特許第6014021号(P6014021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6014021リチウム含有電解質を有する電気化学キャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014021
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】リチウム含有電解質を有する電気化学キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/24 20130101AFI20161011BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20161011BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01G11/24
   H01G11/32
   H01G11/62
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-506206(P2013-506206)
(86)(22)【出願日】2011年4月18日
(65)【公表番号】特表2013-526038(P2013-526038A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】US2011032866
(87)【国際公開番号】WO2011133454
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月18日
(31)【優先権主張番号】12/764,311
(32)【優先日】2010年4月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ガドカリー,キショア ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラマン,シュリスダーサン
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジェームズ アール
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−093777(JP,A)
【文献】 特開2003−346801(JP,A)
【文献】 特開2001−089119(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/058231(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/24
H01G 11/32
H01G 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスにおいて、
第2の電極に対して対向する関係にある第1の電極、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置されたセパレータ、および
前記第1の電極、前記第2の電極および前記セパレータの全体に含まれる電解質、
を備え、
前記電解質は1種類以上のリチウム塩および1種類以上の溶媒を含み、
前記第1と第2の電極は活性炭から主になり、該活性炭は、
1nm以下のサイズを有する細孔が、0.4cm3/g以上の合計細孔容積を提供し、
1nm超から2nm以下のサイズを有する細孔が、0.05cm3/g以上の合計細孔容積を提供し、
2nm超のサイズを有する、任意の細孔が0.1cm3/g未満の合計細孔容積を提供する、
細孔径分布を有し、少なくとも1000m/gのBET比表面積を有し、かつ
前記リチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウムトリフラート(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(SO2CF32)、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(SO2CF2CF32)、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
リチウム電極を含まないことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
電気化学キャパシタにおいて、
第1の集電体上に形成された第1の電極、第2の集電体上に形成された第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極との間にそれらに隣接するように配置されたセパレータ、および
前記第1の電極、前記第2の電極および前記セパレータの全体に含まれる電解質、
を備え、
前記電解質は1種類以上のリチウム塩および1種類以上の溶媒を含み、
前記第1と第2の電極は活性炭から主になり、該活性炭は、
1nm以下のサイズを有する細孔が、0.4cm3/g以上の合計細孔容積を提供し、
1nm超から2nm以下のサイズを有する細孔が、0.05cm3/g以上の合計細孔容積を提供し、
2nm超のサイズを有する、任意の細孔が0.1cm3/g未満の合計細孔容積を提供する、
細孔径分布を有し、少なくとも1000m/gのBET比表面積を有し、かつ
前記リチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウムトリフラート(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(SO2CF32)、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(SO2CF2CF32)、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本出願は、2010年4月21日に出願された米国特許出願第12/764311号の恩恵を主張するものである。この文献の内容およびここに述べられた刊行物、特許および特許文献の開示全てがここに引用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、リチウム含有電解質を有する電気化学キャパシタに関する。
【背景技術】
【0003】
進歩しているウルトラキャパシタ技術に関して大々的に研究が行われてきたが、必要以上の環境または安全性の懸念がなく、効率的かつ対費用効果的に製造できる、よりエネルギー密度が高いデバイスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第2の電極と対向する関係にある第1の電極と、第1の電極および第2の電極の間に配置されたセパレータと、第1の電極、第2の電極およびセパレータの全体に含まれる電解質とを有するデバイスがここに開示されている。電解質は、1種類以上のリチウム塩および1種類以上の溶媒を含む。第1の電極および第2の電極は活性炭から主になり、この活性炭は、少なくとも0.3cm3/gの合計細孔容積を提供する多くとも1nmのサイズを有する細孔、少なくとも0.05cm3/gの合計細孔容積を提供する1nmから2nmのサイズを有する細孔、および2nm超のサイズを有する細孔については、0.15cm3/g未満である合計細孔容積により特徴付けられる微小多孔質細孔径分布を有する。
【0005】
さらに別の実施の形態において、電気化学キャパシタは、第1の集電体上に形成された第1の電極、第2の集電体上に形成された第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間にそれらに隣接するように配置されたセパレータを備えている。1種類以上のリチウム塩および1種類以上の溶媒を含む電解質が、第1の電極、第2の電極、およびセパレータの全体に亘り含まれている。第1と第2の電極は活性炭から主になり、この活性炭は、1nm以下のサイズを有する細孔が0.3cm3/g以上の合計細孔容積を提供し、1nm超から2nm以下のサイズを有する細孔が0.05cm3/g以上の合計細孔容積を提供し、2nm超のサイズを有する任意の細孔が0.15cm3/g未満の合計細孔容積を提供する、微小多孔質細孔径分布を有する。
【0006】
さらに別の実施の形態は、電気化学キャパシタ(ECC)積層体であって、複数のECCセルを含む積層体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示は、添付の図面に関連する様々な実施の形態の以下の詳細な説明を考慮してより完全に理解されるであろう。
図1A】実施の形態による電気化学キャパシタ(ECC)の説明図
図1B】別の実施の形態による電気化学キャパシタ(ECC)の説明図
図1C】別の実施の形態による電気化学キャパシタ(ECC)の説明図
図1D】別の実施の形態による電気化学キャパシタ(ECC)の説明図
図2】活性炭材料に関する細孔径分布をプロットしたグラフ
図3】別の活性炭材料に関する細孔径分布をプロットしたグラフ
図4】リチウムが堆積された活性炭電極を形成するためのデバイスの説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここに具体的に開示されたもの以外の実施の形態が考えられ、本開示の範囲または精神から逸脱せずに行われるであろう。以下の詳細な説明は、限定するものではない。与えられた定義は、頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示を制限するものではない。
【0009】
別記しない限り、明細書および特許請求の範囲に使用される特徴サイズ、量、および物理的性質を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語により修飾されているものと理解すべきである。したがって、そうではないと示されていない限り、先の明細書および添付の特許請求の範囲に述べられた数値パラメータは、ここに開示された教示を利用して当業者により得られることが求められる所望の性質に依存して様々であり得る近似である。
【0010】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1から5は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)および列挙された任意の範囲を含む。別記しない限り、ここに開示された百分率は、質量基準の百分率で表されている。同じような文脈において、特定の成分を主に有すると表されている組成または構造は、質量で列挙された成分から主になる。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されているように、単数形は、内容がそうではないと明白に示していない限り、複数の対象を有する実施の形態を包含する。ある用語の単数形の使用は、内容がそうではないと明白に示していない限り、そのような用語を複数含む実施の形態を包含し得る。例えば、「溶媒を加える」という句は、1種類の溶媒または複数の溶媒を加えることを包含する。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されているように、「または」という用語は、一般に、内容がそうではないと明白に示していない限り、「いずれかまたは両方」を含む意味で用いられる。「含む("include" and "including")」という用語は、以下に限られないが、含むこと、すなわち、排他的ではなく包括的であることを意味する。
【0012】
本開示は、いくつかの実施の形態において、ウルトラキャパシタと称することもできる、電気化学キャパシタ(ECC)を含む電気デバイスに関する。実施の形態において、ECCは、多孔質セパレータにより隔てられた2つの電極を含むことができ、電解質溶液を含む。電位がECCに印加されると、陰イオンの正極への誘引と陽イオンの負極への誘引のために、イオン電流が流れる。このイオン電流の流れにより、各分極性電極と電解質溶液との間の界面に貯蔵された電荷が生じる。
【0013】
ECCの特定の設計は、意図する用途に応じて様々であり得、例えば、ゼリーロール型または円柱型、長楕円型、角柱型、ハニカム型、ハイブリッド式または擬似コンデンサ型、スーパーキャパシタ型またはウルトラキャパシタ型、および当該技術分野に公知の他の設計が挙げられる。開示されたECCは、これらの(並びに他の)設計のいずれに使用することもできる。
【0014】
図1Aは、例示のデバイス内の構成要素の配置を示す。デバイス100は、第1の電極121と第2の電極122を備えている。第1の電極121と第2の電極122の間には、セパレータ140が配置されている。実施の形態において、セパレータ140は、第1の電極121と第2の電極122の両方に直接隣接している。電極の一方、例えば、第1の電極121は陽極と称することもでき、一方で、他方の電極、この場合には第2の電極122は陰極と称することができる。陽極は、電流が電気化学セルに入る電極と定義され、陰極は、電流が電気化学セルから出る電極と定義される。
【0015】
第1の電極121と第2の電極122は、一般に、多孔質炭素すなわち活性炭材料から構成される。第1の電極121と第2の電極122は、同じに構成されても、互いに異なって構成されても差し支えない。それゆえ、電極の様々な特徴の説明は、一方または両方の電極に適用できる。第1の電極121と第2の電極122のいずれか、または第1と第2の電極の両方は、独立して、ここに論じられた特徴のいくつまたは全てを有しても差し支えないことを理解すべきである。
【0016】
開示された電極は活性炭を含む。大半(質量で)が活性炭である電極は、「活性炭電極」とここでは称される。活性炭電極は、活性炭以外の材料を含んでもよい。実施の形態において、第1と第2の電極のいずれも活性炭電極から構成されても差し支えない。例えば、一方の電極は主に活性炭を含み、他方の電極は主にグラファイトを含んで差し支えない。実施の形態において、第1の電極と第2の電極の両方とも活性炭電極である。
【0017】
実施の形態において、活性炭は、比較的高い炭素表面積を有し得る。比較的高い表面積を有する活性炭を使用することにより、比較的高いエネルギー密度を有するデバイスを提供できる。実施の形態において、電極に利用される活性炭は、少なくとも約100m2/g(例えば、少なくとも約1000または1500m2/g)の炭素表面積を有し得る。利用できる活性炭の特別な例としては、ココナッツの殻に基づく活性炭、石油コークス系活性炭、ピッチ系活性炭、ポリ塩化ビニリデン系活性炭、ボリアセン系活性炭、フェノール樹脂系活性炭、ポリアクリロニトリル系活性炭、および石炭、木炭または他の天然有機源などの天然源からの活性炭が挙げられる。実施の形態において、活性炭電極は、約50質量%超の活性炭(例えば、50、60、70、80、90または95質量%超の活性炭)を含む。
【0018】
実施の形態によれば、ECCの電極は、0.4cm3/g超(例えば、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65または0.7cm3/g超)の全気孔率を有する活性炭材料から構成される。微細孔(d≦2nm)から生じる全気孔率の部分は95%以上(例えば、少なくとも95、96、97、98または99%)であり得、極微細孔(d≦1nm)から生じる全気孔率の部分は60%以上(例えば、60、65、70、75、80、85、90または95%超)であり得る。活性炭の細孔径分布は、超微細孔、微細孔、メソ細孔およびマクロ細孔を含み得、単峰性、二峰性または多峰性の細孔径分布を有するものと特徴付けられるであろう。極微細孔は、合計細孔容積の0.3cm3/g以上(例えば、0.4cm3/g以上)を構成する。1<d≦2nmの範囲の細孔径(d)を有する細孔は、合計細孔容積の0.05cm3/g以上(例えば、少なくとも0.1、0.15、0.2または0.25cm3/g)を構成し得る。メソ細孔および/またはマクロ細孔を含む2nm超の細孔径を有する細孔は、存在する場合には、合計細孔容積の0.15cm3/g以下(例えば、0.1または0.04cm3/g未満)を構成し得る。
【0019】
電極は1種類以上の結合剤を含んで差し支えない。結合剤は、ゆるく集まった粒状物質において凝集を促進することによって、電極に機械的安定性を提供するように機能できる。結合剤としては、活性炭(および他の随意的な成分)と互いに結合して多孔質構造を形成することのできる、ポリマー、コポリマー、または類似の高分子物質が挙げられる。具体的な例示の結合剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、または他のフルオロポリマー粒子;ポリプレピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム系結合剤;およびそれらの組合せが挙げられる。実施の形態において、PTFEを結合剤として使用できる。さらに別の実施の形態において、繊維状PTFEを結合剤として使用できる。一例として、電極は約20質量%までの結合剤(例えば、約5、10、15または20質量%まで)を含有して差し支えない。
【0020】
電極は、1種類以上の導電率向上剤を含んでも差し支えない。導電率向上剤は、電極の全体の導電率を増加させるように機能する。例示の導電率向上剤としては、カーボンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、黒鉛炭素、カーボンナノチューブまたはナノワイヤ、金属繊維またはナノワイヤ、グラフェン、およびそれらの組合せが挙げられる。実施の形態において、カーボンブラックを導電率向上剤として使用して差し支えない。実施の形態において、電極は、約10質量%までの導電率向上剤を含有し得る。例えば、電極は、約1質量%から約10質量%の導電率向上剤(例えば、1、2、4または10質量%)を含有して差し支えない。
【0021】
例示の活性炭電極は、活性炭、導電率向上剤および結合剤を含む。実施の形態において、電極は、約80質量%から95質量%の活性炭、約1質量%から10質量%の導電率向上剤および約5質量%から15質量%の結合剤を含み得る。一例の電極は、85質量%の活性炭、5質量%の導電率向上剤、および10質量%の結合剤からなる。さらに別の例において、電極は、85質量%の活性炭、5質量%の導電率向上剤、および10質量%の繊維状PTFEからなる。一対の電極を含むデバイスにおいて、第1の電極および第2の電極の一方または両方は、これらの開示された組成を含んで差し支えない。
【0022】
電極は、様々な方法および技法を使用して形成することができる。電極を形成する例示の方法では、溶媒中に電極の成分(例えば、活性炭、導電率向上剤および結合剤)を含有する組成物を使用して、スラリーまたはペーストを形成する。このスラリーまたはペーストを、圧力を加えることによって構造物に形成できる。一度、所望の構造物に形成されたら、電極は、残留する溶媒、水、または他の揮発性成分を除去するために乾燥させられる。その乾燥温度は、少なくとも一部には、例えば、結合剤の選択を含む、電極を構成する材料と溶媒の個性に依存し得る。実施の形態において、電極は、少なくとも約100℃の温度で乾燥させて差し支えない。実施の形態において、電極は、8から12時間に亘り少なくとも約150℃の温度で乾燥させて差し支えない。電極は、調製の他の段階で乾燥させても差し支えないことに留意されたい。
【0023】
実施の形態において、電極は、前記成分(例えば、活性炭、導電率向上剤および結合剤)を含有するペーストから形成できる。カレンダ加工または圧延による剪断圧力および圧縮力を利用して、ペーストのシートを形成することができる。例示のシートは約5ミル(約0.123mm)の厚さであり得る。そのようなシートを所望のサイズに切断して差し支えない。ボタン電池が形成されている例において、シートは、約0.25インチから約1インチ(約6.35mmから約25.4mm)、例えば、5/8インチ(15.9mm)の直径を有する円形に切断して差し支えない。次いで、そのように形成された電極をデバイスの他の構成部材と組み合わせることができる。
【0024】
電極の一方または両方は、必要に応じて、その1つ以上の表面の少なくとも一部分の上に堆積リチウムを含んでいて差し支えない。実施の形態において、デバイスの活性炭電極の一方または両方は、その上に堆積されたリチウムを有して差し支えない。一度リチウムが堆積されても、電極は、主に(質量で)活性炭からなり、したがって、リチウム堆積活性炭電極と称することができる。
【0025】
実施の形態において、堆積リチウムは、電極上に連続層を形成せず、代わりに、活性炭電極上の不連続層である。堆積リチウムは、電解質を補充するためのリチウム陽イオンの供給源を提供するように機能できる。このことは、ECCの寿命が延びるであろうから、都合よい。リチウムの量が増加するにつれて、リチウムのこの有益な効果も増加する。しかしながら、リチウムが多すぎると、望ましくない安全性とコストの問題が生じるであろう。
【0026】
実施の形態において、随意的な堆積リチウムは、電極の総質量の約0.0001から約6質量%までであり得る。実施の形態において、リチウムは、電極の総質量の約0.0001から約3質量%までであり得る。さらに別の実施の形態において、リチウムは、電極の総質量の約0.0001から約2質量%までであり得る。堆積リチウムは、例えば、化学的気相成長法(CVD)、スパッタリング、電気化学的蒸着、熱蒸着、電子ビーム蒸着、高出力プラズマ蒸着を含む、公知の方法を使用して形成することができる。実施の形態において、比較的大きい面積に材料を堆積させることに関する容易さのために、CVDなどの蒸着を利用することができる。
【0027】
さらに別の例において、リチウムは、必要に応じて、電気化学的蒸着により電極の1つ以上に堆積させて差し支えない。電気化学的蒸着は、電解質としてリチウムイオンを含有する溶液、陽極としてのリチウムホイル、および陰極としての被覆すべき電極を使用して行うことができる。被覆すべき電極は、例えば、積層により、0.5から3μmのカーボンインクの層で予め被覆されたアルミニウム(Al)集電体の両側に取り付けることができる。Al集電体は、リチウムの電着中に電気接点として使用することができる。
【0028】
リチウムを堆積させた後、両面構造を電極に打ち抜いて差し支えない(例えば、5/8インチ(約15.9mm)の円柱またはディスク)。そのような電極は、この電極を、例えば、ボタン電池フォーマットで第2の電極(堆積リチウムの有無にかかわらず)と組み合わせることによってデバイスに形成することができる。上にリチウムが堆積した第1の電極の表面は、そのような第2の電極のリチウム堆積表面に面するように構成されてもよい。そのような実施の形態において、活性炭電極およびアルミニウムホイルは、活性炭電極のリチウム堆積表面への電子移動に関与する。
【0029】
先に開示したリチウム堆積活性炭電極は、その句が通常用いられているようなリチウム電極ではない。ここに開示されたデバイスは、リチウム金属の自立形連続層と定義されるリチウム電極を含まない。リチウム電極は、一般に、リチウム金属を主に含み、活性炭は含まない。反対に、リチウム堆積活性炭電極は、活性炭を主に含み、高表面積を有する。従来のリチウム電極は、約20m2/g以下の表面積を有し得、一方で、リチウム堆積活性炭電極は、少なくとも約100m2/gの表面積を有し得る。
【0030】
開示されたデバイスはセパレータ140も含む。このセパレータ140は、図1Aに示されるように、第1の電極121と第2の電極122の間に配置することができる。セパレータ140は、一般に、電解質とは反応性ではない多孔質の電気絶縁材料である。セパレータは、一般に、デバイスの内部抵抗を最小にするために比較的薄い。例示のセパレータ材料としては、ガラス繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびセルロースから製造された布、不織布材料、または多孔質体が挙げられる。実施の形態において、セルロース紙を利用してよい。
【0031】
開示されたデバイスは電解質も含む。その電解質は、第1の電極121、第2の電極122、およびセパレータ140の多孔質構造全体に亘り含まれる液体組成物である。第1の電極121、第2の電極122、およびセパレータ140は、デバイスの組立て前または最中にそれらの電極とセパレータを電解質中に浸漬することによって、電解質130a,130bを浸透させることができる。
【0032】
電解質は、1種類以上のリチウム塩および1種類以上の溶媒を含むであろう。リチウム塩は、一般に、適切な溶媒中で電離できるリチウム陽イオン(Li+)を含む化合物である。リチウム塩は、陰極での酸化分解に対して比較的安定である陰イオンを含み得る。
【0033】
例示のリチウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウムトリフラート(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(SO2CF32)、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(SO2CF2CF32)、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0034】
実施の形態において、電解質はヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を含む。リチウム塩としては、リチウムビス(メチル)スルホンイミド、リチウムビス(sec−ブチル)スルホンイミド、リチウム(メタンスルホニル)シアナミド、リチウムトリス(メタンスルホニル)メチド、リチウムビス(メタンスルホニル)(エタンスルホニル)メチド、リチウムビス(エタンスルホニル)(メタンスルホニル)メチド、およびそれらの組合せを含むリチウムイミドが挙げられる。
【0035】
電解質は1種類以上の溶媒も含む。一般に、適切な溶媒は、リチウム塩を溶解することができ、電極、セパレータ、もしくは他の材料またはデバイスに関する構造に悪影響を及ぼさない。実施の形態において、使用できる溶媒は、非水性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒を含む有機溶媒であり得る。例示の溶媒としては、アセトニトリル、1,3−ジオキソラン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、ジメトキシエタン、炭酸プロピルメチル、およびそれらの組合せが挙げられる。実施の形態において、アセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、およびそれらの組合せを溶媒として利用することができる。
【0036】
電解質は、どのような適切な濃度の1種類以上のリチウム塩を有しても差し支えない。実施の形態において、リチウム塩は、約0.5から2Mなどの、電解質中で少なくとも約0.5M、例えば、少なくとも約0.5、1または2Mの濃度を有する。
【0037】
開示されたデバイスは、1つ以上の集電体も含んで差し支えない。実施の形態において、デバイスは、第1と第2の集電体を含み得る。図1Bに示された例示のデバイス150は、第1の集電体111および第2の集電体112を備えている。第1の集電体111は、一般に、第1の電極121に隣接している、または接触しており、一方で、第2の集電体112は、一般に、第2の電極122に隣接している、または接触している。第1の電極121、セパレータ140、第2の電極122、および電解質(矢印130aと130bにより示されている)は、第1の集電体111と第2の集電体112の間に配置されている。
【0038】
集電体の様々な特徴の説明は、いずれの集電体にも適用されることが意図されている。第1の集電体、第2の集電体のいずれか、または両方は、独立して、ここに記載されたいくつのまたは全ての特徴を有し得ることが理解されよう。
【0039】
集電体は、一般に、どの導電性材料から製造されても差し支えない。実施の形態において、集電体は金属材料から製造することができる。具体的な例示の材料としては、例えば、白金、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、および他の合金が挙げられる。実施の形態において、集電体の厚さは、約5μmから約100μm(例えば、約15μmから35μm、例えば、約25μm)に及び得る。
【0040】
集電体および電極は、分離可能に構成されても、または実質的に分離不可能な構造を形成するように構成されても差し支えない。実施の形態において、電極は、集電体上に形成されても、またはそこに付着されても差し支えない。例えば、電極は、スラリーなどの組成物から形成され、それぞれの集電体と接触して配置されても差し支えない。
【0041】
電極は、導電性接着層を使用することによって、それぞれの集電体に接着することができる。第1の電極に関連する導電性接着層は、第1の接着層と称することができ、第2の電極に関連する導電性接着層は第2の接着層と称することができる。実施の形態において、シーリング部材を使用しても差し支えない。例示のシーリング部材は、少なくとも第1と第2の電極の直径と同じくらい大きい内径を有するリングであって差し支えない。シーリング部材は、デバイスに機械的一体性を加え、電池内に電解質を収容するために、ボタン電池などのデバイスを封止するために使用できる熱可塑性リングを含んで差し支えない。電極およびセパレータは、電解質中に一度浸漬されたら、そこに適用されるシーリング部材を1つ以上有し得る。例えば、集電体をそれぞれの電極に配置することができ、その構造全体を加熱して、シーラントを硬化させることができる。
【0042】
図1Cは、第1の電極121と第1の集電体111に隣接して配置された第1のシーリング部材161を含むデバイス170を示している。第1のシーリング部材161は、少なくとも、第1の電極121の外径と同じくらいの大きさの内径を有する。シーリング部材の外径は、セパレータ140の直径より大きくて差し支えなく、一般に、集電体111,112の全外径と一致して差し支えない。第1の電極121は第1のシーリング部材161の内部に配置され、よって第1の集電体111は第1の電極121と接触した状態を維持する。第1のシーリング部材161は、第1の集電体111に隣接し、かつ第1の電極121の周囲に配置されていると言うこともできる。
【0043】
第2のシーリング部材162は、少なくとも、第2の電極122の外径と同じくらいの大きさの内径を有する。第2の電極122は第2のシーリング部材162の内部に配置され、よって第2の集電体112は第2の電極122と接触した状態を維持する。第2のシーリング部材162は、第2の集電体112に隣接し、かつ第2の電極122の周囲に配置されていると言うこともできる。これらのシーリング部材は、一般に、互いに接触してシールを形成することによって機能する。第1のシーリング部材161および第2のシーリング部材162は、デバイス内に電解質130a,130bを維持するように機能する。
【0044】
実施の形態において、ゼリーロール型に形成される例示のECC(並びに他の設計に使用されるECC)は、両面に活性炭電極を有する集電体を含み得る。ゼリーロール型で使用するためのそのようなECCが図1Dに見られる。この例示のECCは、第1の炭素系電極121aと121bが隣接して配置された第1の集電体111、第2の炭素系電極122aと122bが隣接して配置された第2の集電体112、第1のセパレータ140、および第2のセパレータ141を備えている。電解質130は、第1の電極121aと121b、第2の電極122aと122b、および第1と第2のセパレータ140と141に含まれるものとして示されている。
【0045】
ゼリーロール型およびボタン電池形状(一般に小型電池フォーマットと考えられる)以外に、他の公知の設計を構成し、使用しても差し支えない。例えば、単1電池(D cell)およびそれより大きいデバイスなどの他の大型電池フォーマットを、ここに開示された材料およびプロセスに関して使用しても差し支えない。
【0046】
開示されたECCは、以前に製造されたECCに見られるエネルギー密度よりも高いエネルギー密度を有し得る。例えば、開示されたECCは、テトラエチルアンモニウム−テトラフルオロボラート(TEA−TFB)などの一般に使用されている電解質を含む類似のECCよりも高いエネルギー密度を有し得る。実施の形態において、開示されたECCは、TEA−TFB電解質を使用したECCよりも少なくとも約2倍大きいエネルギー密度を有し得る。ボタン電池構造を有する開示されたECCは、少なくとも約15ワット時/リットル(Wh/l)のエネルギー密度を有し得る。さらに、ボタン電池構造を有する開示されたECCは、少なくとも約17Wh/lのエネルギー密度を有し得る。実施の形態において、ボタン電池構造を有する開示されたECCは、少なくとも約20Wh/lのエネルギー密度を有し得る。例えば、ゼリーロール型および/または単1電池とそれより大きい電池などの大型フォーマットを有するECCは、少なくとも約6Wh/lのエネルギー密度を有し得る。
【0047】
開示されたECCは、以前に使用されたECCよりも高い電圧に適合できる。例えば、TEA−TFB電解質を含む以前に使用されたECCは、約2.7Vの最大電圧を有し得る。開示されたECCは、約4.5Vまでの最大電圧を有し得る。
【0048】
開示されたECCは、複雑な製造プロセスを必要とせずに、上述した有益な性質を提供することができる。例えば、開示されたECCは、追加の電極(例えば、2つの炭素系電極とは別のリチウム金属電極)を使用せずに、前記有益な性質を提供することができる。そのような追加のデバイスの構成部材の要件は、製造をより難しくし、したがって費用がかかり、エネルギー密度を減少させ、相当なリチウム金属を伴い、これにより、安全性および環境上の懸念が生じ得る。
【0049】
より高出力の用途について、個々のECCを複数使用することができる。ECCデバイスは、ECCマルチセル積層体、パック、または一連のセルに形成することができる。ECCパックは、複数のECCデバイスまたは構造を含むデバイスを称する。ハイブリッド電気自動車(HEV)などの高出力需要用途にECCが使用される場合、多数のECCを直列に接続して、出力電圧を高めることができる。たくさんのECCの具体的なサイズと形状は、ECCパックの意図する用途に応じて様々であり得る。ECC積層体の例示の形状は当業者に公知であり、そのような形状のいずれも、ここに開示されたECCデバイスに使用することができる。実施の形態において、そのようなパックは、2、3、4、5、10、20、またはそれより多い数を含む二次元配列のECC、もしくは一列または多列に配列された複数のECCであって差し支えない。実施の形態において、ECCパックは、垂直配置などの配列に置かれた同じまたは様々な形状の多数の二次元配列であって差し支えない。実施の形態において、利用される特定の形状は、ECCパックの単位容積当たりのエネルギーを最大にするように選択することができる。マルチセルパックの例示の形状が、米国特許出願公開第2009/0109600号明細書に見つかり、その開示をここに引用する。
【0050】
ここに開示されたECCデバイスおよび電池は、数多くの様々な用途に利用できる。開示されたECCデバイスの高いエネルギー密度および比較的高い出力のために、それらは、パルス電力が必要とされる用途において極めて有用であろう。例示の用途は、例えば、携帯電話などの小型のデバイスから、ハイブリッド自動車などの大型デバイスまでに及ぶ。
【0051】
本開示の追加の特徴が、様々な実施例を参照して以下に記載されている。
【実施例】
【0052】
実施例1
85質量%の活性炭、5質量%のカーボンブラック、および10質量%のPTFE(デュポン(Dupont)社の商標であるテフロン(登録商標)PTFE 613A、独国、ウィルミントン所在のデュポン社)からなる混合物を使用して、ECCボタン電池を製造した。この混合物の1部に2.6部のイソプロピルアルコールを加えて、スラリーを形成した。このスラリーを十分に混合し、次いで、オーブン内で半乾燥させた。次いで、半乾燥した材料を5ミル(約0.127mm)厚の板に成形し、緻密化させ、これを直径5/8インチ(約15.9mm)のディスク形電極に打ち抜いた。これらの電極を一晩、約150℃で真空オーブン内において乾燥させた。電極内の活性炭の表面積をBETガス吸着分析によって測定した。電極内の活性炭は約1700m2/gの表面積を有した。活性炭材料の細孔径に対する細孔径分布をプロットしたグラフが図2に示されている。
【0053】
電極およびセルロース紙セパレータ(NKK TF44、日本国高知県所在のニッポン高度紙工業株式会社)を、アセトニトリル中1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)の溶液中に数秒間浸漬した。セルロース紙を2つの電極間に配置し、上にある活性炭電極にさらに数滴のLiPF6溶液を加え、1ミル(約0.0254mm)厚の白金ホイル集電体の両面に封止リング(3M Bonding Film 615S、ミネソタ州、セントポール所在の3M社)を施した。次いで、高分子シーラントを活性化させるためにこのデバイスの外縁(封止リングを直接隠す)を約200℃から250℃に局部的に加熱することによって、ボタン電池を封止した。
【0054】
ECCボタン電池を、サイクリック・ボルタメトリー(CV)、電気化学インピーダンス分光法(EIS)、および定電流充放電を使用して試験した。CVは、0から4.5Vの範囲に亘り様々な電位窓で20mV/秒の走査速度で行った。EISは、0.01から10,000Hzの周波数範囲における0Vの定DC電圧に亘り10mVの振幅を有するAC摂動を印加しながらのインピーダンスの測定を含んだ。定電流充放電は、10mAの電流の大きさで行った。
【0055】
ボタン電池のエネルギー密度は、積分エネルギー法(integrated energy method)を使用して計算した。この方法は、定電流データ(電位対時間のデータ)を数値積分し、これを放電電流で乗じて、2つの電位V1とV2の間でデバイスにより送達された実際のエネルギーを得る各工程からなる。
【数1】
【0056】
次いで、送達された実際のエネルギーをデバイスの容積で割ることによって、エネルギー密度を計算できる。
【数2】
【0057】
デバイスの静電容量(ファラドで表されるCデバイス)は、以下のように前記エネルギーから計算できる:
【数3】
【0058】
上述のように製造した比較のボタン電池のエネルギー密度は、17.6Wh/lであると測定された。
【0059】
比較例1A
電解質が、アセトニトリル中のテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEA−TFB)の1M溶液であったことを除いて、実施例1におけるようにボタン電池を製造した。このボタン電池のエネルギー密度は11.5Wh/lであった。
【0060】
比較例1B
電解質としてアセトニトリル中1MのLiPF6の溶液を使用したが、図3に示された細孔径分布を有する活性炭を使用して、実施例1にしたがって、さらに別のボタン電池を製造した。この比較用のデバイスのエネルギー密度は9Wh/lであった。
【0061】
実施例2
電極の一方にリチウムの層を堆積させたことを除いて、実施例1におけるようにボタン電池を製造した。緻密化した炭素シート(5ミル(約0.127mm))の成形後、そのようなシートを2枚、塗装Al集電体の両面に積層させた。この塗装は、0.5から3マイクロメートルの導電性カーボンからなった。次いで、この構造を図4に示されるアセンブリ内に配置した。
【0062】
図4における電着装備は、アルミニウム集電体207上に形成された活性炭電極202,204を示す。集電体207は陰極として働く。陰極は、ポテンショスタット209を通じてリチウムホイル205に電気接続されており、このホイルは陽極として機能する。「テフロン」セル201などの槽に、アセトニトリル中のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)の1M溶液203が注がれている。約20mA以上の定電流を印加すると、活性炭電極202,204にリチウム陽イオン(Li+)が電気還元される。電解質から失われたリチウム陽イオンは、陽極で生じる溶出作用によって補充される。活性炭電極上に堆積するリチウムの量は、印加される電流および/または時間を制御することによって、調節できる。リチウムの堆積後、リチウム堆積活性炭電極を直径5/8インチ(約15.9mm)のディスクに打ち抜いた。
【0063】
電極ディスクは、実施例1に記載されたようなボタン電池に製造した。このボタン電池のエネルギー密度を実施例1の方法にしたがって測定し、このエネルギー密度が15.5Wh/lであることが分かった。
【0064】
実施例3
電解質が、炭酸エチレン:アセトニトリル(25:75の容積比)中のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)の1.5M溶液であったことを除いて、実施例1におけるようにボタン電池を製造した。このボタン電池のエネルギー密度は22Wh/lであった。ECCボタン電池の最大電圧を測定し、最大電圧が2.7V超であったことが分かった。
【0065】
比較例3
実施例3の実験を繰り返したが、図3に与えられた細孔径分布を有する炭素を使用した。この比較用のボタン電池の実験において得られたエネルギー密度は9.7Wh/lであり、これは、実施例3において得られた値の50%未満であり、図3の活性炭の微小多孔質細孔径分布を使用して、リチウム塩を含有する電解質で高い性能を得られることを示している。
【0066】
実施例4
電解質が、炭酸エチレン:炭酸ジメチル(50:50の容積比)中のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)の1.5M溶液であったことを除いて、実施例1におけるようにボタン電池を製造した。このボタン電池のエネルギー密度を上述したように測定し、17.7Wh/lであることが分かった。このECCボタン電池の最大電圧を測定し、最大電圧が2.7V超であったことが分かった。
【0067】
別記しない限り、ここに述べたどの方法も、その工程を特定の順序で行う必要があるものと解釈することは決して意図していない。したがって、方法の請求項が、それらの工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない、またはそうではなく、それらの工程が特定の順序に制限されるべきであると請求項または説明に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も推論されることは決して意図されていない。
【0068】
ここでの列挙は、特定の様式で機能するように「構成された」または「適合された」本発明の構成部材を称することにも留意されたい。この点に関して、そのような構成部材は、そのような列挙が、意図する使用の列挙ではなく構造の列挙である場合、特定の性質を具体化する、または特定の様式で機能するように「構成されている」または「適合されている」。より詳しくは、構成部材がそうするように「構成されている」または「適合されている」様式へのここでの参照は、その構成部材の既存の物理的状態を意味し、それゆえ、その構成部材の構造的特徴の明確な列挙と解釈すべきである。
【0069】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明に様々な改変および変更を行えることが当業者には明らかであろう。本発明の精神および本質を含む開示された実施の形態の改変、組合せ、下位の組合せ、および変種が当業者に想起されるであろうから、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に全てを含むと考えるべきである。
【符号の説明】
【0070】
100,150,170 デバイス
111,112,207 集電体
121,122 電極
130a,130b 電解質
140,141 セパレータ
161,162 シーリング部材
201 セル
202,204 活性炭電極
203 溶液
205 リチウムホイル
209 ポテンショスタット
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4