特許第6013876号(P6013876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013876
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20161011BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H01L27/04 A
   H01L27/06 311C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-239494(P2012-239494)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-90096(P2014-90096A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小山 威
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 嘉胤
【審査官】 小堺 行彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−043036(JP,A)
【文献】 特開2006−196487(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00923126(EP,A1)
【文献】 特開2002−289786(JP,A)
【文献】 特開2000−332045(JP,A)
【文献】 特開平08−017859(JP,A)
【文献】 特開2005−064462(JP,A)
【文献】 特開2007−043035(JP,A)
【文献】 特開2006−147756(JP,A)
【文献】 特開2011−171762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドの下にNMOSトランジスタを有する半導体装置であって、
交互に配置されたソース及びドレインの拡散領域と、前記ソースと前記ドレインとの間の各チャネルの上に配置されたゲート電極と、前記ソース及びドレインの拡散領域と前記ゲート電極を取り囲んでいる基板の電位を固定するためのP型拡散領域とを有し、前記チャネルの数は偶数である前記NMOSトランジスタと、
前記ドレインとの電気的接続を取るために前記ドレイン上に配置された第1の下層金属膜と、
前記ソースと前記ゲート電極を前記P型拡散領域に電気的に接続するための第2の下層金属膜と、
矩形リング形状であり、前記パッドの下において開口部を有する、第一ビアを介して前記第1の下層金属膜に電気的に接続された中間層金属膜と、
前記中間層金属膜の上に配置され、前記中間層金属膜に第二ビアを介して電気的に接続された、前記パッドを形成している上層金属膜と、
前記開口部と一致するパッド開口部を有する保護膜と、
を有し、
前記第一ビアは、前記中間層金属膜の一辺と前記一辺に対向する他辺とのみに配置されており、
前記ソース及びドレインの拡散領域は前記NMOSトランジスタのチャネル幅方向の直線に関して対称に配置されている半導体装置。
【請求項2】
前記NMOSトランジスタは、ゲート長方向での両端の拡散領域として前記ソースの拡散領域を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記NMOSトランジスタは、ゲート長方向での両端の拡散領域として前記ドレインの拡散領域を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記NMOSトランジスタは、前記NMOSトランジスタの中心に位置する前記ソースの拡散領域に両側を挟まれた基板の電位を固定するためのP型拡散領域を、さらに有する請求項2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドの下にNMOSトランジスタを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICあるいは半導体チップとも呼ばれる半導体装置は、他の素子あるいは他の半導体装置と電気的に接続するために、外部接続用電極であるパッドを有する。このパッド近傍には、通常、ESD(静電気放電)から半導体装置の内部回路を保護するESD保護回路が設けられる。ESD保護回路には、マルチフィンガータイプのNMOSトランジスタが使用されることが多い。この時、このNMOSトランジスタのゲート電極とソースとバックゲートとは接地端子に接続され、ドレインはパッドに接続される。
【0003】
ここで、マルチフィンガータイプのNMOSトランジスタを用いたESD保護回路では、様々な工夫を試みることにより、各チャネルが均一に動作し、半導体装置のESD耐量が高くなるようにしている。具体的には、たとえば特許文献1の技術においては、ESD保護回路のNMOSトランジスタのサリサイド金属膜とゲート電極との距離を適宜制御している。特許文献2の技術においては、ソースのコンタクトの数を適宜制御している。特許文献3の技術においては、チャネル長の長さを適宜制御している。いずれの技術も、NMOSトランジスタのレイアウトを細かく規定する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−210904号公報
【特許文献2】特開2010−219504号公報
【特許文献3】特開2007−116049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ESDのサージ電流は、極めて大きな且つ瞬間的な電流である。そのため、そのサージ電流に基づいてNMOSトランジスタのレイアウトを規定することは、非常に困難である。逆に、ESD耐量のNMOSトランジスタのレイアウトへの依存性を定量化することも、事実上ほとんど不可能である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、マルチフィンガータイプのESD保護のためのNMOSトランジスタのレイアウトの寸法を規定することなしに、ESD耐量を高くすることが可能な半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、パッドの下にNMOSトランジスタを有する半導体装置であり、ソース及びドレインの領域を交互に有し、前記ソースと前記ドレインとの間のチャネルの上にゲート電極を有し、前記チャネルの数は偶数である前記NMOSトランジスタと、前記ドレインへの電気的接続のための下層金属膜と、矩形リング形状であり、前記パッドの下において開口部を有する中間層金属膜と、前記下層金属膜と前記中間層金属膜とを電気的に接続する、前記ドレインへの電気的接続のための第一ビアと、前記開口部と略一致するパッド開口部で前記パッドを露出させる上層金属膜と、前記パッド開口部を有する保護膜と、を備え、前記第一ビアは、前記中間層金属膜の一辺と、前記一辺に対向する他辺と、のみに設けられていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
第一ビアは、パッドからESD保護回路のNMOSトランジスタのドレインへの電気的接続のためのものである。この第一ビアは、パッドの下において、矩形リング形状である中間層金属膜の一辺と、その一辺に対向する他辺と、のみに設けられる。つまり、ドレインへの電気的接続のための全ての第一ビアが、ほぼパッドの直下に対称に存在する。
【0009】
よって、パッドに印加されるESDのサージ電流は、全てのドレインに均一に向かい易くなる。すると、ESD保護回路のNMOSトランジスタの各チャネルが均一に動作し易くなり、半導体装置のESD耐量を高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半導体装置のパッド構造を示す平面図であり、(A)は拡散領域とゲート電極とコンタクトとパッド開口部とを示し、(B)は拡散領域と下層金属膜とパッド開口部とを示す。
図2】半導体装置のパッド構造を示す平面図であり、(C)は下層金属膜と第一ビアと中間層金属膜とパッド開口部とを示し、(D)は第二ビアと上層金属膜とパッド開口部とを示す。
図3】半導体装置のパッドの下のESD保護回路を示す回路図である。
図4】半導体装置のパッド構造を示す平面図である。
図5】半導体装置のパッド構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、半導体装置のパッド構造について図1図2を用いて説明する。図1は半導体装置のパッド構造を示す平面図であり、(A)は拡散領域とゲート電極とコンタクトとパッド開口部とを示し、(B)は拡散領域と下層金属膜とパッド開口部とを示している。図2図1と同じ半導体装置のパッド構造を示す平面図であり、(C)は下層金属膜と第一ビアと中間層金属膜とパッド開口部とを示し、(D)は第二ビアと上層金属膜とパッド開口部とを示している。
【0012】
図1の(A)に示すように、基板電位を固定するためのP型拡散領域10及びソース及びドレインのN型拡散領域12を設け、ソース及びドレインのN型拡散領域12の間にはゲート電極13を設け、NMOSトランジスタ21を構成している。NMOSトランジスタ21は、マルチフィンガータイプになっている。このNMOSトランジスタ21は、基板電位を固定するためのP型拡散領域10に取り囲まれ、ソース及びドレインのN型拡散領域12を交互に有し、ゲート電極13は、図では上下端となるゲート幅方向の両端において互いに接続されている。ここでチャネルの数は偶数であり、ゲート長方向での両端の拡散領域としてソースとなるN型拡散領域12を有している。こうすると、NMOSトランジスタ21のドレインは常にゲート電極13に図面上で左右を挟まれるので左右対称の構造となり、NMOSトランジスタ21の各トランジスタにおいて、ESDのサージによる電流がドレインからソースに各ドレインを中心に図中左右対称に流れる。NMOSトランジスタ21のゲート電極13とソースとP型拡散領域10とは、接地端子に接続されて接地電圧VSSが印加される。ソース及びドレインのN型拡散領域12の上には、コンタクト14を設け、コンタクト14を介してドレインと下層金属膜15とを電気的に接続する。
【0013】
図1の(B)は、ドレインへの電気的接続を取るための下層金属膜15の配置を示している。ドレインは、最終的にパッドに接続される。また、下層金属膜15はゲート電極とソースとP型拡散領域10とを接地端子に接続している。なお、この図において、“S”はソースを示し、“D”はドレインを示している。N型拡散領域12を形成するための不純物を注入する領域はレジストマスクの開口部11により規定される。
【0014】
図2の(C)に示すように、下層金属膜15の上には、矩形リング形状を有する、後に形成されるパッド22の下において開口部を有する中間層金属膜17を配置する。なお、図において中間層金属膜17は透明にしてあり、下にある下層金属膜15が見えるように描いてある。下層金属膜15と中間層金属膜17の間には第一ビア16を配置してある。第一ビア16は、下層金属膜15と中間層金属膜17とを電気的に接続する。中間層金属膜17は下層金属膜15を介してドレインへ電気的に接続される。第一ビア16は、中間層金属膜17のチャネル幅方向の一辺と、その一辺に対向する他辺と、のみに配置されている。第一ビアをこのように配置することでNMOSトランジスタを含むパッドを有する半導体装置は、NMOSトランジスタのチャネル幅方向の中央の直線に関して全ての構成要素において対称性を有することができる。この例では中央の直線は、中央のドレインの中心を通る直線となる。
【0015】
さらに、中間層金属膜17は矩形リング形状であり、パッド22の下には、中間層金属膜17が存在しないので、連続した厚い絶縁膜が存在することになる。こうすると、外部接続用電極であるパッド22がワイヤーボンディングされる時に、ワイヤーボンディングの衝撃により、パッド22の下の方向に応力が生じでも、その応力は厚い絶縁膜によって吸収され、絶縁膜にクラックが生じにくくなる。また、プロービング時に、プローブカードのプローブ針がパッド22に接触し、その接触によって衝撃が生じでも、絶縁膜にクラックが生じにくくなる。
【0016】
図2の(D)に示すように、中間層金属膜17の上には第二ビア18を設け、その上にパッドとなる上層金属膜19を配置する。第二ビア18は、中間層金属膜17と上層金属膜19とを電気的に接続する。上層金属膜19の表面には中間層金属膜17の開口部と略一致するパッド開口部23を有する保護膜を設ける。パッド22はパッド開口部23で上層金属膜19が露出している。
【0017】
以上図1および図2により実施の形態を示したパッド下にESD保護回路であるNMOSトランジスタ21を有する半導体装置は、電源端子のESD保護に好適である。入力端子のESD保護に用いる場合は、ドレインの上に配置された下層金属膜15同士を接続し、バックゲート上に設けられた下層金属膜15を有さない部分から、下層金属膜15を内部回路へと引き出す等の方法を取れば良い。
【0018】
次に、半導体装置のパッド22の下のESD保護回路によるESD保護動作について説明する。図3は、半導体装置のパッドの下のESD保護回路であるNMOSトランジスタ21を示す回路図である。
【0019】
パッド22へ正のサージが印加されると、サージ電圧は保護回路を構成するNMOSトランジスタ21のドレインに印加される。サージ電圧は大きいのでドレインでブレイクダウンを起こし、基板に電流が流れ込み、基板の電位をあげる。この電位の上昇が0.6Vを超えると、ドレインをコレクタ、基板をベース、ソースをエミッタとするバイポーラトランジスタが動作することになり、サージによる大きな電流を接地端子に流す。反対に、パッド22に負のサージが印加されると、NMOSトランジスタ21の寄生ダイオードにかかる電圧が順方向となり、この寄生ダイオードを介して、サージによる電流は接地端子との間を流れることになる。このようにして保護回路は、接地端子にサージを導くことで内部回路にサージを伝えず、内部回路を保護している。
【0020】
本発明においては、マルチフィンガータイプのESD保護のためのNMOSトランジスタのレイアウトの寸法を規定することなしに、パッドからドレインにいたる各金属層の形状およびビアの配置を対称(左右あるいは上下)にすることで、NMOSトランジスタの各チャネルが均一に動作し易くなり、半導体装置のESD耐量を高くすることを可能としている。
【0021】
さらに半導体装置のESD保護回路のNMOSトランジスタ21が、半導体装置のパッド22の下に存在するので、NMOSトランジスタ21のドレインとパッド22との間の距離が短くなり、その分、寄生抵抗が小さくなる。パッド22からNMOSトランジスタ21のドレインまでの寄生抵抗が小さくなると、その分、サージ電流がパッド22からNMOSトランジスタ21に流れ易くなり、サージ電流がパッド22から内部回路には流れにくくなる。よって、内部回路は、サージ電流から、より保護されるようになる。
【0022】
また、前述のように寄生抵抗が小さくなると、その寄生抵抗にサージ電流が流れても、寄生抵抗での局所的な発熱が少なくなる。よって、ESD保護回路のNMOSトランジスタ21で、局所的な発熱によるESD耐量の低下が、起こりにくくなる。よって、内部回路は、サージ電流から、より保護されることになる。
【0023】
図4は本発明の第二の実施形態を示している。(A)は拡散領域とゲート電極とコンタクトとパッド開口部とを示し、(B)は拡散領域と下層金属膜とパッド開口部とを示している。図4(A)に示すように、NMOSトランジスタ21の両端および中央がソース領域である場合には、ソースおよびドレイン領域近傍の基板電位を安定させるために、NMOSトランジスタ21の中心に沿って、ソースのN型拡散領域12に隣接するように基板電位を固定するためのP型拡散領域10を配置することが可能である。
【0024】
図5は本発明の第三の実施形態を示している。(A)は拡散領域とゲート電極とコンタクトとパッド開口部とを示し、(B)は拡散領域と下層金属膜とパッド開口部とを示している。図1では、NMOSトランジスタ21は、ゲート長方向での端の拡散領域として、ソースであるN型拡散領域12を有していたが、図5(A)に示すように、ドレインであるN型拡散領域12を有していても良い。
また、中間層金属膜17の開口部及びパッド開口部23は、矩形であり、正方形でも長方形でも良い。
【0025】
また、上記の説明では、下層金属膜15と中間層金属膜17と上層金属膜19との3層の金属膜が使用されているが、4層以上の金属膜が適宜使用されても良い。この時、上層金属膜の下の金属膜は、矩形リング形状であり、パッド22の下において開口部を有するように構成する必要がある。
【0026】
また、NMOSトランジスタ21のゲート電極13は、上記の説明では、連続しているが、図示しないが、対称性を満たしていれば適宜切断されても良い。この切断されたゲート電極13は、下層金属膜15によって接続されている。
【符号の説明】
【0027】
10 P型拡散領域
12 N型拡散領域
13 ゲート電極
14 コンタクト
15 下層金属膜
16 第一ビア
17 中間層金属膜
18 第二ビア
19 上層金属膜
21 NMOSトランジスタ
22 パッド
23 パッド開口部
図1
図2
図3
図4
図5