(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013833
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】パンチユニット保持機構およびパンチ加工装置
(51)【国際特許分類】
B21D 28/34 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
B21D28/34 L
B21D28/34 F
B21D28/34 H
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-186509(P2012-186509)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-42927(P2014-42927A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】500583726
【氏名又は名称】株式会社ワンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】大山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】梅原 克樹
(72)【発明者】
【氏名】桐明 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】店橋 純一
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−022984(JP,A)
【文献】
特開2003−094122(JP,A)
【文献】
米国特許第05881625(US,A)
【文献】
特開2012−143792(JP,A)
【文献】
実開昭62−109821(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/34
B21D 37/14
B30B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの一方の端面に形成された開口からスライドを前記ケース内に押し込むことにより、前記ケース内に収容されたパンチの刃部を前記ケースの他方の端面から突き出してワークを打ち抜くように構成されたパンチユニットを保持するパンチユニット保持機構であって、
前記パンチユニットが挿入されるパンチユニット保持用貫通穴を有するリテーナと、
前記リテーナが所定の隙間を介して挿入されるリテーナ保持用貫通穴を有し、型上に配置された前記ワークを抑え込むためのパッドと、
少なくとも一枚の位置調整用プレートと、を備え、
前記リテーナには、
前記位置調整用プレートと接触する第一のプレート接触面が形成されており、
前記リテーナ保持用貫通穴には、
前記第一のプレート接触面と対向する内壁に、前記位置調整用プレートと接触する第二のプレート接触面が形成されており、
前記リテーナは、
前記第一のプレート接触面が前記位置調整用プレートを介して前記第二のプレート接触面と当接した状態で、前記パッドに固定されており、かつ当該リテーナの側面から張り出すように当該リテーナと一体的に形成されたプレート部を有し、
前記パッドは、
前記リテーナ保持用貫通穴につながる、前記プレート部を収容するためのプレート部収容溝を有し、
前記プレート部には、
ノックピンが挿入されるノックピン用貫通穴が形成されており、
前記プレート部収容溝の内壁には、
前記位置調整用プレートを介して前記第一のプレート接触面と前記第二のプレート接触面とが当接した状態で前記ノックピン用貫通穴に対応する位置に、前記プレート部のノックピン用貫通穴に挿入された前記ノックピンが挿入されるノックピン用挿入穴が形成されている
ことを特徴とするパンチユニット保持機構。
【請求項2】
請求項1に記載のパンチユニット保持機構であって、
前記第一のプレート接触面は、
前記リテーナの上面または下面に形成されており、
前記第二のプレート接触面は、
前記リテーナ保持用貫通穴の上面または下面に形成されており、
前記リテーナは、
前記位置調整用プレートによって前記パッドに対する上下方向の位置が調整される
ことを特徴とするパンチユニット保持機構。
【請求項3】
請求項1に記載のパンチユニット保持機構であって、
前記第一のプレート接触面は、
前記リテーナの右側面あるいは左側面に形成されており、
前記第二のプレート接触面は、
前記リテーナ保持用貫通穴の右側または左側の内壁に形成されており、
前記リテーナは、
前記位置調整用プレートによって前記パッドに対する左右方向の位置が調整される
ことを特徴とするパンチユニット保持機構。
【請求項4】
パンチと、前記パンチとともに往復移動するスライドと、前記パンチおよび前記スライドをスライド可能に収容するケースと、を有し、前記ケースの一方の端面に形成された開口から前記スライドが前記パンチの軸心方向に沿って前記ケース内に押し込まれることにより、前記ケース内に収容された前記パンチの刃部が、前記ケースの他方の端面から突き出してワークを打ち抜くパンチユニットと、
前記ワークを挟んで前記パンチの刃部と対向する位置に配置されたダイスと、
前記スライドと接触して当該スライドと摺動しながら下降することにより、当該スライドを前記ケース内に押し込むドライバと、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のパンチユニット保持機構と、を備える
ことを特徴とするパンチ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパンチ加工装置であって、
前記パンチは、
前記ワークと対向する先端面に一体的に形成され、当該先端面の周縁の径よりも小さな直径の円を底面とする錐状の突起部を備え、当該先端面の周縁がアール加工されている
ことを特徴とするパンチ加工装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のパンチ加工装置であって、
前記パンチユニットは、
前記パンチおよび前記スライドが一体的に形成されている
ことを特徴とするパンチ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースの一方の端面に形成された開口からスライドをケース内に押し込むことにより、ケース内に収容されたパンチをケースの他方の端面から突き出すように構成されたパンチユニットを保持するパンチユニット保持機構、およびこのパンチユニット保持機構が採用されたパンチユニットを用いて薄板金属等のワークにパンチ加工を施すパンチ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケースの一方の端面に形成された開口からスライドをケース内に押し込むことにより、ケース内に収容されたパンチをケースの他方の端面から突き出すように構成されたパンチユニットを用いて薄板金属等のワークにパンチ加工を施すパンチ加工装置が知られている。
【0003】
図7(A)および
図7(B)は、パンチユニット9を用いた従来のパンチ加工装置8の動作原理を説明するための図(断面図)である。ここで、
図7(A)は、上死点におけるパンチ加工装置8の各構成要素の配置関係を示しており、
図7(B)は、下死点におけるパンチ加工装置8の各構成要素の配置関係を示している。
【0004】
図示するように、従来のパンチ加工装置8は、パンチユニット9と、パンチユニット保持機構であるパッド83と、薄板金属等のワーク82を介してパンチユニット9と対向する位置に設けられたダイス84と、図示していない上型の昇降に連動して上下方向Yに移動するドライバ85と、を備えて構成される。
【0005】
パンチユニット9は、パンチ90と、コイルバネ91と、スライド92と、ケース93と、ストッパボルト94と、を備えている。
【0006】
パンチ90は、円柱状のシャフト901と、シャフト901の先端部に形成された刃部902と、シャフト901の後端部に形成されたフランジ903と、を備えている。
【0007】
コイルバネ91は、その内側にパンチ90のシャフト901が挿入されており、一方の端部910がパンチ90のフランジ903に当接するとともに、他方の端部911がケース93の後述のパンチ入出力部931の内壁935に当接している。
【0008】
スライド92の一方の端面側には、パンチ90のフランジ903を収容する収容部920が形成され、他方の端面側には、ドライバ85との摺動面921が形成されている。摺動面921は、斜め上側を向くように、軸心Oに対して傾斜している。また、スライド92の側面にはストッパボルト94用のネジ穴(不図示)が形成されており、このネジ穴にストッパボルト94がネジ止めされている。
【0009】
ケース93は、パンチ90、コイルバネ91、およびスライド92を収容するための円筒状部材であり、一方の端面側に形成された開口部930と、他方の端面側に形成されたパンチ入出力部931と、軸心Oに沿って側面に形成された長穴933と、を備えている。パンチ入出力部931には、内壁935と外壁936とを軸心O方向に貫く貫通穴932が形成されており、この貫通穴932には、コイルバネ91内に挿入されたパンチ90の刃部902が内壁935側から挿入されている。また、開口部930からは、パンチ90のフランジ903を収容部920に収容したスライド92の摺動面921が露出している。また、長穴933内には、スライド92にネジ止めされたストッパボルト94の頭部が配置されており、これにより、ケース93に対するスライド92の相対的な移動範囲が規定される。また、ケース93の内周面には、スライド92との摺動面934が形成されている。
【0010】
パッド83は、図示していない型に固定され、パンチユニット9を保持するとともに、下型81上に配置されたワーク82を抑え込む。パッド83には、表面(ワーク82との対向面)831と裏面832とを貫く、パンチユニット9保持用の挿入穴830が形成されている。ここで、パンチユニット9は、この挿入穴830内に収容されており、パンチ入出力部931の外壁936(ケース93の先端面)が表面831より奥まった位置に配置され、かつ、スライド92の摺動面921が裏面832より突出した位置に配置されている。そして、六角穴付きボルト95により、パッド83に固定されている。
【0011】
下型81には、パッド83に保持されたパンチユニット9と共通の軸心Oを有し、ワーク811の対向面811において開口する貫通穴810が形成されている。この貫通穴810の、ワーク82との対向面811側の開口部には、ダイス84が装着されている。ダイス84は、パンチ90の刃部902と連携してワーク82を打ち抜き、この際に、パンチ90の刃部902を収容して、ワーク82の打ち抜き片を貫通穴810へ排出する。
【0012】
ドライバ85は、スライド92の摺動面921との摺動面851を備えている。この摺動面851は、ドライバ85の下降中、スライド92の摺動面921と摺動しながら、スライド92をケース93内に押し込むことが可能な角度に傾斜している。
【0013】
ここで、
図7(A)に示すように、上死点において、ドライバ85の摺動面851は、スライド92の摺動面921と接触していない。したがって、上死点において、パンチ90およびスライド92は、コイルバネ91によりケース93の開口部930側に押し出されてホームポジションに位置し、パンチ90の刃部902は、パンチ入出力部931の外壁936より内側に引っ込んでいる。
【0014】
この状態で、図示していない上型が下降すると、これに伴いドライバ85も下降して、ドライバ85の摺動面851がスライド92の摺動面921と接触する。その後、ドライバ85は、摺動面851をスライド92の摺動面921と摺動させながら下降し、コイルバネ91を圧縮しながらスライド92をケース93の内部に押し込む。これにより、パンチ90の刃部902が、ワーク82に向かってパンチ入出力部931の外壁936から突き出す。その後、
図7(B)に示すように、ドライバ85が下死点まで下降すると、パンチ90の刃部902がワーク82を貫いてダイス84に収容される。これにより、ワーク82にパンチ加工が施される。
【0015】
つぎに、
図7(B)に示す下死点から、図示していない上型が上昇すると、これに伴いドライバ85は、摺動面851をスライド92の摺動面921と摺動させながら上昇する。これにより、ドライバ85によるケース93の内部へのスライド92の押し込み量が減少し、その結果、コイルバネ91の復元力により、パンチ90およびスライド92がケース93の開口部930側に押し出されてホームポジションに復帰し、パンチ90の刃部902がケース93の内側へ引っ込む。
【0016】
なお、特許文献1には、以上のような構成のパンチ加工装置8のパンチ90として、通常のパンチの代わりに突破りパンチを用いたものが開示されている。ここで、突破りパンチとは、刃部の直径より小さな直径の円錐状の突起部が刃部の先端面に一体的に形成され、かつ、刃部の先端面の周縁にアールが形成されたパンチである。
【0017】
通常のパンチを用いたパンチ加工では、パンチ90の刃部902の刃先と、ワーク82を介してパンチ90と対向する位置に配置されたダイス84の刃先とをそれぞれ起点として、ワーク82の表裏両面からクラックが発生し、これらのクラックが繋がることでワーク82が打ち抜かれる。このため、ワーク82の表裏のクラックを適正に繋げるためにパンチ90とダイス84とのクリアランスを非常に小さくする(0.03mm〜0.05mm程度)必要があった。
【0018】
これに対して、突破りパンチでは、刃部の先端面の周縁をアール形状にすることにより、ワーク82には、突破りパンチ側からのクラックが発生せず、ダイス84側のみにクラックが発生する。その後、このクラックがワーク82の突破りパンチ側に達するまで、突破りパンチがワーク82をダイス84側に引っ張ることにより、ワーク84が打ち抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2004/096464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の突破りパンチによるパンチ加工は、ダイス84の刃先のみに依存するため、通常のパンチによるパンチ加工とは異なり、ワーク82の表裏に発生するクラックの繋がりを調整する必要がない。このため、突破りパンチとダイス84との間には比較的大きなクリアランス(0.4mm〜1.5mm程度)を取ることが可能となり、突破りパンチのある程度の偏心(0.2mm程度まで)を許容できる。
【0021】
しかしながら、突破りパンチを用いた場合でも、許容範囲を超える偏心がある場合には、通常のパンチを用いた場合と同様に、パッド83に設けたパンチユニット9保持用の挿入穴830を埋めて、適切な位置に挿入穴830を開け直す必要がある。この作業を行うためには、図示していない型からパッド83を取り外さなければならず、作業負担が大きい。特に、車体等のパンチ加工に用いられるワーク用のパッドは大型であり、このような大型のパッドを型から取り外して再度加工するには、非常に大きな労力を要する。
【0022】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、型からパッドを取り外すことなくパンチの位置調整が可能なパンチユニット保持機構およびパンチ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明では、パンチユニットをリテーナに保持させた上で、このリテーナをパッドに保持させるとともに、パッドにおけるリテーナの保持位置を位置調整用プレートにより調整可能とした。すなわち、パッドにリテーナの外形よりも大きめのリテーナ保持用の貫通穴を設け、この貫通穴にリテーナを挿入し、所望の厚さの位置調整用プレートを挟んでリテーナをこの貫通穴の内壁に当接させる。これにより、パッドに対するリテーナの位置出しを行ってから、リテーナをパッドに固定する。
【0024】
例えば、本発明のパンチユニット保持機構は、ケースの一方の端面に形成された開口からスライドを前記ケース内に押し込むことにより、前記ケース内に収容されたパンチの刃部を前記ケースの他方の端面から突き出してワークを打ち抜くように構成されたパンチユニットを保持するパンチユニット保持機構であって、
前記パンチユニットが挿入されるパンチユニット保持用貫通穴を有するリテーナと、
前記リテーナが所定の隙間を介して挿入されるリテーナ保持用貫通穴を有し、型上に配置された前記ワークを抑え込むためのパッドと、
少なくとも一枚の位置調整用プレートと、を備え、
前記リテーナの側面には、
前記位置調整用プレートと接触する第一のプレート接触面が形成されており、
前記リテーナ保持用貫通穴には、
前記第一のプレート接触面と対向する内壁に、前記位置調整用プレートと接触する第二のプレート接触面が形成されており、
前記リテーナは、
前記第一のプレート接触面が前記位置調整用プレートを介して前記第二のプレート接触面と当接した状態で、前記パッドに固定されて
おり、かつ当該リテーナの側面から張り出すように当該リテーナと一体的に形成されたプレート部を有し、
前記パッドは、
前記リテーナ保持用貫通穴につながる、前記プレート部を収容するためのプレート部収容溝を有し、
前記プレート部には、
ノックピンが挿入されるノックピン用貫通穴が形成されており、
前記プレート部収容溝の内壁には、
前記位置調整用プレートを介して前記第一のプレート接触面と前記第二のプレート接触面とが当接した状態で前記ノックピン用貫通穴に対応する位置に、前記プレート部のノックピン用貫通穴に挿入された前記ノックピンが挿入されるノックピン用挿入穴が形成されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パッドに、リテーナの外形よりも大きめのリテーナ保持用の貫通穴を設け、この貫通穴に、パンチを保持したリテーナを挿入し、位置調整用プレートを挟んでリテーナをこの貫通穴の内壁に当接させることにより、パッドに対するリテーナの位置出しを行うので、位置調整プレートの板厚を変更することにより、パッドに対するリテーナの位置を位置調整用プレートの板厚方向に調整することができる。このため、パッドを型から取り外すことなくパンチの位置調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るパンチ加工装置1の断面図である。
【
図2】
図2は、突破りパンチユニット2の部品展開図である。
【
図3】
図3(A)は、リテーナ4の正面図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示すリテーナ4のA−A断面図であり、
図3(C)は、リテーナ4の背面図である。
【
図4】
図4(A)は、シムプレート6の正面図であり、
図4(B)は、
図4(A)に示すシムプレート6のC−C断面図である。
【
図5】
図5(A)は、パッド5のリテーナ取り付け部分の拡大図であり、
図5(B)は、
図5(A)のB−B断面図である。
【
図6】
図6(A)および
図6(B)は、パンチ加工装置1の動作原理を説明するための図(断面図)である。
【
図7】
図7(A)および
図7(B)は、パンチユニット9を用いた従来のパンチ加工装置8の動作原理を説明するための図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係るパンチ加工装置1の断面図である。
【0029】
図示するように、本実施の形態に係るパンチ加工装置1は、突破りパンチユニット2と、下型31上に配置された薄板金属等のワーク32を介して突破りパンチユニット2と対向する位置に設けられたダイス33と、図示していない上型の昇降に連動して上下方向Yに移動するドライバ34と、パンチユニット保持機構を構成するリテーナ4、パッド5およびシムプレート6と、を備えている。
【0030】
図2は、突破りパンチユニット2の部品展開図である。
【0031】
突破りパンチユニット2は、ケース23の一方の端面側に形成された開口部230からスライド22がドライバ34によってケース23内に押し込まれことにより、ケース23内に収容された突破りパンチ20の刃部202をケース23の他方の端面(後述のパンチ入出力部231の外壁235)側から突き出す。図示するように、この突破りパンチユニット2は、突破りパンチ20と、コイルバネ21と、スライド22と、ケース23と、ストッパボルト24と、を備えている。
【0032】
突破りパンチ20は、円柱状のシャフト201と、シャフト201の先端部に形成された刃部202と、シャフト201の後端部に形成されたフランジ203と、を有する。
【0033】
刃部202は、外周の縁部がアール加工された先端面204と、先端面204の中央部に一体的に形成され、先端面204の面積よりも底面積が小さな円錐等の錐状の突起部205と、を有する。
【0034】
コイルバネ21は、その内側に突破りパンチ20のシャフト201が挿入されており、一方の端部210がスライド22の後述の収容部220に収容されるとともに、他方の端部211が後述のパンチ入出力部231の内壁234に当接している。これにより、ケース23内へのスライド22の押し込みによって、コイルバネ21は、突破りパンチ20のフランジ203を介してスライド22の収容部220の内壁223とケース23のパンチ入出力部231の内壁234との間で圧縮され、その復元力で、スライド22を、ホームポジション(
図6(A)参照)に押し戻す方向に付勢する。
【0035】
スライド22の他方の端面226側には、突破りパンチ20のフランジ203およびコイルバネ21の一方の端部210を収容する収容部220が形成され、一方の端面225側には、ドライバ34との摺動面221が形成されている。摺動面221は、斜め上側を向くように、軸心Oに対して傾斜している。また、スライド22の外周面にはストッパボルト24用のネジ穴224が形成されており、このネジ穴224にストッパボルト24がネジ止めされる。
【0036】
ケース23は、突破りパンチ20、コイルバネ21およびスライド22を収容するための円筒状部材であり、一方の端面241側に形成された開口部230と、他方の端面242側に形成されたパンチ入出力部231と、軸心Oに沿って外周面に形成された貫通長穴232と、内周面に形成されたスライド22との摺動面233と、を備えている。
【0037】
パンチ入出力部231には、内壁(内側端面)234および外壁(外側端面)235を軸心O方向に貫く貫通穴236が形成されており、この貫通穴236には、コイルバネ21内に挿入された突破りパンチ20の刃部202が内壁234側から挿入されている。また、パンチ入出力部231の外周面には、突破りパンチユニット2をリテーナ4に固定するために用いる円環状のフランジ237が形成されている。このフランジ237の外径は、突破りパンチユニット2を保持するためにリテーナ4に形成された後述の貫通穴40の内径よりも大きく設計されている。
【0038】
開口部230からは、コイルバネ21内に挿入された突破りパンチ20を収容したスライド22の摺動面221が露出している。また、貫通長穴232内には、スライド22にネジ止めされたストッパボルト24の頭部が配置されており、これにより、ケース23に対するスライド22の相対的な移動範囲が規定される。
【0039】
図3(A)は、リテーナ4の正面図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示すリテーナ4のA−A断面図であり、
図3(C)は、リテーナ4の背面図である。
【0040】
リテーナ4は、突破りパンチユニット2を保持するブロック部材である。図示するように、リテーナ4は、角柱状のリテーナ本体41と、リテーナ本体41の少なくとも一つの側面から突き出したプレート部47と、を有している。
【0041】
リテーナ本体41には、表面(ワーク32との対向面)403および裏面404を軸心O方向に貫く、突破りパンチユニット2保持用の貫通穴40が形成されている。この貫通穴40の内径は、ケース23のフランジ237の外径よりも小さく設計されており、突破りパンチユニット2は、ケース23のフランジ237がリテーナ本体41の表面403に当接するまで、スライド22の摺動面221のほうから、この貫通穴40内にリテーナ本体41の表面403側から裏面404側へ挿入される。これにより、ケース23のパンチ入出力部231がリテーナ本体41の表面403よりダイス33側に突出した位置に配置され、かつ、スライド22の摺動面221がリテーナ本体41の裏面404から突出した位置に配置される。
【0042】
また、リテーナ本体41の表面403には、突破りパンチユニット2固定用の六角穴付きボルト25をネジ止めするためのネジ穴43が形成されている。さらに、このネジ穴43の外周(座面)と、貫通穴40に挿入された突破りパンチユニット2のケース23に形成されたフランジ237の表面238とが略同じ高さになるように、リテーナ本体4の表面403には、貫通穴40とネジ穴43との間に段差面44が形成されている。ワッシャ251が取り付けられた六角穴付きボルト25をネジ穴43に螺合させることにより、貫通穴40に挿入された突破りパンチユニット2のケース23に形成されたフランジ237がワッシャ251でリテーナ本体41の表面403に押さえ付けられ、これにより、突破りパンチユニット2がリテーナ4に固定される。
【0043】
また、リテーナ本体41の下側の側面(以下、下面)には、シムプレート6と接触する第一のプレート接触面45が形成されている。第一のプレート接触面45には、シムプレート6をリテーナ4にネジ止めするための皿ネジ60用のネジ穴46が形成されている。
【0044】
プレート部47は、リテーナ本体41の例えば下面から下方向に張り出すように、リテーナ本体41の表面403側端部(第一のプレート接触面45より表面403側)に形成されている。このプレート部47は、パッド5に対するリテーナ4の位置決め、およびパッド5に対するリテーナ4の固定のために用いられる。プレート部47には、ノックピン61挿入用の貫通穴48と、リテーナ4を図示していない六角穴付きボルトでパッド5にネジ止めするための座繰り穴49とが、それぞれ軸心Oに沿って少なくとも一つ形成されている。
【0045】
図4(A)は、シムプレート6の正面図であり、
図4(B)は、
図4(A)に示すシムプレート6のC−C断面図である。
【0046】
シムプレート6は、ダイス33に対する突破りパンチ20の刃部202の位置を調整するために用いられる板状部材であり、例えば、その板厚は、例えば、ダイス33と突破りパンチ20の刃部202との上下方向Yの位置差等に応じて調整される。シムプレート6は、リテーナ4の第一のプレート接触面45上に配置される。図示するように、シムプレート6には、リテーナ4の第一のプレート接触面45のネジ穴46に対応する位置に皿ネジ60用の皿座繰り穴62が形成されている。この皿座繰り穴62に挿入された皿ネジ60をネジ穴46に螺合することにより、シムプレート6は、リテーナ4の第一のプレート接触面45上に固定され、リテーナ4とともにパッド5の貫通穴50内に収容される。
【0047】
図5(A)は、パッド5のリテーナ取り付け部分の拡大正面図であり、
図5(B)は、
図5(A)のB−B断面図である。
【0048】
パッド5は、図示していない型に固定され、突破りパンチユニット2およびリテーナ4を保持するとともに、下型31上に配置されたワーク32を抑え込む。図示するように、パッド5には、表面(ワーク32との対向面)51および裏面52を貫く、リテーナ4保持用の貫通穴50が形成されている。リテーナ4は、この貫通穴50内に収容され、座繰り穴49に挿入された不図示の六角穴付きボルトと後述のネジ穴55との締結によりパッド5に固定される。この状態において、リテーナ4が保持している突破りパンチユニット2は、パンチ入出力部231がパッド5の表面51よりも貫通穴50内側に引っ込み、かつ、スライド22の摺動面221がパッド5の裏面52より貫通穴50外側に突き出す位置に配置される。
【0049】
貫通穴50は、上下方向Yにおいてリテーナ4のリテーナ本体41の外形よりも大きな角穴状に形成されており、その内部に、シムプレート6付きのリテーナ本体41が、上下方向Yに隙間を介して収容される。この貫通穴50の下面には、リテーナ本体41に取り付けられたシムプレート6と接触する第二のプレート接触面53が形成されている。リテーナ4は、自身の第一のプレート接触面45に取り付けられたシムプレート6を第二のプレート接触面53に接触させた状態で、この貫通穴50内に配置される。貫通穴50内におけるリテーナ4の上下方向Yの位置は、シムプレート6の板厚を変更することにより調節可能である。
【0050】
また、貫通穴50の下面には、リテーナ4のプレート部47を収容するためのプレート部収容溝54が、第二のプレート接触面53より表面51側に形成されている。このプレート部収容溝54の下面57と第二のプレート接触面53との段差面58には、シムプレート6が第二のプレート接触面53に接触するようにリテーナ4が貫通穴50内に収容された場合に、リテーナ4のプレート部47の貫通穴48と共通の軸心を有するノックピン61用の挿入穴56が、少なくとも一つ形成される。貫通穴50内のリテーナ4のプレート部47の貫通穴48を介して、第二のプレート接触面53の挿入穴56にノックピン61を挿入することにより、リテーナ4は、この貫通穴50に対して位置決めされる。
【0051】
また、この段差面58には、シムプレート6が第二のプレート接触面53に接触するようにリテーナ4が貫通穴50内に配置された場合に、リテーナ4のプレート部47の座繰り穴49と共通の軸心を有する、図示していない六角穴付きボルト用のネジ穴55が、少なくとも一つ形成される。ノックピン61によりリテーナ4を位置決めした後、プレート部47の座繰り穴49に挿入された図示していない六角穴付きボルトをパッド5の段差面58のネジ穴55に螺合させることにより、リテーナ4は、パッド5に固定される。
【0052】
下型31には、リテーナ4を介してパッド5に保持された突破りパンチユニット2と共通の軸心Oを有し、ワーク32との対向面311において開口する貫通穴310が形成されている。この貫通穴310の、ワーク32との対向面311側の開口部には、ダイス33が装着されている。ダイス33は、突破りパンチ20の刃部202と連携してワーク32を打ち抜き、この際に、突破りパンチ20の刃部202を収容してワーク32の打ち抜き片を貫通穴310へ排出する。
【0053】
ドライバ34は、リテーナ4を介してパッド5に保持された突破りパンチユニット2のスライド22の摺動面221に対する摺動面341を備えている。この摺動面341は、スライド22の摺動面221と略平行となるように形成されており、ドライバ34の下降中、スライド22の摺動面221と接触する。そして、ドライバ34の下降中、ドライバ34は、摺動面341をスライド22の摺動面221と摺動させながらスライド22をケース23内に押し込む。
【0054】
つぎに、上記構成のパンチ加工装置1の動作を説明する。
【0055】
図6(A)および
図6(B)は、パンチ加工装置1の動作原理を説明するための図(断面図)である。ここで、
図6(A)は、上死点におけるパンチ加工装置1の各構成要素の配置関係を示しており、
図6(B)は、下死点におけるパンチ加工装置1の各構成要素の配置関係を示している。
【0056】
図6(A)に示すように、上死点において、ドライバ34の摺動面341は、スライド22の摺動面221と接触しておらず、その結果、コイルバネ21により、突破りパンチ20およびスライド22は、ケース23の開口部230からケース外側に押し出されてホームポジションに位置しており、突破りパンチ20の刃部202は、パンチ入出力部231の外壁235よりケース23の内側に引っ込んでいる。
【0057】
この状態で、図示していない上型が下降すると、これに伴いドライバ34も下降する。そして、ドライバ34の摺動面341がスライド22の摺動面221と接触し、ドライバ34は、ドライバ34の摺動面341をスライド22の摺動面221と摺動させながら下降する。これにより、スライド22が、コイルバネ21を圧縮しながらケース23の内部に押し込まれ、突破りパンチ20の刃部202がパンチ入出力部231の外壁235から突き出す。
【0058】
その後、
図6(B)に示すように、ドライバ34が下死点まで下降すると、突破りパンチ20の刃部202がワーク32を貫いてダイス33に収容される。これにより、ワーク32にパンチ加工が施される。
【0059】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0060】
本実施の形態では、突破りパンチユニット2をリテーナ4に保持させた上で、このリテーナ4をパッド5に保持させるとともに、パッド5におけるリテーナ4の保持位置をシムプレート6により調整可能としている。すなわち、リテーナ4に突破りパンチユニット2保持用の貫通穴40を設け、この貫通穴40に突破りパンチユニット2を挿入して固定するとともに、パッド5にリテーナ4保持用の貫通穴50を、少なくとも上下方向Yにおいてリテーナ4の外形よりも大きく形成して、この貫通穴50内にリテーナ4を挿入する。ここで、所望の厚さのシムプレート6を、この貫通穴50の内壁(第二のプレート接触面53)とリテーナ4の下面(第一のプレート接触面45)との間に挟んでいる。これにより、パッド5に対するリテーナ4の位置を調整してから、リテーナ4をパッド5に固定している。したがって、本実施の形態によれば、シムプレート6の板厚を変更することにより、パッド5に対するリテーナ4の保持位置をシムプレート6の板厚方向に調整することができる。このため、突破りパンチユニット2を保持するリテーナ4に所望の板厚のシムプレート6を取り付け、このリテーナ4を、型に固定されたパッド5の貫通穴50に配置してパッド5に固定することにより、パッド5を型から取り外すことなく突破りパンチ20の位置調整が可能となる。
【0061】
また、本実施の形態では、リテーナ4にプレート部47を一体的に形成するとともに、このプレート部47を収容するためのプレート部収容溝54をパッド5の貫通穴50に形成している。ここで、プレート部47には、ノックピン61用の貫通穴48が形成されており、プレート部収容溝54の下面57と第二のプレート接触面53との段差面58には、シムプレート6を介してパッド5の第二のプレート接触面53とリテーナ4の第一のプレート接触面45とが当接した状態で、リテーナ4のプレート部47の貫通穴48と共通の軸心を有するノックピン61用の挿入穴56が形成される。そして、リテーナ4の第一のプレート接触面45が、シムプレート6を介して第二のプレート接触面53と当接した状態で、ノックピン61が、貫通穴48および挿入穴56に挿入される。このようにすることより、パッド5に対するリテーナ4の位置決めをより精密に行うことができる。
【0062】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0063】
例えば、上記の実施の形態では、リテーナ4の下面に第一のプレート接触面45を形成するとともに、パッド5の貫通穴50の下面に第二のプレート接触面53を形成し、第一のプレート接触面45と第二のプレート接触面53との間にシムプレート6を介在させることにより、パッド5に対するリテーナ4の上下方向Yの保持位置を調整している。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、リテーナ4の上側の側面(上面)に第一のプレート接触面を形成するとともに、パッド5の貫通穴50の上面に第二のプレート接触面を形成し、第一のプレート接触面と第二のプレート接触面との間に、リテーナ4とパッド5の貫通穴50の内壁との隙間を埋めるためのシムプレート6を介在させることにより、パッド5に対するリテーナ4の上下方向Yの保持位置を調整するようにしてもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態では、リテーナ4のパッド5に対する上下方向Yの保持位置を調整可能とているが、上下方向Yの保持位置調整に代えて、あるいは、上下方向Yの保持位置調整とともに、リテーナ4のパッド5に対する左右方向の保持位置を調整できるようにしてもよい。すなわち、リテーナ4の右側面401および左側面402の少なくとも一方に第一のプレート接触面を形成するとともに、この第一のプレート接触面と対面するパッド5の貫通穴50の内壁面(右側面501あるいは左側面502)に第二のプレート接触面を形成し、第一のプレート接触面と第二のプレート接触面との間にシムプレート6を介在させることにより、リテーナ4のパッド5に対する左右方向の保持位置を調整できるようにしてもよい。
【0065】
また、上記の実施の形態において、突破りパンチ20の刃部202をケース23内に引き込む方向に突破りパンチ20およびスライド22を付勢する付勢手段として、コイルバネ21を用いているが、ゴム等の弾性体を付勢手段として用いてもよい。
【0066】
また、上記の実施の形態において、突破りパンチユニット2の突破りパンチ20およびスライド22は一体的に形成されていてもよい。
【0067】
また、上記の実施の形態では、突破りパンチ20を用いているが、突破りパンチ20の代わりに通常のパンチ90(
図7参照)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1:パンチ加工装置、 2:突破りパンチユニット、 4:リテーナ、 5:パッド、 6:シムプレート、 20:突破りパンチ、 21:コイルバネ、 22:スライド、 23:ケース、 24:ストッパボルト、 25:六角穴付きボルト、 31:下型、 32:ワーク、 33:ダイス、 34:ドライバ、 40:突破りパンチユニット挿入用の貫通穴、 41:リテーナ本体、 43:ネジ穴、 44:段差面、 45:第一のプレート接触面、 46:ネジ穴、 47:プレート部、 48:ノックピン挿入用の貫通穴、 49:座繰り穴、 50:リテーナ保持用の貫通穴、 51:パッドの表面、 52:パッドの裏面、 53:第二のプレート接触面、 54:プレート部収容溝、 55:ネジ穴、 56:ノックピン用の挿入穴、 57:プレート部収容溝の下面、 58:段差面、 60:皿ネジ、 61:ノックピン、 62:皿座繰り穴、 201:シャフト、 202:刃部、 203:フランジ、 204:刃部の先端面、 205:刃部の突起部、 210,211:コイルバネの端部、 220:収容部、 221:摺動面、 223:収容部の内壁、 224:ストッパボルト用のネジ穴、225,226:スライドの端面、 230:ケースの開口部、 231:パンチ入出力部、 232:長穴、 233:摺動面、 234:パンチ入出力部の内壁、 235:パンチ入出力部の外壁、 236:パンチ入出力部の貫通穴、 237:フランジ、 241,242:ケースの端面、 251:ワッシャ、 310:下型の貫通穴、 311:下型の表面、 351:摺動面、 401:リテーナの右側面、 402:リテーナの左側面、 403:リテーナの表面、 404:リテーナの裏面、 501:リテーナ用の貫通穴の右側面、 502:リテーナ用の貫通穴の左側面