(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転軸と前記入出力軸との間に、中空であり、かつ径方向の厚みが相対的に薄いトルクチューブが形成されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の超電導回転機の界磁回転子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において「中心軸」、「周面」、「周方向」、「径方向」は、特段の説明のない限り、回転軸の中心軸(回転軸の延びる方向に平行な中心軸)、周面、周方向、径方向を、それぞれ指すものとする。また、説明の便宜上、中心軸方向を前後方向とし、動力が入出力される側を前方、電力や冷媒が入出力される側を後方とする。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の第1態様の超電導回転機の界磁回転子は、回転軸と、回転軸の一端において回転軸へと冷媒を供給する供給軸と、回転軸の他端において回転軸と一体に回転するように設けられた入出力軸と、回転軸の周面に保持され、冷媒によって冷却される超電導コイルと、を備え、供給軸と入出力軸とは、一体に回転するように互いに固定されており、供給軸と回転軸とは、少なくとも一部において互いに接触することで回転軸が供給軸により支持され、かつ、回転軸の周方向及び回転軸の軸方向に摺動可能に嵌まり合っている。
【0013】
かかる構成では、超電導コイルを効率よく冷却する機能を確保するという要求と、超電導コイルと入出力軸との間でトルクを伝達させるための機械的な強度を確保するという要求と、超伝導コイルの冷却に伴う回転子の熱収縮を吸収するという要求という、3つの要求全てを、従来よりも容易に満たすことができる。
【0014】
第1実施形態の第2態様の超電導回転機の界磁回転子は、第1実施形態の第1態様の超電導回転機の界磁回転子であって、供給軸と回転軸とは、常温状態から冷温状態へと変化したときの径方向の熱収縮量が相対的に大きい一方が、該熱収縮量が相対的に小さい他方の外周側に位置するように配置される。
【0015】
かかる構成では、冷温状態において、供給軸と回転軸のうち、熱収縮量の大きい一方の軸が、軸芯に向かって収縮することで、熱収縮量の小さい他方の軸を外周から締め付けることになる。これにより、供給軸と回転軸とが互いに矯正作用を及ぼすことになり、調芯機能が効果的かつ自律的に実現される。
【0016】
第1実施形態の第3態様の超電導回転機の界磁回転子は、第1実施形態の第2態様の超電導回転機の界磁回転子であって、回転軸の該熱収縮量が、供給軸の該熱収縮量よりも相対的に大きい。
【0017】
かかる構成では、回転軸が冷温状態においてより低温となることから、回転軸の熱収縮量を供給軸の熱収縮量よりも大きくしやすい。よって、自立的な調芯機能をより容易かつ効果的に実現できる。
【0018】
第1実施形態の第4態様の超電導回転機の界磁回転子は、第1実施形態の第3態様の超電導回転機の界磁回転子であって、供給軸と回転軸とは、常温状態において、供給軸の鉛直方向下端部と回転軸の鉛直方向下端部との間には間隙が形成され、冷温状態において、供給軸の鉛直方向下端部と回転軸の鉛直方向下端部との間には間隙が形成されないように形成されている。
【0019】
かかる構成では、冷温状態において回転軸が供給軸を十分に締め付けることで、自律的な調芯機能をさらに効果的に実現できる。
【0020】
第1実施形態の第5態様の超電導回転機の界磁回転子は、第1実施形態の第1〜4態様のいずれかの超電導回転機の界磁回転子であって、回転軸のうち供給軸と嵌まり合う部分が中空である。
【0021】
かかる構成では、供給軸から回転軸への伝熱面積が小さくなることで、超電導コイルをより効率的に冷却できる。
【0022】
第1実施形態の第6態様の超電導回転機の界磁回転子は、第1実施形態の第1〜5態様のいずれかの超電導回転機の界磁回転子であって、回転軸のうち超電導コイルを保持する部分が中空である。
【0023】
かかる構成では、回転軸の伝熱面積、および熱容量が小さくなることにより、超電導コイルを効率的に冷却できる。更に、かかる構成では、回転軸が軽量化されるため、調芯機能をより確実に実現できる。
【0024】
第1実施形態の第7態様の超電導回転機の界磁回転子は、第1実施形態の第1〜6態様のいずれかの超電導回転機の界磁回転子において、回転軸と入出力軸との間に、中空であり、かつ径方向の厚みが相対的に薄いトルクチューブが形成されている。
【0025】
かかる構成では、出力軸から回転軸への伝熱面積が小さく断熱性に優れるため、超電導コイルをより効率的に冷却できる。
【0026】
以下の実施例では、超電導コイルに、超電導コイルの外部から電圧と電流とが継続的に供給されるものとして説明するが、超電導コイルの外部から電圧と電流とが継続的に供給されず、界磁巻線がいわゆる永久電流モードで用いられる構成を採用してもよい。
【0027】
本実施形態の界磁回転子は、図示されない固定子電機子の内部に格納されて動作する。固定子電機子については、周知の構成が利用可能であるので、説明を省略する。
【0028】
[第1実施例]
図1は、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子を、中心軸を通る鉛直面で切った概略構成の一例を示す断面図である。
【0029】
超電導回転機の界磁回転子100は、回転軸18と、供給軸10と、入出力軸24と、超電導コイル20と、を備えている。
【0030】
回転軸18は、例えば、界磁回転子100が、電磁的に空芯構造である場合は、オーステナイト(austenite)系ステンレス鋼、GFRPやCFRPの複合材などの非磁性材料により構成されうる。あるいは例えば、界磁回転子100が、電磁的に鉄芯構造である場合は、マルテンサイト(martensite)系ステンレス、フェライト(ferrite)系ステンレス、鉄合金などの磁性材材料により構成されうる。
【0031】
供給軸10は、回転軸18の一端(
図1における左端)において、回転軸18あるいは超伝導コイル20へと冷媒を供給する。冷媒の種類は特に限定されない。例えば、液体窒素、液体ヘリウム、低温ヘリウムガス等を冷媒に用いることができる。冷媒は、冷媒流路(図示せず)を通じて、供給軸10から回転軸18へと供給される。
図1に示す構成では、例えば、供給軸10及び回転軸18がいずれも中心軸に沿って延びる円筒状の空間を有し、該空間の内部に冷媒流路が配設されている。
図1に示す例において、供給軸10は、軸受12によって回転可能に支持されている。供給軸10は、例えば、ステンレス鋼などにより構成されうる。供給軸10は、必ずしも中空である必要はなく、供給軸10に冷媒を供給する通路があれば、同様の機能が達成される。
【0032】
入出力軸24は、回転軸18の他端(
図1における右端)において、回転軸18と一体に回転するように設けられている。入出力軸24は、超電導回転機が電動機である場合には出力軸となる軸であり、超電導回転機が発電機である場合には入力軸となる軸である。
【0033】
具体的には例えば、入出力軸24と回転軸18とは連続的に一体に成形されてもよい。あるいは例えば、入出力軸24と回転軸18とは別個に成型され、ボルト等の固定器具で互いに固定されてもよい。
図1に示す例において、入出力軸24は、軸受26によって回転可能に支持されている。また、
図1に示す例では、回転軸18と入出力軸24との間に、中空であり、かつ径方向の厚みが相対的に薄くなるように、トルクチューブ22が形成されている。入出力軸24は、例えば、ステンレス鋼や、ニッケル基合金、チタン合金などにより構成されうる。
【0034】
供給軸10と入出力軸24とは一体に回転するように互いに固定されている。具体的には、
図1に示す例において、供給軸10と入出力軸24とは常温ダンパ28を介して互いに固定されている。供給軸10と常温ダンパ28とは、例えば、ボルト等の固定器具で互いに固定されてもよい。常温ダンパ28と入出力軸24とは、例えば、ボルト等の固定器具で互いに固定されてもよい。供給軸10と入出力軸24とは、必ずしも別部材として構成されている必要はない。
【0035】
常温ダンパ28は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼と銅とを張り合わせたクラッド鋼(clad steels)などにより構成されうる。常温ダンパ28は、供給軸10と入出力軸24と気密に接続されている。超電導コイル20を冷却するため、超電導回転機の運転時において、常温ダンパ28の内側は真空(極低圧状態)とされている。
【0036】
超電導コイル20は、回転軸18の周面に保持され、冷媒によって冷却される。超電導コイル20は、例えば、ビスマス系超電導線材やイットリウム系超電導線材で構成される。超電導コイル20は、超電導回転機の運転時において、例えば、冷媒流路を通流する冷媒により、30K程度まで冷却されることにより、超電導状態となる。
【0037】
供給軸10と回転軸18とは、少なくとも一部において互いに接触することで回転軸18が供給軸10により支持され、かつ、回転軸18の周方向及び回転軸18の軸方向に摺動可能に嵌まり合っている。以下、本実施例における、摺動部分の具体的態様について説明する。
【0038】
図1に示す例では、供給軸側摺動部14が供給軸10に固定され、回転軸側摺動部16が回転軸18に固定されている。供給軸側摺動部14と供給軸10とは、同じ材料で構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。回転軸側摺動部16と回転軸18とは、同じ材料で構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。供給軸側摺動部14と供給軸10とが同じ材料で一体かつ連続に形成されていてもよい。回転軸側摺動部16と回転軸18とが同じ材料で一体かつ連続に形成されていてもよい。供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16は、いずれも、中心軸と略平行に延びる中実の円柱状、あるいは円筒状の形状を有している。供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16の内、外周側の軸は円筒状でなければならないが、内周側の軸は中実の円柱状、あるいは円筒状の形状を有しうる。
【0039】
常温状態における供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16のはめあい隙間は、
1)常温状態での組立て作業性、
2)常温状態から冷温状態へと冷却する過程で軸長方向の熱収縮量の差を吸収するための摺動性能、
3)冷温状態における調芯機能のための締付け力、及び応力状態、
を適切に保つように、供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16の熱収縮量の差に応じて、すきまばめ、中間ばめ、しまりばめが選択されうる。なお、はめあい隙間とは、軸と軸が挿入される穴との直径差である。すきまばめ、中間ばめ、しまりばめとは、JIS B 0401あるいはISO 286に基づく。例えば、すきまばめは、常にすきまができるはめいである。しまりばめは、常にしめしろができるはめあいである。中間ばめは、穴・軸の実寸法によってすきま又はしめしろのどちらかができるはめあいである。
【0040】
冷温状態とは、超電導コイルを超電導状態にするために冷却した温度状態としうる(以下同様)。具体的には例えば、冷温状態とは超電導コイルが30K程度に冷却された状態としうる。常温状態とは、前記冷温状態とするために冷却される前の温度状態としうる(以下同様)。具体的には例えば、常温とは室温としうる。
【0041】
例えば、供給軸側摺動部14、回転軸側摺動部16が同じ材料で形成される場合は、冷温状態における自律的な調芯効果を得るために、
図1の例のように、冷温側の回転軸側摺動部16が、供給軸側摺動部14を取り囲むように構成することが望ましい。この場合、低温側である回転軸側摺動部16の径方向の熱収縮量が、供給軸側摺動部14の径方向の熱収縮量よりも大きいため、冷温状態では、回転軸摺動部16が供給軸側摺動部14を締め付ける方向に作用する。熱収縮量は、常温状態における長さと冷温状態における長さとの差分としうる。かかる例においては、供給軸側摺動部14および回転軸側摺動部16のはめあいは、常温状態において、すきまばめが望ましい。具体的には例えば、はめあい公差は、H6/h6、あるいはH8/f6などが採用されうる。なお、H6、H8とは、JIS B 0401に示すところの穴公差を、h6、f6は軸公差を示し、はめあい部に隙間を構成しうる。
【0042】
図1の例であっても、低温側である回転軸側摺動部16の熱収縮量が、供給軸側摺動部14の熱収縮量よりも小さい例においては、冷却過程においてはめあいが弛緩する。かかる例では、供給軸側摺動部14や回転軸摺動部16において板の厚さを増やすなどして剛性を高くする、冷却に伴うはめあいの弛緩を補償するために常温状態でしまりばめを採用するなど、調芯機能を補償する対策を施すことが好ましい。ただし、板の厚さを増やさないほうが冷却に有利であり、しまりばめを採用しない方が組立て作業性や摺動性を良好に維持できる。供給軸側摺動部14や回転軸側摺動部16の材質の強度的な制約からしまりばめを形成しえない場合は、中間ばめが望まれる。かかる例では、調芯機能が供給軸側摺動部14および回転軸側摺動部16の剛性に依存するために、該剛性を十分に高くする必要があるが、冷却性能との両立に留意するのが好ましい。
【0043】
図2Aは、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の常温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を、中心軸を通る鉛直面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。
図2Bは、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の冷温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を、中心軸を通る鉛直面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。なお、
図2A、
図2Bは、説明のために比率を誇張して描かれている。
【0044】
本実施例では、供給軸10が回転軸18に挿入されるように構成されている。より詳細に言えば、供給軸10が備える供給軸側摺動部14が、回転軸18が備える回転軸側摺動部16に挿入されるように構成されている。供給軸10と回転軸18との接続部分では、供給軸側摺動部14の上に回転軸側摺動部16が載置された状態にある。常温状態において、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16は、回転軸18の自重を受けて真円状の円筒から変形するため、回転軸18の鉛直方向下端部と供給軸10の鉛直方向下端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向下端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向下端部との間、には供給軸側摺動部14と回転軸18の変形前の寸法から計算されるはめあい隙間とくらべて大きな間隙Dが形成されている。間隙Dは、具体的には例えば、0.1mm程度としうる。
【0045】
回転軸18側は、冷媒が供給されることにより冷却され、供給軸10側よりも低温となる。よって、回転軸側摺動部16と供給軸側摺動部14とが同じ材料で形成されている場合、冷温状態において、回転軸側摺動部16の径方向の熱収縮量は、供給軸側摺動部14の径方向の熱収縮量よりも大きくなる。その結果、回転軸側摺動部16は供給軸側摺動部14を締め付けるように作用し、供給軸と回転軸とが互いに矯正作用を及ぼし合うことで、調芯機能を効果的かつ自律的に実現できる。この調芯機構が効果的に作用する原理には、下記理由が考えられる。
【0046】
1)例えば、外周面に局所的な外力が作用して真円が崩れた円筒に、自身の熱収縮、あるいは外周面からの均質な締め付け力などが追加的に作用して、円筒壁に、真円形状を保持するような均質な内力が作用すると、結果的に、局所的な外力が総変形に及ぼす寄与率が下がることにより円筒は真円形状に近づき、自律的な調芯機能が作用する。
【0047】
2)例えば、
図2Bの様に回転軸側摺動部16と供給軸側摺動部14のはめあい部が全周にわたり接触する状態では、互いに保持しあうことで、
図2Aのように鉛直上部側のみが接触する状態と比べて、円筒の中心軸に垂直な面で切った断面に関する曲げ剛性が大きくなり、結果、回転体18に対する回転軸側摺動部16と供給軸側摺動部14の支持剛性が高くなり、調芯機能が増す方向に作用する。
【0048】
具体的には例えば、供給軸10の軸心10Cと回転軸18の軸心18Cとのずれは、常温状態におけるずれd1に対し、冷温状態におけるずれd2が小さくなる(d1>d2)。よって、冷却時の収縮により、自律的に調芯機能が実現される。なお、供給軸10の軸心10Cとは、供給軸10の中心軸であって回転軸18の中心軸に平行なものをいい、回転軸18の軸心18Cとは、回転軸18の中心軸をいう(以下同様)。なお、冷温状態とは、超電導回転機の運転時において、超電導コイルを超電導状態とするために冷却された後の温度状態としうる(以下同様)。具体的には例えば、冷温状態とは超電導コイルが30K(摂氏約−243度)程度に冷却された状態としうる。
【0049】
なお、回転軸18が冷却されると、供給軸側摺動部14、回転軸18、および、トルクチューブ22は軸方向にも熱収縮するが、常温ダンパ28はほとんど変化しないので、供給軸10と回転軸18との軸方向の間隙(
図2における供給軸側摺動部14の基部と回転軸側摺動部16の端部との間の距離)は、常温状態における間隙W1よりも、冷温状態における間隙W2の方が大きくなる(W1<W2)。よって、供給軸側摺動部14の長さは、間隙W2より長いことが好ましい。
【0050】
本実施例では、冷温状態において、回転軸18の鉛直方向下端部と供給軸10の鉛直方向下端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向下端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向下端部との間、には間隙が形成されない。換言すれば、冷温状態において、回転軸18と供給軸10とは全周にわたり互いに接触する。すなわち、冷温状態において、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは全周にわたり接触する。かかる構成では、冷温状態において、供給軸側摺動部14が回転軸側摺動部16によって効率的に締め付けられるため、さらに効果的に調芯機能が実現される。
【0051】
なお、回転軸18の鉛直方向下端部と供給軸10の鉛直方向下端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向下端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向下端部との間、には間隙が形成されてもよい。この場合でも、供給軸側摺動部14が回転軸側摺動部16によって締め付けられるため、調芯機能が実現される。
【0052】
図3Aは、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の常温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を中心軸に垂直な面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。
図3Bは、第1実施形態の第1実施例にかかる超電導回転機の冷温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を中心軸に垂直な面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。なお、
図3A、
図3Bは、説明のために比率を誇張して描かれている。
【0053】
図3Aに示すように、常温状態において、供給軸側摺動部14は、回転軸側摺動部16が載置されることで、断面の鉛直上側がつぶれた楕円形状となる。一方、回転軸側摺動部16は、上端部を供給軸側摺動部14によって支持されているため、自重により、断面は上下に延びた形状をなす。より詳細には、回転軸側摺動部16の上部は変形した供給軸側摺動部14の上部の形状に沿うように変形しつつも、上部は下部よりも支持すべき自重が大きいことからより強く引っ張られて延びるため、全体として断面は卵型をなす。常温状態において、供給軸側摺動部14の鉛直方向下端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向下端部との間には間隙Dが形成されている。
【0054】
図3Bに示すように、冷温状態において、回転軸側摺動部16は、供給軸側摺動部14よりも大きく熱収縮し、常温状態よりも真円に近くなる。供給軸側摺動部14は、冷却されて熱収縮すると共に、回転軸側摺動部16によって周囲から締め付けられることで、つぶれやゆがみが矯正され、常温状態よりも真円に近くなる。
【0055】
本実施例では、冷温状態において、供給軸10の鉛直方向下端部と回転軸18の鉛直方向下端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向下端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向下端部との間、には間隙が形成されない。換言すれば、冷温状態において、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは全周にわたり接触する。かかる構成では、冷温状態において、供給軸側摺動部14が回転軸側摺動部16によって効率的に締め付けられるため、さらに効果的に調芯機能が実現される。
【0056】
このように、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは、固定手段等により固定されずに、供給軸側摺動部14が、回転軸側摺動部16の内部に挿入されているだけである。このため、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは、回転軸18の周方向にも互いに摺動可能であり、回転軸18の軸方向にも互いに摺動可能である。なお、周方向及び軸方向の摺動可能性が確保されていれば、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とが、摺動面以外の部位において、何らかの締結手段等により一体かつ連続に形成されていてもよい。
【0057】
接続部分が周方向に摺動可能であるため、例えば、超電導コイル20により回転軸18に回転力(トルク)が加わっても、供給軸10と回転軸18との接続部分には強い応力が発生しない。換言すれば、接続部分が周方向に摺動可能であるため、供給軸10と回転軸18との間の回転方向のねじれを、周方向の摺動によって吸収することができる。
【0058】
接続部分が軸方向に摺動可能であるため、冷却によって回転軸18が収縮しても、回転軸18と供給軸10との接続部分には、軸方向の熱収縮を拘束することに起因する応力が発生しない。換言すれば、接続部分が軸方向に摺動可能であるため、供給軸10と回転軸18との間の軸方向の変位を、軸方向の摺動によって吸収することができる。
【0059】
以上のことから、供給軸10と回転軸18との接続部分に大きな強度を持たせる必要がなく、供給軸10と回転軸18との接続部分の、すなわちトルクチューブ22の伝熱面積を小さくすることが容易になる。あるいは、金属材料と比べて強度では劣るが断熱性に優れる材料を、例えばGFRPやCFRPなどの複合材などを、供給軸側摺動部14や回転軸側摺動部16へ適用することが容易となる。これら構造では、トルク伝達機能や調芯機能を損なうことなく超電導コイルを効率よく冷却する機能を確保するという要求を実現しやすくなる。
【0060】
一方で、入出力軸24は回転軸18と一体に回転するように設けられていることから、超電導コイル20および回転軸18と入出力軸24との間でトルク伝達を行うことができる。軸方向の熱収縮は供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16との摺動により吸収されるため、回転軸18と入出力軸24との接続部分は、調芯機能とトルク伝達機能に特化した構造を形成しうる。これにより、回転軸18と入出力軸24との接続部分の強度を十分に確保することが容易となり、超電導コイルと入出力軸との間でトルクを伝達させるための機械的な強度を確保するという要求を実現しやすくなる。
【0061】
さらに、供給軸10と入出力軸24とは、一体に回転するように互いに固定されていることから、供給軸10は、回転軸18から供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とを介してトルクが伝達されなくても、回転軸18と実質的に一体に回転することができる。
【0062】
すなわち、本実施例の超電導回転機の界磁回転子によれば、回転軸の一方の端にはトルクの入出力機能を持たせずに、調芯と熱収縮の吸収のみを行う機能を持たせ、回転軸の他方の端に、調芯とトルクの入出力のみを行う機能を効果的に持たせることができる。
【0063】
例えば、回転軸と入出力軸との間に、中空であり、かつ径方向の厚みが相対的に薄くなるようなトルクチューブ22を形成しうることが容易となる。かかる構成では、出力軸から回転軸への伝熱面積が小さく断熱性に優れるため、超電導コイルをより効率的に冷却できる。
【0064】
さらに例えば、前述の供給軸側摺動部14および回転軸側摺動部16による自律的な調芯機能により、摺動部の反対側で回転軸18の自重を保持するトルクチューブ22への負荷をさらに下げることができるため、トルクチューブ20の伝熱面積を小さくすることが、さらに容易になる。
【0065】
以上の結果、超電導コイルを効率よく冷却する機能を確保するという要求と超電導コイルと入出力軸との間でトルクを伝達させるための機械的な強度を確保するという要求との両立を従来よりも容易にすることができる。
【0066】
[第2実施例]
図4は、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の界磁回転子を、中心軸を通る鉛直面で切った概略構成の一例を示す断面図である。
【0067】
本実施例の超電導回転機の界磁回転子200は、供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16の構成が異なる以外は、第1実施例の超電導回転機の界磁回転子100と同様に構成されうる。よって、
図4と
図1とで共通する構成要素には同一の符号および名称を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
図4に示す例では、供給軸側摺動部14が供給軸10に固定され、回転軸側摺動部16が回転軸18に固定されている。ただし、供給軸側摺動部14と供給軸10とが一体に形成されていてもよい。回転軸側摺動部16と回転軸18とが一体に形成されていてもよい。供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16は、いずれも、中心軸と略平行に延びる中実の円柱状、あるいは円筒状の形状を有している。供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16の内、外周側の軸は円筒状でなければならないが、内周側の軸は中実の円柱状、あるいは円筒状の形状を有しうる。
【0069】
供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16は、いずれも、中心軸と略平行に延びる円筒状の形状を有している。常温状態において、供給軸側摺動部14の内径は、回転軸側摺動部16の外径よりも大きい。このため、常温状態には、回転軸側摺動部16は、供給軸側摺動部14との間に間隙を有しながら、供給軸側摺動部14の内部に挿入されうる。
【0070】
供給軸側摺動部14及び回転軸側摺動部16のはめあい隙間については、大小関係が入れ替わる点以外は第1実施例と同様とすることができる。よって、詳細な説明を省略する。
【0071】
図5Aは、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の常温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を、中心軸を通る鉛直面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。
図5Bは、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の冷温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を、中心軸を通る鉛直面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。なお、
図5A、
図5Bは、説明のために比率を誇張して描かれている。
【0072】
本実施例では、回転軸18が供給軸10に挿入されるように構成されている。より詳細に言えば、回転軸18が備える回転軸側摺動部16が、供給軸10が備える供給軸側摺動部14に挿入されるように構成されている。供給軸10と回転軸18との接続部分では、供給軸側摺動部14の上に回転軸側摺動部16が載置された状態にある。常温状態において、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16は、回転軸18の自重を受けて真円状の円筒から変形するため、回転軸18の鉛直方向上端部と供給軸10の鉛直方向上端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向上端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向上端部との間、には供給軸側摺動部14と回転軸18の変形前の寸法から計算されるはめあい隙間とくらべて大きな間隙Dが形成されている。間隙Dは、具体的には例えば、0.1mm程度としうる。
【0073】
回転軸18側は、冷媒が供給されることにより冷却され、供給軸10側よりも低温となる。一方で、供給軸10側も、回転軸18側に熱が奪われることで、冷却される。ここで、例えば、供給軸10の材料が、回転軸18の材料よりも、熱線膨張率が大きい材料で形成されている場合には、冷温状態において、供給軸10側の径方向の熱収縮量は、回転軸18側の径方向の熱収縮量よりも大きくなる。かかる材料の組合せ例としては、供給軸10の材料としてステンレス鋼、回転軸18の材料としてインバー合金を用いる場合が挙げられる。かかる構成では、供給軸10の軸心10Cと回転軸18の軸心18Cとのずれは、常温状態におけるずれd1に対し、冷温状態におけるずれd2が小さくなる(d1>d2)。その結果、供給軸側摺動部14は回転軸側摺動部16を締め上げるように作用し、供給軸と回転軸とが互いに矯正作用を及ぼし合うことで、調芯機能を効果的かつ自律的に実現できる。調芯機構が効果的に作用する原理は、第1実施例で述べた通りであるので、記載を省略する。
【0074】
なお、回転軸18が冷却されると、供給軸側摺動部14、回転軸18、および、トルクチューブ22は軸方向にも熱収縮するが、常温ダンパ28はほとんど変化しないので、供給軸10と回転軸18との軸方向の間隙(
図5における供給軸側摺動部14の端部と回転軸側摺動部16の基部との間の距離)は、常温状態における間隙W1よりも、冷温状態における間隙W2の方が大きくなる(W1<W2)。よって、回転軸側摺動部16の長さは、間隙W2より長いことが好ましい。
【0075】
本実施例では、冷温状態において、回転軸18の鉛直方向上端部と供給軸10の鉛直方向上端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向上端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向上端部との間、には間隙が形成されない。換言すれば、冷温状態において、回転軸18と供給軸10とは全周にわたり互いに接触する。すなわち、冷温状態において、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは全周にわたり接触する。かかる構成では、冷温状態において、回転軸側摺動部16が供給軸側摺動部14によって効率的に締め付けられるため、さらに効果的に調芯機能が実現される。
【0076】
図6Aは、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の常温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を中心軸に垂直な面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。
図6Bは、第1実施形態の第2実施例にかかる超電導回転機の冷温状態の界磁回転子において、供給軸側の摺動可能な部位を中心軸に垂直な面で切った概略構成の一例を示す断面模式図である。なお、
図6A、
図6Bは、説明のために比率を誇張して描かれている。
【0077】
図6Aに示すように、常温状態において、供給軸側摺動部14は、自重に加え、下端部に回転軸側摺動部16が載置されることで、断面は上下に延びた形状をなす。より詳細には、供給軸側摺動部14の下部は変形した回転軸側摺動部16の下部の形状に沿うように変形し、かつ、上部は下部よりも支持すべき自重が大きいことからより強く引っ張られて延びるため、全体として断面は卵型をなす。一方、回転軸側摺動部16は、供給軸側摺動部14に載置されることで、自重により、断面の鉛直下側がつぶれた楕円形状となる。常温状態において、供給軸側摺動部14の鉛直方向上端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向上端部との間には間隙Dが形成されている。
【0078】
図6Bに示すように、冷温状態において、供給軸側摺動部14は、回転軸側摺動部16よりも大きく熱収縮し、常温状態よりも真円に近くなる。回転軸側摺動部16は、冷却されて熱収縮すると共に、供給軸側摺動部14によって周囲から締め付けられることで、つぶれやゆがみが矯正され、常温状態よりも真円に近くなる。
【0079】
本実施例では、冷温状態において、供給軸10の鉛直方向上端部と回転軸18の鉛直方向上端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向上端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向上端部との間、には間隙が形成されない。換言すれば、冷温状態において、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは全周にわたり接触する。かかる構成では、冷温状態において、回転軸側摺動部16が供給軸側摺動部14によって効率的に締め付けられるため、さらに効果的に調芯機能が実現される。
【0080】
冷温状態において、供給軸10の鉛直方向上端部と回転軸18の鉛直方向上端部との間、すなわち供給軸側摺動部14の鉛直方向上端部と回転軸側摺動部16の鉛直方向上端部との間、には間隙が形成されてもよい。この場合でも、回転軸側摺動部16が供給軸側摺動部14によって締め付けられるため、調芯機能が実現される。
【0081】
このように、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは、固定手段等により固定されずに、回転軸側摺動部16が、供給軸側摺動部14の内部に挿入されているだけである。このため、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とは、回転軸18の周方向にも互いに摺動可能であり、回転軸18の軸方向にも互いに摺動可能である。なお、周方向及び軸方向の摺動可能性が確保されていれば、供給軸側摺動部14と回転軸側摺動部16とが、摺動面以外の部位において、何らかの締結手段等により一体かつ連続に形成されていてもよい。
【0082】
本実施例においても、第1実施例と同様の効果が得られる。すなわち、本実施例の超電導回転機の界磁回転子によれば、回転軸の一方の端にはトルクの入出力機能を持たせずに、調芯と熱収縮の吸収のみを行う機能を持たせ、回転軸の他方の端にトルクの入出力機能を集中させることができる。その結果、超電導コイルを効率よく冷却する機能を確保するという要求と超電導コイルと入出力軸との間でトルクを伝達させるための機械的な強度を確保するという要求との両立を従来よりも容易にすることができる。
【0083】
第2実施例においても、トルクチューブを形成する等、第1実施例と同様の変形が可能である。
【0084】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。