、各種の染料、顔料又は蛍光剤等を配合し、光伝送体の発光色を特定色にすることも考えられる。以上の添加剤の添加量について、柔軟性メタクリル樹脂の厚さ0.25mmにおける可視光領域の光線透過率が80%以上となるようにすることが好ましい。こうすることにより、光透過性樹脂被覆内部での光の散乱や吸収を抑えることができるため、伝送損失を少なくすることができるとともに、特定色の光源により有色光を発光させる際に、設計で意図した色の光を鮮明な色彩で放つことが可能となる。尚、可視光領域の光線透過率はJIS−K7105(1981)に準拠して測定される。
【0021】
上記光透過性樹脂被覆は、断面の形状が円形形状のみならず異形形状となっていてもよく、異形形状としては、平面等に配設する際に、容易且つ確実に固定が行える形状が好ましく選択される。例えば、被配設部と光伝送体との接触面積が増加する形状、被配設部に光伝送体を引っ掛けて固定することができる形状などが考えられ、具体的には、三角形、四角形、五角形、六角形などの形状や、図2図5に示す形状などが挙げられる。(図中において、1は光伝送体、2はクラッド材、3はコア材、4は光透過性樹脂被覆を示す。)
【0022】
本発明における光伝送体は、上記の構成材料を使用して、例えば、以下に示すような方法によって製造する。まず、公知の押出成形等の手法により長尺で管状の形状にクラッド材を成形する。このクラッド材をボビン等に巻回した状態で、クラッド材の内部に流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物を少なくとも充填する。ここで「少なくとも」とは、ポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物の重合体と微粒子を構成成分として有しているものであれば良く、その他の第三成分を含む場合も当然のことながら想定されるものである。尚、側面出射型光伝送体とする場合は、このときに合わせて微粒子を混合して充填する。更に、ポリマーポリオールとヒドロキシ基多官能化合物を、例えば、加熱などにより反応させ非流動化処理を施す。上記の方法によれば、コア材が、光透過性樹脂を押出被覆する際の熱に晒されて変質することがなく、光伝送体としたときにその特性を劣化させることがないので好ましい。ここで、流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物(及び、微粒子)の混合物を、クラッド材の内部に充填する前に、ポリマーポリオールとヒドロキシ基多官能化合物に加熱などの前処理を行い、粘度を高めておくことも考えられる。こうすることにより、非流動化処理の時間を短縮できるとともに、側面出射型光伝送体とする場合は、微粒子の分散状態をより均一なものとすることが可能である。
【0023】
流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物と、微粒子の混合物をクラッド材の内部に充填する方法としては、例えば、真空ポンプやチューブポンプを使用する方法や、加圧充填する方法が挙げられる。又、別の方法として、例えば、クラッド材を押出成形法によりチューブ状に成形する際に、同時に流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基多官能性化合物と、微粒子の混合物を充填する方法も考えられる。こうすることにより、長尺の光伝送体を連続して製造することが可能である。
【0024】
光透過性樹脂被覆の形成に当たっては、例えば、チューブ状に成形したクラッド材の外周に、目的とする断面形状となるように設計した押出金型を用いて、光透過性樹脂を押出被覆した後に、流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物等を充填し、非流動化処理をしても良いし、先にクラッド材内に流動状態のポリマーポリオールとヒドロキシ基反応性多官能化合物等を充填し、非流動化処理をして、その後に、光透過性樹脂被覆を押出被覆により形成することも考えられる。但し、後から光透過性樹脂被覆を形成する場合には、押出被覆の熱によってコア材が変質しないように注意をする必要がある。光透過性樹脂被覆を後から形成する場合、コア材の非流動化処理の際に曲げグセが付いてしまっていても直線状に矯正することができる。
【0025】
コア材の形成方法に関して、コア材の材料種類によっては、単にコア材の材料を押出成形することのみによって形成することもできる。その場合、コア材を押出成形した後に、このコア材の外周にクラッド材、光透過性樹脂被覆を順次押出成形する方法、コア材、クラッド材及び光透過性樹脂被覆を任意の組合せで同時押出成形する方法、など、種々の方法をとることができる。
【0026】
又、光透過性樹脂被覆の形成方法としては、クラッド材の外周に押出被覆により形成する方法の他に、予めチューブ状に成形した光透過性樹脂被覆をクラッド材の外周に被せる方法などが挙げられる。但し、この場合には、クラッド材と光透過性樹脂被覆をしっかりと密着させ、剥離部分がないようにする必要がある。
【0027】
本発明においては、上記の光伝送体の少なくとも一端に光源を配設し、照明装置とすることも考えられる。光源としては、従来公知の発光素子、例えば、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)などが使用可能である。又、光源の発光色や設置個数については、特に限定されることはなく、例えば、発光色が赤、青、緑、黄、橙、白等のLEDから適宜選択したり、複数個のLEDを組合せたりすることにより、様々な発色を得ることや、光量を増大させることができる。
【0028】
尚、光伝送体として、入射された光を周方向(側面)から出射させる側面出射型光伝送体を使用した場合、光源を光伝送体の片端だけでなく、両端に配設することも考えられる。こうすることにより、より高輝度な発光を得ることが可能となるとともに、夫々の端で異なる発光色の光源を用いることによって、照明装置の長さ方向で徐々に変色しながら発光させることもでき、多彩な装飾表現が可能となる。
【0029】
尚、光伝送体の少なくとも一端に光源を配設する際には、光源からの光が上記光透過性樹脂被覆に直接導入されないための遮光手段を備えることが好ましい。具体的には、例えば、光伝送体の端面において光透過性樹脂被覆を覆うように遮光板を配置すること、光伝送体の端面において光透過性樹脂被覆の部分に遮光性塗料を塗布すること、図6に示すように、光伝送体1と光源5を接続するコネクタ6を用い、コネクタ6における光伝送体1の保持部分によって光透過性樹脂被覆4の端面を覆うこと、などが考えられる。
【実施例】
【0030】
以下に、図1を参照して本発明の光伝送体に関する実施例、比較例及び参考例を併せて説明する。尚、本実施例は、端面出射型の光伝送体に適用したものである。
【0031】
実施例
コア材3を構成する材料としては、ポリマーポリオールとしてポリオキシプロピレントリオールとポリオキシプロピレンジオールを使用し、ヒドロキシ基反応性多官能化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートを使用する。又、クラッド材2として、外径5.0mmのテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体からなるチューブを使用する。又、光透過性樹脂被覆4の材料としては、柔軟性メタクリル樹脂としてメタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン共重合体を使用する。又、微粒子としては、平均粒径5μmのガラスビーズ0.01gを使用する。上記のクラッド材2をφ300mmのボビンに巻回した状態で、クラッド材2内に上記コア材3と上記微粒子を構成する材料を混合して充填し、100℃で加熱してコア材3に非流動化処理を施す。その後、押出成型機を使用し、クラッド材の外周に図1に示す形状で上記の光透過性樹脂被覆4の材料を押出被覆する。光透過性樹脂被覆4の外径は10.0mmとなるよう調整した。このようにして、内側からコア材3、クラッド材2、光透過性樹脂被覆4が形成されるので、この両端を切断して光伝送体1を得た。
【0032】
比較例
光透過性樹脂被覆4の材料を透明な柔軟性塩化ビニル樹脂とした他は、上記実施例と同様にして光伝送体1を得た。
【0033】
参考例
クラッド材2の外径を10mmとし、光透過性樹脂被覆を形成しなかった他は、上記実施例と同様にして光伝送体1を得た。
【0034】
ここで、本実施例による端面出射型光伝送体の特性を評価するために、以下に示すような試験を実施した。結果を併せて表1に示す。
【0035】
端面状態の観察:
各試料の両端の切断面を目視にて観察した。切断面が平滑のものを○(合格)とし、端面が粗となり研磨加工等が必要となったものを×(不合格)とした。
側面出射特性:
各試料500mmを直線状態に配設して側面出射光量の測定を行った。側面出射光量は、光源としての緑色LEDを原点とし、そこから所定の位置での側面出射光量を照度計で測定した。本試験の結果については図7に示す。
耐熱性:
各試料を120℃の乾燥器中に120時間放置した後、取出した。光伝送体全体として透明性を保っているものを○(合格)とし、変色を生じていたものを×(不合格)とした。
耐候性:
各試料をキセノンウエザーメーターにて屋外暴露加速試験を行った。光伝送体全体として透明性を保っているものを○(合格)とし、変色を生じていたものを×(不合格)とした。
密着性:
実施例及び比較例による光伝送体1について、それぞれ長さ5mmにカットし、クラッド材2と光透過性樹脂被覆4との密着強度を測定した。具体的には、幅6mmのV字形状の溝上にサンプルを配置し、φ3mmの丸棒を接続したプッシュプルゲージ(AIKOH社製RX−10)を定速昇降機(AIKOH社製MODEL−2257)に取り付けて10mm/minで降下させ、サンプル中央部(コア材3の部分)を丸棒にて押圧し、光透過性樹脂被覆4がクラッド材2から脱離した際の荷重を測定した。
巻きグセ矯正確認:
各試料による光伝送体1について、長さ500mmに切断し、図8に示すように、一方の端部から50mmを鉛直方向に沿うようにして固定してもう一方の端部を垂らし、固定した端部と垂らした端部の水平方向の距離Lを測定した。尚、参考例による光伝送体は、光透過性樹脂被覆を形成していない、即ち、巻きグセの矯正が行われてないものである。
【0036】
【表1】
【0037】
これらの試験結果から次のことが判明した。まず、端面状態であるが、何れの試料も切断面が平滑であり、端面の研磨加工等は不要であった。
【0038】
次に側面出射特性であるが、本実施例によるものは、コア材1及びクラッド材2のみの参考例と同等の側面出射光量が得られていた。これに対し、比較例によるものは、実施例及び参考例よりも側面出射光量が少なく、特に光源から離れた位置において大きく減少していることが確認された。
【0039】
耐熱性及び耐候性の試験においても、本実施例によるものは参考例と同様に透明性を維持していることが確認された。これに対し、比較例によるものは、耐熱性の試験後には光透過性樹脂被覆4が茶色に変色し、耐候性の試験後に光透過性樹脂被覆4が黄色に変色してしまっており、側面出射光量も大きく低下することが確認された。
【0040】
密着性においても、実施例によるものは、比較例の倍以上の密着強度が得られており、優れた特性を示していた。このようにクラッド材2と光透過性樹脂被覆4との密着性に優れていれば、光伝送体1の配設時に、光伝送体1が繰返しの屈曲を受けても、層間剥離が起きにくい。そのため、クラッド材2と光透過性樹脂被覆4の間に隙間ができて発光特性が低下したり、端面にてクラッド材2と光透過性樹脂被覆4がずれて段差が生じたりすることを防止できる。
【0041】
次に、巻きグセ矯正確認が、本実施例によるものは、光透過性樹脂被覆を形成していない参考例より小さい値となっており、光透過性樹脂被覆4の形成により、巻きグセが小さくなっていることが確認された。比較例によるものも、巻きグセが小さくなっていたが、実施例には劣るものであった
【0042】
ここで、実施例にて作成した光伝送体を携帯電話の筐体表面に配設してみたところ、容易且つ確実に固定することができた。又、本実施例による光伝送体は、可撓性に優れているので複雑なパターンに配設することも可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上詳述したように本発明の光伝送体によれば、柔軟で可撓性に優れることから容易に任意の形状に配設することが可能であるとともに、長期間の優れた耐候性を有することにより、優れた出射特性を長期間安定して維持することができ、且つ、平面等への配設に際して、より容易且つ確実に固定を行うことができる。そのため、この光伝送体は、車載用配線・移動体配線・FA機器配線等の光信号伝送、液面レベルセンサー・感圧センサー等の光学センサー、内視鏡等のイメージガイド、光学機器のライトガイト、携帯電話・デジカメ・腕時計・カーオーディオ・カーナビ・パチンコ台・スロット台・自動販売機・車両室内外・犬の首輪・装飾具・キッチン・交通標識・洗面台・シャワー・浴槽の湯温表示機・OA機器・家庭用電気製品・光学機器・各種建材・階段・手すり・電車のホーム・屋外看板等のイルミネーションや照明、液晶表示部のバックライト等として好適に使用することができる。また、この光伝送体に光源を組合せて、照明装置として各種のイルミネーションや証明設備に使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 光伝送体
2 クラッド材
3 コア材
4 光透過性樹脂被覆
5 光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8