特許第6013832号(P6013832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013832
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】水晶振動素子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20161011BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H03H9/19 J
   H03H9/215
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-185203(P2012-185203)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-45255(P2014-45255A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079164
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 勇
(72)【発明者】
【氏名】井上 憲司
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−015101(JP,A)
【文献】 特開2006−345519(JP,A)
【文献】 特開2003−163568(JP,A)
【文献】 特開2009−206590(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/052267(WO,A1)
【文献】 特開2008−199283(JP,A)
【文献】 特開2011−199578(JP,A)
【文献】 特開平06−112761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/19
H03H 9/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、この基部から延設された第一及び第二の振動腕部と、を備えた水晶振動素子において、
前記第一及び第二の振動腕部はそれぞれ、前記基部の中心線に対して非平行かつ互いに対称に前記基部から延びてから、前記中心線に対して平行な同一方向へ曲がる形状であり、
前記第一の振動腕部は基端側の第一の非平行領域と先端側の第一の平行領域とを有し、前記第二の振動腕部は基端側の第二の非平行領域と先端側の第二の平行領域とを有し、
前記第一及び第二の非平行領域はそれぞれ、前記中心線に対して非平行かつ互いに対称に前記基部から延設された領域であり、
前記第一及び第二の平行領域はそれぞれ、前記同一方向に前記第一及び第二の非平行領域から延設された領域であり、
前記第一の非平行領域は、前記第一平行領域の延設方向から反時計回りに鈍角となる方向へ延びる形状であり、
前記第二の非平行領域は、前記第二の平行領域の延設方向から時計回りに鈍角となる方向へ延びる形状である、
ことを特徴とする水晶振動素子。
【請求項2】
前記基部は、前記第一の振動腕部が設けられた第一辺と、この第一辺に対向するとともに前記第二の振動腕部が設けられた第二辺と、前記第一辺と前記第二辺とに挟まれ互いに対向する第三辺及び第四辺と、を有する四角形状である、
請求項記載の水晶振動素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば基準信号源やクロック信号源に用いられる水晶振動素子に関する。以下、水晶振動素子の一例として、音叉型屈曲水晶振動素子(以下「振動素子」と略称する。)について説明する。
【背景技術】
【0002】
図7は、関連技術1の振動素子を示す平面図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0003】
本関連技術1の振動素子900は、基部911と、基部911から平行に伸びる一対の振動腕部912a,912bと、を備えている。振動腕部912a,912bには、それぞれ溝部913a,913bが形成されている。
【0004】
振動腕部912a,912bの側面と溝部913a,913bとには、励振電極921a,921bが形成されている。基部911には、二つの電極パッド922a,922bが形成されている。電極パッド922a,922bは、互いに絶縁されるように、分離された状態で配置されている。振動腕部912aの側面及び振動腕部912bの溝部913bに形成された励振電極921aと、基部911に形成された電極パッド922aとは、同じ極性同士になるように配線及び接続されている。振動腕部912bの側面及び振動腕部912aの溝部913aに形成された励振電極921bと、基部911に形成された電極パッド922bとは、同じ極性同士になるように配線及び接続されている。
【0005】
電極パッド922a,922bは、図示を略すが、パッケージ側の電極パッドに導電性接着剤を介して固定されると同時に電気的に接続される。電極パッド922a,922bに交番電圧が印加されると、発生した電界により振動腕部912a,912bに伸縮が生じ、これにより振動素子900に所定の共振周波数の屈曲振動が生じる。
【0006】
振動素子900は、例えば携帯電話などの電子機器において、同期信号源として用いられている。近年の電子機器の小型化に伴い、そこに使われる振動素子900にも小型化が求められている。振動素子900の小型化にあたっては、振動素子900の全長(長手方向の長さ)すなわち基部911又は振動腕部912a,912bの長さを短くする必要がある。
【0007】
基部911の長さを短くすると、振動腕部912a,912bからの振動が、基部911内で十分に吸収されず、基部911の固定部分を介して、外部のパッケージなどに漏れてしまう問題(以下「振動漏れ」という。)が発生する。この振動漏れは、振動エネルギの損失となるため、振動素子900に重要な特性値であるCI(Crystal Impedance)を劣化すなわち増加させる要因となる。
【0008】
また、振動腕部912a,912bの長さLを短くすると、次式から明らかなように、所定の振動周波数fを得るために振動腕部912a,912bの幅Wを狭くする必要がある。そのため、幅Wを狭くすることにより、製造が困難になる、特性が劣化する等の問題を引き起こす。
f=C(W/L) ここで、Cは定数である。
【0009】
一方、特許文献1、2には、振動腕部をU字状に折り曲げることにより、基部を短くすることなく、かつ振動腕部の実質的な長さを短くすることなく、全長を短くできる振動素子が開示されている(以下「関連技術2」という。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−199283号公報
【特許文献2】特開平06−112761号公報
【特許文献3】特開2011−151567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、関連技術2の振動素子は、その全長を短くできるものの、振動素子の先端において振動腕部を折り曲げる構造であるため、次のような問題があった。なお、振動素子の先端とは、その長手方向の振動腕部側の端をいうものとする。
【0012】
振動素子の先端で振動腕部が二重になっていることにより、振動素子の先端の重量が大きい。そのため、振動素子が落下などの衝撃を受けた場合に、振動腕部と基部との接続部分が破損しやすいなど、耐衝撃性が低下する。また、振動腕部の重心が振動素子の先端側にあるため、不要な振動が生じてCIが増大したり、実装時に振動素子の先端がパッケージの底面に接触してCIが増大したりする可能性がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、振動腕部を折り曲げて振動素子の全長を短くした場合の諸問題を解決する、振動素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る振動素子は、
基部と、この基部から延設された第一及び第二の振動腕部と、を備えた振動素子において、
前記第一及び第二の振動腕部はそれぞれ、前記基部の中心線に対して非平行かつ互いに対称に前記基部から延びてから、前記中心線に対して平行な同一方向へ曲がる形状であり、
前記第一の振動腕部は基端側の第一の非平行領域と先端側の第一の平行領域とを有し、前記第二の振動腕部は基端側の第二の非平行領域と先端側の第二の平行領域とを有し、
前記第一及び第二の非平行領域はそれぞれ、前記中心線に対して非平行かつ互いに対称に前記基部から延設された領域であり、
前記第一及び第二の平行領域はそれぞれ、前記同一方向に前記第一及び第二の非平行領域から延設された領域であり、
前記第一の非平行領域は、前記第一平行領域の延設方向から反時計回りに鈍角となる方向へ延びる形状であり、
前記第二の非平行領域は、前記第二の平行領域の延設方向から時計回りに鈍角となる方向へ延びる形状である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、振動腕部の基端側において振動腕部を折り曲げる構造であることにより、振動素子の全長を短くできるとともに、関連技術2に比べて振動素子の先端側を軽量化できるので、振動腕部と基部との接続部分における耐衝撃性を向上できる。また、関連技術2に比べて振動腕部の重心が基部側にあるため、不要な振動が生じてCIが増大したり、実装時に振動素子の先端がパッケージの底面に接触してCIが増大したりする可能性を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1の振動素子を示す平面図である。
図2図1におけるII−II線縦断面図である。
図3図1の振動素子の寸法例を示す平面図である。
図4】実施形態2の振動素子を示す平面図である。
図5】実施形態3の振動素子を示す平面図である。
図6】実施形態4の振動素子を示す平面図である。
図7】関連技術1の振動素子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
【0018】
図1は、実施形態1の振動素子の平面図である。図2は、図1におけるII−II線縦断面図である。以下、図1及び図2に基づき説明する。「第一」、「第二」等の序数詞は、符号に置き換えることで、適宜省略する。
【0019】
本実施形態1の振動素子10は、基部11と、基部11から延設された第一の振動腕部12a及び第二の振動腕部12bと、を備えている。振動腕部12a,12bはそれぞれ、基部11から互いに異なる方向100a,100bへ延びてから、同一方向(方向100)へ曲がる形状である。
【0020】
例えば、振動腕部12a,12bはそれぞれ、基部11の中心線110に対して非平行かつ互いに対称に基部11から延びてから、中心線110に対して平行な同一方向(方向100)へ曲がる形状である。
【0021】
より具体的に言えば、振動腕部12aは基端側の第一の非平行領域121aと先端側の第一の平行領域122aとを有し、振動腕部12bは基端側の第二の非平行領域121bと先端側の第二の平行領域122bとを有する。非平行領域121a,121bはそれぞれ、中心線110に対して非平行かつ互いに対称に基部11から延設された領域である。平行領域122a,122bはそれぞれ、同一方向(方向100)に非平行領域121a,121bから延設された領域である。非平行領域121aと平行領域122aとの境界領域及び非平行領域121bと平行領域122bとの境界領域を、それぞれ折り曲げ領域123a,123bと呼ぶ。
【0022】
非平行領域121aは、平行領域122aの延設方向(方向100)から反時計回りに鈍角となる方向100aへ延びる形状である。非平行領域121bは、平行領域122bの延設方向(方向100)から時計回りに鈍角となる方向100aへ延びる形状である。非平行領域121a,121bは、本実施形態1では直線状であるが、曲線状、折れ線状などとしてもよい。
【0023】
基部11は、振動腕部12aが設けられた第一辺111と、第一辺111に対向するとともに振動腕部12bが設けられた第二辺112と、第一辺111と第二辺112とに挟まれ互いに対向する第三辺113及び第四辺114と、を有する四角形状である。
【0024】
次に、振動素子10の構成について更に詳しく説明する。
【0025】
図1及び図2に示すように、振動素子10は、水晶振動片15と、水晶振動片15に設けられた励振電極21a,21b、電極パッド22a,22b及び周波数調整用金属膜23a,23bとから、主に構成されている。
【0026】
水晶振動片15は、音叉形状となっており、基部11と、基部11から延設された二本一対の振動腕部12a,12bと、基部11の第一辺111の一部及び第二辺112の一部から延設された、電極パッド22a,22bが設けられる部分と、により概略構成される。振動腕部12a,12bには、水晶を挟んで対向する平面同士に同極となるように励振電極21a,21bがそれぞれ設けられている。
【0027】
図2に基づき詳しく説明すると、振動腕部12aには、水晶を挟んで対向する平面同士が同極となるように、両側面に励振電極21aが設けられ、表裏面の溝部13aに励振電極21bが設けられる。同様に、振動腕部12bには、水晶を挟んで対向する平面同士に同極となるように、両側面に励振電極21bが設けられ、表裏面の溝部13bに励振電極21aが設けられる。したがって、振動腕部12aにおいては両側面に設けられた励振電極21aと溝部13a内に設けられた励振電極21bが異極同士となり、振動腕部12bにおいては両側面に設けられた励振電極21bと溝部13b内に設けられた励振電極21aが異極同士となる。このとき、振動腕部12aにおいては両側面の励振電極21aと溝部13a内の励振電極21bが平行平板電極となり、それらの電極間で大きな電界強度が得られる。振動腕部12bにおいても同様である。
【0028】
基部11は、平面視略四角形の平板となっている。振動腕部12a,12bはそれぞれ、基部11の第一辺111及び第二辺112から互いに異なる方向へ延設されてから同一方向に延設されている。水晶振動片15は、基部11と振動腕部12a,12bとが一体となって音叉形状をなしており、例えば成膜技術、フォトリソグラフィ技術、化学エッチング技術により製造される。
【0029】
振動腕部12a,12bの長手方向には、それぞれ溝部13a,13bが設けられている。溝部13a,13bの本数は、特に制限はなく、例えば振動腕部12aの表裏面に二本ずつ及び振動腕部12bの表裏面に二本ずつ設けてもよいし、振動腕部12aの表裏面に一本ずつ及び振動腕部12bの表裏面に一本ずつ設けてもよい。なお、溝部13a,13bは、振動腕部12aの表裏面のどちらか一方にのみ設けてもよいし、振動腕部12bの表裏面のどちらか一方にのみ設けてもよいし、また、平行領域122a,122bに加え又はこれに代えて非平行領域121a,121bに設けてもよい。
【0030】
励振電極21aは、振動腕部12aの両側面及び振動腕部12bの表裏面の溝部13aに設けられている。励振電極21bは、振動腕部12bの両側面及び振動腕部12aの表裏面の溝部13bに設けられている。
【0031】
基部11の第一辺111の一部及び第二辺112の一部から延設された水晶振動片15上には、それぞれ電極パッド22a,22bが設けられる。励振電極21a、電極パッド22a及び周波数調整用金属膜23aは互いに電気的に導通し、励振電極21b、電極パッド22b及び周波数調整用金属膜23bも互いに電気的に導通している。
【0032】
励振電極21a,21b、電極パッド22a,22b及び周波数調整用金属膜23a,23bは、例えば成膜技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術により形成され、例えばTi層の上にPd又はAu層が設けられた積層構造となっている。
【0033】
振動素子10は、電極パッド22a,22bを介して、図示しないが、導電性接着剤によって素子搭載部材側の電極パッドに固定されると同時に電気的に接続される。
【0034】
振動素子10を動作させるには、電極パッド22a,22bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的に捉えると、振動腕部12aの表裏面の溝部13a内に設けられた励振電極21bはプラス電位となり、振動腕部12aの両側面に設けられた励振電極21aはマイナス電位となり、互いに対向する励振電極21bと励振電極21aとの間でプラスからマイナスに電界が生じる。このとき、振動腕部12bの表裏面の溝部13b内に設けられた励振電極21aはマイナス電位となり、振動腕部12bの両側面に設けられた励振電極21bはプラス電位となり、振動腕部12aに生じた極性とは反対の極性となり、互いに対向する励振電極21bと励振電極21aとの間でプラスからマイナスに電界が生じる。この交番電圧で生じた電界によって、振動腕部12a,12bに伸縮現象が生じ、振動腕部12a,12bの形状で設定された共振周波数の屈曲振動モードが得られる。
【0035】
次に、振動素子10の作用及び効果について説明する。
【0036】
(1)振動腕部12a,12bの基端(付け根)側において振動腕部12a,12bを折り曲げる構造を採用したことにより、振動素子10の全長を短くできるとともに、関連技術2に比べて振動素子10の先端側を軽量化できるので、振動腕部12a,12bと基部11との接続部分における耐衝撃性を向上できる。また、関連技術2に比べて振動腕部12a,12bの重心が基部11側にあるため、不要な振動が生じてCIが増大したり、実装時に振動素子10の先端がパッケージの底面に接触してCIが増大したりする可能性を抑制できる。
【0037】
(2)振動腕部12a,12bの基端側において振動腕部12a,12bを折り曲げる構造を採用したことにより、振動腕部12a,12bの基端を中心とする振動に、振動腕部12a,12bの折り曲げ領域123a,123bを中心とする振動も加わることにより、振動効率が向上するのでCIを低減できる。
【0038】
(3)非平行領域121aの延設方向は、平行領域122aの延設方向(方向100)から反時計回りに鋭角又は直角にしてもよいが、図示するように反時計回りに鈍角とすることが好ましい。非平行領域121bの延設方向は、平行領域122bの延設方向(方向100)から時計回りに鋭角又は直角にしてもよいが、図示するように時計回りに鈍角とすることが好ましい。その理由は、振動素子10の全長を一定としたとき、折り曲げ領域123a,123bを振動素子10の基端側へ位置付けることができるので、振動素子10の全長をそのままにして平行領域122a,122bの長さすなわち振動腕部12a,12bの長さを伸ばすことができるからである。なお、振動素子10の基端とは、その長手方向の基部11側の端をいうものとする。
【0039】
(4)振動腕部12a、12bを基部11の第一辺111及び第二辺112に設けることにより、振動腕部12a,12bの長さを伸ばすことができる。その理由は、振動腕部12a、12bを基部11の第三辺113に設ける従来構造(例えば図7参照)に比べて、非平行領域121a,121bの基端(付け根)を振動素子10の基端側へ位置付けることができるからでる。
【0040】
次に、図面の上下左右を使って、振動素子10について説明する。
【0041】
本実施形態1では、基部11の左右それぞれの端面(第一辺111及び第二辺112)から斜め下側に振動腕部12a,12bを延出し、折り曲げ領域123a,123bで延出する方向を反転し、上方向に振動腕部12a,12bを延出する。本実施形態1によれば、振動素子10の全長を変更することなく、実効的に振動腕部12a,12bの長さを長くすることができる。振動腕部12aの長さは概ね非平行領域121aの長さと平行領域122aの長さとの和であり、同様に、振動腕部12bの長さは概ね非平行領域121bの長さと平行領域122bの長さとの和である。その結果、振動素子10の全長を従来構造の振動素子と同じにしても、従来構造の振動素子よりも振動周波数を下げることができる。言い換えると、振動周波数が同じであれば、振動素子10の全長を従来構造の振動素子よりも短くすることができる。
【0042】
また、振動腕部12a,12bは、基部11の側面から斜め下方向に延び、その後折り返して、基部11の長さ方向に延びている。これにより、振動腕部12a,12bに略V字状又は略U字状の折り曲げ領域123a,123bが形成される。この折り曲げ領域123a,123bがあることにより、振動腕部12a,12bが左右に振動しやすくなくなるので、振動素子10のCIを低減することができる。
【0043】
図3は、図1の振動素子の寸法例を示す平面図である。以下、図1乃至図3に基づき、振動素子10の寸法例について説明する。
【0044】
振動素子10は、例えば40kHz付近で共振するように設計され、全長が約1.1678mm程度と小型化に対応している。振動素子10の厚みは、使用する水晶ウェハの厚みと同程度であり、例えば0.lmmとなっている。ここでは、振動素子10の長手方向を「長さ」、短手方向を「幅」とする。
【0045】
振動腕部12a,12bの平行領域122a,122bにおいて、長さ61が0.96lmm、幅62が0.0486mm、間隔63が0.276mmである。基部11及び電極パッド22a,22bの領域は、全体の長さ64が0.276mm、側面の長さ65が0.208mm、幅66が0.347mmである。基部11の第三辺113の幅67は0.106mm、第三辺113と平行領域122a,122bとの距離68は0.0608mmである。電極パッド22a,22bは、側面の長さ69が0.104mm、基部11側の長さ70が0.075mmである。電極パッド22a,22bと非平行領域121a,121bとは、側面での距離71が0.049mm、基部11側での距離72が0.108mmである。非平行領域121a,122bは、側面での長さ73が0.054mm、基部11との角度74が63°、平行領域122a,122bとの角度75が63°である。
【0046】
このとき、振動素子10は、振動周波数が36kHz、CIが60kΩであった。一方、基部の長さが0.208mm、全長が1.1678mmである関連技術1の振動素子(図7参照)は、振動周波数が4lkHz、CIが85kΩであった。このように、振動素子10によれば、同じ大きさの関連技術1の振動素子に比べて、振動周波数を5kHz程度低減でき、CIを25kΩ程度低減できた。振動周波数を低減できた理由は、振動腕部12a,12bの基端側において振動腕部12a,12bを折り曲げる構造を採用したことにより、振動腕部12a,12bが実質的に長くなったためである。CIを低減できた理由は、振動腕部12a,12bの基端側において振動腕部12a,12bを折り曲げる構造を採用したことにより、振動腕部12a,12bが変形しやすくなったためである。
【0047】
図4は、実施形態2の振動素子の平面図である。以下、図4に基づき説明する。
【0048】
本実施形態2の振動素子30は、基部31及びスリット34が実施形態1と異なる。基部31は、実施形態1と同様に、振動腕部12aが設けられた第一辺311と、第一辺311に対向するとともに振動腕部12bが設けられた第二辺312と、第一辺311と第二辺312とに挟まれ互いに対向する第三辺313及び第四辺314と、を有する四角形状である。ただし、基部31は、実施形態1に比べて、振動腕部12a,12bの延設方向(方向100)側に突き出している。そして、延設方向(方向100)側の第三辺313には、延設方向(方向100)に沿ってスリット34が設けられている。スリット34は、基部31の厚み方向に貫通している。
【0049】
本実施形態2では、スパッタ技術及びフォトリソグラフィ技術を用いたリフトオフ法によって、振動腕部12a,12bに励振電極21a,21bを形成する。このとき、スリット34は、振動腕部12aの側面の励振電極21aと振動腕部12bの側面の励振電極21bとを切り離す役割を果たす(特許文献3参照)。また、スリット34は、振動腕部12a,12よりも延設方向(方向100)側の基部31の剛性を下げて、振動変位を更に容易にする効果がある。
【0050】
本実施形態2の他の構成は、実施形態2と同様である。本実施形態2のような構成にしても、実施形態1と同様の作用及び効果を奏する。
【0051】
図5は、実施形態3の振動素子の平面図である。以下、図5に基づき説明する。
【0052】
本実施形態3の振動素子40は、電極パッド42a,42bの形状が実施形態1と異なる。電極パッド42a,42bは、実施形態1に比べて、それぞれ振動素子40の外側の方向400a,400bへ大きく延びている。そのため、振動素子40によれば、素子搭載部材との接着面積が増加するため、耐衝撃性をより向上できる。
【0053】
本実施形態3の他の構成は、実施形態1と同様である。本実施形態3のような構成にしても、実施形態1と同様の作用及び効果を奏する。
【0054】
図6は、実施形態4の振動素子の平面図である。以下、図6に基づき説明する。
【0055】
本実施形態4の振動素子50は、電極パッド42a,42b,52の形状が実施形態1と異なる。電極パッド42a,42bは、実施形態3と同じである。電極パッド52は、電極パッド42aの先端から、更に振動腕部12a,12bの延設方向(方向100)へ大きく延びている。そのため、振動素子50によれば、素子搭載部材との接着面積が更に増加するとともに、振動素子50の先端に加わる力を電極パッド52へ分散できるので、耐衝撃性を更に向上できる。
【0056】
本実施形態4の他の構成は、実施形態1と同様である。本実施形態4のような構成にしても、実施形態1と同様の作用及び効果を奏する。
【0057】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 振動素子
100,100a,100b 方向
11 基部
110 中心線
111 第一辺
112 第二辺
113 第三辺
114 第四辺
12a 振動腕部
121a 非平行領域
122a 平行領域
123a 折り曲げ領域
12b 振動腕部
121b 非平行領域
122b 平行領域
123b 折り曲げ領域
13a,13b 溝部
15 水晶振動片
21a,21b 励振電極
22a,22b 電極パッド
23a,23b 周波数調整用金属膜
30 振動素子
31 基部
311 第一辺
312 第二辺
313 第三辺
314 第四辺
34 スリット
40 振動素子
400a,400b 方向
42a,42b 電極パッド
50 振動素子
52 電極パッド
61,64,65,69,70,73 長さ
62,66,67 幅
63 間隔
68,71,72 距離
74,75 角度
900 振動素子
911 基部
912a,912b 振動腕部
913a,913b 溝部
921a,921b 励振電極
922a,922b 電極パッド
L 長さ
W 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7