特許第6013998号(P6013998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

特許6013998データストレージ装置およびデータ消去方法
<>
  • 特許6013998-データストレージ装置およびデータ消去方法 図000002
  • 特許6013998-データストレージ装置およびデータ消去方法 図000003
  • 特許6013998-データストレージ装置およびデータ消去方法 図000004
  • 特許6013998-データストレージ装置およびデータ消去方法 図000005
  • 特許6013998-データストレージ装置およびデータ消去方法 図000006
  • 特許6013998-データストレージ装置およびデータ消去方法 図000007
  • 特許6013998-データストレージ装置およびデータ消去方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013998
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】データストレージ装置およびデータ消去方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 27/00 20060101AFI20161011BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G11B27/00 D
   G11B20/10 D
   G11B20/10 311
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-185106(P2013-185106)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-53092(P2015-53092A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100142088
【弁理士】
【氏名又は名称】野木 新治
(74)【代理人】
【識別番号】100176599
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100122220
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100138807
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 邦幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165375
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 隆史
(72)【発明者】
【氏名】山川 輝二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 紀
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−265492(JP,A)
【文献】 特開2013−009227(JP,A)
【文献】 特開2007−323507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 27/00
G11B 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストからのコマンドおよびユーザデータを受信するインターフェース手段と、
前記インターフェース手段を介して前記ホストから送られたユーザデータ記録されるデータ領域を有する記録媒体と、
前記データ領域とは異なる不揮発性の記録部と、
前記データ領域に対するライト処理を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記インターフェース手段を介して前記ホストから送られる前記データ領域に対するイレーズ処理の実行の要求を示すコマンドに応じて、前記イレーズ処理の開始に対応する第1の時間情報を前記不揮発性の記録部に保存し、前記第1の時間情報の保存後に前記イレーズ処理を実行し、前記イレーズ処理の完了に対応する第2の時間情報を前記不揮発性の記録部に保存する、
データストレージ装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記イレーズ処理の実行の要求を示すコマンドの受領に対応する第3の時間情報を前記不揮発性の記録部に保存する、
請求項1に記載のデータストレージ装置。
【請求項3】
記第1及び第2の時間情報は、前記インターフェース手段を介して前記ホストから送信されるコマンドに含まれる時刻を示す情報と前記データストレージ装置の内部でカウントされる時間情報とに基づいて算出される、
請求項1又は請求項2に記載のデータストレージ装置。
【請求項4】
前記データ領域に対するライト処理の実行の要求を示すライトコマンドを受領したことに応じて、当該受領したライトコマンドが前記イレーズ処理の実行後の最初のライトコマンドであるか否かを判定し、最初のライトコマンドである場合、前記イレーズ処理の実行後のライト処理であることを示す情報を前記不揮発性の記録部に保存する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のデータストレージ装置。
【請求項5】
前記インターフェース手段を介した前記ホストからの前記イレーズ処理の実行後の前記第1及び第2の時間情報の提供の要求に応じて、前記不揮発性の記録部に保存された前記第1及び第2の時間情報を読み出して前記インターフェース手段を介して前記ホストに提供する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のデータストレージ装置。
【請求項6】
ホストからのコマンドおよびユーザデータを受信するインターフェース手段と、前記インターフェース手段を介して前記ホストから送られたユーザデータ記録されるデータ領域を有する記録媒体と、前記データ領域とは異なる不揮発性の記録部と、を備えるデータストレージ装置に適用されるデータ消去方法であって、
前記インターフェース手段を介して前記ホストから送られる前記データ領域に対するイレーズ処理の実行の要求を示すコマンドに応じて、前記イレーズ処理の開始に対応する第1の時間情報を前記不揮発性の記録部に保存し、前記第1の時間情報の保存後に前記イレーズ処理を実行し、前記イレーズ処理の完了に対応する第2の時間情報を前記不揮発性の記録部に保存する、
データ消去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、データストレージ装置およびデータ消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に代表されるデータストレージ装置では、記
録されたデータが第3者に読み出されないようにする技術が適用されている。例えば、デ
ータストレージ装置を廃棄した後、記録されていたデータが読み出されることを回避する
ため、廃棄前に、記録されたデータを読み出せなくすることが行われる。この方法として
、データストレージ装置を物理的に破壊する方法、特定パターン(例えばオールゼロのパ
ターン)を全ての記録領域に記録し、記録されていたデータを上書きする(イレーズ処理
)方法が代表的である。データストレージ装置を再利用することを考慮すると、後者の方
法が適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−018415号公報
【特許文献2】特開2002−312128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来は、イレーズ処理後のデータストレージ装置に対し、確実にイレーズ処理が
実行されたかを判断する方法が開示されていなかった。そこで、本発明が解決しようとす
る課題は、イレーズ処理が確実に実行されたことを好適に保証することができるデータス
トレージ装置およびデータ消去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によるデータストレージ装置は、ホストからのコマンドおよびユーザデータを受信するインターフェース手段と、前記インターフェース手段を介して前記ホストから送られたユーザデータ記録されるデータ領域を有する記録媒体と、前記データ領域とは異なる不揮発性の記録部と、前記データ領域に対するライト処理を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記インターフェース手段を介して前記ホストから送られる前記データ領域に対するイレーズ処理の実行の要求を示すコマンドに応じて、前記イレーズ処理の開始に対応する第1の時間情報を前記不揮発性の記録部に保存し、前記第1の時間情報の保存後に前記イレーズ処理を実行し、前記イレーズ処理の完了に対応する第2の時間情報を前記不揮発性の記録部に保存する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかるデータストレージ装置である磁気ディスク装置(HDD)を備える電子システムの構成を示すブロック図。
図2】実施形態にかかるイレーズ処理を実行するブロックを説明するための構成図。
図3】実施形態にかかる電子システムによるイレーズ処理の動作例を示すシーケンス図。
図4】実施形態にかかるイレーズ処理を説明するためのフローチャート。
図5】実施形態にかかるイレーズ処理で用いられるイレーズ情報の例を示す図。
図6】実施形態にかかるイレーズ処理後のライト処理を説明するためのフローチャート。
図7】実施形態にかかるイレーズ処理後のコマンド応答処理を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、いくつかの実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施
形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成
要素を変形して具体化できる。また、以下の実施形態に開示されている複数の構成要素の
適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素
から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組
み合せてもよい。
【0008】
図1は、実施形態にかかるデータストレージ装置としての磁気ディスク装置(以下、H
DDとも称する)10を備える電子システム150の構成を示すブロック図である。電子
システム150はホスト100およびHDD10を備えている。ホストI/F120は、
ホスト100とHDD10とを接続し、ホスト100とHDD10との間のコマンドおよ
びユーザデータの送受信に利用される。ホストI/F120は、SATA(Serial Advan
ced Technology Attachment)規格やSAS(Serial Attached SCSI)規格に準拠する。
HDD10は、ホストI/F120を介してホスト100と接続され、ホスト100のデ
ータストレージ装置として機能する。例えば、電子システム150は、パーソナルコンピ
ュータやモバイル機器であり、ホスト100は、パーソナルコンピュータ等に備えられる
チップセットICである。
【0009】
HDD10は、磁気ディスク1、スライダ2、アーム3、ボイスコイルモータ(VCM
)4、及びスピンドルモータ(SPM)5を含むヘッド・ディスクアセンブリ(Head-Dis
k Assembly:HDA)を有する。またHDD10は、モータドライバ21、ヘッドIC2
2、不揮発性メモリ43、及びコントローラ60を含む回路ブロックを有する。
【0010】
コントローラ60は、リードライトチャネルIC(以下、RDCとも称する)31、C
PU41、RAM42、及びHDC(Hard Disc Controller)50を含む。RAM42は
、磁気ディスク1よりも高速なデータ転送が可能な揮発性メモリであるDRAM(SDR
AM)またはSRAMが適用される。不揮発性メモリ43は、不揮発性の記録部であり、
フラッシュメモリやNANDメモリといった半導体メモリや、磁気ディスク1の一部の記
録領域が適用される。
【0011】
実施形態にかかるHDD10は、磁気ディスク1にデータを記録する処理(ライト処理
)、及び磁気ディスク1の全ての記録領域に対して、特定のイレーズパターン(例えばオ
ールゼロのデータパターン)により記録されていたデータを上書きする処理(イレーズ処
理)を実行する。ライト処理及びイレーズ処理は、ホストI/F120を介してホスト1
00から送信されるコマンドに応じて実行される。これらの処理は、CPU41で実行さ
れるプログラム(ファームウェア)に従って制御される。プログラムのデータは、不揮発
性メモリ43や磁気ディスク1に記憶されている。
【0012】
磁気ディスク1は、SPM5により回転する。SPM5は、モータドライバ21からの
駆動電流により駆動制御される。アーム3とVCM4はアクチュエータを構成する。アク
チュエータは、スライダ2に実装されたヘッド(不図示)を磁気ディスク1上の目標位置
まで移動(シーク)させる。即ち、アクチュエータは、VCM4の駆動により、アーム3
に搭載されているスライダ2(更に詳細にはヘッド)をディスク1上の径方向に移動させ
る。VCM4は、モータドライバ21からの駆動電流により駆動制御される。
【0013】
磁気ディスク1には、データが記録される多数のシリンダ(トラック)が構成される。
磁気ディスク1は、HDD10の動作に関するデータ、及びライト処理及びイレーズ処理
に関するデータを含む管理データを記録するためのシステム領域と、ホスト100から送
信されるユーザデータを記録するためのデータ領域とを有する。磁気ディスク1はデータ
を記録するための記録媒体として構成される。なお管理データは、システム領域でなく不
揮発性メモリ43に記録されてもよい。管理データは、HDD10の動作中は、RAM4
2に展開され、HDD10(より詳細にはRAM42)の電源が落ちる前に、RAM42
から不揮発性の記録部である不揮発性メモリ43、又は磁気ディスク1のシステム領域に
記録(複写)されてもよい。
【0014】
ヘッドはスライダ2を本体として、当該スライダに実装されているリードヘッドRH及
びライトヘッドWHを有する。リードヘッドRHは、磁気ディスク1上のシリンダに記録
されているデータを読み出す。読み出されるデータは、サーボ情報やユーザデータである
。ライトヘッドWHは、磁気ディスク1上にユーザデータを書き込む。リードヘッドRH
は読み出し手段として、ライトヘッドWHは記録手段として構成される。
【0015】
ヘッドIC22は、リードアンプ及びライトドライバ(共に不図示)を有する。リード
アンプは、リードヘッドRHにより読み出されたリード信号を増幅してRDC31に伝送
する。ライトドライバは、RDC31から出力されるライトデータに応じたライト電流を
ライトヘッドWHに伝送する。
【0016】
コントローラ60は、RDC31、CPU41、RAM42、及びHDC50を含む1
チップの集積回路で構成されている。RDC31は、リードチャネル及びライトチャネル
(共に不図示)を含む。リードチャネルは、リードヘッドRHにより読み出されたリード
信号を処理してデータ(サーボ情報を含む)を復号する。ライトチャネルは、HDC50
からのライトデータの信号処理を実行する。RAM42は、コントローラ60の外部に設
けられてもよい。
【0017】
HDC50は、RAM42を制御して、ホスト100とRDC31との間のデータ転送
を制御する。HDC50は、リードデータ及びライトデータをRAM42に一時的に格納
することでデータ転送制御を実行する。また、HDC50は不揮発性メモリ43を制御し
て、例えばCPU41が実行するプログラム及び装置パラメータの、格納及び読み出しを
行う。HDC50は、ホスト100とHDD10との間のコマンド及びデータの送受を制
御するインターフェース手段として構成される。
【0018】
CPU41は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラとも称される。CPU
41は、モータドライバ21を介してVCM4を制御してヘッドの位置決め制御(サーボ
制御)を実行する。また、CPU41は、RDC31を介して磁気ディスク1に対するラ
イト処理及びイレーズ処理を制御する。またCPU41は、HDD10内部で生成される
クロックに基づいて、HDD10の積算動作時間を示すライフタイマ値を計測するための
カウンタを有する。このカウンタは、CPU41が備えるのでなく他の回路ブロックに備
えられていてもよい。CPU41は、プログラムに従って、HDAや回路ブロックを利用
してこれらの処理を制御する。
【0019】
以上で説明した構成により、本実施形態にかかるHDD10は、以下に説明する複数の
処理を実行することができる。
【0020】
次に、図2を用いて、本実施形態にかかるHDD10に備えられ、イレーズ処理を実行
するブロックを説明する。図2は、本実施形態にかかるイレーズ処理を実行するブロック
を説明するための構成図である。
【0021】
HDD10は、コマンド処理部201、メモリ制御部202、時刻管理部203、イレ
ーズ制御部204、ライト制御部205を含む。これらのブロックは、HDD10が有す
るHDAや回路ブロック、及びCPU41により実行されるプログラムにより構成される
。すなわち、本実施形態にかかるイレーズ処理は、これらのブロックによって実行される
【0022】
コマンド処理部201は、ホスト100から送信されるコマンドに応じた処理、又はH
DD10の内部で要求される処理の実行要求を、メモリ制御部202、時刻管理部203
、イレーズ制御部204、又はライト制御部205に通知する。またコマンド処理部20
1は、メモリ制御部202、時刻管理部203、イレーズ制御部204、又はライト制御
部205からの通知に応じて、ホストに対して応答コマンドを送信する。コマンド処理部
201は、例えばホスト100から送信されるイレーズコマンドに応じた処理の実行要求
を、イレーズ制御部204に通知する。ホスト100からイレーズコマンドを受信した場
合、コマンド処理部201は、時刻管理部203に現在時刻のデータを要求し、取得した
現在時刻のデータをメモリ制御部202に通知する。
【0023】
メモリ制御部202は、RAM42又は不揮発性メモリ43との間のデータの送受を制
御する。メモリ制御部202は、イレーズ制御部204によるイレーズ処理、又はライト
制御部205によるライト処理の際、RAM42又は不揮発性メモリ43との間でデータ
を送受する。またメモリ制御部202は、コマンド処理部201からの要求に応じて、R
AM42又は不揮発性メモリ43から読み出したデータをコマンド処理部201に送信す
る。さらにメモリ制御部202は、コマンド処理部201又はイレーズ制御部204から
通知された現在時刻のデータを、RAM42又は不揮発性メモリ43に保存する。
【0024】
時刻管理部203は、コマンド処理部201からの通知に応じて、ホスト100から送
信される時刻を示すデータとHDD10内部に備えられたカウンタによるライフタイマ値
とに基づいて、現在時刻を計時する。換言すると、時刻管理部203は、ホスト100か
ら送信された時刻を示すデータとライフタイマ値とを同期して、現在時刻を計時する。ま
た時刻管理部203は、イレーズ処理の進捗に応じたコマンド処理部201又はイレーズ
制御部204からの要求に応じて、現在時刻のデータを要求元に送信する。
【0025】
イレーズ制御部204は、コマンド処理部201からの通知に応じて、磁気ディスク1
に対するイレーズ処理を実行する。イレーズ制御部204は、イレーズ処理の進捗に応じ
て、時刻管理部203に対して現在時刻のデータを要求し、取得した現在時刻のデータを
メモリ制御部202に通知する。具体的には、イレーズ制御部204は、イレーズ処理の
開始時及び完了時に取得した現在時刻のデータをメモリ制御部202に通知する。イレー
ズ処理における磁気ディスク1に対するイレーズパターンの記録は、イレーズ制御部20
4がライト制御部205に実行させてもよい。
【0026】
ライト制御部205は、コマンド処理部201からの通知に応じて、磁気ディスク1に
対するライト処理を実行する。ライト制御部205は、コマンド処理部201から通知さ
れたライト処理の要求が、イレーズ処理の実行後の最初の要求であるか否かを確認する。
この確認では、ライト制御部205は、メモリ制御部202を介して、RAM42又は不
揮発性メモリ43から読み出したデータを用いる。なおライト制御部205が、イレーズ
制御部204からの指示に基づいて、イレーズ処理における磁気ディスク1に対するイレ
ーズパターンの記録を実行してもよい。
【0027】
本実施形態にかかるデータストレージ装置及びデータ消去方法によれば、以上で説明し
た構成により、イレーズ処理が確実に実行されたことを好適に保証することができる。
【0028】
次に、図3を用いて、本実施形態にかかる電子システムで実行されるイレーズ処理の動
作例を説明する。図3は、実施形態にかかるイレーズ処理の動作例を示すシーケンス図で
ある。
【0029】
実施形態にかかるイレーズ処理は、ホスト100から送信されたコマンドを受領したH
DD10によって実行される。イレーズ処理では、HDD10において、イレーズ処理の
進捗に応じて現在時刻が管理される。以下に、動作例を具体的に説明する。
【0030】
まず、ホスト100から、その時点での時刻を示すデータがHDD10に通知される(
B301)。この通知を受領したHDD10は、ホスト100から送信される時刻を示す
データとHDD10内部に備えられたカウンタによるライフタイマ値とを同期して、現在
時刻を計時する(B302)。そして、現在時刻の計時が完了したことを示す応答コマン
ドが、HDD10からホスト100に通知される(B303)。
【0031】
その後、ホスト100から、イレーズ処理の実行要求がHDD10に通知される(B3
04)。この通知を受領したHDD10は、イレーズ処理の実行要求を受領した時刻のデ
ータを不揮発性の記録部(例えば、RAM42又は不揮発性メモリ43)に保存する(B
305)。引き続き、HDD10は、イレーズ処理の実行を開始したときの時刻を保存し
(B306)、イレーズ処理を実行する(B307)。イレーズ処理の実行が完了すると
、HDD10は、実行完了したときの時刻を保存する(B308)。そして、イレーズ処
理が正常終了したことを示す応答コマンドが、HDD10からホスト100に通知される
(B309)。
【0032】
なお、以上説明した動作例は一例であり、これ以外の変形例が適用されてもよい。例え
ば、イレーズ処理の実行要求を受領した時刻のデータを不揮発性の記録部に保存する処理
(B305)は実行されなくてもよい。また、イレーズ処理の実行(B307)が開始さ
れてから、そのときの時刻が保存(B306)されてもよい。
【0033】
次に、図4を用いて、本実施形態にかかるHDD10で実行されるイレーズ処理の動作
を説明する。図4は、実施形態にかかるイレーズ処理を説明するためのフローチャートで
ある。
【0034】
前述したとおり、実施形態にかかるイレーズ処理は、ホスト100から送信されたコマ
ンドを受領したHDD10によって実行される。イレーズ処理の実行前に、HDD10は
、イレーズ処理の実行可否を判断する。以下に、動作を具体的に説明する。
【0035】
まず、HDD10は、ホスト100から、その時点での時刻を示すデータを伴うコマン
ドを受領する(B401)。このコマンドを受領したHDD10は、ホスト100からの
時刻を示すデータとライフタイマ値とを同期して、現在時刻を計時する(B402)。引
き続きHDDは、ホスト100から、イレーズ処理の実行要求を示すコマンドを受領する
(B403)。このコマンドを受領したHDD10は、イレーズ情報の保存が可能か否か
を判定する(B404)。
【0036】
ここで、図5を用いて、イレーズ情報について説明する。図5は、実施形態にかかるイ
レーズ処理で用いられるイレーズ情報の例を示す図である。
【0037】
図5に示すように、イレーズ情報は、実行されたイレーズ処理に関する情報であって、
イレーズ処理の実行毎にインクリメントされる実行番号、イレーズ処理の開始時点の時刻
を示すイレーズ開始時刻、及び、同処理の完了時点の時刻を示すイレーズ完了時刻を含む
。また、これらの情報以外に、イレーズコマンドの受領時点での時刻を示すコマンド受領
時刻、イレーズ処理の進捗状況を示すステイタス、イレーズ処理が開始されたLBAを示
す開始LBA、及び、同処理が終了したLBAを示す開始LBA、が含まれてもよい。
【0038】
イレーズ情報は、不揮発性の記録部(例えば、RAM42又は不揮発性メモリ43)に
、更新されずに追加されて保存される。すなわち、実行された全てのイレーズ処理に関す
るイレーズ情報が、実行番号により区別されて保存される。1回のイレーズ処理に対応す
るイレーズ情報は所定のデータ量となり、イレーズ情報の保存のために確保される記録領
域の容量は制限される。そのため、本実施形態にかかるイレーズ処理では、イレーズ情報
の保存が可能か否かが、実行毎に判断される。
【0039】
図4に戻り、イレーズ情報の保存が可能と判定された場合(B404のYes)、イレ
ーズ処理の実行要求を受領した時刻のデータが保存され(B405)、イレーズ開始時刻
が保存され(B406)、イレーズ処理が実行され(B407)、その後、イレーズ完了
時刻が保存される(B408)。そしてイレーズ処理を含む一連の動作は終了する。一方
、イレーズ情報の保存が可能でないと判定された場合(B404のNo)、コマンド処理
部201を介して、イレーズ処理が失敗したことを示す応答コマンドが、HDD10から
ホスト100に通知される(B409)。そしてこの場合も、イレーズ処理を含む一連の
動作は終了する。
【0040】
なお、以上説明した動作は一例であり、これ以外の変形例が適用されてもよい。例えば
、イレーズ処理の実行要求を受領した時刻のデータを不揮発性の記録部に保存する処理(
B405)は実行されなくてもよい。また、イレーズ処理の実行(B407)が開始され
てから、そのときの時刻を保存(B406)てもよい。また、イレーズ情報の保存が可能
でないと判定された場合(B404のNo)、イレーズ処理の失敗を示す応答コマンドを
通知する(B409)のでなく、イレーズ情報の保存を実行せず、イレーズ処理の一部(
(B407)に相当する磁気ディスク1へのイレーズパターンの記録処理)のみが実行さ
れてもよい。
【0041】
このようにして、本実施形態にかかるイレーズ処理が実行される。このイレーズ処理で
は、イレーズ処理の実行毎に、実行された分全てのイレーズ情報が更新されずに追加され
て、不揮発性の記録部に保存される。従って、実行されたイレーズ処理に関する情報を、
HDD10に供給される電源が一旦切断された後であっても読み出すことが可能となる。
すなわち、本実施形態にかかるデータストレージ装置及びデータ消去方法によれば、イレ
ーズ処理が確実に実行されたことを好適に保証することができる。
【0042】
次に、図6を用いて、本実施形態にかかるHDD10で実行されるイレーズ処理後のラ
イト処理の動作を説明する。図6は、実施形態にかかるイレーズ処理後のライト処理を説
明するためのフローチャートである。
【0043】
実施形態にかかるライト処理では、処理実行前に、イレーズ処理の実行後で最初の実行
要求か否かが判定され、この判定結果に応じた処理が実行される。以下に、動作を具体的
に説明する。
【0044】
まず、HDD10は、ホスト100から、ライトコマンドを受領する(B601)。H
DD10は、このライトコマンドの受領が、イレーズ処理の実行後、最初のライトコマン
ドの受領であるか否かを判定する(B602)。具体的には、ライト制御部205が、コ
マンド処理部201からライトコマンドの受領を通知されると、メモリ制御部202を介
して、不揮発性の記録部に保存されているデータを確認する。不揮発性の記録部には、イ
レーズ処理後に受領されたライトコマンドが実行されたか否かを示すデータが保存されて
いる。
【0045】
受領したライトコマンドが、イレーズ処理の実行後の最初の要求である場合(B602
のYes)、イレーズ処理後にライトコマンドが受領されたことを示すデータが、不揮発
性の記録部に保存される(B603)。(B602のYes)の判定は、換言すると、イ
レーズ処理の実行後に未だライトコマンドが受領されていないと判断されたことと同義で
ある。そして、受領したライトコマンドに応じたライト処理が実行される(B604)。
一方、受領したライトコマンドが、イレーズ処理の実行後の最初の要求でない場合(B6
02のNo)も、(換言すると、イレーズ処理の実行後に既にライトコマンドが受領され
ていると判断された場合も、)受領したライトコマンドに応じたライト処理が実行される
(B604)。
【0046】
なお、以上説明した動作例は一例であり、これ以外の変形例が適用されてもよい。例え
ば、不揮発性の記録部に保存されるライト処理に関するデータは、イレーズ処理後のライ
トコマンドの受領有無及び実行有無が、個別に管理されてもよい。この場合、(B602
のYes)の判定後に、イレーズ処理後のライトコマンドの受領有と更新し、ライト処理
の実行(B604)後に、ライトコマンドの実行有と更新すればよい。また、以上では、
イレーズ処理後のライト処理として説明したが、イレーズ処理前のライト処理でも、以上
のフローチャートの手順が適用されてもよい。この場合、受領したライトコマンドは、イ
レーズ処理の実行後の最初の要求でない場合(B602のNo)と同様の処理が実行され
ることになる。
【0047】
このようにして、本実施形態にかかるイレーズ処理後のライト処理が実行される。この
ライト処理では、ライト処理の実行前に、イレーズ処理の実行後で最初の実行要求か否か
が判定される。この判定に用いられる情報は、不揮発性の記録部に保存される。従って、
イレーズ処理後にライト処理が実行されたか否かを、HDD10に供給される電源が一旦
切断された後であっても判定することが可能となる。
【0048】
次に、図7を用いて、本実施形態にかかるHDD10で実行されるイレーズ処理後のコ
マンド応答処理の動作を説明する。図7は、実施形態にかかるイレーズ処理後のコマンド
応答処理を説明するためのフローチャートである。
【0049】
実施形態にかかるコマンド応答処理では、イレーズ情報が保存されているかが判定され
、この判定結果に応じた処理が実行される。以下に、動作を具体的に説明する。
【0050】
まず、HDD10は、ホスト100から、イレーズ情報の提供を要求するコマンドを受
領する(B701)。このコマンドを受領したHDD10は、イレーズ情報が、不揮発性
の記録部に保存されているか否かを判定する(B702)。具体的には、コマンド処理部
201が、メモリ制御部202を介して、不揮発性の記録部にデータが保存されているか
を確認する。イレーズ情報が保存されていると判定された場合(B702のYes)、H
DD10は、保存されているイレーズ情報を読み出して、コマンド処理部201を介して
ホストに送信する(B703)。一方、イレーズ情報が保存されていないと判定された場
合(B702のNo)、コマンド処理部201を介して、イレーズ情報が保存されていな
いことを示す応答コマンドが、HDD10からホスト100に通知される(B704)。
【0051】
なお、以上説明した動作例は一例であり、これ以外の変形例が適用されてもよい。例え
ば、ホスト100から、イレーズ情報の提供を要求するコマンドでは、全てのイレーズ情
報でなくてもよい。この場合、ホスト100から送信されるコマンドで、イレーズ情報の
中の何れのデータを要求するかが指定されればよい。
【0052】
このようにして、本実施形態にかかるイレーズ処理後のコマンド応答処理が実行される
。このコマンド応答処理では、不揮発性の記録部に保存されたイレーズ情報が読み出され
て返信される。従って、HDD10に供給される電源が一旦切断された後であっても、実
行されたイレーズ処理に関するデータを読み出すことが可能となる。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、CPU41で実行されるプログラムに従って、HDD
10に備えられたHDAや回路ブロックが制御されて、イレーズ処理、イレーズ処理後の
ライト処理、及びイレーズ処理後のコマンド応答処理が実行される。すなわち、本実施形
態にかかるデータストレージ装置及びデータ消去方法によれば、イレーズ処理が確実に実
行されたことを好適に保証すること、及び、実行したことが好適に保証されたイレーズ処
理後のライト処理及びコマンド応答処理を行うことができる。
【0054】
なお、前述した実施形態では、データストレージ装置としてHDD10の例を説明した
が、不揮発性の半導体記憶素子(例えば、NANDメモリ、MRAM、FeRAMなど)
を記録媒体とする装置(例えば、SSDやメモリカード)に、実施形態の範囲が適用され
てもよい。
【0055】
また、データストレージ装置として磁気ディスク1のキャッシュ用途として、不揮発性
の半導体記憶素子(例えば、NANDメモリ、MRAM、FeRAMなど)を備えるハイ
ブリッド型ドライブにも、前述した実施形態の範囲を適用することが可能である。この場
合、主記録媒体となる磁気ディスクでなく、キャッシュとなる不揮発性の半導体記憶素子
に対しても、実施形態のイレーズ処理、イレーズ処理後のライト処理、及びイレーズ処理
後のコマンド応答処理を適用することが可能である。キャッシュとなる不揮発性の半導体
記憶素子も、データを記録するための記録媒体である。
【0056】
さらに、イレーズ処理において、ホスト100からその時点での時刻を示すデータがH
DD10に通知される前に、ホスト100とHDD10との間で、相互認証処理が実行さ
れてもよい。この相互認証処理には、汎用的なチャンレジレスポンス認証を適用すること
が可能である。相互認証処理の結果が成功した場合のみ、ホスト100から通知されたそ
の時点での時刻を示すデータを用いたイレーズ処理が開始されればよい。
【0057】
また、前述した実施形態の例でなく、以下のような変形例であってもよい。例えば、イ
レーズ情報を不揮発性の半導体記憶素子に記録する例でなく、イレーズ情報を磁気ディス
ク1のシステム領域に記録してもよい。すなわち、イレーズ情報は不揮発性の記録部に保
存されればよい。また、カウンタは、CPU41を含む回路ブロックの何れかに備えられ
るのでなく、HDD10内部のクロックに基づいて、CPU41で実行されるプログラム
により実現されてもよい。
【0058】
さらに、以上のような変形例以外に、イレーズ処理において、ホスト100から送信さ
れる時刻を示すデータとライフタイマ値とから現在時刻を計時した際、計時した現在時刻
を検証する処理が実行されてもよい。例えば、過去に保存されたイレーズ情報がある場合
、そのイレーズ情報における現在時刻とライフタイマ値とを加算した時刻と、今回ホスト
100から送信された時刻とを比較した結果に矛盾がないかを判断することで検証が可能
である。
【0059】
以上、複数の実施形態を説明したが、説明した実施形態は一例として提示したものであ
り、発明の範囲はこの実施形態に限定されない。また、説明した実施形態は、本発明の要
旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。さらに、前述した実施形
態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成
することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除
してもよく、さらに、異なる実施形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良い。これら
の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれ、特許請求の範囲に記載された発明
と、その均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1…磁気ディスク、2…スライダ、3…アーム、4…ボイスコイルモータ(VCM)、
5…スピンドルモータ(SPM)、10…磁気ディスク装置(HDD)、21…モータド
ライバ、22…ヘッドIC、31…リードライトチャネルIC(RDC)、41…CPU
、42…RAM、43…不揮発性メモリ、50…HDC(Hard Disc Controller)、10
0…ホスト、120…ホストI/F、150…電子システム、201…コマンド処理部、
202…メモリ制御部、203…時刻管理部、204…イレーズ制御部、205…ライト
制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7