(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法における工程(1)は、消泡剤を含有する培地中で反応基質を微生物変換して得られる微生物醗酵生産物を、疎水性溶媒にて抽出する工程である。
本発明の方法で製造される微生物醗酵生産物とは、香料、香料原料、油脂として使用される化合物又はその中間体であり、親水性、疎水性、両親媒性の何れの性質を有していてもよいが、培養液からの生産物の分離性の点から、水に溶解し難いものが好ましい。微生物醗酵生産物の水への溶解度(25℃)は、0.1〜10000mg/Lが好ましく、更に0.1〜5000mg/Lが好ましい。
そして、反応基質、当該基質を変換する微生物、培養条件は、これら微生物醗酵生産物の種類に応じて適宜選択することができる。
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施態様の一例として、次の一般式(1a)及び/又は(1b)
【0013】
で表される化合物(スクラレオール)を反応基質として、微生物を用いて次の式(2)
【0015】
で表される1−(2−ヒドロキシエチル)−2,5,5,8a−テトラメチルデカヒドロナフタレン−2−オール(ジオール体)を製造する方法を説明する。
【0016】
ジオール体の製造において、微生物変換に利用できる微生物としては、前記式(1a)及び/又は(1b)で表される化合物を基質として式(2)で表されるジオール体を生成し、菌体外に産出する能力を有する微生物であればよく、例えば子嚢菌綱(Ascomycetes)に属する微生物、担子菌綱(Basidiomycetes)に属する微生物が挙げられる。
子嚢菌綱(Ascomycetes)に属する微生物としては、ハイホジーマ(Hyphozyma)属に属する微生物が挙げられる。また、担子菌綱(Basidiomycetes)に属する微生物としては、クリプトコッカス(Cryptococcus)属に属する微生物が挙げられる。なかでも、ジオール体の生成効率の点から、子嚢菌綱(Ascomycetes)に属する微生物が好ましい。
ハイホジーマ(Hyphozyma)属に属する具体的な微生物としては、例えばAscomycete sp.KSM−JL2842と命名され、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)にFERM P−20759として2006年1月12日に寄託された微生物、特許第2547713号明細書に記載のハイホジーマ ロセオニガー ATCC20624株が挙げられる。
【0017】
また、ジオール体の製造において、微生物変換に利用できる微生物は、ジオール体の生成能を指標として土壌から単離することができる。当該ジオール体の生成能は、供試微生物を前記式(1a)及び/又は(1b)で表される化合物を含有する培地にて培養し、培地中に含まれるジオール体を検出することで評価することができる。ジオール体の検出は、例えばガスクロマトグラフィー(GC)、気液クロマトグラフィー(GLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、赤外スペクトル(IR)、核磁気共鳴(NMR)等の従来公知の分析方法を用いることができる。
【0018】
本発明においては、微生物を培養する培地として消泡剤を含有する培地を用いる。
消泡剤は、醗酵時の発泡を抑制でき、醗酵阻害の少ないものであればよく、例えばシリコーン系消泡剤、動植物油系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、又はアルコール系消泡剤等が挙げられる。なかでも、消泡性能が良好であり、醗酵阻害が少ない観点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。シリコーン系消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサン、有機変性ポリシロキサン、シリコーンエマルジョン、シリコーン処理粉末、シリコーンペースト、フッ素シリコーン等が挙げられる。
【0019】
培地中の消泡剤の含有量は、過剰な発泡を抑制する観点から、好ましくは0.5質量%(以下、単に「%」と記載する)以上、より好ましくは0.75%以上である。また、消泡剤の含有量は、ジオール体生産性を良好にする観点から、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下である。また上記観点より、好ましくは0.5〜2%、より好ましくは0.75〜2%、更に好ましくは0.75〜1.5%である。
消泡剤は培養に先立って培地に添加してもよく、また培養中に添加してもよいが、培養中に添加することが好ましい。
【0020】
培地は、微生物が生育可能であればいかなる組成の培地をも使用することができる。使用可能な培地としては、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、有機酸塩等の炭素源;無機並びに有機アンモニウム塩、窒素含有有機物、アミノ酸等の窒素源;塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等の金属ミネラル類及びビタミン類等を含有する液体培地を挙げることができる。
培地には、基質の分散性を良好として、ジオール体の生産性を良好とする観点から、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤は、醗酵阻害の少ないものであればよく、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0021】
微生物を培養する際の培養条件としては、例えば通気培養、嫌気培養、撹拌培養、振盪培養、静置培養、発酵槽による培養の他、休止菌体反応及び固定化菌体反応を用いることができる。なかでも、微生物増殖性及びジオール体の生産性を良好にする観点から、通気培養が好ましい。通気培養での培養日数は、反応基質の添加から1〜15日が好ましい。
【0022】
培地の初発pH(25℃)は、微生物増殖性及びジオール体生産性を良好にする観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上であり、また好ましくは8以下、より好ましくは7以下である。
【0023】
培養温度は、微生物増殖性及びジオール体生産性を良好にする観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、また好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下である。
【0024】
反応基質として培地に添加する前記式(1a)及び/又は(1b)で表される化合物の濃度は、ジオール体の生成効率の点から、培地中に0.1〜50%とすることが好ましく、1〜10%とすることがより好ましい。基質は培養に先立って培地に添加してもよく、培養途中で添加してもよい。
【0025】
(工程(1))
このような微生物変換により生産されるジオール体を培養液から疎水性溶媒にて抽出する。当該培養液には、ジオール体の他、未反応の反応基質、微生物、培地成分等が含まれていてもよい。
本発明においては、ジオール体を疎水性溶媒にて抽出する前に、製造されるジオール体の匂い・色相を良好なものとする観点から、培養液中の培地成分等の水分の一部を予め遠心分離等で除去してもよい。
遠心分離は、分離板型、円筒型、デカンター型等の一般的な遠心分離機を用いることができ、バッチ式、連続式のいずれを用いることもできる。遠心分離の条件は適宜調整することができる。
【0026】
本発明で「疎水性溶媒」とは、100gの水中における25℃での溶解度が1質量%以下の溶媒をいう。
本発明で用いられる疎水性溶媒のSP値は、ジオール体の溶解性の観点から、好ましくは14(MPa)
1/2以上、より好ましくは15(MPa)
1/2以上、更に好ましくは16(MPa)
1/2以上、更に好ましくは17(MPa)
1/2以上である。また、疎水性溶媒のSP値は、水との分層性の観点から、好ましくは19(MPa)
1/2以下、より好ましくは18.5(MPa)
1/2以下である。また上記観点より、好ましくは14〜19(MPa)
1/2、より好ましくは15〜19(MPa)
1/2、更に好ましくは16〜18.5(MPa)
1/2、更に好ましくは17〜18.5(MPa)
1/2である。
ここで、疎水性溶媒のSP値とは、溶解度パラメーターを示し、液体分子凝集エネルギーEと分子容Vから(E/V)
1/2(MPa)
1/2で与えられる物質定数である。各種方法で求められるが、本発明におけるSP値は、J.BRANDR UP著「POLYMER HANDBOOK 4th」(JOHN WILEY&SONS,INC 1999年発行)、VII688〜694項に示された値を用いることができ、そこに記載のないものについてはFedorsの方法に従い、J.BRANDR UP著「POLYMER HANDBOOK 4th」、VII685〜686項に示されるパラメーターを用いて算出した値を用いることができる。
複数の溶媒を組み合わせて用いる場合は、各溶媒のSP値の体積平均値を計算することにより求める。
【0027】
好ましい疎水性溶媒としては、例えばシクロヘキサン(SP値=16.8(MPa)
1/2)、4−メチル−2−ペンタノン(SP値=17.2(MPa)
1/2)、キシレン(SP値=18.0(MPa)
1/2)、トルエン(SP値=18.2(MPa)
1/2)、酢酸エチル(SP値=18.6(MPa)
1/2)等が挙げられる。
【0028】
疎水性溶媒の使用量は、使用する溶媒により適宜設定することが好ましい。本発明においては、ジオール体の回収率(歩留まり)の観点から、培養液100mLに対して10〜2000mLとするのが好ましく、100〜1500mLとするのがより好ましく、200〜1200mLとするのがより好ましい。
【0029】
培養液と疎水性溶媒を混合した際の混合液の温度は、0〜80℃であることが好ましく、20〜65℃であることがより好ましい。このときの混合時間は、ジオール体の溶解性及び製造されるジオール体の匂い・色相を良好なものとする観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは5分間以上であり、また好ましくは120分間以下、より好ましくは60分間以下である。
【0030】
培養液と疎水性溶媒を混合した後、疎水性溶媒層と水層を分離させ、水層を除去して疎水性溶媒抽出液を得る。水層には、微生物や微生物由来の不純物等が含まれており、これにより不純物等を除去できる。疎水性溶媒層と水層を分離する手段としては、静置分離、遠心分離等が挙げられる。
分離条件は適宜調整することができるが、例えば静置分離は10〜60分間行い、疎水性溶媒層を分取することが好ましい。静置時の混合液の温度は特に規定されないが、0〜80℃であることが好ましく、20〜65℃であることがより好ましい。
【0031】
(工程(2))
本発明の方法における工程(2)は、前記工程(1)で得られた微生物醗酵生産物を含む疎水性溶媒抽出液をアルカリ水溶液と混合した後、疎水性溶媒抽出液をアルカリ水溶液から分離する工程である。
予め微生物醗酵生産物を含む疎水性溶媒抽出液をアルカリ水溶液と混合することにより濾過能力の低下を抑えられる理由は必ずしも明らかではないが、疎水性溶媒抽出液に混入した消泡剤に由来する物質、又は未反応の反応基質、微生物若しくは培地成分等と消泡剤に由来する物質の夾雑物がアルカリ水溶液に移行又は溶解されるためと考えられる。
【0032】
本発明で用いられるアルカリとしては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、取り扱い性の点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。
【0033】
アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、濾過速度の低下を防ぐ観点から、好ましくは0.1mol/dm
3以上、より好ましくは1mol/dm
3以上である。また、アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、ジオール体の変性を防ぐ観点から、好ましくは10mol/dm
3以下、より好ましくは5mol/dm
3以下である。また上記観点より、好ましくは0.1〜10mol/dm
3、より好ましくは0.1〜5mol/dm
3、更に好ましくは1〜5mol/dm
3である。
【0034】
また、アルカリ水溶液の使用量は、濾過速度の低下を防ぐ観点から、疎水性溶媒抽出液100mLに対して、好ましくは1mL以上、より好ましくは5mL以上である。また、アルカリ水溶液の使用量は、乳化を防ぐ観点から、疎水性溶媒抽出液100mLに対して、好ましくは100mL以下、より好ましくは20mL以下である。
【0035】
疎水性溶媒抽出液とアルカリ性水溶液を混合する際の温度は、ジオール体が混合液中で析出しない温度であればよく、0〜80℃、更に20〜65℃が好ましい。また、混合時間は、1〜120分間であることが好ましく、5〜60分であることがより好ましい。
【0036】
混合後、疎水性溶媒抽出液をアルカリ水溶液から分離する。疎水性溶媒抽出液を分離する手段としては、静置分離、遠心分離等が挙げられる。
分離条件は適宜調整することができるが、例えば静置分離は1〜120分間、より好ましくは10〜60分間行い、疎水性溶媒抽出液を分取することが好ましい。また、静置時の混合液の温度は、0〜80℃であることが好ましく、20〜65℃であることがより好ましい。
【0037】
本発明においては、濾過に先立ち、疎水性溶媒抽出液をアルカリ水溶液から分離した後、更に水と混合し、水を除去する処理を行ってもよい。
水の使用量は、濾過速度の低下を防ぐ観点から、疎水性溶媒抽出液100mLに対して、好ましくは1mL以上、より好ましくは5mL以上である。また、水の使用量は、乳化を防ぐ観点から、疎水性溶媒抽出液100mLに対して、好ましくは100mL以下、より好ましくは20mL以下である。また、水の温度は、0〜80℃、更に20〜65℃が好ましい。また、混合時間は、1〜120分間であることが好ましく、5〜60分であることがより好ましい。
このような処理は、1回でもよく、複数回(例えば2回、3回)繰り返してもよい。疎水性溶媒抽出液を水から分離する手段としては、上記同様、静置分離、遠心分離等が挙げられる。
【0038】
また、濾過に先立ち、吸着剤による吸着処理を行ってもよい。
吸着処理において用いられる吸着剤としては、例えば、白土、活性炭、珪藻土、セルロース又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。
吸着剤の使用量は、濾過速度の低下を防ぐ観点から、疎水性溶媒抽出液100mLに対して、0.01〜10gが好ましく、更に0.1〜1gが好ましい。また、吸着処理時の疎水性溶媒抽出液と吸着剤の混合物の温度は、0〜80℃が好ましく、更に20〜65℃が好ましい。疎水性溶媒抽出液と吸着剤の接触時間は、1〜120分間であることが好ましく、更に5〜60分が好ましい。圧力は、減圧下でも常圧でもよいが、酸化抑制及び脱色性の点から減圧下が好ましい。
【0039】
(工程(3))
本発明の方法における工程(3)は、前記工程(2)でアルカリ水溶液から分離して得られた疎水性溶媒抽出液を濾過する工程である。
本発明における濾過は、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過、自然濾過等の一般的な方法を用いることができる。濾過に用いるフィルターの大きさは、微生物を除去する観点から、微生物の大きさよりも小さいものが好ましい。例えば、目開き0.1〜10μm、更に0.2〜1μmが好ましい。
濾過フィルターの材質は、抽出で用いる有機溶剤に対して耐性のあるものであればよく、例えば四フッ化エチレンやナイロン、セルロースアセテート等の樹脂が挙げられる。
【0040】
工程(3)によって得られた濾過液を、精製工程で通常行われる乾燥及び/又は晶析等することにより、高品質なジオール体を収率よく得ることができる。当該ジオール体は、粉末状、固体状、液体状等のいずれの形態であってもよい。
精製工程で乾燥を行う場合、その方法は特に制限されないが、乾燥温度は室温〜90℃が好ましい。また、減圧乾燥を行ってもよい。
さらに、得られたジオール体は、酸性触媒、例えばp−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸クロリド、触媒量の硫酸又は酸性イオン交換体等を用いて、種々の溶媒中で脱水環化により化合物Aに変換することができる。
上述のように、前記の工程(1)、(2)及び(3)によって、高品質の微生物醗酵生産物を効率良く得ることができる。
【0041】
本発明の態様及び好ましい実施態様を以下に示す。
<1>次の工程(1)、(2)及び(3):
(1)消泡剤を含有する培地中で反応基質を微生物変換して得られる微生物醗酵生産物を、疎水性溶媒にて抽出する工程、
(2)工程(1)で得られた微生物醗酵生産物を含む疎水性溶媒抽出液とアルカリ水溶液を混合した後、疎水性溶媒抽出液をアルカリ水溶液から分離する工程、
(3)工程(2)でアルカリ水溶液から分離して得られた疎水性溶媒抽出液を濾過する工程、
を含む微生物醗酵生産物の製造方法。
【0042】
<2>アルカリ水溶液のアルカリの濃度が、好ましくは0.1mol/dm
3以上、より好ましくは1mol/dm
3以上であり、また、好ましくは10mol/dm
3以下、より好ましくは5mol/dm
3以下である前記<1>に記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<3>アルカリが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア及びアミン類から選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はこれらの組み合わせであり、更に好ましくは水酸化ナトリウムである上記<1>又は<2>に記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<4>消泡剤が、シリコーン系消泡剤、動植物油系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、又はアルコール系消泡剤であり、好ましくはシリコーン系消泡剤である上記<1>〜<3>のいずれかに記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<5>消泡剤を培地中に0.5質量%以上、好ましくは0.75質量%以上、また2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下含む上記<1>〜<4>のいずれかに記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<6>培地が、界面活性剤、好ましくはノニオン性界面活性剤を含む上記<1>〜<5>のいずれかに記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<7>疎水性溶媒が、SP値14(MPa)
1/2以上、好ましくは15(MPa)
1/2以上、より好ましくは16(MPa)
1/2以上、更に好ましくは17(MPa)
1/2以上、また、SP値19(MPa)
1/2以下、好ましくは18.5(MPa)
1/2以下の範囲内にある溶媒である上記<1>〜<6>のいずれかに記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<8>疎水性溶媒が、シクロヘキサン、4−メチル−2−ペンタノン、キシレン、トルエン及び酢酸エチルから選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはトルエンである上記<1>〜<7>のいずれかに記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<9>反応基質が、次の一般式(1a)及び/又は(1b)
【0044】
で表される化合物であり、製造される微生物醗酵生産物が次の式(2)
【0046】
で表される1−(2−ヒドロキシエチル)−2,5,5,8a−テトラメチルデカヒドロナフタレン−2−オールである上記<1>〜<8>のいずれかに記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
<10>微生物が、子嚢菌綱(Ascomycetes)に属する微生物又は担子菌綱(Basidiomycetes)に属する微生物であり、好ましくは子嚢菌綱(Ascomycetes)に属する微生物であり、より好ましくはハイホジーマ(Hyphozyma)属に属する微生物である上記<9>に記載の微生物醗酵生産物の製造方法。
【実施例】
【0047】
<ジオール体及びスクラレオールの分析方法>
培養液500μLに酢酸エチル1000μLを添加し、室温で激しく撹拌後、遠心分離(15000r/min、25℃、3分間)を行い、酢酸エチル層のガスクロマトグラフィー(GC)分析でジオール体とスクラレオールの濃度を算出した。また、トルエン層のジオール体濃度をGCにて分析した。条件は下記のとおりである。
装置:Agilent technology 7890A
カラム:DB−WAX(J&W製)、10m×100μm×0.1μm
注入口温度:250℃
オーブン温度:200℃→(昇温10℃/分)→250℃(5分間保持)
キャリアガス:He
注入法:スプリットモード(スプリット比100:1)
圧力:57.09psi
トータルフロー:43.41mL/min
カラム流量:0.4mL/min
注入量:1μL
検出器:FID
検出器温度:250℃
【0048】
[濾過速度の算出方法]
疎水性溶媒抽出液50gを親水性PTFEフィルター(アドバンテック製、直径47mm、孔径1μm、品名:H100A047A)で、常圧にて濾過し、濾液が30g得られるまでの濾過時間を測定し、1分間あたりの濾液回収量を濾過速度とした。
【0049】
[ジオール体収量の算出方法]
濾液30gに含まれるジオール体の量を測定し、濾過1分間あたりのジオール体の回収量を求めた。
【0050】
実施例1
Ascomycete sp.KSM−JL2842(FERM P−20759)株を2.1%YMブロスに1白金耳植菌し、25℃にて3日間振盪培養したものを種菌とした。次いで、2.1%YMブロス、0.1%硫酸マグネシウムからなる培地に種菌を0.3%植菌し、三角フラスコにて液温24℃、攪拌速度200r/minにて3日間通気培養を行った。その後、培地に、10%Tween80(登録商標)、20%スクラレオールからなる基質を培地中のスクラレオール濃度が3.87%になるように添加し、同条件で11日間培養を行った。基質添加から7日後に消泡剤(KM−72F、信越シリコーン製)を培地に対して1%添加した。pHは成り行きとした。
得られた培養液を分析したところ、ジオール体2.7%、スクラレオール0.24%、その他水分と固形分(菌体等)が含まれていた。
【0051】
前記培養液30gにトルエン265g(培養液100mLに対しトルエン1023mL)を加え、攪拌速度400r/min、25℃で60分間混合した後、60分間静置してトルエン層をと水相を分層させ、トルエン層を得た。
【0052】
次いで、トルエン層50gに、0.1mol/dm
3水酸化ナトリウム水溶液5.7mLを添加し(トルエン層100mLに対し水酸化ナトリウム水溶液9.8mL)、攪拌速度400r/min、25℃で60分間混合した後、25℃で60分間静置してトルエン層と水酸化ナトリウム水溶液層を分層させ、トルエン層を得た。
【0053】
分取したトルエン層50gを親水性PTFEフィルター(アドバンテック製、直径47mm、孔径1μm)で濾過し、濾液30gを回収した。
【0054】
実施例2〜5
培地に対して表1に示す量の消泡剤を添加し、また、表1に示す濃度のアルカリ水溶液を使用した以外は実施例1と同様にしてトルエン層を得た。分取したトルエン層50gを実施例1と同様に濾過し、濾液30gを回収した。
【0055】
参考例
微生物変換において培地に消泡剤を添加せず、また、アルカリ水溶液を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてトルエン層を得た。トルエン層50gを実施例1と同様に濾過し、濾液30gを回収した。
【0056】
比較例1〜2
培地に対して表1に示す量の消泡剤を添加し、また、アルカリ水溶液を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてトルエン層を得た。トルエン層50gを実施例1と同様に濾過し、濾液30gを回収した。
【0057】
比較例3
培地に対して表1に示す量の消泡剤を添加し、また、アルカリ水溶液に代えて水を使用した以外は実施例1と同様にしてトルエン層を得た。分取したトルエン層50gを実施例1と同様に濾過し、濾液30gを回収した。
各実施例及び比較例の条件と結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、培地に消泡剤を添加して微生物変換を行うと濾過速度の低下が見られ、単位時間あたりのジオール体の収量は少なくなった。他方、本発明の方法によれば、濾過速度の低下を抑えられ、ジオール体を効率良く得ることができた。また、アルカリ水溶液を混合する前と混合した後で、トルエン層中のジオール体濃度に大きな変化は見られなかった。