特許第6013843号(P6013843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013843
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】エンジン油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 157/00 20060101AFI20161011BHJP
   C10M 143/10 20060101ALN20161011BHJP
   C10M 143/12 20060101ALN20161011BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20161011BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20161011BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20161011BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C10M157/00
   !C10M143/10
   !C10M143/12
   !C10M145/14
   C10N20:02
   C10N30:00 Z
   C10N40:25
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-196042(P2012-196042)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-51572(P2014-51572A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】赤松 篤
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−184580(JP,A)
【文献】 特開2011−132340(JP,A)
【文献】 特開昭59−136394(JP,A)
【文献】 国際公開第97/017417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 157/00
C10M 143/10
C10M 143/12
C10M 145/14
C10N 20/02
C10N 30/00
C10N 40/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度指数向上剤として、(A)ポリマーの中心部からポリマー鎖が分岐した星型構造を有し、該ポリマー鎖がビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖であり、重量平均分子量が100,000〜1,000,000である星型ポリマーと、(B)重量平均分子量が200,000〜600,000のポリアルキル(メタ)アクリレートと、を含有し、
該(A)星型ポリマーの含有量(M)が、エンジン油組成物全質量に対して0.10〜2.00質量%であり、該(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量(M)が、エンジン油組成物全質量に対して0.50〜6.00質量%であり、且つ、該(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量(M)に対する該(A)星型ポリマーの含有量(M)の比(M/M)が、0.10〜1.00であり、
エンジン油組成物の粘度指数が185〜230であること、
を特徴とするエンジン油組成物。
【請求項2】
前記(A)星型ポリマーにおける前記ビニル芳香族化合物モノマーがスチレンであり、共役ジエンモノマーがイソプレン又はブタジエンのいずれか、あるいはイソプレン及びブタジエンの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のエンジン油組成物。
【請求項3】
SAE粘度グレードで0W−30又は5W−30のディーゼルエンジン油組成物であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のエンジン油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた省燃費性能を発現するエンジン油組成物に関するものであり、特にディーゼルエンジンに好適に用いられるエンジン油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年地球温暖化が世界規模で問題となる中、自動車の排気ガスに含まれるCOの低減が強く求められるようになった。自動車のCO排出量を低減するためには、限られた燃料でより長距離の走行を可能とすること、すなわち、自動車の省燃費性能を向上させることが極めて有効である。自動車の省燃費性能向上において、内燃機関のハードウェアの改良のみならず、その潤滑油であるエンジン油の改良も、多大な貢献をもたらすことが知られている。
【0003】
エンジン油の省燃費向上技術としては、有機モリブデン化合物をはじめとした摩擦調整剤を配合することによって、境界潤滑領域の摩擦係数を低減させたエンジン油が公知である(例えば、特許文献1、特許文献2を参照。)。
【0004】
また、エンジン油の粘度特性を改善することも省燃費性を向上する上で有効な手法であり、近年では特定の粘度指数向上剤を単独、あるいは複数を組み合わせて使用することにより、高い省燃費性能を付与したエンジン油組成物が開示されている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−302378号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−348591号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2011−21056号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平10−53788公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特願2008−68415公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、依然としてエンジン油の省燃費性能に対する要求は大きく、既存の技術で必ずしも十分であるとはいえない。このような中、ガソリンエンジン油では、SAE J300に規定されるSAE粘度グレードで5W−20や0W−20といった低粘度油が省燃費油として広く市販されている。
【0007】
一方、ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて筒内圧が高く、また、高負荷の使用頻度が高いため、流体潤滑領域での摩擦低減を狙ったオイルの過度な低粘度化は、却って、油膜強度不足による耐摩耗性低下やエンジン耐久性への悪影響、そして、境界潤滑領域での摩擦増大を招く懸念があり、ガソリンエンジンで発現できた省燃費効果が十分に得られないという問題がある。更に、ディーゼルエンジンにおいては燃焼生成物である煤がオイルに多量に混入することから、ガソリンエンジンで広く適用されている有機モリブテン化合物による境界潤滑領域における摩擦低減効果が、煤の影響を受けて著しく低下し、十分な効果が得られないことが知られている。
【0008】
従って、ディーゼルエンジンにおいて高い省燃費性能を有するエンジン油の開発にあたっては、過度な低粘度化や有機モリブデン化合物の配合に依らない、ガソリンエンジンとは異なる技術的対策が必要であるといえる。
【0009】
本発明は、省燃費性能に優れるエンジン油組成物、特にディーゼルエンジンに好適に用いられるエンジン油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような実情の中で、本発明者らは、省燃費性能に優れるエンジン油組成物について鋭意検討を行った結果、特定の構造を有する粘度指数向上剤を特定の含有量で組み合わせて用いることにより、粘度指数を特定の範囲に調整したエンジン油組成物が、優れた省燃費性能を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明(1)は、粘度指数向上剤として、(A)ポリマーの中心部からポリマー鎖が分岐した星型構造を有し、該ポリマー鎖がビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖であり、重量平均分子量が100,000〜1,000,000である星型ポリマーと、(B)重量平均分子量が200,000〜600,000のポリアルキル(メタ)アクリレートと、を含有し、
該(A)星型ポリマーの含有量(M)が、エンジン油組成物全質量に対して0.10〜2.00質量%であり、該(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量(M)が、エンジン油組成物全質量に対して0.50〜6.00質量%であり、且つ、該(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量(M)に対する該(A)星型ポリマーの含有量(M)の比(M/M)が、0.10〜1.00であり、
エンジン油組成物の粘度指数が185〜230であること、
を特徴とするエンジン油組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、省燃費性能に優れるエンジン油組成物、特にディーゼルエンジンに好適に用いられるエンジン油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエンジン油組成物は、(A)ポリマーの中心部からポリマー鎖が分岐した星型構造を有し、該ポリマー鎖がビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖であり、重量平均分子量が100,000〜1,000,000である星型ポリマーと、(B)重量平均分子量が200,000〜600,000のポリアルキル(メタ)アクリレートと、を含有し、
該(A)星型ポリマーの含有量(M)が、エンジン油組成物全質量に対して0.10〜2.00質量%であり、該(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量(M)が、エンジン油組成物全質量に対して0.50〜6.00質量%であり、且つ、該(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量(M)に対する該(A)星型ポリマーの含有量(M)の比(M/M)が、0.10〜1.00であり、
エンジン油組成物の粘度指数が185〜230であること、
を特徴とするエンジン油組成物である。
【0014】
本発明のエンジン油組成物は、基油と、各種添加剤と、からなる。そして、本発明のエンジン油組成物は、粘度指数向上剤として、(A)星型ポリマーと、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートと、を含有する。
【0015】
本発明のエンジン油組成物に含まれる基油としては、鉱油系基油及び合成系基油の中から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。基油は、鉱油系基油と合成系基油の混合であってもよい。
【0016】
鉱油系基油としては、例えば、原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製、水素化分解精製、水素化脱蝋などの精製法を適宜組合せて精製したものが挙げられる。なお、後述の粘度指数が125以上である基油としては、水素化精製油、触媒異性化油などに溶剤脱蝋または水素化脱蝋などの処理を施した高度に精製されたパラフィン系鉱油(高粘度指数鉱油系潤滑油基油)等が挙げられる。
【0017】
合成系基油としては、例えば、メタン等の天然ガスを原料として合成されるイソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、ジアルキルジエステル類、ポリオール類、アルキルベンゼン類、ポリグリコール類、フェニルエーテル類などが挙げられる。
【0018】
基油の性状は、通常のエンジン油組成物の性状であれば、特に制限されないが、より省燃費性能に優れたエンジン油組成物とするためには、100℃での動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))が3〜12mm/s、粘度指数(JIS K 2283(ASTM D2270))が120以上であることが好ましく、100℃動粘度が3〜7mm/s、粘度指数が125以上であることが特に好ましく、100℃動粘度が3.5〜5.0mm/s、粘度指数が130以上であることがより好ましい。このような性状の基油は、アメリカ石油協会(API)の基油分類で、グループII基油(硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、粘度指数80〜120未満の性状を有する基油)とグループIII基油(硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、粘度指数120以上)を混合して、上記性状に合わせたものであってもよいが、グループIII以上の分類に属する基油が、高い省燃費性能を発揮する点で好ましい。
【0019】
本発明のエンジン油組成物は、粘度指数向上剤として機能する(A)星型ポリマー及び(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する。
【0020】
(A)星型ポリマーは、ポリマーの中心部からポリマー鎖が分岐した、いわゆる星型構造を有する。つまり、(A)星型ポリマーは、ポリマーの中心部に、ポリマー鎖が結合した構造を有している。そして、(A)星型ポリマーのポリマー鎖は、ビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖である。
【0021】
(A)星型ポリマーとしては、ビニル芳香族化合物モノマーから選ばれる1種以上のモノマーと、共役ジエンモノマーから選ばれる1種以上のモノマーを共重合させて、ビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合体を得、次いで、この共重合体とポリアルケニルカップリング剤と反応させ、更に水素化処理して得られるものが挙げられる。このようにして得られる(A)星型ポリマーでは、ビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合体と反応し、更に水素化処理された後のポリアルケニルカップリング剤由来の構造部位又は水素化処理された後のポリアルケニルカップリング剤由来の構造部位とビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合体の一部が、(A)星型ポリマーの中心部となり、この中心部からビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖が分岐している。
【0022】
ビニル芳香族化合物モノマーは、ビニル基を有する芳香族化合物又はそのアルキル化物であり、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等や、それらのアルキル化物が挙げられる。これらのうち、ビニル芳香族化合物モノマーとしては、スチレンが好ましい。
【0023】
共役ジエンモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、2−メチル−ブタジエン、2、3−ジメチル−ブタジエン、2−エチル−ブタジエン、2、3−ジエチル−ブタジエン、ペンタジエン、2−メチル−ペンタジエン、3−メチル−ペンタジエン等の共役ジエンが挙げられる。これらのうち、共役ジエンモノマーとしては、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0024】
ビニル芳香族化合物モノマーと、共役ジエンモノマーを共重合するにあたって、ビニル芳香族化合物モノマーの共重合割合は、モノマーの合計質量に対して、好ましくは5〜35質量%であり、特に好ましくは5〜25質量%であり、また、共役ジエンモノマーの共重合割合は、モノマーの合計質量に対して、好ましくは65〜95質量%であり、特に好ましくは75〜95質量%である。
【0025】
ポリアルケニルカップリング剤としては、ポリビニルアセチレン、ポリアリルアセチレン、ジアセチレン、ジメタクリレート等のポリアルケニル脂肪族化合物や、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、テトラビニルベンゼン、ジビニルo−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トリビニル−o−キシレン、トリビニル−m−キシレン、トリビニル−p−キシレン、テトラビニル−o−キシレン、テトラビニル−m−キシレン、テトラビニル−p−キシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソブテニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ジイソプロペニルビフェニル等のポリアルケニル芳香族化合物が挙げられるが、好ましくポリアルケニル芳香族化合物であり、特に好ましくはジビニルベンゼンである。
【0026】
(A)星型ポリマーとしては、ポリマー鎖が、スチレンとブタジエン及びイソプレンとの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖であるスチレン−ブタジエン−イソプレン星型ポリマーや、ポリマー鎖が、スチレンとイソプレンとの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖であるスチレン−イソプレン星型ポリマーが挙げられる。スチレン−ブタジエン−イソプレン星型ポリマーは、スチレンとブタジエン及びイソプレンとを共重合させて共重合体を得、次いで、この共重合体とジビニルベンゼン等のポリアルケニルカップリング剤を反応させ、更に水素化処理して得られたものである。また、スチレン−イソプレン星型ポリマーは、スチレンとイソプレンとを共重合させて共重合体を得、次いで、この共重合体とジビニルベンゼン等のポリアルケニルカップリング剤を反応させ、更に水素化処理して得られたものである。このようなスチレン−ブタジエン−イソプレン星型ポリマー又はスチレン−イソプレン星型ポリマーは、ジビニルベンゼンを分子構造の中心部に含む。
【0027】
本発明のエンジン油組成物に係る(A)星型ポリマーは、ビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーを共重合させ、次いで、ポリアルケニルカップリング剤と反応させた後に、水素化処理がされているので、共役ジエンに由来する不飽和結合は少ないが、共役ジエンに由来する不飽和結合を有するものであってもよい。(A)星型ポリマー中の共役ジエンに由来する不飽和度は低い方が好ましく、共役ジエンに基づく繰り返し単位の合計量に対して、不飽和結合を有する共役ジエンに基づく繰り返し単位が20質量%以下であることが特に好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
(A)星型ポリマーは、ポリマーの中心部から、ビニル芳香族化合物モノマーと共役ジエンモノマーとの共重合体の水素化体からなるポリマー鎖が分岐している構造、いわゆる「星型構造」を有する。(A)星型ポリマーが有するポリマー鎖の数は、3つ以上、好ましくは5つ以上、特に好ましくは7つ以上である。(A)星型ポリマーのポリマー鎖の数を5つ以上とすることで、重量平均分子量を後述する範囲にし易く、また、良好なせん断安定性を得易い傾向にある。
【0029】
(A)星型ポリマーの重量平均分子量は、100,000〜1,000,000、好ましくは150,000〜800,000、特に好ましくは400,000〜700,000、更に好ましくは500,000〜700,000である。星型ポリマーの重量平均分子量が、上記範囲未満だと、粘度指数向上剤としての増粘効果が十分に得られず、また、上記範囲を超えると、せん断安定性が十分に得られず、長期使用にてエンジン油がせん断による粘度低下を起こし、耐摩耗又は耐焼付き性が低下する恐れがある。なお、ここでいう「重量平均分子量」とは、装置:TOSOH HLC−8020、カラム:TSKgel GMHHR−Mを3本、検出器:示唆屈折検出器、移動相:THF、流量:1ml/min、試料濃度:約1.0mass%/Vol% THF、注入量:50μlによって測定されたポリスチレン換算値を指す。
【0030】
(A)星型ポリマーは、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、下記式(1)で表される構造単位を有するポリマーである。
式(1):
【0032】
【化1】
【0033】
(Rは水素又はメチル基であり、Rは炭素数1〜50の直鎖アルキル基又は分岐鎖を有するアルキル基である。)
【0034】
(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、式(1)に示す構造単位を有する重合体である。つまり、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルのみをモノマーとする重合体、すなわち、式(1)に示す構造単位のみからなる重合体であってもよいし、あるいは、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとそれ以外のモノマーとの共重合体、すなわち、構造の一部に式(1)に示す構造単位以外の構造単位を有する重合体であってもよい。(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、重合体中の式(1)で示される構造単位のRが、全てが同じものであっても、異なるものであってもよい。(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、アミノ基やスルホン酸基等の極性基を有する分散型であっても、これをもたない非分散型であってもよい。
【0035】
(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、200,000〜600,000、好ましくは250,000〜500,000、特に好ましくは300,000〜450,000である。ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量が上記範囲未満の場合には、粘度指数向上効果が低くなるために十分な省燃費効果が得られず、また、上記範囲を超える場合には、十分なせん断安定性が得られず、長期の使用にてエンジン油がせん断による粘度低下を起こし、耐摩耗又は耐焼付き性が低下する恐れがあるほか、エンジン油組成物の耐コーキング性能に悪影響を与える恐れがある。
【0036】
(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
本発明のエンジン油組成物中、(A)星型ポリマーの含有量は、エンジン油組成物全質量に対して、0.10〜2.00質量%、好ましくは0.20〜1.50質量%、特に好ましくは0.25〜1.25質量%、更に好ましくは0.30〜1.00質量%である。(A)星型ポリマーは、極めて良好なせん断安定性を示す。(A)星型ポリマーの含有量が、上記範囲未満である場合、せん断安定性に劣る(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの配合量が相対的に増加するため、エンジン油組成物のせん断安定性が低くなる。また、(A)星型ポリマーは、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートと比較して、粘度指数向上効果が低く、また、省燃費性能に大きく影響する実効領域における高温高せん断粘度の低減効果に劣る傾向があるため、(A)星型ポリマーの含有量が上記範囲を超えると、エンジン油組成物の粘度が必要以上に高くなるばかりか、相対的に、配合可能な(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの量が少なくなることから、本発明のエンジン油組成物に規定する粘度指数を満たさず、実効領域における高温高せん断粘度の値も高くなるため、省燃費効果を十分に発現できない。
【0038】
本発明のエンジン油組成物中、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、エンジン油組成物全質量に対して、0.50〜6.00質量%、好ましくは0.70〜4.50質量%、特に好ましくは0.85〜3.00質量%、更に好ましくは1.00〜2.00質量%である。一般に、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、粘度指数向上効果において優れるが、せん断安定性や耐コーキング性能に劣る傾向がある。(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲未満の場合、本発明のエンジン油組成物に規定する粘度指数を満たすことができず、省燃費効果が十分に発現できない。また、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量が、上記範囲を超えると、エンジン油組成物の粘度が必要以上に高くなり省燃費性能が得られないほか、せん断安定性や耐コーキング性能といった実用性能に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0039】
なお、(A)星型ポリマー又は(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートが、希釈油で希釈されている場合、本発明のエンジン油組成物中の(A)星型ポリマー又は(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、希釈油を除く有効成分量(ポリマー量)での含有量を意味する。
【0040】
本発明のエンジン油組成物において、エンジン油組成物全質量に対する(A)星型ポリマーの含有量をM質量%とし、エンジン油組成物全質量に対する(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量をM質量%とした場合、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの含有量に対する(A)星型ポリマーの含有量の比(M/M)は、0.10〜1.00であることが必要であり、好ましくは0.12〜0.75であり、特に好ましくは0.15〜0.50である。含有比(M/M)の値が上記範囲にあることにより、本発明のエンジン油組成物の粘度指数を規定する範囲に確保しつつ、且つ、せん断安定性にも優れるエンジン油組成物を得易くなる。
【0041】
本発明のエンジン油組成物は、粘度指数向上剤として、(A)星型ポリマー及び(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートを必須成分として含むが、必要に応じて更にその他の粘度指数向上剤を含有することもできる。その他の粘度指数向上剤としては、例えば、オレフィンコポリマー類、ポリイソブチレン類、ポリアルキルスチレン類、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体類、及びそれらに分散基を含有するもの等の公知の各種粘度指数向上剤が挙げられる。ただし、上記その他の粘度指数向上剤の含有量が多過ぎると、省燃費性能に悪影響を及ぼす恐れがあるため、その含有量は、最小限に留めることが望ましく、その他の粘度指数向上剤の含有量は、(A)星型ポリマー及び(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートの合計量に対して、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0042】
また、本発明のエンジン油組成物は、上記粘度指数向上剤に加え、更に、必要に応じて、種々の添加剤を含有することができる。
【0043】
本発明のエンジン油組成物は、無灰分散剤を含有することができる。無灰分散剤としては、例えば、下記一般式(2)又は一般式(3)で表されるコハク酸イミド系分散剤等が挙げられる。また、無灰分散剤としては、下記一般式(2)又は一般式(3)で表されるコハク酸イミドをホウ素変性させたものも挙げられる。
【0044】
一般式(2):
【0045】
【化2】
【0046】
一般式(3):
【0047】
【化3】
【0048】
一般式(2)及び一般式(3)において、Rはアルキル基又はアルケニル基であり、Rはアルキレン基であり、Rはアルキル基又はアルケニル基である。
【0049】
無灰分散剤としては、一般式(2)で表されるコハク酸イミド系分散剤及び一般式(3)で表されるコハク酸イミド系分散剤のうちの1種又は2種以上と、一般式(2)で表されるコハク酸イミド系分散剤をホウ素変性させたもの及び一般式(3)で表されるコハク酸イミド系分散剤をホウ素変性させたもののうちの1種又は2種以上と、の組み合わせであってもよい。
【0050】
本発明のエンジン油組成物中のコハク酸イミド系分散剤の含有量は、特に制限されないが、一般的に、コハク酸イミド系分散剤は極めて粘性が高く、エンジン油組成物の粘度特性に悪影響を与えることから、高い省燃費性能を維持する上でその含有量は最小限に留めることが望ましい。
【0051】
本発明のエンジン油組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有することができる。エンジン油組成物がジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有することにより、摩耗防止性能が高くなる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛のアルキル基は、第一級アルコールに由来するもの、第二級アルコールに由来するもの、あるいは第一級アルコールに由来するものと第二級アルコールに由来するものの両方を有するものであってもよい。アルキル基の炭素数に特に制限はないが、摩耗防止性能が高くなる点で、3〜12が好ましい。
【0052】
本発明のエンジン油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量は、エンジン油組成物全質量に対して、リン原子換算で、好ましくは0.01〜0.20質量%、特に好ましくは0.03〜0.14質量%である。ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が、上記範囲未満だと、期待する摩耗防止性が十分得られない可能性があり、また、上記範囲を超えると、その分解産物から生成する硫酸などによりエンジン油の酸化安定性に悪影響を与える可能性がある。
【0053】
本発明のエンジン油組成物は、金属型清浄剤を含有することができる。金属型清浄剤としては、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート等が挙げられ、これらは、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってよい。金属型清浄剤としては、摩擦低減ができる点で、アルカリ土類金属サリシレートを配合することが好ましい。
【0054】
本発明のエンジン油組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール系の酸化防止剤、アミン系の酸化防止剤、有機モリブデン系の酸化防止剤等が挙げられ、これらは、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってよい。フェノール系の酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物が挙げられる。アミン系の酸化防止剤としては、ナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物が挙げられる。有機モリブデン系酸化防止剤としては、モリブデンアミンなどの有機モリブデン化合物が挙げられる。本発明のエンジン油組成物中の酸化防止剤の含有量は、エンジン油組成物全質量に対して、好ましくは0.05〜5.0質量%、特に好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0055】
本発明のエンジン油組成物は、摩擦調整剤を含有することができる。エンジン油組成物が摩擦調整剤を含有することにより、境界潤滑域の摩擦低減効果が得られるので、更に省燃費性能を高くすることができる。摩擦調整剤としては、有機モリブデン化合物、無灰型摩擦調整剤等が挙げられる。有機モリブデン化合物としては、例えば、モリブテンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート、モリブテン酸アミン化合物、モリブデン長鎖脂肪族アミン化合物等が挙げられる。本発明のエンジン油組成物中の有機モリブデン化合物の含有量は、エンジン油組成物全質量に対して、モリブデン原子換算で、好ましくは100〜1,200質量ppmである。無灰型摩擦調整剤としては、長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪族アルコール、脂肪族アミンと脂肪酸のアミド化合物、脂肪族ポリグリセリルエーテル類等が挙げられる。本発明のエンジン油組成物中の無灰型摩擦調整剤の含有量は、エンジン油組成物全質量に対して、好ましくは500質量ppm〜5質量%、特に好ましくは1,000質量ppm〜4質量%、更に特に好ましくは3,000質量ppm〜3質量%である。摩擦調整剤は、有機モリブデン化合物及び無灰型摩擦調整剤のうちの1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。ただし、ディーゼルエンジンにおいては、有機モリブデン化合物は混入する煤の影響で満足な効果を発揮できない恐れがあるため、無灰型摩擦調整剤がより好ましい。
【0056】
本発明のエンジン油組成物は、金属不活性化剤、さび止め剤、流動点降下剤、泡消剤等、エンジン油性能を付与するのに効果的な各種添加剤を必要に応じて含有することができる。
【0057】
本発明のエンジン油組成物は、基油、(A)星型ポリマー及び(B)ポリアルキル(メタ)アクリレート並びに必要に応じて添加される各種添加剤を、適宜混合することにより調製され、その混合順序は特に限定されるものではない。
【0058】
本発明のエンジン油組成物の粘度指数は、185〜230、好ましくは187〜225、特に好ましくは190〜215である。本発明のエンジン油組成物の40℃における動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))は、好ましくは10〜70mm/s、特に好ましくは20〜60mm/s、更に好ましくは30〜55mm/sである。本発明のエンジン油組成物の100℃での動粘度(JIS−K−2283(ASTM D445))は、好ましくは5.6〜12.5mm/s、特に好ましくは8.5〜11.5mm/s、更に好ましくは9.3〜11.0mm/sである。本発明のエンジン油組成物は、SAE J300に規定されるSAE粘度グレードの内、特に0W−30または5W−30において優れた効果を発揮する。本発明のエンジン油組成物では、本発明のエンジン油組成物に規定される含有量の範囲内で、上記SAE粘度グレードに適合するよう、粘度指数向上剤の含有量が調節される。
【0059】
本発明のエンジン油組成物は、種々のエンジン機関に適用され、例えば、ガソリンエンジン機関用、ディーゼルエンジン機関用、ガスエンジン機関用等に用いられるが、特にディーゼルエンジン機関用として用いられることにより、大きな省燃費効果を発揮する。
【0060】
以下に実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0061】
各実施例及び比較例は、以降に示す基油と添加剤を表1〜表2に示す含有量となるように混合して得たエンジン油組成物である。なお、表中の「質量%」又は「質量ppm」はエンジン油組成物全質量に対する質量%又は質量ppmを意味するものとする。各エンジン油組成物は、すべてSAE粘度グレードにおける0W−30あるいは5W−30の要求を満たし、且つ、国内ディーゼルエンジン油規格であるJASO DH−2規格の要求であるASTM D6278−07せん断試験後油の100℃動粘度の値が9.3mm/s以上になるよう調製されている。また、150℃せん断速度1×10における高温高せん断粘度は、いずれも3.0mPa・s以上となるよう調製されている。各実施例及び比較例の調製にあたっては、省燃費性能への影響を考慮し、上記の条件を満たす上で最低限の量になるよう粘度指数向上剤の含有量を配慮した。
【0062】
<使用した基油と添加剤>
(1)基油
水素化分解系の鉱油系基油(グループIII基油):100℃動粘度4.1mm/s、粘度指数134
(2)粘度指数向上剤A
ジビニルベンゼンを分子構造の中心部に含み、スチレンとイソプレン及びブタジエンの共重合及び水素化により得られたポリマー鎖を有する星型ポリマー:重量平均分子量=595,000、希釈油除く有効成分量は11.0質量%であった。
(3)粘度指数向上剤B
ポリアルキルメタアクリレート:重量平均分子量=440,000、希釈油除く有効成分量は19.7質量%であった。
(4)粘度指数向上剤C
エチレン・プロピレンコポリマー:重量平均分子量=180,000、希釈油除く有効成分量は12.0質量%であった。
(5)摩耗防止剤
摩耗防止剤として、セカンダリータイプのアルキル基と、プライマリータイプのアルキル基とを有するジアルキルジチオリン酸亜鉛を使用した。
(6)分散剤
分散剤A:アルケニルコハク酸イミド、Mw=7,370、窒素含有量=1.1質量%、ホウ素を含有しない。
分散剤B:ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド、Mw=4,380、窒素含有量=1.4質量%、ホウ素含有量=0.5質量%。
(7)金属型清浄剤
清浄剤A:カルシウムサリシレート、塩基価=170mgKOH/g。
清浄剤B:カルシウムフェネート、塩基価=255mgKOH/g。
なお、ここでいう塩基価とはJIS−K−2501−6に従って測定された値である。
(8)その他の添加剤
フェノール型酸化防止剤、流動点降下剤、シリコーン系消泡剤を含む。
【0063】
<評価方法>
評価試験法は次のとおりである。
(1)SAE粘度グレード
SAE J300によって規定される粘度グレードを判定した。
(2)動粘度
JIS K 2283(ASTM D445)に従い、40℃及び100℃での動粘度と粘度指数の測定を行った。
(3)粘度指数
JIS K 2283(ASTM D2270)に従い算出した。
(4)温度100℃、せん断速度1×10/sにおける高温高せん断粘度
ASTMD6616−07に従って測定した。
(5)温度150℃、せん断速度1×10/sにおける高温高せん断粘度
ASTM D4683に従って測定した。
(6)温度150℃、せん断速度1×10/sにおける高温高せん断粘度
PCS Instruments社製USV(The Ultra Shear Viscometer)を用いて測定した。
(7)せん断試験後100℃動粘度
ASTM D6278−07(Standard Test Method for Shear Stability of Polymer Containing Fluids Using a European Diesel Injector Apparatus)に従って、エンジン油のせん断安定性試験を行い、試験後油の100℃における動粘度を測定した。
【0064】
<エンジン油組成物の省燃費性能の評価試験>
エンジン油組成物の省燃費性能を、日本国内にある4,600ccのディーゼルエンジンを用いた台上燃費試験により評価した。試験条件は国土交通省10・15モードを参考にして設定した。表1〜表2に示す結果は、比較例1の結果を基準とした場合の燃費改善率(%)である。
【0065】
<耐コーキング性試験>
パネルコーキング試験法(Fed−791B)に従い、コーキング重量の測定を実施した。油温100℃、試験片パネル温度300℃に設定し、スプラッシュ15秒間、その後45秒間停止、のサイクルを3時間繰り返した後、試験片パネルに付着したデポジット量(mg)を測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1〜表2の結果から分かる通り、実施例1〜実施例4に示すように粘度指数向上剤として、本発明のエンジン油組成物に規定される(A)星型ポリマーと(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートをともに含有し、両者の配合量及び配合比M/Mを本発明に規定の範囲で配合したエンジン油組成物は、これらをともに含有せずエチレン・プロピレンコポリマーのみを含有する比較例1のエンジン油組成物、(A)星型ポリマーを含有せずに(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートのみを含有する比較例2のエンジン油組成物、及び(A)星型ポリマーを含有せず(B)ポリアルキル(メタ)アクリレート及びエチレン・プロピレンコポリマーを含有する比較例3のエンジン油組成物のいずれと比べても、省燃費性能とよく相関することが知られる100℃・せん断速度10/s及び150℃・せん断速度10/sの高温高せん断粘度の値が有意に低くなることがわかる。なお、省燃費性とこれら高温高せん断粘度との相関性については、トライボロジー叢書10 内燃機関の潤滑(幸書房)、JSAE20085815(2008年)等に記載されている。そして、実際の燃費試験結果においても、実施例1は、比較例1〜3のいずれと比べて、極めて優れた省燃費性能を示した。また、比較例4及び5に示す通り、(A)星型ポリマーと(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートをともに含有するエンジン油組成物であっても、両者の配合比M/Mが本発明に規定の範囲に含まれない場合、100℃せん断速度10/sあるいは150℃せん断速度10/sの高温高せん断粘度の値のいずれかが実施例記載のエンジン油組成物と比較して高くなるため、本発明の優れた省燃費性能が期待できない。また、粘度指数向上剤として(A)星型ポリマーのみを含有し、(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートを含有しない比較例6のエンジン油組成物についても、本発明のエンジン油組成物に規定の粘度指数を満たすことができず、また、100℃せん断速度10/sにおける高温高せん断粘度の値も、実施例のエンジン油組成物よりも高くなるため、省燃費効果が期待できないものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、高い省燃費性能を有するエンジン油組成物を提供できる。