(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014019
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ビスアンヒドロヘキシトールに基づく非対称モノマーからの新規ポリエステル
(51)【国際特許分類】
C07D 493/04 20060101AFI20161011BHJP
C08G 63/664 20060101ALI20161011BHJP
C08G 63/80 20060101ALI20161011BHJP
C08G 63/91 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
C07D493/04 101D
C07D493/04CSP
C08G63/664
C08G63/80
C08G63/91
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-500227(P2013-500227)
(86)(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公表番号】特表2013-522319(P2013-522319A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011028975
(87)【国際公開番号】WO2011116275
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年2月21日
(31)【優先権主張番号】61/315,227
(32)【優先日】2010年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512239608
【氏名又は名称】ニュージャージー・インスティチュート・オブ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100182394
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】イースト,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ジャフェ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド,ウィリス
(72)【発明者】
【氏名】フェン,シャンホン
【審査官】
谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/146202(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0021209(US,A1)
【文献】
特開昭61−246184(JP,A)
【文献】
特表2001−505944(JP,A)
【文献】
特開昭58−201738(JP,A)
【文献】
特表2010−503736(JP,A)
【文献】
特表2005−530000(JP,A)
【文献】
特開2003−064170(JP,A)
【文献】
S. CHATTI et al,Synthesis and properties of new poly(ether-ester)s containing aliphatic diol based on isosorbide. Effects of the microwave-assisted polycondensation,EUROPEAN POLYMER JOURNAL,2005年10月11日,vol.42, no.2,p.410-424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/04
C08G 63/60
C08G 63/664
C08G 63/80
C08G 63/91
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接自己重合して以下の一般タイプの立体規則性または位置規則性縮合ポリマーを形成することができるビスアンヒドロヘキシトール誘導体を含む、ABモノマー:
A−X−C−Y−B
[式中、Aは、カルボン酸またはエステルまたは反応性カルボニル誘導体、例えば酸塩化物であり;
Yは、イソソルビド、イソイジド、またはイソマンニドから誘導されるビスアンヒドロヘキシトール単位であり;
Xは、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、2,6−ナフタレン、または2,7−ナフタレンあるいはそれらの置換誘導体を含む芳香環、ならびに2,5−フラン、2,5−チオフェン、置換された2,5−フラン、および置換された2,5−チオフェンを含む非置換または置換された複素環、ならびに飽和または不飽和の脂肪族鎖からなる群より選択され;
Bは、−OHであり;および、
Cは、炭素がXに結合し、酸素がYに結合している、エステルカルボニル結合である]。
【請求項2】
請求項1に記載のABモノマーの製造方法であって、
(a)ビスアンヒドロヘキシトールを保護部分と反応させて、ビスアンヒドロヘキシトールの−OH基の1つを保護して前駆体B−Yを形成する工程;
(b)前記前駆体B−Yを、置換もしくは非置換芳香族、置換もしくは非置換複素環式、脂肪族不飽和もしくは脂肪族飽和の酸、ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される化合物と反応させて、該化合物を、保護されたビスアンヒドロヘキシトールの保護されていない−OH基に、エステル結合により結合させる工程;および、
(c)前記前駆体の保護部分を除去して式:A−X−C−Y−Bで表されるABモノマーを生成する工程、
を含む、前記方法。
【請求項3】
立体規則性または位置規則性ABホモポリマーの製造方法であって、
請求項1に記載のABモノマーを、所望により触媒とともに、溶融重合または溶液重合させることを含む、前記方法。
【請求項4】
コポリエステルの製造方法であって、
請求項1に記載のABモノマーとポリエステルを、所望により触媒とともに、溶融共重合させることを含む、前記方法。
【請求項5】
請求項1に記載のABモノマーとポリエステルを、溶融重合条件下で、反応させることによる、コポリエステルの製造方法。
【請求項6】
コポリエステルの製造方法であって、
請求項1に記載のABモノマーを、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、あるいは、ホモポリマー、コポリマー、もしくはブロックコポリマータイプであるポリマーを含有する重合反応器に、所望により触媒とともに混ぜ入れて共重合することを含む、前記方法。
【請求項7】
ポリエステルの性能を改善するための方法であって、
該ポリマーを、請求項1に記載のABモノマーと、溶融混合してエステル交換反応することを含む、前記方法。
【請求項8】
ポリエステルが、芳香族、および脂肪族ポリエステルからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ビスアンヒドロヘキシトール部分を、ポリエステル中に、重合中のビスアンヒドロヘキシトールの損失を低減させて導入する方法であって、
請求項1に記載のABモノマーを、重合におけるモノマーとして、ビスアンヒドロヘキシトール部分の供給源として用いることを含む、前記方法。
【請求項10】
ビスアンヒドロヘキシトール部分を、ポリエステル中に、重合中のビスアンヒドロヘキシトールの損失を低減させて導入する方法であって、
請求項3の方法で製造されたABホモポリマーを、重合におけるコポリマーとして、ビスアンヒドロヘキシトール部分の供給源として用いることを含む、前記方法。
【請求項11】
ビスアンヒドロヘキシトール部分をポリエステル中に導入する方法であって、
請求項1に記載の1以上のABモノマーを、反応物質として縮合ポリマー初期反応混合物に加えることを含む、前記方法。
【請求項12】
ビスアンヒドロヘキシトール部分をポリエステル中に導入する方法であって、
請求項1に記載の1以上のABモノマーを、ポリエステル主鎖中にエステル交換することを含む、前記方法。
【請求項13】
オリゴマーまたはポリマーの形成方法であって、
請求項1に記載のABモノマーを自己重合して、位置規則性縮合オリゴマーまたはポリマーを形成することを含む、前記方法。
【請求項14】
ビスアンヒドロヘキシトール部分をポリエステル中に導入する方法であって、
請求項13の方法で製造されたオリゴマーまたはポリマーを、反応物質として縮合ポリマー初期反応混合物に加えることを含む、前記方法。
【請求項15】
ビスアンヒドロヘキシトール部分をポリエステル中に導入する方法であって、
請求項13の方法で製造された1以上のオリゴマーまたはポリマーを、ポリエステル主鎖中にエステル交換してポリエステルまたはコポリエステルを形成することを含む、前記方法。
【請求項16】
ビスアンヒドロヘキシトール部分をポリエステル中に導入する方法であって、
請求項13の方法で製造されたオリゴマーまたはポリマーを加えることを含む、前記方法。
【請求項17】
ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ(乳酸)からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ビスアンヒドロヘキシトール部分をポリエステル中に導入する方法であって、
請求項13の方法で製造された1以上のオリゴマーまたはポリマーを、ポリエステル主鎖中にエステル交換することを含む、前記方法。
【請求項19】
ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ(乳酸)からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ビスアンヒドロヘキシトール部分をポリエステル中に導入する方法であって、
請求項1に記載の1以上のABモノマーを、反応物質として縮合ポリマー初期反応混合物に加え、組み合わせたものを反応性押出機で処理することを含む、前記方法。
【請求項21】
ポリエステルオリゴマーまたはポリエステルの形成方法であって、
請求項1に記載の1以上のABモノマーを、反応物質として縮合ポリマー初期反応混合物に加え、組み合わせたものを重合して、ABモノマー(単数または複数)の位置規則性ブロックを有するポリエステルオリゴマーまたはポリエステルを形成することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、本明細書中で全体を参考として援用する2010年3月18日提出の米国特許出願第61/315227号に対する優先権を主張するものである。
[0002]本発明は、一般的には非対称置換化合物、より具体的には、重合反応においてモノマーとして用いることができるビスアンヒドロヘキシトールの非対称置換誘導体、例えば、イソソルビドおよびイソイジドに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]イソソルビドは、グルコースからソルビトールへの還元および酸触媒による脱水環化により誘導される、安定な硬質ジヒドロキシエーテルである。それはビスアンヒドロ−ヘキシトールとよばれる化合物のクラスに属し、他のメンバーはイソマンニド(マンノースから)およびイソイジド(イドースから)である。そのような物質は、水溶性で無害であり、医薬品および食品化学において広範な使用が見いだされている。群を抜いてもっとも広く入手できるのはイソソルビドであり、これは、バイオマス源から、酵素加水分解して単純なヘキソース糖を製造し、続いて水素化して糖アルコールを製造することにより、得ることができる。イソソルビドは、ポリマーの中間体および原料、添加剤、ならびに安定剤として、次第に用いられるようになってきている。
【0003】
[0004]イソソルビドの大きな利点の1つは、その異性体とは異なり、トポグラフィー(topography)および化学反応性が異なる2つのヒドロキシル基を有する点である。一方の−OHはエキソで、もう一方はエンドであり、結果としてそれらは、適切な条件下で特定の化学反応を用いることにより、選択的にエステル化およびエーテル化することができる。本発明は、イソソルビドに基づく有用で立体的に定義されているモノマーおよびポリマーを製造するのにこの知識を利用する、さまざまな製品および添加剤を開示する。イソソルビドをPETに組み込むと、得られるコポリマーのTgが上昇し、ホットフィルボトル用樹脂としての可能性を有するコポリマーを得られることが示されている。しかしながら、商業的規模でのイソソルビドのPETへの単純な組み込みでは、いくつかの問題に直面する。イソソルビドのヒドロキシル基は第二級なので、それの反応性は、エチレングリコールの第一級ヒドロキシル基より低い。イソソルビドの揮発性と相まって、この事実により、PEITコポリマーへの組み込みを多くすることが難しくなり、重合中に生じるエチレングリコール/イソソルビド流の再循環に伴う混乱が引き起こされる。イソソルビドの2つのヒドロキシル基の反応性が異なることも、その重合化学を複雑にしていると考えられる。
【発明の概要】
【0004】
[0005]本発明は、ビスアンヒドロヘキシトールの誘導体である新規非対称置換化合物からなる。該化合物は、重合反応において、非対称またはいわゆるABモノマーとしての適用性を有する。
【0005】
[0006]本発明の化合物の製造方法では、ビスアンヒドロヘキシトールを、ビスアンヒドロヘキシトールの−OH基の1つを保護するための保護部分を用いるか、または、望ましい化合物を製造するための選択的反応速度論の適用により、選択的に反応させる。後者の場合、脱保護工程は必要ない。その後、置換、保護されたビスアンヒドロヘキシトールを、選択した酸と反応させて、該酸を、保護ビスアンヒドロヘキシトールの選択された−OH基にエステル結合により結合させる。保護部分を除去すると、非対称置換ビスアンヒドロヘキシトールをもたらすことができる。酸は、置換および非置換の芳香族酸、脂肪族不飽和および脂環式酸、ならびにそれらの誘導体から選択されることが好ましい。下記の例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物のみに限定されるわけではなく、他の例が当業者には明らかになるであろう。
【0006】
[0007]イソソルビドテレフタレートエステルおよびイソイジドテレフタレートエステルは、イソソルビドから高純度で合成されており、例えば、イソソルビド 5−(4−カルボメトキシベンゾエート)(本明細書中では化合物
1とする)、イソソルビド 2−(4−カルボメトキシベンゾエート)(本明細書中では化合物
2とする)、およびイソイジド 2−(4−カルボメトキシベンゾエート)(本明細書中では化合物
3とする)と特徴付けられている。これに加えて、ホモポリマーがこれらのABモノマーから新規自己重合法により合成され、該ホモポリマーは、位置選択性を有するのみならず、ポリマーの新規クラスに相当する。2つのモノマー
1および
2が同じ位置規則性ホモポリマーをもたらすであろうことが、当業者にはすぐにわかるであろう。これは、それらの物理的性質から事実であると思われる。新規ホモポリマーは、結晶化度を証明する明確な融点を示す。さらに、これらのモノマーをポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などの縮合ポリマーに組み込むと、改善された性質を重合ポリマーに導入することができる。
【0007】
[0008]本発明の目的は、新規非対称置換ビスアンヒドロヘキシトールを提供することである。
[0009]本発明の他の目的は、新規自己重合反応により重合して新規ホモポリマーを、もたらすことができる、非対称置換ビスアンヒドロヘキシトールを含む新規ABモノマーを提供することである。
【0008】
[0010]本発明の他の目的は、新規モノマーおよび/またはホモポリマーを、縮合ポリマーに添加して、新規で改善された特性、特にある程度の位置特異的特徴を有する縮合コポリマーを製造することである。
【0009】
[0011]本発明のさらに他の目的は、ビスアンヒドロヘキシトール部分を、ポリエステル中に、重合中のビスアンヒドロヘキシトールの損失を低減させて、導入することである。
[0012]本発明のこれらおよび他の目的は、図面を含む本明細書および添付する請求項を検討し、理解することにより、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0013]
図1は、重合した1の300MHz 1H NMRスペクトル(TFA−d中)である。
【
図2】[0014]
図2は、重合した1のDSC分析のチャートである。
【
図3】[0015]
図3は、アニール後の重合した1のDSC分析のチャートである。
【
図4】[0016]
図4は、重合した2の300MHz 1H NMRスペクトル(TFA−d中)である。
【
図5】[0017]
図5は、重合した2のDSC分析のチャートである。
【
図6】[0018]
図6は、アニール後の重合した2のDSC分析のチャートである。
【
図7】[0019]
図7は、1との共重合に用いたPET(IMPET)のDSCのチャートである。
【
図8】[0020]
図8は、PET(IMPET)+10% 1のDSCのチャートである。
【
図9】[0021]
図9は、2% DEGを示す、PET(IMPET)の300MHz 1H NMRスペクトル(TFA−d中)である。
【
図10】[0022]
図10は、10% 1と重合したPET(IMPET)の300MHz 1H NMRスペクトル(TFA−d中)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.
ABモノマーの調製
1.
イソソルビド 2−ベンジルオキシ−5−(4−カルボメトキシベンゾエート)(6)の調製
[0023]マグネティックスターラー、均圧滴下漏斗および乾燥管を備える500mLの三ツ口フラスコに、28.35g(0.12モル)のイソソルビド−2−ベンジルエーテル(4)、100mLの塩化メチレンおよび30mL(0.215モル)の乾燥トリエチルアミンを入れた。120mLの塩化メチレン中の4−カルボメトキシ−ベンゾイルクロリド(5)(0.15モル)を、1時間かけて滴下して加えた。該反応物を一晩攪拌した。翌朝、塩化メチレン中の反応混合物を1リットルの分液漏斗に注ぎ入れ、150mLの15%(v/v)塩酸で2回洗浄した後、100mLの飽和水性重炭酸ナトリウムおよび100mLのブラインで洗浄した。塩化メチレン中の生成物を8℃において無水硫酸ナトリウムで2時間乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターで塩化メチレンを除去して、57.1gの赤みがかった固体(未処理で0.14モル)を得た。生成物を600mLの高温メタノールに溶解し、冷蔵庫で一晩放置して結晶化させた。翌朝、メタノール溶液を濾過して、融点90〜91℃の白色固体(真空乾燥後の収率87%)を41g得た。
2.
イソソルビド 5−(4−カルボメトキシベンゾエート)(1)の調製
[0024]イソソルビド 2−ベンジルオキシ−5−(4−カルボメトキシベンゾエート)(6)(35.0g、0.088モル)を、200mLのメタノール中に懸濁させた0.61gの予備還元した10%Pd/Cに加え、初期圧力85psiで水素を用いて還元した。理論量の水素が吸収された後すぐに系を開放した。追加的な200mLのメタノールを還元生成物に加え、加温して生成物を溶解し、Whatman#1濾紙に通して濾過して、触媒を除去した。該メタノール溶液を、加熱して約250mLに濃縮した。冷却により、22.6g(0.0733モル、収率83.4%)の1を融点154〜155℃の白色固体として単離した。反応をスキーム1に例示する。
【0013】
3.
イソソルビド 5−ベンジルオキシ−2−(4−カルボメトキシベンゾエート)(8)の調製
[0025]マグネティックスターラー、均圧滴下漏斗および乾燥管を備える500mLの三ツ口フラスコに、28.35g(0.12モル)のイソソルビド−5−ベンジルエーテル(7)、100mLの塩化メチレンおよび30mL(0.215モル)の乾燥トリエチルアミンを入れた。120mLの塩化メチレン中の4−カルボメトキシ−ベンゾイルクロリド(5)(0.15モル)を、1時間かけて滴下して加えた。該反応物を一晩攪拌した。翌朝、塩化メチレン中の反応混合物を1リットルの分液漏斗に注ぎ入れ、150mLの15%(v/v)塩酸で2回洗浄した後、100mLの飽和水性重炭酸ナトリウムおよび100mLのブラインで洗浄した。塩化メチレン中の生成物を8℃において無水硫酸ナトリウムで2時間乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターで塩化メチレンを除去して、56.5gの固体(未処理で0.14モル)を得た。生成物を700mLの高温メタノールに溶解し、活性炭で処理し、濾過し、冷蔵庫で一晩放置して結晶化させた。翌朝、メタノール溶液を濾過して、融点100〜101℃の白色固体(真空乾燥後の収率78%)を37.4g得た。
4.
イソソルビド 2−(4−カルボメトキシベンゾエート)、イソソルビド2−TA ABモノマー(2)の調製
[0026]0.60gの10%Pd/Cを200mLのメタノール中に懸濁させ、水素で予備還元した。水素を開放し、35.33g(0.088モル)のイソソルビド−5−ベンジルオキシ−2−(4−カルボメトキシベンゾエート)(8)を加えた。窒素パージおよび排気を数回行った後、マニホールドを90psiに加圧し、マグネティックスターラーのスイッチを入れ、そのまま水素化を一晩継続させた。出発物質はメタノールにあまり溶解しなかったので、水素化容器を囲むように水浴を置き、攪拌機のホットプレートを低く設定して41〜43℃に加熱した。圧力を下げ、39psiで一定に保った。水素の取り込みの総量は51psi(理論値46.5psi)であった。水素を開放し、メタノール溶液をWhatman#1ひだ付き濾紙に通して濾過して、触媒を除去した。フラスコおよび触媒を、追加的な200mLのメタノールで洗浄した。メタノール溶液を組み合わせたものをロータリーエバポレーターで蒸発乾固して、23.14gの白色固体を得た。これは、NMRによると純度>98%であり、融点139〜141℃であった。反応をスキーム2に例示する。
【0015】
5.
イソイジド 2−(4−カルボメトキシベンゾエート)、イソイジド2−TA ABモノマー(11)の調製
[0027]還流冷却器、窒素パージおよびマグネティックスターラーを備える500mLの三ツ口フラスコ中で、2−ベンジルオキシ−イソソルビド−5−トシレート(9)(19.58g、0.05モル)、4−カルボメトキシ安息香酸カリウム(10)(13.49g、0.061モル)および50mLの乾燥ジメチルホルムアミドを混合した。反応混合物を、温度を制御した油浴で5時間にわたり150℃に加熱し、一晩かけて徐々に冷却した。反応混合物は、冷却により半固体の塊を形成した。反応混合物を、250mLの水および150mLの塩化メチレンで分液漏斗中に洗い流した。塩化メチレン層を分離し、水層を150mLの塩化メチレンで2回洗浄した。塩化メチレン抽出物を合わせたものを、200mLの飽和水性重炭酸ナトリウムおよび100mLのブラインで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過により除去し、塩化メチレンをロータリーエバポレーターで除去して、褐色オイルを得た。該オイルを50mLの高温メタノールに溶解し、冷蔵して結晶化させた。結晶を濾過により単離し、高温メタノールから再び再結晶化させると、融点59℃のイソイジド 2−(4−カルボメトキシベンゾエート)−5−ベンジルエーテルが8.47g(収率42%)得られた。反応をスキーム3に例示する。
【0017】
B.
モノマーからのポリマーの調製
1.
イソソルビド 5−(4−カルボキシメトキシベンゾエート)(1)の重合
[0028]重合は、10〜20グラムのモノマーが入るように設計されているガラス製の小型重合反応装置中で溶融物の状態で実施した。これを、密封Herschbergニクロム線攪拌機で攪拌し、デジタル式電源装置により加熱および制御されている背の高い油浴に浸した。重合器を、高真空トラップおよび0.01mmHgを達成することができる真空ポンプに直接接続した。以下に記載する溶融重合はすべて、全く同じ方法で実施した。
【0018】
[0029]低温の装置に、10.0gのイソソルビド 5−(4カルボメトキシベンゾエート)(1)(融点154〜55℃)を入れ、0.01mmHgまで排気して、装置およびモノマーを完全に乾燥させ、微量の湿分および他の揮発分をすべて除去した。次に、乾燥窒素を用いて真空を開放し、触媒を加え、1.0mLのジクロロメタンに溶解した5.0μLの(液体)チタンテトラ−イソプロポキシド(TTiP)の溶液を、サイドアーム中のセプタムに通してマイクロシリンジから加えた。重合での真空は0.05mmHgであった。油浴を2時間にわたり160℃に上昇させ、溶融物を160℃で追加的に1時間にわたり撹拌した。その間、泡立ちが生じた。この後、泡立ちはおさまり、溶融物はかなり粘性であった。該浴を、1時間あたり20℃ずつ190℃まで上昇させた。真空は0.05mmHgで維持した。その後、該浴を追加的に1時間かけて265℃に上昇させ、この温度でさらに1時間攪拌した。それは非常に粘性の高い状態になり、攪拌機にくっつき始め、色も変わり始めた。乾燥窒素を用いて真空を低下させ、系を急速に室温まで冷却した。単離した褐色固体の重量は5.8gであった。
【0019】
[0030]該固体を粉砕して粉末にし、NMR調査のために一部をTFA−dに溶解した。NMRスペクトル(
図1)は、MWが小さくDPが約4であり(末端基により判断して)、望ましい構造と一致していた。これは、約1200g/モルのMnに相当する。DSC(
図2)は、Tm吸熱の複雑なパターンと、認識しやすいTgがないことを示している。しかしながら、240℃の窒素下でのアニール後(
図3)、145℃に明確なTgが見られ、約240℃にTmが見られた。
2.
イソソルビド 2−(4−カルボメトキシベンゾエート)(2)からポリマー(12)への重合
[0031]重合は、同一量のTTiP触媒での同じ経路と、真空下で装置を完全に乾燥するための同じ手順に従って行った。溶融重合は、浴を0.1mmHgの真空下で室温から170℃に2時間かけて加熱することにより開始させた。溶融物を、泡立ちが止まるまで170℃でさらに30分間保持した。その後、該浴を、やはり同じ真空下で1時間あたり25℃ずつ280℃まで上昇させた。粘性溶融物を280℃で1時間保持した後、窒素を用いて真空を低下させ、系を室温まで冷却した。ポリマー溶融物は、280℃において著しく黒ずんだ。冷却後、暗褐色固体を単離した。重量は約5グラムであった。これを粉砕し、通常のNMRスペクトルのために一部をTFA−dに溶解した。NMR(
図4)は、DPが4である予測された構造を示した。これは、1モルあたり約1200gのMnに相当する。DSCトレース(
図5)は、約145℃のTgを示したが、この段階でTmは存在しなかった。乾燥窒素下で8時間にわたり240℃でアニールすると、Tgが145〜150℃にわずかに上昇する一方(
図6)、Tm吸熱は認識しやすくなり、約240℃のTmに相当していた。
結果
[0032]対象となる2つのABモノマーを、開示したとおりに重合した。予想どおり、モノマー(1)および(2)は同じホモポリマーをもたらすと思われる(スキーム5の(12))。
【0020】
[0033]Sn2反転化学を用いて、われわれは、イソイジドテレフタレートエステル(3)も調製した。Sn2反応は、ベンジルエーテル45を適度の収率(42%)でもたらした。18−クラウン−6を相間異動触媒として加えると、44の不均化に由来すると思われる大量のテレフタル酸ジメチルと、少ない収量の45が生じた。45の収量は、150℃において1時間かけて44を高温の反応混合物に少しずつ加えることにより増加させることが可能である。45を水素化すると、望ましいモノマー3が得られる。
【0021】
[0034]ポリ(イソソルビドテレフタレート)(13)は、溶液重合により合成されている(Storbeck,R.,Rehahn,M.およびBallauff,M.,Synthesis and Properties of High−Molecular Weight Polyesters based on 1,4:3,6−Dianhydrohexitols and Terephthalic Acid,Makromol.Chem,194,53−64(1993))。このポリマーでは、ポリマー鎖中に考えうる配向を2つ有するイソソルビド単位が、スキーム4に例示するようにランダムな順序で組み込まれている。
【0023】
[0035]AB−モノマー(1)および(2)を用いると、スキーム5に例示するように、イソソルビドが立体規則的に秩序化されているポリマーがもたらされるであろう。このポリマーは、上記のランダム配向を有するポリマーとは異なる性質を有するであろう。(1)および(2)はスキーム5に例示するように同じ立体規則性ポリマーをもたらすが、(1)はエキソヒドロキシル基を有し、(2)はエンドヒドロキシル基を有するので、われわれはそれらが異なる重合速度を有すると予想する。(1)および(2)から調製されるポリマーは、非常によく似た1H NMRスペクトル(それぞれ
図1および4)およびDSCサーモグラム(それぞれ
図3および6)を有する。
【0025】
[0036]われわれは、意外にも、非晶質であると報告されているポリマー(13)(Storbeck et al.,上記参照)とは対照的に、ポリマー(12)がアニールによりTmを示すことを観察した。われわれはまた、モノマー(1)または(2)のいずれかから作製されるポリマー(12)が、スキーム5に示すように、非常によく似ていることを観察した。
3.
イソソルビド−5−(4−カルボメトキシベンゾエート)(1)のPETへの組み込み
[0037]17.35g(0.09モル)のPET(IMPETと識別されるもの、Tg 2回目、Mp81.5℃、
図7)および3.08g(0.01モル)の1を、微小反応器中で混合した。反応器を、酸素を含まない窒素でパージし、流動床加熱装置中で270℃に加熱した。PETが溶融した後すぐに攪拌機のスイッチを入れ、反応器を0.1mm未満のHgまで排気した。30分後、温度を15分ごとに5℃ずつ290℃の温度まで上昇させ、この温度で4時間維持した。その後、反応器を流動床加熱装置から取り出し、攪拌機を引き上げ、反応器を放置して冷却した。
図7は、共重合実験で用いたPETのDSCを示している。出発PETは81.5℃のTg(2回目の加熱)および255℃のMPを有する。PETとイソソルビド5−TA、1との共重合から得られるポリマーは、2回目の溶融で89.2℃のTgおよび232℃のMpを示し(
図8)、Tgにおける上昇は7.7℃であった。出発PETの1H NMR分析(
図9、H2372)では、2.2モル%のDEG(ジエチレングリコール)を除き、コポリマーは検出されなかった。DEGは、PETの製造中にエチレングリコールから形成する。
【0026】
[0038]PET−イソソルビド−5−(4−カルボメトキシベンゾエート)(1)コポリマーの1H NMRスペクトル(
図10)は、PETに関すると予想される主要ピークを8.1および4.75ppmに示し、ポリマー中へのイソソルビドの組み込みに関すると予想されるピークを4〜5.7ppmの示している。イソソルビドのピークの化学シフトおよび積分強度は、イソソルビド−5−(4−カルボメトキシベンゾエート)ホモポリマー(1)で見られるピークと非常によく似ている。3.93ppmのピークは、コポリマーのメトキシテレフタレート末端基に帰属される。TFA−d中のコポリマーのNMRスペクトルにトリフルオロ酢酸無水物の添加による測定可能な変化がないことにより示されるように、イソソルビド末端基の存在に関する証拠は見いだされなかった。イソソルビド末端基の2−ヒドロキシ基はトリフルオロ酢酸エステルを形成しており、メタンプロトンは、約5.6ppmにシフトして積分スペクトルに検出されているであろう。1H NMRスペクトルの積分強度から、コポリマーは、8.9モル%のイソソルビド、2.4モル%のDEGを含有し、Mn=14900g/モルを有すると決定された。
【0027】
[0039]イソソルビド−5−(4−カルボメトキシベンゾエート)(1)が、PETにイソソルビドを組み込むための好都合な経路を提供することを、実証することに成功した。形成したイソソルビド/PETコポリマーは、8.9モル%のイソソルビドの組み込みで7.5℃のTgの上昇を示した。これは、文献で報告されているPETへのイソソルビドの添加で予想されるTgの上昇と一致する。1とのエステル交換を触媒するのに十分な触媒が出発PET中に残存していると推測されたため、重合に触媒は加えなかった。
結論
[0040]以下のことを実証することに成功した:(a)新規クラスのポリマーを、イソソルビドおよびその異性体に基づくABモノマーから作製することができる。これらのホモポリエステルは150℃より上のTgを有し、半結晶質である;(b)ABモノマーを用いて、イソソルビドをPETに組み込んでTgを上昇させることができる;ならびに(c)これらの結果により、イソソルビドおよびその異性体に基づくABモノマーをさまざまなポリマーに組み込んで、それらの性質を改良することに関し、さらに研究を行う強い動機が与えられる。
【0028】
[0041]前記解説および図面は、本発明の例示的態様を含む。本明細書中に記載した前記態様および方法は、当業者の手腕、経験および好みに基づき、変動させることができる。該方法の段階を特定の順序でのみ挙げたことは、該方法の段階の順序に制限を与えるものではない。前記解説および図面は、本発明を説明および例示しているにすぎず、本発明は、請求項で制限されている場合を除き、これらに限定されない。これらに先立つ開示物を有する当業者なら、本発明の範囲から逸脱することなく、これらに修正および変動を加えることができるであろう。