(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014043
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】トレーラ型重車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20161011BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20161011BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20161011BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20161011BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C9/18 G
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/00 C
B60C11/12 B
B60C11/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-540370(P2013-540370)
(86)(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公表番号】特表2013-543815(P2013-543815A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】EP2011070970
(87)【国際公開番号】WO2012069603
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】1059708
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ベション エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】フーシェ ブノワ
【審査官】
森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−048113(JP,A)
【文献】
米国特許第05622575(US,A)
【文献】
特許第5400610(JP,B2)
【文献】
特開2005−028999(JP,A)
【文献】
特開2007−137411(JP,A)
【文献】
特開2012−011894(JP,A)
【文献】
特表2013−525194(JP,A)
【文献】
特開2012−035652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00−11/24
B60C 5/00
B60C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ(1)であって、前記タイヤ(1)は、半径方向外側にクラウン補強材(3)を載せたカーカス補強材(2)を有し、前記クラウン補強材は、少なくとも2枚の実働プライ(31,32)を含み、前記クラウン補強材の幅Ltは、軸方向最も幅の狭い実働プライの幅に等しく、前記クラウン補強材(3)には半径方向外側にトレッド(「キャップ」とも呼ばれている)(10)が載せられ、前記キャップと前記クラウン補強材(3)との間にはサブレーヤ(「ベース」とも呼ばれている)(6)が半径方向に介在して設けられ、前記ベース(6)は、前記クラウン補強材の幅Lt以上の全幅にわたって前記キャップ全体の軸方向且つ半径方向に延びると共に前記クラウン補強材の半径方向外側に延び、赤道面が前記キャップを軸方向に同一軸方向幅の外側キャップ半部(TE)と内側キャップ半部(TI)に分割し、前記外側キャップ半部(TE)は、車両の軸方向外側寄りに位置決めされると共に前記内側キャップ半部(TI)は、前記車両の軸方向内側寄りに位置決めされるようになっており、前記キャップ(10)は、厚さEを有し、トレッド表面(100)が路面に接触するようになっており、新品状態では、前記キャップの前記厚さEの30%以上の厚さにわたって非対称トレッドパターンを備え、前記トレッドパターンは、前記内側キャップ半部(TI)と比較して高い機械的剛性を前記外側キャップ半部(TE)に与えている、タイヤにおいて、
・前記ベース(6)は、前記内側キャップ半部(TI)の下に半径方向に位置決めされた追加の体積部(6−A)を有し、前記追加の体積部により、前記内側キャップ半部(TI)の下に半径方向に前記ベースによって占められた体積が前記外側キャップ半部(TE)の下に半径方向に前記ベースによって占められた体積よりも大きくなり、
・前記ベース(6)の構成材料は、前記キャップ(10)を構成するゴムを主成分とする材料のヒステリシスよりも低いヒステリシスを有するゴムを主成分とする組成物である、トレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ。
【請求項2】
前記内側キャップ半部(TI)中の前記ベースにより占められた体積は、前記外側キャップ半部(TE)中の前記ベースによって占められた体積よりも前記ベース(6)の全体積の50%以上大きい、請求項1記載のトレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ。
【請求項3】
前記キャップ(10)を構成する組成物のヒステリシスと前記ベース(6)を構成する組成物のヒステリシスの差は、規格ASTM・D・5992−96に従って定められた測定条件下において0.05以上であり、前記ヒステリシスの差は、前記組成物に関するtanδ値相互間の差として表される、請求項1又は2記載のトレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ。
【請求項4】
前記キャップ(10)を構成する組成物に関するtanδ値と前記ベース(6)を構成する組成物に関するtanδ値との差は、規格ASTM・D・5992−96に従って定められた測定条件の下で0.15以上である、請求項1乃至3の何れか1項に記載のトレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ。
【請求項5】
前記内側部分(TI)と前記外側部分(TE)との間のベースの前記追加の体積部(6−A)は、前記キャップの内側に位置した前記クラウン補強材(3)の端部(3−I)の半径方向外側に且つ前記端部(3−I)の軸方向各側に配置されている、請求項1乃至4の何れか1項に記載のトレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ。
【請求項6】
前記内側キャップ半部(TI)上のベースの前記追加の体積部(6−A)は、前記クラウン補強材(3)の前記内側端部(3−I)の軸方向各側に且つ前記内側端部(3−I)の各側で15mm以上の幅にわたって延びるよう位置決めされている、請求項5記載のトレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ。
【請求項7】
前記キャップの前記内側部分(TI)と前記外側部分(TE)は、全体として円周方向の向きの溝(5)によって隔てられ、前記溝(5)は、2つのエッジコーナー部(51,52)、即ち、軸方向外側エッジコーナー部(51)及び軸方向内側エッジコーナー部(52)に沿って前記トレッド表面(100)と交差し、
・前記キャップの前記外側部分(TE)は、円周方向において、新品状態ではトレッド表面上に開口した溝又は空所のない円周方向幅D11及び軸方向幅LEの剛性ストリップ(11)と円周方向幅D12及び軸方向幅LEの可撓性ストリップ(12)とを連続して配置したものから成り、前記可撓性ストリップ(12)は、前記可撓性ストリップの円周方向幅D12全体にわたって延びた溝(121)を有し、
・前記剛性ストリップ(11)は、前記外側部分(TE)の軸方向幅LEの7%以上の円周方向幅D11を有する、請求項1乃至6の何れか1項に記載のトレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重車両用タイヤ、特にトレーラ型の車両用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、重車両、特にトレーラ用のタイヤは、ビード内に繋留されたカーカス補強材を有し、これらビードは、取り付けリムと接触関係をなすようになっている。カーカス補強材の半径方向外側には通常、複数枚の補強プライ(これらが特にタイヤを膨らませた結果として生じる力の吸収に貢献する限り「実働プライ(working ply )」と呼ばれる)で構成されたクラウン補強材が載せられている。このクラウン補強材の半径方向外側には、運転中、路面に接触するようになったトレッド又はキャップが載せられている。さらに、キャップとクラウン補強材との間にゴム層(「サブレイヤ」又は「ベース」と呼ばれる)を半径方向に位置決めすることが慣例である。このベースは、少なくとも、クラウン補強材の軸方向外側の端部を覆い、タイヤの赤道面まで延びるのが良い。
【0003】
したがって、上述のベースは、キャップの一部をなしておらず、このことは、ベースが走行中、摩耗層として役立たず、クラウン補強材の端部の近くでクラウン補強材とキャップとの間に位置していることを意味している。プライの端部領域が変形を受け、それにより近くの材料が発熱することが知られている。プライの端部の近くでの温度の上昇を制限するため、キャップの構成材料よりも低いヒステリシスを有する材料で作られたベースがこれらプライの半径方向頂部上に位置決めされる。この低いヒステリシスにより、クラウン補強材の軸方向端部の半径方向頂部上での熱の形態で散逸されるエネルギーの量は、直接クラウン補強材に接触する同一キャップの場合に消散される熱と比較して少ない。最も敏感な領域、即ち、この領域が軸方向に幅の最も狭い実働プライの端部の近くに位置しているときに温度上昇が最も顕著である領域は、ベースの最大厚さを受け入れる領域である。同時に、ベースは、攻撃及び酸化に対してクラウン補強材を保護する。
【0004】
軸方向外側端部の近くのところのクラウン補強材の温度を調節するには、これら端部のところでのベースの厚さを変更するのが良く、本明細書において、ベースの厚さという用語は、軸方向に最も短い実働プライの端部について測定された材料の厚さである。
【0005】
製造にあたり、ベースは、一般に、同時押し出し法を用いてベースをキャップと組み合わせることによって形成される。
【0006】
定義
【0007】
ブロックは、キャップ上に形成されていて、空所又は溝によって画定された隆起要素であり、この隆起要素は、側壁及び路面に接触するようになった接触フェースを有する。リブは、同一方向に延びる2本の溝により画定された隆起要素であり、リブは、2つの側壁及び接触フェースを有する。
【0008】
本明細書では、半径方向は、タイヤの回転軸線に垂直な方向を意味している(この方向は、トレッドの厚さの方向に一致している)。
【0009】
軸方向は、タイヤの回転軸線に平行な方向を意味している。
【0010】
円周方向は、軸方向と半径方向の両方向に垂直な方向を意味しており、この円周方向は、中心が回転軸線上に位置した円の接線方向である。
【0011】
軸方向外側という表現は、タイヤの内部空所の外側の方へ向いた方向を意味している。
【0012】
赤道面は、回転軸線に垂直であり且つタイヤの軸方向最も外側の箇所を通る平面であり、この赤道面は、事実上、タイヤを2つの実質的に等しい半部に分割している。
【0013】
タイヤのキャップの軸方向内側寄りという表現は、タイヤが重車両のアクスルに取り付けられたとき、車両の方に向いたキャップの側に相当している。
【0014】
トレーラ型の重車両(かかる車両は、アクスルが舵取りアクスルではなく本質的に荷重支持又は耐力アクスルである車両を意味している)用のタイヤは、使用中、タイヤの軸方向内側寄りに位置したクラウン補強材のエッジの付近に損傷を示す場合があることが判明しており、なお、このタイヤのキャップは、単一の材料で作られている。この潜在的な損傷は、この内側の高い動作温度の発生を招き、確かに、トレーラ型の車両に取り付けられた状態で走行しているとき、同じタイヤの内側と外側では3℃オーダの違いが存在することが判明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、使用中のこの種の応力に対して構造的にそれほど敏感ではなく、しかもこの種の損傷を回避することができるトレーラ型の重車両用タイヤを提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のため、本発明の要旨は、トレーラ型の重車両に取り付けられるようになったタイヤであって、タイヤは、半径方向外側にクラウン補強材を載せたカーカス補強材を有し、クラウン補強材は、少なくとも2枚の実働プライを含み、クラウン補強材の幅Ltは、軸方向最も幅の狭い実働プライの幅に等しく、クラウン補強材には半径方向外側にトレッド(「キャップ」とも呼ばれている)が載せられ、キャップとクラウン補強材との間にはサブレーヤ(「ベース」とも呼ばれている)が半径方向に介在して設けられ、ベースは、クラウン補強材の幅Ltに少なくとも等しい全幅にわたってキャップ全体の軸方向且つ半径方向に延びると共にクラウン補強材の半径方向外側に延び、赤道面がキャップを軸方向に同一軸方向幅の外側キャップ半部と内側キャップ半部に分割し、外側キャップ半部は、車両の軸方向外側寄りに位置決めされると共に内側キャップ半部は、車両の軸方向内側寄りに位置決めされるようになっている形式のタイヤにある。さらに、キャップは、厚さEを有し、路面に接触するようになったトレッド表面を有する。このキャップは、内側キャップ半部(TI)と比較して高い機械的剛性を外側キャップ半部(TE)に与えるよう新品状態では少なくともキャップの厚さEの30%に等しい厚さにわたって非対称トレッドパターンを備える。このタイヤは、内側キャップ半部の下に半径方向に位置決めされた追加の体積部を有し、内側キャップ半部の下に半径方向にベースによって占められた体積が外側キャップ半部の下に半径方向にベースによって占められた体積よりも大きく、ベースの構成材料としての第2の組成物がキャップの構成材料としての第1の組成物のヒステリシスよりも低いヒステリシスを有する組成物である。
【0017】
ベースの追加の体積部は、タイヤの周りにぐるりと均等に且つ一貫して分布して配置されている。
【0018】
「少なくともキャップの全厚Eの30%に等しい厚さにわたる非対称トレッドパターン」という表現は、本明細書では、キャップが考慮されている側(内側又は外側)に応じて互いに異なるトレッドパターンを備えた新品状態で提供されていることを意味するものと理解されるべきであり、この非対称トレッドパターンは、少なくともキャップの全厚の30%の厚さにわたって存在する。内側キャップ半部(TI)の機械的剛性と比較して外側キャップ半部(TE)の機械的剛性を差別化するため、特に、これらキャップ半部の各々の溝‐空所比を区別することが可能であり、一方のキャップ半部の空所の容積を増大させることにより、このキャップ半部の機械的剛性を減少させる。機械的剛性という用語は、本明細書では、特にコーナリングの際の横方向に加わる応力(回転軸線に平行である)を受ける各キャップ半部の剛性を意味している。
【0019】
このキャップは、高い剛性を与えるよう少なくともキャップの厚さEの30%に等しい厚さにわたって非対称トレッドパターンを備えた新品状態で提供される。
【0020】
本発明のキャップにより、短い実働プライの軸方向端部のところでベースの体積を軸方向に適合させることによってエッジ領域、特に内側に位置した領域における使用中の温度レベルを適合させることが可能である。
【0021】
組成物のヒステリシスは、タイヤの転がり抵抗の公認の指標であり、特に、ヒステリシスの低い組成物は、この組成物を含むタイヤに関して転がり抵抗が低いということと同義であり、従って、かかるタイヤを履いた車両のエネルギー消費量が減少するということと同義であると考えられることを思い起こされたい。タイヤの転がり抵抗は、タイヤを路面上で運動させるためにタイヤに供給されなければならないエネルギーの量の尺度である。
【0022】
ゴム組成物の動的特性ΔG
*及びtan(δ)
maxは、規格ASTM・D・5992‐96に従って粘弾性分析装置(Metravib VA4000)で測定される。60℃において10Hzの周波数で単純な交番正弦波剪断応力を受けた加硫組成物の試験片(厚さ4mm、断面積400mm
2の円筒形試験片)の応答を記録する。変形スイープの振幅は、0.1%から50%までの範囲で上下し(外向きサイクル)次に50%から1%までの範囲で上下する(戻りサイクル)。活用される結果は、複合動的剪断弾性率(G
*)及びロスファクタ(tanδ)である。戻りサイクルに関し、tanδの観察最大値(tan(δ)
max)及び複合弾性率(ΔG
*)に関して0.1%変形率と50%変形率での値の差として(ペイン効果(Payne effect))が示される。
【0023】
第1の組成物(キャップ)及び第2の組成物(ベース)に関するtanδ値相互間の差は、少なくとも0.05に等しい。好ましくは、この差は、少なくとも、0.15に等しい。
【0024】
本明細書において説明する尺度は、キャップそれ自体が特にヒステリシスの面で互いに異なる少なくとも2つの組成物層の重ね合わせで形成されている場合に当てはまる。かかる場合、ベースの構成材料のヒステリシスは、キャップの組成物のヒステリシスのうちで最も低いヒステリシスよりも低いとみなされる。
【0025】
好ましくは、内側キャップ半部中のベースにより占められた体積は、外側キャップ半部中のベースによって占められた体積よりもベースの全体積の少なくとも50%だけ大きい。
【0026】
有利には、本発明のタイヤは、軸方向幅Ltのクラウン補強材を有し、このクラウン補強材は、2つの端部、即ち、外側キャップ半部と同一の側に位置した外側端部及び内側キャップ半部と同一の側に位置した内側端部を有し、このタイヤは、内側キャップ半部と外側キャップ半部との間のベースの追加の体積部が内側キャップ半部と同一の場合に位置したクラウン補強材の内側端部の外側に半径方向に且つかかる内側端部の各側で軸方向に配置されているようなものである。
【0027】
さらにより好ましくは、内側キャップ半部上のベースの追加の体積部は、クラウン補強材の内側端部の軸方向各側に且つ内側端部の各側で少なくとも15mmに等しい幅にわたって延びるよう位置決めされる。
【0028】
有利には、本発明の上述の特徴を非対称であり、即ち、隆起パターンが赤道面の各側で互いに異なる状態で配置されているキャップトレッドパターンと組み合わせることができる。
【0029】
かくして、トレッドパターンが軸方向内側に位置したキャップ半部と比較して、軸方向外側に位置したキャップ半部についてキャップに大きな機械的剛性を与え、この非対称設計を外側キャップ半部中のベースにより占められる体積よりも大きな内側キャップ半部中のベースの体積と組み合わせるようにすることが有利であり、ベースの構成材料は、キャップの構成材料としてのゴムを主成分とする材料のヒステリシスよりも低いヒステリシスを有するゴムを主成分とする組成物である。
【0030】
本発明の特に有利な一変形形態では、キャップは、軸方向幅LEの外側部分及び軸方向幅LIの内側部分を形成するよう少なくともキャップの全厚Eの30%に等しい厚さにわたって非対称設計のトレッドパターンを備える。本願では、軸方向幅という表現は、タイヤの回転軸線に平行な方向に測定した寸法を意味している。外側部分は、タイヤを車両に取り付けたときにこの車両の軸方向外側寄りに位置するようになっており、内側部分は、この車両の内側寄りに位置した外側部分の軸方向連続部をなしている。
【0031】
さらに、内側部分と外側部分は、全体として円周方向の向きの溝によって隔てられ、溝は、2つのエッジコーナー部、即ち、軸方向外側エッジコーナー部及び軸方向内側エッジコーナー部に沿ってトレッド表面と交差している。
【0032】
このキャップは、更に、
‐キャップの外側部分が円周方向において円周方向幅D11(円周方向に測定される)及び軸方向幅LEの複数の剛性ストリップと円周方向幅D12及び軸方向幅LEの複数の可撓性ストリップを交互に配置したものから成るようなものである(可撓性ストリップの円周方向側面には2つの剛性ストリップが位置している)。
【0033】
剛性ストリップには、新品状態ではトレッド表面上に開口している溝及び/又は空所がなく、可撓性ストリップは、これらストリップの円周方向幅D12全体にわたってぐるりと延びる溝を有している。剛性ストリップは、外側部分(TE)の軸方向幅LEの少なくとも7%に等しい円周方向幅D11を有する。
【0034】
本明細書では、ストリップは、実質的に本発明のトレッドパターンが形成されている厚さに等しい厚さを有する平行六面体形状のキャップの形態をした体積部分を意味している。
【0035】
本明細書におけるストリップの円周方向幅は、円周方向に測定したストリップの寸法を意味している。
【0036】
好ましくは、外側部分の軸方向幅LE(キャップの軸方向エッジとキャップの外側部分を内側部分から隔てる溝のエッジコーナー部、即ち、キャップの軸方向エッジの最も近くに位置するエッジコーナー部との間で測定される)は、少なくとも、キャップの全軸方向幅Wの40%に等しい。この全軸方向幅Wは、タイヤの通常の使用条件下における接触パッチ中のフットプリントの最大幅に一致し、この幅は、軸方向に測定される。
【0037】
タイヤは、このトレッドパターンとの組み合わせにおいて、キャップ全体の下に軸方向且つ半径方向に、しかも少なくともクラウン補強材の幅に等しい全幅にわたってクラウン補強材の外側まで半径方向に延びるベースを有し、このベースは、キャップの内側部分中の追加の体積部から成り、このベースは、キャップを構成する組成物のヒステリシスよりも低いヒステリシスを有する組成物で形成される。
【0038】
さらにより好ましくは、外側部分の軸方向幅LEは、せいぜい、キャップの全軸方向接触幅Wの80%に等しい。
【0039】
好ましくは、剛性ストリップの円周方向幅D11は、少なくとも、これら剛性ストリップの軸方向幅LEの15%に等しい。
【0040】
かかるトレッドパターンは、新品状態のキャップのトレッド表面の端から端まで且つこのキャップの全厚の少なくとも30%に等しい深さにわたってキャップ上に作られる。キャップの厚さは、このキャップを備えたタイヤが更生(リトレッド)のために取り外されなければならず又は永続的に取り外されるまで、走行中、摩耗するようになった材料の厚さに等しい。好ましくは、この深さは、キャップの全厚の少なくとも50%に等しい。当然のことながら、このトレッドパターンをキャップの全厚E全体にわたって作ることができる。
【0041】
本発明の別の特徴及び別の利点は、添付の図面を参照して以下に与えられる説明から明らかになろう。なお、添付の図面は、本発明の要旨である幾つかの実施形態を非限定的な例として示している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】非対称キャップトレッドパターンを有するタイヤの変形形態の断面図である。
【
図4】
図3のIV‐IV線に沿って取った断面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図を解釈しやすくするために、同一の参照符号が本発明の変形形態を説明するために用いられており、これら参照符号は、構造又は機能が性質上同一である要素を指示している。
【0044】
図1は、トレーラ型の車両に取り付けられる本発明の重車両用タイヤ1の一部の概略断面図である。このタイヤ1は、図示されていないビード相互間に延びるカーカス補強材2を有し、このカーカス補強材2は、半径方向にクラウン補強材3が載せられており、クラウン補強材それ自体にはキャップ10が載せられている。
【0045】
キャップ10は、半径方向外側に位置したトレッド表面又は踏み面100を有し、このトレッド表面100は、道路上を運転している間、路面に接触するようになっている。
クラウン補強材3は、図示の場合、実働プライ31,32と呼ばれる2枚のプライを有し、これら実働プライは、各プライ内に、相互に平行である補強材を備え、これら補強材は、一方のプライと他方のプライとの間でクロス掛け関係をなしている。これら実働プライ31,32は、内部タイヤインフレーション圧力の差異により生じる引っ張り荷重を吸収するようになっている。クラウン補強材3には2枚の実働プライの半径方向外側に、運転中、外部からの攻撃に対して実働プライを保護するようになった保護プライ33と呼ばれるプライが補足的に取り付けられている。この場合、最も外側寄りの実働プライ32は、2枚の実働プライのうちの軸方向に幅の狭いものであり、実働プライ32は、クラウン補強材3の軸方向幅を定める幅Ltを意味している。クラウン補強材3は、円周方向に連続しており、このクラウン補強材は、この幅Ltにより互いに隔てられた2つの軸方向端部3‐I,3‐Eを有し、端部3‐Iは、赤道面(この
図1ではその線XX′により示されている)に対して軸方向内側に位置するようになっている。
【0046】
図示の場合、直線XX′により示された赤道面は、キャップを備えたタイヤが車両に取り付けられたとき、このキャップを2つのキャップ半部、即ち、トレーラ車両の外側寄りに位置決めされるようになった第1のキャップ半部TE(この第1のキャップ半部は、外側キャップ半部と呼ばれる)及び同一車両の内側寄りに位置決めされるようになった第2のキャップ半部TI(この第2のキャップ半部は、内側キャップ半部と呼ばれる)に分割する。
【0047】
この
図1は、クラウン補強材3の半径方向内側に、それ自体第2の実働プライよりも僅かに幅の広い第1の実働プライ31の実質的に幅全体にわたって軸方向に延びるベース6が設けられていることを示している。このベース6は、キャップ10の下に半径方向に位置決めされ、キャップ10はそれ自体、ベースの軸方向各側で延びている。ベース6は、赤道面に対して軸方向外側に位置した部分6‐E及び同じ赤道面に対して軸方向内側に位置した部分6‐Iを有している。ベース6は、内側キャップ半部TIの半径方向内側に位置したその部分6‐Iを除き、事実上その全幅にわたって実質的に一定の厚さE6で位置している。具体的に言えば、この部分TIでは、ベース6は、第2の実働プライの端部3‐Iの軸方向各側で延びるよう位置決めされた追加の体積部6‐Aを有する。この追加の体積部6‐Aは、キャップ10の体積部の一部に取って代わっている。
【0048】
さらに、ベース6の構成材料であるゴム材料のヒステリシスの値は、キャップ10の構成材料のヒステリシスの値よりも低い。
【0049】
この追加の体積部の体積は、図示の場合、ベースの全体積の30%になっている。
【0050】
図2は、本発明のタイヤ1の別の変形形態の内部の断面図であり、この別の変形形態としてのタイヤは、ベース6の追加の体積部6‐Aが半径方向外側60‐Aに2つの実働プライ31,32の軸方向に最も幅の狭い実働プライ32の端部3‐Iと実質的に一線を置いて配置された最大高さを示す幾何学的形状を有する点で
図1に示されている変形形態としてのタイヤと異なっている。
【0051】
さらに、この変形形態では、ベースの追加の体積部6‐Aの材料は、ベースの材料とは異なる材料で作られており、この目的は、熱的観点からの有利な効果を一段と高めることにある。この異種材料は、この
図2中の線XX′で示されている赤道面の各側で延びるベース材料よりもヒステリシスが一層低いように選択されている。当然のことながら、ベース及びベースの追加の体積部は、同種の材料で作られるのが良い。
【0052】
図3は、本発明のタイヤの変形形態のトレッド表面100の図であり、このタイヤは、非対称トレッドパターンを備えたキャップ10を有し、このことは、パターンが赤道面の各側で異なることを意味している。このタイヤは、サイズ385/55R22.5のものであり、重車両トレーラのアクスルに取り付けられるようになっている。このキャップ10は、新品状態では、320mmの全幅W(タイヤの通常の使用条件下におけるフットプリントの幅に一致している)を有し、このキャップは、両方とも山部及び谷部を備えた2つのエッジコーナー部51,52に沿ってトレッド表面100上に開口した円周方向の向きの単一のジグザグ形主溝5を有している。この主溝5は、13mmの平均幅(この溝を画定する対向した壁を隔てる平均距離として測定される)及び15mmの深さを有する。この主溝5は、キャップを軸方向幅の互いに異なる2つの部分、即ち、車両の軸方向外側寄りに位置決めされるようになった軸方向幅LEの外側部分TE及び車両の内側寄りに位置決めされるようになった軸方向幅LIの内側部分TIに分割している。軸方向幅LIは、キャップの軸方向外側エッジ10‐eと円周方向溝5を画定するエッジコーナー部51の山部との間に挟まれており、エッジコーナー部51は、タイヤがいったん車両上の定位置に位置すると、軸方向最も外側寄りに位置したエッジコーナー部に対応している。この軸方向幅
LEは、この場合、190mm(即ち、キャップの全幅Wの60%に等しい)。
【0053】
内側部分TI(矢印“IN”で示されている内側に位置している)と外側部分TE(矢印“OUT”で示された外側に位置している)は、それぞれ、空所又は中空部221,121を備え、これら空所は、新品状態におけるトレッド表面100上で測定して14mmの幅を有すると共に34mmの最大長さを有する。この実施例では深さ10mmのこれら空所は又、キャップが次第に摩耗するにつれてトレッド表面上に開口する各空所の断面積を次第に減少させるよう16.5°の一様な平均逃げ角を備えた状態で形成されている。さらに、外側部分TEは、空所121と同一深さの複数のウェル124を有し、これらウェルは、空所121と組み合わせ状態で可撓性ストリップ及び剛性ストリップを形成するよう円周方向に配置されている。これらウェル124は、円錐形の形をしており、これらウェル124は、トレッド表面の下に形成された
図4に見える円周方向通路71に連結されており、この通路71は、キャップの部分摩耗後に新たな溝を形成するよう設計されている。空所121の半径方向内方の延長部として、円周方向に差し向けられた通路72が設けられている。
【0054】
剛性ストリップは、この場合、コーナリング又はカーブを曲がる際、キャップに対する路面の横方向荷重の作用を受けて、円周方向に向けられているサイプがほぼ連続した、従って、最大剛性のキャップを生じさせるよう閉じられ又は極めて迅速に閉じることを意味している。これとは逆に、空所を有するストリップは、横方向荷重の作用を受けると、これらストリップの見かけの剛性がこれら空所が閉じる程度に依存し、いずれの場合においても、剛性ストリップの剛性よりも極めて低いので、可撓性であると呼ばれる。
【0055】
軸方向(図中、軸線YY′で示されている)に平行であり且つ空所121又はウェル124に接する直線T1,T2は、空所及びウェルのない剛性ストリップ11を画定すると共に空所及びウェルを備えた可撓性ストリップ12を画定する。
【0056】
キャップの外側部分の可撓性ストリップ12及び剛性ストリップ11は、空所121を互いに連結するためにジグザグ形状をなして円周方向に延びるサイプ112を更に備えている。このサイプ112は、タイヤが路面に接触する接触パッチにサイプが入っているときにトレッド表面から始まって深い深さ(即ち、キャップの厚さの少なくとも30%であることを意味する)にわたって再び閉じることができるようにするのに適当な幅を有しており、その目的は、その向かい合った壁を互いに接触状態にし、かくして剛性ストリップ11について高い剛性を得ることにある。このサイプの軸方向外側には、別のジグザグのサイプ111が設けられていることが注目され、このサイプは、キャップの深さ中に半径方向に形成された複数のウェル121を互いに接合している。
【0057】
あらゆることは、これらサイプが走行時に接触パッチに入ったときこれサイプが閉じた場合、これらサイプ111,112があたかも各剛性ストリップ及び各可撓性ストリップの横方向剛性に事実上変化をもたらさないかのようである。かくして、可撓性ストリップの剛性及び剛性ストリップの剛性を変更しないで、追加のエッジコーナー部の存在により利益を得ることが可能である。路面に対する横滑り現象を生じさせる場合のあるコーナリング下において、路面によりキャップに及ぼされる横方向接触荷重は、サイプ111,112は、ひとりでに閉じたときに、大部分、剛性ストリップ11によって伝達される。
【0058】
各可撓性ストリップは、40mmに等しい円周方向幅D12を有する。各剛性ストリップは、25mm(即ち、外側部分の軸方向幅LEの13%)に等しい円周方向幅D11を有する。このタイヤに関するE.T.R.T.O.規格により定められた通常の条件下において(9barの圧力、4400daNの荷重)、フットプリントの長さは円周方向に155mmである。好ましくは、横方向荷重に耐えるために接触パッチ中には常時少なくとも2つの剛性ストリップが存在すると共に少なくとも2つの可撓性ストリップが存在し、これは、雨天において路上に存在する水をピックアップするリザーバとして働く適当な数の空所を構成することを意味している。
【0059】
軸方向幅LIの内側部分TIには、全体として円周方向の向きのジグザグサイプ40が設けられていることが注目できる。このサイプ40は、キャップの軸方向内縁10‐iと溝5のエッジコーナー部52との間の実質的に中間に位置している。このサイプは、複数の空所221を互いに連結している。このサイプは、その寸法により、走行中、これが接触パッチに入ったときに閉じることができる。内側部分TIの空所221は、外側部分TEの空所121に対して円周方向にオフセットしている。かくして、円周方向幅D21の剛性ストリップ21と円周方向幅D22の可撓性ストリップ22を連続して配置したものが内側部分TI上に形成され、これら部分は、軸方向YY′に平行であり且つ空所221に接している直線T3,T4によって画定されている。内側部分TIのこれら剛性及び可撓性ストリップは、交互に配置されると共に外側部分TEの剛性ストリップ11及び可撓性ストリップ12に対して円周方向にオフセットするよう配置されている。
【0060】
カーブを曲がる際の利点とは別に、本発明のトレッドパターンにより、初期状態においてキャップ中に存在する中空容積部を減少させ、従って、所定の体積全体についてキャップの厚さをかなり減少させることができる。
【0061】
この変形例では、空所及びウェルの容積は、これら容積が円周方向溝5のところで最大値に達するために外側部分TEの他方の縁の方へキャップの軸方向最も外側の縁から増大するよう外側部分TE上に分布して配置されている。同じことは、車両に関して軸方向最も内側の縁から始まって円周方向溝に向かって続く内側部分TIについて当てはまるが、逆方向においてである。
【0062】
この場合、サイプ111は、キャップ10の外側エッジ10‐eから64mm(即ち、幅W=320mmの20%)の平均距離離れたところに位置している。
【0063】
摩耗にもかかわらず持続する性能を得るために、第1の非対称トレッドパターン部分の後にキャップの厚み中に全く非対称ではない第2の部分が設けられている。この第2の部分は、キャップがいったん部分的に摩耗状態になったときに接触パッチ中でアクティブ状態になる。
【0064】
図4は、半径方向平面上で断面で見た
図3のキャップを示し、半径方向平面の線は、
図3のIV‐IV線を辿っており、
図4は、空所121,221の深さ及びウェル124の深さに対応した深さH1の後に、通路71,72,73の形勢状態を示しており、これら通路は、深さH1、この場合10mmに等しい深さに対応した部分摩耗後にトレッド表面上に開口し、それにより円周方向に差し向けられる5mmに等しい深さH2の3つの新たな溝が形成される。この変形形態では、本発明のトレッドパターンは、厚さH1にわたって存在すると共にアクティブであり、厚さH1は、この場合、実質的に、摩耗可能な材料の15mmという全厚の66%に等しい。
【0065】
さらに、上述したタイヤは、カーカス補強材の半径方向外側に位置する2枚の実働プライを含むクラウン補強材を有する。半径方向最も外側のクラウンプライと直前に説明したキャップとの間には、60℃、10Hz及び10%変形率の条件下において測定した0.04に等しいtanδ値を有するゴム材料で作られたゴムのベース6が設けられている。同一測定条件下において、キャップは、0.12のtanδ値を有する材料で作られている。
【0066】
注目されるように、ベースは、キャップとベースの軸方向内側部分6‐I(この軸方向内側部分は、キャップの軸方向内側TI上に位置するようになっている)との間に半径方向に位置決めされた追加の体積部6‐Aを有する。
【0067】
内側6‐Iと外側6‐Eのベースの体積の差は、0.2dm
3に等しく、即ち、0.55dm
3に等しいベースの全体積の約55%である。この差をトレーラ型の重車両用タイヤのための用途について150%に制限することが好ましい。
【0068】
この場合、例えば
図1に示されている場合のように、キャップは、運転中、ベースの追加の体積部に達することがない深さまで摩耗するようになっている。
【0069】
軸方向内側TIの低いヒステリシスの材料の追加の体積部を有するベースと
図4に関して具体的に説明した非対称トレッドパターンのこの組み合わせにより、多アクスル型重車両トレーラに取り付けられるようになったタイヤは、驚くべきことに、タイヤの軸方向内側に位置したクラウン補強材のエッジの近くのところについて耐損傷性の相当な向上を達成することができる。
【0070】
当然のことながら、本発明は、図示すると共に説明した実施例には限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく本発明の種々の改造例を想到できる。特に、本明細書において提案した種々の変形形態の任意の組み合わせは、本発明の範囲の一部をなす。