特許第6013856号(P6013856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013856
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】保冷具
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/06 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   C09K5/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-216976(P2012-216976)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70141(P2014-70141A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】上田 展嵩
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−014283(JP,A)
【文献】 特開昭56−053175(JP,A)
【文献】 特開2009−298955(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099798(WO,A1)
【文献】 特開平10−265769(JP,A)
【文献】 特開平06−264052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20、
A23L3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩、増粘剤及び溶媒を含有する保冷用組成物を供えた保冷具であって、
前記増粘剤がヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される一種以上であり、
前記保冷用組成物が塩化アンモニウムを含有し、前記保冷用組成物の塩化アンモニウムの含有量が2〜23質量%であることを特徴とする保冷具。
【請求項2】
塩、増粘剤及び溶媒を含有する保冷用組成物を供えた保冷具であって、
前記増粘剤がヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される一種以上であり、
前記保冷用組成物が塩化アンモニウム及びその他の塩を含有し、前記保冷用組成物の塩化アンモニウム及びその他の塩の総含有量が2.5〜25質量%であることを特徴とする保冷具。
【請求項3】
前記保冷用組成物が、さらに染料を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の保冷具。
【請求項4】
前記保冷用組成物が、前記増粘剤としてヒドロキシプロピルグアーガムを0.5質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の保冷具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷用組成物を供えた保冷具に関する。
【背景技術】
【0002】
保冷具は、各種生鮮物の保管時や輸送時の保冷に幅広く利用されており、通常は、繰り返して利用される。このような保冷具は、保冷作用を有する保冷用組成物を供え、熱伝導性を有する容器中にこの保冷用組成物が封入されて、構成される。
【0003】
一方、使用中に容器が破損した場合には、保冷用組成物の容器外への漏れをできるだけ抑制するために、保冷用組成物として増粘剤を含有した高粘度のものが使用されることがある。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルセルロース等、多様なものが知られている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−161789号公報
【特許文献2】特開昭61−14283号公報
【特許文献3】特開2008−239773号公報
【特許文献4】国際公開第2007/099798号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の保冷用組成物は、製造後に増粘剤が凝集することがあるという問題点があった。増粘剤が凝集すると、分離した液状部の粘度が低下してしまい、増粘剤を含有しない、又は増粘剤の含有量が極端に低い保冷用組成物と同様の性状となり、容器の破損時に漏れを抑制できなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、増粘剤の凝集が抑制された保冷用組成物を供えた保冷具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明は、塩、増粘剤及び溶媒を含有する保冷用組成物を供えた保冷具であって、前記増粘剤がヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される一種以上であり、前記保冷用組成物が塩化アンモニウムを含有し、前記保冷用組成物の塩化アンモニウムの含有量が2〜23質量%であることを特徴とする保冷具を提供する。
また、本発明は、塩、増粘剤及び溶媒を含有する保冷用組成物を供えた保冷具であって、前記増粘剤がヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される一種以上であり、前記保冷用組成物が塩化アンモニウム及びその他の塩を含有し、前記保冷用組成物の塩化アンモニウム及びその他の塩の総含有量が2.5〜25質量%であることを特徴とする保冷具を提供する。
本発明の保冷具においては、前記保冷用組成物が、さらに染料を含有することが好ましい。
本発明の保冷具においては、前記保冷用組成物が、前記増粘剤としてヒドロキシプロピルグアーガムを0.5質量%以上含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、増粘剤の凝集が抑制された保冷用組成物を供えた保冷具が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る保冷具は、塩、増粘剤及び溶媒を含有する保冷用組成物を供えた保冷具であって、前記増粘剤がヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする。
前記保冷用組成物は、塩を含有し、増粘剤としてヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される一種以上を含有することで、これら増粘剤の凝集が抑制されるので、長期にわたって高粘度を維持できる。そして、前記保冷具は、このような保冷用組成物を供えることで、破損が生じても保冷具外への保冷用組成物の漏れが顕著に抑制される。
【0010】
本明細書において、「凝集」とは、例えば、成分が寄り集まって、通常の撹拌操作によって再度溶媒中で溶解又は均一に分散させることが困難な、大きな集合体を形成することを意味する。
【0011】
前記保冷用組成物は、塩を保冷剤の一成分として含有し、溶媒及び塩の組合せを保冷剤として含有するものである。
保冷用組成物が凍結する温度は、主に溶媒及び塩の組み合わせ、並びにこれらの量により決定される。
【0012】
前記塩は、有機塩及び無機塩のいずれでもよい。
前記有機塩としては、酢酸ナトリウム(CHCOONa)、酢酸カリウム(CHCOOK)、安息香酸ナトリウム(CCOONa)、安息香酸カリウム(CCOOK)、ソルビン酸ナトリウム(CH−CH=CH−CH=CH−COONa)、ソルビン酸カリウム(CH−CH=CH−CH=CH−COOK)等のカルボン酸塩;グルタミン酸ナトリウム(HOOC(CHCH(NH)COONa)等のアミノ酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(CH(CH11SONa)等のベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム(CH(CH11OSONa)等のアルキル硫酸塩等が例示できる。
【0013】
前記無機塩としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)等のアルカリ金属の塩化物;塩化アンモニウム(NHCl)等の塩酸塩;硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カリウム(KSO)、硫酸アンモニウム((NHSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸アルミニウム(Al(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)、ミョウバン(AlK(SO)、アンモニウムミョウバン(Al(NH)(SO)等の硫酸塩;硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸アンモニウム(NHNO)等の硝酸塩;炭酸カリウム(KCO)等の炭酸塩;炭酸水素カリウム(KHCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等の炭酸水素塩;塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)等のアルカリ土類金属の塩化物;リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)等のリン酸水素塩;リン酸三ナトリウム(NaPO)等のリン酸塩;亜硫酸ナトリウム(NaSO)等の亜硫酸塩;塩素酸カリウム(KClO)等の塩素酸塩;過塩素酸ナトリウム(NaClO)等の過塩素酸塩;チオ硫酸ナトリウム(Na)等のチオ硫酸塩;臭化カリウム(KBr)、臭化ナトリウム(NaBr)等のアルカリ金属の臭化物;ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)等のアルカリ金属のヨウ化物;ホウ砂(Na)等のホウ酸塩等が例示できる。
【0014】
前記塩は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0015】
保冷用組成物の塩の含有量は、保冷用組成物の凍結温度や取り扱い性等の点から、2.5〜25質量%であることが好ましく、3.5〜24質量%であることがより好ましい。
【0016】
前記塩は、後述する添加剤等の「その他の成分」を兼ねるものであってもよい。
前記塩は、無機塩であることが好ましい。
【0017】
保冷用組成物は、塩として塩化アンモニウムを含有するものが好ましい。
保冷用組成物が塩化アンモニウムを含有する場合、その含有量は、2〜23質量%であることが好ましく、3〜21質量%であることがより好ましい。
そして、保冷用組成物が塩化アンモニウムとその他の塩を含有する場合、塩化アンモニウム及びその他の塩の総含有量は、2.5〜25質量%であることが好ましく、3.5〜24質量%であることがより好ましい。
【0018】
前記溶媒は、前記塩を溶解可能なものであればよく、後述する染料を溶解又は分散可能なものが好ましく、より好ましいものとしては、水、アルコールが例示できる。
溶媒は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
溶媒は、水又は水を含有する混合溶媒であることが好ましい。
【0019】
保冷用組成物は、さらに染料を含有するものが好ましい。
染料を含有する場合、前記保冷用組成物は、含有成分の組成を調節することで、凍結の前後において色彩が明瞭に変化(変色)するものとすることが可能である。このような保冷用組成物は、通常、凍結前は、染料が溶媒に溶解していることで、その染料に由来する色味となる(例えば、青色染料を使用した場合には青色となる)。そして、凍結することで、その色味が薄れて白色又は白色に近い色となり、色彩が明瞭に変化する。
このような保冷用組成物を供えた保冷具は、この保冷用組成物の変色により、対象物を保冷可能な所望の温度にまで十分に冷却されているか否か、冷却状態の視認が容易なものである。
【0020】
前記染料は特に限定されず、公知のものが適宜使用でき、例えば、赤色染料、青色染料、黄色染料、黒色染料等のいずれでもよい。
染料として、具体的には、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、ナフトール染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料、ピラゾロン染料、スチルベン染料、ジフェニルメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、キノンイミン染料(アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料)、チアゾール染料、メチン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、シアニン色素、タール色素等が例示できる。
【0021】
染料は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。ただし、通常は、一種のみでも十分な効果が得られる。
【0022】
保冷用組成物の染料の含有量(濃度)は、質量比で2000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましく、70ppm以下であることが特に好ましい。また、保冷用組成物の染料の含有量(濃度)は、質量比で1ppm以上であることが好ましく、3ppm以上であることがより好ましい。以上のような範囲とすることで、保冷用組成物の凍結前後の色差(ΔE)がより大きくなる(色彩がより大きく変化する)。
【0023】
ここで「色差(ΔE)」とは、凍結前後において色差測定器を使用して測定した保冷用組成物のL、a、bの値から、下記式(I)にしたがって算出した値である。
ΔE=[(L1−L2+(a1−a2+(b1−b21/2 ・・・・(I)
(式中、L1は凍結後の保冷用組成物のLの値であり、L2は凍結前の保冷用組成物のLの値であり、a1は凍結後の保冷用組成物のaの値であり、a2は凍結前の保冷用組成物のaの値であり、b1は凍結後の保冷用組成物のbの値であり、b2は凍結前の保冷用組成物のbの値であり、L1、a1及びb1は同時期の値であり、L2、a2及びb2は同時期の値である。)
【0024】
本発明においては、例えば、青色染料又は黒色染料を用いることで、保冷用組成物の凍結前後における色彩をより顕著に変化させることができる。
【0025】
保冷用組成物が含有する前記増粘剤は、ヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される一種のみでもよいし、二種以上でもよい。増粘剤が二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、ヒドロキシプロピルグアーガム及びヒドロキシエチルセルロースには、いずれも、水酸基の水素原子を置換しているヒドロキシプロピル基又はヒドロキシエチル基の置換数あるいは置換位置によって、複数の種類が存在する。ヒドロキシプロピルグアーガム及びヒドロキシエチルセルロースは、いずれもこのような複数種類のものを併用してもよい。
【0026】
ヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースは、いずれも、保冷用組成物において染料の凝集を抑制する傾向にある。また、保冷用組成物は、保存時に粘度が低下することがあるが、これら増粘剤の種類によって、粘度の低下のし易さに差が生じることがある。保冷用組成物の保存時にける粘度の低下のし易さは、例えば、後述する加熱試験(加速試験)における保冷用組成物の粘度の低下率で判断できる。
増粘剤の中でも、ヒドロキシプロピルグアーガムは、保冷用組成物における染料の凝集抑制効果がより高く、かつ保存時の保冷用組成物の粘度がより低下し難い点で、好ましいものである。
【0027】
このような観点から、保冷用組成物は、増粘剤としてヒドロキシプロピルグアーガムを含有するものが好ましく、増粘剤としてヒドロキシプロピルグアーガムのみを含有するものがより好ましい。
【0028】
保冷用組成物の増粘剤の含有量は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。このような範囲とすることで、増粘剤の使用効果がより高くなる。また、増粘剤の含有量が多いほど、染料の凝集抑制効果が高くなる傾向にある。
一方、保冷用組成物の増粘剤の含有量の上限値は、特に限定されないが、増粘剤の溶媒への溶解度や、保冷用組成物製造時における原料混合物の撹拌の容易さを考慮すると、10質量%であることが好ましく、8.5質量%であることがより好ましい。
【0029】
保冷用組成物は、保冷剤(塩、溶媒)、増粘剤及び染料以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これらに該当しないその他の成分を含有していてもよい。前記その他の成分としては、防腐剤等の公知の各種添加剤が例示できる。
【0030】
前記防腐剤としては、食品保存料、酸化防止剤が例示でき、ナトリウムピリチオン、パラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、プロタミン、有機窒素硫黄系化合物等が例示できる。
【0031】
保冷用組成物は、保冷剤、増粘剤及び染料の総含有量(塩、溶媒、増粘剤及び染料の総含有量)が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。下限値以上であることで、対象物の保冷効果がより向上する。
【0032】
保冷用組成物は、例えば、保存時にける粘度の低下のし易さを判断する加速試験として、50℃で7日間保持する加熱試験を行い、加熱試験前(50℃に昇温する前)と加熱試験後(50℃で7日間保持した後)の粘度を測定したときに、これら測定値を用いて下記式(i)から算出された粘度の低下率が10%以下であることが好ましく、7.5%以下であることがより好ましい。ここで、加熱試験前後の粘度の測定条件は、同じであることが好ましい。また、保冷用組成物の前記加熱試験前の粘度は、20〜25℃において、0.3Pa・s以上であることが好ましい。
[粘度の低下率]={[加熱試験前の粘度]−[加熱試験後の粘度]}/[加熱試験前の粘度]×100 ・・・・(i)
【0033】
保冷用組成物は、これを構成するための各配合成分を添加及び混合することで製造できる。
配合成分の添加方法及び混合方法は特に限定されず、保冷用組成物の凍結温度よりも高い温度において、各配合成分が均一に溶解又は分散するように、任意に調節できる。
【0034】
例えば、各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法としては、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等が例示できる。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、15〜30℃とすることができる。
【0035】
保冷用組成物は、含有成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
【0036】
本発明に係る保冷具は、前記保冷用組成物を供えたものであり、例えば、液状物を封入可能な容器等の保持手段によって、保冷用組成物を保持することで構成される。
【0037】
前記保持手段の材質は、保持された保冷用組成物の色彩の変化(変色)が視認可能な程度に透明性を有するものが好ましく、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル等の合成樹脂が例示できる。これらの中でも、耐低温脆性、耐水性及び耐薬品性等に優れる点から、ポリオレフィンが好ましく、成形が容易で、高い強度を有する高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0038】
前記保冷具は、増粘剤の凝集が抑制され、長期にわたって高粘度を維持できる保冷用組成物を供えるので、破損が生じても保冷具外への保冷用組成物の漏れが顕著に抑制される。したがって、長期に渡る繰り返し利用に適している。
【実施例】
【0039】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。なお、以下において、染料の含有量(配合量、濃度)の単位「ppm」は、すべて質量比に基づくものである。
【0040】
本実施例及び比較例で使用した原料を、以下に示す。
(染料)
・ナフトールブルーブラック(黒色401号、ダイワ化成社製)
・インジゴカルミン(青色2号、ダイワ化成社製)
・ブリリアントブルーFCF(青色1号、ダイワ化成社製)
・ニューコクシン(赤色102号、ダイワ化成社製)
(増粘剤)
・ヒドロキシプロピルグアーガム(以下、「HPグアー」と略記することがある)(三晶社製)
・グアーガム(三晶社製)
・ヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」と略記することがある)(ダイセル化学社製)
・カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」と略記することがある)(関東化学社製)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」と略記することがある)(ダイセル化学社製)
・キサンタンガム(以下、「XTG」と略記することがある)(三晶社製)
(防腐剤)
・ナトリウムピリチオン(三愛石油社製「ソジウムオマジン」、以下、「化合物(1)」と略記することがある)
【0041】
[実施例1]
<保冷用組成物及び保冷具の製造>
室温(20〜25℃)において、塩化アンモニウム(15質量部)、塩化カリウム(5質量部)、HPグアー(1.25質量部)、化合物(1)(0.05質量部)、水(78.7質量部)、染料としてナフトールブルーブラックを添加及び混合して、保冷用組成物を得た。このとき、染料の配合量は、得られた保冷用組成物中での含有量が、表1に示すように10ppmとなるように調節した。水以外の各配合成分とその配合量を表1に示す。
次いで、得られた保冷用組成物を、高密度ポリエチレン製の容器に封入して、保冷具とした。
【0042】
<保冷用組成物の評価>
(増粘剤及び染料の凝集)
得られた保冷具(保冷用組成物)について、−35℃まで冷却してこの温度で3時間保持した後、40℃まで昇温してこの温度で3時間保持する工程を1サイクルとして、これを50サイクル繰り返す凍結・解凍試験を行った。この間、保冷用組成物は、冷却の過程で、−35℃よりも高い温度で凍結すると同時に色彩が変化した。
次いで、試験後の保冷用組成物中の増粘剤及び染料について、凝集物の有無と、凝集に伴って生じる離水の有無と、を下記基準にしたがって、目視で評価した。結果を表1に示す。
・増粘剤
◎:凝集物が認められず、離水の視認が困難である。
○:凝集物が少なく、離水の視認が困難である。
△:凝集物が少ないが、離水の視認が容易である。
×:凝集物が多く、離水の視認が容易である。
・染料
◎:凝集物が認められない。
○:凝集物が少なく、凝集物の視認が困難である。
△:凝集物が少ないが、凝集物の視認が容易である。
×:凝集物が多く、凝集物の視認が容易である。
【0043】
(粘度の低下)
得られた保冷具(保冷用組成物)を50℃で7日間保持する加熱試験を行った。そして、加熱試験前後(50℃に昇温する前と、50℃で7日間保持した後)において、下記方法で保冷用組成物の粘度を測定し、前記式(i)から粘度の低下率を算出した。結果を表1に示す。
【0044】
(粘度の測定)
B型粘度計(東機産業社製、No.3、回転速度60rpm)を使用し、測定対象物100gについて、25℃で粘度を測定した。
【0045】
[実施例2〜23、比較例1〜4]
水以外の各配合成分とその配合量を表1、2又は3に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様に、保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。いずれの実施例及び比較例においても、水の配合量は、配合成分の総量が100質量部となるように調節した。結果を表1〜3に示す。
なお表中、配合成分の欄の「−」は、その成分が未配合であることを意味する。また、評価結果の欄の「−」は、その項目が未評価であることを意味する。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
上記結果から明らかなように、増粘剤としてヒドロキシプロピルグアーガム(HPグアー)、グアーガム又はヒドロキシエチルセルロース(HEC)を用いた実施例1〜23の保冷用組成物は、染料の種類によらず、増粘剤の凝集が抑制され、高粘度が維持されていた。また、保冷用組成物は、粘度の低下率がヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガムの順に小さくなっており、この順に高粘度を維持する効果が高かった。そして、保冷用組成物は、例えば、実施例4〜12から明らかなように、増粘剤の含有量(配合量)が多いほど、染料の凝集抑制効果が高く、増粘剤の含有量が0.5質量%以上で、特にこの効果が高かった。実施例4〜5のような染料の凝集が見られる保冷用組成物は、凍結の前後における色彩の変化が見られないか又は小さいだけで、保冷能が損なわれる訳ではないので、これを備えた保冷具は実用に供する上で何ら支障は無いが、実施例6〜12のように、染料の凝集が高度に抑制された保冷用組成物を用いた保冷具の方が、冷却状態を目視で容易に視認できる点で好ましい。
【0050】
これに対して、比較例2及び4の保冷用組成物は、ヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースをいずれも用いていないことにより、増粘剤の凝集が著しかった。これら保冷用組成物は、粘度の低下率が低かったが、その理由としては、増粘剤の耐熱性や耐塩性が低く、加熱試験の前又は開始当初からの増粘剤の劣化によって、保冷用組成物の粘度が低下していたことが考えられ、容器が破損している場合、実用時には、容器外への漏れを抑制できるものではなかった。一方、比較例3の保冷用組成物は、増粘剤が溶媒(水)にほとんど溶解しなかったため、増粘剤の凝集及び粘度の低下率については、評価できなかった。比較例1〜4の保冷用組成物は、いずれも染料の凝集抑制効果が低く、比較例1は、増粘剤の含有量が多いほど染料の凝集抑制効果が高いことを裏付けていた。
【0051】
ヒドロキシエチルセルロースは、セルロース中の一部の水酸基の水素原子がヒドロキシエチル基(−CHCHOH)で置換されたセルロース誘導体である。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、セルロース中の一部の水酸基の水素原子がヒドロキシプロピル基(−CHCH(CH)OH)又はメチル基(−CH)で置換されたセルロース誘導体である。すなわち、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースは、セルロース中の一部の水酸基の水素原子がヒドロキシアルキル基で置換されたセルロース誘導体である点で、類似の高分子化合物である。しかし、実施例3及び比較例3の結果から明らかなように、増粘剤としていずれを用いるかによって、保冷用組成物中でのこの増粘剤の凝集抑制効果は、全く異なるものとなっている。これは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合、置換基としてメチル基を有している影響があったとしても、ヒドロキシプロピル基は、ヒドロキシエチル基と炭素数が1個しか違わない極めて類似の置換基であることを考えると、全く意外であるといえる。
また、カルボキシメチルセルロース(CMC)は、セルロース中の一部の水酸基の水素原子がカルボキシメチル基(−CHCOOH)で置換されたセルロース誘導体であり、セルロース中の一部の水酸基の水素原子がアルキレン基と水酸基(−C(=O)−OH中の−OH)を共に有する基で置換されたセルロース誘導体である点で、ヒドロキシエチルセルロースと類似の高分子化合物であるといえる。そして、このような類似の増粘剤を用いている実施例3及び比較例2で、保冷用組成物中でのこの増粘剤の凝集抑制効果は、全く異なるものとなっており、これも意外であるといえる。
そして、凝集が抑制される増粘剤のうち、ヒドロキシプロピルグアーガム及びグアーガムは、いずれも構成する単糖がガラクトースとマンノースであるのに対し、ヒドロキシエチルセルロースは、構成する単糖がβ−グルコースであり、ヒドロキシプロピルグアーガム及びグアーガムとは種類が全く異なる高分子化合物である。そして、これら三種の増粘剤を用いている実施例1〜3では、いずれも、保冷用組成物中でのこの増粘剤の凝集抑制効果が高くなっており、増粘剤の構造が全く異なるにも関わらず同様の結果が得られたことは、全く意外であるといえる。
このように、増粘剤の凝集抑制効果は、塩に対して、増粘剤として何を併用するかによって、全く異なる結果を与えており、ヒドロキシプロピルグアーガム、グアーガム及びヒドロキシエチルセルロースに共通の構造を見出すことは困難であることから、増粘剤の凝集抑制効果が高い、塩及び増粘剤の組み合わせを予測することは、非常に困難であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、各種生鮮物用の保冷具として利用可能である。