(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014027
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】有機半導体材料を含んでいる電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 51/30 20060101AFI20161011BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20161011BHJP
C07D 221/18 20060101ALI20161011BHJP
C07D 401/10 20060101ALI20161011BHJP
C07D 413/10 20060101ALI20161011BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20161011BHJP
C07F 9/64 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
H01L29/28 250H
H01L29/28 100A
C07D221/18CSP
C07D401/10
C07D413/10
C07D401/14
C07F9/64
【請求項の数】9
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-513579(P2013-513579)
(86)(22)【出願日】2011年6月8日
(65)【公表番号】特表2013-534047(P2013-534047A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】EP2011002807
(87)【国際公開番号】WO2011154131
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】10165537.1
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファデル,オムラネ
(72)【発明者】
【氏名】プレッチュ,ラモーナ
【審査官】
竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−270174(JP,A)
【文献】
Steven C. Zimmerman, Craig M. VanZyl,“Rigid molecular tweezers: synthesis, characterization, and complexation chemistry of a diacridine”,Journal of the American Chemical Society,1987年12月,Vol. 109,p. 7894-7896
【文献】
Steven C. Zimmerman et al.,“Rigid molecular tweezers: preorganized hosts for electron donor-acceptor complexation in organic solvents”,Journal of the American Chemical Society,1989年 2月,Vol. 111,p. 1373-1381
【文献】
T. Ross Kelly et al.,“A molecular vernier”,Tetrahedron Letters,1998年 3月28日,Vol. 39,p. 3675-3678
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336、29/786
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I):
【化1】
における有機半導体材料を少なくとも1つ含んでいる電子デバイスであって、
R
1−4が、H、ハロゲン、CN、置換されているまたは置換されていない、C
1−C
20−アルキルまたはヘテロアルキル、C
6−C
20−アリールまたはC
5−C
20−ヘテロアリール、C
1−C
20−アルコキシまたはC
6−C
20−アリールオキシからそれぞれ選択され、
Arが、置換されているまたは置換されていない、C
6−C
20−アリールまたはC
5−C
20−ヘテロアリールから選択され、
R
5が、置換されているまたは置換されていない、C
6−C
20−アリールまたはC
5−C
20−ヘテロアリール、H、F、あるいは、
【化2】
から選択される、電子デバイス。
【請求項2】
前記Arおよび前記R1−4が、C6−C20−アリールおよびC5−C20−ヘテロアリールからそれぞれ選択される、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記R
5が、HまたはFであり、そしてArと、
【化3】
から選択される部分にて結合する、請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記Arが、
【化4】
から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記デバイスが、重層構造を有しており、かつ少なくとも1層が、請求項1にて規定される化学式(I)における化合物を少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記有機半導体材料が、n−ドーパントを用いてドープされている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記有機半導体材料が、−3.3eVよりも正であるHOMOエネルギー準位を有する、有機物のn−ドーパントを用いてドープされている、請求項6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記デバイスが、電気的に機能する効果領域を有する、電子デバイス、光電子デバイス、または電子発光デバイスであって、上記電気的に機能する効果領域が、請求項1にて規定される化学式(I)における化合物を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記デバイスが、有機発光ダイオード、電界効果トランジスタ、検出器、光検出器、有機薄膜トランジスタ、有機集積回路、有機発光トランジスタ、発光電気化学電池、または有機半導体レーザーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、有機半導体層に関する。好ましくは、本発明は、有機半導体材料を少なくとも1つ含んでいる電子デバイスに関する。
【0002】
[技術分野]
複合化した有機化合物は、異なる適用を有する。1つの重要な分野は、有機半導体を含む。有機半導体は、単純な電子部品(例えば、抵抗器、ダイオード、電界効果トランジスタ)、ならびに、有機発光デバイス(例えば、OLED)およびその他の光電子部品を製造するために用いられ得る。上記有機半導体および有機半導体を用いたデバイスの産業上の重要性および経済的な重要性は、層として作用する有機半導体を用いているデバイスの数が増加していること、および上記対象に注目している産業が増加していることに、反映されている。
【0003】
単純なOLEDは、米国特許第4,356,429A号明細書に示されている。上記文献では、導電性電極の間に、2つの半導体有機層が一緒に用いられている:2つの半導体有機層の1つは、正孔を輸送する層であり、もう1つは、電子を輸送する層である。正孔および電子が再結合することによって、1つまたは両方の上記有機層の中に励起子を形成する。上記励起子は、スピン統計に続いて最終的に発光する。スピン三重項を有する励起子はまた、欧州特許第1705727号明細書に記載されている材料および技術を用いることによって、得ることができる。より具体的には、OLEDは、欧州特許第1804309号明細書および米国特許出願公開第2008/182129号明細書に開示されている。
【0004】
複合化した有機化合物は、低分子(例えば、モノマー)、またはオリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックと結合しているコポリマーおよびブロックと結合していないコポリマー、完全にもしくは部分的に架橋している層、団粒化構造、あるいは、櫛形構造であり得る。異なる層または混合された層において、異なるタイプの化合物(例えば、ポリマーの層および低分子の層)からなるデバイスは、ポリマー−低分子ハイブリッドデバイスともいわれる。有機電子半導体は、有機電子デバイスおよび有機−無機ハイブリッドデバイスにおいてもまた用いられ得る。
【0005】
分子の最高被占分子軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)との間に形成される電子ギャップが大きい(一般的に最高で3eV)にも関わらず、その値では標準的に低いため、正電荷キャリアおよび負電荷キャリアの両方が、特有の電極によって注入されることができない。典型的な有機半導体化合物は、その化合物が光学活性であるために十分に高いギャップを有する。
【0006】
例えば、有機電界効果トランジスタは、米国特許第7,026,643号明細書、米国特許出願公開第2005/146262号明細書および米国特許出願公開第2008/230776号明細書にて説明されている。2つの電極(ソースおよびドレイン)によって連結されている半導体層の抵抗は、2つの電極のゲートに適用される電位差によって制御され得る。上記ゲートは、上記半導体層に対して平行に置き換えられた絶縁体上に、置き換えられる。例えば、(基板上の)底設ゲート、(基板に対して、半導体層の反対側の)トップゲート、またはその両方という、種々の形態が用いられ得る。例えば、双極性の層、注入層、オフ電流を低くするために電極と半導体層との間を分離している層等の異なる多くの層の配置が用いられ得る。
【0007】
[背景技術]
異なる有機半導体デバイスにおいて、異なる機能を有する層が、独特な種々の特性を必要としている。
【0008】
例えば、有機薄膜トランジスタ(OTFTs)は、アクティブチャンネルにおいて高い流動性を有する材料を必要としている。透明な回路(例えば、透明なOTFTs)は、高い流動性を有する有機材料はまた、広い電子バンドギャップを含むこと;正孔、電子、または正孔および電子の電気注入が提供されなければならないことを必要とする。
【0009】
上記OLEDsは、高い導電性を有する透明な輸送層を必要とする。上記の透明性は、望んでいない光の吸収を回避するために、上記の光電子デバイスにおいて必要である。「窓」材料といわれるこれらは、輸送層、励起子抑制層または電荷抑制層(exciton or charge blocking layers)として用いられ得る。OLEDsの外部結合の発光(outcoupled emission)が最大となるように、窓材料からなる上記層の厚さは、OLEDsの微小な空洞に適応するために用いられる。十分に透明な部品および回路を製造するために、半導体デバイスの全ての種類の非光学活性層は、窓材料に置き換えられ得る(例えば、米国特許出願公開第2006/0033115号明細書)。上記層の機能性および名称は、当該分野において用いられている典型的なものである。さらなる説明は、米国特許出願公開第2006/244370号明細書において確認されることができる。
【0010】
電子デバイスはまた、温度に対して高い安定性を必要とし、それは、非晶質の有機半導体材料(例えば、トリフェニルアミン誘導体またはフェナントロリン(phenantronine)誘導体)の抵抗特性が、高いガラス転移温度(Tg)およびデバイス中において高い温度安定性を含まなくてはならないことを意味している。
【0011】
(光)電子の多層構造の動作特性は、特に電荷キャリアを移動させるための層の能力によって決定される。発光ダイオードにおいて、作動中の電荷輸送層における抵抗損は、上記電荷輸送層の導電性に関連している。上記導電性は、必要とされる作動電圧に直接的に影響を及ぼし、そして上記構造の熱負荷をも決定する。さらに、有機層中の電荷キャリアの濃度に依存して、金属を含有している近傍におけるバンドの結合は、結果的に電荷キャリアの注入を簡単にし、その結果、接触抵抗を減少させることができる。
【0012】
適したアクセプタ材料(p−ドーピング)を有する正孔輸送層、またはドナー材料(n−ドーピング)を有する電子輸送層に電気的にドーピングすることによって、それぞれ、有機固体中の電荷キャリアの濃度(および電荷キャリアの濃度による導電性)は、十分に増加され得る。さらに、無機半導体の経験と類似して、構造中にpおよびn−ドープされた層を用いることに正確に基づいた用途が予測され得る。そうでなければ、用途は予測されない。有機発光ダイオード中において、ドープされた電荷−キャリア輸送層(アクセプタのような分子を混合することによる正孔移動層のp−ドーピング、ドナーのような分子を混合することによる電子移動層のn−ドーピング)を使用することは、米国特許出願公開第2008/203406号明細書および米国特許第5,093,698号明細書に開示されている。
【0013】
米国特許出願公開第2008/227979号明細書は、無機ドーパントおよび有機ドーパントと共に、有機性の輸送材料(マトリクスともいう)をドーピングすることを詳細に開示している。基本的には、効果的な電子移動は、上記ドーパントから上記マトリクスのフェルミ準位を上昇させているマトリクスに生じる。p−ドーピングの場合の効果的な移動において、上記ドーパントのLUMOエネルギー準位は、上記マトリクスのHOMOエネルギー準位よりも負、または上記マトリクスのHOMOエネルギー準位に対して少なくともわずかに正(0.5eV以下)でなくてはならない。n−ドーピングの場合では、上記ドーパントのHOMOエネルギー準位は、上記マトリクスのLUMOエネルギー準位よりも正、または上記マトリクスのLUMOエネルギー準位に対して少なくともわずかに負(0.5eV以上)でなくてはならない。そのうえ、ドーパントからマトリクスへのエネルギー移動において、上記エネルギー準位の差が+0.3eVよりも小さいことが、求められている。
【0014】
ドープされた正孔輸送材料の典型的な例は以下の通りである:LUMO準位が約−5.2eVであるテトラフルオロ−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)を用いてドープされた、HOMO準位が約−5.2eVである銅フタロシアニン(CuPc);F4TCNQを用いてドープされた亜鉛フタロシアニン(ZnPc)(HOMO=−5.2eV);F4TCNQを用いてドープされたa−NPD(N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン)。
【0015】
ドープされた電子輸送材料の典型的な例は以下の通りである:アクリジンオレンジ(AOB)を用いてドープされたフラーレンC60;ロイコクリスタルバイオレットを用いてドープされたペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物(PTCDA);テトラキス(1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジナート)ジタングステン(II)(W(hpp)
4)を用いてドープされた2,9−ジ(フェナントレン−9−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン;3,6−ビス−(ジメチルアミノ)−アクリジンを用いてドープされたナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA);ビス(エチレン−ジチオ)テトラチアフルバレン(BEDT―TTF)を用いてドープされたNTCDA。
【0016】
ドープされることができるほど十分に低いLUMO準位を有し、そして(ETMの場合には)効果的に電荷をエミッタホストに移動させ、(EMHの場合には)エミッタドーパント(emitter dopant)にエネルギーを移動させることができるほど十分に高いLUMO準位を有する、電子輸送材料(ETM)およびエミッタホスト(emitter host)(EMH)材料を供給するには技術的な障害がある。非常に高いHOMOを有するn−ドーパントが不安定な傾向があり;注入もまたETLの非常に高いLUMOのために困難であるため、ETLの高いLUMO準位における限界は、ドーピングの可能性(dopability)による。
【0017】
[発明の要旨]
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服するための有機半導体材料として用いられ得る機能材料の特定の種類を含んでいる、半導体層、好ましくは電子デバイスを提供することである。特に、さらに熱的安定性、ドーピング能力(dopable)、または熱的安定性およびドーピング能力のある透明な有機半導体材料を含んでいる電子デバイスが提供される。さらに、上記電子デバイスは、全く困難なことなしに合成されることができる半導体材料を含む。
【0018】
上記目的は、化学式(I)における化合物、および下記の化学式(I)における有機半導体材料を少なくとも1つ含んでいる電子デバイスによって達成される:
【0020】
上記化学式(I)において、R
1−4が、H、ハロゲン、CN、置換されているまたは置換されていない、C
1−C
20−アルキルまたはヘテロアルキル、C
6−C
20−アリルまたはC
5−C
20−ヘテロアリル、C
1−C
20−アルコキシまたはC
6−C
20−アリルオキシからそれぞれ選択され、
Arが、置換されているまたは置換されていない、C
6−C
20−アリルまたはC
5−C
20−ヘテロアリルから選択され、
R
5が、置換されているまたは置換されていない、C
6−C
20−アリルまたはC
5−C
20−ヘテロアリル、H、F、あるいは、
【0023】
好ましくは、ArおよびR
1−4は、C
6−C
20−アリルおよびC
5−C
20−ヘテロアリルからそれぞれ選択される。
【0024】
さらに好ましくは、ヘテロアリルは、1つまたは2つのCが、NまたはSに置換されている、C5−C20の縮合環構造である。
【0025】
さらに好ましい実施形態においては、R
5は、HまたはFであり、そしてArと、表1から選択される部分にて結合する。
【0028】
上記化学式から、この明細書中に例示されている他の化合物と同様に、上記の開いている結合が、メチル基であると理解されるのではなく、この開いた結合が、化学式(I)の残りの部分と共有結合をしている結合であることは明らかである。
【0029】
別の好ましい実施形態においては、化学式(I)における化合物は、HまたはFでないR
5、C6−C20−アリルまたはC5−C20−ヘテロアリルであるAr;好ましくは、上記に例示した構造を有しているArを用いて調製される。この化合物の中で、好ましくはR1−R4が、H、C6−C20−アリルまたはC5−C20−ヘテロアリルである。
【0030】
さらに好ましい実施形態においては、Arは、下記の表2から選択される。
【0033】
さらに好ましい実施形態においては、Arは、表2から選択され、そして表1から選択されるR5と結合する。
【0034】
上記デバイスが、電気的に機能する効果領域(electronically functionally effect region)を有する、電子デバイス、光電子デバイス、または電子発光デバイスであって、上記電気的に機能する効果領域が、上記にて定義された化学式(I)における化合物を少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0035】
上記デバイスが、重層構造を有しており、かつ少なくとも1層が、上記にて定義された化学式(I)における化合物を少なくとも1つを含むことが、なお好ましい。
【0036】
上記有機半導体材料が、n−ドーパントを用いてドープされていることが、さらに好ましい。
【0037】
別の実施形態においては、重層構造を有する上記デバイスが、一方がn−ドープされており、もう一方がドープされていない、化学式(I)の化合物を含んでいる有機半導体材料を少なくとも2つ有する。好ましくは、両方の層が直接結合している。
【0038】
上記有機半導体材料は、−3.3eVよりも正であるHOMOエネルギー準位を有する、有機物のn−ドーパントを用いてドープされ得る。
【0039】
上記デバイスは、好ましくは、有機発光ダイオード、電界効果トランジスタ、検出器、光検出器、有機薄膜トランジスタ、有機集積回路、有機発光トランジスタ、発光電気化学電池または有機半導体レーザーである。化学式(I)の化合物を含んでいる有機半導体材料は、特にOLEDs中の電子輸送層にて用いられることに適していることが見出されている。
【0040】
本発明によれば、本発明はまた化学式(I)に記載の化合物であり、R5がHであり、Arが、
【0043】
上記化学式(I)の化合物の最も好ましい構造は、下記の表3の通りであり得る。
【0048】
上記表から理解され得るように、Arは、多くの、置換されているまたは置換されていない、C
6−C
20−アリルまたはC
5−C
20−ヘテロアリルから選択され得る。適切な置換基としては、例えば、Brのようなハロゲン、アリル、ピレン、またはCF
3が挙げられる。
【0049】
有機物のn−ドーパントとしては、例えば、欧州特許第2002492A1号明細書、米国特許出願公開第2007/252140号明細書または米国特許出願公開第2009/212280号明細書に記載されているドーパントから選択され得る。
【0050】
本発明によれば、本発明はまた、必要に応じて少なくとも1つのドーパントと用いてドープされている有機物のマトリクス材料を少なくとも1つ含んでいる有機半導体材料を含んでいる電子デバイスである。ここで、上記マトリクス材料は、化学式(I)における化合物を少なくとも1つ含む。
【0051】
発光ダイオードにおいて、化学式(I)における化合物は、必要に応じてドープされ得る電子輸送層にて用いられ得る。上記化合物はまた、発光ダイオードにおいて、中間層(例えば、正孔抑制層(hole blocking layers)にて用いられ得る。
【0052】
本発明によれば、上記化合物は、好ましくは電子輸送層中に用いられ、エミッタ層(emitter layer)の主な化合物としてではなく、より好ましくはエミッタ層全体においても用いられない。
【0053】
本発明によれば、可視的な範囲において高い透明性を維持し、そして高い熱的安定性を有する一方で、高い導電性を達成している、電気的にドープされた上記デバイスのために、特に窓半導体有機材料が、提供される。
【0054】
本発明によれば、輸送層において、すなわち、半導体チャンネル層において用いるために、化学式(I)における化合物を少なくとも1つ含んでいる有機電界効果トランジスタがまた提供され得る。高いポテンシャル障壁によって電荷が注入されない場合、有機電界効果トランジスタはまた、電気的に不活性な緩衝層として開示されている化合物を少なくとも1つ含み得る。有機電界効果トランジスタはまた、ドープされた注入層として開示されている化合物を少なくとも1つ含み得る。
【0055】
本発明において、化学式(I)における上記化合物は、純層(neat layer)として、または還元ドーパントと組み合わせたドープされた層として、OLEDs中の電子輸送層において用いられ得る。上記化合物はまた、他の電子輸送材料、他の正孔輸送材料、または他の機能性材料(例えば、エミッタドーパント)と混合して用いられ得る。上記化合物は、正孔抑制層として使用され得る。先行技術(例えば、独国特許出願公開第102007012794号明細書または欧州特許第2072517号明細書)に開示されている材料と比較すると、上記材料は、高いガラス転移温度を有するので、先行技術に対して有利な効果を示す。
【0056】
化学式(I)における上記化合物を用いることによって、高い熱的安定性(特に高いガラス転移温度によるもの)、有機発光デバイスのための好適なLUMO位置、好適なドーピングの可能性、導電性および電荷キャリアの流動性、高い透明性、ならびに、容易な合成が提供される。さらに、これら化合物の調製は、非常にコスト効率の良い方法にて実施され得る。最後に、上記化合物の合成が、より複雑な化合物およびそれら化合物を微調整している異なる物理的/化学的特性を利用できるようにする、RおよびX、Ar
1基またはAr
2基をそれぞれ変化させるための高い柔軟性を提供することが示され得る。
【0057】
マトリクス材料を含んでいる本発明におけるデバイス中において、開示されている化合物を含んでいるドープされた層の熱的安定性は特に、著しく増加することが驚くべきことに見出された。特に、実施例にて示す化合物を用いることによって、100℃を超えるガラス転移温度が達成された。そのような高いガラス転移温度、広いギャップおよびドーピングの可能性を組み合わせることによって、上記化合物は、有機電子デバイスにおいて使用するための高い産業的関連性を有する化合物となる。
【0058】
用いられる多くの異なる材料の特性は、分子の最高被占分子軌道エネルギー準位(HOMO、イオン化ポテンシャルの類義語)および分子の最低空軌道エネルギー準位(LUMO、電子親和力の類義語)の位置によって説明され得る。
【0059】
イオン化ポテンシャル(IP)を決定する方法は、紫外線光電子分光法(UPS)である。固体状態の材料のイオン化ポテンシャルを測定することは通例である;しかし、ガス相中のIPを測定することもまた可能である。固体状態の影響(例えば、光イオン化プロセス中に発生される正孔の分極エネルギー)によって、両方の値が区別される。分極エネルギーにおける典型的な値は約1eVであるが、上記値には大きな矛盾もまた生じ得る。上記IPは、光電子の大きな運動エネルギー、言い換えると、最も弱い束縛電子のエネルギーの範囲における、光電子分光スペクトルの開始と関連がある。UPSと関連した方法である、逆光電子分光法(IPES)は、電子親和力(EA)を決定するために用いられ得る。しかし、この方法は、ほとんど普及していない。溶液における電気化学的な測定は、固体状態の酸化(Eox)電位および還元(Ered)電位を決定することに代わる測定である。適切な方法としては、例えば、シクロボルタメトリーがある。固体状態のイオン化ポテンシャルを抽出する経験的な方法は、上記文献から公知である。還元電位を電子親和力に変換することにおいて、経験的な問題は知られていない。上記の理由としては、電子親和力を決定することが困難だからである。それゆえ、次のような簡単な基準が非常によく用いられる:それぞれ、(フェロセン/フェロセニウムに対して)IP=4.8eV+e*Eox、および(フェロセン/フェロセニウムに対して)EA=4.8eV+e*Ered(B.W. Andrade, Org. Electron. 6, 11 (2005)およびRefs. 25-28を参照)。他の参照電極または他の酸化還元対が用いられる場合において、電気化学的なポテンシャルを補正するためのプロセスは公知である(A.J. Bard, L.R. Faulkner, "Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications", S. 1-28, und S. 239-247, Wiley, 2. Ausgabe 2000を参照)。用いられる溶液の影響に関する情報は、N.G. Connelly et al., Chem. Rev. 96, 877 (1996)にて確認され得る。たとえ、上記イオン化エネルギーおよび上記電子親和力の類義語として、それぞれ用語「HOMOのエネルギー」E(HOMO)および「LUMOのエネルギー」E(LUMO)を用いることが正確に一致していなくても、それは一般的である(クープマンズの定理)。大きな値が、放出のまたは吸収された電子のより強い結合を表すことにおいて、上記イオン化ポテンシャルおよび上記電子親和力が与えられていることは、考慮されるべきである。分子軌道(HOMO、LUMO)のエネルギーの大きさは、これと反対である。それゆえ、概算すると、IP=−E(HOMO)およびEA=E(LUMO)は妥当である。上記の特定のポテンシャルは、上記固体状態のポテンシャルと一致する。それぞれの遮蔽剤を含んでいる正孔輸送層は、主に、−4.5から−5.5eV(真空レベル以下)の範囲のHOMO、および−1.5eVから−3eVの範囲のLUMOを有する。上記エミッタ材料のHOMO準位は、−5eVから−6.5eVの範囲であり、LUMOの準位は、−2eVから−3eVの範囲である。それぞれの遮蔽剤を含んでいる電子輸送材料は、−5.5eVから−6.8eVの範囲のHOMO、および−2.3eVから−3.3eVの範囲のLUMOを有する。上記接触材料の作用機能は、陽極では、およそ−4eVから−5eVであり、陰極では、−3eVから−4.5eVである。
【0060】
上記ドーパントドナー(dopant donor)は、分子または中性のラジカル、あるいはそれらの組合せであり、それは、−3eVよりも正である、好ましくは−2.8eVよりも正である、さらに好ましくは−2.6eVよりも正である、HOMOエネルギー準位(半導体におけるイオン化ポテンシャル)を有する。上記ドナーのHOMOは、シクロボルタメトリー測定によって測定され得る。上記還元電位を測定する代わりの方法としては、上記ドナー塩のカチオンを測定する方法がある。上記ドナーは、Fc/Fc+(鉄/フェロセニウム酸化還元対)に対して、−1.5Vよりも小さいまたは等しい酸化電位、好ましくは−1.5Vよりも小さい酸化電位、さらに好ましくは約−2.0Vよりも小さいまたは等しい酸化電位、なおさら好ましくは−2.2Vよりも小さいまたは等しい酸化電位を示すべきである。上記ドナーのモル質量は、100g/molから2000g/molの範囲、好ましくは200g/molから2000g/molの範囲である。そのモルドーピング濃度は、1:10000(ドーパント分子:マトリクス分子)から1:2の範囲、好ましくは1:100から1:5の範囲、より好ましくは1:100から1:10の範囲である。それぞれの場合(例えば、大きな導電性が必要である場合)において、1:2よりも大きいドーピングの濃度が用いられる。上記層を形成している(堆積)プロセス中、または層形成の後のプロセス中にて、上記ドナーは、前駆物質によって発生され得る(独国特許出願公開第10307125.3号明細書を参照)。上記ドナーのHOMO準位の上記の特定の値は、結果として得られる分子または分子ラジカルをいう。
【0061】
ドーパントアクセプタ―(dopant acceptor)は、分子または中性のラジカル、あるいはそれらの組合せであり、それは、−4.5eVよりも負である、好ましくは−4.8eVよりも負である、さらに好ましくは−5.04よりも負である、LUMO準位を有する。上記アクセプタのLUMOは、シクロボルタメトリー測定によって測定され得る。上記アクセプタは、Fc/Fc+(鉄/フェロセニウム酸化還元対)に対して、約−0.3Vよりも大きいまたは等しい還元電位、好ましくは0.0Vよりも大きいまたは等しい還元電位、さらに好ましくは0.24Vよりも大きいまたは等しい還元電位を示すべきである。上記アクセプタのモル質量は、好ましくは100g/molから2000g/molの範囲、より好ましくは200g/molから1000g/molの範囲、さらに好ましくは300g/molから2000g/molの範囲である。そのモルドーパント濃度は、1:10000(ドーパント分子:マトリクス分子)から1:2の範囲であり、好ましくは1:100から1:5の範囲であり、より好ましくは1:100から1:10の範囲である。それぞれの場合(例えば、大きな導電性が必要である場合)において、1:2よりも大きいドーピングの濃度が用いられる。上記層を形成している(堆積)プロセス中、または層形成の後のプロセス中にて上記アクセプタは、前駆物質によって発生され得る。上記アクセプタのLUMO準位の上記の特定の値は、結果として得られる分子または分子ラジカルをいう。
【0062】
用語ドーピングを用いることによって、それは上記にて説明されたように、電気的なドーピングを意味している。このドーピングはまた、酸化還元ドーピングまたは電荷輸送ドーピングともいわれ得る。上記ドーピングが、半導体マトリクスの電荷キャリアの濃度を、ドープされていないマトリクスの電荷キャリアの濃度に対して増加させることは、公知である。電気的にドープされた半導体層はまた、ドープされていない半導体マトリクスと比較すると向上した効果的な流動性を有する。
【0063】
例えば、導電性は、いわゆる二点法または四点法によって測定され得る。ここで、ここで、導電性材料(例えば、金または酸化インジウムスズ)の接点は、基板上に配置される。次いで、試験されるための薄膜は、基板の上に貼り付けられ、上記接点が上記薄膜によって覆われる。上記接点に電圧を加えた後に、電流が測定される。上記接点の形態および上記サンプルの厚さから、上記薄膜材料の抵抗、そしてその結果、上記薄膜材料の伝導性が決定され得る。上記四点層または二点法は、上記ドープされた層が適切なオーム接点を付与するため、ドープされた層において同じ導電性の値を供給する。
【0064】
上記温度安定性はまた、上記(ドープされたまたはドープされていない)層を徐々に加熱し、待機期間後、その伝導性を測定する方法を用いて測定され得る。次いで、所望の半導体特性を損なうことなく上記層に適応させることができる最大温度は、導電性が弱まる直前の温度である。例えば、ドープされた層は、1℃ごとのステップにおいて、上記にて説明したように、2つの電極を用いて基板上にて、加熱され得る。ここで、各ステップの後に10秒間の待機期間を設けた。次いで、上記導電性が測定される。温度によって導電性が変化し、そして特定の温度にて、急激に弱まる。それゆえ、上記温度安定性は、導電性が急激に弱まらない温度までの温度である。上記測定は、真空下にて行われる。
【0065】
本発明の別の様態においては、化学式(I)における化合物は、ドープされていない(電気的にドープされていない)ETLにおいて、電子輸送材料として有機発光ダイオードにて用いられる。さらに別の様態においては、上記ETLは、有機金属化合物の複合体、優先的にはLi化合物(例えば、LiQ)と混合される。上記の場合、エミッタ層の輸送ホスト(transporting host)が、優先的に電子輸送であることが好ましい。それは、エミッタ層のホストのHOMOエネルギー準位およびLUMOエネルギー準位、ならびに、エミッタ層と隣接した層のホストによって、エミッタ層の輸送ホストが、より高い電子流動性を有するため、または、電子が正孔よりも簡単に注入されるためだからである。さらに別の様態においては、上記ETLは、化学式(I)における化合物からなる。
【0066】
本発明の更なる特徴および利点は、添付した図面とともに、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から理解され得る。
【0067】
[図面の簡単な説明]
図1は、典型的な低分子OLEDの例の断面図を示す。
【0068】
本発明の有機電子デバイスは、有機発光ダイオードでもよい。
図1は、有機発光ダイオードの典型的な層構造を示す。上記層は、以下の順に基板(10)上に配列されている:陽極(11)p−ドープされた正孔輸送層(12)、電子抑制層(electron blocking layer)(13)、発光層(14)、正孔抑制層(15)、n−電子輸送層(16)そして陰極(17)である。特性が組み合わせられ得る場合、2つまたは複数の層は、より小さな数の層になり得る。反転した構造および多重のOLEDsは、当該分野において公知である。上記発光層は、一般的にエミッタマトリクス材料およびエミッタドーパントによって構成される;この層はまた、いくつかのエミッタを組み合わせている広いスペクトルを有する光を発生させるため(例えば、白色光を発生させるため)のいくつかの他の層によって構成され得る。
【0071】
当然ながら、上記の一般合成式におけるRは、化学式(I)に基づいてR
1−4を表している。更に、この一般合成式におけるArが、化学式(I)に基づいて「Ar−R
5」部分を表していることは、理解されるべきである。
【0072】
R
1−4はそれぞれ、適切なテトラロン誘導体(例えば、6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−7−メトキシ−1(2H)−ナフタレノン、もしくは3,4−ジヒドロ−5,8−ジメチル−1(2H)−ナフタレノン、または6,7−ジクロロ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ナフタレノン、あるいは、3,4−ジヒドロ−6−ニトロ−1(2H)−ナフタレノン、あるいは、3,4−ジヒドロ−7−フェニル−1(2H)−ナフタレノンであり、全て市販の材料である。)を選択することにより、上記一般合成式のステップ1、ステップ2、またはステップ1およびステップ2にて導入される。
【0073】
[実施例1]
以下に下記化学式を有する化合物の合成を示す。
【0075】
第1ステップ:2−ベンジリデン−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(1)の合成。市販の溶媒/化学物質を精製せずに、全ての操作を空気中にて行った。
【0077】
250mLのフラスコに、テトラロン(4g、27.4mmol)およびベンズアルデヒド(3.88g、36.6mmol)を仕込んだ。これらを温めたテトラヒドロフラン(15mL)に溶解させ、この黄色の溶液に、メタノールに溶解させた4wt%のKOH溶液(125mL)をゆっくりと添加した。その反応液を室温にて4日間にわたって攪拌した。次いで、上記溶液を減圧下にて除去し、そして150mLの水に注ぎ、塩化メチレンを用いて抽出した。硫酸マグネシウムを用いて、抽出した有機物を乾燥させ、濾過し、そして減圧下にて溶媒を除去し、白色の粉末として4.1g(64%)を得た。
【0078】
NMR:1H NMR(500 MHz、CD2Cl2)δ8.01(dd、J=64.7、65.4、2H)、7.71−6.92(m、8H)、3.39−2.64(m、4H)。
【0079】
第2ステップ:7−フェニル−5,6,8,9−テトラヒドロジベンゾ[c,h]アクリジン(2)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0081】
BF3.Et2O(1.8mL、14.2mmol)と共に、1(2.9g、12.4mmol)およびテトラロン(1.7g、11.6mmol)をフラスコに仕込んだ。上記混合液を100℃で4時間にわたって攪拌し、そして室温まで冷却した。Et2O(15mL)を加え、上記混合液をさらに1時間にわたって攪拌した。沈殿物を濾過し、Et2O(15mL)を用いて洗浄した。次いで、0℃にてこの粉末(1.9g)をアンモニア−エタノール溶液と共にフラスコに入れた。その混合液を室温にて6時間にわたって攪拌し、固体を濾過し、エタノールを用いて数回洗浄した。白色の粉末1.4g(収率34%)が得られた。
【0082】
第3ステップ:7−フェニルジベンゾ[c,h]アクリジン(3)の合成。全ての操作を、乾燥させた溶媒を用いて、アルゴン雰囲気下にて行った。
【0084】
100mLのジオキサン中に、2(1.55g、4.31mmol)を溶解させ、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(6.88g、30.3mmol)を加えた。その混合液をアルゴン雰囲気下にて2日間還流した。次いで、上記反応混合液を室温まで冷却し、300mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ、65℃で30分間攪拌した。次いで、上記混合液を室温まで冷却し、沈殿物を濾過し、塩化メチレンを用いて洗浄した。収量は、1.1g(72%)であった。
【0085】
1H NMR(500MHz、CD2Cl2)δ8.02−7.94(m、4H)、7.86(dd、J=1.2、7.8、2H)、7.71(ddd、J=5.9、11.0、25.9、3H)、7.45(dd、J=7.3、8.4、4H)、7.20(d、J=8.7、2H)、7.05(ddd、J=1.5、7.0、8.6、2H)。
【0086】
[実施例2]
以下に下記化学式を有する化合物の合成を示す。
【0088】
第1ステップ:(E)−2−(4−ブロモベンジリデン)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(4)の合成。市販の溶媒/化学物質を精製せずに、全ての操作を空気中にて行った。
【0090】
250mLのフラスコに、テトラロン(3.22g、22mmol)および4−ブロモベンズアルデヒド(5.3g、28.6mmol)を仕込んだ。これを温めたテトラヒドロフラン(12mL)に溶解させ、この黄色の溶液に、メタノールに溶解させた4wt%のKOH溶液(100mL)をゆっくりと加えた。この反応液を室温にて4日間にわたって攪拌した。この混合液を濃縮し、約10%の体積まで減少させた。残渣を濾過し、MTBE(3×50mL)を用いて洗浄し、乾燥させ、淡黄色の粉末(6,61g、96%)を得た。
【0091】
第2ステップ:7−(4−ブロモフェニル)−5,6,8,9−テトラヒドロジベンゾ[c,h]アクリジン(5)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0093】
BF3.Et2O(3mL、23.7mmol)と共に、4(6.54g、20.9mmol)およびテトラロン(2.93g、20.0mmol)をフラスコに仕込んだ。その混合液を100℃で4時間にわたって攪拌し、室温まで冷却した。Et2O(25mL)を加え、その混合液をさらに1時間にわたって攪拌した。沈殿物を濾過し、Et2O(20mL)を用いて洗浄した。0℃にて、この粉末(3.8g)をアンモニア−エタノール溶液と共にフラスコに入れた。その混合液を室温にて5時間にわたって攪拌し、沈殿物を濾過し、エタノールを用いて複数回洗浄した。
【0094】
白色の粉末2.98g(収率34%)を得た。
【0095】
第3ステップ:7−(4−ブロモフェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン(6)の合成。全ての操作を、乾燥させた溶媒を用いて、アルゴン雰囲気下にて行った。
【0097】
190mLのジオキサンに2(2.98g、6.80mmol)を溶解させ、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(10.9g、48mmol)を加えた。その混合液をアルゴン雰囲気下にて2日間にわたって還流した。次いで、その反応混合液を室温まで冷却し、600mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ、65℃で30分間攪拌した。次いで、その混合液を室温まで冷却し、沈殿物を濾過し、そして水およびジクロロメタンを用いて洗浄した。
【0098】
収量は、2g(68%)であった。
1H NMR(500MHz、CD
2Cl
2)δ(ppm):9.80(d、J=8.0、2H)、8.00−7.68(m、10H)、7.53(d、J=9.2、2H)、7.45−7.34(m、2H)。
【0099】
第4ステップ:4,4’’−ビス(ジベンゾ[c,h]アクリジン−7−イル)−1,1’:4’,1’’−テルフェニル(7)の合成。市販の溶媒/化学物質を精製せずに、全ての操作を空気中にて行った。
【0101】
17mLのトルエン、8,8mLのエタノールおよび2,6mLの蒸留水と共に、6(700mg、1,61mmol)、1,4−フェニレンジボロン酸(146mg、0,88mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Palladium tetrakis triphenylphoshine)(186mg、0,16mmol)および炭酸カリウム(1,34g、9,66mmol)をフラスコに仕込んだ。その混合液を24時間にわたって80℃で攪拌し、濾過した。次いでヘキサン、水、および数mLのクロロホルムを用いて固体を洗浄し、乾燥させた。
【0102】
収量は、200mg(20%)であった。
【0103】
[実施例3]
以下に下記化学式を有する化合物の合成を示す。
【0105】
第1ステップ:(E)−2−(3−ブロモベンジリデン)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(8)の合成。市販の溶媒/化学物質を精製せずに、全ての操作を空気中にて行った。
【0107】
250mLのフラスコに、テトラロン(5.2g、35.6mmol)および3−ブロモベンズアルデヒド(8.51g、56mmol)を仕込んだ。これを温めたテトラヒドロフラン(20mL)に溶解させ、この黄色の溶液に、メタノールに溶解させた4wt%のKOH溶液(160mL)をゆっくりと加えた。その反応溶液を室温にて4日間にわたって攪拌した。その混合液を濃縮し、約10%の体積まで減少させた。残渣を濾過し、MTBE(3×50mL)を用いて洗浄し、乾燥させ、淡黄色の粉末(10.3g、92%)を得た。
【0108】
NMR:1H NMR(500MHz、CD2Cl2)δ8.01(dd、J=64.7、65.4、2H)、7.71−6.92(m、8H)、3.39−2.64(m、4H)。
【0109】
第2ステップ:7−(3−ブロモフェニル)−5,6,8,9−テトラヒドロジベンゾ[c,h]アクリジン(9)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0111】
BF3.Et2O(4.7mL、37.1mmol)と共に、4(10.2g、32.6mmol)およびテトラロン(4.52g、30.9mmol)をフラスコに仕込んだ。その混合液を100℃で4時間にわたって攪拌し、室温まで冷却した。Et
2O(70mL)を加え、その混合液をさらに1時間にわたって攪拌した。沈殿物を濾過し、Et
2O(20mL)を用いて洗浄した。次いで、0℃にて、この粉末(5.6g)をアンモニア−エタノール溶液と共にフラスコに入れた。その混合液を室温にて5時間にわたって攪拌し、固体を濾過し、エタノールを用いて複数回洗浄した。白色の粉末4.5g(収率33%)を得た。
【0112】
第3ステップ:7−(3−ブロモフェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン(10)の合成。全ての操作を、乾燥させた溶媒を用いて、アルゴン雰囲気下にて行った。
【0114】
220mLのジオキサンに2(4.49g、10.2mmol)を溶解させ、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(14.3g、63mmol)を加えた。その混合液をアルゴン雰囲気下にて2日間にわたって還流した。次いで、その反応混合液を室温まで冷却し、700mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ、65℃で30分間攪拌した。次いで、その混合液を室温まで冷却し、沈殿物を濾過し、水およびジクロロメタンを用いて洗浄した。
【0115】
収量は、3.3g(74%)であった。
【0116】
1H NMR(500MHz、CD
2Cl
2)δ(ppm):9.80(d、J=8.1、2H)、8.01−7.63(m、11H)、7.61−7.40(m、4H)。
【0117】
第4ステップ:7−(3−(ピレン−1−イル)フェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン(11)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0119】
17mLのトルエン、8.8mLのエタノールおよび2.6mLの蒸留水と共に、10(700mg、1.61mmol)、ピレン−1−イルボロン酸(434mg、1.76mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(186mg、0.16mmol)および炭酸カリウム(1.34g、9.66mmol)をフラスコに仕込んだ。この混合液を80℃で24時間にわたって攪拌し、濾過した。次いで、ヘキサン、水、数mLのクロロホルムを用いて固体を洗浄し、乾燥させた。
【0120】
収量は、392mg(44%)であった。
【0121】
[実施例4]
以下に下記化学式を有する化合物の合成を示す。
【0123】
第4ステップ:(4−(ジベンゾ[c,h]アクリジン−7−イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(15)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0125】
6(2.84g、5.11mmol)を40mLのTHFに溶解させた。その溶液を−78℃まで冷却し、b−BuLi(2.5Mol/L、3.5mL、8.68mmol)を20分間以内に滴下して加え、次いで上記温度にて1時間にわたって攪拌した。次いで、温度を−50℃まで上昇させ、ジフェニルホスフィンクロリド(1.13g、5.11mmol)を加え、その混合液を室温にて一晩にわたって攪拌した。メタノール(25mL)を用いて反応を止め、溶媒を蒸発させた。残渣を40mLのジクロロメタンに溶解させ、次いで、過酸化水素水(Water peroxide)(8mLH
2O
2水溶液)を加え、一晩にわたって攪拌した。次いで、50mLの食塩水を用いて上記反応液を洗浄し、次いで有機相を乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(SiO
2、ジクロロメタン、次いでDCM/MeOH 97:3)を用いて未精製の生成物を精製した。次いで、200mLのMTBEを用いて得られた泡沫上の生成物を洗浄した。
【0126】
収量は、1.6g(43%)であった。HPLC:>97%。NMR:31P NMR(CDCl3、121,5MHz):δ(ppm):29(m)。
【0129】
第4ステップ:7−(4’−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ジベンゾ[c,h]アクリジン(16)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0131】
脱気した35mLのトルエンと共に、6(2.1g、4.8mmol)、1−フェニル−2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール(3.8g、9.6mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(830mg)および1Mの炭酸カリウム水溶液17mLをフラスコに仕込んだ。この混合液を80℃で36時間にわたって攪拌し、次いで室温まで冷却し、濾過した。次いで固体をジクロロメタン(600mL)に溶解させ、セライトパッドを用いて濾過した。ロータリー・エバポレータを用いて揮発性物質を除去し、次いで固体を真空下にて一晩にわたって乾燥させた。
【0132】
収量は、1.2g(40%)であった。HPLC>98%。
【0136】
100mLのトルエンと共に、6(3g、6.9mmol)、1−フェニル−2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール(3.3g、10.36mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(1.2g)および1Mの炭酸カリウム水溶液30mLをフラスコに仕込んだ。この混合液を95℃で48時間にわたって攪拌し、室温まで冷却し、濾紙を用いて濾過した。次いで、トルエンを用いて固体を洗浄し、得られた灰色の固体を500mlの加熱したキシレン(150℃)に溶解させ、セライトパッドを用いてその沈殿物を濾過し、次いでロータリー・エバポレータを用いて揮発性物質を除去した。次いで、得られた固体を真空下にて乾燥させた。収率は、2.4g(65%)であった。HPLC:>98%。
【0137】
[実施例7]
以下に下記化学式を有する化合物の合成を示す。
【0139】
第1ステップ:(E)−2−(4−メトキシベンジリデン)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(15)の合成。市販の溶媒/化学物質を精製せずに、全ての操作を空気中にて行った。
【0141】
p−メトキシベンズアルデヒド(10.00g、73.4mmol、1.3当量)および1−テトラロン(8.24g、56.4mmol、1当量)の混合物をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解させ、攪拌しておいた水酸化カリウムのメタノール溶液(4%溶液、250mL、7.9gKOH、141mmol、2.5当量)を滴下して15分間にわたって加えた。その混合液を周囲温度にて3日間にわたって攪拌し、形成された沈殿を濾過して分離し、MTBEを用いて洗浄することによって精製した。真空下にて乾燥させた後、黄白色の固体(8.57g、収率60%、GC−MS純度99%)を得た。濾液を4分の1の体積にまで減少させ、濾過し、少量のメタノールおよび多量のMTBEを用いて洗浄した後に、2回目のフラクション(3.7g、収率26%、GC−MS純度100%)を分離することができた。全体の収率は、86%であり、その生成物を、さらなる精製をすることなく、次のステップに直接的に用いた。
【0142】
第2ステップ:7−(4−メトキシフェニル)−5,6,8,9−テトラヒドロジベンゾ[c,h]キサンテン−14−イウム テトラ−フルオロボロラート(16)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0144】
不活性のアルゴン雰囲気下にて、(ジエチルオキソニオ)トリフルオロボロラート((diethyloxonio)trifluoroborate)(7.83g、7.0mL、55.2mmol、1.2当量)を、(E)−2−(4−メトキシベンジリデン)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(15)(12.20g、46.2mmol、1当量)および1−テトラロン(6.73g、46.0mmol、1当量)の攪拌した混合液に滴下して加えた。完全に添加した後に、上記混合液を100℃で5時間半にわたって加熱し、次いで室温まで冷却した。ジエチルエーテル(50mL)を添加し、30分間攪拌し、濾過することによって生成物を分離し、ジエチルエーテルを用いて洗浄することによって精製した。真空下にて乾燥させた後、黄土食の固体を得た。その生成物を、さらなる精製をすることなく、次のステップに用いた。
【0145】
収量は、6.66g(30%)であった。
【0146】
第3ステップ:7−(4−メトキシフェニル)−5,6,8,9−テトラヒドロジベンゾ[c,h]アクリジン(17)の合成。市販の溶媒/化学物質を精製せずに、全ての操作を空気中にて行った。
【0148】
16(6.63g、13.9mmol、1当量)をエタノール(175mL、1%のメチルエチルケトンを用いて変性させた。)中に懸濁させた。十分に攪拌している条件下にて、アンモニア溶液(32%水溶液、18.3gNH
3、1.075mol、77当量)を滴下して加え、そしてその混合液を周囲温度にて17時間半にわたって攪拌し、青紫色の沈殿を得た。濾過することによって生成物を分離し、エタノール(250mL)を用いて連続的に洗浄することによって精製した。青紫色の固体(収率91%)を得ることができた。その化合物をさらなる精製をすることなく、次のステップに直接的に用いた。
【0149】
収量は、4.93g(91%)であった。HPLC:91%(および5%の構造異性体)。
【0150】
第4ステップ:7−(4−メトキシフェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン(18)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0152】
不活性のアルゴン雰囲気下にて、十分に攪拌しながら80℃で、17(4.93g、12.7mmol、1当量)を特級(abs.)1,4−ジオキサン(300mL、ナトリウムを用いて乾燥させた。)に溶解させた。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ、17.25g、76mmol、6当量)を5分間にわたって少しずつ添加し、特級ジオキサン(20mL)を用いて上記DDQの容器を洗い流した。不活性雰囲気以下にて、ほぼ黒色の混合液を80℃で2日間にわたって攪拌した。室温まで冷却した後に、上記反応混合液を、500mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液に注意して加え、飽和Na
2CO
3水溶液(250mL)および水(200mL)を用いて反応容器を洗い流した。上記混合液を65℃で75分間攪拌した後に、沈殿物を沈め、濾過することによって生成物を分離し、水(全体で約1000mL)に溶解させた固体による多数の泥状物を用いて精製した。未精製の生成物を40℃で真空下にて一晩にわたって乾燥させた後、固体を塩化メチレン(20mL)に懸濁させ、45分間攪拌し、濾過によって分離し、そしてDCM(2×20mL)を用いて洗浄し、一晩にわたって乾燥させた。99.5%のHPLC純度にて、黄土色の固体3.53g(収率72%)を得ることができた。上記材料のさらなる精製は、勾配昇華(gradient sublimation)(初期量:1.00g、昇華による収率:67%)によって可能であった。
【0153】
第5ステップ:4−(ジベンゾ[c,h]アクリジン−7−イル)フェノール(19)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0155】
圧力容器にて、18(1.00g、2.6mmol、1当量)とピリジニウムヒドロクロリド(1.75g、15.1mmol、5.8当量)との混合物を不活性雰囲気下にて210℃まで加熱し、上記温度にて3日間にわたって十分に攪拌した。その混合物を室温まで冷却した。固化した融解生成物をクロロホルム(50mL)および水(50mL)に溶解させ、超音波槽にて5分間処理した。上記層を分離し、クロロホルム(3×50mL)を用いて水層を抽出した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5×50mL)、続けて水(3×50mL)を用いて1つにまとめた有機層を洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。溶媒を40℃で蒸発させ、退紅色の固体を得た。その生成物をさらなる精製をすることなく、次のステップに直接的に用いた。
【0156】
収量は、810mg(84%)であった。HPLC:98%。
【0157】
第6ステップ:7−(4−((6−(1,1−ジ(ピリジン−2−イル)エチル)ピリジン−2−イル)オキシ)フェニル)ジベンゾ−[c,h]アクリジン(21)の合成。全ての操作をアルゴン雰囲気下にて行った。
【0159】
不活性のアルゴン雰囲気下にて、19(700mg、1.9mmol、1当量)、炭酸カリウム(1.31g、9.5mmol、5当量)および20(531mg、1.9mmol、1当量)の混合物を圧力容器に入れた。上記容器を密封し、混合物を十分に攪拌しながら200℃まで加熱した。5日間にわたって上記温度にて反応させた後、混合物を室温まで冷却し、次いで氷水(300mL)に注いだ。水(2×50mL)を用いて上記圧力容器を洗い流し、ジクロロメタン(3×100mL)を用いてその溶液を抽出し、ほぼ無色の有機層を残した。その後、水(3×500mL)、続いて2Nの塩酸溶液(2×100mL)、そして再び水(300mL)を用いて、1つにまとめた有機層を洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、上記溶媒を40℃で真空下にて除去した。10分間攪拌しながら水(1000mL)を加えることによって、生成物を残った溶媒から沈殿させ、濾過によって分離し、水(500mL)を用いて洗浄し、真空乾燥器にて40℃で一晩にわたって乾燥させた。黄土色の固体(0.94g、収率78%、HPLC純度99.2%)を得ることができた。上記材料のさらなる精製は、勾配昇華(初期量:0.93g、昇華による収率:43%)によって行った。
【0160】
[誘電層(conductive layers)の実施例]
5%のW(hpp)
4(テトラキス(1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジナート)ジタングステン(II))が添加された、表1に記載の構造1の材料からなるドープ層の誘電性を室温にて測定したところ、1.39×10
−4S/cmであった。
【0161】
5%のW(hpp)4が添加された、表1に記載の構造18の材料からなるドープ層の誘電性を室温にて測定したところ、3×10
−7S/cmであった。
【0162】
5%のW(hpp)4が添加された、表1に記載の構造3の材料からなるドープ層の誘電性を室温にて測定したところ、1.2×10
−5S/cmであった。
【0163】
5%のW(hpp)4が添加された、表1に記載の構造2の材料からなるドープ層の誘電性を室温にて測定したところ、9.95×10
−6S/cmであった。
【0164】
[OLEDの実施例]
実施例1−3の化合物を電子伝達材料として連続的に用いた。デバイスの構造の例を以下に示す。
【0165】
[デバイス1]
OLEDを、以下の手順にて製造した:ITO(厚さ90nm、予めパターン化したもの)によって表面を覆われたガラス基板を、慣習的な超音波中における有機溶媒を用いて浄化した。その後、プラズマオゾン(ozone plasma)を用いて上記基板を5分間処理した。浄化後、上記基板を真空下に移した。慣習的なVTE(高真空熱蒸発(Vacuum thermal evaporation))によって、上記有機層を(底面圧が10
−3Paよりも低い)高真空下にて蒸着させた。蒸着させた範囲をシャドーマスクによって明確にし、ITO表面のいくつかの範囲は、(後の)測定のための電気接点を設けることができるように、何もしない状態のままにした。ITO層の上の有機層の順序は、以下の通りである:F4TCNQがドープされた厚さ50nmのNPD層;非ドープの厚さ10nmのNPD層、蛍光エミッタがドープされた20nmの青色エミッタホスト層(blue emitter host layer);10nmのETL(構造4)、(重量において5%の)W(hpp)
4がドープされた60nmのETL(構造4)。100nmのアルミニウム層を陰極として蒸着させた。上記OLEDは、3.59Vにて1000cd/m
2まで当到達した。
【0166】
[比較例]
下記の材料(14−(ナフタレン−2−イル)ジベンゾ[a,j]アクリジン(構造1b)を用いた。
【0168】
上記構造は、ほぼETLとしての化学材料であり、以下の性能が得られる。
【0169】
[デバイス2]
OLEDを、以下の手順にて製造した:ITO(厚さ90nm、予めパターン化したもの)によって表面を覆われたガラス基板を、慣習的な超音波中における有機溶媒を用いて浄化した。その後、プラズマオゾンを用いて上記基板を用いて5分間処理した。浄化後、上記基板を真空下に移した。慣習的なVTE(高真空熱蒸発)によって、上記有機層を(底面圧が10
−3Paよりも低い)高真空下にて蒸着させた。蒸着させた範囲をシャドーマスクによって明確にし、ITO表面のいくつかの範囲は、(後の)測定のための電気接点を設けることができるように、何もしない状態のままにした。ITO層の上の有機層の順序は、以下の通りである:F4TCNQがドープされた厚さ50nmのNPD層;非ドープの厚さ10nmのNPD層、蛍光エミッタがドープされた20nmの青色エミッタホスト層;10nmのETL(構造1b)、(重量において5%の)W(hpp)
4がドープされた60nmのETL(構造1b)。100nmのアルミニウム層を陰極として蒸着させた。上記OLEDは、4.25Vにて1000cd/m
2まで当到達した。
【0170】
構造1−33の化合物は、効果的に昇華し、デバイス試験では、OLEDにおける低い作動電圧、高い電力効率および長い寿命時間を示した。
【0171】
前述の説明および請求項において開示した特徴は、別々であっても、いずれかを組み合わせたとしても、どちらもそのデバイスの形態における発明を実現するための材料であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【
図1】典型的な低分子OLEDの例の断面図を示す。