(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイロッドと、前記タイロッドの上端部に取り付けられたハンドルと、前記タイロッドの下端部に取り付けられた下部支持部材と、上端部が前記ハンドルに取り付けられ、下端部が前記下部支持部材に取り付けられ、さらに、前記タイロッドに取り付けられ、かつ横断面がU字状をしていて前記タイロッドから四方に伸びる4つのシースと、それぞれのシース内に配置されたハフニウム部材とを備え、
前記ハフニウム部材が、前記ハンドルの下端部に設けられた第1保持部に、軸心に垂直な断面が円である第1ピン部材によって取り付けられる第1ハフニウム部材を含んでおり、
前記シースの内面に向かって突出する第1突起部が前記第1ピン部材の両端部にそれぞれ形成され、
前記第1突起部と前記シースの内面とが点接触をしており、この第1点接触の位置から前記第1突起部の根元に向かって、前記第1突起部の断面積が増加しており、
前記第1点接触の位置を取り囲む第1の隙間が前記第1突起部の表面と前記シースの内面の間に形成されていることを特徴とする制御棒。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉で用いられる従来の制御棒の構造及びこれが設置される環境について説明する。沸騰水型原子炉は、複数の燃料集合体が装荷された炉心を原子炉圧力容器内に有している。これらの燃料集合体内に存在する核燃料物質に含まれたウラン235が、中性子を吸収して核分裂を起こし、熱を発生する。炉心に供給された炉水(冷却水)は、その熱によって加熱されて沸騰し、一部が蒸気になる。炉心内では、上記の核分裂によって新たに発生する中性子が他のウラン235を分裂させる連鎖反応が起きている。
【0003】
核分裂の連鎖反応量を制御するため、中性子吸収材を内部に収納する制御棒が利用される。このうち、沸騰水型原子炉で通常使用される制御棒は、横断面が十字形をしており、4体の燃料集合体のチャンネルボックスの相互間に形成される間隙(飽和水領域)内に挿入される。4体の燃料集合体にて構成される1つのセル当たり1体の制御棒が設けられる。原子炉圧力容器内でほぼ1つのセル毎にそれら4体の燃料集合体の下方に、制御棒案内管が配置される。制御棒は、セル内の4体の燃料集合体の各チャンネルボックス、及び制御棒案内管をガイド部材として利用する。また、制御棒は、下端部が制御棒駆動機構に連結され、制御棒駆動機構の駆動操作によって炉心に挿入され、炉心から引抜かれる。制御棒は、反応度制御及び出力分布の調整に用いられる重要機器である。
【0004】
沸騰水型原子炉に用いられる従来の制御棒の構造を簡単に説明する。この制御棒は、ハンドルがタイロッドの上端部に、落下速度リミッタがタイロッドの下端部にそれぞれ接合され、タイロッドの中心軸に位置するタイロッドから四方に伸びる4枚のブレードを有している。各ブレードは、タイロッドに取り付けられた、横断面がU字状であるシースを有し、このシース内に、中性子吸収材である複数のハフニウム部材を配置している(例えば、特開平9−61576号公報及び特開2009−41994号公報参照)。
【0005】
ハフニウム部材を用いた上記の制御棒では、横断面が楕円形でタイロッドの軸方向長さの約半分の軸方向長さを有する4本のハフニウム楕円管が、シース内に配置されている。4本のハフニウム楕円管のうち2本のハフニウム楕円管の上端部が、固定用ピンによって、ハンドルの下端に設けられた2つの舌状部にそれぞれ取り付けられている。残りの2本のハフニウム楕円管の下端部が、固定用ピンによって、下部支持部材(または落下速度リミッタ)の上端に設けられた2つの舌状部にそれぞれ取り付けられている。下部支持部材(または落下速度リミッタ)に取り付けられた2本のハフニウム楕円管は、ハンドルに取り付けられた2本のハフニウム楕円管の下方に配置される。
【0006】
近年、沸騰水型原子炉に用いられる制御棒においてのシース表面に微小なひびが生じる事象が報告されている。このひびが、応力、腐食及び放射線照射の3つの環境要因が重畳した時に発生する照射誘起型応力腐食割れ(IASCC:Irradiation Assisted Stress Corrosion Cracking)であると考えられている。
【0007】
制御棒のシースにおけるIASCCの抑制のために、ハフニウムを含む希釈合金板内に複数の中性子吸収棒を挿入して構成された中性子吸収部材とシースの間に形成される隙間を所定幅に保持した制御棒が、特開平1−284796号公報に記載されている。その隙間の保持は、シースに形成された複数の窪み部の内面を中性子吸収部材の表面に接触させることによって行われる。ハフニウム板で構成された中性子吸収部材とシースの間の隙間を所定幅に保持する技術は、特開昭60−60585号公報及び特開平4−289490号公報にも記載されている。
【0008】
また、特開2011−208959号公報には、制御棒において、ハフニウム楕円管を舌状部に取り付ける固定用ピンの両端とこれらにそれぞれ対向するシースの間にそれぞれ形成される隙間に不純物が蓄積され、その隙間に隙間腐食環境が形成されて固定用ピン付近のシースに照射誘起型応力腐食割れが生じる可能性があることが記載されている。この照射誘起型応力腐食割れの発生を抑制するために、特開2011−208959号公報に記載された制御棒では、シースに内面側が開放されて固定用ピンの端部を横切っている冷却水通路をその固定用ピンの両端部に形成し、この冷却材通路をタイロッドの軸方向に配置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開2011−208959号公報では、タイロッドの軸方向に配置された冷却材通路をシースに対向する固定用ピンの端部に形成しており、シース内において冷却水がこの冷却水通路内を流れるために、固定用ピンの端部とシース内面の間への不純物の蓄積が抑制される。このため、固定用ピン付近のシースに照射誘起型応力腐食割れが生じることを抑制できる。
【0011】
しかしながら、固定用ピンはハフニウム楕円管及び舌状部に固定されていないために、沸騰水型原子炉の運転中においてシース内を流れる冷却水の流動によって、固定用ピンが回転する可能性がある。この固定用ピンの回転によって、例えば、固定用ピンの端部に形成された冷却水通路がタイロッドの軸方向と直交する方向を向いた場合には、冷却水通路の両側に存在して下側になる、固定用ピンの凸部が、固定用ピンとシースの間を上昇しようとする冷却水の流れを妨げるため、冷却水のよどみがその凸部の下方に生じる。このよどみの発生は、照射誘起型応力腐食割れが固定用ピンの端部付近のシースに生じる恐れがある。
【0012】
本発明の目的は、ハフニウム部材を支持する固定用ピンが回転した場合でも冷却水のよどみの発生を抑制できる制御棒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成する本発明の特徴は、シース内のハフニウム部材が
軸心に垂直な断面が円であるピン部材によってハンドルの下端部に設けられた保持部に取り付けられ、シースの内面に向かって突出する突起部がピン部材の
両端部にそれぞれ形成され、突起部とシースの内面と
が点接触をしており、この点接触の位置から突起部の根元に向かって、突起部の断面積が増加しており、その
点接触の位置を取り囲む隙間が突起部の表面とシースの内面の間に形成されていることにある。
【0014】
ピン部材の両端部に形成されたそれぞれの突起部とシースの内面とが点接触をしているので、ピン部材が原子炉の運転中におけるシース内での冷却水の流動によって回転しても、
その点接触の位置を取り囲んで形成された、突起部の表面とシースの内面の間の隙間に、冷却水が流れる。このため、
シース内において、冷却水のよどみが突起部によって発生することを抑制することができ、シースの内面の、突起部付近での照射誘起型応力腐食割れの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、沸騰水型原子炉の制御棒においてハフニウム部材を支持する固定用ピンが回転した場合でも冷却水のよどみの発生を抑制することができ、シースに発生する沸照射誘起型応力腐食割れを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者らは、特開2011−208959号公報に記載された制御棒を検討した。この結果、前述したように、沸騰水型原子炉の運転中においてシース内を流れる冷却水の流動によって、ハフニウム部材を支持する固定用ピンが回転して固定用ピンの端部に形成された冷却水通路がタイロッドの軸方向と直交する方向を向く可能性があり、冷却水通路の両側に存在して下側になる、固定用ピンの凸部の下方に冷却水のよどみが生じる恐れがあることが判明した。冷却水のよどみは、固定用ピンの端部付近のシースに照射誘起型応力腐食割れを発生させる可能性がある。
【0018】
このため、発明者らは、固定用ピンが原子炉の運転中に回転しても、固定ピンの下方に冷却水のよどみが生じない制御棒の構造を検討した。この検討結果を以下に説明する。
【0019】
照射誘起型応力腐食割れは、放射線照射、応力及び隙間のどれか1つの要因を除くことにより防ぐことができる。しかしながら、制御棒は炉心内に挿入されるので放射線の照射環境を取り除くことは困難である。特に、原子炉の運転時に炉心に挿入されて原子炉出力を制御する制御棒のシースは、
図5に示すように、そのシース内に配置された中性子吸収部材であるハフニウム部材(例えばハフニウム楕円管)の上端部において原子炉の運転中での累積の中性子照射量が大きくなる。これは、その範囲が中性子束密度の高い領域である炉心の軸方向での中央部に位置する期間が長く、また、炉心から引き抜かれる時期が最も遅いからである。原子炉を起動するときに炉心に挿入されていた多数の制御棒の大部分は、昇温昇圧過程が終了した時点で炉心から全引抜されている。
【0020】
隙間腐食環境は、制御棒の中性子束密度が高い位置で、さらに原子炉内の冷却水に含まれる不純物及び腐食生成物などがシース内面の特定位置に堆積してシース内に隙間部が形成されることによって、シースに腐食をもたらすと、発明者らは考えている。特に、シース内面とハフニウム楕円管外面の間に形成される隙間の幅よりもシース内面と固定用ピンの端面との間に形成される隙間の幅が狭いため、原子炉の運転中に制御棒が炉心に挿入されているとき、シース内を流れる冷却水に含まれる腐食生成物等が後者の隙間に堆積しやすくなる。
【0021】
そこで、発明者らは、原子炉運転中でも固定用ピンの両端面でシースとの間に所定幅の隙間を確保することが望ましいと考えた。所定幅の隙間を形成することにより、固定用ピンの端面とシースの間の腐食環境を改善し、シースにおけるひびの発生を抑制できるのである。詳細を以下に説明する。
【0022】
発明者らは、
図6(a)に示すように、ハフニウム楕円管とシースの間に形成される隙間を模擬して2枚のステンレス鋼板13の間に隙間を形成した模擬試験体を用いて、隙間腐食試験を行った。隙間腐食試験は、対向しているステンレス鋼板13間の隙間の幅を0mm、0.1mm、0.2mm及び0.3mmの4通りに変えた各模擬試験体を作成し、これらの模擬試験体を用いて行った。2枚のステンレス鋼板13を2本の締結具14であるボルトで連結し、各模擬試験体における隙間の幅の調節は締結具14を調節することによって行った。隙間腐食試験は、各隙間幅を有する2枚のステンレス鋼板13を有する各模擬試験体に放射線であるγ線を照射した場合及び照射しない場合の両方の条件で実施した。さらに、隙間腐食試験において、ステンレス鋼板13を有する、γ線を照射した模擬試験体及びγ線を照射しない模擬試験体ごとに、腐食生成物模擬材を添加した水への浸漬時間を500時間、1000時間及び1500時間と変えたそれぞれのケースについて行い、さらに、腐食生成物模擬材を添加しない水への浸漬時間を500時間、1000時間及び1500時間と変えたそれぞれのケースについても行った。水の温度は288℃である。
【0023】
この隙間腐食試験の結果を、
図6(b)に示す。
図6(b)において、模擬試験体のステンレス鋼板13にひびが発生しない場合を×で、模擬試験体のステンレス鋼板13にひびが発生した場合を●、■及び□で示している。●は、模擬試験体が浸漬される水に腐食生成物が添加されており20000Gy/hrでγ線が模擬試験体に照射されているケースである。■は、模擬試験体が浸漬される水に腐食生成物が添加されておりγ線が模擬試験体に照射されていないケースである。□は、模擬試験体が浸漬される水に腐食生成物が添加されていなくγ線が模擬試験体に照射されていないケースである。
図6(b)に示す隙間腐食試験の結果に基づいて、発明者らは、固定用ピンとシースの間に形成される隙間の幅Gが0.2mmより広い場合に、シースにひびが発生しないことを確認した。制御棒の、炉心に装荷された燃料集合体間への挿入性を考慮し、その隙間の幅Gは1.0mm以下にしなければならない。したがって、固定用ピンとシースの間に形成される隙間の幅Gは、0.2mm<G≦1.0mmを満足する必要がある。
【0024】
0.2mm<G≦1.0mmを満足する構成としては、固定用ピンの端面にシースの内面に向かう突起を形成する構成、シースの一部を内側に固定用ピンの端面に向かって窪ませる構成、及び上記条件を満足させる幅Gを有する部材をシースと固定用ピンの端面の間に挿入する構成、のいずれかを採用できる。しかしながら、上記のいずれの構成を採用した場合であっても、シース4、または固定用ピン6とシース4の間に挿入された部材が固定用ピン6の端面と接触することになる。このような接触が生じる場合、接触点の近傍では0.2mm<Gの条件を満たすことができない可能性があり、隙間腐食の発生が懸念された。
【0025】
そこで、発明者らは、さらに、シースと円形部材が接触する構成を、2枚のステンレス鋼板に丸棒を挟んで模擬した模擬試験体を用いて隙間腐食試験を行った。隙間腐食試験では、
図7(a)に示すように、対向するステンレス鋼板13(シースを模擬)の間に丸棒15(固定用ピンを模擬)を挟んでそれぞれのステンレス鋼板13に接触させ、ステンレス鋼板13を締結具14で締結して形成された模擬試験体を用いた。この隙間腐食試験では、半径を変えた丸棒15を用い、各半径の異なる丸棒15とステンレス鋼板13を接触させた模擬試験体を、280℃の高温水中に浸漬し、γ線を照射して実施した。この隙間腐食試験の結果、丸棒15の半径rが2.5mmの時に隙間腐食が発生しないことが分かった。つまり、固定用ピンの端面がシースと接触する場合であっても、シースに隙間腐食が発生しない条件が存在することを、実験的に確認した。このような実験結果は、ステンレス鋼板13と丸棒15の側面との接触点(シースと固定用ピンの端面との接触点)からの隙間の奥行きの距離d(
図7(b)参照)、及び隙間の奥行きの距離dにおける隙間幅h(
図7(b)参照)を最適化することによって、接触点近傍でも隙間腐食を防止できることを示している。隙間の奥行きの距離dは、ステンレス鋼板13の板面に対する垂線であって丸棒15の軸心を通る垂線とステンレス鋼板13の板面との交点の位置(
図7(b)では丸棒15とステンレス鋼板の接触点)からステンレス鋼板13の板面に沿って離れる方向に向かう距離を意味する。隙間幅hは、ステンレス鋼板13の板面に垂直な方向における丸棒15の側面とステンレス鋼板13の板面との間の距離を意味する。
【0026】
発明者らは、特開2011−208959号公報に記載された制御棒における問題点、すなわち、端部に冷却水通路を形成した固定用ピンが、原子炉の運転中において回転し、一方向に伸びる冷却水通路を画定する、固定用ピンの端部に形成された突起部の下方に生じる冷却水のよどみを解消できる構造をさらに検討した。
【0027】
そこで、発明者らは、固定用ピンの端部に形成された突起部を模擬した丸棒15の半径rを1.0mm、2.5mm、及び3.0mmの3通りに変えた試験体(
図7参照)を製作し、それぞれの試験体を用いて隙間腐食試験を行った。なお、丸棒15の側面の曲面は固定用ピンの端面に形成した突起部の形状を表している。発明者らは、その隙間腐食試験で得られた結果を、突起部とシース内面における隙間の奥行きdと隙間幅hとの関係で整理し、
図8に示す。隙間腐食試験において半径rが2.5mmの丸棒を用いた場合には、ステンレス鋼板13に隙間腐食の発生が見られなかった。この結果から、半径rが2.5mmの丸棒での隙間幅hと隙間の奥行きdの相関より隙間幅が大きい範囲では、隙間腐食が抑制できることになる。つまり、隙間の奥行きdが1.0mmより大きい範囲では隙間幅h0.2mmより大きくする必要があり、隙間の奥行きdが1.0mmより小さい範囲では半径rが2.5mmである円弧より大きい隙間幅hが必要であることが分かった。
【0028】
そこで、例えば、
図9に示すように、端部に仰角θの錐体状突起部10を形成した固定用ピン9Uによりハフニウム部材を支持する構成を制御棒に適用すれば、仰角θが11.3°以上である錐体状突起部10を形成する場合には、隙間の奥行きdが1.0mm以下の領域で、隙間幅hが0mm<h≦0.2mmを満足することができる。仰角θは、錐体状突起部10が接触するシース3の内面と錐体状突起部10の表面でなす角度である。仰角θは90°未満まで可能であるが、サイズおよび加工性を考慮すると45°以下が適当であると考える。錐体状突起部10は、先端の一点のみでシース3に接触している。なお、隙間幅hの最大値が固定用ピンとシースの間に形成される隙間の幅Gである。
【0029】
以上の検討を踏まえて、発明者らは以下に示す(1)〜(3)の知見を得ることができた。
(1)固定用ピンの端部に形成された突起部の軸心18(
図9及び
図11参照)であってこの突起部がシースの内面に接触する位置に存在するその軸心18がシース内面と交差する交点C(
図9及び
図11参照)の位置からシースの内面に沿った1.0mmより外側の領域では、距離hが0.2mm<h≦1.0mmを満たすことにより、シースの内面における隙間腐食の発生を抑制することができる。
(2)シースと接触する、仰角θが11.3度以上の錐体状の突起部を、固定用ピンの端面に形成することにより、その隙間腐食の発生を抑制することができる。
(3)シースと接触する、半径が2.5mm以下の半球面状の突起部を、固定用ピンの端面に形成することにより、その隙間腐食の発生を抑制することができる。
【0030】
(2)及び(3)のそれぞれの構成は、(1)の構成の具体例である。(2)及び(3)のそれぞれの構成にすることにより、交点Cの位置からシースの内面に沿った1.0mm以内の領域においても、突起部の表面とシース内面との間に隙間が形成され、この隙間内を冷却水が流れるので、(1)の構成よりもシース内面に隙間腐食が生じる可能性を低減することができる。
【0031】
以上の検討結果に基づいた本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0032】
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒を
図1、
図2及び
図3を用いて説明する。本実施例の制御棒1は沸騰水型原子炉(BWR)で用いられる制御棒である。
【0033】
制御棒1は、横断面が十字形であり、軸心に配置されたタイロッド4から四方に伸びる4枚のブレード2を有する。ハンドル5がタイロッド4の上端部に取り付けられ、下部支持部材6がタイロッド4の下端部に取り付けられる。下部支持部材6は、下部支持板または落下速度リミッタである。
【0034】
各ブレード2は、横断面がU字状をしているシース3(
図2参照)、扁平な筒、例えば楕円形状の筒であるハフニウム部材7U,7Lを有する(
図1参照)。ハフニウム部材7U,7Lの、シース3内面に向かい合っている各側面は、平面になっている。シース3はステンレス鋼(SUS304及びSUS316L等)製である。シース3の上端はハンドル5に溶接され、シース3の下端は下部支持部材6に溶接されている。シース3のU字の両端部には、複数のタブ(突出部)16が軸方向において所定の間隔を置いて形成されている。これらのタブ16は、シース3の一部であるが、タイロッド4側に向かって突出している部分である。これらのタブ16は溶接にてタイロッド4に接合されている。上記したシース3とタイロッド4、ハンドル5及び下部支持部材6とのそれぞれの接合は、例えば、レーザ溶接によって行われる。
【0035】
2つのハフニウム部材(第1ハフニウム部材)7U及び2つのハフニウム部材(第2ハフニウム部材)7Lが、1つのブレード2のシース3内に形成される空間内に配置されている。ハフニウム部材7Uはハフニウム部材7Lの上方に位置しており、これらの軸方向の長さは同じである。ハフニウム部材7Uは、ハンドル5の下端部に形成された舌状部(第1保持部)8Uに固定用ピン(ピン部材)9Uで取り付けられている。ハフニウム部材7Lは、下部支持部材6の上端部に形成された舌状部(第2保持部)8Lに固定用ピン9Lで取り付けられている。すなわち、ハフニウム部材7Uは上端部がハンドル5に取り付けられ、ハフニウム部材7Lが下部支持部材6に取り付けられている。これらのハフニウム部材は中性子吸収部材である。BWRの運転中においてハフニウム部材7U,7Lが熱膨張してもそれらのハフニウム部材が互いに接触しないように、ギャップ(図示せず)がハフニウム部材7Uの下端とハフニウム部材7Lの上端との間に形成されている。
【0036】
制御棒1は、BWRの原子炉圧力容器内に配置され、原子炉出力を制御するために、複数の燃料集合体が装荷された炉心に制御棒駆動機構(図示せず)によって出し入れされる。制御棒1は、下部支持部材6の下端部に設けられたコネクタ17によって原子炉圧力容器の底部に設けられた制御棒駆動機構に連結される。制御棒駆動機構は、制御棒1の炉心内への挿入操作、及び制御棒1の炉心からの引き抜き操作を行う。原子炉圧力容器内を流れる冷却水(冷却材)は、シース3に形成された一部の開口8及びシース3の最下端部に形成された複数の開口11Lからシース3内に流入し、ハフニウム部材7U,7Lを冷却して他の開口8(特に、上端部に位置する開口8)及びシース3の最上端部に形成された複数の開口11Uからシース6の外に流出する。シース3内に流入した冷却水は、ハフニウム部材7Uに設けられた小径の開口9を通ってハフニウム部材7U内に流入し、また、ハフニウム部材7Lに形成された小径の開口9を通ってハフニウム部材7L内に流入する。このように、冷却水がハフニウム部材7U,7L内に流入することによって、これらのハフニウム部材の冷却効果が増大される。
【0037】
制御棒1に用いられる固定用ピン9U,9Lのそれぞれの端部には、複数、例えば、4個の錐体状突起部(例えば、四角錐状突起部)10が形成されている(
図4(a)参照)。各錐体状突起部10は、固定用ピン9U,9Lのそれぞれの端部に形成される、それらのピンの軸心に垂直な平面19に形成されている。各錐体状突起部10は、先端の一点がシース3の内面に接触し、仰角θが、例えば、30°になっている。なお、本実施例では、平面19とシース3の内面の間の隙間G(隙間幅hの最大値)は、例えば、1.0mmである。各錐体状突起部10は、錐体状突起部10とシース3の内面との接触点から錐体状突起部10の根元、すなわち、平面19に向かって断面積が増加している。
【0038】
固定用ピン9Uは、ハフニウム部材7Uを舌状部8Uに吊り下げるための支持部材であり、ハフニウム部材7Uの全重量(約15kg)を支持している。地震等により制御棒1が水平方向に揺れたとき、シース3の内面に押し付けられる、固定用ピン9Uの錐体状突起部10の先端部には、ハフニウム部材7Uの全重量が加えられる。錐体状突起部10を含む固定用ピン9Uに用いられているオーステナイト系ステンレス鋼の引張強さが590N/mm
2程度であるため、上記のように錐体状突起部10にハフニウム部材7Uの全重量約15kgが加わる場合には、固定用ピン9Uの端部に2個以上の錐体状突起部10を形成すれば、錐体状突起部10の機械的強度に余裕が生じる。
【0039】
本実施例によれば、錐体状突起部10が固定用ピン9U,9Lのそれぞれの平面19からシース3の内面に向って突出して錐体状突起部10の先端がシース3の内面に接触しているため、シース3の内面と平面19の間に1.0mmの隙間が形成される。このため、シース3内に流れる冷却水が、シース3の内面と平面19の間に形成された1.0mmの隙間内を流れ、この冷却水に含まれる不純物がシース3の内面と平面19の間に蓄積されることが防止される。これにより、固定用ピン9U,9Lのそれぞれと対向するシース3の部分で照射誘起型応力腐食割れが生じることを抑制できる。
【0040】
本実施例では、シース3の内面と各錐体状突起部10の表面とのなす角度(仰角θ)が30°であるので、錐体状突起部10と対向するシース3の内面付近での隙間腐食の発生が抑制される。
【0041】
また、本実施例では、固定用ピン9U,9Lが両端部にそれぞれ錐体状突起部10を形成しているので、錐体状突起部10とシース3の内面との接触点(交点C)を取り囲む隙間が、シース3の内面と錐体状突起部10の表面との間に形成される。原子炉の運転中においてシース3内の冷却水の流動によって固定用ピン9U,9Lのそれぞれが回転したとしても、冷却水が、常に、シース3の内面と錐体状突起部10の表面との間に形成される隙間内を流れる。このため、本実施例では、特開2011−208959号公報で生じる問題点、すなわち、固定用ピンの端部に形成された冷却水通路がタイロッドの軸方向と直交する方向を向いたときにおける、その冷却水通路を画定する凸部のうち下側に位置する凸部の下方での冷却水のよどみの発生を解消することができる。本実施例では、冷却水が、常に、シース3の内面と錐体状突起部10の表面との間に形成される隙間内を流れ、固定用ピン9U,9Lのそれぞれが回転したとしても錐体状突起部10の下方に冷却水のよどみが生じない。このため、特開2011−208959号公報においてその冷却水のよどみに起因して固定用ピンの端部付近のシースに生じる照射誘起型応力腐食割れが、本実施例では発生しない。
【0042】
錐体状突起部10付近での固定用ピン9U(または9L)とシース3の内面との間における冷却水の流動状態を、
図4(b)及び
図4(c)を用いて説明する。
図4(b)及び
図4(c)は、固定用ピン9Uの端部の平面19に形成された錐体状突起部10をシース3の内面側から見た状態を示している。固定用ピン9Uの端部に形成された平面19には、
図4(a)に示すように、4つの錐体状突起部(四角錐状突起部)10が形成されており、これらの錐体状突起部10が
図4(b)に示すように配置されているとする。矢印で示す冷却水流が、平面19とシース3の内面の間で隣接する錐体状突起部10の間、及びシース3の内面と各錐体状突起部10の表面の間を上昇する。原子炉の運転中にシース3内の冷却水の流動によって固定用ピン9Uが
図4(b)の状態から90°回転したとする(
図4(c)参照)。
図4(b)と同様に、実線の矢印で示す冷却水流が、平面19とシース3の内面の間で隣接する錐体状突起部10の間、及びシース3の内面と各錐体状突起部10の表面の間を上昇する。錐体状突起部10に当たった冷却水流は、破線で示すように、錐体状突起部10を迂回して流れる。固定用ピン9Uが90°回転する前の状態(
図4(b))及び固定用ピン9Uが90°回転した後の状態(
図4(c))において、冷却水流がシース3の内面と各錐体状突起部10の表面の間に形成される隙間内を流れるため、錐体状突起部10の下方に冷却水のよどみが生じない。このような冷却水の流動は、固定用ピン9Lの端部でも生じる。
【0043】
本実施例によれば、固定用ピン9U,9Lのそれぞれの端部に形成された平面19とシース3の間における不純物の蓄積防止、及びと固定用ピンが回転した場合における錐体状突起部10の下方での冷却水のよどみ発生の防止により、シース3における照射誘起型応力腐食割れの発生をさらに抑制することができる。
【実施例2】
【0044】
本発明の他の好適な実施例である実施例2の制御棒を
図10及び
図11を用いて説明する。本実施例の制御棒1Aは沸騰水型原子炉(BWR)で用いられる制御棒である。
【0045】
制御棒1Aは制御棒1において固定用ピン9U及び9Lのそれぞれの平面19に形成された錐体状突起部10を半球面状突起部10Aに替えた構成を有する。制御棒1Aの他の構成は制御棒1と同じである。
【0046】
制御棒1Aで用いられる固定用ピン9U,9Lは、それぞれの両端部に固定用ピンの軸心に垂直な平面19を形成しており、これらの平面19のそれぞれからシース3の内面に向かって複数の半球面状突起部10Aを突出させている。各半球面状突起部10Aの半径rは、2.5mm以下の、例えば、2.0mmである。各半球面状突起部10Aは、半球面状突起部10Aとシース3の内面との接触点から半球面状突起部10Aの根元、すなわち、平面19に向かって断面積が増加している。固定用ピン9U,9Lはオーステナイト系ステンレス鋼製である。本実施例においても、固定用ピン9U,9Lの両端部のそれそれぞれの平面19に複数、例えば、4つ形成される。各々の半球面状突起部10Aの中心を通る、シース3の内面に対する垂線18(実施例1における錐体状突起部10の軸心18に相当)とシース3の内面との交点Cを基点とする隙間の奥行きdが1.0mm以内の領域では、シース3の内面に垂直な方向におけるシース3の内面と半球面状突起部10Aの表面との間の隙間幅hが0mm<h≦0.2mmを満足し、隙間の奥行きdが1.0mmよりも大きい領域では0.2mm<h≦1.0mmを満たしている。このため、本実施例でも、半球面状突起部10Aと対向するシース3の内面付近での隙間腐食の発生が抑制される。
【0047】
本実施例では、固定用ピン9U,9Lが両端部にそれぞれ半球面状突起部10Aを形成しているので、半球面状突起部10Aとシース3の内面との接触点(交点C)を取り囲む隙間が、シース3の内面と半球面状突起部10Aの表面との間に形成される。原子炉の運転中においてシース3内の冷却水の流動によって固定用ピン9U,9Lのそれぞれが回転したとしても、冷却水が、常に、シース3の内面と半球面状突起部10Aの表面との間に形成される隙間内を流れる。
【0048】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。また、本実施例によれば、固定用ピン9U,9Lにそれぞれ形成した半球面状突起部10Aは、実施例1における錐体状突起部10に比べ加工性は悪いが、横方向に大きな荷重が付与された場合であっても、シースを貫通する恐れが少ないと考えられる。