(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014029
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】REIC発現アデノウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20161011BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20161011BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20161011BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
A61K48/00
A61K35/761
A61P35/00
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-516479(P2013-516479)
(86)(22)【出願日】2012年5月25日
(86)【国際出願番号】JP2012064250
(87)【国際公開番号】WO2012161352
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-117321(P2011-117321)
(32)【優先日】2011年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(73)【特許権者】
【識別番号】507365318
【氏名又は名称】桃太郎源株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】公文 裕巳
(72)【発明者】
【氏名】許 南浩
(72)【発明者】
【氏名】阪口 政清
(72)【発明者】
【氏名】渡部 昌実
【審査官】
厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−511014(JP,A)
【文献】
特表2006−507829(JP,A)
【文献】
特開2009−114103(JP,A)
【文献】
渡部昌実,超高効率遺伝子発現システムが拓く次世代遺伝子・タンパク質治療,日本泌尿器科学会雑誌,2011年 3月,Vol.102, No.2,p.218, フロンティア8-3
【文献】
KIM S. J. et al.,Preferentially enhanced gene expression from a synthetic human telomerase reverse transcriptase prom,Oncol. Rep.,2006年,Vol.16, No.5,p.975-9
【文献】
ABARZUA F. et al.,An N-terminal 78 amino acid truncation of REIC/Dkk-3 effectively induces apoptosis,Biochem. Biophys. Res. Commun.,2008年,Vol.375, No.4,p.614-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5'末端側から、
(i) CMVプロモーター;
(ii) 以下のREIC/Dkk-3 DNA:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA、
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(c) 配列番号1に表わされる塩基配列中の第1番目の塩基に始まり第117番目の塩基〜第234番目のいずれかの塩基に終わる塩基配列からなるポリヌクレオチド;又は
(d) 配列番号1に表わされる塩基配列中の第1番目の塩基に始まり第117番目の塩基〜第234番目のいずれかの塩基に終わる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(iii) polyA付加配列;並びに
(iv) hTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサー、
を上記の順序で連結した、REIC/Dkk-3 DNAを発現させるためのDNAコンストラクト。
【請求項2】
polyA付加配列がウシ成長ホルモン遺伝子由来のポリA付加配列である、請求項1記載のDNAコンストラクト。
【請求項3】
配列番号6に示す、(ii) REIC/Dkk-3 DNA、(iii) polyA付加配列、及び(iv) hTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサーを連結した塩基配列を含む、請求項1又は2に記載のDNAコンストラクト。
【請求項4】
以下の構造を有する、請求項
1〜
3のいずれか1項に記載のDNAコンストラクト:
【請求項5】
配列番号6に表される塩基配列を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のDNAコンストラクト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のDNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のアデノウイルスベクターを含む癌細胞死誘導剤。
【請求項8】
請求項6に記載のアデノウイルスベクターを含む腫瘍細胞増殖抑制剤。
【請求項9】
請求項6に記載のアデノウイルスベクターを含む癌治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロモーター、エンハンサー等を含み、REIC/Dkk−3タンパク質を高発現するアデノウイルスベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、遺伝子発現効率を上昇させるために、CMVプロモーターやCAGプロモーターなど様々な遺伝子発現プロモーターが開発されている(特許文献1〜4)。しかしながら、バイオテクノロジーの分野では、これらの従来技術を用いても、細胞の種類や遺伝子の種類によって、遺伝子発現がほとんど起こらない、又は発現タンパク質量が極めて少ないといった問題が日常的に発生している。また、この問題は、遺伝子発現を診断や治療に用いる医療の発展において、大きな障壁となっている。
一方、細胞の不死化に関連した遺伝子として、REIC/Dkk−3遺伝子が知られており、がん細胞ではこの遺伝子の発現が抑制されていることが報告されており、REIC/Dkk−3遺伝子を癌治療に用いることも報告されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公報第2814433号公報
【特許文献2】特許公報第2814434号公報
【特許文献3】米国特許第5168062号明細書
【特許文献4】米国特許第5385839号明細書
【特許文献5】国際公開第WO01/038523号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
本発明は、REIC/Dkk−3タンパク質を高発現するアデノウイルスベクターの提供を目的とする。
本発明者らは、REIC/Dkk−3遺伝子を癌の遺伝子治療に用いることについて検討を行ってきた。REIC/Dkk−3遺伝子を発現ベクターに組込み、生体内に投与することにより、癌治療に一定の効果を奏することを見出していた。本発明者らは、REIC/Dkk−3遺伝子を生体内においてより高発現させることにより、より癌の治療効果が高まる可能性を考慮し、より高発現させる方法について鋭意検討を行った。
本発明者は、プロモーターを利用した遺伝子発現システムにおいて、より高い効率で遺伝子を発現させることができる新しいシステムの開発を試み、様々な遺伝子のプロモーターやエンハンサーの組み合わせによるプロモーター活性の比較、検討を行った。
その結果、プロモーターとしてCMVプロモーターを用い、CMV(cytomegarovirus)プロモーターの下流にREIC/Dkk−3 DNAを連結し、該DNAの下流にpolyA配列を連結し、さらにその下流にhTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサーを連結したコンストラクトをアデノウイルスベクターに挿入し、該アデノウイルスベクターを生体に投与することにより、生体でREIC/Dkk−3遺伝子が著しく高発現し、著しく優れた癌治療効果を発揮することを見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 5’末端側から、
(i)CMVプロモーター;
(ii)以下のREIC/Dkk−3 DNA:
(a) 配列番号1に表される塩基配列からなるDNA、
(b) 配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(c) 配列番号1に表わされる塩基配列中の第1番目の塩基に始まり第117番目の塩基〜第234番目のいずれかの塩基に終わる塩基配列からなるポリヌクレオチド;又は
(d) 配列番号1に表わされる塩基配列中の第1番目の塩基に始まり第117番目の塩基〜第234番目のいずれかの塩基に終わる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(iii)polyA付加配列;並びに
(iv)hTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサーを連結した、REIC/Dkk−3 DNAを発現させるためのDNAコンストラクト。
[2] polyA付加配列がウシ成長ホルモン遺伝子由来のポリA付加配列(BGA polyA)である、[1]のDNAコンストラクト。
[3] 配列番号6に示す、(ii)REIC/Dkk−3 DNA、(iii)polyA付加配列、及び(iv)hTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサーを連結した塩基配列を含む、[1]又は[2]のDNAコンストラクト。
[4] [1]又は[2]のDNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクター。
[5] [4]のアデノウイルスベクターを含む癌細胞死誘導剤。
[6] [4]のアデノウイルスベクターを含む腫瘍細胞増殖抑制剤。
[7] [4]のアデノウイルスベクターを含む癌治療薬。
5’末端側から、(i)CMVプロモーター;(ii)REIC/Dkk−3 DNA;(iii)polyA付加配列;及び(iv)hTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサーを連結した、REIC/Dkk−3 DNAを発現させるためのDNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクターは生体中でREIC/Dkk−3 DNAを高発現し、CMVプロモーターやCAGプロモーターの下流にREIC/Dkk−3 DNAを連結し、上記エンハンサーを有しないDNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクターよりも高い発現を示し、癌選択的細胞死を誘導し、腫瘍増殖を抑制し得る。従って、本発明の上記アデノウイルスベクターはREIC/Dkk−3 DNAを用いた癌の遺伝子治療に好適に用いることができる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2011−117321号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1は、本発明のREIC/Dkk−3 DNA発現用コンストラクトの構造を示す図である。
図2は、本発明のREIC/Dkk−3 DNA発現用コンストラクトの塩基配列を示す図である。
図3は、作製した本発明のコンストラクトを含むアデノウイルスベクターのインサートの確認の結果を示す図である。
図4は、作製した本発明のコンストラクトを含むアデノウイルスベクターの構造確認の結果を示す図である。
図5は、精製した本発明のコンストラクトを含むアデノウイルスベクターの構造確認の結果を示す図である。
図6は、作製した本発明のコンストラクトを含むアデノウイルスベクターのRCA(Replication Competent Adenovirus)チェックの結果を示す図である。
図7は、種々のベクターを用いた場合のREIC−Dkk−3遺伝子発現の強さを示す図である。
図8は、種々のベクターを用いた場合の細胞死誘導の程度を示す図である。
図9は、種々のベクターを用いた場合の腫瘍増殖抑制効果を示す図である(その1)。
図10は、種々のベクターを用いた場合の腫瘍増殖抑制効果を示す治療後の腫瘍を示す図である。
図11は、種々のベクターを用いた場合の腫瘍増殖抑制効果を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、REIC/Dkk−3 DNAを含み、REICタンパク質の発現に用いることができるDNAコンストラクト(DNA構築物)であり、さらに該DNAコンストラクトを含む組換えアデノウイルスベクターである。本発明のDNAコンストラクトの構造を
図1に示す。
REIC/Dkk−3 DNAの塩基配列は、配列番号1に表される。また、REIC/Dkk−3 DNAがコードするREIC/Dkk−3タンパク質のアミノ酸配列は配列番号2に表される。本発明において、REIC/Dkk−3をREICと呼ぶこともある。
また、本発明のDNAコンストラクトに含まれるREIC/Dkk−3のDNAは、配列番号1に表される塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、配列番号1に表される塩基配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを用いて)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているDNA、又は前記DNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1又は複数若しくは数個(1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1個若しくは2個)のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAなどのうち、癌細胞の細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するタンパクをコードするものである。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、「1XSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5XSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2XSSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待し得る。ただし、上記のSSC、SDS及び温度の条件の組み合わせは例示であり、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーションの反応時間などを適宜組み合わせることにより、必要なストリンジェンシーを実現することが可能である。「ストリンジェントな条件」は、当業者ならば配列同一性が高いDNAがハイブリダイズする条件として適宜決定することができる。さらに、本発明のDNAコンストラクトに含まれるREIC/Dkk−3のDNAは、配列番号2に表されるタンパク質をコードするDNAである。
さらに、本発明のDNAコンストラクトが含有するREIC/Dkk−3 DNAは、該DNAの塩基配列の一部塩基配列からなる断片ヌクレオチドであって、癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するペプチドをコードするヌクレオチドも含まれる。このような断片ヌクレオチドは、全長REIC/Dkk−3 DNAを適当な部位で切断し、癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するかどうか測定することにより容易に得ることができる。このような断片ヌクレオチドとして、例えば、配列番号1に表わされるREIC/Dkk−3 DNAの塩基配列中の第1番目の塩基に始まり第117番目の塩基〜第234番目のいずれかの塩基に終わる塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに配列番号1に表わされるREIC/Dkk−3 DNAの塩基配列中の第1番目の塩基に始まり第117番目の塩基〜第234番目のいずれかの塩基に終わる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。配列番号1に表わされるREIC/Dkk−3 DNAの塩基配列中の第1番目の塩基に始まり第117番目の塩基〜第234番目のいずれかの塩基に終わる塩基配列からなるポリヌクレオチドとしては、第1番目の塩基から第117番目の塩基からなるポリヌクレオチド(配列番号3)又は第1番目から第234番目の塩基からなるポリヌクレオチド(配列番号4)が挙げられる。これらのポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが癌細胞死誘導活性及び/又は腫瘍細胞増殖抑制活性を有することは、例えば、特開2009−114103号公報に示される。
REIC/Dkk−3 DNAは、配列番号1の配列情報に基づいて、ヒト細胞、ヒト組織等から得ることができる。また、WO01/038523号公報の記載に従って得ることも可能である。
上記DNAコンストラクトは、REIC/Dkk−3 DNAの上流にCMV(cytomegarovirus)プロモーターが連結され、REIC/Dkk−3 DNAの下流に、ポリA付加配列(ポリアデニル化配列、polyA)が連結される。ポリA付加配列(ポリアデニル化配列、polyA)の由来は限定されず、成長ホルモン遺伝子由来のポリA付加配列、例えばウシ成長ホルモン遺伝子由来のポリA付加配列(BGA polyA)(配列番号5に示す塩基配列に含まれる(13番目の塩基以降の配列))やヒト成長ホルモン遺伝子由来ポリA付加配列、SV40ウイルス由来ポリA付加配列、ヒトやウサギのβグロビン遺伝子由来のポリA付加配列等が挙げられる。ポリA付加配列をDNAコンストラクトに含ませることにより、転写効率が増大する。さらに、該ポリA付加配列の下流にhTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMV(cytomegarovirus)エンハンサーをこの順で連結したもの(3×enh)が連結されている(
図2の「3×enh」部分に配列が示され、
図2の配列は配列番号6に示す)。すなわち、上記DNAコンストラクトは、5’末端側から(i)CMVプロモーター、(ii)REIC/Dkk−3 DNA、(iii)polyA付加配列、並びに(iv)hTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサーを連結したコンストラクトである。
上記の各エレメントは、機能的に連結している必要がある。ここで、機能的に連結しているとは、それぞれのエレメントがその機能を発揮して、発現させようとする遺伝子の発現が増強されるように連結していることをいう。
上記の発現用カセットは、例えば、市販のCMVプロモーターの下流に外来遺伝子挿入部位を含み、さらにその下流にBGA polyA配列を含むpShuttleベクター(Clonetech社)にREIC/Dkk−3 DNAを挿入し、さらにBGA polyA配列の下流にhTERT(Telomerase Reverse Transcriptase)エンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結することにより得ることができる。
本発明のREIC/Dkk−3 DNAを含むDNAコンストラクトのCMVプロモーターを除く部分の構造を
図2に示し、配列を配列番号6に示す。
図2中、REIC/Dkk−3 DNAと3×enhの間にBGA polyA配列が含まれる。本発明のREIC/Dkk−3 DNAを含むDNAコンストラクトは配列番号4に示す配列の上流(5’側)にCMVプロモーターを有する。
本発明の上記DNAコンストラクトは、アデノウイルスベクターに導入して用いる。本発明は上記のREIC/Dkk−3 DNAを発現させるための発DNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクターも包含する。本発明のDNAコンストラクトを含むベクターシステムをSGE(Super Gene Expression)システムと呼び、例えば、REIC/Dkk−3 DNA及びCMVプロモーターを含むDNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクターをAd−SGE−CMV−REICと呼ぶ。上記のDNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターに上記DNAコンストラクトを導入して組換えアデノウイルスを作製することにより得られる。アデノウイルスへのDNAコンストラクトの導入は、例えば上記の本発明のDNAコンストラクトを含むpShuttleベクター中のDNAコンストラクトをアデノウイルスに導入することにより行うことができる。
アデノウイルスベクターの特徴として、(1)多くの種類の細胞に遺伝子導入ができる、(2)増殖停止期の細胞に対しても効率よく遺伝子導入ができる、(3)遠心により濃縮が可能であり、高タイター(10〜11PFU/ml以上)のウイルスが得られる、(4)in vivoの組織細胞への直接の遺伝子導入に適している、といった点が挙げられる。
遺伝子治療用のアデノウイルスとしては、E1/E3領域を欠失させた第1世代のアデノウイルスベクター(Miyake,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,93,1320,1996)から、E1/E3領域に加え、E2もしくはE4領域を欠失させた第2世代のアデノウイルスベクター(Lieber,A.,et al.,J.Virol.,70,8944,1996;Mizuguchi,H.&Kay,M.A.,Hum.Gene Ther.,10,2013,1999)、アデノウイルスゲノムをほぼ完全に欠失させた(GUTLESS)第3世代のアデノウイルスベクター(Steinwaerder,D.S.,et al.,J.Virol.,73,9303,1999)が開発されているが、本発明に係る遺伝子を導入するには、特に限定されずいずれのアデノウイルスベクターでも使用可能である。
本発明のREIC/Dkk−3 DNAを含むDNAコンストラクトを含む組換えアデノウイルスベクターをヒトやその他の哺乳動物である被験体に投与することにより、被験体の癌細胞に癌治療用遺伝子がデリバリーされ、癌細胞中で遺伝子が発現し、癌細胞に選択的に細胞死を誘導し、及び/又は腫瘍細胞増殖を抑制し癌治療効果を発揮する。本発明は、このようなアデノウイルスベクターを含む癌治療用ウイルス製剤を包含する。治療対象となる癌としては、限定されないが、例えば、脳・神経腫瘍、皮膚癌、胃癌、肺癌、肝癌、リンパ腫・白血病、結腸癌、膵癌、肛門・直腸癌、食道癌、子宮癌、乳癌、副腎癌、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、骨・骨肉腫、平滑筋腫、横紋筋腫、中皮腫等が挙げられる。本発明のアデノウイルスベクターは原発性癌の治療にも転移性癌の治療にも用いることができる。さらに、上記アデノウイルスベクターを被験体に投与して癌を治療する方法も包含する。
本発明のアデノウイルスベクターは、遺伝子治療の分野において使用可能な方法、例えば、静脈内投与や動脈内投与などの血管内投与、経口投与、腹腔内投与、気管内投与、気管支内投与、皮下投与、経皮投与等により投与することができる。特に、本発明のアデノウイルスベクターは特定の組織、細胞への指向性が大きく、標的遺伝子を効率的に特定の組織、細胞へデリバリーすることができるので、血管内投与によっても、効率的に診断、治療を行うことができる。
アデノウイルスベクターは、治療上有効量を投与すればよい。治療上の有効量は、遺伝子治療分野の当業者であれば容易に決定することができる。さらに、投与量は、被験者の病態の重篤度、性別、年齢、体重、習慣等によって適宜変更することができる。例えば、アデノウイルスベクターを、0.5×10
11〜2.0×10
12viral genome/kg体重、好ましくは1.0×10
11〜1.0×10
12viral genome/kg体重、さらに好ましくは1.0×10
11〜5.0×10
11viral genome/kg体重の量で投与すればよい。viral genomeは、アデノウイルスのゲノムの分子数(ウイルス粒子数)を表し、particleということもある。製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤を含む。たとえば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、ステアリン酸マグネシウムなどが使用される。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが使用され、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン界面活性剤などと併用しても良い。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助斉助しては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0007】
pShuttle−REIC−TSCプラスミドの作製
ヒトREIC/Dkk−3遺伝子を外来遺伝子(挿入遺伝子)として含む本発明のDNAコンストラクトを作成した。用いたDNAコンストラクトは、市販のpShuttleプラスミドベクター(Clontech)のXba1−Kpn1の挿入部にREIC/Dkk−3タンパク質をコードするDNAを挿入し、さらに該REIC/Dkk−3タンパク質をコードするDNAの下流のKpn1−EcoR1の挿入部位に、3つのエンハンサー(hTERTエンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサー)(これらをTSCと呼ぶ)をBGH poly A+3つのエンハンサーの形で挿入して構築したコンストラクトであった(
図1)。
図2にREICをコードするDNAを挿入したコンストラクトの塩基配列を示す(CMVプロモーターの配列を除く)(配列番号6)。また、配列番号7に上記コンストラクトに含まれるBGH poly Aと3つのエンハンサーを含む領域の塩基配列を示す。
図2の塩基配列中の(1)及び(2)の枠で囲んだ部分は、それぞれREIC/Dkk−3タンパク質をコードするDNA及び3つのエンハンサー(3xenh)を示す。上記コンストラクトを含むpShuttleプラスミドベクターをpShuttle−REIC−TSCプラスミドと呼ぶ。
【実施例2】
【0008】
Ad−SGE−CMV−REICの作製
さらに、上記コンストラクトを含む組換えアデノウイルスベクターを作製した。
作製には、Adeno−X(商標)Expression System 1(TaKaRa Code.Z1513N)及びPlasmid Midi kit(QIAGEN Code.12143)を用いた。
図1に示すコンストラクトを含む組換えアデノウイルスベクターをAd−SGE−CMV−REICと呼ぶ。
1. Adeno−Xプラスミドの作製
pShuttle−REIC−TSCプラスミドを制限酵素PI−SceI,I‐CeuIにて消化し、目的遺伝子特異的な発現カセットを得た。Adeno−X Viral DNAにライゲーションし、SwaIでライゲーション産物を消化した。ライゲーション産物でelectro competent cell DH10Bを形質転換し、アンピシリン添加LB寒天培地にプレーティングした。得られたコロニーをピックアップし、Adeno−X System PCR Screening Priner Setで増幅し、電気泳動にて増幅バンドを確認した。目的遺伝子発現カセットを持つAdeno−XプラスミドDNAは287bpの増幅バンドが得られ、選択したコロニー#1,2,4,5,7は目的のプラスミドであることを確認した(
図3)。選択したコロニー#4について、クローニングサイトSwaIの上流および下流に構築されたプライマーを用いて、シークエンシングを行った。解析結果より、この組換えプラスミドは、正方向に目的遺伝子が挿入され、ライゲーション操作において余分な塩基の挿入や欠失はないことを確認した。
選択したクローン#4について、大腸菌にトランスフォームし、アンピシリンを含むLB培地で振とう培養を行った。翌日、培養菌体から、DNA精製キットによリプラスミドDNAを精製した。一部を制限酵素XhoI、PacIにて消化し、アガロースゲル電気泳動にて期待されるフラグメントサイズの泳動バンドを検出した(
図4)(XhoI消化:0.6kbp、1.4kbp、2.6kbp、8kbp、9kbp、14.5kbp
PacI消化:2.9kbp、33.3kbp)
これより拡大調製したクローンは、目的とする組換えプラスミドであることを確認した。
2. 組換えアデノウイルスの作製
(i) 1次ウイルスの作製
293細胞を1/10容FBS、終濃度2mML−グルタミン及び1/100容ペニシリン・ストレプトマイシン溶液含有DMEM培地にて6cmコラーゲンコートシャーレ1枚に100%コンフルエントまで培養し、制限酵素PacIで消化したAdenoX−REIC−TSCプラスミド5μgをTransIT−293を用いてトランスフェクションした。24時間後に培地交換を行い、13日目に細胞の変性を確認後、細胞を回収した。紳胞ペレットを培地にて均一に懸濁し、凍結融解を3回繰り返し、その遠心上清を各1次ウイルス液とした。
(ii) 2次ウイルスの作製
6cmコラーゲンコートシャーレに70%〜100%コンフルエントまで培養した293細胞に1次ウイルス液を感染させた。ウイルス感染時は1/20容FBS、終濃度2mML−グルタミン及び1/100容ペニシリン・ストレプトマイシン溶液含有DMEM培地を使用した。293細胞の変性を確認した後、細胞を回収し、凍結融解を3回繰り返し、その遠心上清を2次ウイルスとした。
(iii) 3次ウイルスの作製
T−75コラーゲンコートフラスコに70%〜100%コンフルエントまで培養した293細胞に2次ウイルスを感染させた。293細胞の完全変性を確認後、培養液ごと細胞を回収し、超音波処理後、遠心上清を3次ウイルスとした。1mL/バイアルに分注し、ドライアイスで急凍結後、−80℃に保管した。
3. 精製組換えアデノウイルスの調製方法
(i) 拡大調製
293細胞を多重層型細胞培養フラスコにコンフルエントになるまで培養した。3次ウイルスをAdeno−X(商標)−Rapid Titer Kitを用いて力価を確認し、293細胞に至適条件にて感染した。293細胞の完全変性を確認後、細胞を回収し、凍結融解液の遠心上清をウイルス液とした。
(ii) 塩化セシウム密度勾配遠心法による精製
超遠心チューブにて塩化セシウム溶液及び上記(i)で得られたウイルス液を重層し、4℃、25,000rpmにて2時間遠心した。形成されたウイルスバンドを回収し、更に、塩化セシウム溶液を加え、4℃、35,000rpmにて3時間、超遠心分離して、形成されたウイルスバンドを回収した。2度の超遠心で回収したウイルス液を透析カセットにて、10%グリセロール含有PBS(‐)に透析した。透析回収液を0.5mLずつ分注し、−80℃で凍結保存した。
4. 精製組換えアデノウイルスの品質検査
(i) 力価測定(TCID
50法)
精製ウイルス液を培地にて1×10
6倍希釈した。これをコラーゲンコート96wellプレートで3倍ずつ11段階希釈し、等量の293細胞懸濁液50μLを添加し、培養した。コントロールは298細胞懸濁液と培地のみを加えて培養した。14日目に顕微鏡下肉眼観察にて細胞変性の終末点を判定し、下に示すKaberの式を用いて50%細胞変性終末点(TCID
50)を計算した(表1)。本法で算出したTCID
50の値とpfuはよく一致するため、1TCID
50=1pfuとした。
Kaberの式
TCID
50= (1列目の希釈率) × (系列希釈倍率)Σ
−05
ただしΣ=各希釈段階における(変性ウエル数)/(検体数)の総和
【表1】
(ii) 構造確認
コラーゲンコート24ウェルプレートにて70%〜100%コンフルエントに培養した293細胞に、精製ウイルス液をPBSで10倍希釈を行ったウイルス液を1μLを感染させた。細胞が完全に変性していることを確認した後、細胞を回収し、総DNAを抽出調製し、制限酵素XhoIで消化してアガロースゲル電気泳動を行った。期待されるフラグメントサイズ0.6kbp、1.44kbp、2.46kbp、6.1kbp、8kbp、14.5kbpを検出し、目的サイズのDNA断片が挿入されていることを確認した(
図5)。
(iii) RCA(Replication Competent Adenovirus)チェック(PCR法)
24ウェルプレートにて70%〜100%コンフルエントに培養したHeLa細胞に、精製ウイルス液をPBSで10倍希釈を行ったウイルス液を1μL感染させ、3日後、細胞を回収して総DNAを調製した。抽出DNAを鋳型にE1A遺伝子検出プライマーsense:5’−ATGAGACATATTATCTGCCAC−3(配列番号8)及びantisense :5’−GTAAGTCAATCCCTTCCTGCAC−3’)(配列番号9)を用いてPCRを行った。その結果、本プライマーで増幅される240bpのE1遺伝子のバンドはいずれのウイルスサンプルにおいても検出されなかったため、RCAの混入はないと判断した(
図6)。
【実施例3】
【0009】
Ad−SGE−CMV−REICを用いての細胞におけるREICタンパク質の発現
PC3細胞又はHeLa細胞に、実施例2で作製した組換えアデノウイルスベクターAd−SGE−CMV−REIC及びREIC/Dkk−3 DNAの上流にCMVプロモーターのみを挿入し3×enhを有しないコンストラクトを有する組換えアデノウイルスベクター(Ad−CMV−REIC)を10MOI(multiplicity of infection)で無血清培地中にて2時間処理しトランスフェクトし、12時間後に細胞内でのヒトREICタンパク質の発現をウエスタンブロットで検出した。
結果を
図7に示す。図に示すように、Ad−SGE−CMV−REICを用いた場合にAd−CMV−REICを用いた場合に比べ、REIC遺伝子の発現が著しく増強された。
この結果は、Ad−SGE−CMV−REICを用いた場合、従来のAd−CMV−REICを用いた場合と比べて、ヒトの癌治療において、同じ投与量(viral particle)での治療効果(抗腫瘍効果)の増大が期待でき、さらにアデノウイルスベクターの投与量を減らすことにより、従来と同等の効果での副作用の軽減が期待できることを示す。
【実施例4】
【0010】
Ad−SGE−CMV−REICによる細胞死誘導
in vitroにおける細胞死誘導を調べるために、細胞を平底6ウェルプレートに播き24時間培養した。細胞をAd−SGE−CMV−REIC、Ad−CMV−REIC及びREIC/Dkk−3 DNAの上流にCMVエンハンサーとニワトリβ−アクチンプロモーターを連結させた構造を有するCAGプロモーターのみを挿入し3×enhを有しないコンストラクトを有する組換えアデノウイルスベクター(Ad−CAG−REIC)を50MOI(multiplicity of infection)で無血清培地中にて2時間処理しトランスフェクトした後、新鮮完全培地に交換した。LacZ遺伝子を含むアデノウイルスベクター(Ad−LacZ)を対照として用いた。48時間のインキュベーション後、Hoechst33342ストック溶液を2μg/mlの濃度で添加し、細胞を暗条件下で10分間インキュベーションした。Hoecht33342は、インタキレーター染色試薬であり、クロマチンの総量とクロマチンの凝縮程度を調べることができる(Belloc F et al.,Cytometry 1994;17:59−65、Maciorowski Z et al.,Cytometry 1998;32:44−50)。蛍光顕微鏡を用いて高度に凝縮し分断した核を有する細胞死が認められた細胞を同定した。細胞死が認められた細胞は、顕微鏡下で3〜5の異なる視野において計数した。
in vivoで細胞死が認められた細胞を検出するために、In situ Cell Detection Kit,Fluorescein(Roche)を用いてTUNEL(terminal deoxynucleotidyltransferase−mediated UTP end labeling)アッセイを行った。すなわち、腫瘍組織を切断し、OCT化合物中に入れ、液体窒素中で急速凍結した。凍結切片(10μm)サンプルをメタノールを用いて30分室温で固定し洗浄し、0.1%Triton X−100を含むPBSを浸透させ、TUNEL反応混合液で染色した。
図8にそれぞれの組換えアデノウイルスを用いた各細胞の細胞死誘導率(%)を示す。図に示すように、Ad−SGE−CMV−REICを用いた場合に、他の組換えアデノウイルスを用いた場合に比べ、著しく高い細胞死誘導率(%)が得られた。
【実施例5】
【0011】
Ad−SGE−CMV−REICの腫瘍増殖抑制効果(その1)
BALB/Cマウス、雌(6〜8週齢)、1群4匹、治療を開始する7日前(Day[−7])に、2×10
5個のRENCA細胞(マウス腎癌由来細胞)を右大腿部に皮下注入した。0日目(Day0)に、それぞれのマウスで腫瘍が認められ、0日目(Day0)、5×10
9のviral particle/100μL(Ad−SGE−CMV−REIC、Ad−CMV−REIC又はAd−CAG−REIC)を含むPBSを腫瘍内に注入した。LacZ遺伝子を含むアデノウイルスベクター(Ad−LacZ)を対照として用いた。また、陰性対照として、同量のPBSを注射した。腫瘍の大きさを2週間に1度測定した。腫瘍体積は実験により導き出した式(1/2×(w1×w2×w2);w1は腫瘍の最大径、w2は腫瘍の最小径を表す)により計算した。
結果を
図9に示す。図に示すようにAd−SGE−CMV−REIC治療群において、他の4群と比べて、有意に低い腫瘍体積を示し、他の4群と比べて、最も強い腫瘍増殖抑制効果を認められた。
さらに、それぞれの治療群で、14日目(Day14)に皮下腫瘍を摘出した、代表的な2匹の腫瘍の写真を
図10に示す。
図10からもAd−SGE−CMV−REIC治療群において、他の4群と比べて、有意に低い腫瘍体積であることがわかる。
【実施例6】
【0012】
Ad−SGE−CMV−REICの腫瘍増殖抑制効果(その2)
BALB/Cマウス、雌(6〜8週齢)、1群4〜5匹、治療を開始する7日前(Day[−7])に、2×10
5個のRENCA細胞(マウス腎癌由来細胞)を右大腿部に皮下注入した。0日目(Day0)に、それぞれのマウスで腫瘍が認められ、0日目(Day0)、1×10
9のviral particle/100μL(Ad−SGE−CMV−REIC、Ad−CMV−REIC又はAd−CAG−REIC)を含むPBSを腫瘍内に注入した。LacZ遺伝子を含むアデノウイルスベクター(Ad−LacZ)を対照として用いた。また、陰性対照として、同量のPBSを注射した。腫瘍の大きさを2週間に1度測定した。腫瘍体積は実験により導き出した式(1/2×(w1×w2×w2);w1は腫瘍の最大径、w2は腫瘍の最小径を表す)により計算した。
結果を
図11に示す。図に示すようにAd−SGE−CMV−REIC治療群において、他の4群と比べて、有意に低い腫瘍体積を示し、他の4群と比べて、最も強い腫瘍増殖抑制効果を認められた。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明のREIC/Dkk−3 DNAを含むDNAコンストラクトを含むアデノウイルスベクターは癌治療薬として用いることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0014】
配列番号8及び9 プライマー
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]