(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記p型領域に含まれる前記重金属の濃度が、前記ショットキー接合形成用領域に含まれる前記重金属の濃度より大きい、請求項1に記載のジャンクションバリアショットキーダイオードの製造方法。
前記熱処理は、850℃〜1000℃の温度雰囲気内で、10分〜180分間行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のジャンクションバリアショットキーダイオードの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のJBSダイオードにおいて、スイッチングスピードを上げるために、ライフタイムキラーとしての重金属をn型半導体素材に拡散することが考えられる。しかしながら、重金属の拡散によってショットキー接合形成用領域の重金属濃度が高くなると、ショットキー接合形成用領域に重金属による中間準位が発生し、適切なショットキー接合が形成されなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、この発明は、高速スイッチング特性およびソフトリカバリー特性を備えたJBSダイオー
ドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるJBSダイオードの製造方法は、pn接合を形成するためのp型領域とショットキー接合を形成するためのショットキー接合形成用領域とが表層部に形成されているn型半導体ウエハを準備する工程と、前記n型半導体ウエハの表面に、前記p型領域および前記ショットキー接合形成用領域の表面を覆う絶縁
膜を形成する工程と、前記絶縁
膜のうち、前記p型領域に対応する位置に、前記p型領域の表面の一部を露出させる開口を形成する工程と、前記半導体ウエハの前記絶縁
膜が形成されている表面とは反対側の表面に、重金属を付着させる工程と、前記ショットキー接合形成用領域の表面が前記絶縁膜によって覆われ、前記絶縁膜の開口によって前記p型領域の表面の一部が露出している状態で、前記半導体ウエハに熱処理を施して前記重金属を前記半導体ウエハ内に拡散させる工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
半導体ウエハに熱処理を施して重金属を半導体ウエハ内に拡散させる工程においては、重金属は置換拡散によって半導体ウエハ内を移動していくため、半導体ウエハの表層部のうち、その表面が絶縁膜によって覆われている部分に比べて、絶縁膜の開口からその表面が露出している部分に重金属が集中しやすくなる。したがって、表面が絶縁膜によって覆われているショットキー接合形成用領域に比べて、絶縁膜の開口によって表面の一部が露出しているp型領域に重金属が集中しやすくなる。この結果、ショットキー接合形成用領域に含まれる重金属濃度に比べて、p型領域に含まれる重金属の濃度が大きくなる。これにより、高速スイッチング特性およびソフトリカバリー特性を備えたJBSダイオードを製造することができる。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記p型領域に含まれる前記重金属の濃度が、前記ショットキー接合形成用領域に含まれる前記重金属の濃度より大きい。
この発明の一実施形態では、前記p型領域の表面直下における前記重金属の濃度が1×10
18[atoms/cm
3]以上であり、前記ショットキー接合形成用領域の表面直下における前記重金属の濃度が1×10
18[atoms/cm
3]未満である。
この発明の一実施形態では、前記重金属はPt(白金)である。
この発明の一実施形態では、前記熱処理は、850℃〜1000℃の温度雰囲気内で、10分〜180分間行われる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記重金属はPt(白金)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るJBSダイオードを示す断面図である。
JBSダイオード1は、第1の表面10aおよびそれと反対側の第2の表面10bを有するn型半導体素材10と、n型半導体素材10の第1の表面10aに形成されたショットキーバリアメタル9と、ショットキーバリアメタル9の表面に形成されたアノード電極11と、n型半導体素材10の第2の表面10bに形成されたカソード電極12とを含んでいる。
【0014】
n型半導体素材10は、n
+型半導体基板2(たとえばシリコン基板)と、n
+型半導体基板2の一方の主面に形成されたn
−型エピタキシャル層3とから構成されている。n
−型エピタキシャル層3の表面がn型半導体素材10の第1の表面10aとなる。また、n
+型半導体基板2におけるn
−型エピタキシャル層3が形成されている主面とは反対側の主面がn型半導体素材10の第2の表面10bとなる。
【0015】
n
−型エピタキシャル層3の表層領域に、複数のp
+型領域(p型領域)4が選択的に形成されている。複数のp
+型領域4は、n
−型エピタキシャル層3の表面の周縁部より内側の領域に形成されている。この実施形態では、複数のp
+型領域4は、平面視においてストライプ状に配置されている。各p
+型領域4は、たとえばn
−型エピタキシャル層3にp型不純物としてのボロンを拡散することによって形成されている。各p
+型領域4とn
−型エピタキシャル層3と間に、それぞれpn接合5が形成されている。
【0016】
n
−型エピタキシャル層3の表層領域のうち隣り合うp
+型領域4の間の領域は、ショットキーバリアメタル9との間にショットキー接合7を形成するための領域である。この領域を、ショットキー接合形成用領域6ということにする。
n
−型エピタキシャル層3の表面の周縁部には、平面視で環状の絶縁
膜8が形成されている。この環状の絶縁
膜8に囲まれた領域内において、p
+型領域4の表面およびショットキー接合形成用領域6の表面に、ショットキーバリアメタル9が形成されている。ショットキーバリアメタル9は、たとえばAu,Pt,Pd,Mo,Ti,Ta等からなる。
【0017】
アノード電極11は、ショットキーバリアメタル9の露出面および絶縁膜8の表面の内周縁部を覆うように形成されている。アノード電極11は、たとえば、Al,AlSi(アルミニウムのシリコン化合物),AlSiCu(アルミニウム−銅合金のシリコン化合物)等からなる。カソード電極12は、n+型半導体基板2におけるn
−型エピタキシャル層3が形成されている主面とは反対側の主面に形成されている。カソード電極12は、たとえば、基板2側から順にTi膜、Ni膜およびAg膜を積層したTi/Ni/Ag積層膜、基板2側から順にTi膜、Ni膜およびAu膜を積層したTi/Ni/Au積層膜等からなる。
【0018】
n型半導体素材10内には、ライフタイムキラーとしての重金属(たとえばPt(白金))が拡散されている。この実施形態では、p
+型領域4内のPt濃度は、ショットキー接合形成用領域6内のPt濃度より大きい。
この実施形態によれば、p
+型領域4内のPt濃度が大きいので、少数キャリアのライフタイムを短縮でき、スイッチングスピードを向上させることができる。一方、ショットキー接合形成用領域6内のPt濃度が小さいので、ショットキー接合形成用領域6とショットキーバリアメタル9との間に適切なショットキー接合7を形成することができる。これにより、高速スイッチング特性およびソフトリカバリー特性を備えたJBSダイオードを実現できる。
【0019】
図2A〜
図2Gは、
図1のJBSダイオードの製造工程の一例を説明するための断面図である。
まず、
図2Aに示すように、n
+型半導体基板(たとえばシリコン基板)2の一方の主面上に、n
−型エピタキシャル層3が形成されたn型半導体素材10を準備する。n型半導体素材10は、第1の表面10aおよび第2の表面20aを有している。n
−型エピタキシャル層3の表面(n型半導体素材10をの第1の表面10a)に、熱酸化膜やCVD酸化膜等の絶縁膜(図示略)を形成し、その上にレジストマスク(図示略)を形成する。このレジストマスクを用いたエッチングによって、p
+型領域4を形成すべき領域に対応する開口を絶縁膜に形成する。さらに、レジストマスクを剥離した後に、絶縁膜に形成された開口から露出するn
−型エピタキシャル層3の表層部にp型不純物を導入する。p型不純物の導入は、p型不純物イオン(たとえばボロンイオン)の注入によって行なわれる。p型不純物導入後、不純物イオンを活性化するための熱処理を行なう。これにより、n
−型エピタキシャル層3の表層部に、複数のp
+型領域4が形成される。n
−型エピタキシャル層3の表層部のうち、隣り合うp
+型領域4の間の領域がショットキー接合形成用領域6となる。この後、絶縁膜を除去する。これより、p
+型領域4とショットキー接合形成用領域6が表層部に形成されたn型半導体素材10が得られる。
【0020】
次に、
図2Bに示すように、n
−型エピタキシャル層3の表面(n型半導体素材10の第1の表面10a)に、熱酸化膜やCVD酸化膜等の絶縁膜8を形成し、その上にレジストマスク(図示略)を形成する。
次に、このレジストマスクを用いたエッチングによって、
図2Cに示すように、各p
+型領域4に対応する開口8aを絶縁膜8に形成する。平面視おいて、各開口8aは、対応するp
+型領域4よりも若干小さく形成されている。したがって、ショットキー接合形成用領域6の表面は、絶縁膜8によって覆われている。
【0021】
次に、
図2Dに示すように、n
+型半導体基板2におけるn
−型エピタキシャル層3が形成されている主面とは反対側の主面(n型半導体素材10の第2の表面10b)に、重金属としてPt(白金)13を付着させる。Pt13の第2の表面10bへの付着は、たとえばスパッタ技術を用いて実現することができる。また、Pt13の第2の表面10bへの付着は、真空蒸着法を用いて行なうことができる。
【0022】
次に、
図2Eに示すように、Pt13が付着されたn型半導体素材10を熱処理する。この熱処理は、たとえば850℃〜1000℃の温度雰囲気内で、たとえば10分〜180分間行われる。この熱処理によって、n型半導体素材10の第2の表面10bに付着されたPt13が、
図2Eに矢印で示されるように、n型半導体素材10内に拡散される。この際、Pt13は置換拡散によってn型半導体素材10内を移動していくため、n型半導体素材10の第1の表面10a側の表層部のうち、その表面が絶縁膜8によって覆われている部分に比べて、絶縁膜8の開口8aからその表面が露出している部分にPtが集中しやすくなる。したがって、表面が絶縁膜8によって覆われているショットキー接合形成用領域6に比べて、絶縁膜8の開口8aによって表面の大部分が露出しているp
+型領域4にPtが集中しやすくなる。この結果、ショットキー接合形成用領域6に含まれるPtの濃度に比べて、p
+型領域4に含まれるPtの濃度が大きくなる。
【0023】
次に、
図2Fに示すように、絶縁膜8のうちn型半導体素材10の第1の表面10aの周縁部上に存在する部分を残し、それ以外の部分を除去する。これにより、n型半導体素材10の第1の表面10aに環状の絶縁膜8が形成されることになる。
次に、
図2Gに示すように、n型半導体素材10の第1の表面10aにおける絶縁膜8に囲まれた領域に、ショットキーバリアメタル9を形成する。ショットキーバリアメタル9の形成は、たとえば、たとえばスパッタ技術を用いて実現することができる。そして、ショットキーバリアメタル9の表面および絶縁膜8の表面にアノード電極11を形成する。最後に、n
+型半導体基板2におけるn
−型エピタキシャル層3が形成されている主面とは反対側の主面にカソード電極12を形成する。これにより、
図1に示されるJBSダイオード1が得られる。
【0024】
図3Aは、この実施形態によるJBSダイオードについて、p
+型領域の表面からの深さに対するp
+型領域内のPt濃度を測定した結果を示すグラフである。
図3Bは、この実施形態によるJBSについて、ショットキー接合形成用領域の表面からの深さに対するショットキー接合形成用領域内のPt濃度を測定した結果を示すグラフである。
p
+型領域4内のPt濃度は、その表面直下が最も大きく、表面からの深さが大きくなるにしたがって小さくなる。そして、表面からの深さが約1.5[μm]より大きい領域では、p
+型領域4内のPt濃度は、ほぼ一定範囲内の大きさとなる。p
+型領域4の表面直下のPtの濃度は、1×10
19[atoms/cm
3]と1×10
20[atoms/cm
3]との中間値となっている。つまり、p
+型領域4の表面直下のPtの濃度は、1×10
19[atoms/cm
3]以上(1×10
18[atoms/cm
3]以上)となっている。このように、p
+型領域4内のPt濃度が高いので、少数キャリアのライフタイムを短縮でき、スイッチングスピードを向上させることができる。
【0025】
ショットキー接合形成用領域6のPt濃度は、その表面直下が最も大きく、表面からの深さが大きくなるにしたがって小さくなる。そして、表面からの深さが約0.8[μm]より大きい領域では、ショットキー接合形成用領域6内のPt濃度は、ほぼ一定範囲内の大きさとなる。ショットキー接合形成用領域6の表面直下のPtの濃度は、1×10
16[atoms/cm
3]と1×10
17[atoms/cm
3]との中間値となっている。つまり、p
+型領域4の表面直下のPtの濃度は、1×10
18[atoms/cm
3]未満となっている。
【0026】
適切なショットキー接合を形成するためには、ショットキー接合形成用領域6の重金属濃度を1×10
18[atoms/cm
3]以下に抑えることが好ましい。この実施形態によるJBSダイオード1によれば、ショットキー接合形成用領域6のPtの濃度を1×10
18[atoms/cm
3]以下に抑えることができるので、ショットキー接合形成用領域6とショットキーバリアメタル9との間に適切なショットキー接合を形成することができる。
【0027】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、複数のp
+型領域4はストライプ状に配置されているが、複数のp
+型領域4は離散的に配置されていてもよい。その場合には、p
+型領域4は、平面視で円形であってもよく、多角形であってもよい。
また、ライフタイムキラーとしての重金属は、Au(金)等のPt以外の重金属であってもよい。
【0028】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。