(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記故障検知部は、前記第2作動状態に設定されている場合、第1温度検出手段が検出した温度が低下したとき、前記シフトバルブ、前記リリーフバルブ及び前記第2ソレノイドの何れかの少なくとも一方が故障したと判定し、前記第4作動状態に設定されている場合、第2温度検出手段が検出した温度が上昇したとき、前記調圧バルブ、前記第1ソレノイド、前記シフトバルブ、前記リリーフバルブ及び前記第2ソレノイドの何れかのうち少なくとも一つが故障したと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、クラッチ制御回路の故障検知に関して何ら記載されていない。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されるオイルの油圧を用いた油圧制御回路を構成するバルブの故障を検知することが可能な変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンにより駆動されるオイルポンプと、クラッチの油室に接続されたクラッチ油路と、被冷却部にオイルを導くための冷却油路と、前記オイルポンプから吐出される油圧を調圧して、前記クラッチ油路側のクラッチ元油路に前記クラッチを動作可能な高い油圧を供給する第1切替状態と、前記クラッチ油路側のクラッチ元油路に前記クラッチを動作不可能な低い油圧を供給する第2切替状態とを選択的に切替可能に構成され、且つ前記第1切替状態及び前記第2切替状態で前記冷却油路側の冷却元油路に油圧を供給する調圧バルブと、前記クラッチ元油路に設けられ、前記クラッチ元油路と前記クラッチ油路とを連通させる第3切替状態と、前記クラッチ元油路と前記クラッチ油路とを遮断させる第4切替状態とを選択的に切替可能に構成されたシフトバルブと、前記冷却元油路に設けられ、前記冷却元油路から前記冷却油路に油圧を供給する第5切替状態と、前記冷却元油路をドレンする第6切替状態とを選択的に切替可能に構成されたリリーフバルブと、前記調圧バルブの前記第1切替状態と前記第2切替状態とを切替可能に作動する第1ソレノイドと、前記シフトバルブの前記第3切替状態及び前記リリーフバルブの前記第5切替状態と、前記シフトバルブの前記第4切替状態及び前記リリーフバルブの前記第6切替状態とを切替可能に作動する第2ソレノイドと、前記クラッチ油路の油圧を検出する油圧検出手段と、前記オイルの温度の温度を検出する第1温度検出手段と、前記被冷却部の温度を検出する第2温度検出手段と、前記第1ソレノイド及び前記第2ソレノイドの作動を制御して、前記第1切替状態及び前記第3切替状態を選択する第1作動状態と、前記第2切替状態及び前記第6切替状態を選択する第2作動状態と、前記第1切替状態及び前記第4切替状態を選択する第3作動状態と、前記第2切替状態及び前記第5切替状態を選択する第4作動状態とからなる4つの作動状態を選択的に設定可能に構成された作動状態設定部と、前記第1作動状
態に設定されている場合、前記油圧検出手段が検出した油圧の変化によって、前記調圧バルブ
、前記第1ソレノイド
、前記シフトバルブ、前記リリーフバルブ及び前記第2ソレノイドの何れかの
うち少なくとも一
つが故障したと判定し
、前記第4作動状態が設定されている場合
、前記第2温度検出手段が検出した温度の変化によって、前記調圧バルブ
、前記第1ソレノイ
ド、前記シフトバルブ、前記リリーフバルブ及び前記第2ソレノイドの何れかの
うち少なくとも一
つが故障したと判定する故障検知部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、油圧検出手段が検出した油圧の変化、及び
第2温度検出手段が検出した温度の変化によって、各作動状態でバルブの故障を検知するので、油圧検出手段又は温度検出手段が故障しても、バルブの故障を判定することが可能となる。
【0008】
本発明において、例えば、前記被冷却部は、電動モータ又はジェネレータである。
【0009】
また、本発明において、前記故障検知部は、前記第2作動状態に設定されている場合、第1温度検出手段が検出した温度が低下したとき、前記シフトバルブ、前記リリーフバルブ及び前記第2ソレノイドの何れかの少なくとも一方が故障したと判定し、前記第4作動状態に設定されている場合、第2温度検出手段が検出した温度が上昇したとき、前記調圧バルブ
、前記第1ソレノイド
、前記シフトバルブ、前記リリーフバルブ及び前記第2ソレノイドの何れかの
うち少なくとも一
つが故障したと判定することが好ましい。
【0010】
この場合、第1温度検出手段又は第2温度検出手段が検出した温度変化が上昇している場合に限定して、各作動状態でバルブの故障を検知するので、バルブの故障をより確実に判定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る変速機100について図面を参照して説明する。
図1に示すように、変速機100を搭載した車両は、エンジン(内燃機関)10、電気モータ11及びジェネレータ12を備えている。
【0013】
電気モータ11は、図示しないバッテリから電力供給を受けて駆動して、エンジン駆動力をアシストすることが可能である。また、減速走行時には、電気モータ11は、車輪側からの回転駆動により発電を行ってバッテリを充電すること(エネルギー回生)が可能である。このように変速機100は、エンジン10及び電気モータ11を駆動源とし、ジェネレータ12でエネルギー回生可能なハイブリッド車両に搭載されている。
【0014】
(変速機の基本構成)
変速機100は、エンジン出力軸(クランクシャフト)10aにフライホイール13を介して連結される入力軸14と、入力軸14に対して平行に配置された出力軸15とを備えている。出力軸15は、ファイナル駆動ギヤ16、ファイナル従動ギヤ17、ディファレンシャルギヤ18、及び左右の駆動軸19を介して左右の車輪20に接続されている。
【0015】
入力軸14は、クラッチ21を介して第1駆動ギヤ22を支持し、この第1駆動ギヤ22は、出力軸15に固定された従動ギヤ23に噛合している。
【0016】
中空のモータ軸24の内部にジェネレータ軸25が相対回転自在に嵌合しており、ジェネレータ12は、電気モータ11と同軸上に配置されている。モータ軸24に固定された第2駆動ギヤ26と、従動ギヤ23とが噛合し、入力軸14に固定されたジェネレータ駆動ギヤ27と、ジェネレータ軸25に固定されたジェネレータ従動ギヤ28とが噛合する。
【0017】
このように構成された変速機100によれば、電気モータ11を駆動させると、電気モータ11の駆動力が、第2駆動ギヤ26、従動ギヤ23、出力軸15、ファイナル駆動ギヤ16、ファイナル従動ギヤ17、ディファレンシャルギヤ18、及び駆動軸19の順に経由して、左右の車輪20に伝達される。
【0018】
電気モータ11は、正逆両方向に回転可能であるため、その回転方向に応じて車両を前進走行及び後進走行させることができる。また、車両の減速時に、車輪20から伝達される駆動力で電気モータ11を駆動してジェネレータとして機能させれば、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
【0019】
一方、クラッチ21を締結した状態でエンジン10を駆動させれば、エンジン10の駆動力が、フライホイール13、入力軸14、クラッチ21、第1駆動ギヤ22、従動ギヤ23、出力軸15、ファイナル駆動ギヤ16、ファイナル従動ギヤ17、ディファレンシャルギヤ18、及び駆動軸19の順で経由して左右の車輪20に伝達される。
【0020】
これにより、車両の前進走行時にエンジン10の駆動力で電気モータ11の駆動力をアシストすることができる。このとき、電気モータ11を空転させれば、エンジン10の駆動力だけで車両を前進走行させることもできる。
【0021】
また、エンジン10が駆動しているとき、エンジンの駆動力は、フライホイール13、入力軸14、ジェネレータ駆動ギヤ27、ジェネレータ従動ギヤ28、及びジェネレータ軸25の順で経由してジェネレータ12に伝達される。これにより、ジェネレータ12で発電することができる。逆に、エンジン10の停止中にジェネレータ12をモータとして駆動させれば、その駆動力でエンジン10を始動することができる。
【0022】
さらに、変速機100は、図示しない変速機ハウジング内に配設された2つのオイルポンプOP1,OP2を備えている。第1オイルポンプOP1は、エンジン10の駆動に伴い駆動されるメカ式オイルポンプである。ここでは、第1オイルポンプOP1のポンプシャフト(第1オイルポンプ駆動軸)29に固定された第1オイルポンプギヤ30が、ジェネレータ駆動ギヤ27と噛合している。これにより、エンジン10の駆動時に第1オイルポンプOP1は常時駆動する。
【0023】
第2オイルポンプOP2は、駆動軸19の回転に伴い駆動するメカ式オイルポンプである。ここでは、第2オイルポンプOP2のポンプシャフト(第2オイルポンプ駆動軸)31に固定された第2オイルポンプギヤ32が、ファイナル従動ギヤ17に噛合している。これにより、車両の前進時に第2オイルポンプOP2は常時駆動する。
【0024】
(油圧制御回路)
さらに、
図2に示すように、変速機100は、冷却油路L1、潤滑油路L2及びクラッチ油路L3にそれぞれ適宜な油圧を供給するために、油圧制御回路40を備えている。
【0025】
具体的には、冷却油路L1は、被冷却部41をオイルで冷却するための油路である。被冷却部41は、ここでは、電気モータ11及びジェネレータ12である。潤滑油路L2は、被潤滑部42をオイルで潤滑するための油路である。被潤滑部42は、ここでは、ディファレンシャルギヤ18(
図1参照)や変速機100内のベアリングなどである。クラッチ油路L3は、クラッチ21にオイルを供給するための油路であり、クラッチ21の油室、詳しくは背圧室に接続されている。
【0026】
そして、電気モータ11の近傍に温度センサ43が設けられている。温度センサ43は本発明の第2温度検出手段に相当する。尚、電気モータ11の近傍の代わりに、又はこれと共にジェネレータ12の近傍に温度センサ43を設けてもよい。冷却油路L1には、オイルクーラ44及びオイルウォーマ45が設けられている。また、クラッチ油路L3には、アキュムレータ46と、当該クラッチ油路L3の油圧(クラッチ圧)を検出するための油圧センサ47とが設けられている。
【0027】
電力供給制御、エネルギー回生制御(充電制御)及び変速機100の制御を行うためにECU(Electronic Control Unit)50が車両に搭載されており、ECU50は電気モータ11、ジェネレータ12及び油圧制御回路40などを制御する。ECU50は、本発明の作動状態設定部及び故障検知部に相当する。
【0028】
ECU50は、各種演算処理を実行するCPUと、CPUで実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果などを記憶するROM及びRAMからなる記憶装置(メモリ)とを備え、各種電気信号を入力すると共に、演算結果などに基いて駆動信号を外部に出力する。
【0029】
油圧制御回路40は、レギュレータバルブ(調圧バルブ)61、2つのソレノイドバルブ62,63、2つのシフトバルブ64,65、及びリリーフバルブ66などを備えている。
【0030】
第1オイルポンプOP1の吐出ポートは、レギュレータバルブ61の入口ポート61aに接続されており、第1オイルポンプOP1が駆動すると、オイルパン51からオイルが汲み上げられ、ストレーナ52を介してレギュレータバルブ61にオイルが供給される。オイルパン51には、オイルパン51内に貯留されるオイルの温度を検出する油温センサ53が設けられている。油温センサ53は本発明の第1温度検出手段に相当する。
【0031】
一方、第2オイルポンプOP2が駆動されると、オイルパン51からオイルを汲み上げられ、ストレーナ52を介して潤滑制御回路54にオイルが供給される。潤滑制御回路54は、車両前進時に、エンジン10が停止していても、潤滑油路L2に適宜な油圧を供給することが可能なように構成されている。潤滑制御回路54には、リリーフバルブ55、及び車両の後進時に第2オイルポンプOP2でエアレーションが発生することを防止するための2つのチェックバルブ(ワンウェイバルブ)56が設けられている。
【0032】
レギュレータバルブ61は、第1オイルポンプOP1から吐出される油圧を調圧して、クラッチ油路L3側のクラッチ元油路L4にクラッチ21を動作可能な高い油圧(ライン圧)を供給する第1切替状態と、クラッチ油路L3側のクラッチ元油路L4にクラッチ21を動作不可能な低い油圧を供給する第2切替状態とを選択的に切替可能に構成されている。この切替えは、第1ソレノイドバルブ62から、第1シフトバルブ64を介してレギュレータバルブ61に入力される制御圧によって行われる。尚、レギュレータバルブ61は、第1切替状態及び前記第2切替状態共に、油圧を冷却油路L1及び潤滑油路L2側の冷却・潤滑元油路L5に供給する。
【0033】
第1切替状態では、レギュレータバルブ61は、その第1出口ポート61bから、クラッチ元油路L4を介して第1シフトバルブ64に高いライン圧を供給する。第2切替状態では、レギュレータバルブ61は、その第1出口ポート61bから、クラッチ元油路L4を介して第1シフトバルブ64に低いライン圧を供給する。そして、レギュレータバルブ61は、第1切替状態及び前記第2切替状態共に、その第2出口ポート61cから、冷却・潤滑元油路L5にライン圧の残圧を供給する。
【0034】
各ソレノイドバルブ62,63は、ソレノイド62a,63aに通電された電流値に応じて弁が開いて、通電電流値に応じた制御圧を出力し、通電が遮断されると弁が閉じられ、制御圧の出力を停止する常閉型のリニアソレノイドバルブである。
【0035】
第1ソレノイドバルブ62から出力される制御圧は、第1シフトバルブ64にこれを図面左方の開き側に押圧する背圧として入力される。これにより、第1シフトバルブ64から第2シフトバルブ65に制御圧に対応する油圧が供給される。
【0036】
さらに、第1ソレノイドバルブ62から出力された制御圧は、第1シフトバルブ64を介して、レギュレータバルブ61にこれを図面右方の開き側に押圧する背圧として入力される。これにより、レギュレータバルブ61の第1切替状態と第2切替状態との切替えが行われる。
【0037】
2つのシフトバルブ64,65は、クラッチ元油路L4とクラッチ油路L3との間に直列に接続されている。第2シフトバルブ65は、クラッチ元油路L4とクラッチ油路L3とを連通させ、クラッチ21に油圧(クラッチ圧)を供給する第3切替状態と、クラッチ元油路L4とクラッチ油路L3とを遮断させ、クラッチ21にクラッチ圧を供給しない第4切替状態とを選択的に切替可能に構成されている。この切替えは、第2ソレノイドバルブ63から第2シフトバルブ65に入力される制御圧によって行われる。
【0038】
第3切替状態では、第2ソレノイドバルブ63から第2シフトバルブ65に制御圧が入力され、第2シフトバルブ65は、その入口ポート65aと出口ポート65bとが連通され、クラッチ元油路L4及び第1シフトバルブ64を介して供給されたライン圧が制御圧に応じたクラッチ圧とされてクラッチ油路L3に供給される。
【0039】
一方、第4切替状態では、第2ソレノイドバルブ63から第2シフトバルブ65に制御圧が入力されず、又は、第2シフトバルブ65を図面左方の開き側に押圧する背圧には十分でない制御圧が入力されないので、第2シフトバルブ65は、その入口ポート65aと出口ポート65bとの連通が遮断され、クラッチ油路L3にクラッチ圧は供給されない。
【0040】
リリーフバルブ66は、冷却・潤滑元油路L5に設けられ、冷却・潤滑元油路L5から冷却油路L1及び潤滑油路L2に油圧を供給する第5切替状態と、冷却・潤滑元油路L5をドレンする第6切替状態とを選択的に切替可能に構成されている。
【0041】
第2ソレノイドバルブ63から第2シフトバルブ65に入力された制御圧は、さらに、第1シフトバルブ64を介して、リリーフバルブ66にこれを図面左方の開き側に押圧する背圧として入力される。これにより、リリーフバルブ66の第5切替状態と第6切替状態との切替えが行われる。
【0042】
このように、第2ソレノイドバルブ63は、第2シフトバルブ65の第3切替状態及びリリーフバルブ66の第5切替状態と、第2シフトバルブ65の第4切替状態及びリリーフバルブ66の第6切替状態とを切替可能な制御圧を出力する。
【0043】
リリーフバルブ66は、正常時は、図面右方の閉じ位置にばね66aで付勢保持されている。従って、正常時は、冷却・潤滑元油路L5の油圧が保持されている。しかし、第2ソレノイドバルブ63から出力される制御圧が、リリーフバルブ66の弁を図面左方の開き側に押圧する背圧として入力されると、ばね66aの付勢力に抗して開き位置に切替えられ、ドレンポート66bからオイルがドレンされる。
【0044】
(作動状態)
以下、上記のように構成された油圧制御回路40の4つの作動状態と、各作動状態でのソレノイドバルブ62,63が故障したときの故障検知について
図3を参照して説明する。各作動状態は、ECU50から指令に基くソレノイド62a,63aへの通電状態に応じて生じる。尚、
図3におけるハッチング部分は、正常時からの変更箇所を示す。
【0045】
(第1作動状態)
第1作動状態は、冷却油路L1及び潤滑油路L2に必要量の油圧を供給し、且つクラッチ21を作動可能な高いクラッチ圧を供給する必要がある状態である。第1作動状態は、例えば、クラッチ21を締結して、エンジン10の駆動力を使用して車両を走行するOD(オーバドライブ)モード時に生じる状態である。
【0046】
第1作動状態では、正常時には、第1ソレノイドバルブ62及び第2ソレノイドバルブ63の各ソレノイド62a,63aに通電される。ソレノイド62aに通電された第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力し、この制御圧は第1シフトバルブ64を作動させてレギュレータバルブ61に入力され、レギュレータバルブ61は第1切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4に高いライン圧が供給される。そして、通電された第2ソレノイドバルブ63は、第2シフトバルブ65に制御圧を出力し、第2シフトバルブ65は第3切替状態となる。よって、第2シフトバルブ65に入力された高いライン圧は第2シフトバルブ65を通して、高いクラッチ圧がクラッチ油路L3を介してクラッチ21に供給される。
【0047】
また、第2ソレノイドバルブ63から出力された制御圧は、2つのシフトバルブ64,65を介してリリーフバルブ66に入力されており、リリーフバルブ66は第6切替状態となっている。よって、冷却・潤滑元油路L5はドレンされており、冷却油路L1及び潤滑油路L2に油圧は供給されない。
【0048】
ここで、第1ソレノイドバルブ62が故障(OFF故障)した場合、第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力せず、レギュレータバルブ61に制御圧が入力されない。そのため、クラッチ元油路L4に低いライン圧が供給され、クラッチ油路L3に高いクラッチ圧が生じない。そこで、油圧センサ47によってクラッチ圧が低下したことを把握することにより、第1ソレノイドバルブ62が故障した可能性を検知することができる。
【0049】
ただし、このような状態は、第1ソレノイドバルブ62がOFF故障した場合だけでなく、レギュレータバルブ61又は第2シフトバルブ65の少なくとも1つが故障していた場合も同様に生じる。従って、この状態になったことを検知した場合、ECU50は、レギュレータバルブ61、第1ソレノイドバルブ62、又は第2シフトバルブ65の少なくとも何れか1つが故障していると判定する。
【0050】
他方、第2ソレノイドバルブ63が故障(OFF故障)した場合、第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力せず、リリーフバルブ66に制御圧が入力されない。そのため、冷却・潤滑元油路L5はドレンされない。ただし、第2シフトバルブ65には第2ソレノイドバルブ63から制御圧が入力されず、第2シフトバルブ65からクラッチ油路L3に供給されるクラッチ圧が低下する。そこで、油圧センサ47によってクラッチ油路L3のクラッチ圧が低下したことを把握することにより、第2ソレノイドバルブ63が故障した可能性を検知することができる。
【0051】
ただし、この状態は、第2ソレノイドバルブ63がOFF故障した場合だけでなく、第2シフトバルブ65が故障していた場合も同様に生じる。従って、この状態になったことを検知した場合、ECU50は、第2ソレノイドバルブ63又は第2シフトバルブ65の何れか1つが故障していると判定する。
【0052】
(第2作動状態)
第2作動状態は、冷却油路L1に必要時にのみ油圧を供給し、且つクラッチ21に高いクラッチ圧を供給する必要がない状態である。第2作動状態は、例えば、電気モータ11の駆動力を使用して車両を走行するECVTモードであって、低温であるために電気モータ11を冷却する必要がないときに生じる状態である。
【0053】
第2作動状態では、正常時には、第1ソレノイドバルブ62のソレノイド62aには通電されず、第2ソレノイドバルブ63のソレノイド63aには通電される。ソレノイド62aに通電されないので第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力せず、制御圧が入力されないレギュレータバルブ61は第2切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4に低いライン圧が供給され、冷却・潤滑元油路L5にライン圧が供給される。しかし、ソレノイド63aに通電された第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力し、この制御圧が入力されているリリーフバルブ66は第6作動状態であり、冷却・潤滑元油路L5に供給されたオイルはドレンされる。
【0054】
ここで、第1ソレノイドバルブ62が故障(ON故障)した場合、第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力し、この制御圧がレギュレータバルブ61に入力され、クラッチ元油路L4に高いライン圧が供給されることになる。このとき、第2ソレノイドバルブ63から制御圧が第2シフトバルブ65に入力されており、第2シフトバルブ65は第3切替状態であり、クラッチ油路L3に高いクラッチ圧が供給される。そこで、油圧センサ47によりクラッチ油路L3のクラッチ圧が上昇したことを把握することによって、第1ソレノイドバルブ62が故障した可能性を検知することができる。
【0055】
他方、第2ソレノイドバルブ63が故障(OFF故障)した場合、第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力せず、リリーフバルブ66に制御圧が入力されないので、リリーフバルブ66は第5切替状態となる。そのため、冷却・潤滑元油路L5はドレンされない。そして、車両走行中は常に、冷却・潤滑元油路L5にオイルが供給されている。そのため、冷却・潤滑元油路L5を介して冷却油路L1及び潤滑油路L2にオイルが供給される。冷却油路L1に流れたオイルはオイルクーラ44によって冷却される。従って、冷却油路L1を介してオイルパン51に戻ってきたオイルは低温であり、油温センサ53が検出する温度値が低下する。そこで、この温度低下を把握することにより、第2ソレノイドバルブ63が故障したことを検知することができる。
【0056】
(第3作動状態)
第3作動状態は、冷却油路L1及び潤滑油路L2に必要時にのみ油圧を供給し、且つクラッチ21に高いクラッチ圧を供給する必要はないが、素早くクラッチ圧を供給することが可能な状態である。第3作動状態は、例えば、エンジン10の駆動力を使用して車両を走行するOD(オーバドライブ)モード時において、クラッチ21を一時的に切断して、回転合せを行うときに生じる状態である。
【0057】
第3作動状態では、正常時には、第1ソレノイドバルブ62のソレノイド62aに通電されるが、第2ソレノイドバルブ63のソレノイド63aには通電されない。ソレノイド62aに通電された第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力し、この制御圧が入力されたレギュレータバルブ61は第1切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4には高いライン圧が供給される。しかし、ソレノイド63aに通電されない第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力せず、第2シフトバルブ65は第3切替状態となり、クラッチ油路L3にクラッチ圧が供給されない。ただし、回転合せ時に、ソレノイド63aに通電して第2ソレノイドバルブ63から制御圧を出力させることによって、第2シフトバルブ65は第3切替状態となり、クラッチ油路L3に高いクラッチ圧を供給させ、クラッチ21を素早く締結させることが可能となる。
【0058】
ここで、第1ソレノイドバルブ62が故障(OFF故障)した場合、第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力せず、制御圧が入力されないレギュレータバルブ61は第2切替状態となる。これにより、クラッチ元油路L4に低いライン圧が供給され、冷却・潤滑元油路L5にライン圧が供給されることになる。このとき、第2ソレノイドバルブ63から制御圧が入力されずリリーフバルブ66は第5切替状態であり、冷却・潤滑元油路L5はドレンされずに、冷却油路L1及び潤滑油路L2にオイルが供給される。そして、冷却油路L1に供給されたオイルはオイルクーラ44によって冷却される。従って、冷却油路L1を介してオイルパン51に戻ってきたオイルは低温であり、油温センサ53が検出する温度値が低下する。そこで、この温度低下を把握することにより、第1ソレノイドバルブ62が故障したことを検知することができる。
【0059】
他方、第2ソレノイドバルブ63が故障(ON故障)した場合、第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力し、この制御圧が入力された第2シフトバルブ65は第3切替状態となる。そのため、第2シフトバルブ65に供給されたライン圧は、第2シフトバルブ65で調圧されて、高いクラッチ圧がクラッチ油路L3に供給される。そこで、油圧センサ47によりクラッチ油路L3のクラッチ圧が上昇したことを把握することによって、第2ソレノイドバルブ63が故障した可能性を検知することができる。
【0060】
(第4作動状態)
第4作動状態は、クラッチ21に高いクラッチ圧を供給する必要がなく、且つ冷却油路L1及び潤滑油路L2にオイルを供給する必要がある状態である。第4作動状態は、例えば、低温時を除く電気モータ11の駆動力を使用して車両を走行するECVTモード又はEVモード時など、エンジン10を駆動させていない時、例えば、アイドルストップ時、エンジン始動時、エンジン停止時、アイドル充電時などに生じる状態である。
【0061】
第4作動状態では、正常時には、2つのソレノイドバルブ62,63の各ソレノイド62a,63aの何れも通電されない。ソレノイド62aに通電されないので第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力せず、制御圧が入力されないレギュレータバルブ61は第2切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4に低いライン圧が供給され、冷却・潤滑元油路L5にライン圧が供給される。そして、ソレノイド63aに通電されないので第2ソレノイドバルブ63も制御圧を出力せず、リリーフバルブ66は第5切替状態となり、冷却油路L1及び潤滑油路L2にオイルが供給される。
【0062】
ここで、第1ソレノイドバルブ62が故障(ON故障)した場合、第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力し、この制御圧が入力されたレギュレータバルブ61は第1切替状態となる。これにより、クラッチ元油路L4に高いライン圧が供給されることになる。このとき、第2ソレノイドバルブ63から制御圧が入力されず第2シフトバルブ65は第4切替状態であるので、クラッチ油路L3にクラッチ圧は供給されない。しかし、冷却油路L1に必要量に満たないオイルしか供給されないので、電気モータ11は高温となり、温度センサ43が検出する温度値が上昇する。そこで、この温度上昇を把握することによって、第1ソレノイドバルブ62が故障した可能性を検知することができる。
【0063】
他方、第2ソレノイドバルブ63が故障(ON故障)した場合、第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力し、この制御圧が入力されたリリーフバルブ66は第6切替状態になる。そのため、レギュレータバルブ61から冷却・潤滑元油路L5に供給されたオイルは、ドレンされる。そのため、冷却油路L1にオイルが供給されないので、電気モータ11は高温となり、温度センサ43が検出する温度値が上昇する。そこで、この温度上昇を把握することによって、第2ソレノイドバルブ63が故障した可能性を検知することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の変速機100によれば、油圧センサ47が検出した油圧の変化、温度センサ43が検出した電気モータ11の温度上昇、及び油温センサ53が検出したオイル温度の低下の組み合せによって、各作動状態で各バルブ61〜66の故障の可能性をECU50が判定するので、センサ43,47,53の何れかが故障しても、バルブ61〜66の故障の可能性を判定することが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、変速機100について説明した。しかし、本発明の変速機は変速機100に限定されない。例えば、無段変速機に対しても本発明を適用することができる。
【0066】
また、上述した実施形態では、冷却油路L1及び潤滑油路L2に接続される冷却・潤滑元油路L5にオイルを供給するレギュレータバルブ61を備えた場合について説明した。しかし、冷却油路L1に接続される冷却元油路にオイルを供給するレギュレータバルブを備えるものであってもよい。
【0067】
また、第2オイルポンプOP2などを備えないものであっても、第2オイルポンプOP2が電動モータで駆動されるものであってもよい。
【0068】
尚、油圧センサ47は、作動センサのようにリニアな値は検出できないが油圧閾値を超えたかどうかを検出できる油圧スイッチに置き換えてもよい。さらに、油圧センサ47又は油圧スイッチは、必要に応じて複数設けてもよく、例えば、第1シフトバルブ64の出口ポート64bと第2シフトバルブ65の入口ポート65aとの間の油路に設けてもよい。