(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開閉切換弁は、前記接続指令に応じて前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間の接続及び遮断を切換える電磁開閉弁である、請求項2に記載の液圧駆動システム。
前記制御装置は、前記温度検出器が検出する温度が前記第1の所定温度から第2の所定温度以下に下がると、前記合流条件を充足していないと判定して前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間を遮断するようになっている、請求項7に記載の液圧駆動システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の油圧駆動冷却ファン装置では、パイロットポンプ及びステアリングポンプをディーゼルエンジンによって駆動している。ディーゼルエンジンでは、燃料と空気との混合気体を燃焼することで排気ガスが生成され、この排気ガスをマフラーを介して大気に排出する。排気ガスには、すす等の粒子状物質(以下、単に「PM」ともいう)が含まれており、このPMを回収するために、マフラー内にはディーゼル微粒子補足フィルター(以下、単に「DPF」ともいう)が設けられている。
【0007】
DPFはPMを回収し続けていると目詰まりする。それ故、排気ガスの温度を高めてPMを燃焼させて除去してDPFを再生する必要がある。DPF再生としては、例えば、ステアリング等のアクチュエータが操作されていないアイドリング状態にエンジンの負荷トルクを大きくする、即ちエンジンに負荷をかけて排気ガスの温度を高めることが考えられる。
【0008】
特許文献1の油圧駆動冷却ファン装置では、2つのポンプによってラジエータ水温を調整することを目的としており、エンジンが高速回転する際に合流回路に流れる流量が多くなるように設定して冷却ファンの冷却能力を高め、ラジエータの水温上昇を防いでいる。他方、エンジンの低速回転時には合流回路に流れる流量が少なくなるように設定して冷却ファンの最大回転数を抑え、ラジエータの過冷却を防いでいる。つまり、アイドリング状態のようにエンジンの回転数が低い場合、冷却ファンの冷却能力が低く設定されている。DPF再生では、ラジエータの水温が許容値より高くなるとエンジンがオーバーヒートするため、DPF再生を中断する必要がある。それ故、冷却ファンの冷却能力が低く設定されているとラジエータの温度上昇が進んでPMの十分な除去を行うことができなくなる。
【0009】
そこで本発明は、所定の条件を充足したときに冷却ファン駆動装置による冷却ファンの冷却能力を更に一段階上げることができる液圧駆動システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液圧駆動システムは、圧液を吐出する第1液圧ポンプと、前記第1液圧ポンプの圧液をアクチュエータに流して前記アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動回路と、供給される圧液の流量に応じた回転数で冷却ファンを回転する液圧モータと、前記第1液圧ポンプに連動して圧液を吐出する第2液圧ポンプと、前記第2液圧ポンプの圧液を前記液圧モータに流して前記液圧モータを駆動するファン駆動回路と、前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間の接続及び遮断を切換え、前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路とが接続されているときに前記アクチュエータ駆動回路の圧液を前記ファン駆動回路に合流させる合流回路と、所定の合流条件を充足すると前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間を接続するように前記合流回路を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0011】
本発明に従えば、所定の合流条件を充足すると、制御装置が合流回路にアクチュエータ駆動回路とファン駆動回路との間を接続し、アクチュエータ駆動回路の圧液がファン駆動回路の圧液と合流する。これにより、ファン駆動回路に第2液圧ポンプからの圧液だけでなくアクチュエータ駆動回路の圧液も供給することができ、第2液圧ポンプによって駆動可能な最大回転数以上の回転数で冷却ファンを駆動することができる。つまり、所定の合流条件を充足したときに冷却ファンの冷却機能を一段階上げることができる。
【0012】
上記発明において、前記合流回路は、開閉切換弁と、圧力補償型流量制限手段とを有し、前記制御装置は、前記所定の合流条件の充足の有無に基づいて接続指令を出力し、前記開閉切換弁は、前記制御装置からの前記接続指令に基づいて前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間の接続及び遮断を切換え、前記圧力補償型流量制限手段は、前記アクチュエータ駆動回路の圧液を所定の流量で確保するとともに、前記アクチュエータ駆動回路から前記ファン駆動回路に合流する圧液の流量を制限してもよい。
【0013】
上記構成に従えば、アクチュエータ駆動回路からファン駆動回路に圧液を合流させたときにアクチュエータ駆動回路の液圧が下降することを防ぐことができる。これにより、アクチュエータ駆動回路の機能を発揮させつつ冷却ファンの最大回転数を上げることができる。
【0014】
上記発明において、前記開閉切換弁は、前記接続指令に応じて前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間の接続及び遮断を切換える電磁開閉弁であってもよい。
【0015】
上記構成に従えば、少ない部品点数で合流回路を構成することができる。
【0016】
上記発明において、前記接続指令に応じてパイロット圧を出力する電磁制御弁を備え、前記開閉切換弁は、前記電磁制御弁から出力されるパイロット圧に基づいて前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間の接続及び遮断を切換えるロジック弁又はスプール弁であってもよい。
【0017】
上記構成に従えば、大流量且つ高圧の圧液が流れるアクチュエータ駆動回路とファン駆動回路との間に配置される弁がスプール弁又はロジック弁であるので、電磁開閉弁で構成する場合よりも製造コストを削減することができる。
【0018】
上記発明において、前記パイロット圧の圧源は、前記アクチュエータ駆動回路を流れる圧液であってもよい。
【0019】
上記構成に従えば、アクチュエータ駆動回路によりパイロット圧の圧減を確保することができるので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0020】
また、前記パイロット圧の圧源は、パイロットポンプから吐出される圧液であり、前記パイロットポンプの吐出圧は、前記第1液圧ポンプの吐出圧より低圧であってもよい。
【0021】
上記構成に従えば、前記パイロットポンプから吐出される圧液をパイロット圧源としているので、電磁制御弁も低圧対応のものを採用することができるので製造コストを削減することができる。
【0022】
上記発明において、前記冷却ファンが冷却する冷却対象の温度を検出する温度検出器を備え、前記制御装置は、前記温度検出器が検出する温度が第1の所定温度を超えると前記合流条件を充足すると判定するようになっていてもよい。
【0023】
上記構成に従えば、冷却対象の冷却が不足し、冷却対象物の動作性能が低下することを防ぐことができる。
【0024】
上記発明において、前記制御装置は、前記温度検出器が検出する温度が前記第1の所定温度から第2の所定温度以下に下がると、前記合流条件を充足していないと判定して前記アクチュエータ駆動回路と前記ファン駆動回路との間を遮断するようになっていてもよい。
【0025】
上記構成に従えば、冷却対象が過冷却されて、冷却対象の動作性能が低下することを防ぐことができる。
【0026】
上記発明において、前記第1液圧ポンプと前記第2液圧ポンプとを駆動するエンジンと、前記エンジンからの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するフィルターと、前記フィルターを再生させる再生指令を入力する入力装置と、を備え、前記冷却対象は、前記エンジンおよび前記圧液の少なくともいずれか一方を冷却する冷却媒体であり、前記アクチュエータ駆動回路は、そこに流れる圧液が所定圧力になると圧液をタンクに排出するリリーフ弁を有し、前記第1液圧ポンプと前記アクチュエータとの間を前記アクチュエータ駆動回路が遮断して前記第1液圧ポンプからの圧液をリリーフ弁からタンクに排出する負荷状態に切り換えることができるように構成され、前記制御装置は、前記エンジンの回転数が所定回転数以下で、且つ前記入力装置から再生指令が入力されると、且つ前記アクチュエータ駆動回路を負荷状態に切り換えるように構成されていてもよい。
【0027】
上記構成に従えば、入力装置から再生指令が入力されてアクチュエータ駆動回路が負荷状態に切り換わるとエンジンからの排ガスが高温となり、フィルターに捕捉されている粒子状物質を燃焼させてフィルターを再生することができる。この際、アクチュエータ駆動回路を負荷状態にすることでエンジンに負荷がかかるので冷却媒体の温度が上昇する。合流回路により第1液圧ポンプからの圧液を合流させて冷却ファンの最大回転数を一段階上げることで、冷却機能を向上させて冷却媒体の温度上昇を抑えることができる。これにより、好適なフィルター再生を実現することができる。
【0028】
本発明の建設機械は、上述する何れかの液圧駆動システムを備えているものである。
【0029】
本発明に従えば、上述するような機能を達成する建設機械を実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、所定の条件を充足したときに冷却ファン駆動装置による冷却ファンの冷却能力を更に一段階上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態の油圧駆動システム1、1A,1Bについて図面を参照して説明する。なお、各実施形態における方向の概念は、後述するホイールローダの運転者から見た方向であるが、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する油圧駆動システム1、1A,1Bは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0033】
[第1実施形態]
[油圧駆動システム]
本発明の第1実施形態に係る油圧駆動システム1は、建設機械、例えばホイールローダに搭載されている。ホイールローダは、
図1に示すように一対のステアリング用アクチュエータ16L、16Rと、バケット用アクチュエータ17と、一対のホイスト用アクチュエータ18,18と、冷却ファン用モータ19とを備えており、これらのアクチュエータ16〜18を油圧駆動システム1によって駆動させることで車体を屈折させ、バケット及びホイストを作動させ、更に後述する冷却ファン20を駆動することができるようになっている。このように構成されている油圧駆動システム1は、
図1に示すように、基本的にアクチュエータ用ポンプ11と、アクチュエータ駆動回路13と、ファン用ポンプ61と、ファン駆動回路14と、合流回路15とを備えている。
【0034】
[アクチュエータ用ポンプ]
第1液圧ポンプであるアクチュエータ用ポンプ11は、可変容量形のポンプ、例えば斜板ポンプであり、後述するサーボ機構56によって斜板11aの傾転角を変えて吐出量を変えることができるようになっている。このアクチュエータ用ポンプ11には、エンジンEの出力軸がギア機構を介して連結されており、エンジンEを駆動して出力軸を回転させることでタンク12内の作動油を吸込んで圧縮して吐出するようになっている。アクチュエータ用ポンプ11の吐出ポートには、アクチュエータ駆動回路13の主通路21が接続されている。
【0035】
[アクチュエータ駆動回路]
アクチュエータ駆動回路13は、ステアリング装置31、バケット用レバー32、及びホイスト用レバー33が夫々操作されると、その操作に対応するアクチュエータ16〜18にアクチュエータ用ポンプ11からの作動油を流してそれらを駆動するようになっている。なお、ステアリング装置31が操作されると、アクチュエータ駆動回路13は、ステアリング用アクチュエータ16に優先的に作動油を流してステアリング用アクチュエータ16を優先的に駆動するようになっている。また、アクチュエータ駆動回路13は、ステアリング装置31、バケット用レバー32、及びホイスト用レバー33の操作されていない状態では、アクチュエータ用ポンプ11からの作動油をタンク12に戻すようになっている。これにより、アクチュエータ用ポンプ11をアンロード状態にすることができる。以下では、アクチュエータ駆動回路13の構成についてさらに詳細に説明する。
【0036】
アクチュエータ駆動回路13は、主通路21と、メータインコンペンセータ34と、ステアリング用方向制御弁35と、電磁切換弁25と、ブリードオフコンペンセータ36と、バケット用方向制御弁37と、ホイスト用方向制御弁38と、荷役装置側リリーフ弁39とを有している。主通路21は、下流側でステアリング側主通路41及び荷役装置側主通路42に分岐しており、ステアリング側主通路41には、メータインコンペンセータ34が介在している。
【0037】
メータインコンペンセータ34は、2つのパイロット通路34a,34bを有するパイロット式の開閉弁であり、第1パイロット通路34aは、後述する連通路43に接続されている。また、第2パイロット通路34bは、ステアリング側主通路41のメータインコンペンセータ34より下流側の部分(以下、単に「下流側部分」という)41aに繋がっている。第1パイロット通路34a及び第2パイロット通路34bは、各々のパイロット圧p1、p2が互いに抗するように配置されている。
【0038】
また、メータインコンペンセータ34は、ばね部材34cを有しており、ばね部材34cは、その付勢力が第2パイロット圧p2に抗するように配置されている。このように構成されているメータインコンペンセータ34は、ばね部材34cの付勢力及び2つのパイロット圧p1,p2の力の釣り合いに応じて開閉を切換えるようになっており、前記力の釣り合いに応じてステアリング側主通路41のメータインコンペンセータ34より上流側の部分と下流側部分41aとの間が接続されたり遮断されたりする。また、ステアリング側主通路41の下流側部分41aには、ステアリング用方向制御弁35が接続されている。
【0039】
ステアリング用方向制御弁35は、一対のステアリング用アクチュエータ16L,16Rに接続されている。一対のステアリング用アクチュエータ16L,16Rは、いわゆるシリンダ機構であり、リアシャーシとフロントシャーシとに架け渡すように左右両側に1つずつ配置されている。ステアリング用方向制御弁35は、一対のステアリング用アクチュエータ16L,16Rに流す作動油の流れ方向及び流量を制御するようになっている。
【0040】
更に具体的に説明すると、ステアリング用方向制御弁35は、スプール35aを有しており、ステアリングを左右に回すことでスプール35aが移動して作動油の流れ方向及び流量を変えるようになっている。即ち、ステアリングを左側に回すと、スプール35aが第1オフセット位置に移動し、ホイールローダが左側に方向転換するように一対のステアリング用アクチュエータ16L,16Rに作動油が流れる。他方、ステアリングを右側に回すと、スプール35aが第2オフセット位置に移動し、ホイールローダが右側に方向転換するように一対のステアリング用アクチュエータ16L,16Rに作動油が流れる。また、スプール35aが中立位置に戻ると、ステアリング側主通路41の下流側部分41aがタンク12と導通し、ステアリング側主通路41と一対のステアリング用アクチュエータ16L,16Rとの間が遮断される。これにより、一対のステアリング用アクチュエータ16L,16Rが伸縮状態を維持される。
【0041】
このように構成されているステアリング用方向制御弁35には、連通路43が更に接続されており、連通路43には、メータインコンペンセータ34の第1パイロット通路34aが接続されている。連通路43は、スプール35aが中立位置に位置する際にタンク12に繋がるタンクライン51とスプール35a内で導通するようになっており、連通路43とタンクライン51とが導通することで第1パイロット圧p1がタンク圧と等しくなるようになっている。他方、第2パイロット通路34bは、ステアリング側主通路41の下流側部分41aに接続されており、第2パイロット圧p2がアクチュエータ用ポンプ11からの吐出圧力となっている。これにより、メータインコンペンセータ34によってステアリング側主通路41が閉じられる。
【0042】
他方、スプール35aが第1又は第2オフセット位置に移動すると、連通路43はスプール35a内でタンクライン51から遮断されて、連通路43と下流側部分41aとが接続される。そうすると、第1及び第2パイロット圧p1、p2が略同一圧になり、ばね部材34cに付勢されているメータインコンペンセータ34がステアリング側主通路41を開く。このようにメータインコンペンセータ34は、第1及び第2パイロット通路34a,34bのパイロット圧p1,p2に応じてステアリング側主通路41を開閉するようになっている。また、この第1パイロット通路34aにパイロット圧p1を導く連通路43には、電磁切換弁25が接続されている。
【0043】
電磁切換弁25は、連通路43の他に第1バイパス通路53及び第2バイパス通路54に接続されており、電磁切換弁25に流れる指令に応じて第1バイパス通路53の接続先を連通路43及び第2バイパス通路54のいずれか一方に切り替えるようになっている。また、第1バイパス通路53は、ブリードオフコンペンセータ36に接続されている。
【0044】
ブリードオフコンペンセータ36は、2つのパイロット通路36a,36bを有するパイロット式の流量制御弁である。ブリードオフコンペンセータ36は、荷役装置側主通路42に介在しており、パイロット通路36a,36bに夫々流れる第3及び第4パイロット圧p3,p4の差圧に応じてブリードオフコンペンセータ36を通る流量を制御するようになっている。第3パイロット通路36aは、第1バイパス通路53を介して連通路43に繋がっており、第1パイロット圧p1と同じ圧力の圧油が導かれるようになっている。他方、第4パイロット通路36bは、荷役装置側主通路42のブリードオフコンペンセータ36より上流側部分(以下、単に「上流側部分」ともいう)42aに接続されている。また、荷役装置側主通路42のブリードオフコンペンセータ36より下流側部分(以下、単に「下流側部分」ともいう)42bには、バケット用方向制御弁37が接続されている。
【0045】
バケット用方向制御弁37は、バケット用アクチュエータ17に接続されており、バケット用レバー32の前後方向への操作に応じて出力されるパイロット圧p5,p6に応じてバケット用アクチュエータ17に流れる作動油の流れ方向を切換えるようになっている。バケット用アクチュエータ17は、いわゆるシリンダ機構であり、それに対する作動油の流れ方向に応じて伸縮するようになっている。そして、バケット用アクチュエータ17は、伸縮することでバケットを起こしたり、倒したりするようになっている。
【0046】
さらに詳細に説明すると、バケット用方向制御弁37は、バケット用レバー32が操作されると、アクチュエータ用ポンプ11からの作動油をバケット用アクチュエータ17に流すようになっている。他方、バケット用方向制御弁37は、バケット用レバー32が中立位置に戻されると、スプール37aを中立位置に戻して荷役装置側主通路42とホイスト通路44とを接続し、アクチュエータ用ポンプ11からの作動油をホイスト通路44に流すようになっている。ホイスト通路44には、ホイスト用方向制御弁38が接続されており、ホイスト通路44に流れる作動油は、ホイスト用方向制御弁38に導かれる。
【0047】
ホイスト用方向制御弁38は、一対のホイスト用アクチュエータ18,18に接続されており、ホイスト用レバー33の前後方向への操作に応じて出力されるパイロット圧p7,p8に応じて一対のホイスト用アクチュエータ18,18に流す作動油の流れ方向を切換えるようになっている。一対のホイスト用アクチュエータ18,18は、いわゆるシリンダ機構であり、それに対する作動油の流れ方向に応じて伸縮するようになっている。そして、一対のホイスト用アクチュエータ18,18が伸縮することで、バケットが上下方向に移動するようになっている。
【0048】
さらに詳細に説明すると、ホイスト用方向制御弁38は、ホイスト用レバー33が操作されると、アクチュエータ用ポンプ11からの作動油を一対のホイスト用アクチュエータ18,18に流すようになっている。他方、ホイスト用方向制御弁38は、ホイスト用レバー33が中立位置に戻されると、スプール38aを中立位置に戻してホイスト通路44とタンク通路45とを接続し、アクチュエータ用ポンプ11からの作動油をタンク通路45に流すようになっている。タンク通路45には、タンク12が接続されており、タンク通路45に流れる作動油は、タンク12に排出される。
【0049】
また、タンク通路45には、絞り55が介在しており、タンク通路45の絞り55の上流側部分がサーボ通路57を介してサーボ機構56に接続されている。絞り55は、タンク通路45を介してタンク12に戻る作動油に対して絞り55の上流側部分で圧力を発生させるようになっており、この圧力がサーボ通路57を介してサーボ機構56に入力されている。サーボ機構56は、そこに入力される入力圧に基づいてアクチュエータ用ポンプ11の斜板11aの傾転角を変え、アクチュエータ用ポンプ11の吐出量を変えるようになっている。即ち、サーボ機構56は、入力圧が高くなると斜板11aの傾転角を小さくしてアクチュエータ用ポンプ11の吐出量を低減させ、入力圧が低くなると斜板11aの傾転角を大きくしてアクチュエータ用ポンプ11の吐出量を増加させるようになっている。これにより、バケット用レバー32及びホイスト用レバー33の操作量に応じた流量がアクチュエータ用ポンプ11から荷役装置側主通路42に導かれる。
【0050】
また、荷役装置側主通路42の上流側部分42aには、荷役装置側リリーフ弁39が接続されており、荷役装置側主通路42を流れる作動油の圧力が所定圧力以上になると荷役装置側リリーフ弁39が開いて荷役装置側主通路42の作動油をタンク通路45を介してタンク12へと排出するようになっている。更に、荷役装置側主通路42の上流側部分42aには、第2バイパス通路54が接続されており、第2バイパス通路54は、前述するように電磁切換弁25に接続されている。また、第2バイパス通路54には、合流回路15を介してファン駆動回路14が接続され、ファン駆動回路14には、ファン用ポンプ61が接続されている。
【0051】
[ファン用ポンプ]
第2液圧ポンプであるファン用ポンプ61は、いわゆる固定容量型のポンプであり、その吐出ポートがファン駆動回路14に接続されている。ファン用ポンプ61は、アクチュエータ用ポンプ11と同様にエンジンEの出力軸にギア機構を介して直列又は並列して接続されている。なお、
図1では、説明の便宜上エンジンEの両側に2つのポンプ11,61がそれぞれ配置されているが、エンジンEの片側に並列又は直列にして接続されてもよい。このように接続されているファン用ポンプ61は、アクチュエータ用ポンプ11と連動して動くようになっており、エンジンEの出力軸の回転に伴ってタンク12内の作動油を吸込んで圧縮してファン駆動回路14に吐出するようになっている。
【0052】
[ファン駆動回路]
ファン駆動回路14は、ファン用ポンプ61からの作動油を冷却ファン用モータ19に流して冷却ファン用モータ19を回転駆動するようになっている。液圧モータである冷却ファン用モータ19の出力軸19aには、冷却ファン20が取り付けられており、冷却ファン20は、冷却ファン用モータ19の回転に連動して回転するようになっている。この冷却ファン20は、冷却対象に対向するように配置されており、回転することでこれらの冷却対象に風を送って冷却対象を冷却するようになっている。
【0053】
本実施形態において、冷却対象は、ラジエータ26、オイルクーラー27、及びインタークーラー28である。ラジエータ26には、エンジンE内を循環する冷却液が導かれ、オイルクーラー27には、アクチュエータ駆動回路13及びファン駆動回路14を流れる作動油が導かれるようになっている。また、インタークーラー28は、過給機29からエンジンEへと送られる圧縮空気を冷却するようになっている。なお、本実施形態では、冷却対象が3つであるが、必ずしも3つ全てが冷却対象である必要はなく前述するラジエータ26、オイルクーラー27、及びインタークーラー28のうち少なくとも1つが冷却対象であればよい。また、ラジエータ26、オイルクーラー27、及びインタークーラー28以外の構成を冷却対象に含めてもよく、例えば、トランスミッション(図示せず)内を流れるミッションオイルを冷却するミッションオイル用のオイルクーラーが含まれていてもよい。以下では、ファン駆動回路14の構成について、さらに詳細に説明する。
【0054】
ファン駆動回路14は、ファン側リリーフ弁62及びファン用通路63を有しており、ファン用通路63は、ファン用ポンプ61の吐出ポートに接続されている。また、ファン用通路63は、冷却ファン用モータ19の吸入ポートにも接続されており、ファン用通路63を介してファン用ポンプ61の作動油が冷却ファン用モータ19に供給されるようになっている。更に、ファン用通路63には、ファン側リリーフ弁62が接続されており、ファン側リリーフ弁62は、ファン用通路63を流れる作動油の圧力が予め定められた圧力以上になると、ファン用通路63とタンク12とを繋いでファン用通路63を流れる作動油の一部分をタンク12に排出させるようになっている。
【0055】
このような構成を有するファン駆動回路14は、合流回路15を介してアクチュエータ駆動回路13を流れる作動油を合流させることができるようになっている。具体的には、ファン用通路63に合流回路15が接続されており、第2バイパス通路54を流れる作動油、即ちアクチュエータ用ポンプ11からの作動油を合流回路15を介してファン用通路63に供給できるようになっている。以下では、合流回路15の構成について
図2も参照しながら詳細に説明する。
【0056】
[合流回路]
合流回路15は、第2バイパス通路54とファン用通路63とを繋ぐ合流通路70を有しており、合流通路70には、可変絞り71と、逆止弁72と、電磁開閉弁73とが介在している。圧力補償型流量制限手段である可変絞り71は、可変絞り71の上下流の圧油の圧力差(つまり第2バイパス通路54(アクチュエータ駆動回路13)とファン用通路63(ファン駆動回路14)の圧油の圧力差)が変動しても、第2バイパス通路54からファン用通路63に流れる圧油の流量の変動を抑えるように構成されている。そのため、可変絞り71は、第2バイパス通路54からファン用通路63への圧油の流量を所定の量に制限するとともに、アクチュエータ駆動回路13に必要な圧油の流量を確保するようになっている。なお、この可変絞り71は、固定絞り、シーケンス弁、又は減圧弁であってもよく、第2バイパス通路54からファン用通路63への圧油の流量を所定の量に制限するとともに、アクチュエータ駆動回路13に必要な圧油の流量を確保できる構成であればよい。
【0057】
また、合流通路70には、可変絞り71より下流側に逆止弁72が介在している。逆止弁72は、合流通路70を介してアクチュエータ駆動回路13からファン駆動回路14への作動油の流れを許容し、ファン駆動回路14からアクチュエータ駆動回路13への作動油の流れを阻止するように配置されている。更に、合流通路70には、可変絞り71より上流側に電磁開閉弁73が介在している。
【0058】
開閉切換弁である電磁開閉弁73は、いわゆるノーマルクローズ型の電磁式開閉弁であり、そこに流される接続指令(電流)に応じて合流通路70を開閉し、第2バイパス通路54とファン用通路63との間を接続したり遮断したりするようになっている。それ故、接続指令が与えられていない状態では、電磁開閉弁73が合流通路70を閉じて第2バイパス通路54とファン用通路63との間を遮断してアクチュエータ用ポンプ11から吐出される作動油がファン駆動回路14に導かれることを制限する。これにより、ファン用ポンプ61から吐出される作動油だけで冷却ファン用モータ19を回転駆動させることができ、冷却ファン20を回転させつつアクチュエータ用ポンプ11をアンロード状態にすることができる。
【0059】
他方、電磁開閉弁73に接続指令が与えられると、電磁開閉弁73が合流通路70を開いて第2バイパス通路54とファン用通路63との間を接続し、アクチュエータ用ポンプ11から吐出される作動油をファン駆動回路14に導く。これにより、アクチュエータ用ポンプ11からの作動油とファン用ポンプ61からの作動油とをファン用通路63で合流させて冷却ファン用モータ19に供給される作動油を増加させることができ、ファン用ポンプ61からの作動油だけで冷却ファン用モータ19を回転駆動する場合よりも冷却ファン20の最大回転数を上げて冷却ファン20の冷却機能を一段階上げることができる。
【0060】
[センサー類]
また、油圧駆動システム1は、
図1に示すように冷却対象であるラジエータ26、オイルクーラー27、及びインタークーラー28の温度を測定するためセンサ(温度検出器)75〜77を備えている。具体的に説明すると、ラジエータ用水温センサ75は、エンジンEを循環するエンジン冷却水の温度を検出するようになっている。また、オイルクーラー用油温センサ76は、アクチュエータ駆動回路13内及びファン駆動回路14内を夫々流れる作動油の温度を検出するようになっている。また、インタークーラー用センサ77は、インタークーラー28内の圧縮空気の温度を検出するように構成されている。更に、エンジンEの出力軸には、回転数センサ78が設けられており、回転数センサ78は、エンジンEの出力軸の回転数、即ちエンジン回転数を検出するようになっている。このように構成されているセンサ75〜78は、制御装置74に電気的に接続されており、その検出結果を制御装置74に出力するようになっている。
【0061】
[ファン制御装置]
制御装置74は、センサ75〜78の検出結果に基づいて油圧駆動システム1の各構成の動作を制御するようになっている。また、制御装置74は、操作ボタン24、及び電磁切換弁25に電気的に接続されており、回転数センサ78の検出結果及び操作ボタン24の操作状態に応じて電磁切換弁25に指令を与えて電磁切換弁25を動作させるようになっている。また、制御装置74は、電磁開閉弁73に電気的に接続されており、電磁開閉弁73に接続指令を与えて作動させるようになっている。
【0062】
[アクチュエータの駆動動作]
このような構成を有する油圧駆動システム1では、ステアリング及びレバー32,33である操作手段が夫々操作されると、アクチュエータ駆動回路13によって各操作手段に対応するアクチュエータ16〜18に作動油が供給され、対応するアクチュエータ16〜18が駆動されるようになっている。以下では、アクチュエータの駆動動作について詳しく説明する。
【0063】
油圧駆動システム1のアクチュエータ駆動回路13は、エンジンEが駆動するとアクチュエータ用ポンプ11から作動油が主通路21に吐出され、ステアリング側主通路41及び荷役装置側主通路42を介してメータインコンペンセータ34及びブリードオフコンペンセータ36に夫々流れる。全ての操作手段(即ち、ステアリング及びレバー32,33)が操作されていない状態では、タンクライン51と連通路43とがスプール35a内で導通し、且つ第2パイロット通路34bがステアリング側主通路41の下流側部分41aに接続される。これにより、メータインコンペンセータ34によってステアリング側主通路41が閉じられる。
【0064】
また、ブリードオフコンペンセータ36では、第3パイロット通路36aに第1パイロット圧p1と同じ圧力の圧油が導かれ、第3パイロット圧p3がタンク圧と等しくなる。他方、第4パイロット通路36bは、荷役装置側主通路42の上流側部分42aと接続され、アクチュエータ用ポンプ11の吐出圧と等しくなる。それ故、ブリードオフコンペンセータ36が荷役装置側主通路42とホイスト通路44との間を開く方向に作動し、アクチュエータ用ポンプ11から荷役装置側主通路42に導かれた作動油が更にホイスト通路44及びタンク通路45を通ってタンク12に戻され、アクチュエータ用ポンプ11がアンロード状態となっている。なお、アンロード状態では、作動油が絞り55まで導かれることで絞り55の上流側部分で圧力が高くなる。それ故、サーボ機構56が斜板11aの傾転角を小さくするように動作し、アクチュエータ用ポンプ11の吐出量が抑えられる。
【0065】
このアンロード状態からバケット用レバー32又はホイスト用レバー33が操作されると、対応する方向制御弁37,38により作動油の流れ方向が切換えられ、対応するアクチュエータ17,18が作動する。これにより、バケット又はホイストが動く。
【0066】
また、ステアリングが操作されてステアリング装置31が作動すると、スプール35a内で接続されていたタンクライン51から連通路43が遮断される、即ち、連通路43とタンク12との間が遮断される。また、連通路43と下流側部分41aとの接続は維持されたままであるので、第1及び第2パイロット圧p1、p2が略同一圧になり、メータインコンペンセータ34がステアリング側主通路41を開く方向に作動する。他方、ブリードオフコンペンセータ36では、第3パイロット通路36aに第1パイロット圧p1と同じ圧力の圧油が導かれるので第3パイロット圧p3が上昇し、ブリードオフコンペンセータ36によって荷役装置側主通路42の上流側部分42aと下流側部分42bとの間が遮断される。それ故アクチュエータ用ポンプ11からの作動油がステアリング用アクチュエータ16L、16Rに優先的に流れるようになる。ステアリング側主通路41に導かれた作動油は、ステアリング用方向制御弁35によりステアリングの操作に応じた流れ方向に流されて一対のステアリングアクチュエータ16L,16Rを作動する。これにより、リアシャーシに対してフロントシャーシを左右に屈折させてホイールローダの進行方向を変えることができる。
【0067】
なお、ステアリングが操作されている場合、荷役装置側主通路42の上流側部分42aと下流側部分42bとの間が遮断されることにより、絞り55の上流側部分の油圧が低下する。これに伴って、サーボ機構56は、斜板11aの傾転角を大きくするように動作し、アクチュエータ用ポンプ11の吐出流量を増加させるようになっている。また、アクチュエータ駆動回路13では、アクチュエータ用ポンプ11の吐出流量の増加等により、この吐出流量がステアリング側アクチュエータ16L,16Rを動かすために必要な流量以上になると、余剰の作動油が荷役装置側主通路42へ流れるようになっている。
【0068】
[DPF再生動作]
更に、油圧駆動システム1では、エンジンEのマフラー79内にあるディーゼル微粒子補足フィルター(以下、単に「DPF」ともいう)80内に溜まるすす等の粒子状物質(以下、単に「PM」ともいう)を除去すべくエンジンEの負荷トルクを大きくすることができる。以下では、DPF80からPMを除去するDPF再生動作について、
図3も参照しながら説明する。なお、ファン駆動回路14は、エンジンEの始動と同時に作動しており、DPF再生の有無に関わらず冷却ファン20を回転させラジエータ26、オイルクーラー27及びインタークーラー28を冷却している。
【0069】
DPF再生動作は、エンジンEが駆動している状態で操作ボタン24が操作されてDPF再生動作が要求されると開始される。なお、DPF再生動作は、操作ボタン24が操作されなくても、フィルターの目詰まりが生じることにより制御装置74が自動的にDPF再生動作を要求することによって開始されてもよい。DPF再生動作が要求されると、DPF再生処理が始まってステップS1に移行する。
【0070】
再生条件判定工程であるステップS1では、回転数センサ78からの検出結果を含む様々な検出結果に基づいて再生条件を充足しているか否かを制御装置74が判定する。本実施形態では、再生条件は、エンジン回転数が800rpm以上1000rpm以下(アイドリング状態)であるという条件である。なお、再生条件には、エンジン冷却水の温度、作動油の温度及びインタークーラー28内の圧縮空気温度等の条件が含まれてもよい。このような再生条件を制御装置74が充足していないと判断するとステップS1で繰り返し再生条件の充足の有無を判定する。他方、制御装置74が再生条件を充足していると判定すると、ステップS2に移行する。
【0071】
DPF再生工程であるステップS2では、DPF再生が実行される。DPF再生では、制御装置74から電磁切換弁25に指令が与えられ、第1バイパス通路53の接続先が連通路43から第2バイパス通路54に切り替えられる。このように第1バイパス通路53の接続先が第2バイパス通路54に切り替えられると、第3及び第4パイロット圧p3,p4が略同圧となり、ブリードオフコンペンセータ36が荷役装置側主通路42の上流側部分42aと下流側部分42bとの間を遮断するように動作する。そうすると、絞り55の上流側部分に作動油が導かれなくなり、絞り55の上流側部分の油圧が低下する。これに伴ってサーボ機構56は、斜板11aの傾転角を大きくしてアクチュエータ用ポンプ11の吐出容量を最大容量まで増加させる。
【0072】
また、ステアリング装置31の動作も止めることでステアリング側主通路41も閉じられる。そうすると、アクチュエータ用ポンプ11からの作動油がタンク12に逃げることができなくなってアクチュエータ用ポンプ11の吐出圧力が上昇し、エンジンEの負荷トルクが大きくなる。その結果、エンジンEから排出される排気ガスの温度が上昇し、エンジンEの排気管内にあるDPF80に溜まるPMを除去することができる。なお、荷役装置側主通路42の油圧が上昇して所定圧力以上になると、荷役装置側リリーフ弁39が開いて荷役装置側主通路42の作動油がタンク12へと排出される。これにより、荷役装置側主通路42の圧力及び吐出圧力が所定圧力に保たれ、エンジンEの負荷トルクを最大値で制御することができる。このようにしてDPF再生が開始されると、DPF再生を継続しつつステップS3に移行する。
【0073】
なお、エンジンEの回転数が再生条件を充足しなくなるとDPF再生が解除されて、アクチュエータ用ポンプ11がアンロード状態になる。このようにDPF再生が解除されると、ステップS1に戻り、制御装置74が再び再生条件の充足の有無を判定する。
【0074】
温度チェック工程であるステップS3では、制御装置74がセンサ75〜77の検出結果に基づいてエンジン冷却水の温度、作動油の温度、圧縮空気の温度、及びトランスミッション油の温度を取得する。これらの温度を取得すると、ステップS4に移行する。合流条件判定工程であるステップS4では、制御装置74が所定の合流条件の充足の有無を判定する。制御装置74では、エンジン冷却水の温度、トランスミッション油の温度、作動油の温度、及び圧縮空気の温度の各々に対して個別に異なる2つの閾値(第1閾値>第2閾値)が夫々設定されている。合流条件には、前述の4つの温度のうちの少なくとも1つがそれに対応付けられている第1閾値を超えていることが含まれている。なお、第1閾値は、その温度まで上昇すると機器の不具合につながる温度であり、任意に設定される温度である。制御装置74が合流条件を充足しないと判定すると、ステップS5に移行する。
【0075】
遮断条件判定工程であるステップS5では、制御装置74が所定の遮断条件の充足の有無を判定する。遮断条件には、前述の4つの温度のうち第1閾値を超えていた温度の全てが各々に対応付けられている第2閾値以下なっていることが含まれている。なお、第2閾値は、任意に設定される温度である。制御装置74が遮断条件を充足していると判定すると、ステップS6に移行する。遮断工程であるステップS6では、制御装置74が電磁開閉弁73によって合流通路70を閉じる、又は閉じられている状態(即ち、閉状態)を維持し、ステップS3に戻る。次にステップS3で再度、センサ75〜77の検出結果に基づいて各温度を取得し、ステップS4に移行する。そして、ステップS4で制御装置74が合流条件を充足すると判定すると、ステップS7に移行する。
【0076】
合流工程であるステップS7では、制御装置74が電磁開閉弁73に接続指令を与えて合流通路70を開く。これにより、アクチュエータ駆動回路13の作動油が合流通路70を通ってファン用通路63に導かれ、ファン用ポンプ61からの作動油と合流する。このように合流させることで冷却ファン用モータ19に供給する作動油の流量を増加させ、冷却ファン20の最大回転数を上げて冷却ファンの冷却機能を一段階上げることができる。この際、合流回路15では、合流通路70を通る作動油の流れを可変絞り71が規制し、アクチュエータ駆動回路13側に必要な流量は確保する。それ故、アクチュエータ駆動回路13の機能(エンジンEの負荷掛けによるDPF再生)を発揮させつつ冷却ファン20の最大回転数を上げて冷却機能を一段階上げることができる。これにより、ラジエータ26、オイルクーラー27及びインタークーラー28の冷却能力が向上して、これらの機器の不具合を防ぐことができる。
【0077】
また、従来におけるDPF再生時では、エンジンEに負荷を掛けるためにアクチュエータ用ポンプ11から作動油を吐出させて荷役装置側リリーフ弁39からタンク12に排出させており、荷役装置側リリーフ弁39から排出させることで無駄な熱エネルギーが生じていた。しかし、本発明におけるDPF再生時では、アクチュエータ用ポンプ11から吐出する作動油をファン駆動回路14の作動油に合流させることで、熱エネルギーとして無駄に排出されるエネルギーの一部分を冷却ファン20の駆動エネルギーとして有効に活用することができる。これにより、損失エネルギーの低減を図ることができる。つまり、エネルギーの一部分を冷却ファン20の駆動エネルギーとして有効に活用することでDPF再生及び冷却に必要なエネルギーを低減することができる。
【0078】
ステップS7において冷却ファン20の最大回転数を上げると、ステップS3に戻って再びセンサ75〜77の検出結果に基づいて各種温度を取得し、ステップS4で制御装置74が合流条件の充足を判定する。冷却ファン20の最大回転数が上がることによって各種温度が下がり、ステップS4で合流条件を充足しないと判定され、且つステップS5で遮断条件を充足しないと判定されると、ステップS3に戻る。この際、制御装置74は、合流通路70の開閉状態を維持し続ける。即ち、合流通路70が開いている状態では、制御装置74が電磁開閉弁73に接続指令を与え続けて合流通路70が開いている状態(即ち、開状態)を維持する。他方、合流通路70が閉じている状態では、制御装置74が電磁開閉弁73に接続指令を与えずに合流通路70が閉じている状態を維持し続ける。
【0079】
ステップS3に戻ると、再びセンサ75〜77の検出結果に基づいて各種温度を取得し、ステップS4で制御装置74が合流条件の充足の有無を判定する。ステップS4で制御装置74が合流条件を充足しないと判定し、更にステップS5で制御装置74が遮断条件を充足すると判定すると、ステップS6に移行する。ステップS6では、制御装置74が電磁開閉弁73への接続指令を止め、合流通路70を閉状態にする。これにより、アクチュエータ駆動回路13からファン駆動回路14への作動油の供給が止まり、冷却ファン20の最大回転数が下がる。これにより、ラジエータ26、オイルクーラー27及びインタークーラー28が過冷却されて、これらの動作性能が低下することを防ぐことができる。また、このように2つの異なる閾値(即ち、ヒステリシス)を設定することで、合流通路70の開閉状態がすぐに切り替わることを防ぐことができる。
【0080】
このように構成されている油圧駆動システム1では、DPF再生時におけるラジエータ26、及びオイルクーラー27の冷媒の温度、並びにインタークーラー28内の圧縮空気の温度の上昇を抑えることができ、好適なDPF再生を実現することができる。また、油圧駆動システム1では、後述する実施形態よりも少ない構成にて合流回路15を構成することができる。
【0081】
[第2実施形態]
第2実施形態の油圧駆動システム1Aは、第1実施形態の油圧駆動システム1と構成が類似している。以下では、第2実施形態の油圧駆動システム1Aの構成については、第1実施形態の油圧駆動システム1と異なる点について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。なお、以下で説明する第3実施形態の油圧駆動システム1Bについても同様である。
【0082】
第2実施形態の油圧駆動システム1Aは、
図4に示すように、アクチュエータ駆動回路13と、ファン駆動回路14と、合流回路15Aとを備えており、合流回路15Aは、可変絞り71と、逆止弁72と、ロジック弁73Aと、電磁制御弁81とを有している。開閉切換弁であるロジック弁73Aは、合流通路70において可変絞り71より上流側に介在している。ロジック弁73Aの弁体73aにはパイロット圧p9が作用し、また、このパイロット圧p9に抗するようにロジック弁73Aの上流圧p10と下流圧p11とばね73bの付勢力が作用している。弁体73aは、これらの力の釣り合いに応じて合流通路70を開閉するようになっている。また、合流通路70には、ロジック弁73Aより上流側に電磁制御弁81が接続されており、電磁制御弁81の下流側は、ロジック弁73Aに接続されている。
【0083】
電磁制御弁81は、制御装置74に電気的に接続されており、合流通路70を流れる作動油を圧力源としている。電磁制御弁81は、合流通路70を流れる作動油をパイロット圧p9として出力してロジック弁73Aに与えるようになっている。なお、電磁制御弁81の圧力源として、第3実施形態で後述するパイロットポンプ82を用いることも可能である。
【0084】
このように構成されている油圧駆動システム1Aは、ロジック弁73Aを用いているので、電磁開閉弁73で構成する場合よりも製造コストを削減することができる。また、電磁制御弁81を低圧対応のものとすることができるので製造コストを削減することができる。
【0085】
その他、油圧駆動システム1Aは、作動油を合流させる際にロジック弁73Aを作動させる点を除いて第1実施形態の油圧駆動システム1と同様の処理でアクチュエータ駆動及びDPF再生を実行し、それと同様の作用効果を奏する。
【0086】
[第3実施形態]
第3実施形態の油圧駆動システム1Bは、
図5に示すように、アクチュエータ駆動回路13と、ファン駆動回路14と、合流回路15Bとを備えており、合流回路15Bは、逆止弁72と、スプール弁73Bと、パイロットポンプ82と、電磁制御弁81Bとを有している。スプール弁73Bは、合流回路15Bにおいて逆止弁72より上流側に介在している。スプール弁73Bは、スプール73cを有しており、スプール73cに作用するパイロット圧p12に応じた位置へとスプール73cが移動し、スプール73cの位置に応じた開度に合流通路70の開度を調整するようになっている。それ故、スプール弁73Bは、開閉切換弁の機能だけでなく、合流させる流量の調整も可能となる。これにより、第1及び第2実施形態の油圧駆動システム1,1Aと同様に、アクチュエータ駆動回路13の機能を発揮させつつ冷却ファン20の最大回転数を上げることができる。
【0087】
また、パイロットポンプ82は、小流量の固定容量ポンプであり、電磁制御弁81Bにパイロット油を吐出するようになっている。電磁制御弁81Bは、制御装置74に電気的に接続されており、パイロットポンプ82を圧力源としている。電磁制御弁81Bは、パイロット油を制御装置74から出力される接続指令に応じた圧力に調圧し、パイロット圧p12として出力してスプール弁73Bに与えるようになっている。なお、電磁制御弁81Bの圧力源は、第2実施形態で前述の合流通路70を流れる作動油とすることも可能である。
【0088】
このように構成されている油圧駆動システム1Bは、スプール弁73Bを用いているので、電磁開閉弁73で構成する場合よりも製造コストを削減することができる。また、パイロットポンプ82から吐出される圧液をパイロット圧源としているので、電磁制御弁81Bも低圧対応のものを採用することができるので製造コストを削減することができる。
【0089】
その他、油圧駆動システム1Bは、作動油を合流させる際にスプール弁73Bを作動させる点を除いて第1実施形態の油圧駆動システム1と同様の処理でアクチュエータ駆動及びDPF再生を実行し、それと同様の作用効果を奏する。
【0090】
[その他の実施形態について]
第1乃至第3実施形態の油圧駆動システム1,1A,1Bは、DPF再生時において冷却ファン20の最大回転数を上げるような構成であるが、DPF再生時以外に冷却ファン20の最大回転数を上げるような構成であってもよい。例えば、単にアイドリング状態において、4つの温度(エンジン冷却水の温度、作動油の温度、圧縮空気の温度、及びトランスミッション油の温度)のうちいずれか1つが対応する第1閾値を超えると、冷却ファン20の最大回転数を上げるようにしてもよい。
【0091】
また、アクチュエータ駆動回路13のアクチュエータ用ポンプ11が可変容量型のポンプで構成されているが、固定容量型のポンプであってもよい。
【0092】
また、第1乃至第3実施形態の油圧駆動システム1,1A,1Bでは、エンジン冷却水の温度、作動油の温度、圧縮空気の温度、及びトランスミッション油の温度に基づいて合流の有無が判定されているが、DPF再生だけに応じて合流の有無が判定されてもよい。即ち、DPF再生時には、アクチュエータ駆動回路13の作動油をファン駆動回路14の作動油に合流させるように制御装置74を構成してもよい。また、前述する第1閾値及び第2閾値は、例示に過ぎず、使用者の用途に応じて任意に設定することができる。
【0093】
また、第1乃至第3実施形態の油圧駆動システム1,1A,1Bでは、アクチュエータ駆動回路13に合流回路15,15A,15Bを適用した場合について説明しているが、アクチュエータ駆動回路13は、ステアリング及びアクチュエータを駆動可能な構成で且つDPF再生が可能な回路であればよく、上述するような構成に限定されない。
【0094】
更に、第1乃至第3実施形態の油圧駆動システム1,1A,1Bでは、作動液として圧油を用いる場合について説明しているが、作動液として使用する液体は水等であってもよい。第1乃至第3実施形態では、ホイールローダに搭載されている油圧駆動システム1,1A,1Bについて説明したが、搭載される建設機械はホイールローダに限定されず、ブルドーザやショベルカー等であってもよく建設機械であればよい。