特許第6013893号(P6013893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013893
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】雨水貯溜配管構造
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   E03F1/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-264081(P2012-264081)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-109141(P2014-109141A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】真山 淳哉
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3027840(JP,U)
【文献】 特開2010−127020(JP,A)
【文献】 特開2002−166105(JP,A)
【文献】 特開2009−052366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−3/02
E03F 5/00−5/16
E03F 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水排水配管内部に雨水を流入させる雨水流入部と、流入した雨水を一時的に貯溜する一時貯溜部と、一時貯溜部の一定量を超えた雨水がオーバーフローする越流部と、越流部からオーバーフローした雨水を貯溜する貯溜管路と、貯溜管路の内部に設けられた雨水を堰止める堰止め部と、を有する雨水貯溜配管構造であって、
貯溜管路が略水平、又は、最上流側から下流側に向けて下り勾配が設けられていると共に、最上流側の管底が越流部よりも低い位置にあり、
前記堰止め部の上方は開放され、かつ、前記堰止め部の上端は前記貯溜管路の管頂よりも高い位置にあり、
一時貯溜部には、雨水を徐々に排水する排水部が設けられており、一時貯溜部に流入する雨水量が排水部から排水される雨水量を上回ると、一時貯溜部の水位が上昇し、越流部を超えてオーバーフローした雨水が貯溜管路へと流入することを特徴とする雨水貯溜配管構造。
【請求項2】
一時貯溜部と貯溜管路が流出管を介して接続されており、その流出管の管底を越流部としたことを特徴とする請求項1に記載の雨水貯溜配管構造。
【請求項3】
一時貯溜部の内部に、一時貯溜部内を上流側と下流側に区画する所定の高さを有する区画壁を設け、その区画壁の上端を越流部としたことを特徴とする請求項1に記載の雨水貯溜配管構造。
【請求項4】
貯溜管路の最上流側の管頂の高さが越流部の高さと略同じ、又は、低いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の雨水貯溜配管構造。
【請求項5】
一時貯溜部に設けられた排水部よりも上流側に、異物捕集手段が講じられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の雨水貯溜配管構造。
【請求項6】
雨水流入部が、一時貯溜部に接続された雨水流入管であって、その雨水流入管の一時貯溜部側の端部に異物捕集手段が講じられていることを特徴とする請求項5に記載の雨水貯溜配管構造。
【請求項7】
一時貯溜部に設けられた排水部が、一時貯溜部の底面又は/及び側面の下端部に形成されたオリフィス、又は、透水性のシートで覆った開口であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の雨水貯溜配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅地内に埋設された雨水排水配管内部に雨水を貯溜し、その貯溜した雨水を有効利用できるようにした雨水貯溜配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
資源の有効活用や省エネに対する意識が高まっており、近年、宅地内に埋設された雨水排水配管の内部に雨水を貯溜して、その貯溜した雨水を植物の水やりや洗車等に有効利用する試みがなされている。
【0003】
このような事情に鑑みて、本出願人は、雨水桝と雨水桝を排水管で接続した雨水排水配管構造において、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に、配管内に流入した雨水を一時貯溜するための堰を設けた雨水排水配管構造を提案した(特許文献1)。
【0004】
上記特許文献1の雨水排水配管構造は、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に設けられた堰によって雨水は堰止められて、その堰よりも上流側に雨水は貯溜されるので、雨水桝等の取水口から容易に取水して、庭の水やり等に有効利用することのできる時代のニーズに応えるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−127020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の雨水排水配管構造は、配管内部に貯溜される雨水には降り始めの雨、所謂、初期雨水が含まれ、この初期雨水には汚濁成分が多く含まれて酸性度も高いため、貯溜した雨水を利用する用途が限定されてしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、雨水排水配管の内部に、初期雨水を排除したきれいな雨水のみを効率よく貯溜することのできる雨水貯溜配管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る雨水貯溜配管構造は、雨水排水配管内部に雨水を流入させる雨水流入部と、流入した雨水を一時的に貯溜する一時貯溜部と、一時貯溜部の一定量を超えた雨水がオーバーフローする越流部と、越流部からオーバーフローした雨水を貯溜する貯溜管路と、貯溜管路の内部に設けられた雨水を堰止める堰止め部と、を有する雨水貯溜配管構造であって、貯溜管路が略水平、又は、最上流側から下流側に向けて下り勾配が設けられていると共に、最上流側の管底が越流部よりも低い位置にあり、堰止め部の上方は開放され、かつ、前記堰止め部の上端は貯溜管路の管頂よりも高い位置にあり、一時貯溜部には、雨水を徐々に排水する排水部が設けられており、一時貯溜部に流入する雨水量が排水部から排水される雨水量を上回ると、一時貯溜部の水位が上昇し、越流部を超えてオーバーフローした雨水が貯溜管路へと流入することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の雨水貯溜配管構造においては、一時貯溜部と貯溜管路が流出管を介して接続されており、その流出管の管底を越流部としたり、一時貯溜部の内部に、一時貯溜部内を上流側と下流側に区画する所定の高さを有する区画壁を設け、その区画壁の上端を越流部としたりすることが好ましい。また、貯溜管路の最上流側の管頂の高さが越流部の高さと略同じ、又は、低いことが好ましく、一時貯溜部に設けられた排水部よりも上流側に、異物捕集手段が講じられていること、特に、雨水流入部が、一時貯溜部に接続された雨水流入管であって、その雨水流入管の一時貯溜部側の端部に異物捕集手段が講じられていることが好ましい。更に、一時貯溜部に設けられた排水部が、一時貯溜部の底面又は/及び側面の下端部に形成されたオリフィス、又は、透水性のシートで覆った開口であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の雨水貯溜配管構造は、越流部からオーバーフローした雨水を貯溜する貯溜管路が略水平、又は、最上流側から下流側に向けて下り勾配が設けられていると共に、最上流側の管底が、一時貯溜部の一定量を超えた雨水がオーバーフローする越流部よりも低い位置にあるので、一時貯溜部の一定量を超えた雨水を確実、且つ、効率よく貯溜管路内部に貯溜することができる。また、初期雨水は、一時貯溜部に設けられた排水部から排水されるので、初期雨水が越流部を越えて貯溜管路内に流入することはなく、初期雨水を排除したきれいな雨水のみを貯溜することができる。一方、雨が止むと、一時貯溜部に一時的に貯溜された雨水は排水部より完全に排水されるため、次回の降雨字も、初期雨水を排除したきれいな雨水のみが貯溜管路内に流入し、堰止め部によって堰止められて貯溜されるようになっている。しかも、堰止め部の上方が開放され、かつ、堰止め部の上端が貯溜管路の管頂よりも高い位置にあるので、貯溜管路が満水になるまで雨水を多量に貯溜でき、それ以上の雨水が流入しても堰止め部の上端を越流して排水されるため貯溜管路が雨水でパンクすることはない。このように本発明は、初期雨水を排除したきれいな雨水のみを、効率よく雨水排水配管の内部に貯溜することができるものであり、その貯溜した雨水を、植物の水やりや洗車等、様々な用途に有効利用することができる。
【0011】
次に、一時貯溜部と貯溜管路が流出管を介して接続されており、その流出管の管底を越流部とした雨水貯溜配管構造は、一時貯溜部と貯溜管路を流出管を介して接続することで、貯溜管路に下り勾配を設けなくても、貯溜管路に流入した雨水が一時貯溜部に逆流することがなくなり、貯溜管路の配管レイアウトの自由度が飛躍的に向上する。
【0012】
一方、一時貯溜部の内部に、一時貯溜部内を上流側と下流側に区画する所定の高さを有する区画壁を設け、その区画壁の上端を越流部とした雨水貯溜配管構造は、区画壁を設けることで、貯溜管路を一時貯溜部に直接接続した場合でも、貯溜管路に下り勾配を設ける必要がなく、管路設計や施工が容易となる利点がある。
【0013】
また、貯溜管路の最上流側の管頂の高さが越流部の高さと略同じ、又は、低い雨水貯溜配管構造は、貯溜管路全体を貯溜スペースとして有効活用することができる。
【0014】
更に、一時貯溜部に設けられた排水部よりも上流側に、異物捕集手段が講じられている雨水貯溜配管構造は、異物捕集手段を講じることで、異物が捕集されるので、排水部が異物で詰まって、一時貯溜部より初期雨水が排水されないという不具合を防止することができる。
【0015】
特に、雨水流入部が、一時貯溜部に接続された雨水流入管であって、その雨水流入管の一時貯溜部側の端部に異物捕集手段が講じられている雨水貯溜配管構造は、最も簡単な施工で、効率よく異物を捕集することができる。
【0016】
そして、一時貯溜部に設けられた排水部が、一時貯溜部の底面又は/及び側面の下端部に形成されたオリフィスである雨水貯溜配管構造は、一時貯溜部に一時的に貯溜された雨水を徐々に排水することができる。また、排水部が、透水性のシートで覆った開口である雨水貯溜配管構造は、排水部の面積を大きくすることが可能となって、排水部全体が目詰まりして一時貯溜部に一時的に貯留された雨水が排水部から排水されなくなることはほとんどなくなるため、メンテナンスの頻度を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る雨水貯溜配管構造を示す概略説明図である。
図2】同配管構造の一時貯溜部を示す断面図である。
図3】同配管構造の排水桝と堰止め部を示す断面図である。
図4】同配管構造において、一時貯溜部に直接貯溜管路を接続した場合を示す説明図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る雨水貯溜配管構造を示す概略説明図である。
図6】同配管構造の一時貯溜部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0019】
図1に示す本発明の雨水貯溜配管構造は、宅地内に埋設された雨水排水配管内部に雨水を貯溜し、その貯溜した雨水を植物の水やりや洗車等に有効利用できるように開発されたものであって、雨水排水配管内部に雨水を流入させる雨水流入部1と、流入した雨水を一時的に貯溜する一時貯溜部2と、一時貯溜部2の一定量を超えた雨水がオーバーフローする越流部3aと、越流部3aからオーバーフローした雨水を貯溜する貯溜管路4と、貯溜管路4の内部に設けられた雨水を堰止める堰止め部5と、を有する。
【0020】
上記雨水流入部1は、図1図2に示すように、家屋の屋根等に降雨した雨水を一時貯溜部2に流入させるための雨水流入管であって、その上流側端部は竪樋(不図示)に接続されていると共に、下流側端部は一時貯溜部2の側面上部に接続されている。従って、家屋の屋根等に降雨した雨水は竪樋(不図示)を流落し、雨水流入部1から一時貯溜部2に流入するようになっている。
尚、この雨水流入部1は、一時貯溜部2に雨水を流入するものであれば上記の流入管1に限定されるものではなく、例えば、一時貯溜部2の上部に開口を設けて、その開口を雨水流入部としてもよい。
【0021】
また、図2に示すように、上記雨水流入部1の下流側端部には、異物捕集手段6が講じられている。この異物捕集手段6は、後述する排水部2fに異物が侵入して詰まるのを防止するためのもので、半球状のメッシュ部材や袋状のネット部材が異物捕集手段6として好適に用いられる。
尚、この異物捕集手段6は、排水部2fに異物が侵入するのを防止するためのものなので、排水部2fより上流側であればどこに講じてもよいが、本実施形態では、最も取付け作業がし易くて、効果も大きくメンテナンスも容易である雨水流入部1の下流側端部に取付けられている。また、後述するように、一時貯溜部2の蓋体2bには通水孔20bが穿孔されているので、その通水孔20bからの異物の侵入を防止するため、一時貯溜部2の内部を上下に分割するように、半球状のメッシュ部材や袋状のネット部材などの異物捕集手段6を講じたり、通水孔20bを塞ぐように通水孔20bに直接異物捕集手段6を講じることも好ましい。
【0022】
上記雨水流入部1から流入した雨水を一時的に貯溜する一時貯溜部2は、耐久性や施工性に優れるポリプロピレンや塩化ビニル樹脂等で成形された合成樹脂製の雨水桝であって、図2に示すように、その上端は開口し、下端は閉口したバケツ型をしている。この一時貯溜部2の上端には、断面形状が略凹型の蓋受部2aが外側に向って突設されており、その蓋受部2aに蓋体2bが載置されている。この蓋体2bには、宅地内に降った雨水も一時貯溜部2の内部に流入するよう、複数の通水孔20bが穿孔されており、この通水孔20bも上記の雨水流入部1と同様に、一時貯溜部2に雨水を流入させる雨水流入部としての役割を果たす。
【0023】
また、この一時貯溜部2の周面には、図2に示すように、上記雨水流入部1の下流側端部を挿入する接続口2cと、流出管3の上流側端部を挿入する接続口2dが設けられている。この雨水流入部1の下流側端部を挿入する接続口2cは、越流部3aの上流側端部を挿入する接続口2dよりも高い位置に設けられており、接続口2c,2dに雨水流入部1と越流部3aをそれぞれ挿入すると、雨水流入部1が越流部3aよりも高い位置(雨水流入管の管底が流出管3の管頂よりも高い位置)にある。従って、雨水流入部1より一時貯溜部2に流入した雨水が、雨水流入部1へ再び逆流してしまうことはない。
尚、上記の接続口2c,2dは、管に対する受け口又は挿し口として一時貯溜部2と一体に設けられていてもよいが、本実施形態の一時貯溜部2の接続口2c,2dは、ホールソーなどで一時貯溜部2の周面に孔を穿孔することで設けられ、この接続口2c,2dの周囲には、止水性を向上させる環状のシールパッキン2eが周設されている。このように孔を穿孔して接続口2c,2dを設けることで、任意の箇所に接続口2c,2dを設けることが可能となり、配管の自由度が向上する。
【0024】
更に、一時貯溜部2の底面には、図2に示すように、排水部2fが設けられている。排水部2fは、一時貯溜部2に流入してきた雨水を徐々に排水して地中に浸透させたり、或いは、別の雨水排水配管や側溝に流すためのオリフィス(小径の孔)であって、この排水部2fを設けることで、初期雨水を完全に排除したきれいな雨水のみを、後述する貯溜管路4に貯溜することができるようになる。
【0025】
これを更に詳述すると、降雨時には、上記のように、雨水流入部1や蓋体2bの通水孔20bから一時貯溜部2に雨水が流入する。このとき、降り始めの雨、所謂、初期雨水には、汚濁成分が多く含まれて酸性度も高いため、初期雨水を貯溜管路4に貯溜しても、使う用途が限定されてしまう。そこで、初期雨水を排除したきれいな雨水のみを貯溜管路4に貯溜し、その貯溜した雨水を様々な用途に利用できるようにするため、一時貯溜部2の底面に排水部2fを設けている。前述したように、排水部2fはオリフィス(小径の孔)であるので、一時貯溜部2に流入してきた雨水は、直ちに排水部2fより排水されることはなく、徐々に排水されていく。一時貯溜部2に流入する雨水量が排水部2fから排水される雨水量を上回った時に初めて、一時貯溜部2の水位が上昇を始める。一時貯溜部2の水位が上昇を始めるのは、初期雨水が略排水された後になるよう、排水部2fであるオリフィスの径・個数及び一時貯溜部2の容量が設定されているので、初期雨水のみによって水位が上昇することはなく、水位が上昇した際の上面層の雨水は、汚濁成分が殆ど含まれず酸性度も低いきれいな雨水であり、このきれいな雨水のみが越流部3aを越えて貯溜管路4へと流入するようになっている。
尚、この排水部2fは、流入してきた雨水を徐々に排水できるのであれば、本実施形態のようなオリフィスに限定されるものではなく、例えば一時貯溜部2の底面に開口を設け、その開口を透水性のシート(不図示)で覆うことで排水部2fとしもよい。また、排水部2fは、少なくとも越流部3aよりも上流側に設ける必要があるので、本実施形態では、雨水流入部1と越流部3aの間であって、且つ、越流部3aよりも低い位置に設けられている。
【0026】
一方、雨が止むと、一時貯溜部2に一時的に貯溜された雨水は排水部2fより完全に排水されて、次回の降雨時には、一時貯溜部2に雨水は残っておらず、前述した工程と同様に、初期雨水を排除したきれいな雨水のみが貯溜管路4内部に貯溜されるようになっている。
【0027】
上記の一時貯溜部2と貯溜管路4とは、図1に示すように、円筒の短管である流出管3を介して接続されており、この流出管3の管底が、一時貯溜部2の一定量を超えた雨水がオーバーフローする越流部3aとなっている。この越流部3aの高さL1は、逆流防止の為、貯溜管路4の最上流側の管底よりも高い位置にある必要があり、本実施形態では、よりスムーズに一時貯溜部2よりオーバーフローした雨水が貯溜管路4に流入し、且つ、逆流しないように、越流部の高さL1は、貯溜管路の最上流側の管頂の高さL2よりも若干高くなっている。
【0028】
越流部3aの高さL1と貯溜管路の最上流側の管頂の高さL2を、上記の高さ関係にすることと配管内部を点検可能にすることを兼ねて、流出管3と貯溜管路4は点検口7を介して接続されている。この点検口7は、上端が開口すると共に下端が閉口した円筒体であって、その周面には、越流部3aの高さL1と貯溜管路の最上流側の管頂の高さL2が上記の高さ関係になるように、流出管3の接続口と貯溜管路4の接続口がホールソーなどで穿孔されている。そして、上端開口に載置された蓋(不図示)を取外すことで、配管内部の点検や清掃等のメンテナンスを行えるようになっている。
【0029】
尚、本実施形態のように、一時貯溜部2と貯溜管路4とを流出管3を介して接続しなくとも、初期雨水を排除したきれいな雨水を貯溜管路4に貯溜することはできる。しかしながら、一時貯溜部2の接続口2dに直接貯溜管路4を接続すると、図4に示すように、貯溜管路4に相当の下り勾配を設けなければ、貯溜した雨水が一時貯溜部2に逆流してしまうため、貯溜効率が非常に悪くなってしまう。従って、本実施形態のように、一時貯溜部2と貯溜管路4とは、流出管3を介して接続することが好ましい。
【0030】
上記越流部3aからオーバーフローした雨水を貯溜する貯溜管路4は、正確には、図1に示すように、宅地内に埋設されて流入した雨水を公共の下水道設備に排水する排水管4と、排水桝8の略半分(堰止め部5よりも上流側部分)と、取水口10のことをいうが、ここでは、貯溜量の大半を占める排水管を貯溜管路4として扱う。この貯溜管路4は、雨水の貯溜量をより増やすため途中で枝分かれしており、一方は公共の下水道設備(不図示)に繋がった下流側排水管11に接続され、もう一方は雨水を取水する取水口10に接続されている。枝分かれして取水口10側に向う貯溜管路4には、貯溜した雨水が取水口10に集まるように、取水口10へ向って若干の流れ勾配が設けられている。従って、貯溜管路4内部が雨水で満水とならなくても、越流部3aから流入した雨水は取水口10に集まって、容易に取水することができるようになっている。
尚、図面では、貯溜管路4が枝分かれした先の取水口10が下側に描かれているが、実際の地表の高さGLは同じである。
また、貯溜管路4は、その貯溜量を増やすために通常の雨水排水配管よりも径の大きな管(φ150〜φ300)で構成してもよい。
【0031】
上記貯溜管路4の枝分かれしていない側の下流側端部は、図1に示すように、排水桝8に接続されている。この排水桝8は、図3に示すように、左右両端部に筒状の流入口8aと流出口8bが一体に設けられていると共に、上端部に円形の開口を有する筒体8cが突設された略逆T字型の排水桝8であって、流入口8aには、上記のように貯溜管路4の下流側端部が、流出口8bには下流側排水管11がそれぞれ接続されている。また、筒体8cには、高さ調整筒9が嵌入されて、その上端が地表に臨むように調整されている。
【0032】
図3に示すように、上記排水桝8には、堰止め部5を嵌入するための凹入部8dが設けられている。この凹入部8dは、雨水の進行方向に対して直交する凹型の溝部を形成したもので、排水桝8の底面より側面上部に至るまで一続きに設けられている。
【0033】
上記排水桝8の凹入部8dに嵌入される堰止め部5は、その下端部が排水桝8の底面の形状に合わせて半円状に形成された板体であって、排水桝8の凹入部8dに嵌入されると、堰止め部5の上端が排水桝8の流入口8a(換言すれば貯溜管路4の管頂)よりも高い位置にあり、堰止め部5の上方は開放されている。堰止め部5と凹入部8dとの間には、水密性を向上させるための止水パッキン(不図示)が介在されており、堰止め部5の上端を越えた雨水以外は、下流側排水管11に流出しないようになっている。この堰止め部5を設けることで、排水桝8の流入口8aと流出口8bとが隔てられて、流入口8aより排水桝8内部に流入してきた雨水は、直ぐに流出口8bから流出することなく堰止め部5によって堰止められて、雨水が堰止め部5の上端に達するまで堰止め部5より上流側に位置する貯溜管路4の内部に満水状態で多量に貯溜されるようになっている。勿論、貯溜管路4が満水となった状態において、更に貯溜管路4内に雨水が流入しても、雨水は堰止め部5の上端を乗り越えて下流側排水管11に排水されるので、貯溜管路4が雨水でパンクしてしまうことはない。このような役割を果たす堰止め部5を宅地内に埋設された雨水排水配管の最下流側に設けると共に、上記一時貯溜部2を最上流側に設けることで、家屋の屋根や宅地内に降った雨水を一番多く貯溜することができるようになる。
【0034】
一方、貯溜管路4の枝分かれした側の下流側端部は、図1に示すように、取水口10に接続されることで行き止まりとなっている。この取水口10は、前述した点検口7と同様に、上端が開口して下端が閉口した円筒体であって、その周面には、貯溜管路4を接続するための接続口がホールソーなどで穿孔されており、貯溜管路4の最も低い位置に配置されている。そして、取水口10には、取水ポンプ10aが設けられており、取水口10の内部に集水された雨水を容易に取水して、植物の水やりや洗車等、様々な用途に使用できるようにしている。
尚、取水口10にフロート状等の水位計を設けることで、貯溜管路4内部の貯溜量を知ることができるようになる。また、取水口10は貯留管路4の枝分かれした側の下流側端部に設けなくともよく、例えば貯溜管路4の枝分かれしていない側の途中(排水桝8よりも上流側)に設けてもよい。その場合も、上流側及び下流側の両側から取水口10へ向って若干の流れ勾配を設けることで、貯溜管路4内部の貯溜量が少なくなってきた場合でも、雨水は取水口10に集まって、容易に取水することができるようになる。
【0035】
以上のような構成の本発明の雨水貯溜配管構造は、初期雨水が一時貯溜部2に設けられた排水部2fより排水されるので、越流部3aを越えて貯溜管路4内に初期雨水が流入することはなく、汚濁成分を多く含み酸性度も高い初期雨水を排除したきれいな雨水のみを貯溜管路4内に貯溜することができる。一方、雨が止むと、一時貯溜部2に一時的に貯溜された雨水は排水部2fより完全に排水されるため、次回の降雨時も、初期雨水を排除したきれいな雨水のみを貯溜管路4内に貯溜することができ、その貯溜された雨水を植物の水やりや洗車等、用途を選ばずに有効利用することができる。
【0036】
図5は本発明の他の実施形態に係る雨水貯溜配管構造を示す概略説明図、図6は同配管構造の一時貯溜部を示す断面図である。
【0037】
この実施形態の雨水貯溜配管構造は、図6に示す一時貯溜部20を用いたもので、この一時貯溜部20を用いることで、前述した実施形態の雨水貯溜配管構造とは異なり、一時貯溜部20と貯溜管路4とを流出管3を介さず直接接続しても、同等の貯溜量を確保することができるようになっている。
【0038】
この一時貯溜部20は、前述した一時貯溜部2と同様に、耐久性や施工性に優れるポリプロピレンや塩化ビニル樹脂等で成形された合成樹脂製の雨水桝であって、図6に示すように、その上端は開口し、下端は閉口したバケツ型をしている。また、一時貯溜部20の上端には、断面形状が略凹型の蓋受部2aが外側に向って突設されて蓋体2bが載置されており、その周面には、上記雨水流入部1の下流側端部を挿入する接続口2cと、貯溜管路4の上流側端部を挿入する接続口2gが設けられている。この雨水流入部1の下流側端部を挿入する接続口2cも、前述した一時貯溜部2と同様に、貯溜管路4の上流側端部を挿入する接続口2gより高い位置に設けられており、接続口2c,2gに雨水流入部1と貯溜管路4をそれぞれ挿入すると、雨水流入部1が貯溜管路4よりも高い位置(雨水流入管の管底が貯溜管路4の管頂よりも高い位置)にあり、雨水流入部1より一時貯溜部2に流入した雨水が、雨水流入部1へ再び逆流してしまうことを防止している。
【0039】
更に、前述した一時貯溜部2と同様に、一時貯溜部20の底面には、初期雨水を排水するための排水部2fが設けられており、汚濁成分を多く含み酸性度の高い雨水が貯溜管路4に流入するのを防止している。但し、この排水部2fは、前述した一時貯溜部2の排水部2fとは異なり、一時貯溜部20の底面を左右に分割したと仮定すると、どちらか一方の側にのみ設けられたもので、本実施形態では、一時貯溜部20の底面の左側にのみ設けられて、右側に排水部2fは設けられていない。これは一時貯溜部20の内部に、次に説明する区画壁30を設けたからである。
【0040】
一時貯溜部20の内部に設けられた区画壁30は、図6に示すように、一時貯溜部20を上流側(左側)と下流側(右側)に区画する壁体であって、この区画壁30の上端を雨水がオーバーフローする越流部30aとしている。区画壁30を設けることで、雨水流入部1より流入した雨水は、区画壁30より上流側の空間に流入して一時貯溜され、排水部2fからの排水量よりも流入量が上回ると水位が上昇を始め、区画壁30の上端である越流部30aを越えて、区画壁30の下流側の空間に流入するようになる。従って、区画壁30は、雨水流入部1より流入してきた雨水が、区画壁30の下流側の空間に直接流入しない位置(雨水流入部1より流入してきた雨水が区画壁30の上流側の空間の底面、内周面、区画壁30の上流側の壁面にぶつかる位置)で一時貯溜部20を上流側と下流側に区画する必要があり、また、初期雨水が越流部30aを越えて下流側の空間に流入しない所定の高さが必要である。この所定の高さとは、降雨量、排水部2fからの排水量、一時貯溜部20の容量などを勘案して設定されるものであり、本実施形態の区画壁30は貯溜管路4の管頂と略同じ高さに設定されている。区画壁30をこの高さに設定すると、越流部30aを越えた雨水は、初期雨水が排除されたきれいな雨水のみとなり、上記のように、一時貯溜部20底面の右側に排水部2fを設ける必要はなくなる。この区画壁30は、一時貯溜部20と一体に形成されることが好ましいが、別体の区画壁を水密的に一時貯溜部20に取付けてもよい。
尚、正確には、一時貯溜部20(雨水桝)の区画壁30より上流側が雨水を一時的に貯溜する一時貯溜部となり、区画壁30より下流側が雨水を貯溜する貯溜管路となるが、ここでは便宜上、雨水桝全体のことを一時貯溜部20という。
また、本実施形態の一時貯溜部20は、初期雨水が区画壁30よりも下流側に流入して貯溜管路4に貯溜される恐れが生じるので、一時貯溜部20には、通水孔20bが穿孔されていない蓋体2bを載置するとよい。
この実施形態のその他の構成は、前述した実施形態と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0041】
以上のような構成の本発明の雨水貯溜配管構造は、前述した図1図4に示す雨水貯溜配管構造の作用効果に加え、区画壁30で上流側と下流側に区画された一時貯溜部20を用いることで、直接一時貯溜部20と貯溜管路4を接続しても、同等の貯溜量を確保することができるようになる。
【符号の説明】
【0042】
1 雨水流入部(雨水流入管)
2,20 一時貯溜部
2a 蓋受部
2b 蓋体
20b 通水孔
2c 接続口(雨水流入部の接続口)
2d 接続口(越流部の接続口)
2e シールパッキン
2f 排水部(オリフィス)
2g 接続口(貯溜管路の接続口)
3 流出管
3a 越流部(流出管の管底)
30 区画壁
30a 越流部(区画壁の上端)
4 貯溜管路
5 堰止め部
6 異物捕集手段
7 点検口
8 排水桝
8a 流入口
8b 流出口
8c 筒体
8d 凹入部
9 高さ調整筒
10 取水口
10a 取水ポンプ
11 下流側排水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6