(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、光輝性顔料は、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する粒径が55μm以下であり、薄片状粒子は、1.4〜1.8の屈折率を有する材料からなり、薄片状粒子の平均厚みが0.35μm〜0.55μmであり、薄片状粒子が0.15μm以下の厚みの薄片状粒子を実質的に含まないことから、塗膜の仕上がり性が良好で、且つ、薄片状粒子(基体)の厚みと屈折率との関係に起因する干渉次数0の発色を含まないか干渉次数0の発色を殆ど生じない。故に、本発明では、優れた単一発色性と塗膜の良好な仕上がり性とを有するコート物を形成可能とする光輝性顔料、および当該光輝性顔料を含む光輝性塗料組成物、並びに自動車外板コート物を提供できる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、薄片状粒子を被覆する高屈折率の金属酸化物を含む金属酸化物層の厚みを、薄片状粒子ごとに揃える、すなわち、金属酸化物層の厚みのバラツキを抑制することで、高輝度の光輝性顔料が得られる。金属酸化物層の厚みのバラツキの程度は、下記の金属酸化物の厚み変動係数によって評価できる。厚み変動係数の値が小さければ小さいほど、金属酸化物層の厚みのバラツキが少ないことを意味する。厚み変動係数は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
金属酸化物層の厚み変動係数=(金属酸化物層の厚みの標準偏差/金属酸化物層の平均厚み)
【0017】
ところで、ルチル型二酸化チタンまたは酸化鉄からなる金属酸化物層を含む従来の光輝性顔料の比表面積は10m
2/g以上と高く、ルチル型二酸化チタンまたは酸化鉄の結晶粒子の密度が十分でないことによって屈折率が高められないことから、高輝度を有する光輝性顔料が得られていなかった。さらに、薄片状粒子をルチル型二酸化チタン又は酸化鉄からなる金属酸化物層で被覆した光輝性顔料を自動車外板塗料に用いる場合は、耐候性が十分でなかった。故に、薄片状粒子がシリカである場合は、シリカをルチル型二酸化チタン又は酸化鉄からなる金属酸化物層で被覆してシリカの細孔を埋めることにより光輝性顔料の比表面積を低く抑え、さらに、セリウム、アルミニウム、ジルコニウムなど紫外線を吸収する材料を含む保護被膜で金属酸化物層を覆っていた。しかし、この保護被膜で金属酸化物層を被覆すると、屈折率が低下し高い輝度が得られない欠点もあった。
【0018】
これらの問題点を解決するために、高輝度の干渉顔料の一例として、薄片状粒子を被覆せしめた酸化チタンを含む金属酸化物層中にCa及びMgを含有せしめることによって、屈折率および表面平滑性を高めた干渉顔料が提案されている(例えば、特開平10−279828号公報参照)。
【0019】
さらに、薄片状粒子の表面がCe、Sn、Ti、Fe、ZnおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物層を少なくとも2層以上有する多層被覆層で被覆された干渉顔料が提案されている。(例えば、特開2004−168940号公報参照)しかし、特開2004−168940号公報に記載の干渉顔料の比表面積は3.0〜10m
2/gの程度であり、依然として、自動車外板塗料に用いられるには、輝度、そして耐候性が十分とは言えなかった。
【0020】
本発明の好ましい形態では、細孔が少なく密度の高い金属酸化物層で薄片状粒子を覆うので、高輝度および耐候性のよい光輝性顔料を提供することができる。具体的には、ナトリウム成分(ナトリウム化合物)を含む薄片状粒子を用いると、後述のとおり液相析出法において、比表面積が小さく緻密な結晶相を含む金属酸化物層が得られ、故に、屈折率が高い光輝性顔料が得られる。また、金属酸化物層が緻密になると、金属酸化物が、二酸化チタンまたは酸化鉄である場合は、光触媒の活性点が減少し、光輝性顔料の耐候性が向上するので好ましい。
【0021】
薄片状粒子における、ナトリウム成分の含有量は、ナトリウム成分の種類に応じて異なるが、ナトリウム成分がNa
2Oである場合、3質量%以上9質量%未満が好ましい。尚、金属酸化物層の質量は、薄片状粒子のそれよりも遥かに小さく、光輝性顔料における金属酸化物層の質量は無視できる。光輝性顔料の比表面積は、屈折率を高めて輝度を高める観点から、3.0m
2/g未満が好ましい。
【0022】
本発明の好ましい形態では、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する光輝性顔料の粒径が35〜50μmであると、フィルトレーション性が良好な光輝性顔料が得られる。故に、上記好ましい形態との組み合わせにより、優れた単一発色性、高輝度、良好なフィルトレーション性、および良好な塗膜の仕上がり性をバランスよく得ることが可能な光輝性顔料が得られる。
【0023】
薄片状粒子に金属酸化物を被覆する(金属酸化物層を形成する)方法には、気相法としてPVD、CVDが、液相法として液相析出法(LPD)、水熱合成法が知られている。なかでも、液相析出法(LPD)は、薄片状粒子の表面に金属酸化物の水和物をムラなく形成し易く、金属酸化物の厚みが揃い易く、生産性が高くて経済的であるので、好ましい。
【0024】
液相析出法によれば、金属酸化物が二酸化チタンである場合は、例えば、塩酸を含むpH0.9〜pH1.2の反応液中、金属酸化物が酸化鉄である場合は、例えば、塩酸を含むpH2.0〜pH3.5の反応液中にて金属酸化物の水和物が形成される。薄片状粒子の組成に、ナトリウム成分(Na
2O等のナトリウムの化合物)が含まれていれば、上記反応液中で、ナトリウム(Na)が薄片状粒子の内部から表面層に拡散し、薄片状粒子と液体との界面で電気二重層が形成される。すると、薄片状粒子表面のナトリウム濃度が高なり、金属酸化物が二酸化チタンである場合は、四塩化チタン(金属化合物)の加水分解が生じて薄片状粒子の表面に選択的に、実質的に二酸化チタンの水和物からなる層が形成される。金属酸化物が酸化鉄である場合は、二酸化チタンと同様にして、塩化鉄(金属化合物)の加水分解が生じて薄片状粒子の表面に選択的に、実質的に酸化鉄の水和物からなる層が形成される。
【0025】
尚、還元酸化チタンは、酸化チタンが400〜600℃の水素を含む雰囲気下で還元されたものであり、還元酸化鉄は、酸化鉄が400〜600℃の水素を含む雰囲気下で還元されたものである。
【0026】
例えば、薄片状粒子のゼータ電位が、pH2の反応液中で、−20mV〜−10mVであると、安定した電気二重層が形成できるので好ましい。−20mV〜−10mVのゼータ電位を発現させるためには、薄片状粒子の成分にナトリウム成分が含まれていると好ましく、薄片状粒子中のナトリウム成分の含有量は、ナトリウム成分がNa
2Oである場合、3質量%以上9質量%未満が好ましい。反応液は、薄片状粒子と水と酸とを含む。酸として、塩酸、硝酸、又は硫酸等が挙げられるが、薄片状粒子の表面にルチル型水和二酸化チタンを迅速に析出させる観点から、塩酸が好ましい。
【0027】
本発明は、さらに、自動車外板用被塗基材の一方の主面側に配置され、CIEL*a*b*表色系のL*が40以上のカラーベース層と、カラーベース層上に配置され本発明の光輝性顔料を0.1〜30質量%含有するメタリックベース層と、メタリックベース層上に配置されたトップクリアー層とを含む。
【0028】
なお、本明細書において、薄片状粒子の粒径とは、薄片状粒子をレーザー回折・散乱法により測定した場合の光散乱相当径のことである。光散乱相当径とは、例えば「最新粉体物性図説(第三版)」(2004年6月30日発行、発行者:倉田豊、発行所:有限会社エヌジーティー)によれば、測定によって得られた粒子の光散乱パターンに最も近い散乱パターンを示し、かつ、当該粒子と同じ屈折率を有する球の直径と定義される。
【0029】
また、粒度分布とは、測定対象となる粒子群の中に、どのような大きさ(粒径)の粒子がどのような割合で含まれているかを示す指標であり、本明細書では、レーザー回折・散乱法に基づいて測定されるものである。レーザー回折・散乱法とは、粒子に光を照射した際の散乱光を利用して粒度分布を求める方法であり、本明細書における粒度分布では、粒子量の基準として体積が用いられる。最大粒径とは、粒度分布の体積累積100%に相当する粒径である。
【0030】
また、厚さ分布とは、測定対象となる粒子群の中に、どのような厚さの粒子がどのような割合で含まれているかを示す指標である。本明細書では、
図1に示す薄片状粒子31のdで示す部分の長さを薄片状粒子の厚さとして測定する。具体的には、測定対象となる粒子群から所定の数(好ましくは100個以上)の薄片状粒子を抜き出し、電子顕微鏡を用いてそれらの厚さdを測定することによって、厚さ分布を求める。
【0031】
まず、本発明が解決すべき課題について、発明者が鋭意検討した結果を以下に記載する。
【0032】
(薄片状粒子の厚みによる干渉色)
本発明は、上述のとおり、光輝性顔料において、様々な色の粒子が混在して輝くことを抑制することを目的としている。そこで、様々な色の粒子が混ざり合うことが、薄片状粒子の厚みによる干渉色の違いよって起こる現象であることを説明する。なお、本明細書において、薄片状粒子の厚みとは、
図1にdで示す部分の厚さのことである。なお、ここでは、薄片状粒子の表面に二酸化チタンおよび/または酸化鉄の金属酸化物層が設けられた光輝性顔料を例に挙げて説明する。
【0033】
光輝性顔料は、薄片状粒子が二酸化チタンおよび/または酸化鉄の金属酸化物層で被覆されることによって形成されている。光輝性顔料では、高屈折率である金属酸化物層の厚みが、例えば、光輝性顔料毎に異なり、また、光輝性顔料においてムラがあると、反射光が干渉されて、全体として様々な色に発色する。
【0034】
一方、金属酸化物層に被覆されて内側に位置する薄片状粒子も、金属酸化物層と同様に、所定の厚み範囲で干渉による発色を起こすことがある。
【0035】
光が金属酸化物層のような薄膜層へ入射するとき、入射する界面で反射する光ともう一方の界面で反射する光との光路差(薄膜層の上面の反射光と下面での反射光との光路差)は、次式で表される。
2nd×cosγ ・・・・(式1)
(n:薄膜層の屈折率、d:薄膜層の厚み(μm)、γ:薄膜層の屈折角)
【0036】
本例での光輝性顔料において、金属酸化物層に用いられる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の屈折率は、薄片状粒子に用いられる各材料の屈折率よりも高い。すなわち、光輝性顔料を含む光輝性顔料組成物に使用した場合に、光輝性顔料組成物によって形成された塗膜のうちの光輝性顔料を除いた残余を媒体層と称することとすると、(媒体層/金属酸化物層/薄片状粒子/金属酸化物層/媒体層)の屈折率の関係は、以下の(式2)に示すとおりとなる。また、媒体の屈折率N、金属酸化物の屈折率n
1および薄片状粒子の屈折率n
0の具体例も以下に示す。
N(媒体層)<n
1(金属酸化物層)>n
0(薄片状粒子)<n
1(金属酸化物層)>N(媒体層)・・・・(式2)
媒体の屈折率N: アクリル樹脂(1.49)
金属酸化物の屈折率n
1: ルチル型二酸化チタン(2.71)
アナターゼ型二酸化チタン(2.52)
酸化鉄(3.01)
薄片状粒子の屈折率n
0: Cガラス(1.54)
シリカ(1.46)
アルミナ(1.76)
雲母、合成マイカ(1.55〜1.59)
【0037】
本例での光輝性顔料で反射する光において、光の入射側の金属酸化物層(n
1)と薄片状粒子(n
0)との境界面での反射は位相の変化が起こらないが、光の反入射側の薄片状粒子(n
0)と金属酸化物層(n
1)との境界面での反射では位相がπ(rad)ずれるので、反射する光を強め合う明線条件が(式3)で表される。
2n
0d×cosγ=1/2×λ×(2m+1) ・・・・(式3)
λ:反射光の波長(μm)、n
0:薄片状粒子の屈折率、
d:薄片状粒子の厚み(μm)、m:干渉次数(0、1、2、3・・・の整数)、γ:金属酸化物層の屈折角
【0038】
(式3)から、薄片状粒子の厚さによって、反射光が何色に見えるか求めることができる。可視光の波長λを380〜780nm、n
0=1.4〜1.8とする場合、0.05μm超0.15μm以下の厚み範囲を有する薄片状粒子において、0次干渉色が現れ、薄片状粒子そのものに色がついて見える。そこで、薄片状粒子の厚さ分布において、厚さ0.15μm以下が実質的に含まれないことよって、単一発色性を向上できることを見出した。
【0039】
(光輝性顔料の厚みおよび粗粒子が塗膜の仕上がり性に及ぼす影響)
自動車外板コート物(塗装)には、大きく分けて2つの事項が要求される。その1つの要求事項は、塗装下部(鋼板)の腐食保護であり、もう1つの要求事項は、上述のように魅力ある意匠性(鮮明な単一発色性)と、鏡のような高光沢でスムーズな外観品質である。
【0040】
この外観品位を表現するのに、つや(Glossy)、くもり(Dull)、写像鮮明性(DOI:Distinctness of Image)、オレンジピール(Orenge Peel)等が挙げられる。
【0041】
また、この外観品質は、塗装表面の凹凸パターンにより光の反射が異なることによって決定され、人間の視覚で認められる。塗装表面を人間の目のように、光学的に波長の明/暗パターンを測定する方法として、マイクロウェーブスキャン(Gardner社製)が知られている。
【0042】
このマイクロウェーブスキャンは、レーザーの点光源が塗装試料面に対する垂線から60°傾いた角度でレーザー光を照射し、検出器が前記垂線に対して反対の同角度の反射光を測定する。この装置は、レーザーの点光源を塗装試料面の上を移動させてスキャンすることで、反射光の明/暗を決められた間隔で一点ずつ測定し、塗装試料面の光学的プロファイルを検出できる。検出された光学的プロファイルは、周波数フィルターを通してスペクトル解析して、塗装の下地、内部、表面のストラクチャーを解析することができる。この装置の特性スペクトルは次のとおりである。
du:波長0.1mm以下
Wa:波長0.1〜0.3mm
Wb:波長0.3〜1mm
Wc:波長1〜3mm
Wd:波長3〜10mm
We:波長10〜30mm
Sw:波長0.3〜1.2mm
Lw:波長1.2〜12mm
DOI:波長0.3mm以下
【0043】
本発明者は、光輝性顔料の厚みおよび粗粒子が、メタリックベース層を含む自動車外板コート物のくもり(Dull)と写像鮮明性(DOI:Distinctness of Image)の外観特性に影響を及ぼすことを見出した。具体的には、光輝性顔料の厚みが厚くなると、du(波長0.1mm以下)、Wa(波長0.1〜0.3mm)、Sw(波長0.3〜1.2mm)、DOI(波長0.3mm以下)の特性スペクトル強度が高くなり、くもりや写像鮮明性の外観特性に悪影響を及ぼすことが判明した。
【0044】
さらに、光輝性顔料の粗粒子が多くなると、du(波長0.1mm以下)、Wa(波長0.1〜0.3mm)、Sw(波長0.3〜1.2mm)、DOI(波長0.3mm以下)の特性スペクトル強度が高くなり、くもりや写像鮮明性の外観特性に悪影響を及ぼすことが判明した。
【0045】
上述の結果から、本発明者は、下記のとおり本発明の光輝性顔料を提案する。
【0046】
本発明の光輝性顔料は、薄片状粒子と、前記薄片状粒子の表面の少なくとも一部を被覆する金属酸化物層と、を含む光輝性顔料であって、前記光輝性顔料は、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する粒径が55μm以下であり、さらに、前記薄片状粒子は、1.4〜1.8の屈折率を有する材料からなり、さらに、前記薄片状粒子は、その平均厚みが0.35μm〜0.55μmであり、0.15μm以下の厚みの薄片状粒子を実質的に含まない。
【0047】
(薄片状粒子)
薄片状粒子は、薄片状粒子の厚さ分布において平均厚みが0.35μm〜0.55μm、好ましくは0.40〜0.50μm、さらに好ましくは0.42μm〜0.48μmであり、厚みが0.15μm以下の薄片状粒子を実質的に含まない。ここで実質的に含まないとは、厚みが0.15μm以下の薄片状粒子が個数にして1%以下であり、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0%である。本願では、後述する<薄片状粒子の厚さ分布>において、任意の100個の薄片状粒子についてその厚さd(
図3参照)を電子顕微鏡にて測定したときに、0.15μm以下の薄片状粒子が、例えば、1個以下であれば、厚みが0.15μm以下の薄片状粒子が個数にして1%以下である。
【0048】
薄片状粒子は、1.4〜1.8の屈折率を有する材料からなる。薄片状粒子は、無機材料からなると好ましく、可視光に対する透明性が高いという理由から、ガラス、シリカ、アルミナおよびマイカからなる群より選ばれる1つからなるものであると好ましい。特に限定するものでないが、表面の平滑性が高く、かつ透明性の高い薄片状ガラス粒子を用いることがより好ましい。この場合、薄片状ガラス粒子を二酸化チタンおよび/または酸化鉄を主成分として含む金属酸化物層で被覆することにより、単一発色性の優れた光輝性顔料を提供できる。
【0049】
薄片状粒子は、安定した電気二重層が形成されるという理由から、その組成に、Na
2O等のナトリウム成分が含まれていると好ましく、その含有量は、3質量%以上11質量%未満であると好ましく、3質量%以上9質量%未満であるとより好ましく、5質量%以上9質量%未満であると更に好ましく、7質量%以上9質量%未満であると更により好ましい。
【0050】
薄片状粒子は、光輝感を高めるという理由から、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する粒径が、35〜55μmであり、35〜50μmであると好ましく、40〜50μmであるとより好ましく、42〜48μmであるとさらに好ましい。尚、金属酸化物層等の被膜の厚みは、薄片状粒子の粒径に対して無視できるほどに薄い。
【0051】
薄片状粒子は、フィルトレーション性の向上の観点から、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する粒径が、50μm以下が好ましく、かつ、最大粒径が105μm以下であると好ましく、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する粒径が48μm以下であるとより好ましく、かつ、最大粒径が88μm以下であるとより好ましく、粒度分布において、粒径が小さい側からの体積累積が90%に相当する粒径が46μm以下であるとさらに好ましく、かつ、最大粒径が74μm以下であるとさらに好ましい。
【0052】
薄片状粒子は、塗膜仕上がり性を高める観点から、厚さ分布において、0.25μm〜0.65μmの範囲の頻度が個数で90%以上であると好ましく、95%以上であるとより好ましい。本願では、後述する<薄片状粒子の厚さ分布>において、任意の100個の薄片状粒子についてその厚さd(
図3参照)を電子顕微鏡にて測定したときに、0.25μm〜0.65μmの粒子の数が90個以上であれば、0.25μm〜0.65μmの範囲の頻度が個数で90%以上である。
【0053】
薄片状ガラス粒子は、例えば、遠心力による熔融ガラスの流れを利用して薄いガラスフィルムを作製し、これを破砕することによって作製してもよい。
図2は、熔融ガラスの流れを利用して薄片状ガラス粒子を製造する装置の一例である。この装置は、可変速電動モータ21に取り付けられたテーパ状のカップ22を有し、カップ22のリム23は2個の環状プレート24,25の間に位置している。上側のプレート24は上下に移動可能に設けられており、プレート24,25間の距離が調節可能となっている。プレート24,25は、サイクロン式真空チャンバ26内に取り付けられており、このチャンバ26は出口接続部27を介して図示されないサイクロン収集・分離・真空ポンプに接続されている。カップ22を所定の速度で回転させ、かつ、カップ22内に熔融ガラス28を上方から流入する。遠心力によって、カップ22内の熔融ガラスがリム23を越えて外方へ送り出される。サイクロン収集・分離・真空ポンプを作動させることによってチャンバ26内が低圧となり、プレート24,25の間29を介して空気がチャンバ26内に入る。チャンバ26に入る空気は、カップ22のリム23から外方へ送り出された熔融ガラスを急冷する。また、プレート24,25間を流れる空気流は、カップ22のリム23から出てプレート24,25間に位置する熔融ガラスがプレート24,25の表面に接触しないように、熔融ガラスを保持する機能も有する。プレート24,25間の空気流は、固体状態となるまでプレート24,25間に位置する熔融ガラスを冷却する。プレート24,25間に位置するガラスは、空気流との摩擦によって放射方向に引き出され、空気流によって平板状に維持されつつ小さなフレーク状ガラスに破砕される。ここで得られた薄片状ガラス粒子は、チャンバ26内で収集され、かつ、出口接続部27を介して図示されないサイクロン収集・フィルター部に送られる。
【0054】
この装置を用いて薄片状ガラス粒子を製造する場合、薄片状ガラス粒子の厚さは、プレート24,25間の距離やプレート24,25間の空気流の速度等を調節することによって、調節できる。
【0055】
下記に、薄片状粒子の組成の好ましい一例を記述する。
【0059】
(分級方法)
本発明では、例えばふるい分け分級によって薄片状粒子の粒度を調整できる。ふるい分け分級には、例えば乾式振動ふるいを利用できる。用いるふるいの目開きの大きさは、ふるう前の粒子の粒度や、得たい薄片状粒子の粒径等に応じて適宜選択するとよい。
【0060】
また、ふるい分け分級以外の分級方法を用いて微粉および粗粉を除去してもよい。
【0061】
粗粉を除去には、乾式分級の場合、例えば、重力式分級、慣性力式分級および遠心力式分級等の気流分級装置を用いることができる。重力式分級としては、例えば、水平流型、垂直流型および傾斜流型等を用いることができる。慣性力式分級としては、例えば、直線型、曲線型、ルーバー型、エルボージェットおよびバリアブルインパクター等を用いることができる。遠心力式分級としては、気流の旋回によるものとしてサイクロン、ファントンゲレン、クラシクロン、ディスパーションセパレータおよびミクロプレックスを用いることができ、機械的回転によるものとしてミクロンセパレータ、ターボプレックス、アキュカットおよびターボクラシファイア等を用いることができる。
【0062】
湿式分級の場合は、例えば、重力式分級および遠心力式分級等の気流分級装置を用いることができる。重力式分級としては、重力沈降漕によるものとして沈降漕、沈積コーン、スピッツカステンおよびハイドロセパレータを用いることができ、機械式分級によるものとしてドラッグチェーン分級機、レーキ分級機、ボール分級機およびスパイラル分級機等を用いることができ、水力分級としてドルコサイザ、ファーレンワルドサイザ、サイフォンサイザおよびハイドロッシレータ等を用いることができる。遠心力式分級としては、ハイドロサイクロン、遠心分級機(ディスク型、デカンタ型)等を用いることができる。
【0063】
(金属酸化物層)
金属酸化物層の具体例について、以下に説明する。
【0064】
薄片状粒子を被覆する金属酸化物層に含まれる金属酸化物は、高屈折率の金属酸化物層を形成しやすいという理由から、二酸化チタン(TiO
2)、還元酸化チタン(TiO
2−X)、酸化鉄(Fe
2O
3)、及び還元酸化鉄(Fe
3O
4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が好ましい。
【0065】
以下、二酸化チタンと酸化鉄を例に挙げて、金属酸化物層について詳述する。
【0066】
<二酸化チタン層>
薄片状粒子を被覆する金属酸化物層の一例として、二酸化チタン層が挙げられる。薄片状粒子を被覆する二酸化チタン層は、実質的に、ルチル型二酸化チタンからなっているとよい。ルチル型二酸化チタンを金属酸化物として用いると、比表面積が小さく緻密な結晶を含み、密度が高く、すなわち金属酸化物層の屈折率が高いことから、高輝度の光輝性顔料が得られる。ここで、「実質的に」とは、金属酸化物層における二酸化チタン以外の成分が、質量%にして0.1%以下であり、好ましくは0.01%以下であることを意味する。二酸化チタン以外の成分としては、SnO
2、Na
2O等が挙げられる。
【0067】
二酸化チタンは、アナターゼ型、ブルーカイト型、ルチル型の3種類の結晶型を有する。この中で工業的に製造されているのは、アナターゼ型とルチル型である。アナターゼ型二酸化チタンは、強い光触媒活性を持つため、樹脂組成物や塗料組成物の成分の分解や変色が加速される。一方、ルチル型二酸化チタンはアナターゼ型二酸化チタンと比較すると10分の1程度の光触媒活性であり、塗料組成物や樹脂組成物に顔料として使用する場合に適している。さらに、ルチル型二酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタンよりも屈折率が高く、緻密かつ均一な被膜を容易に形成できるため、光の干渉による発色性がよくなる。ルチル型二酸化チタン層の製造方法としては、特開2001-31421号公報に開示されているように、温度55〜85℃、pH1.3以下、好ましくは0.9〜1.2の条件下で、チタン含有溶液から中和反応により、ルチル型二酸化チタンの水和物を析出させる方法が例示できる。この方法を用いると、結晶型転移のための加熱を本質的に必要とせず、耐熱性の低い基体(薄片状粒子)に対してもルチル型二酸化チタンを容易に定着させることができる。ルチル型二酸化チタン層の厚みは、光反射による輝度と、干渉のために十分な光路差が得られるという理由から、20nm〜350nmが好ましく、30nm〜300nmがより好ましく、40nm〜250nmがさらに好ましい。
【0068】
<酸化鉄層>
薄片状粒子を被覆する金属酸化物層の別の例として、酸化鉄層が挙げられる。酸化鉄は、ルチル型二酸化チタンと同様に、アナターゼ型二酸化チタンと比較すると光触媒活性が10分の1程度と低く、塗料や樹脂組成物に含まれる顔料としての使用に適している。酸化鉄を用いると、酸化鉄の光の吸収による有彩色の発色と光の干渉による発色(赤銅色、オレンジ色、赤色)とが重なった色彩が実現できる。薄片状粒子を被覆する酸化鉄として、3価の酸化鉄、もしくは2価の酸化鉄と3価の酸化鉄との混合物を用いることができる。薄片状粒子を被覆する酸化鉄層は、実質的に、上記の酸化鉄からなっているとよい。ここで、実質的にとは、金属酸化物層における酸化鉄以外の成分が、質量%にして0.1%以下であり、好ましくは0.01%以下であることを意味する。酸化鉄以外の成分としては、SnO
2、Na
2Oが挙げられる。酸化鉄層の製造方法としては、特開2005−187782号公報に開示されているように、50〜80℃、pH2〜4、好ましくは2.0〜3.5の条件下で、鉄含有溶液から中和反応により、酸化鉄の水和物を析出させる方法が例示できる。酸化鉄層の厚さは、光反射による輝度と、干渉のために十分な光路差が得られるという理由から、20nm〜350nmが好ましく、30nm〜300nmがより好ましく、40nm〜250nmがさらに好ましい。
【0069】
高輝度の光輝性顔料を得るには、薄片状粒子に対して被覆される二酸化チタンまたは酸化鉄等を主成分として含む金属酸化物層の厚みが、薄片状粒子ごとに揃えられることが重要なポイントである。薄片状粒子毎に厚みが異なると輝度が低下する。本発明では、金属酸化物層の厚み変動係数(金属酸化物層の厚みの標準偏差/金属酸化物層の平均厚み)は、単一発色性および輝度を高める観点から、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下が更に好ましい。
【0070】
上記のとおり、金属酸化物層の形成方法としては、液相析出法(LPD)が好ましい。
【0071】
高屈折率材料であるルチル型二酸化チタンまたは酸化鉄等を主成分として含む金属酸化物層の厚みを揃えるには、薄片状粒子のゼータ電位を負電位とすることが望ましい。ルチル型酸化チタンは、塩酸等の酸を含む反応液中の塩素濃度を調整することにより析出させることができる。反応液のpHは、金属酸化物の等電点よりも低いと好ましい。ルチル型酸化チタンの等電点はpH4.5であり、酸化鉄の等電点は9.5である。
【0072】
液相析出法によれば、金属酸化物が二酸化チタンである場合は、好ましくはpH0.9〜1.2、金属酸化物が酸化鉄である場合は、好ましくはpH2.0〜4.0の、塩酸等の酸を含む反応液中に薄片状粒子を浸漬して金属酸化物の水和物形成すると好ましい。薄片状粒子の組成にナトリウム成分が含まれていると、下記の理由により好ましい。
【0073】
反応液中で、ナトリウムが薄片状粒子の内部から表面層に拡散し、薄片状粒子と反応液との界面で電気二重層が形成される。すると、薄片状粒子表面のナトリウム濃度が高くなり、金属酸化物が二酸化チタンである場合は、四塩化チタン(金属化合物)の加水分解が生じて薄片状粒子表面に選択的に、実質的に二酸化チタンの水和物からなる層が形成され、金属酸化物が酸化鉄である場合は、塩化鉄(金属化合物)の加水分解が生じて薄片状粒子表面に選択的に、実質的に酸化鉄の水和物からなる金属酸化物層が形成される。
【0074】
例えば、pH2の反応液中で、薄片状粒子のゼータ電位が−20mV〜−10mVであると、安定した電気二重層が形成できるので好ましい。例えば、光輝性顔料の製造に使用される薄片状粒子のpH2の塩酸水溶液中におけるゼータ電位が、−20mV〜−10mVである場合、安定した電気二重層が形成できるので好ましい。−20mV〜−10mVのゼータ電位を発現させるためには、薄片状粒子の成分にナトリウム成分(例えば、Na
2O)が含まれていると好ましく、薄片状粒子中のナトリウム成分の含有量は、3質量%以上9質量%未満が好ましく、5質量%以上9質量%未満がより好ましい。言い換えると、薄片状粒子中のNaの濃度は、Na
2O換算で、3質量%以上9質量%未満が好ましく、5質量%以上9質量%未満がより好ましい。
【0075】
ところで、アナターゼ型の酸化チタンは、酸化スズなど結晶転移触媒の存在下で高温(たとえば、800℃以上)でルチル結晶相へ転移することができる。しかしながら、ルチル結晶相に転移することが可能であるが、結晶粒子が肥大化して、金属酸化物層の密度が疎になり光輝性顔料の屈折率が低下する欠点があった。
【0076】
液相析出法にて、薄片状粒子の表面に二酸化チタンの水和物を析出させ、薄片状粒子の表面を実質的に二酸化チタンの水和物で被覆する時点でルチル結晶相を得るためには、塩素イオンは、酸素イオンのイオン半径に近いことから、アニオン種イオン半径の小さな塩素を含む四塩化チタン(金属化合物)がチタン由来原料として好ましく、金属酸化物層形成用スラリーとして塩酸の水溶液に薄片状粒子が分散されたスラリーが好ましく、60〜85℃における反応液のpHは、1.3以下が好ましく、pH0.9〜1.2がより好ましい。
【0077】
一方、同様に液相析出法で、薄片状粒子の表面に実質的に酸化鉄の水和物を形成するには、50〜80℃における反応液のpHは、2.0〜4.0が好ましく、pH2.5〜3.5がより好ましい。
【0078】
このように、薄片状粒子を被覆する金属酸化物層の厚みを揃えるには、金属酸化物の種類や、薄片状粒子の材料に応じて、金属酸化物の水和物が析出し易い条件を作り出すことが必要である。
【0079】
本発明では、ナトリウムの酸化物を含む薄片状粒子が、塩素イオンを含む酸性の金属酸化物層形成用スラリー及び反応液中で、薄片状粒子の内部から表面に、ナトリウム分が拡散されるので、薄片状粒子と液体との界面で電気二重層を形成される。薄片状粒子は、そのゼータ表面電位が負になり、薄片状粒子の表面近傍で、四塩化チタン(金属化合物)の加水分解が起こり、薄片状粒子表面に選択的にルチル型二酸化チタンの水和物が析出する。ルチル型二酸化チタンの水和物層で被覆された薄片状粒子は、洗浄、乾燥、焼成を経て、薄片状粒子がルチル型二酸化チタンを主成分とする金属酸化物層で被覆された光輝性顔料となる。薄片状粒子の表面は、小さな二酸化チタン粒子が緻密に充填されることにより形成された金属酸化物層により覆われる。上記反応系では、ルチル型二酸化チタンの水和物の被覆速度が定量的に進み、金属酸化物層の厚みムラの発生が抑制され、薄片状粒子同士の金属酸化物層の厚みムラの発生も抑制される。尚、「ルチル型二酸化チタンを主成分とする金属酸化物層」とは、金属酸化物層を構成する主成分がルチル型二酸化チタンであることをいい、金属酸化物層が実質的にルチル型二酸化チタンからなることを意味する。
【0080】
さらに、ナトリウムが結晶相内に取り込まれる場合、ルチル型二酸化チタンの脱水縮合反応を促進するので、細孔が少なく密度の高い、実質的にルチル型酸化チタンからなる金属酸化物層が得られる。さらに、低温(600℃以下)での焼成により結晶化度が高まり、二酸化チタン粒子の肥大化が抑制される。こうして得られた薄片状粒子の表面に被覆されたルチル型二酸化チタンを主成分とする金属酸化物層は、比表面積が小さく緻密な結晶が得られることから、金属酸化物層の密度が高くすなわち屈折率が高い、高輝度の光輝性顔料が得られる。
【0081】
さらに、薄片状粒子ごとのルチル型二酸化チタンの被覆厚みが揃うことから、干渉光の均一性が増し、輝度の高い光輝性顔料が得られる。
【0082】
故に、本発明の光輝性顔料の製造方法の好ましい一例では、薄片状粒子と塩酸と水とを含むスラリー液に、必要に応じてスズを添加して得た、金属酸化物層形成用スラリーに、金属化合物の水溶液を添加して、前記薄片状粒子の表面上に前記金属化合物に由来する金属の酸化物の水和物を析出させる析出工程(第1工程)と、前記析出工程後、前記金属酸化物層形成用スラリーから、その表面に前記金属の酸化物の水和物が析出した前記薄片状粒子を採取し、次いで、前記金属酸化物水和物層で被覆された前記薄片状粒子を水洗し、乾燥し、焼成して、前記薄片状粒子と前記薄片状粒子を被覆する金属酸化物層とを含む光輝性顔料を形成する工程(第2工程)とを含む。
【0083】
上記の製造方法において、スズが添加される前のスラリー液のpHは、均一に酸化スズで薄片状粒子を被覆するという理由から1.5〜2.0が好ましい。金属酸化物が二酸化チタンである場合、金属化合物の水溶液の添加最中の金属酸化物層形成用スラリーの温度は、60〜85℃に保たれていると好ましく、70〜80℃に保たれているとより好ましい。乾燥温度は、150〜250℃が好ましい。焼成温度は、金属酸化物の結晶化度を高め、結晶の肥大化を抑制する観点から400〜700℃が好ましく、550〜650℃がより好ましい。尚、乾燥温度又は焼成温度は、各々、乾燥機又は焼成炉内の雰囲気温度であり、各々、乾燥機又は焼成炉の温度表示部で確認できる。
【0084】
前記工程1において、金属酸化物が、二酸化チタン及び還元酸化チタンから選ばれる少なくとも1種である場合は、塩基性水溶液によって、金属酸化物層形成用スラリーと前記金属化合物の水溶液の混合物のpHを好ましくは0.9〜1.2に保ちながら、金属酸化物層形成用スラリーに前記金属化合物の水溶液を加える。また、工程1において、金属酸化物が、酸化鉄及び還元酸化鉄から選ばれる少なくとも1種である場合は、塩基性水溶液によって、金属酸化物層形成用スラリーと前記金属化合物の水溶液の混合物のpHを好ましくは2.0〜3.5に保ちながら、金属酸化物層形成用スラリーに前記金属化合物の水溶液を加える。
【0085】
塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア等を用いることができる。
【0086】
(その他の被覆層)
屋外で利用される自動車、オートバイにおいては、顔料に高い耐候性が求められる。紫外線に曝されると、顔料に含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の光触媒活性により、塗膜の分解や変色が加速されるためである。そこで、高い耐候性を得るために、光輝性顔料が、ランタン、セリウムおよびアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の水酸化物または酸化物水和物でさらに被覆されていることが好ましい。また、光輝性顔料は、上述の耐候性とさらに後述する塗膜マトリックス樹脂との密着性とを向上させるため、最外層として、オキサゾリン環を有する有機化合物および/またはシランカップリング剤を用いた表面処理層を有すると好ましい。
【0087】
<セリウムの水酸化物または酸化物水和物>
セリウムの水酸化物または酸化物水和物は、水溶性セリウム化合物と酸またはアルカリとを反応させることによって、粒子(二酸化チタンおよび/または酸化鉄で被覆された薄片状粒子)上に析出させることができる。使用できる酸性セリウム化合物の例としては、硫酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム等の鉱酸塩が挙げられる。使用される酸性セリウム化合物は、水酸化アルカリ金属等のアルカリとの反応によって、セリウムの水酸化物または酸化物水和物を析出させることができる。また、酸性セリウム化合物の代わりに、酸、例えば硫酸と反応してセリウムの水酸化物または酸化物水和物を析出させる、硫酸アンモニウムセリウムまたは硝酸アンモニウムセリウム等のアルカリ性セリウム塩を使用することができる。好ましくは、水溶性セリウム化合物として硝酸セリウムを用い、それと反応するアルカリに水酸化ナトリウム溶液を用いることである。セリウム化合物は、セリウム換算で、本実施の形態における金属酸化物層に含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量の約0.01質量%から約1.0質量%の範囲の一般的な量とすることができる。言い換えると、セリウムの水酸化物または酸化物水和物の形成に使用されるセリウム化合物は、金属酸化物層に含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量を100質量部とすると、セリウム換算で、約0.01質量部から約1.0質量部の範囲の一般的な量とすることができる。より好ましくは、二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量の約0.02質量%から約0.5質量%の範囲の量で、セリウム化合物が水性スラリーに添加されていることである。言い換えると、金属酸化物層に含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量を100質量部とすると、約0.02質量部から約0.5質量部の範囲の量で、セリウム化合物が、セリウム換算で、セリウムの水酸化物または酸化物水和物の形成に使用される水性スラリーに含まれる。。使用する酸もしくはアルカリは、セリウム化合物と反応し、粒子上にセリウムの水酸化物または酸化水和物を析出させるために十分な量で、スラリーに添加される。
【0088】
<ランタンの水酸化物または酸化物水和物>
ランタンの水酸化物または酸化物水和物は、水溶性ランタン化合物と酸またはアルカリとを反応させることによって、粒子(二酸化チタンおよび/または酸化鉄で被覆された薄片状粒子)上に析出させることができる。使用できるランタン化合物の例としては、硫酸ランタン、塩化ランタン、硝酸ランタン、酢酸ランタン、炭酸ランタン等の鉱酸塩が挙げられる。使用されるランタン化合物は、水酸化アルカリ金属等のアルカリとの反応によって、ランタンの水酸化物または酸化物水和物を析出させることができる。好ましくは、水溶性ランタン化合物として硝酸ランタンを用い、それと反応するアルカリに水酸化ナトリウム溶液を用いることである。使用するランタン化合物は、ランタン換算で、本実施の形態における金属酸化物層含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量の約0.01質量%から約1.0質量%の範囲の一般的な量とすることができる。言い換えると、ランタンの水酸化物または酸化物水和物の形成に使用されるランタン化合物は、ランタン換算で、金属酸化物層に含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量を100質量部とすると、約0.01質量部から約1.0質量部の範囲の一般的な量とすることができる。より好ましくは、二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量の約0.02質量%から約0.5質量%の範囲の量で、ランタン化合物が水性スラリーに添加されている。言い換えると、金属酸化物層に含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量を100質量部とすると、約0.02質量部から約0.5質量部の範囲の量で、ランタン化合物が、ランタン換算で、ランタンの水酸化物または酸化物水和物の形成に使用される水性スラリーに含まれる。使用する酸もしくはアルカリは、ランタン化合物と反応し、粒子上にランタンの水酸化物または酸化物水和物を析出させるために十分な量で、スラリーに添加される。
【0089】
<アルミニウムの水酸化物または酸化物水和物>
アルミニウムの水酸化物または酸化物水和物は、酸性もしくはアルカリ性のアルミニウム化合物と、適切なアルカリまたは酸とを反応させることによって得ることができ、この反応と同時に粒子(二酸化チタンおよび/または酸化鉄で被覆された薄片状粒子)上に析出させることが可能である。利用できる酸性アルミニウム化合物の例としては、例えば、鉱酸のアルミニウム塩、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムが挙げられる。アルカリ性アルミニウム化合物の例としては、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ金属がある。酸性またはアルカリ性のアルミニウム化合物は、アルミニウム換算で、本実施の形態における金属酸化物層に用いられる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量の約2質量%〜約4質量%の一般的な範囲の量とすることができる。好ましくは、約2.5質量%〜約3.5質量%の範囲の量で、アルミニウム化合物がスラリーに添加される。言い換えると、金属酸化物層に含まれる二酸化チタンおよび/または酸化鉄の質量を100質量部とすると、約2質量部〜約4質量部の範囲の量、より好ましくは、約2.5質量部〜約3.5質量部の範囲の量で、アルミニウム化合物が、アルミニウム換算で、アルミニウムの水酸化物または酸化物水和物の形成に使用される水性スラリーに含まれる。適切なアルカリまたは酸は、アルミニウムの水酸化物または酸化物水和物がアルミニウム化合物の添加と同時に、もしくは添加に引き続いて、基体上に析出されるだけの十分な量で、スラリーに添加される。
【0090】
<表面処理層>
後述する塗膜マトリックス樹脂との密着性を高めるために、オキサゾリン環を有する有機化合物および/またはシランカップリング剤で、最外層として表面処理層を形成することが好ましい。
【0091】
オキサゾリン環を有する有機化合物としては、オキサゾリン環を有する重合体または多価オキサゾリンオリゴマーが挙げられる。
【0092】
オキサゾリン環を有する重合体は、水溶性タイプのエポクロスWS−500、WS−700、エマルションタイプのエポクロスK−2010、K−2020、K−2030(全て日本触媒社製)が挙げられる。特に、カルボキシル基含有の塗膜マトリックス樹脂との反応性の高い水溶性タイプが好ましい。
【0093】
多価オキサゾリンオリゴマーは、ジオキサゾリン化合物として、具体的には、1,6−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)ヘキサン、1,8−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)オクタン、1,10−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)デカン、1,3−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)シクロヘキサン、1,4−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)シクロヘキサン、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−(1,2−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,2−フェニレン)−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(4−メチルフェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(4−メチルフェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(4−クロロフェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(4−クロロフェニル−2−オキサゾリン)が挙げられる。これらのジオキサゾリン化合物は、1種または2種以上を使用できる。
【0094】
また、他の多価オキサゾリンオリゴマーとして、オキサゾリン基を1分子中に3個有する2,2′−(1,2,4−フェニレン)−トリス−(2−オキサゾリン)等のトリオキサゾリン化合物が挙げられる。2種以上のトリオキサゾリン化合物を併用してもよい。
【0095】
オキサゾリン環を有する有機化合物の質量の全体(光輝性顔料全体)の質量に対する割合は、0.01〜5.0質量%であることが好ましい。この割合が0.01質量%より少ない場合、光輝性顔料を充分に覆うことができず、塗膜マトリックス樹脂と密着性が得られないことがある。一方、この割合が5.0質量%を超えると、光輝性顔料が凝集して本来の光輝感を損なう場合がある。
【0096】
シランカップリング剤としては、ビニル基含有シラン、エポキシ基含有シラン、メタクリロキシ基含有シラン、アミノ基含有シラン、イソシアネート基含有シラン、メルカプト基含有シラン、およびアルコキシシランから選択される少なくとも1種を使用できる。
【0097】
ビニル基含有シランとしては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が例示できる。
【0098】
エポキシ基含有シランとしては、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が例示できる。
【0099】
メタクリロキシ基含有シランとしては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が例示できる。
【0100】
アミノ基含有シランとしては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が例示できる。
【0101】
イソシアネート基含有シランとしては、2−イソシアナートエチルトリメトキシシラン、2−イソシアナートエチルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が例示できる。
【0102】
メルカプト基含有シランとしては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が例示できる。
【0103】
アルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が例示できる。
【0104】
シランカップリング剤の質量の全体(光輝性顔料全体)の質量に対する割合は、0.01〜5.0質量%であることが好ましい。この割合が0.01質量%より少ない場合、光輝性塗料組成物中の樹脂と光輝性顔料との充分な親和性が得られないことがある。一方、この割合が5.0質量%を超えると、カップリング剤同士の反応が起こり、光輝性顔料と樹脂等との親和性が損なわれることがある。また、光輝性顔料を提供するためのコストが高くなる。
【0105】
次に、本発明の光輝性塗料組成物の一例について説明する。本実施の形態の光輝性塗料組成物は、上記に説明した本実施の形態の光輝性顔料をビヒクルに混合させることによって作製できる。
【0106】
(ビヒクル)
本発明の光輝性塗料組成物に含まれるビヒクルの主成分としては、樹脂および溶剤が挙げられる。
【0107】
樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂とも呼ぶ。)が好ましい。本発明の光輝性塗料組成物のビヒクルがカルボキシル基含有樹脂を含んでいると、高い硬度を有し、耐摩耗性および耐薬品性が優れ、かつ、被着体との密着性が良好な、メタリック層を形成できる。ビヒクル中の樹脂の濃度は、特に制限されないが、例えば、光輝性塗料組成物総量の、10〜70質量%が好ましく、25〜50質量%であるとより好ましい。
【0108】
カルボキシル基含有樹脂の一例としては、アクリル酸樹脂(ホモポリマー)、(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等の、カルボキシル基含有アクリル酸系重合体が挙げられる。他の例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(例えば、カルボキシル基が導入されたスチレン・ブタジエン系ラテックス)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、カルボキシル基含有ウレタン樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、カルボキシル基含有アルキド樹脂、カルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。さらに他の例としては、カルボキシメチルセルロース等の天然樹脂が挙げられる。また、アクリル変性ポリエステル、アクリル変性ポリウレタン、アクリル変性エポキシ樹脂のような2成分系樹脂も使用可能である。以下、カルボキシル基含有アクリル酸系重合体とアクリル変性エポキシ樹脂について詳細に説明する。
【0109】
<カルボキシル基含有アクリル酸系重合体>
カルボキシル基含有アクリル酸系重合体は、例えば、アクリル酸エステル類と、芳香族ビニル類またはビニルエステル類とを共重合させることにより得られる。カルボキシル基含有アクリル酸系重合体には、例えば、単量体(カルボキシル基を有する単量体(単量体が塩である場合もある。))に由来する構成単位が0.2〜30質量%含まれていると好ましく、1〜20質量%含まれているとより好ましい。カルボキシル基含有アクリル酸系重合体の酸価は、2〜200mg・KOH/gであると好ましく、10〜100mg・KOH/gであるとより好ましい。
【0110】
カルボキシル基含有アクリル酸系重合体の重量平均分子量は、例えば、1000〜1000000であることが好ましく、3000〜500000であることがより好ましく、5000〜100000であることがさらに好ましい。また、カルボキシル基含有アクリル酸系重合体のガラス転移温度は、樹脂組成物の用途に応じて異なるが、一般的には−60℃〜50℃が好ましい。
【0111】
光輝性塗料組成物は、ガラス転移温度が−10℃〜50℃のカルボキシル基含有アクリル酸系重合体を含んでいると好ましい。
【0112】
<アクリル変性エポキシ樹脂>
アクリル変性エポキシ樹脂は、主鎖のエポキシ樹脂にアクリル系ビニル共重合体を導入し、このビニル共重合体にカルボキシル基が結合したものである。
【0113】
カルボキシル基を含有するアクリル変性エポキシ樹脂は、ビニル共重合体とエポキシ樹脂とを親水性有機溶剤中で塩基性化合物の存在下でエステル化反応させることによって得られる。ビニル共重合体の原料であるエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは、2種以上用いられてもよい。この単量体成分を重合する方法としては特に限定されず、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の通常のラジカル重合開始剤を用いて重合すればよい。
【0114】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型および水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましく、1分子中に平均1.1〜2.0個のエポキシ基を有し、数平均分子量が900以上のものが好ましい。
【0115】
アクリル変性エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、例えば、2000〜100000が好ましい。重量平均分子量が2000〜100000であれば、乳化分散性がよく、アクリル系ビニル共重合体とエポキシ樹脂との反応時にゲル化が生じにくい。
【0116】
<溶剤>
ビヒクルに含まれる溶剤が有機溶剤である場合、その有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)、脂環族炭化水素類(例えば、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、セルソルブ類(例えば、メチルセルソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、ブチルセルソルブ、フェニルセルソルブ、ベンジルセルソルブ等)、カルビトール類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル等)、またはこれらの混合溶剤等を用いることができる。
【0117】
ビヒクルに含まれる溶剤が水である場合、ビヒクルにさらにアルカリが含まれることにより、樹脂が水に溶解される。アルカリとしては、脂肪族アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等)等の有機塩基;エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モルホリン等の複素環式アミン;アンモニア;アルカリ金属化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等の無機塩基が挙げられる。これらのアルカリのうち、アンモニア、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0118】
ビヒクルに含まれる溶剤が水である場合、樹脂(例えばカルボキシル基含有アクリル酸系重合体)に含まれる酸性基(例えば、カルボキシル基)は、樹脂を水に分散させることができる程度に、塩基で中和されていることが望ましい。中和される酸性基の割合としては、全ての酸性基の50%程度であるとよい。例えば、樹脂に含まれる酸性基の全モル数を1とした場合、その0.4〜2.0倍、好ましくは0.6〜1.4倍のモル数のアミンを使用して酸性基を中和するとよい。
【0119】
水性エマルジョンは、慣用の方法により調製できる。例えば、カルボキシル基含有アクリル酸系重合体におけるカルボキシル基の一部を塩基で中和することにより、カルボキシル基含有アクリル酸系重合体を水に分散する方法が挙げられる。水性エマルジョンは、乳化重合法によって調製されてもよい。乳化重合に際しては、慣用の乳化剤(例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ポリビニルアルコールや水溶性ポリマー等の保護コロイド)を用いればよい。水性エマルジョンのpHは、pH調整剤を用いて調整してもよい。
【0120】
<架橋硬化剤>
本発明の光輝性塗料組成物を構成するビヒクルは、架橋硬化剤をさらに含んでいてもよい。架橋硬化剤として、アミノ樹脂および/またはポリイソシアネート化合物を用いることができる。ビヒクルを構成する樹脂が水酸基を有している場合、この水酸基が、アミノ樹脂やポリイソシアネート化合物等の架橋剤と反応して、樹脂が硬化する。アミノ樹脂および/またはポリイソシアネート化合物は、水酸基以外に活性水素を有するカルボキシル基、アミノ基などとも架橋反応する。
【0121】
架橋硬化剤の一例であるアミノ樹脂としては、アルキルエーテル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂等のベンゾグアナミン樹脂、アルキルエーテル化尿素樹脂等の尿素樹脂が挙げられる。これらの中でも、メラミン樹脂が好ましい。メラミン樹脂の具体例としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンが挙げられる。さらに、アミノ樹脂としては、これらのメラミン樹脂のアルキルエーテル(メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル等)化物、尿素−ホルムアミド縮合物、尿素−メラミン縮合物であってもよい。これらのアミノ樹脂は、2種以上併用されてもよい。
【0122】
アミノ樹脂の含有量としては、例えば、ビヒクルを構成する樹脂(固形分)とアミノ樹脂(固形分)との質量比が、95/5〜60/40となるように設定されると好ましく、85/15〜65/35となるように設定されるとより好ましい。このようにすれば、塗料を塗布することにより形成された塗膜について、高い強度および高い耐蝕性が得られる。
【0123】
架橋硬化剤の一例であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基がブロック剤でマスクされた構造のブロックポリイソシアネート化合物が好適である。ポリイソシアネート化合物としては、HDI系(ヘキサメチレンジイシアネート等)、TDI系(トリレンジイソシアネート等)、XDI系(キシリレンジイソシアネート等)、MDI系(ジフェニルメタンジイソシアネート等)等が挙げられる。ブロック剤としては、オキシムやラクタム等が挙げられる。
【0124】
上記ポリイソシアネート化合物の含有量としては、ポリイソシアネート化合物がブロックポリイソシアネート化合物である場合、ビヒクルを構成する樹脂が有する水酸基と、ポリイソシアネート化合物が有する脱ブロック化された再生イソシアネート基とのモル比(水酸基のモル数/再生イソシアネート基のモル数)が、100/20〜100/150になるようにするとよい。
【0125】
なお、本発明の光輝性塗料組成物のビヒクルには、用途に応じて、他の熱可塑性樹脂(例えば、カルボキシル基を含まないアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等)、熱硬化性樹脂(例えば、ウレタン樹脂等)や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤、可塑剤、帯電防止剤、分散剤、皮張り防止剤、増粘剤等の粘度調整剤、平坦化剤、たれ防止剤、防黴剤、防腐剤、充填剤、染顔料(フタロシアニン系顔料、ぺリレン系顔料、キクナドリン系顔料、インジゴ系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック等)等の添加剤が含まれていてもよい。
【0126】
次に、本発明の自動車外板コート物の実施の形態について説明する。本実施の形態の自動車外板コート物は、上記に説明した本実施の形態の光輝性顔料を0.1〜30質量%含有してなるメタリックベース層を含む。本実施の形態の自動車外板コート物は、メタリックベース層以外の層(例えばクリアー塗料を塗布することによって作製できるクリアー層等)を含んでいてもよい。
【0127】
自動車の外板の塗装においては、一般的な塗膜積層形成の方法として「2コート1ベーク法」、光輝性顔料の光輝感を高める塗膜積層形成の方法として、「3コート2ベーク法」、「3コート1ベーク法」とよばれる方法が採用されている。
【0128】
「2コート1ベーク法」は、まず、下塗りおよび中塗りを施した塗装板上に、上塗りと称するメタリック顔料(本発明の光輝性顔料に相当)を含有するメタリックベース塗料(本発明の光輝性顔料組成物に相当)を塗装する。次に、このメタリックベース塗料を硬化させることなく、ウエット・オン・ウエット方式でクリアー塗料を重ね塗りし、最後に、クリアー塗膜とメタリックベース塗膜を同時に硬化させ、メタリックベース層とトップクリアー層とを形成する。
【0129】
本発明の光輝性顔料は、3コート法において、L*が40以上のカラーベース層に対して使用すると、従来の光輝性顔料にない、優れた単一発色性および光輝感の効果が期待できる点で好ましい。
【0130】
「3コート2ベーク法」は、まず、下塗りおよび中塗りを施した塗装板上に、上塗りと称するカラーベース塗料を塗装し、焼き付け硬化させて、L*が40以上のカラーベース層を形成する。次に、メタリック顔料を含有するメタリックベース塗料を塗装し、このメタリックベース塗料を硬化させることなく、ウエット・オン・ウエット方式でクリアー塗料を重ね塗りし、最後に、クリアー塗膜とメタリックベース塗膜を同時に硬化させ、メタリックベース層とトップクリアー層とを形成する。
【0131】
「3コート1ベーク法」は、まず、下塗りおよび中塗りを施した塗装板上に、上塗りと称するカラーベース塗料を塗装(L*が40以上)し、焼き付け硬化させることなく、メタリック顔料を含有するメタリックベース塗料を塗装する。次に、このメタリックベース塗料をも硬化させることなく、ウエット・オン・ウエット方式でクリアー塗料を重ね塗りし、最後に、クリアー塗膜、メタリックベース塗膜、カラーベース塗膜を同時に硬化させて、カラーベース層、メタリックベース層、およびトップクリアー層を形成する。
【0132】
本発明の自動車外板コート物は、例えば
図3に示すような、自動車の外装である外板41、ラジエータグリル42、サイドモール43、ドアミラー44、バックパネル45、バンパー46、エンブレム47、タイヤホイールカバー48等を含む。以下に、本発明の自動車外板コート物の一例を、外板41を例に挙げて説明する。
【0133】
外板においては、
図4に示すように、鋼板51(自動車外板用被塗基材)の一方の主面上に、下塗り部52と上塗り部53とがこの順に形成されている。下塗り部52は、鋼板51側から、化成処理層52a、カチオン電着層52b、中塗り層52cをこの順に備える。2コート1ベーク法の場合に、上塗り部53は、鋼板51側から、本発明の光輝性顔料を含むメタリックベース層53aと、クリアー層53bとをこの順に備える。本発明の自動車外板コート物の一例は、本発明の光輝性顔料を含む組成物(本発明の光輝性塗料組成物)を用いて形成されたメタリックベース層53aを備えているので、薄片状粒子の単一発色性に優れ、かつ、塗膜の仕上がり性の良好な外観を有している。
【0134】
なお、本発明において、化成処理層52a、カチオン電着層52b、中塗り層52c、およびトップクリアー層53bを構成する材料および形成方法については、特に制限されず、従来から公知のものと同様でよいが、例えば、各々、一例として下記が挙げられる。
【0135】
化成処理層52aは、鋼板51の腐食を防止するために設けられる。化成処理層52aは、例えば、リン酸亜鉛被膜からなる。
【0136】
カチオン電着層52bは、鋼板51の耐蝕性を向上させ、カチオン電着層52bよりも上に形成される層の安定性を向上させ、かつ、カチオン電着層52bよりも上に形成される層の形成を容易化するために設けられる。カチオン電着層52bは、例えば、アクリル・ウレタン系樹脂を含む硬化塗膜などかならなる。
【0137】
中塗り層52cは、中塗り層52cよりも下の層と上の層との密着性を高め、かつ、中塗り層52cよりも上の層の耐チッピング性を向上させるために設けられる。中塗り層52cは、例えば、アクリル・メラミン系樹脂を含む硬化塗膜などからなる。
【0138】
トップクリアー層53bは、光沢のある外観を付与するため、かつ、防汚性を向上させるために設けられる。クリアー層53bは、例えば、アクリル・メラミン系樹脂を含む硬化塗膜などからなる。
【実施例】
【0139】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0140】
実施例および比較例で用いた薄片状ガラス粒子、薄片状アルミナ粒子、合成マイカ粒子の組成を表4〜表6に示す。
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
(実施例1)
実施例1の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.45μm、最小厚み0.26μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0145】
まず、
図2に示す、熔融ガラスの流れを利用して薄片状ガラスを製造する装置を用いて、可変速電動モータに取り付けられたテーパ状のカップ22を所定の速度で回転させ、かつ、カップ22内に熔融ガラスを上方から流入した。遠心力によって、カップ22内の熔融ガラスがリム23を越えて外方へ送り出され、空気流によって平板状に維持されつつ小さな薄片状ガラスに破砕した。ここで得られた薄片状ガラスは、チャンバ26内で収集され、かつ、サイクロン収集・フィルター部に送られて、さらに冷却固化した。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=40.1μmの薄片状ガラス粒子を作製した。厚み分布を決める要素は、熔融ガラスの流量の安定性、プレート24,25間の距離やプレート24,25間の空気流の速度等である。
【0146】
この薄片状ガラス粒子について、分級を行った。目開き45μmのふるいを用い、その下段に受皿を配置して、所定のふるい時間でふるって粗粉を除去し、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の粒度分布、屈折率、厚み、を測定したところ、平均粒径(D50)が24.1μm、D90が44.0μm、屈折率が1.53、平均厚みが0.45μm、最小厚みが0.26μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−19mVであった。
【0147】
次に、分級した薄片状ガラスを、酸化スズ(触媒核)で処理した後、二酸化チタンによって被覆した。触媒核とは、被膜析出の触媒となるものである。具体的には、下記のように行った。
【0148】
まず、常温のイオン交換水3Lを攪拌しながら、塩酸にてpH1.6に調整し、薄片状ガラス粒子300gを加えスラリーとした。このスラリーに、予め塩化第二スズ2gをpH2の塩酸水30mLに溶解したスズ液を1.5ml/分の割合で定量添加後、その状態を20分間保持して、薄片状ガラス粒子の表面に酸化スズの処理を施した。
【0149】
次いで、スラリーを35質量%塩酸水でpH1.0にするとともに75℃に加温した。攪拌を行いながら、得られた金属酸化物層形成用スラリーに、四塩化チタン水溶液(Ti分として16.5質量%)を2.0mL/分の割合で定量添加するとともに、水酸化ナトリウムを10質量%に溶解して得た苛性ソーダを金属酸化物層形成用スラリーのpHを1.0に保持するように添加した。苛性ソーダの添加は、光輝感のあるシルバーパール調の色調品が得られるまで継続した。
【0150】
目標の色調品が得られたら、生成物を減圧ろ過で採取し、純水で水洗し、150℃で乾燥した後、600℃で焼成した。
【0151】
以上のような方法によって、薄片状ガラスが、実質的に二酸化チタンからなる層(金属酸化物層)で覆われた、実施例1の光輝性顔料を得た。
【0152】
得られた実施例1の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が24.5μm、D90が44.1μm、光輝性顔料の比表面積が1.7m
2/g、二酸化チタン層の厚み変動係数が7.4%、篩い残分が0.02質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。篩い残分は、ふるい残分法(JIS-K-5101に準拠)により得られる(後述の<フィルトレーション性の評価>参照)。
【0153】
(実施例2)
実施例2の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.35μm、最小厚み0.16μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0154】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚みが0.35μmとなるように調整して作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=40.9μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0155】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の、平均粒径(D50)は24.3μm、D90は44.1μm、屈折率は1.53、平均厚みは0.35μm、最小厚みは0.16μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−19mVであった。
【0156】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン層(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例2の光輝性顔料として得た。得られた実施例2の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が24.6μm、D90が44.3μm、光輝性顔料の比表面積が1.7m
2/g、二酸化チタン層の厚み変動係数が7.4%、篩い残分が0.03質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0157】
(実施例3)
実施例3の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.55μm、最小厚み0.35μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0158】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.55μmとなるように調整して作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=40.5μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0159】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラスを、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の、平均粒径(D50)は24.4μm、D90は44.2μm、屈折率は1.53、平均厚みは0.55μm、最小厚みは0.35μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラス粒子のゼータ電位は−19mVであった。
【0160】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン層(金属酸化物層)によって覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例3の光輝性顔料として得た。
【0161】
得られた実施例3の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が24.6μm、D90が44.3μm、光輝性顔料の比表面積が1.7m
2/g、二酸化チタン層の厚み変動係数が7.4%、篩い残分が0.03質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0162】
(実施例4)
実施例4の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.45μm、最小厚み0.25μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0163】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.45μmとなるように調整して作製した以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径35μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=35.8μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0164】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。ただし、ふるいの目開きのサイズは38μmとした。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は21.4μm、D90は35.4μm、屈折率は1.53、平均厚みは0.45μm、最小厚みは0.25μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−19mVであった。
【0165】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例4の光輝性顔料として得た。
【0166】
得られた実施例4の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が21.8μm、D90が35.8μm、光輝性顔料の比表面積が1.7m
2/g、二酸化チタン層の厚み変動係数が7.4%、篩い残分が0.01質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0167】
(実施例5)
実施例5の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.45μm、最小厚み0.25μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0168】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.45μmとなるように調整して作製した以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径45μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=46.8μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0169】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラスを、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の粒度分布、屈折率、厚み、を測定したところ、平均粒径(D50)が28.4μm、D90が49.0μm、屈折率が1.53、平均厚みが0.45μm、最小厚みが0.25μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラス粒子のゼータ電位は−19mVであった。
【0170】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラスを、実施例5の光輝性顔料として得た。
【0171】
得られた実施例5の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が28.9μm、D90が49.7μm、光輝性顔料の比表面積が1.7m
2/g、二酸化チタン層の厚み変動係数が7.4%、篩い残分が0.06質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0172】
(実施例6)
実施例6の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.54、平均厚み0.45μm、最小厚み0.25μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0173】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.45μmとなるように調整して作製した以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=41.8μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0174】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は25.2μm、D90は44.5μm、屈折率は1.54、平均厚みは0.45μm、最小厚みは0.25μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラス粒子のゼータ電位は−11mVであった。
【0175】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例6の光輝性顔料として得た。
【0176】
得られた実施例6の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が25.4μm、D90が44.7μm、光輝性顔料の比表面積が2.8m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数が18.3%、篩い残分が0.04質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は3.7質量%であった。
【0177】
(実施例7)
実施例7の光輝性顔料は、アルミナ薄片状粒子(屈折率1.76、平均厚み0.35μm、最小厚み0.16μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0178】
硫酸アルミニウム18水和物223.8g、硫酸ナトリウム(無水)114.5gおよび硫酸カリウム93.7gを、450mlの脱塩水に加え、約75℃に加温しながら溶解させる。完全に溶解させた後、この溶液に硫酸チタニル溶液(濃度34.4%)2.0gを加え、混合水溶液(a)を調製した。別に、リン酸三ナトリウム12水和物0.9gおよび炭酸ナトリウム107.9gを250mlの脱塩水に溶解させ、混合水溶液(b)を調製した。この混合水溶液(a)と(b)を200mlの脱塩水に攪拌しながら同時にほぼ当量となる一定の速度で約15分間かけて添加し、更に15分間攪拌した。この溶液を蒸散乾燥し、その後1200℃で5時間熱処理した。得られた処理物に水を加えて攪拌しながら遊離の硫酸塩を溶解させたのち、不溶性の固体をろ過分離し、水洗し、乾燥させてアルミナ薄片状粒子を得た。
【0179】
このようにして得られたアルミナ薄片状粒子の平均粒径(D50)は19.9μm、D90は36.2μm、屈折率は1.76、平均厚みは0.35μm、最小厚みは0.16μmであった。塩酸水(pH=2.0)におけるアルミナ薄片状粒子のゼータ電位は−13mVであった。
【0180】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われたアルミナ薄片状粒子を、実施例7の光輝性顔料として得た。
【0181】
得られた実施例7の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が20.5μm、D90が36.5μm、光輝性顔料の比表面積が2.3m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数が18.2%、篩い残分が0.01質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は3.9質量%であった。
【0182】
(実施例8)
実施例8の光輝性顔料は、合成マイカ(市販のナトリウム四ケイ素雲母NaMg
2.5(Si
4O
10)F
2、屈折率1.58、平均厚み0.35μm、最小厚み0.16μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0183】
この合成マイカについて、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された合成マイカを、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた合成マイカの平均粒径(D50)は20.2μm、D90は34.6μm、屈折率は1.58、平均厚みは0.35μm、最小厚みは0.16μmであった。塩酸水(pH=2.0、)における合成マイカのゼータ電位は−13mVであった。
【0184】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた合成マイカを、実施例8の光輝性顔料として得た。
【0185】
得られた実施例8の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が20.4μm、D90が35.1μm、光輝性顔料の比表面積が2.5m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数が18.3%、篩い残分が0.01質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は3.9質量%であった。
【0186】
(実施例9)
実施例9の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.57、平均厚み0.45μm、最小厚み0.26μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0187】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.45μmとなるように調整して作製した以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=41.3μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0188】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は24.2μm、D90が43.9μm、屈折率が1.57、平均厚みが0.45μm、最小厚みが0.26μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−4mVであった。
【0189】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例9の光輝性顔料として得た。
【0190】
得られた実施例9の光輝性顔料は、平均粒径(D50)が24.4μm、D90が44.1μm、光輝性顔料の比表面積が8.7m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数が24.0%、篩い残分が0.02質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は0.4質量%であった。
【0191】
(実施例10)
実施例10の光輝性顔料は、薄片状ガラス(屈折率1.52、平均厚み0.45μm、最小厚み0.26μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0192】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.45μmとなるように調整して作製した以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=41.8μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0193】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は24.5μm、D90は44.2μm、屈折率は1.52、平均厚みは0.45μm、最小厚みは0.26μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラス粒子のゼータ電位は−23mVであった。
【0194】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例10の光輝性顔料として得た。
【0195】
得られた実施例10の光輝性顔料の、平均粒径(D50)は24.7μm、D90は44.3μm、光輝性顔料の比表面積は1.7m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数は7.4%、篩い残分は0.03質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は10.2質量%であった。
【0196】
(比較例1)
比較例1の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.30μm、最小厚み0.11μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0197】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.30μmとなるように調整して作製した以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=41.7μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0198】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は24.3μm、D90は44.0μm、屈折率は1.53、平均厚みは0.30μm、最小厚みは0.11μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−19mVであった。
【0199】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、比較例1の光輝性顔料として得た。
【0200】
得られた比較例1の光輝性顔料の平均粒径(D50)は24.5μm、D90は44.3μm、光輝性顔料の比表面積は1.7m
2/g、二酸化チタンの厚み変動係数は7.4%、篩い残分は0.03質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0201】
(比較例2)
比較例2の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.60μm、最小厚み0.39μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0202】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.60μmとなるように調整して作製した以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径40μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=41.5μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0203】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は24.2μm、D90は44.2μm、屈折率は1.53、平均厚みは0.60μm、最小厚みは0.39μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−19mVであった。
【0204】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、比較例2の光輝性顔料として得た。
【0205】
得られた比較例2の光輝性顔料の平均粒径(D50)は24.3μm、D90は44.3μm、光輝性顔料の比表面積は1.7m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数は7.4%、篩い残分は0.03質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0206】
(実施例11)
実施例11の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.45μm、最小厚み0.26μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0207】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.45μmとなるように調整して作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径27μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=26.2.μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0208】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。ただし、ふるいの目開きは20μmとした。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は20.6μm、D90は33.2μm、屈折率は1.53、平均厚みは0.45μm、最小厚みは0.26μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−19mVであった。
【0209】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例11の光輝性顔料として得た。
【0210】
得られた実施例11の光輝性顔料の平均粒径(D50)は21.3μm、D90は33.7μm、光輝性顔料の比表面積は1.7m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数は7.4%、篩い残分は0.01質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0211】
(実施例12)
実施例12の光輝性顔料は、薄片状ガラス粒子(屈折率1.53、平均厚み0.45μm、最小厚み0.26μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0212】
まず、
図2に示す装置を用いて、平均厚み0.45μmとなるように調整して作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄片状ガラスを得た。このように得られた薄片状ガラスを、ジェットミル型粉砕機を用いて平均粒径50μmを狙って粉砕し、平均粒径D50=51.2.μmの薄片状ガラス粒子を作製した。
【0213】
この薄片状ガラス粒子について、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された薄片状ガラス粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。ただし、ふるいの目開きは51μmとした。このようにして得られた薄片状ガラス粒子の平均粒径(D50)は32.6μm、D90は52.0μm、屈折率は1.53、平均厚みは0.45μm、最小厚みは0.26μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状ガラスのゼータ電位は−19mVであった。
【0214】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状ガラス粒子を、実施例12の光輝性顔料として得た。
【0215】
得られた実施例12の光輝性顔料の平均粒径(D50)は33.3μm、D90は52.5μm、光輝性顔料の比表面積は1.7m
2/g、二酸化チタン被膜の厚み変動係数は7.4%、篩い残分は0.20質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は8.7質量%であった。
【0216】
(比較例3)
比較例3の光輝性顔料は、アルミナ薄片状粒子(屈折率1.76、平均厚み0.30μm、最小厚み0.11μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0217】
まず、出発原料である水酸化アルミニウムを予めボールミル等で粉砕し、平均粒径が3.0μmになるよう粒度調整を行った。これと水を混合し50重量%のスラリーを作成した。そのスラリー中にリン酸アンモニウムを水酸化アルミニウムに対してリン酸イオンとして5.0×10
−3モル添加し、よく混合溶解した。
【0218】
上記原料を圧力容器に充填し、電気炉にて昇温速度0.3℃/分で600℃まで昇温し、150気圧で3時間保持を行った。容器冷却後生成物を純水で水洗し、次いで濾過を充分に行い100℃の乾燥器で12時間乾燥して白色の粒子粉体(薄片状粒子)を得た。このようにして得られたアルミナ薄片状粒子の平均粒径(D50)は19.7μm、D90が34.5μm、屈折率が1.76、平均厚みが0.30μm、最小厚みが0.11μmであった。塩酸水(pH=2.0)におけるアルミナ薄片状粒子のゼータ電位は−5mVであった。
【0219】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われたアルミナ薄片状粒子を、比較例3の光輝性顔料として得た。
【0220】
得られた比較例3の光輝性顔料の平均粒径(D50)は20.3μm、D90は35.1μm、光輝性顔料の比表面積は9.3m
2/g、二酸化チタンの厚み変動係数は24.2%、篩い残分は0.01質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は0.9質量%であった。
【0221】
(比較例4)
比較例4の光輝性顔料は、合成マイカ(市販のフッ素金雲母KMg
3(AlSi
3O
10)F
2、屈折率1.58、平均厚み0.25μm、最小厚み0.10μm)に、ルチル型二酸化チタンを被覆したものである。
【0222】
この合成マイカについて、実施例1と同様にして分級を行い、受皿で回収された合成マイカ粒子を、本実施例の光輝性顔料の基材(薄片状粒子)として得た。ただし、ふるいの目開きは45μmとした。このようにして得られた薄片状合成マイカ粒子の平均粒径(D50)は19.2μm、D90は34.7μm、屈折率は1.58、平均厚みは0.25μm、最小厚みは0.10μmであった。塩酸水(pH=2.0)における薄片状合成マイカのゼータ電位は−7mVであった。
【0223】
その後、実施例1と同様にして、光輝感のあるシルバーパール調の二酸化チタン被膜(金属酸化物層)で覆われた薄片状合成マイカ粒子を、比較例4の光輝性顔料として得た。
【0224】
得られた比較例4の光輝性顔料の平均粒径(D50)は20.1μm、D90は35.1μm、光輝性顔料の比表面積は10.5m
2/g、二酸化チタンの厚み変動係数は25.3%、篩い残分は0.01質量%であった。得られた光輝性顔料をフッ酸にて溶解させICP分析した結果、光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量は0.8質量%であった。
【0225】
また、実施例1〜8、比較例1〜4の光輝性顔料の金属酸化物層における二酸化チタンの結晶構造は、粉末X線回折法で分析した結果、ルチル型であった。
【0226】
以上のように作製された実施例1〜12、比較例1〜4の光輝性顔料の試料について、以下の方法によって輝度(明度)、塗膜仕上がり性、干渉色の単一性を評価した。また、ここで用いた粒径分布の測定方法および薄片状粒子の厚さ分布等を得る方法についても、以下に説明する。表8および表9に、実施例1〜12、比較例1〜4の評価結果を示す。
【0227】
<粒度分布の測定方法>
粒度分布の測定にレーザー回折粒度分布測定装置(「製品名マイクロトラックHRA」(日機装株式会社製))を用いた。その測定結果から、粒径が小さい側から体積累積が50%までの平均粒径(D50)と、粒径が小さい側から体積累積90%までの平均粒径(D90)と求めた。
【0228】
<薄片状粒子の厚さ分布>
本実施例では、任意の100個の薄片状粒子についてその厚さd(
図3参照)を電子顕微鏡にて測定し、平均厚み、最小厚みを得た。
【0229】
<Na
2Oの含有量>
光輝性顔料から金属酸化物層を取り除いて得られる薄片状粒子0.1gを正確に秤量し、過塩素酸(HClO
4)4mlと弗化水素酸7.5mlで溶かした後、乾固し、塩酸(1+1)2mlで溶解後、炎光光度計でナトリウムの波長589nmの吸光光度を測定した。金属酸化物層が形成される前の薄片状粒子中に含まれるNa
2Oの含有量についても同様にして求めた(表4〜6参照)。
試料中の酸化ナトリウム量a(g)を下記の式より算出した。
a(g)=測定値(ppm)×10
−3×(100/1000)
Na
2O(%)=(a/W) × 100
W:光輝性顔料の採取量(g)
【0230】
<TiO
2の含有量>
光輝性顔料を白金皿に0.2g正確に秤量し、過塩素酸5mlを加え、さらに弗化水素酸10mlを加え、白金線でよくかき混ぜ、ホットプレート上で加熱溶解し、乾固する。放冷後、塩酸(1+1)5mlを加え、加熱溶解する。冷後200mlメスフラスコに移し入れ、200mlに定容する。この溶液を用いてICPで下記A(TiO
2の質量)を測定する。
[ICP分析条件]
波長:334.941nm
キャリアガス:1.0 L/min
クーラントガス:11.5 L/min
出力:1.2KW
測光値:30000X3
標準試料濃度テーブル(ppm)
測定法:波長シーケンシャル
(結果はppmで表示されるので、n=2の平均値をもって測定値とする。)
TiO
2(%)=(A×10−3×1.6681/W)×(200/1000)×100
A:測定値
W:光輝性顔料の採取量(g)
【0231】
<光輝性顔料の比表面積>
光輝性顔料1gを正確に秤量し測定用セルに入れ、ユアサアイオニクス株式会社製 NOVA1000を用いて、光輝性顔料の比表面積を測定した。
【0232】
<ゼータ電位>
予め、薄片状粒子と同一組成の平板試料と、pH2.0の塩酸水とを準備して、電気泳動光散乱法にて、大塚電子株式会社製 ELS-6000と平板試料セルとを用い、ゼータ電位を測定した。
【0233】
<フィルトレーション性の評価>
ふるい残分法(JIS-K-5101に準拠)
まず、JIS-Z-8801 標準ふるい330mesh(目開き45μm)を110℃で乾燥して質量(J1)をはかった。光輝性顔料10g(試料)を、ガラス容器に入れ、純水50mlを加えて十分にかきまぜた後、光輝性顔料のうちの液中に浮遊する部分をふるい上に移す。再び、純水50mlを残りの試料に注ぎ加えて、光輝性顔料のうちの液中に浮遊する部分を前記と同様にしてふるい上に移し、この操作を数回繰り返して試料を全部ふるい上に移す。次いで、純水を少量ずつ注ぎかけながら、ふるいを振り動かして試料の大部分をふるい目を通過させる。必要に応じてガラス棒を用いて注意しながらふるい上の試料をほぐす。
【0234】
ふるいを径が約120mmの受皿に入れ、ふるいの網上15mmになるまで純水を入れ、ハケを用いて網上を掃く。20回掃く毎にふるいを皿から引き上げ、純水をふるい目から流し出し、40回毎にさらに皿の中の水を取り替える。これを繰り返して皿の中の水に試料が認められなくなってから、ハケに付着した固形物を水を用いてふるいの上に洗い落とし、ふるいをよく洗う。ふるいを乾燥して質量(J2)をはかる。次式によって篩い残分I(%)を算出する。下記残量は、ふるいの質量(J2)からふるいの質量(J1)を差し引いた値である。
I=J/S×100
I:篩い残分(%)
J:残量の質量(g)
S:試料の質量(g)
【0235】
フィルトレーション性の評価となる篩い残分Iは0.2%以下が好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。
【0236】
<金属酸化物層の厚み>
金属酸化物層の厚みは、光輝性顔料を樹脂に抱埋させて固めたものを破断し、断面を導電処理のためPt-Pdコーティングを施した。その断面を電子顕微鏡で観察し、金属酸化物層の厚みを測定した。5個の粒子の観察を行い、1個当たり10箇所の厚みを測定した。このようにして得られた金属酸化物層の厚みから求めた、厚みの標準偏差及び平均厚みの値を用いて、金属酸化物層の厚み変動係数を算出した。
【0237】
<塗装サンプルの作製>
アクリル樹脂(製品名「アクリデックA−322」(大日本インキ化学工業株式会社製))78質量%、ブチル化メラミン樹脂(製品名「スーパーベッカミンL−117−60」(大日本インキ化学工業株式会社製))16質量%、実施例1〜12、比較例1〜4で得られた光輝性顔料6質量%に、シンナーを適量加えて、粘度13Pa・s(株式会社安田精機製作所製フォードカップNo.4/20℃)となるように攪拌機を用いてこれらを混合して、メタリックベース塗料(光輝性顔料組成物)を調整した。このメタリックベース塗料を、スプレーガン(アネスト岩田株式会社製W−100)を用いて塗装板(塗り色:マンセル表色系N=9.5(CIEL*a*b*表色系 L*=95))の上にメタリックベース塗膜を形成した。
【0238】
次に、アクリル樹脂(製品名「アクリデックA−345」(大日本インキ化学工業株式会社製))72質量%、ブチル化メラミン樹脂(製品名「スーパーベッカミンL−117−60」(大日本インキ化学工業株式会社製))28質量%に、シンナーを加えて、粘度24Pa・s(株式会社安田精機製作所製フォードカップNo.4/20℃)となるように攪拌機を用いてこれらを混合して、クリアー塗料を調整した。このクリアー塗料を、スプレーガン(アネスト岩田株式会社製W−100)を用いて、メタリックベース塗膜上に塗装し、その後に焼成(140℃、30分)を行い、メタリックベース層とトップクリアー層を形成した。焼成後の塗膜厚みは、メタリックベース層が膜厚15μm、トップクリアー層が30μmであった。
【0239】
<明度L*(−15°)>
マルチアングルカラー&エフェクトコントロール測定器(製品名:BYK−mac、BYK−Gardner社製)を用いて、メタリックベース層中の光輝性顔料のハイライトにおける輝度を評価した。光輝性顔料を含むメタリックベース層では、ハイライトではよく光を反射して高輝度となる一方、シェードでは暗くなり、「フロップ」と呼ばれる明度および色彩の角度変化がある。
【0240】
図5に示したように、塗膜61の表面に垂直な方向から45°の位置(すなわち、膜面から45°)に光源62を設け、塗膜面に対し45°の角度から光を入射させる。入射した光の正反射の方向(すなわち、膜面から45°)から光源の逆方向へ15°ずれた角度が、光輝性顔料からの反射光が最大となる。この位置を−15°と呼ぶ。ディテクター63に入射した反射光のL*a*b*を測定した。明度L*は、135以上が好ましく、140以上がさらに好ましい。
【0241】
<塗膜仕上がり性の評価>
マイクロウェーブスキャン(Gardner社製)を用いて、塗膜の仕上がり性を評価した。光輝性顔料が、塗膜の仕上がり性に及ぼす影響をWa(0.1〜0.3mm)値で評価した。Wa値は15以下が好ましく、10以下がより好ましく、9,7以下が更に好ましい。
【0242】
<光輝性顔料を含む塗膜の単一発色性の評価>
D65自然光源を用いて、単一発色性の程度を目視で観察した。単一発色性の程度(干渉混色度)は、次の3段階で評価した。単一発色性は2以上が好ましく、3がさらに好ましい。
3:干渉色が認められない
2:干渉色が多少認められる
1:干渉色が多く認められる
【0243】
【表7】
【0244】
【表8】
【0245】
以上の結果(表7、表8)から、実施例1〜12のように、薄片状粒子の平均厚みが0.35〜0.55μmであって、最小厚みが0.15μm以下の薄片状粒子を実質的に含まない光輝性顔料を用いれば、塗装仕上がり性Waが15以下と良好であり、且つ、薄片状粒子の厚みに起因する干渉色の発生が抑制された、単一発色性が優れた塗装物を提供できる。
【0246】
さらに、実施例1、3〜6、10〜12のように、薄片状粒子の最小厚みが、0.2μm以上であり、光輝性顔料の製造に使用される薄片状粒子中のNa
2Oの含有量が3〜11質量%であると、より一層単一発色性が優れた塗装物を提供できる。また、実施例1〜10、11のように、光輝性顔料のD90が30〜50μmであると、より塗布仕上がり性が優れた塗装物を提供できる。また、実施例1、3〜6のように、薄片状粒子の最小厚みが0.2μm以上であり、Na
2Oの含有量が3質量%以上9質量%未満(表4〜6参照)であり、金属酸化物層の厚み変動係数が20%以下であると、より一層単一発色性が優れ、より塗布仕上がり性が優れ、且つ、明度が高い塗装物を提供できる。