(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013851
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】基準電圧発生装置
(51)【国際特許分類】
G05F 3/24 20060101AFI20161011BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20161011BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
G05F3/24 Z
H01L27/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-215036(P2012-215036)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-71515(P2014-71515A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋谷 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 博文
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−158292(JP,A)
【文献】
特開2005−044924(JP,A)
【文献】
特開2002−368107(JP,A)
【文献】
特開2003−152099(JP,A)
【文献】
特開2003−031678(JP,A)
【文献】
特開2010−067754(JP,A)
【文献】
特開平07−307442(JP,A)
【文献】
特開2002−203910(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0059832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/24
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のP型ウェル拡散層に設けられた、N型ゲート電極を有する、定電流を流すためのNチャネルディプレション型MOSトランジスタと、
前記Nチャネルディプレション型MOSトランジスタにダイオード接続された、第二のP型ウェル拡散層に設けられた、N型ゲート電極を有する、前記定電流に基づく基準電圧を発生するNチャネルエンハンスメント型MOSトランジスタと、
からなり、
前記Nチャネルディプレション型MOSトランジスタと前記Nチャネルエンハンスメント型MOSトランジスタとは、ともにN型埋め込みチャネルを備え、前記第二のP型ウェル拡散層の不純物濃度が前記第一のP型ウェル拡散層の不純物濃度より高いことを特徴とする基準電圧発生装置。
【請求項2】
第一のP型ウェル拡散層に設けられた、N型ゲート電極を有する、定電流を流すためのNチャネルディプレション型MOSトランジスタと、
前記Nチャネルディプレション型MOSトランジスタにダイオード接続された、第二のP型ウェル拡散層に設けられた、N型ゲート電極を有する、前記定電流に基づく基準電圧を発生するNチャネルエンハンスメント型MOSトランジスタと、
からなり、
前記Nチャネルディプレション型MOSトランジスタと前記Nチャネルエンハンスメント型MOSトランジスタとは、ともにN型埋め込みチャネルを備え、前記Nチャネルエンハンスメント型MOSトランジスタのゲート酸化膜の膜厚が前記Nチャネルデプレッション型MOSトランジスタのゲート酸化膜の膜厚より厚いことを特徴とする基準電圧発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路内において、基準電圧を発生する基準電圧発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基準電圧発生装置で用いられる回路について
図2を用いて説明する。
図2は基準電圧発生装置の回路図である。電流源として機能するように接続されたディプレション型NMOSトランジスタ(以下D型NMOSトランジスタ)14は、ダイオード接続されたエンハンスメント型NMOSトランジスタ(以下E型NMOSトランジスタ)13に定電流を流し込む。この定電流により、E型NMOSトランジスタ13に、それぞれのトランジスタの閾値およびサイズに応じた基準電圧が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−65546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の高精度化が進み、この電子機器を制御するICの高精度化が求められている。例として、ICの特にボルテージディテクタあるいはボルテージレギュレータに代表されるパワーマネジメントICにおいては、ICが搭載される携帯機器の小型化および汎用性に伴って、周囲温度環境の変化、特にIC内部において、温度が変化しても基準電圧発生装置が基準電圧を高精度に発生できること、すなわち、基準電圧の温度特性がより平坦になることが求められている。本発明は、上記要求を鑑みてなされ、より平坦な温度特性を有する基準電圧発生装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、基準電圧発生装置において、電流源として機能するために存在するD型NMOSトランジスタと、その定電流を流し込むようにダイオード接続されたE型NMOSトランジスタのそれぞれを同じ埋め込みチャネル型にした、N型のゲート電極を備えたD型NチャネルMOSトランジスタとE型NチャネルMOSトランジスタによる基準電圧発生装置とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、基準電圧発生装置において、D型NチャネルMOSトランジスタとゲート酸化膜下の構造が同じ埋め込みチャネル型のE型NチャネルMOSトランジスタを備えることで、互いの温度特性が等しくなり、基準電圧発生装置の温度特性も改善される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施例の基準電圧発生装置の模式的断面図である。
【
図2】従来技術を説明する基準電圧発生装置の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず始めに、基準電圧発生装置の基本となる構造を
図1(a)の模式的断面図を参照に説明する。
基準電圧発生装置は、D型NチャネルMOSトランジスタ(以下D型NMOSトランジスタ)14およびE型NチャネルMOSトランジスタ(以下E型NMOSトランジスタ)13を備える。
【0009】
電流源として機能するように接続されたD型NMOSトランジスタ14は、N型高濃度ドレイン拡散層12を電源端子として、N型ゲート電極8とN型高濃度ソース拡散層11は基準電圧発生端子に接続されている。このような接続をすることで、上記のD型NMOSトランジスタ14は定電流源として機能する。一方で、上記のD型NMOSトランジスタ14とダイオード接続されたE型NMOSトランジスタ13は、N型ゲート電極8とN型高濃度ドレイン拡散層10が基準電圧発生端子に接続されており、N型高濃度ソース拡散層9は接地端子に接続されている。すなわち、上記D型NMOSトランジスタ14と上記E型NMOSトランジスタ13は直列接続されている。したがって、等価回路であらわすと、
図2のような回路図になり、従来の基準電圧発生装置と等価である。
【0010】
以下に本発明の第1の実施例を
図1(a)の模式的断面図を参照に説明する。
まず、D型NMOSトランジスタ14は、P型半導体基板1にP型ウェル拡散層3を備え、N型埋め込みチャネル層5を形成するために不純物添加は、例えば、イオン注入法でイオン種は砒素あるいは燐を添加する。このときのドーズ量は、トランジスタの閾値が所望のディプレション領域で動作するように適宜調整可能である。その後、ゲート酸化膜7を形成した後、N型ゲート電極8は、例えば、多結晶シリコン薄膜などで形成する。その後、N型高濃度ソース拡散層11およびN型高濃度ドレイン拡散層12を形成することで、D型NMOSトランジスタ14の構造が整う。
【0011】
一方で、E型NMOSトランジスタ13も、製造方法は上記のD型NMOSトランジスタ14と同じくして、P型半導体基板1にP型ウェル拡散層2を備え、N型埋め込みチャネル層4を形成する。E型NMOSトランジスタ13にも上述のD型NMOSトランジスタ14と同じく、N型ゲート電極8、N型高濃度ソース拡散層9およびN型高濃度ドレイン拡散層10を備える。
【0012】
上述のN型埋め込みチャネル層4の不純物添加は、例えば、イオン注入法でイオン種はD型NMOSトランジスタと同じく、砒素あるいは燐を添加する。これは、P型ウェル拡散層2の濃度を適宜選択することにより、トランジスタの閾値がエンハンスメント領域で動作するようにドーズ量を調整することが可能である。本実施例では、P型ウェル拡散層2の濃度を高くすることで、N型埋め込みチャネル層4を形成することが可能となる。本実施例は、従来のE型NMOSトランジスタの製造方法とは、D型NMOSトランジスタとのチャネル層形成のための不純物添加方法が異なるので、異なる特徴を示す。従来のE型NMOSトランジスタのチャネル層の形成方法であれば、イオン種は、二フッ化ホウ素あるいはホウ素などが良く知られている。しかし、この方法では、本発明で着目した課題に対し、基準電圧発生装置の構成しているD型NMOSトランジスタとE型NMOSトランジスタのゲート酸化膜下のチャネル構造が異なるため、上述の個々のトランジスタの温度特性も異なってしまう。一方、本発明の実施例によれば、基準電圧発生装置を構成するD型NMOSトランジスタとE型NMOSトランジスタのチャネル層を形成するための不純物が同一で、かつ、同様の埋め込みチャネル層を形成することが可能になるので、基準電圧の温度特性の平坦化がなされる。
【0013】
さらに、上述までの本発明の実施例に加えて、
図1(b)の模式的断面図に示すように、E型NMOSトランジスタ13のP型ウェル拡散層2の濃度を濃くすることも可能である。濃度を適宜選択することで、D型NMOSトランジスタ14のN型埋め込みチャネル層5を形成するのと同時に、E型NMOSトランジスタ13のN型埋め込みチャネル層4の形成が可能となる。
【0014】
さらに、上述までの本発明の実施例に加えて、
図1(c)の模式的断面図に示すように、E型NMOSトランジスタ13のゲート酸化膜6をD型NMOSトランジスタ14と比較して適宜膜厚を厚くすることも可能である。こうすることで、基準電圧発生装置から得られる出力を調整することが可能になる。すなわち、E型NMOSトランジスタ13のK値を調整することで、基準電圧発生装置からの基準電圧を調整することが可能となる。
【0015】
また、上述までの本発明の実施例に加えて、P型半導体基板1以外にもN型半導体基板でも本発明の特徴を有することが可能である。
以上までの実施例の内容は、適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 P型半導体基板
2 E型NMOSトランジスタP型ウェル拡散層
3 D型NMOSトランジスタP型ウェル拡散層
4 E型NMOSトランジスタN型埋め込みチャネル層
5 D型NMOSトランジスタN型埋め込みチャネル層
6 E型NMOSトランジスタゲート酸化膜
7 D型NMOSトランジスタゲート酸化膜
8 N型ゲート電極
9 E型NMOSトランジスタN型高濃度ソース拡散層
10 E型NMOSトランジスタN型高濃度ドレイン拡散層
11 D型NMOSトランジスタN型高濃度ソース拡散層
12 D型NMOSトランジスタN型高濃度ドレイン拡散層
13 E型NMOSトランジスタ
14 D型NMOSトランジスタ