特許第6013887号(P6013887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013887
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】視覚検査装置及び視覚検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/024 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   A61B3/02 F
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-253709(P2012-253709)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-100254(P2014-100254A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】513190726
【氏名又は名称】株式会社クリュートメディカルシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100090136
【弁理士】
【氏名又は名称】油井 透
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156834
【弁理士】
【氏名又は名称】橋村 一誠
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史敬
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸司
(72)【発明者】
【氏名】山中 健三
(72)【発明者】
【氏名】大仲 毅
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−285470(JP,A)
【文献】 特開2004−298461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の両眼に対して暗順応を抑制するための光を呈示する暗順応抑制光呈示部と、
一方の眼に対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼に対しても視認可能な状態(ただし、雲霧をかけて視認困難とした状態を除く。)で視標の呈示が行われるように、被検者の一方の眼に対して視標を呈示する視標呈示部と、
を有する視覚検査装置。
【請求項2】
前記視覚検査装置は視野計である請求項1に記載の視覚検査装置。
【請求項3】
前記暗順応抑制光呈示部は、両眼各々に同じ明るさの背景光を呈示するものである請求項1又は2に記載の視覚検査装置。
【請求項4】
前記暗順応抑制光呈示部及び前記視標呈示部は、被検者の頭部に装着可能な筐体に組み込まれている請求項1〜3のいずれかに記載の視覚検査装置。
【請求項5】
被検者の両眼に対して暗順応を抑制するための光を呈示する暗順応抑制光呈示部、及び、
一方の眼に対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼に対しても視認可能な状態(ただし、雲霧をかけて視認困難とした状態を除く。)で視標の呈示が行われるように、被検者の一方の眼に対して視標を呈示する視標呈示部、
としてコンピュータ装置を機能させる視覚検査プログラム。
【請求項6】
前記視覚検査プログラムは視野計に用いられる請求項5に記載の視覚検査プログラム。
【請求項7】
前記暗順応抑制光呈示部は、両眼各々に同じ明るさの背景光を呈示するものである請求項5又は6に記載の視覚検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚検査装置及び視覚検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
視野の異常は、患者自身では実感しにくい。そのため、視野検査に代表される視覚検査用器具が存在する。この視覚検査用器具としては、種々のものが知られている。
【0003】
例えば、一般的な視野計であるハンフリー視野計がある。ハンフリー視野計においては、ドーム型のスクリーンに視標を表示し、被検者が視標を視認するか否かで視野を検査する。なお、検査中の被検眼と反対の眼には、眼帯等による遮蔽を施すのが通常である。
【0004】
また、特許文献1には、視覚検査の際に、検査中の被検眼と反対の眼が暗闇状態にあると、当該反対の眼の暗順応が進んでしまい、当該反対の眼が明るさに慣れる(明順応する)ための時間が必要になるし、検査結果にも影響を与えることが記載されている。
【0005】
また、視覚検査用器具としては、被検者の頭部に装着可能な筐体であるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以下「HMD」と略す。)を用いたものが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−47430号公報
【特許文献2】特開平8−140933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の視覚検査用器具を用いた視覚検査では、両眼のうち一方の眼に対する視覚検査が終了した後に、もう一方の眼に対して視覚検査が行われる。そのため、ハンフリー視野計においては、検査中の被検眼と反対の眼には、眼帯等による遮蔽が施されていた。そして、その遮蔽に対して暗順応という問題が生じ、その問題を解決すべく特許文献1の技術が生み出されている。
【0008】
しかしながら、両眼のうち一方の眼に対する視覚検査が終了した後に、もう一方の眼に対して視覚検査が行われるという手法では、以下のような課題が生じる。
【0009】
課題の一つは、被検者に学習効果が生じてしまうことである。学習効果とは、例えば被検者が左眼で視覚検査を行った結果、視標が表示されるパターンやタイミングなどを被検者が学習してしまい、右眼で視覚検査を行うと、良好な結果、即ち被検者の実際の症状を反映しない結果が生じてしまうことである。
【0010】
別の課題は、疲労が片眼に蓄積してしまうことである。通常、視覚検査に要する時間は、片眼につき約4分である。被検者は4分間、片眼で視標を注視し続けなければならない。そしてその後、もう片方の眼で4分間、視標を注視し続けなければならない。例えば被検者が左眼から先に視覚検査を行った場合、左眼の検査の際には集中力が維持できたとしても、その後の右眼の検査の際には集中力が欠如してしまうおそれがある。そうなると、右眼の視覚検査において、正確な結果が得られなくなる可能性がある。
【0011】
そこで本発明は、被検者の片眼に対する疲労の蓄積を軽減しつつも正確な検査結果が得られる視覚検査装置及び視覚検査プログラムを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を一挙に解決するための手法について検討を加えた。本発明者は、特許文献1に記載の暗順応についても解決すべきであると考えた。視覚検査が行われている眼には自ずと視標とともに背景光が呈示されている。そして、視覚検査が行われていないもう一方の眼に対しては、暗順応を抑制するための光を呈示するという手法を本発明者は想到した。
【0013】
それに加え、本発明者は、結果的に両眼に光が呈示されている状況を、上記の課題の解決に利用できないかと考えた。その結果、両眼に光が呈示されている状況は、別の見方をすれば、両眼が明順応しており、両眼において視覚検査の準備が整っている状況であると、本発明者は考えた。そして、その状況を利用して、一方の眼ばかりを検査するのではなく、一方の眼に対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼に対しても視標の呈示を行う、という画期的な知見を本発明者は想到した。
【0014】
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の一つの態様は、
被検者の両眼に対して暗順応を抑制するための光を呈示する暗順応抑制光呈示部と、
一方の眼に対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼に対しても視標の呈示が行われるように、被験者の眼に対して視標を呈示する視標呈示部と、
を有する視覚検査装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検者の片眼に対する疲労の蓄積を軽減しつつも正確な検査結果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の視覚検査装置の概略図である。
図2】本実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図3】本実施形態の視覚検査装置の使用方法を示す図である。
図4】本実施形態における、制御コンピュータ部とHMD部との間の関係を示すブロック図である。
図5】本実施形態の視覚検査装置の使用方法を示すフローチャートである。
図6】偏光子及び偏光フィルムを使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。矢印の先は、偏光フィルムの正面概略図である。
図7】偏光子及び偏光ビームスプリッタを使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図8】偏光子及びスクリーンを使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図9】アクティブシャッター及び時分割表示装置を使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図10】アクティブシャッター及びスクリーンを使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.視覚検査装置
A)HMD部
a.画像表示ディスプレイ(暗順応抑制光呈示部&視標呈示部)
b.その他(光学系等)
B)制御コンピュータ部
2.HMD部と制御コンピュータ部との間の関係
3.視覚検査装置の使用方法
4.視覚検査プログラム及び記録媒体
5.実施の形態による効果
6.変形例等
なお、以下に記載が無い構成については、公知の視覚検査装置を用いても構わない。例えば、特許文献1(特開平9−47430号公報)や特開平7−67833に記載された構成を適宜採用しても構わない。
【0018】
<1.視覚検査装置>
本実施形態においては、視覚検査装置がHMDである場合について述べる。図1は、本実施形態の視覚検査装置の概略図である。本実施形態の視覚検査装置は、大別すると、図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)部10と、制御コンピュータ部30とを備えて構成されている。そして、HMD部10は、暗順応抑制光呈示部と視標呈示部とを有しているが、本実施形態においては、暗順応抑制光呈示部と視標呈示部とが画像表示ディスプレイ13にまとめられている場合について述べる。
【0019】
なお、以降の説明においては、左眼をL、右眼をRとする。ただ、「各眼」や「左右眼(両眼)」、又は「左眼用の構成」というように構成に対する説明を行う際の表現には、符号を付すのを省略する。また、左眼用の構成については符号の後にLを付し、右眼用の構成については符号の後にRを付す。L及びRが付されていない符号は、各眼に特化して使用されていない構成を指したり、左眼用の構成及び右眼用の構成をまとめたものを指したりする。
【0020】
A)HMD部10
HMD部10は、筐体11とこれに接続された装着バンド12とを備えており、これらにより視覚検査の被検者(以降、単に「被検者」と言う。)の頭部に装着することが可能に構成されている。そして、筐体11には、暗順応抑制光呈示部と視標呈示部とが組み込まれている。本実施形態においては、左右眼各々のために設けられた画像表示ディスプレイ(13L,13R)が暗順応抑制光呈示部と視標呈示部とを兼ねている場合について述べる。以降、13Lは左眼用の画像表示ディスプレイ、13Rは右眼用の画像表示ディスプレイとしつつ、(13L,13R)をまとめて「画像表示ディスプレイ13」と表記する。
【0021】
a.画像表示ディスプレイ13(暗順応抑制光呈示部&視標呈示部)
画像表示ディスプレイ13を図2にて概略的に示す。図2は、本実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
画像表示ディスプレイ13は、HMD部10の筐体11を装着した被検者の眼の前方に配されて、当該被検者に対する画像表示を行うものである。画像表示ディスプレイ13は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)を利用して構成されたものを用いることが考えられる。このような画像表示ディスプレイ13が表示出力する画像としては、詳細を後述するように、背景光と視標とを合わせたものが挙げられる。
【0022】
暗順応抑制光呈示部が呈示する「背景光」とは、眼に対して呈示される視標の背景の明るさや色を司る光である。本実施形態においては、この「背景光」が「暗順応を抑制するための光」となる。背景光が存在する状況で、視標が表示されることになる。背景画像を用意することにより背景光を呈示しても構わないし、単に所定の光を呈示しても構わない。背景光の明るさについては、左右眼が暗順応しない程度の明るさであれば良い。また、背景光は連続的に呈示されずとも、暗順応しない程度に断続的に背景光を呈示(即ち断続的に背景光の光源をオン/オフ、シャッターを開閉)しても構わない。また、背景光の色についても、視覚検査の種類に応じて任意のものを採用しても構わないが、検査結果の精度の向上の観点から、白色光であるのが好ましい。
【0023】
なお、本実施形態における画像表示ディスプレイ13は、左眼用検査画像と右眼用検査画像とのそれぞれに個別に対応したもの、即ち左眼用ディスプレイパネルと右眼用ディスプレイパネルとによって構成されている。このとき、各々の画像表示ディスプレイ(13L,13R)で同じ明るさの背景光にするのが好ましい(後述)。ただ、異なる明るさの背景光にしても構わない。
【0024】
視標呈示部が呈示する「視標」とは、視覚を検査するために表示されるものである。視標としては特に制限は無い。例えば、緑内障検査の際には、光の点を背景光に対して表示し、その光の点(図3にて使用する白丸)の場所を変化させて表示することにより、喪失した視野の存在の有無及び喪失した視野の場所を検査し、それらの情報をまとめた視野マップを作成することが可能になる。また、視標としてランドルト環や、アルファベットを用いるスネレン視標、E字型のみを用いるEチャート、その他平仮名や片仮名を用いても構わない。
更に言うと、動かない光の点(視標)を背景光に対して表示するような静的視野測定のみならず、視標を動く光の点とした動的視野測定を行っても構わない。
【0025】
(暗順応抑制光呈示部)
上述の通り、本実施形態においては、画像表示ディスプレイ(13L,13R)が暗順応抑制光呈示部と視標呈示部とを兼ねている。本実施形態における暗順応抑制光呈示部は、暗順応を抑制するための光(即ち背景光)を呈示するものである。そして、この光は、左右眼に対して光を呈示するものである。別の言い方をすると、被検者の左右眼のうち一方の眼に対する視覚検査が行われている際、仮に、もう一方の眼に対しては視覚検査が行われていないとすると、当該もう一方の眼に対しても、暗順応を抑制するための光を呈示するものである。
【0026】
具体例を挙げると、暗順応抑制光呈示部は、画像表示ディスプレイ(13L,13R)の各々に搭載された光源である。もちろん、画像表示ディスプレイ(13L,13R)以外の部分に搭載された光源であっても構わない。つまり、暗順応抑制光呈示部と視標呈示部とが別体として構成されていても構わない。他の構成パターンとしては、画像表示ディスプレイ13をスクリーン代わりにして、HMD部10の他の部分から光を画像表示ディスプレイ13に照射し、被検者の眼に暗順応を抑制するための光を呈示するという手法も考えられる。
【0027】
なお、後述のb.その他(光学系等)で述べる光学系14に対し、暗順応抑制光呈示部の一部となる構成を付与しても構わない。この構成としては、偏光フィルム、偏光子、偏光ビームスプリッタ、アクティブシャッター等が挙げられる。これらの例については、後述の<6.変形例等>にて述べる。
【0028】
なお、暗順応抑制光呈示部は暗順応を抑制するための光(即ち背景光)を呈示するものである。そのため、左右眼のうち、視覚検査が行われている一方の眼に呈示される背景光に対し、視覚検査が行われていないもう一方の眼に呈示される背景光は、暗順応を抑制することが最低限可能な程度の低い照射量であっても構わないし、一方の眼に対しては背景光を連続的に呈示しつつもう一方の眼には背景光を断続的に呈示するようにしても構わない。その一方、呈示される背景光の条件(例えば明るさ)が左右眼で同じならば、左右眼での視覚検査条件を同一に近づけることが可能となる。そうなると、後述の視標呈示部にて、左右眼各々に対して交互に視覚検査を行う際に、左右眼に対する検査結果において、視覚検査条件に起因する差異が生じにくくなり、好ましい。ここで言う「背景光の明るさ」とは、人間の眼が感じる明るさのことであり、輝度や照射量で表すことができる。
【0029】
(視標呈示部)
本実施形態における視標呈示部は、一方の眼に対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼に対しても視標の呈示が行われるように、被検者の眼に対して視標を呈示する部分である。
【0030】
なお、本明細書においては、一方の眼に対する全ての検査が終了することを「視覚検査が終了」と称する。仮に、右眼に対して5回の視標呈示が行われる予定の場合、視標呈示が5回とも終了することを示す。その一方、各回の視標呈示が行われる工程(例えば1回目の視標が呈示され、視標が消えるまでの工程)を「視標の呈示が行われる」と称する。
【0031】
なお、ここで言う「被検者の眼に対して視標を呈示」とは、最終的には左右眼に対する視覚検査が行われるものの、一度に左右眼に対して視標を呈示する場合も含むし、そうではなく1回の視標の呈示においては左右眼のうち一方の眼に対して視標を呈示する場合も含む。これらの場合のことを、「少なくとも一方の眼に対して視標を呈示」とも言う。ちなみに、一度に左右眼に対して視標を呈示する場合における「一方の眼に対する視覚検査が終了する前」の位置づけであるが、この場合は、一方の眼に対する視覚検査が終了どころかそもそも始まった段階で、もう一方の眼に対しても視標の呈示が行われている。そのため、視覚検査の最初から最後まで、一度に左右眼に対して視標を呈示する場合も、「一方の眼に対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼に対しても視標の呈示が行われるように、被検者の眼に対して視標を呈示する」という定義に合致する。
【0032】
「少なくとも一方の眼に対して視標を呈示」とは、左右眼に対して択一的に視標を呈示する状況のことを指すし、左右眼両方に対して視標を呈示する状況も指す。言い換えると、視標の呈示を行う際には、右眼か左眼のうち少なくとも一方が視標を視認可能な状態を作り出している。なお、右眼か左眼のいずれかに視標を呈示することにより、右眼の検査結果及び左眼の検査結果を各々別個に得ることができる。また、左右眼両方に対して視標を呈示することも有用である。この場合としては例えば、車両を運転する際の視野を調べるべく、両眼視における視野マップを作成する場合が考えられる。更には、「右眼か左眼のいずれかに視標を呈示」及び「左右眼両方に対して視標を呈示」を適宜組み合わせて視標を呈示しても構わない。
【0033】
右眼か左眼のいずれかに視標を呈示する場合、左右眼に対して交互に視標を呈示しても良い。なお、ここで言う「交互」は、例えば「一方の眼(右眼R)だけに対して検査するのではなく、右眼Rに対する検査に割り込んで左眼Lに対する検査を行う」という意味の「交互」である。本明細書における「交互」は、右眼Rに対して視野マップの複数点を示す視標の呈示を行った後、左眼Lに対して視野マップの複数点(又は単数点)を示す視標の呈示を行い、再度、右眼Rに対して視野マップの複数点(又は単数点)を示す視標の呈示を行う場合も含む。本明細書における「交互」は、もちろん、右眼Rに対して視野マップの1点を示す視標の呈示を行った後、左眼Lに対して視野マップの1点を示す視標の呈示を行い、再度、右眼Rに対して視野マップの1点を示す視標の呈示を行い、再度、左眼Lに対して視野マップの1点を示す視標の呈示を行い、以下それを繰り返す、というように、左右眼各々に対する視標の呈示回数を1回毎とする場合も含む。
【0034】
いずれにせよ、本実施形態においては、一方の眼(右眼R)だけに対して検査するのではなく、右眼Rに対する検査に割り込んで左眼Lに対する検査を行う。その様子を概略的に示したものが図3である。図3は、本実施形態の視覚検査装置の使用方法を示す図である。なお、図3では、左右眼各々に対する視標(図中の「〇つまり白丸」)の呈示回数を1回毎としているように見えるが、もちろん1回毎の場合も含むし、例えば最初の右眼Rの検査の際に、複数回の視標の呈示を行っても構わない。
【0035】
また、図3では、通常の視野検査で行われているように、1回の視標の呈示の後、1秒間のインターバルを設けている。インターバルの際、左右眼両方には暗順応を抑制するための光が呈示される。なお、インターバルの時間については、適宜、状況に応じて設定しても構わない。また、インターバルを設けるか否かについても、適宜、状況に応じて設定しても構わない。
【0036】
また、視標の呈示手法については、公知の手法を用いても構わない。例えば、画像表示ディスプレイ13の所定の部分を特に光らせ、被検者がその光を認識できるか否かを確認することにより、視野マップを作成しても構わない。逆に、画像表示ディスプレイ13の所定の部分の光源をオフにし、所定の部分を特に暗くし、被検者が暗い部分を認識できるか否かを確認するようにしても構わない。もちろん、上記に列挙したような所定の形状の視標を呈示しても構わない。
【0037】
視標呈示部の機能としては、一方の眼に対する視覚検査を終わらせる前に、もう一方の眼に対する視覚検査を行う機能がある。この機能により、「学習効果の発生の抑制」及び「片眼を検査し続けることに起因する、被検者の片眼に対する疲労の蓄積の軽減」ひいては「正確な検査結果を得ること」が達成可能となる。
【0038】
以下、一例として、視覚検査を右眼→左眼→右眼というように右眼Rに対する検査に割り込む形で左眼Lに対する検査を行う場合について述べる。
【0039】
まず、「学習効果の発生の抑制」については、右眼Rに対する検査が終わる前に左眼Lに対する検査が行われるため、右眼Rの学習効果が左眼Lに反映される前に、左眼Lに対する検査を行うことが可能になる。同様に、右眼Rに対する残りの検査の際には、既に行われた右眼Rに対する検査に起因する学習効果を薄めることも可能となる。
【0040】
「片眼を検査し続けることに起因する、被検者の片眼に対する疲労の蓄積の軽減」については、右眼Rに対する検査が終わる前に左眼Lに対する検査が行われるため、右眼Rに対する検査に集中し過ぎて左眼Lの検査結果に影響を与えることが抑制できる。通常、右眼Rに対する検査を行っている際にも、左眼Lは、右眼Rに倣って視標を見ようとする。しかしながら、従来だと眼帯等により遮蔽されている。結果、左眼Lは、視標を見ようと思っても見られない状態のまま、右眼Rと同様に、集中している状態が続いている。そして、いざ左眼Lの検査となると、右眼Rの4分間の検査に伴い、左眼Lも4分間集中していたにもかかわらず、殆ど休みなく左眼Lの検査が引き続き行われることなってしまう。そうなると、左眼Lの検査結果が、正常な状態に基づいて成されるものではなくなってしまう。
【0041】
その一方、本実施形態においては左右眼に対し、いずれかの眼に対する一連の検査が終了する前に、もう一方の眼に対しても検査を開始する(言い換えると視標の呈示を行う)。その結果、いずれかの眼に疲労を偏らせた状態で検査を行うことがなくなる。つまり、左右眼において同じ程度の集中力を保持しながら、被検者は検査を受けることが可能となる。
【0042】
本実施形態では、暗順応を抑制すべく左右眼に光が呈示されている状況を利用している。その上で、上記の機能を達成可能な構成を採用している。
【0043】
上記の機能は、呈示される背景光の明るさが左右眼で同じならば、更に増幅することになる。つまり、呈示される背景光の明るさを左右眼で同じとし、左右眼での視覚検査条件を同一に近づけるのならば、被検者に視標を呈示しても、右眼Rに呈示されているものなのか、左眼Lに呈示されているものなのか、殆ど判別がつかなくなる。その一方、装置の操作者は、左右眼のうちどちらの眼に視標を呈示したかを把握でき、その結果も把握できる。そうなると、被検者は、「今は、違和感がある方の眼の検査を行っている」という先入観を抱くことがなくなる。また、「右眼検査が終わっても未だ左眼検査が残っている」という気負いもなくなる。被検者にとっては、片眼ずつの検査(左眼1回+右眼1回=合計2回)を行うよりも、(実際は片眼ずつの検査であっても)左右眼に対して一括して検査(合計1回)を行う方が、片眼に疲労を蓄積させることもない上、被験者にとって精神的な疲労が少なくなる。
【0044】
b.その他(光学系等)
HMD部10において、画像表示ディスプレイ13と被検者の眼との間に、被検者が視標を確認することが可能となるような光学系14を設けても構わない。また、図2に記載のように、左眼用の光学系14L及び右眼用の光学系14Rを各々設けても構わない。この光学系14としては、上述の特許文献に記載されている構成を用いても構わないし、その他、公知の視覚検査装置の光学系14を用いても構わない。このような光学系14としては、接眼レンズ、対物レンズ、ミラー等の光学要素の組み合わせが挙げられる。
【0045】
光学系14以外の構成としては、いずれも図示しないが、光度の調整のためのセンサや、眩輝発生装置、眩輝逆光発生装置、視標を画像表示ディスプレイ13へと表示するための励振器が挙げられる。また、検査中、被検者が視標を確認したことを意思表示するための信号発生器、その信号を記憶するためのメモリ、その結果を表示するための検査モニタ、等々も挙げられる。
【0046】
B)制御コンピュータ部30
制御コンピュータ部30は、所定プログラムで指示された情報処理を行うコンピュータ装置としての機能を有するものであり、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard disk drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、外部インタフェース(I/F)等の組み合わせによって構成されたものである。なお、制御コンピュータ部30は、HMD部10の筐体11に組み込まれたものであってもよいし、HMD部10とは別体で設けられたものであってもよい。HMD部10と別体で設けられる場合、制御コンピュータ部30は、HMD部10との間で、有線又は無線の通信回線を介して、通信を行うことが可能になっているものとする。
【0047】
<2.HMD部10と制御コンピュータ部30との間の関係>
続いて、本実施形態における、制御コンピュータ部30とHMD部10との間の関係について説明する。
図4は、本実施形態における、制御コンピュータ部30とHMD部10との間の関係を示すブロック図である。
【0048】
本実施形態におけるシミュレーション装置では、制御コンピュータ部30が所定プログラム(後述する視覚検査プログラム)を実行することにより、通信部31、データ取得部32、及び、画像生成部33としての機能が実現される。
【0049】
通信部31は、制御コンピュータ部30がHMD部10との間の通信を行うための機能を有する。具体的には、通信部31は、後述する画像生成部33が生成したシミュレーション画像を画像表示ディスプレイ13へ送り出す。なお、通信部31が用いる通信プロトコルについては、特に限定されるものではない。
【0050】
データ取得部32は、被検者に関する情報を取得するための機能を有する。取得する情報には、年齢や性別など被検者の生理学的データが含まれているものでも構わない。このような生理学的データは、例えば、図示せぬネットワーク回線を通じて、制御コンピュータ部30におけるデータ取得部32が当該ネットワーク回線上のデータサーバ装置にアクセスすることによって行っても構わない。そして、データ取得部32が得た生理学的データに対応させ、背景光の明るさや色、視標の種類や視標を呈示する時間、更には左右眼交互に視標を呈示するタイミングなど検査条件情報を自動で設定しても構わない。もちろん、検査を行うものが手入力で生理学的データを入力しても構わず、その場合、データ取得部32は不要となる。
【0051】
画像生成部33は、被検者が左眼L及び右眼R各々にて見ることになる画像であり、背景光と視標を重ね合わせた画像を呈示する機能を有する。データ取得部32で得られた生理学的データや検査条件情報、又は、手入力で入力された生理学的データや検査条件情報に基づいて、検査用画像が生成される。そして生成された画像が、画像表示ディスプレイ13に表示される。
【0052】
以上に説明した通信部31、データ取得部32及び画像生成部33は、コンピュータ装置としての機能を有する制御コンピュータ部30が、本実施形態における視覚検査プログラム(後述)を実行することによって実現される。その場合に、視覚検査プログラムは、制御コンピュータ部30のHDD等にインストールされて用いられるが、そのインストールに先立ち、制御コンピュータ部30と接続するネットワーク回線を通じて提供されるものであってもよいし、あるいは制御コンピュータ部30で読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されるものであっても構わない。
【0053】
<3.視覚検査装置の使用方法>
続いて、本実施形態における視覚検査装置の使用方法について説明する。
図5は、本実施形態における視覚検査装置の使用方法を示すフローチャートである。
【0054】
本実施形態で説明する視覚検査装置の使用方法について、以下、例示する。なお、以下においては、右眼Rから検査を開始する場合について説明する。そして、右眼→左眼→右眼→左眼というように(右眼→左眼)の検査を2セット行う場合(上述の図3の場合)について例示する。図5では図示しないが、図3に示すように、左右眼共に視標を呈示せず背景光のみを呈示するインターバルを数秒設けてももちろん構わない。
【0055】
視覚検査装置の使用方法は、大別すると、被検者情報取得ステップ(S1)と、検査条件決定ステップ(S2)と、背景光呈示ステップ(S3)と、右眼Rに対する視標呈示ステップ(1/2)(S4)と、左眼Lに対する視標呈示ステップ(1/2)(S5)、右眼Rに対する視標呈示ステップ(2/2)(S6)と、左眼Lに対する視標呈示ステップ(2/2)(S7)、を備えている。
【0056】
被検者情報取得ステップ(S1)においては、被検者に関する情報を、データ取得部32により取得する。例えば、装置の操作者が被検者の識別番号を入力することにより、通信部31を介してデータサーバ装置に被検者に関する情報の問い合わせを行う。そして、データサーバ装置に保存されていた被検者の生理学的データが、通信部31を介してデータ取得部32に送信される。もちろん、被検者情報を操作者が手入力することにより視覚検査装置が被検者情報を取得するようにしても構わない。
【0057】
検査条件決定ステップ(S2)においては、データ取得部32が得た生理学的データに対応させ、背景光の明るさや色、視標の種類や視標を呈示する時間、更には左右眼交互に視標を呈示するタイミングなど検査条件情報を自動で設定する。もちろん、検査条件を操作者が任意に手動で決定しても構わない。
【0058】
背景光呈示ステップ(S3)においては、検査条件決定ステップ(S2)で決定した検査条件情報に基づき、画像表示ディスプレイ13の光源の明るさや色を決定する。この時、片眼(例えば左眼L)に対応する画像表示ディスプレイ13Lのみならず、もう片方の眼(右眼R)に対応する画像表示ディスプレイRにも同じ背景光を呈示する。こうして、左右眼が共に暗順応にならない状況を作り出す。
【0059】
右眼Rに対する視標呈示ステップ(1/2)(S4)においては、まず、右眼Rに対して視野検査を行う。左右眼交互に視標を呈示するタイミングなどは、検査条件決定ステップ(S2)で決定した検査条件情報に基づき、設定する。結局のところ、背景光呈示ステップと視標呈示ステップとにより、検査用画像が生成される。
そして、右眼Rに対する視標呈示ステップ(1/2)(S4)が終了した後、左眼Lに対する視標呈示ステップ(1/2)(S5)を行う。つまり、右眼Rに対する検査は、この時点では半分しか終わっていない。右眼Rに対する検査を一時中断した上で、左眼Lに対する検査を行う。
【0060】
左眼Lに対する視標呈示ステップ(1/2)(S5)においては、右眼Rに対する検査と同様の検査を行う。そして、左眼Lに対する視標呈示ステップ(1/2)(S5)が終了した後、右眼Rに対する視標呈示ステップ(2/2)(S6)を行う。つまり、今度は左眼Lに対する検査を一時中断した上で、先ほどまで中断していた右眼Rに対する検査を再開する。
【0061】
右眼Rに対する視標呈示ステップ(2/2)(S6)と、左眼Lに対する視標呈示ステップ(2/2)(S7)とを、(S4)及び(S5)と同様に行う。こうして、左右眼に対する視野検査を完了する。
【0062】
<4.視覚検査プログラム及び記録媒体>
本実施形態においては、上記の構成を有する視覚検査装置に大きな特徴がある。その一方、コンピュータ装置を「暗順応抑制光呈示部」及び「視標呈示部」として機能させるプログラム及び記録媒体にも、大きな特徴がある。この場合、具体的な運用方法としては、制御コンピュータ部30が、暗順応抑制光呈示部に対して所定の光を呈示するよう命令する。同様に、制御コンピュータ部30が、視標呈示部に対して所定の条件で視標を呈示するよう命令する。この命令の内容は、データ取得部32により取得された被検者に関する情報に基づいて決定しても構わない。同様に、当該情報に基づき、命令の内容を画像生成部33に反映させ、その画像を画像表示ディスプレイ13に表示しても構わない。
【0063】
もちろん、暗順応抑制光呈示部や視標呈示部の条件設定は、装置の操作者が手動で行うことも可能であるが、本実施形態の視覚検査プログラムを使用することにより、被検者に応じて適切な条件で暗順応抑制光の呈示や視標の呈示を自動で行うことが可能になる。
【0064】
<5.実施の形態による効果>
本実施形態においては、視覚検査が行われている眼には自ずと視標とともに背景光が呈示されている。そして、仮に、視覚検査が行われていないもう一方の眼が存在するとしても、当該もう一方の眼に対しては、暗順応を抑制するための光が呈示されている。その結果、まずは、暗順応に起因する検査結果の精度の低下を抑制することが可能となる。
【0065】
その上で、本実施形態においては、暗順応を抑制するための光が呈示されているという状況、即ち、左右眼が明順応しており、左右眼において視覚検査の準備が整っている状況を利用し、一方の眼に対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼に対して視標の呈示が行われるように、被験者の眼に対して視標を呈示している。こうして、「学習効果の発生の抑制」及び「片眼を検査し続けることに起因する、被検者の片眼に対する疲労の蓄積の軽減」を達成している。
【0066】
以上の結果、本実施形態ならば、被検者の片眼に対する疲労の蓄積を軽減しつつも正確な検査結果を得ることが可能となる。
【0067】
<6.変形例等>
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0068】
以下、暗順応抑制光呈示部の他の例について説明する。暗順応抑制光呈示部の一部となる構成を光学系14に付与することにより、視覚検査が行われていないもう一方の眼に対して暗順応を抑制するための光を呈示しても構わない。
以下、暗順応抑制光呈示部の他の例について説明する。
【0069】
[偏光フィルム13α及び偏光子15を使用した例]
まず、図6を用いて説明する。図6は、偏光フィルム13α及び偏光子15を使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。矢印の先は、偏光フィルム13αの正面概略図である。
図6に示すように、上記の実施形態とは異なり、1つの画像表示ディスプレイ13を用意する。そして、画像表示ディスプレイ13に対し、偏光フィルム13αを貼り付ける。この偏光フィルム13αは、2種類の偏光パターン(P偏光パターン(符号P)、S偏光パターン(符号S))を有している。そして、左眼Lと光学系14との間にP偏光用の偏光子15L、そして右眼Rと光学系14との間にS偏光用の偏光子15Rを配置する。こうすることにより、1つの画像表示ディスプレイ13により発せられる背景光に対し、左眼LにはP偏光の背景光が呈示され、右眼RにはS偏光の背景光が呈示される。そのため、いずれか一方の眼に対し視覚検査が行われていても、もう一方の眼が暗順応することがなくなる。
【0070】
視標の呈示は、以下のように行う。左眼Lに対して視標を呈示する際には、画像表示ディスプレイ13上の偏光フィルム13αにおいてP偏光パターンを有する部分に視標を呈示する。同様に、右眼Rに対して視標を呈示する際には、S偏光パターンを有する部分に視標を呈示する。なお、左眼Lと光学系14との間にP偏光用の偏光子15Lを配置しても構わないし、S偏光用の偏光子15Lを配置しても構わない。右眼Rについても同様である。
【0071】
ここで述べた変形例においては、暗順応抑制光呈示部は、画像表示ディスプレイ13を含むものである。そして、視標呈示部は、偏光フィルム13αが貼り付けられた画像表示ディスプレイ13及び偏光を含むものである。
【0072】
[偏光子15及び偏光ビームスプリッタ16を使用した例]
次に、図7を用いて説明する。図7は、偏光子15及び偏光ビームスプリッタ16を使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図7に示すように、上記の実施形態とは異なり、左右眼の正面に1つの画像表示ディスプレイ13aを用意し、それとは別に、画像表示ディスプレイ13aに表示される画像が鏡像関係となるような画像表示ディスプレイ13bを別途用意し、光学系14と画像表示ディスプレイ(13a,13b)との間に偏光ビームスプリッタ16を配置する。その上で、左眼Lと光学系14との間にP偏光用の偏光子15L、そして右眼Rと光学系14との間にS偏光用の偏光子15Rを配置する。こうすることにより、例えば、左眼Lには、P偏光用の偏光子15L及び偏光ビームスプリッタ16によって、別途用意された画像表示ディスプレイ13bの背景光及び視標が呈示される。その一方、右眼Rには、S偏光用の偏光子15R及び偏光ビームスプリッタ16によって、左右眼の正面の画像表示ディスプレイ13aの背景光及び視標が呈示される。
【0073】
ここで述べた変形例においては、暗順応抑制光呈示部及び視標呈示部は、2つの画像表示ディスプレイ(13a,13b)及び偏光ビームスプリッタ16を含むものである。
【0074】
[偏光子(15,21)及び偏光保持スクリーン17を使用した例]
次に、図8を用いて説明する。図8は、偏光子及び偏光保持スクリーン17を使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図8に示すように、上記の実施形態とは異なり、左右眼の正面に1つのドーム型の偏光保持スクリーン17を用意しつつ、暗順応抑制光呈示部は無偏光の光源18を用意して左右眼に共に背景光を呈示する。そして、視標呈示部は、左眼Lと偏光保持スクリーン17との間にP偏光用の偏光子15L、そして右眼Rと偏光保持スクリーン17との間にS偏光用の偏光子15Rを配置したものであり、且つ、暗順応抑制光呈示部とは別に用意された光源19から発せられた光が光学系20及び視標用の偏光子21を通過した光を、反射板22にて反射して偏光保持スクリーン17に照射するものであるという構成を有している。反射板22の角度を変動させることにより、視野マップにおける所定の場所に対応するスクリーンの部分に視標を呈示することができる。左右眼の各々に対して画像表示ディスプレイ13を設けなくとも、左右眼に共通したスクリーンを採用した構成でも、暗順応抑制光呈示部及び視標呈示部はそれらの機能を発揮することが可能となる。
【0075】
ここで述べた変形例においては、暗順応抑制光呈示部は無偏光の光源18を含むものである。そして、視標呈示部は、暗順応抑制光呈示部とは別に用意された光源、偏光子21及び偏光保持スクリーン17を含むものである。
【0076】
[アクティブシャッター23及び時分割表示装置24を使用した例]
次に、図9を用いて説明する。図9は、アクティブシャッター23及び時分割表示装置24を使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図9に示すように、上記の実施形態とは異なり、画像表示ディスプレイ13から呈示される暗順応を抑制するための光を、眼に対して連続的に呈示し続けるのではなく、アクティブシャッター23により断続的に呈示する。この場合、被検者の眼が暗順応しない程度の周期でアクティブシャッター23の開閉を行う必要がある。
【0077】
視標の呈示は、以下のように行う。まず、時分割表示装置24において視標を呈示する。この時分割表示装置24は、常に背景光を呈示している。ただ、視標の呈示は時分割で行われる。つまり、背景光を呈示し続けた上で、視標の呈示と不呈示を交互に繰り返す。そして、左眼Lを検査する場合を想定すると、左眼Lに対して視標を呈示する際には、左眼用のアクティブシャッター23Lを開いたままとする。その一方、検査しない右眼用のアクティブシャッター23Rは稼働させる。その際、時分割表示装置24における視標の呈示と不呈示とのタイミングと、右眼用のアクティブシャッター23Rの開閉とのタイミングを同期させる。具体的に言うと、時分割表示装置24における視標の呈示が行われているタイミングでは、検査していない右眼Rに視標が呈示されることのないように、右眼用のアクティブシャッター23Rは閉じるように設定する。逆に、時分割表示装置24における視標の呈示が行われていないタイミングでは、暗順応を抑制するための光を右眼Rに呈示すべく、右眼用のアクティブシャッター23Rは開くように設定する。
【0078】
ここで述べた変形例においては、暗順応抑制光呈示部は時分割表示装置24を含むものである。そして、視標呈示部は、アクティブシャッター23及び時分割表示装置24を含むものである。
【0079】
[アクティブシャッター(23,26)及びスクリーンを使用した例]
最後に、図10を用いて説明する。図10は、アクティブシャッター(23,26)及びスクリーン25を使用した、別の実施形態の視覚検査装置の上面概略図である。
図10に示すように、アクティブシャッター23を、図8に記載されたスクリーン方式に応用しても構わない。呈示される視標は、視標用の光源19から光学系20を経て、視標用のアクティブシャッター26を通過し、反射板22にて反射され、スクリーン25に投影される。右眼Rを検査する場合について考えると、右眼用のアクティブシャッター23Rと、視標用のアクティブシャッター26とを、開閉において同期させている。つまり、視標用のアクティブシャッター26が開いているとき、右眼用のアクティブシャッター23Rも開いている。その一方、左眼用のアクティブシャッター23Lと、視標用のアクティブシャッター26とを、開閉のタイミングにおいてずれを生じさせている。つまり、視標用のアクティブシャッター26が開いているとき、左眼用のアクティブシャッター23Lは閉じている。こうすることにより、右眼Rだけに対して視標を呈示することができる。その上、暗順応を抑制するための光は、検査装置内に照射されているため、検査を行っていない左眼Lに対して暗順応を抑制することができる。
【0080】
ここで述べた変形例においては、暗順応抑制光呈示部は無偏光の光源18を含むものである。そして、視標呈示部は、暗順応抑制光呈示部とは別に用意された光源19、アクティブシャッター(23,26)及びスクリーン25を含むものである。
【0081】
なお、画像表示ディスプレイ13を用いた上記の実施形態に対し、偏光子(15,21)を用いた方式、アクティブシャッター(23,26)を用いた方式、及びそれらの組み合わせを適用しても構わない。同様に、スクリーン(17,25)を用いた方式に対し、偏光子(15,21)を用いた方式、アクティブシャッター(23,26)を用いた方式、及びそれらの組み合わせを適用しても構わない。
【0082】
また、以上の変形例は、HMDを用いなくとも、本発明の効果が奏されることを表している。ただ、視覚検査装置をコンパクトな構成にするためには、HMDを用いるのが好ましい。
【0083】
また、上記の実施形態においては視覚検査装置として視野計を用いた場合について主に説明を行った。その一方、視野計以外の視覚検査装置に本発明を適用しても構わない。例えば、視力検査装置にも本発明の応用が可能である。
【0084】
以下、符号を付しつつ、本実施形態の一つを示す。
被検者の両眼(L,R)に対して暗順応を抑制するための光を呈示する画像表示ディスプレイ(13L,13R)と、
一方の眼Lに対する視覚検査が終了する前にもう一方の眼Rに対して視標の呈示が行われるように、被検者の眼(L,R,又は両方)に対して視標を呈示する画像表示ディスプレイ(13L,13R)と、
を有する視覚検査装置。
【符号の説明】
【0085】
10…HMD部、11…筐体、12…装着バンド、13…画像表示ディスプレイ、13α…偏光フィルム、14…光学系、15…偏光子、16…偏光ビームスプリッタ、17…偏光保持スクリーン、18…(暗順応抑制光用の)光源、19…(視標用の)光源、20…(視標用の)光学系、21…(視標用の)偏光子、22…反射板、23…アクティブシャッター、24…時分割表示装置、25…スクリーン、26…(視標用の)アクティブシャッター、30…制御コンピュータ部、31…通信部、32…データ取得部、33…画像生成部、L…左眼、R…右眼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10