(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パンチと、前記パンチとともに往復移動するスライドと、前記パンチおよび前記スライドをスライド可能に収容するケースと、を有し、前記ケースの一方の端面に形成された開口から前記スライドが前記パンチの軸心方向に沿って前記ケース内に押し込まれることにより、前記ケース内に収容された前記パンチの刃部が、前記ケースの他方の端面から突き出してワークを打ち抜くパンチユニットと、
前記ワークを挟んで前記パンチの刃部と対向する位置に配置されたダイスと、
前記パンチの突き出し方向と交わる方向に沿って下降しながら、当該スライドを前記ケース内に押し込むドライバと、
請求項1または2に記載のパンチ強制戻し機構と、を備える
ことを特徴とするパンチ加工装置。
【背景技術】
【0002】
従来、ケースの一方の端面に形成された開口からスライドをケース内に押し込むことにより、ケース内に収容されたパンチがケースの他方の端面から突き出すように構成されたパンチユニットを用いて薄板金属等のワークにパンチ加工を施すパンチ加工装置が知られている。
【0003】
図8(A)および
図8(B)は、パンチユニット9を用いた従来のパンチ加工装置8の動作原理を説明するための図(断面図)である。ここで、
図8(A)は、上死点におけるパンチ加工装置8の各構成要素の配置関係を示しており、
図8(B)は、下死点におけるパンチ加工装置8の各構成要素の配置関係を示している。
【0004】
図示するように、従来のパンチ加工装置8は、パンチユニット9と、下型81上に配置された薄板金属等のワーク82を抑え込むとともにパンチユニット9を保持するパッド83と、ワーク82を介してパンチユニット9と対向する位置に設けられたダイス84と、図示していない上型の昇降に連動して上下方向に移動するドライバ85と、を備えて構成される。
【0005】
パンチユニット9は、パンチ90と、コイルバネ91と、スライド92と、ケース93と、ストッパボルト94と、を備えている。
【0006】
パンチ90は、円柱状のシャフト901と、シャフト901の先端部に形成された刃部902と、シャフト901の後端部に形成されたフランジ903と、を備えている。
【0007】
コイルバネ91は、その内側にパンチ90のシャフト901が挿入されており、一方の端部910がパンチ90のフランジ903に当接するとともに、他方の端部911がケース93の後述のパンチ入出力部931の内壁935に当接している。
【0008】
スライド92の一方の端面側には、パンチ90のフランジ903を収容する収容部920が形成され、他方の端面側には、ドライバ85との摺動面921が形成されている。摺動面921は、斜め上側を向くように、軸心Oに対して傾斜している。また、スライド92の側面にはストッパボルト94用のネジ穴(不図示)が形成されており、このネジ穴にストッパボルト94がネジ止めされている。
【0009】
ケース93は、パンチ90、コイルバネ91、およびスライド92を収容するための円筒部材であり、一方の端面側に形成された開口部930と、他方の端面側に形成されたパンチ入出力部931と、軸心Oに沿って側面に形成された長穴933と、を備えている。パンチ入出力部931には、内壁935と外壁936とを軸心O方向に貫く貫通穴932が形成されており、この貫通穴932には、コイルバネ91内に挿入されたパンチ90の刃部902が内壁935側から挿入されている。また、開口部930からは、パンチ90のフランジ903を収容部920に収容したスライド92の摺動面921が露出している。また、長穴933内には、スライド92にネジ止めされたストッパボルト94の頭部が配置されており、これにより、ケース93に対するスライド92の相対的な移動範囲が規定される。また、ケース93の内周面には、スライド92との摺動面934が形成されている。
【0010】
パッド83には、表面(ワーク82との対向面)831と裏面832とを貫く、パンチユニット9保持用の挿入穴830が形成されている。ここで、パンチユニット9は、この挿入穴830内に収容されており、パンチ入出力部931の外壁936(ケース93の先端面)が表面831より奥まった位置に配置され、かつ、スライド92の摺動面921が裏面832より突出した位置に配置されている。そして、六角穴付きボルト95により、パッド83に固定されている。
【0011】
下型81には、パッド83に保持されたパンチユニット9と共通の軸心Oを有し、ワーク811の対向面811において開口する貫通穴810が形成されている。この貫通穴810の、ワーク82との対向面811側の開口部には、ダイス84が装着されている。ダイス84は、パンチ90の刃部902と連携してワーク82を打ち抜き、この際に、パンチ90の刃部902を収容して、ワーク82の打ち抜き片を貫通穴810へ排出する。
【0012】
ドライバ85は、スライド92の摺動面921との摺動面851を備えている。この摺動面851は、ドライバ85の下降中、スライド92の摺動面921と摺動しながら、スライド92をケース93内に押し込むことが可能な角度に傾斜している。
【0013】
ここで、
図8(A)に示すように、上死点において、ドライバ85の摺動面851は、スライド92の摺動面921に接触しておらず、その結果、コイルバネ91により、パンチ90およびスライド92は、ケース93の開口部930側に押し出されてホームポジションに位置しており、パンチ90の刃部902は、パンチ入出力部931の外壁936より内側に引っ込んでいる。この状態で、図示していない上型が下降すると、これに伴いドライバ85も下降して、ドライバ85の摺動面851がスライド92の摺動面921に接触する。その後、ドライバ85は、摺動面851をスライド92の摺動面921と摺動させながら下降し、コイルバネ91を圧縮しながらスライド92をケース93の内部に押し込む。これにより、パンチ90の刃部902が、ワーク82に向かってパンチ入出力部931の外壁936から突き出す。その後、
図8(B)に示すように、ドライバ85が下死点まで下降すると、パンチ90の刃部902がワーク82を貫いてダイス84内に収容される。これにより、ワーク82にパンチ加工が施される。
【0014】
なお、特許文献1には、以上のような構成のパンチ加工装置8のパンチ90として、通常のパンチの代わりに突破りパンチを用いたものが開示されている。突破りパンチとは、刃部の直径より小さな直径の円錐状の突起部が刃部の先端面に一体的に形成されており、かつ、刃部の先端面の周縁にアールが形成されたパンチである。
【0015】
通常のパンチを用いたパンチ加工では、パンチ90の刃部902の刃先と、ワーク82を介してパンチ90と対向する位置に配置されたダイス84の刃先とをそれぞれ起点として、ワーク82の表裏両面からクラックが発生し、これらのクラックが繋がることでワーク82が打ち抜かれる。このため、ワーク82の表裏のクラックを適正に繋げるためにパンチ90とダイス84とのクリアランスを非常に小さくする(0.03mm〜0.05mm程度)必要があった。
【0016】
これに対して、突破りパンチでは、刃部の先端面の周縁をアール形状にすることにより、ワーク82には、突破りパンチ側からのクラックが発生せず、ダイス84側からのみにクラックが発生する。その後、このクラックがワーク82の突破りパンチ側に達するまで突破りパンチがワーク82をダイス84側に引っ張ることにより、ワーク82が打ち抜かれる。
【0017】
このように、突破りパンチのパンチ加工はダイス84の刃先のみに依存するため、通常のパンチのパンチ加工とは異なり、ワーク82の表裏のクラックの繋がりを調整する必要がない。このため、突破りパンチとダイス84との間には比較的大きなクリアランス(0.4mm〜1.5mm程度)を取ることが可能となり、突破りパンチの偏心(0.2mm程度まで)も許容できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
図8(B)に示す下死点から、図示していない上型が上昇すると、これに伴いドライバ85は、摺動面851をスライド92の摺動面921と摺動させながら上昇する。これにより、ドライバ85による、ケース93の内部へのスライド92の押し込み量が減少し、その結果、コイルバネ91の復元力により、パンチ90およびスライド92がケース93の開口部930側に押し出されてホームポジションに復帰し、パンチ90の刃部902がケース93の内側へ引っ込む。しかし、このとき、何らかの理由によりコイルバネ91が固着すると、パンチ90およびスライド92がホームポジションに復帰せずに、パンチ90の刃部902がワーク82を貫いたままとなり、パンチ90、ダイス84、下型81等を破損させる可能性がある。この問題は、パンチ90として、特許文献1に示す突破りパンチを用いた場合でも同様に起こり得る。
【0020】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パンチをより確実にワークから引き抜くことを可能とするパンチ強制戻し機構およびパンチ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明では、ドライバおよびスライドのそれぞれに掛合手段を設けた。そして、ドライバが上昇する際に、例えばパンチの刃先をケース内に引き込む方向にパンチおよびスライドを付勢するバネが機能せず、その結果、スライドがケースから押し出されないで、パンチがワークから引き抜かれる前にドライバがスライドから所定以上離れた場合に、少なくともパンチの刃先がワークから引き抜かれるまで、ドライバおよびスライドそれぞれの掛合手段が互いに掛合して、ドライバの上昇によりスライドがケースから引き出されるようにした。
【0022】
例えば、本発明のパンチ強制戻し機構は、ケースの一方の端面に形成された開口からスライドを前記ケース内に押し込むことにより、前記ケース内に収容されたパンチの刃部を前記ケースの他方の端面から突き出してワークを打ち抜くように構成されたパンチユニットのパンチ強制戻し機構であって、
前記パンチの刃部の突き出し方向に沿って当該パンチとともに前記ケース内を往復移動する前記スライドに設けられた第一の掛合手段と、
前記パンチの刃部の突き出し方向と交わる方向に沿って下降しながら前記スライドを前記ケース内に押し込むドライバに設けられた第二の掛合手段と、を備え、
前記第一の掛合手段および前記第二の掛合手段は、
前記パンチの刃部の突き出し方向と交わる方向に沿って前記ドライバが上昇する際に、前記パンチが前記ワークから引き抜かれる前に当該ドライバが前記スライドから所定以上離れた場合に、少なくとも前記パンチが前記ワークから引き抜かれるまで、互いに掛合して、前記ドライバの上昇により前記スライドを前記ケースの開口から引き出
し、
前記第一の掛合手段は、
頭部の表面に前記ドライバとの接触面を有し、軸部が一部露出した状態で前記スライドにネジ止めされたボルトを有し、
前記第二の掛合手段は、
前記パンチの刃部の突き出し方向と交わる方向に沿って前記ドライバが上昇する際に、前記パンチが前記ワークから引き抜かれる前に前記ボルトの接触面が前記ドライバから所定以上離れた場合に、少なくとも前記パンチが前記ワークから引き抜かれるまで、前記ボルトの頭部の裏面と接触して、前記スライドを前記ケースから引き抜く方向に移動させるプレートを有する。
【0023】
また、本発明のパンチ加工装置は、
パンチと、前記パンチとともに往復移動するスライドと、前記パンチおよび前記スライドをスライド可能に収容するケースと、を有し、前記ケースの一方の端面に形成された開口から前記スライドが前記ケース内に押し込まれることにより、前記ケース内に収容された前記パンチの刃部が、前記ケースの他方の端面から突き出してワークを打ち抜くパンチユニットと、
前記ワークを挟んで前記パンチの刃部と対向する位置に配置されたダイスと、
前記パンチの刃部の突き出し方向と交わる方向に下降しながら、当該スライドを前記ケース内に押し込むドライバと、
上述のパンチ強制戻し機構と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ドライバが下死点から上昇する際に、例えばパンチの刃先をケース内に引き込む方向にパンチおよびスライドを付勢するバネが機能しない場合でも、少なくともパンチの刃先がワークから引き抜かれるまで、第一および第二の掛合手段が互いに掛合して、ドライバの上昇により、パンチとともに往復移動するスライドがケースから強制的に引き出されるので、パンチをより確実にワークから引き抜くことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係るパンチ加工装置1の断面図である。
【0028】
図示するように、本実施の形態に係るパンチ加工装置1は、突破りパンチユニット2と、下型31上に配置された薄板金属等のワーク32を抑え込むとともに突破りパンチユニット2を保持するパッド33と、ワーク32を介して突破りパンチユニット2と対向する位置に設けられたダイス34と、図示していない上型の昇降に連動して上下方向に移動するドライバ35と、パンチ強制戻し機構を構成するプッシャーボルト4およびポジティブリターンプレート5と、を備えている。
【0029】
突破りパンチユニット2は、ケース23の一方の端面側に形成された開口部230からスライド22をケース23内に押し込むことにより、ケース23内に収容された突破りパンチ20の刃部202をケース23の他方の端面(後述のパンチ入出力部231の外壁235)側から突き出す。
【0030】
図2は、突破りパンチユニット2の部品展開図である。
【0031】
図示するように、突破りパンチユニット2は、突破りパンチ20と、コイルバネ21と、スライド22と、ケース23と、ストッパボルト24と、を備えている。
【0032】
突破りパンチ20は、円柱状のシャフト201と、シャフト201の先端部に形成された刃部202と、シャフト201の後端部に形成されたフランジ203と、を有する。
【0033】
刃部202は、外周の縁部がアール加工された先端面204と、先端面204の中央部に一体的に形成され、先端面204の面積よりも底面積が小さな円錐等の錐状の突起部205と、を有する。
【0034】
コイルバネ21は、その内側に突破りパンチ20のシャフト201が挿入されており、一方の端部210がスライド22の後述のバネ座221に当接するとともに、他方の端部211がケース23の後述のパンチ入出力部231の内壁234に当接している。これにより、ケース23内へのスライド22の押し込みによって、コイルバネ21は、スライド22のバネ座221とケース23のパンチ入出力部231の内壁234との間で圧縮され、その復元力で、スライド22を、ホームポジション(
図5(A)参照)に押し戻す方向に付勢する。
【0035】
スライド22の側面には、突破りパンチ20のフランジ203およびシャフト201の外形に合わせた収容溝220が形成されている。突破りパンチ20は、スライド22の側面からこの収容溝220内に収容されることにより、軸心O上に配置され、刃部202側をスライド22の一方の端面から突き出した状態で、スライド22に対する軸心O方向の相対的な移動がスライド22に拘束されるようにスライド22に連結される。なお、本実施の形態においては、収容溝220にフランジ203付きの突破りパンチ20を収容することによって、スライド22の軸心O方向への移動にスライド22が連動するようにスライド22と突破りパンチ20とを連結しているが、他の構造によってスライド22を突破りパンチ20ととともに往復移動させるようにしてもよい。例えば、シャフト201の後端部の外周面にネジを形成するとともに、スライド22の一方の端面にネジ穴を形成し、両者の締結によってスライド22と突破りパンチ20とを連結してもよい。
【0036】
また、スライド22には、突破りパンチ20が突出する一方の端面側に、コイルバネ21の一方の端部210と当接するバネ座221が形成され、他方の端面側に、斜め上方を向くように軸心Oに対して傾斜した取付面222が形成されている。取付面222には、取付面222に対して垂直な方向にネジ穴223が形成されており、プッシャーボルト4は、このネジ穴223にネジ止めされる。さらに、スライド22の外周面にはネジ穴224が形成されており、ストッパボルト24は、このネジ穴224にネジ止めされる。
【0037】
ケース23は、突破りパンチ20、コイルバネ21およびスライド22を収容するための円筒部材であり、一方の端面側に形成された開口部230と、他方の端面側に形成されたパンチ入出力部231と、軸心Oに沿って外周面に形成された貫通長穴232と、内周面に形成されたスライド22との摺動面233と、を備えている。
【0038】
パンチ入出力部231には、内壁(内側端面)234および外壁(外側端面)235を軸心O方向に貫く貫通穴236が形成されており、この貫通穴236には、コイルバネ21内に挿入された突破りパンチ20の刃部202が内壁234側から挿入されている。また、パンチ入出力部231の外周面には、突破りパンチユニット2をパッド33に固定するために用いるフランジ237が形成されている。
【0039】
開口部230からは、コイルバネ21内に挿入された突破りパンチ20が連結されたスライド22の取付面222が露出している。貫通長穴232内には、スライド22にネジ止めされたストッパボルト24の頭部が配置されており、これにより、ケース23に対するスライド22の相対的な移動範囲が規定される。
【0040】
プッシャーボルト4は、スライド22の取付面222に設けられたネジ穴223にネジ止めされる。
【0041】
図3(A)および
図3(B)は、プッシャーボルト4の正面図および上面図である。
【0042】
図示するように、プッシャーボルト4は、ネジ部41と、頭部42と、ネジ部41および頭部42間に設けられたシャフト(円筒部)43と、頭部42およびシャフト43間に設けられたフランジ44と、頭部42の上面に形成されたドライバ35との摺動面45と、を備えている。シャフト43がスライド22の取付面222から突出するように、ネジ部41が、取付面222に形成されたネジ穴223にネジ止めされる。摺動面45は、プッシャーボルト4が取付面222にネジ止めされた場合に、取付面222に対して略平行になるように設けられている。
【0043】
パッド33には、表面(ワーク32との対向面)331および裏面332を貫く、突破りパンチユニット2保持用の挿入穴330が形成されている。ここで、挿入穴330は、パッド33の表面331側よりも裏面332側が小径の段付き穴となっており、パッド33の表面331側から挿入穴330内に挿入されたケース23のフランジ237が挿入穴330内壁の段差面に当接することにより、突破りパンチユニット2は、パンチ入出力部231の外壁235がパッド33の表面331より所定距離だけ奥まった位置に配置され、かつ、スライド22の取付面222がパッド33の裏面332より所定距離だけ突出した位置に配置される。そして、六角穴付きボルト25が、ストッパプレート26と挿入穴330内壁の段差面との間にフランジ237の一部を挟み込むようにしてパッド33にネジ止めされることにより、突破りパンチユニット2がパッド33に固定される。
【0044】
下型31には、パッド33に保持された突破りパンチユニット2の軸心Oと一致する貫通穴310が形成されており、この貫通穴310の、ワーク32との対向面311側の開口部には、ダイス34が装着されている。ダイス34は、突破りパンチ20の刃部202と連携してワーク32を打ち抜き、この際に、突破りパンチ20の刃部202を収容して、ワーク32の打ち抜き片を貫通穴310へ排出する。
【0045】
ドライバ35は、プッシャーボルト4の摺動面45との摺動面351を備えている。摺動面351は、プッシャーボルト4の摺動面45と略平行となるように形成されており、ドライバ35が下降することにより、プッシャーボルト4の摺動面45と接触する。ドライバ35がさらに下降することにより、摺動面351は、プッシャーボルト4の摺動面45と摺動しながら、プッシャーボルト4が取り付けられたスライド22をケース23内に押し込む。また、ドライバ35の摺動面351が形成されている面には、ポジティブリターンプレート5をネジ止めするためのネジ穴352が形成されている。
【0046】
ポジティブリターンプレート5は、六角穴付きボルト36によって、ドライバ35の摺動面351が形成されている面に設けられたネジ穴352にネジ止めされる。
【0047】
図4(A)は、ポジティブリターンプレート5の正面図であり、
図4(B)は、
図4(A)に示すポジティブリターンプレート5のA−A断面図である。
【0048】
図示するように、ポジティブリターンプレート5は、六角穴付きボルト36用の座繰り穴50が形成された支柱部51と、支柱部51の上面52側に一体的に形成された二股のプレート部53と、を備えている。
【0049】
支柱部51は、座繰り穴50に挿入された六角穴付きボルト36でドライバ35に固定され、プレート部53の下面55とドライバ35の摺動面351との間に所定の間隔h3があく位置にプレート部53を位置付ける。
【0050】
プレート部53は、ポジティブリターンプレート5がドライバ35に取り付けられた状態においてドライバ35の摺動面351と略平行になるように構成されており、プレート部53の長手方向において、支柱部51と反対側の端面58側に溝57が形成されている。ドライバ35の下降中、プレート部53をスライド22の取付面222とプッシャーボルト4のフランジ44およびシャフト43とに接触させずに、プッシャーボルト4の頭部42をプレート部53の下面55とドライバ35の摺動面351との間に挿入し、プッシャーボルト4のシャフト43をプレート部53の溝57に挿入できるように、ポジティブリターンプレート5の各寸法は、以下のように定められている。溝57の幅r3は、プッシャーボルト4のシャフト43の直径r1(
図3参照)よりも大きく、かつ、プッシャーボルト4のフランジ44の直径r2(
図3参照)よりも小さい。また、プレート部53の下面55から支柱部51の下面54までの高さh3は、プッシャーボルト4の摺動面45からフランジ44の下面(シャフト43側の端面)46までの高さh1(
図3参照)より僅かに長い(例えば1mm程度)。さらに、プレート部53の厚さ(プレート部53の上面56から下面55までの高さ)h4は、フランジ44の下面46からスライド22の取付面222までの高さh2(
図1参照)より短い。
【0051】
つぎに、上記構成のパンチ加工装置1の動作を説明する。
【0052】
図5(A)、
図5(B)、
図6(A)、および
図6(B)は、パンチ加工装置1の動作原理を説明するための図(断面図)である。ここで、
図5(A)は、上死点におけるパンチ加工装置1の各構成要素の配置関係を示しており、
図5(B)は、下死点におけるパンチ加工装置1の各構成要素の配置関係を示している。また、
図6(A)は、下死点から上死点への移動中において、コイルバネ21が正常動作している場合におけるパンチ加工装置1の各構成要素の配置関係を示しており、
図6(B)は、下死点から上死点へ移動中において、コイルバネ21が固着している場合におけるパンチ加工装置1の各構成要素の配置関係を示している。
【0053】
図5(A)に示すように、上死点において、ドライバ35の摺動面351は、プッシャーボルト4の摺動面45と接触しておらず、その結果、コイルバネ21により、突破りパンチ20およびスライド22は、ケース23の開口部230からケース外側に押し出されてホームポジションに位置しており、突破りパンチ20の刃部202は、パンチ入出力部231の外壁235よりケース23の内側に引っ込んでいる。
【0054】
この状態で、図示していない上型が下降すると、これに伴いドライバ35も下降する。そして、ドライバ35の摺動面351がプッシャーボルト4の摺動面45と接触し、ドライバ35は、ドライバ35の摺動面351をプッシャーボルト4の摺動面45と摺動させながら下降する。これにより、スライド22が、コイルバネ21を圧縮しながらケース23の内部に押し込まれ、突破りパンチ20の刃部202がパンチ入出力部231の外壁235から突き出す。
【0055】
ここで、上述したように、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55から支柱部51の下面54までの高さh3は、プッシャーボルト4の摺動面45からフランジ44の下面46までの高さh1より僅かに長い。このため、プレート部53は、フランジ44の下面46との間に僅かな隙間を形成しながら、プッシャーボルト4のシャフト43を非接触でポジティブリターンプレート5の溝57に挟み込む。また、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の厚さ(上面56から下面55までの高さ)h4は、プッシャーボルト4のフランジ44の下面46からスライド22の取付面222までの高さh2より短い。このため、ドライバ35の下降中、プレート部53がスライド22の取付面222と接触することはない。
【0056】
その後、
図5(B)に示すように、ドライバ35が下死点まで下降すると、突破りパンチ20の刃部202が、ワーク32を貫いて、ダイス34に収容される。これにより、ワーク32にパンチ加工が施される。
【0057】
なお、ポジティブリターンプレート5は、下死点においてプレート部53の溝底部59がプッシャーボルト4のシャフト43に当接しない位置に、ドライバ35に取り付けられている。
【0058】
つぎに、図示していない上型が下死点から上昇すると、これに伴いドライバ35も上昇して、ドライバ35によるケース23の内部へのスライド22の押し込み量が減少する。
【0059】
ここで、コイルバネ21が正常に動作しているならば、
図6(A)に示すように、コイルバネ21の復元力により、突破りパンチ20およびスライド22がケース23の開口部230から外側に押し出される方向に付勢される。その結果、ドライバ35が摺動面351をプッシャーボルト4の摺動面45と摺動させながら上昇して、突破りパンチ20の刃部202が、ワーク32から引き抜かれてケース23の内側へ引っ込み、突破りパンチ20およびスライド22はホームポジションに復帰する。このとき、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55から支柱部51の下面54までの高さh3が、プッシャーボルト4の摺動面45からフランジ44の下面46までの高さh1より僅かに長いため、プレート部53の下面55はプッシャーボルト4のフランジ44の下面46と接触せず、両者の間に僅かな隙間Δt1(=h3−h1)が形成される。
【0060】
一方、コイルバネ21が何らかの理由により固着しているならば、
図6(B)に示すように、ドライバ35は、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55をプッシャーボルト4のフランジ44の下面46と接触させ掛合させながら上昇して、突破りパンチ20およびスライド22を、ケース23の開口部230から外側に引き出す方向に引っ張る。その結果、突破りパンチ20の刃部202が、ワーク32から引き抜かれて、ケース23の内側へ引っ込む。このとき、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55から支柱部51の下面54までの高さh3が、プッシャーボルト4の摺動面45からフランジ44の下面46までの高さh1より僅かに長いため、プッシャーボルト4の摺動面45はドライバ35の摺動面351と接触せず、両者の間に僅かな隙間Δt2(=h3−h1=Δt1)が形成される。
【0061】
なお、ポジティブリターンプレート5の溝57の長さd1(
図4参照)は、コイルバネ21が何らかの理由により固着している場合に、少なくとも、突破りパンチ20の刃部202がワーク32から引き抜かれるまで、プレート部53の下面55がプッシャーボルト4のフランジ44の下面46と接触して掛合し、突破りパンチ20およびスライド22をケース23の開口部230から引き出す方向に引っ張ることのできる長さに設計されている。
【0062】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0063】
本実施の形態では、ドライバ35が下死点から上昇する際に、万一、突破りパンチ20の刃部202をケース23内に引き込む方向に突破りパンチ20およびスライド22を付勢するコイルバネ21が正常に機能せず、その結果、スライド22がケース23の開口部230からケース外側に押し出されないで、ドライバ35の摺動面351とプッシャーボルト4の摺動面45との間に隙間Δt2が形成された場合でも、少なくとも、突破りパンチ20がワーク32から引き抜かれるまで、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55とプッシャーボルト4のフランジ44の下面46とが互いに掛合するため、ドライバ35の上昇によりスライド22がケース23から引き出される方向に引っ張られる。これにより、突破りパンチ20に連結されたスライド22が強制的にケース23の開口部230から外部に引き出されるため、突破りパンチ20をより確実にワーク32から引き抜くことが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態では、プッシャーボルト4の頭部42の表面にドライバ35との摺動面45を有し、頭部42とネジ部41との間のシャフト43の少なくとも一部がスライド22の取付面222から突出した状態でスライド22の取付面222にネジ止めされたプッシャーボルト4と、ドライバ35が下死点から上昇する際に、ドライバ35の摺動面351とプッシャーボルト4の摺動面45との間に隙間Δt2が形成された場合に、少なくとも、突破りパンチ20がワーク32から引き抜かれるまで、プレート部53の下面55がプッシャーボルト4のフランジ44の下面46と接触して、スライド22をケース23から引き出す方向に引っ張るように、ドライバ35にネジ止めされたポジティブリターンプレート5と、を備えたパンチ強制戻し機構を用いている。
【0065】
仮に、突破りパンチ20の刃部202がコイルバネ21の復元力のみではホームポジションまで戻らない事態が発生しても、このように、突破りパンチユニット2およびドライバ35から着脱可能な部品でパンチ強制戻し機構を構成することで、破損部品を最大でもプッシャーボルト4およびポジティブリターンプレート5のみに抑えることが可能となる。したがって、交換が必要となる部品が取り換え作業の容易な部品のみとなり、突破りパンチユニット2、パッド33、ドライバ35等の取り換え作業の困難な部品の交換作業が不要となる。このため、メンテナンスのコストを低減でき、またその作業性も向上する。
【0066】
また、本実施の形態において、ポジティブリターンプレート5には、プッシャーボルト4のシャフト43を非接触で収容する溝57が形成されている。このため、ドライバ35の上昇および下降中、ポジティブリターンプレート5がプッシャーボルト4のシャフト43に接触して、プッシャーボルト4を損傷させるのを防止することができる。
【0067】
また、本実施の形態において、突破りパンチユニット2は、突破りパンチ20の刃部202をケース23内に引き込む方向に突破りパンチ20およびスライド22を付勢するコイルバネ21を備えており、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55から支柱部51の下面54までの高さh3が、プッシャーボルト4の摺動面45からフランジ44の下面46までの高さh1より僅かに長いため、突破りパンチ20の刃部202とワーク32に作用する力がコイルバネ21の復元力より小さく、コイルバネ21が正常に動作している場合、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55とプッシャーボルト4のフランジ44の下面46とを接触させなくて済む。このため、コイルバネ21が正常に動作している場合、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55とプッシャーボルト4のフランジ44の下面46とが接触して損傷するのを防止することができる。
【0068】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0069】
例えば、上記の実施の形態において、突破りパンチユニット2は、突破りパンチ20の刃部202をケース23内に引き込む方向に突破りパンチ20およびスライド22を付勢する付勢手段として、コイルバネ21を用いているが、ゴム等の弾性体を付勢手段として用いてもよい。
【0070】
また、上記の実施の形態では、スライド22の取付面222にプッシャーボルト4をネジ止めし、下死点において、このプッシャーボルト4のシャフト43を、ポジティブリターンプレート5の溝57に非接触で収容するようにしている。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、スライド22の取付面222に代えて摺動面を形成するとともに、この摺動面とドライバ35の摺動面351とが接触しているならば、ポジティブリターンプレート5に接触せず、この摺動面とドライバ35の摺動面351との間に所定間隔の隙間が形成されたならば、ポジティブリターンプレート5に接触してスライド22をケース23から引き出す方向に引っ張られる掛合手段をスライド22に直接形成してもよい。例えば、ドライバ35の下降により、ドライバ35に固定されたポジティブリターンプレート5の一部が非接触で挿入される溝、穴等の部位を形成し、ドライバ35がその摺動面351をスライド22の摺動面と摺動させながら上昇しているときには、ポジティブリターンプレート5がその部位から非接触で引き抜かれ、突破りパンチ20がワーク23から引き抜かれる前にドライバ35の摺動面351とスライド22の摺動面との間に所定以上の間隔が形成されたときには、ポジティブリターンプレート5がその部位に掛合するようにしてよい。
【0071】
図7(A)および
図7(B)は、突破りパンチ2の変形例2Aの正面図および上面図であり、いずれも一部断面図としている。
【0072】
突破りパンチ2Aが
図2に示す突破りパンチ2と異なる点は、スライド22に代えてスライド22Aが設けられていることである。また、スライド22Aがスライド22と異なる点は、取付面222に代えて、ドライバ35の摺動面351と略平行となるように軸心Oに対して傾斜した摺動面226が形成されていること、および、スライド22Aの側面に、ポジティブリターンプレート5のプレート部53が非接触で挿入される溝225が形成されていることである。なお、突破りパンチ2Aを用いた場合、プッシャーボルト4は不要である。
【0073】
溝225は、摺動面226と略平行に形成されており、摺動面226から溝225の一方の側面(摺動面226側の側面)227までの距離h5は、ポジティブリターンプレート5のプレート部53の下面55から支柱部51の下面54までの高さh3(
図4参照)より僅かに短い(例えば1mm程度)。また、溝225の幅h6は、プレート部53の厚さh4(
図4参照)より長い。
【0074】
突破りパンチ2の代わりに突破りパンチ2Aを用いて、プッシャーボルト4を省略したパンチ加工装置1において、ドライバ35が下降すると、その摺動面351がスライド22Aの摺動面226と接触して摺動しながら下降することにより、ポジティブリターンプレート5のプレート部53が非接触でスライド22Aの溝225に挿入される。そして、ドライバ35がその摺動面351をスライド22の摺動面226と摺動させながら上昇しているときには、ポジティブリターンプレート5のプレート部53がスライド22Aの溝225から非接触で引き抜かれる。一方、突破りパンチ20がワーク23から引き抜かれる前にドライバ35の摺動面351とスライド22Aの摺動面226との間に所定以上の間隔が形成されたときには、ポジティブリターンプレート5のプレート部53がスライド22Aの溝225の側面227に掛合する。なお、この場合、ポジティブリターンプレート5のプレート部53は、
図4に示すような二股形状である必要はない。
【0075】
また、上記の実施の形態では、パンチ強制戻し機構として、スライド22の取付面222にネジ止めされたプッシャーボルト4と、ドライバ35の摺動面351が形成されている面にネジ止めされたポジティブリターンプレート5と、を用いているが、本発明はこれに限定されない。ドライバ35およびスライド22のそれぞれに掛合手段を設け、ドライバ35が下死点から上昇する際に、コイルバネ21が機能せず、その結果、スライド22がケース23から押し出されないで、突破りパンチ20がワーク23から引き抜かれる前にドライバ35がスライド22から所定以上離れた場合に、少なくとも、突破りパンチ20がワーク32から引き抜かれるまで、ドライバ35およびスライド22それぞれの掛合手段が互いに掛合して、ドライバ35の上昇によりスライド22をケース23から引き出すことができるものであればよい。
【0076】
また、上記の実施の形態において、突破りパンチユニット2の突破りパンチ20およびスライド22は一体的に形成されていてもよい。
【0077】
また、上記の実施の形態において、突破りパンチ20の代わりに通常のパンチ90(
図8参照)を用いたパンチ加工装置にも、本発明は同様に適用できる。