特許第6014057号(P6014057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014057
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】多層のナノ構造化物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20060101AFI20161011BHJP
   B32B 9/00 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   B32B7/02 103
   !B32B9/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-558019(P2013-558019)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公表番号】特表2014-511779(P2014-511779A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】US2012025223
(87)【国際公開番号】WO2012125247
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/452,403
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】タ−ファ ユ
(72)【発明者】
【氏名】モーゼス エム.デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カルク シー.バング
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−324604(JP,A)
【文献】 特開2007−183674(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0147674(US,A1)
【文献】 特表2008−527415(JP,A)
【文献】 特開2004−272197(JP,A)
【文献】 特開2002−082207(JP,A)
【文献】 特開2003−294904(JP,A)
【文献】 特開2007−203712(JP,A)
【文献】 特開2011−102977(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0001681(US,A1)
【文献】 特開2001−281403(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/127581(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101339258(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する基材と、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する第1層であって、前記第1層は、前記第1層の前記第2主表面から突出し、かつ前記基材の前記第1主表面から離れているナノ粒子を備える高分子材料を含み、前記ナノ粒子の寸法は、150ナノメートル〜300ナノメートルの範囲内にあり、前記第1層は、前記突出するナノ粒子を考慮することなく、50ナノメートル〜150ナノメートルの範囲の平均厚さを有する、第1層と、
第1主表面及び第2主表面を有する第2層であって、前記第2層の前記第1主表面は、前記第1層の前記第2主表面上にあり、前記第2層の前記第2主表面は5:1以上の高さ:幅の比を有するナノ形体を含むランダムナノ構造化異方性表面である第1ナノ構造化表面である、第2層とを含む、物品。
【請求項2】
前記第1層が、前記突出するナノ粒子を考慮することなく、75ナノメートル〜125ナノメートルの範囲の平均厚さを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第2層の前記第2主表面が、ランダムナノ構造化表面である、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記第1ナノ構造化表面が、異方性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記第1層の前記第1主表面と前記第2層の間に配置された機能層を更に含み、前記機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記第1ナノ構造化表面上に配置された機能層を更に含み、前記機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2011年3月14日出願の米国特許仮出願第61/452403号の利益を主張するものであり、その開示の全容をここに援用するものである。
【背景技術】
【0002】
光が1つの媒体から他へと移動するときは、光の一部が2つの媒体間の境界面から反射される。例えば、典型的には、透明なプラスチック基材上で光っている光の約4〜5%が上面で反射される。
【0003】
高分子材料の反射を低減するために様々なアプローチが採用されている。1つのアプローチは、反射防止コーティングを使用することであり、例えば、反射を低減するために、対照的な屈折率の交互の層を備える、透明な薄膜構造体からなる多層反射コーティングを使用することである。しかしながら多層反射防止用コーティング技術により広帯域の反射防止を達成することは難しい。
【0004】
他のアプローチは、広帯域反射防止のために、サブ波長表面構造体(サブ波長スケールの表面グレーティングなど)を使用することを伴う。リソグラフィなどでサブ波長表面構造体を作製する方法は、比較的複雑かつ費用がかかる傾向にある。加えて、サブ波長スケールの表面グレーティングを用いるロール・ツー・ロールプロセスからの高次回折を最低限に抑えて、一貫して低反射性である広帯域反射防止を得ることは困難ではある。プラズマエッチングにより、ランダムナノ構造化物品を作製する方法が、高性能で、比較的低反射(すなわち、可視光範囲にわたる平均反射が0.5パーセント未満)の反射防止の解決法を提供するために開発されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナノ構造化又はナノ多孔質の反射防止表面は、光学フィルム用途の高度に透明な高分子基材上に適用され得る。しかしながら、ナノ構造化表面層と基材の屈折率の不一致、ナノ構造化表面層の厚さの変動、又は両方のメカニズムの組み合わせにより、干渉縞、すなわち虹彩様反射が存在する場合があり、これは光学フィルムの透明な視覚性能を大きく減少させ得る。更に、ナノ構造化表面層と基材との屈折率の不一致は、顕著な界面反射となり、物品を通じた全反射の一因となる。高性能で、比較的低反射(すなわち可視範囲にわたる平均反射が0.5%未満)で、低複屈折(すなわち光遅延値が200nm未満を有する)で、反射防止を提供する解決策が、光学フィルム用途に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本開示は物品について記述し、この物品は、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する基材と、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する第1層であって、この第1層は、第1層の第2主表面から突出し、かつ基材の第1層から離れているナノ粒子を備える高分子材料を含み、第1層は、突出するナノ粒子を考慮することなく、50ナノメートル〜150ナノメートルの範囲の平均厚さ(一部の実施形態では、75ナノメートル〜125ナノメートル)を有する、第1層と、
第1主表面及び第2主表面を有する第2層であって、この第2層の第1主表面は、第1層の第2主表面上にあり、第2主表面は第1ナノ構造化表面である、第2層とを含む。
【0007】
必要に応じて、本明細書に記載の物品は、第1層の第1主表面と第2層の間に配置された機能層(すなわち透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つ)を更に含む。必要に応じて、本明細書に記載の物品は、第1ナノ構造化表面上に配置された機能層(すなわち透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つ)を更に含む。
【0008】
必要に応じて、本明細書に記載の物品は、基材の第2主表面上の第2層を更に含み、この第2層はナノ構造化表面を有する。必要に応じて、本明細書に記載の物品は、基材の第1主表面と第2層の間に配置された機能層(すなわち透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つ)を更に含む。必要に応じて、本明細書に記載の物品は、第2ナノ構造化表面上に配置された機能層(すなわち透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つ)を更に含む。
【0009】
本明細書に記載のナノ構造化物品は、高性能で、低干渉縞の反射防止光学物品の作製に使用することができる。機能層(すなわち透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つ)は、ランダムナノ構造化表面上に配置され、このナノ構造化物品はまた、干渉縞と、基材から機能層内に(逆もまた同様)ナノ構造化表面層を通る境界面の反射とを最小限に抑え、光学性能を大きく強化することができる。
【0010】
本発明に記載される物品の実施形態は、ディスプレイ用途(例えば液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、又はプラズマディスプレイ)、光抽出、電磁干渉(EMI)遮蔽、眼科用レンズ、フェイスシールドレンズ若しくはフィルム、ウィンドウフィルム、建築用途の反射防止、並びに建築用途若しくは交通標識を含む多くの用途で有用である。本明細書に記載のナノ構造化物品はまた、ソーラー用途(ソーラーフィルムなど)で有用である。これらは、太陽熱高温液体/空気加熱パネル、又は任意の太陽エネルギー吸収デバイスの前面として、追加のナノスケール表面構造体を備える、マイクロ若しくはマクロ−コラムを有する太陽熱吸収表面用に、アモルファスシリカ光電池又はCIGS光電池で作製された可撓性太陽光電池の前面用に、及び可撓性光電池の上面に適用されたフィルムの前面用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示において有用なコーティング装置の第1部分斜視図。
図2】異なる視点からとられた、図1の装置の第2部分斜視図。
図3】そのガス含有チャンバから取り外された、コーティング装置の他の実施形態の部分斜視図。
図4】異なる視点からとられた、図3の装置の第2部分斜視図。
図5】本明細書に記載される例示的な多層ナノ構造化反射防止物品を用いるディスプレイの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
代表的な基材には、高分子基材、ガラス基材又は窓、及び機能デバイス(例えば有機発光ダイオード(OLED)、ディスプレイ、及び光起電性デバイス)が挙げられる。典型的には、高分子基材は、約12.7マイクロメートル(0.0005インチ)〜約762マイクロメートル(0.03インチ)の範囲の厚さを有するが、他の厚さもまた有用であり得る。
【0013】
基材用の代表的な高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、熱可塑性樹脂ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレンナフタレート、スチレンアクリロニトリル、シリコーン−ポリオキサミドポリマー、フルオロポリマー、三酢酸セルロース、環状オレフィンコポリマー、及び熱可塑性樹脂エラストマーが挙げられる。半結晶性ポリマー(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)は、良好な機械的強度及び寸法安定性を必要とする用途に特に望ましい場合がある。他の光学フィルム、低複屈折基材用には、例えば三酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、及び環状オレフィンコポリマーは、配向によって誘発される偏光、又は、他の光学構成要素(偏光子、電磁波シールド部、又は光学ディスプレイデバイスにおける静電容量式タッチ機能層など)との二色性干渉を最小限に抑える若しくは回避するのに特に望ましい場合がある。
【0014】
高分子基材は、例えば溶融押出成形注型、溶融押出成形カレンダー工法、二軸延伸を伴う溶融押出成形、吹込みフィルムプロセス、及び必要に応じて二軸延伸を伴う溶媒注型によって形成することができる。一部の実施形態では、基材は、低いヘイズ(1%未満など)及び低複屈折(光遅延値が50nm未満など)を備える非常に透明(例えば、可視スペクトルにおいて少なくとも90%の透過率)である。一部の実施形態では、基材は微細構造化表面又は充填剤を有し、曇っている、すなわち拡散性外観をもたらす。
【0015】
必要に応じて、基材は偏光子(反射性偏光子又は吸収型偏光子など)である。様々な偏光子薄膜は、例えば全複屈折光学層、部分複屈折光学層又は全等方光学層の何らかの組み合わせから構成される多層光学薄膜など、基材として使用されてもよい。多層光学薄膜は、10個以内の層、数百、又は更には数千の層を有することができる。代表的な多層偏光薄膜としては、ディスプレイパネルにおいて輝度を向上させる及び/又はグレアを低減させるために、液晶ディスプレイ装置などの、広範な用途において使用されるものが挙げられる。偏光薄膜は、サングラスに用いることで光強度及びグレアを低減するタイプであってもよい。偏光薄膜は、偏光薄膜、反射性偏光薄膜、吸収性偏光薄膜、拡散体薄膜、輝度向上フィルム、回転フィルム、ミラーフィルム又はこれらの組み合わせを含み得る。代表的な反射偏光薄膜としては、米国特許第5,825,543号(Ouderkirkら)、同第5,867,316号(Carlsonら)、同第5,882,774号(Jonzaら)、同第6,352,761(B1)号(Hebrinkら)、同第6,368,699(B1)号(Gilbertら)、及び同第6,927,900(B2)号(Liuら)、米国特許出願公開第2006/0084780(A1)号(Hebrinkら)、及び同第2001/0013668(A1)号(Neavinら)、及びPCT公開番号WO 95/17303号(Ouderkirkら)、WO 95/17691号(Ouderkirkら)、WO95/17692号(Ouderkirkら)、WO 95/17699号(Ouderkirkら)、WO 96/19347号(Jonzaら)、WO 97/01440号(Gilbertら)、WO 99/36248号(Neavinら)、及びWO99/36262号(Hebrinkら)に報告されているものが挙げられ、これらの開示は本明細書を援用するものである。代表的な反射偏光薄膜としては、3M Company(St.Paul,MN)により商品名「VIKUITI DUAL BRIGHTNESS ENHANCED FILM(DBEF)」、「VIKUITI BRIGHTNESS ENHANCED FILM(BEF)」、「VIKUITI DIFFUSE REFLECTIVE POLARIZER FILM(DRPF)」、「VIKUITI ENHANCED SPECULAR REFLECTOR(ESR)」、及び「ADVANCED POLARIZER FILM(APF)」で市販されているものも挙げられる。代表的な吸光偏光薄膜は、例えば、株式会社サンリッツ(東京、日本)から商品名「LLC2−5518SF」で市販されている。
【0016】
光学薄膜は、少なくとも1つの非光学層(すなわち光学薄膜の光学特性の決定に著しく関与しない層)を有してよい。この非光学層を用いて、例えば、機械特性、化学特性、光学特性、引裂き又は穿刺抵抗、耐候性、及び/若しくは耐溶剤性を付与する、又は向上させてよい。
【0017】
代表的なガラス基材には、例えば融解金属床上に溶融ガラスをフローティングさせることによって作製されるような板ガラス(ソーダ石灰ガラスなど)が挙げられる。一部の実施形態(建築用途及び自動車用途など)では、ガラスのエネルギー効率を向上させるために、ガラスの表面上に低放射率(低放射)コーティングを含むのが望ましい場合がある。ガラスの電子−光学特性、触媒特性、導電特性を向上させるために、一部の実施形態では他のコーティングが望ましい場合もある。
【0018】
基材の表面に配置された第1層が存在する。本明細書に記載の第1層は、従来の共押出法、溶媒流延法、又はコーティング法によって供給することができる。必要に応じて、第1層上に存在するナノ構造化表面を含む第2層が存在する(以下に更に詳細に説明される)。第1層を構成するポリマーは、基材と化学的に異なっていてもよく、あるいは化学的に同じであってもよく、1.45〜1.65の屈折率を有する。第1層のマトリックスは屈折率Nを有するのが好ましく、これは以下の式をほぼ満たす。
【0019】
=((Ns))0.5
式中、Nsは、基材の屈折率であり、Nは、ナノ構造化表面を含む第2層の屈折率である。
【0020】
一部の実施形態では、第1層に存在するナノ粒子は、150ナノメートル〜300ナノメートル(一部の実施形態では150ナノメートル〜250ナノメートル)の平均直径範囲を有してほぼ球状である。
【0021】
第1層の鉱物粒子は、金属酸化物系粒子(例、シリカ、二酸化チタン、アルミナ、又はジルコニア)から選択されるのが好ましい。鉱物粒子は、表面処理又はコーティングを含んでもよい。かかる処理は、例えばポリマー中の粒子の分散を改善し、劣化に対して粒子を保護し、あるいは、粒子との接触を介してポリマーが劣化するのを防ぐことを意味する。ポリマー充填剤の分野で既知である、全ての既知の表面処理を使用することができる。例えば、いずれか既知のタイプのシリカが、ポリエステル系組成物に用いることができる。例えば、ヒュームドシリカ、燃焼法によるシリカ、析出法によるシリカ、又はコロイダルシリカ。コロイダルシリカの使用は、良好な粒子分散を有する組成物を得るのに特に適切である。第1層の粒子の濃度は、0.01wt.%〜5wt.%の範囲である(一部の実施形態では、0.01wt.%〜1wt.%)。
【0022】
第1層は、突出するナノ粒子を考慮することなく、50ナノメートル〜150ナノメートルの(一部の実施形態では75ナノメートル〜125ナノメートル)の範囲の平均厚さを有する。
【0023】
本明細書に記載の第1層上の第2層は、ナノ構造化又はナノ多孔質表面を含む。ナノ構造化表面は、約2:1以上の高さ:幅の比(一部の実施形態では、少なくとも5:1、10:1、25:1、50:1、75:1、100:1、又は更には少なくとも200:1)を有するナノ形体を含むランダムナノ多孔表面又はランダムナノ構造化異方性表面であってもよい。ランダムナノ構造化異方性表面は、例えばナノピラー若しくはナノコラム、又はナノピラー若しくはナノコラムを含む連続的なナノ壁を含むことができる。好ましくは、ナノ機構は、基材とほぼ垂直である、急勾配の側壁を有する。一部の実施形態では、ナノ機構の大部分は、分散相材料で末端保護されている。表面における分散相の濃度(マトリックス内部に対して)は、例えば約5wt.%〜約90wt.%(一部の実施形態では、約10wt.%〜約75wt.%)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、分散相の濃度は、マトリックス内よりも、マトリックスの表面の方が高い。ランダムナノ構造化表面を作製する方法は、ナノ分散相を含むマトリックスを提供することと、プラズマを使用してこのマトリックスを異方性にエッチングして、ランダムナノ構造化異方性表面を形成することとを含む。他の方法は、ナノ分散相を含むマトリックスを提供することと、プラズマを使用して、このナノ分散相の少なくとも一部分をエッチングして、ランダムなナノ構造化表面を形成することと、を含む。本明細書で使用するとき、「プラズマ」は、電子、イオン、中性分子、及びフリーラジカルを含有する物質の、部分的にイオン化されたガス又は液体状態を意味する。この方法は、中程度の真空条件(約5ミリトール(0.67Pa)〜約10ミリトール(1.3Pa)の範囲など)で実施することができる。それらは、円筒型反応性イオンエッチング(円筒型RIE)を使用して、ロールツーロール(すなわち連続的な)プロセスとして実施される。本明細書に記載のナノ構造化物品の実施形態は、同じマトリックス材料及びナノ分散相を含む、非構造化物品と比較して、反射率において有意な低減を呈する。本明細書に記載のナノ構造化物品のいくつかの実施形態はまた、防曇特性、洗浄の容易さ、抗菌活性、親水性又は疎水性など、追加的な望ましい特性も呈する。
【0024】
典型的には、本明細書に記載のナノ構造化表面を備える第2層は、マトリックス(すなわち連続相)、及びマトリックス中のナノスケール分散相を含む。ナノスケール分散相に関しては、寸法は、ナノスケール分散相の約100nm未満の最小寸法のものとする。マトリックスは例えば、高分子材料、液体樹脂、無機材料、又は合金、あるいは固溶体(混和性ポリマーを含む)を含むことができる。このマトリックスは、例えば、架橋性材料(例えば、架橋性材料は、少なくとも1つの架橋可能である材料、例えば、マルチ(メタ)アクリレート、ポリエステル、エポキシ、フルオロポリマー、ウレタン、又はシロキサン(これらはブレンド又はコポリマーを包含する)を架橋することで調製されたものである)又は熱可塑性材料(ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ナイロン、シロキサン、フルオロポリマー、ウレタン、環状オレフィンコポリマー、三酢酸セルロース、又はジアクリル酸セルロース(これらのブレンド又はコポリマーを包含する)のうちの少なくとも1つなど)を含み得る。他のマトリックス材料は、酸化ケイ素又は炭化タングステンの少なくとも一方を含み得る。
【0025】
第1層及び第2層の両方に有用な高分子材料には、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。好適な熱可塑性物質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、熱可塑性樹脂ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレンナフタレート、スチレンアクリロニトリル、シリコーン−ポリオキサミドポリマー、三酢酸セルロース、フルオロポリマー、環状オレフィンコポリマー、及び熱可塑性樹脂エラストマーが挙げられる。
【0026】
第1層及び第2層の両方に適した熱硬化性樹脂には、アリル樹脂((メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、及びポリエーテルアクリレートが挙げられる)、エポキシ、熱硬化性ポリウレタン、シリコーン、又はポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。これらの樹脂は、対応するモノマー又はオリゴマーを含む、重合性組成物の反応生成物から形成され得る。
【0027】
一実施形態では、重合性組成物は少なくとも1つのモノマー又はオリゴマーの(メタ)アクリレート、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートを含む。典型的には、モノマー又はオリゴマーの(メタ)アクリレートはマルチ(メタ)アクリレートである。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリル及びメタクリル酸のエステルを指すために使用され、「マルチ(メタ)アクリレート」は、一般に(メタ)アクリレートポリマーと呼ばれる、「ポリ(メタ)アクリレート」と反対に、1つ又は2つ以上の(メタ)アクリレート基を含有する分子を指す。最も多く、マルチ(メタ)アクリレートは、ジ(メタ)アクリレートであるが、例えばトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレートを採用することも意図されている。
【0028】
好適なモノマー又はオリゴマーの(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、1−プロピル(メタ)アクリレート、及びt−ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸の(フルオロ)アルキルエステルモノマー、一部が、又は完全にフッ素化されているモノマー(トリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど)を含んでもよい。
【0029】
市販のマルチ(メタ)アクリレート樹脂の例としては、例えば、三菱レイヨン株式会社(東京、日本)から商品名「DIABEAM」で入手可能なもの;Nagase & Company(New York,NY)から商品名「DINACOL」で入手可能なもの;新中村化学工業株式会社(和歌山、日本)から商品名「NK ESTER」で入手可能なもの;大日本インキ化学工業(東京、日本)から商品名「UNIDIC」で入手可能なもの;東亞合成株式会社(東京、日本)から商品名「ARONIX」で入手可能なもの:NOF Corp.(White Plains,NY)から商品名「BLENMER」で入手可能なもの;株式会社日本化薬東京(東京、日本)から商品名「KAYARAD」で入手可能なもの;並びに共栄社化学株式会社(大阪、日本)から商品名「LIGHT ESTER」及び「LIGHT ACRYLATE」で入手可能なものが挙げられる。
【0030】
ウレタンマルチ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、Sartomer(Exton,PA)から商品名「PHOTOMER 6000シリーズ」(例えば、「PHOTOMER 6010」及び「PHOTOMER 6020」)、及び「CN 900シリーズ」(例えば「CN966B85」、「CN964」、及び「CN972」)で、市販されている。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーもまた、例えば、Cytec Industries Inc.(Woodland Park,NJ)の商品名「EBECRYL 8402」、「EBECRYL 880,7」及び「EBECRYL 4827」で、市販されている。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、式OCN−R−NCOのアルキレン又は芳香族ジイソシアネートとポリオールとの初期反応により調製することもできる。典型的に、ポリオールは、化学式HO−R−OHのジオールであり、式中、Rは、C2〜100アルキレン又はアルキレン基であり、RはC2〜100アルキレン基である。この中間生成物は、次いで、ウレタンジオールジイソシアネートであり、これは続いて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応し得る。好適なジイソシアネートには、2,2,4−トリメチルヘキシレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートが挙げられる。アルキレンジイソシアネートが一般的に好ましい。このタイプの特定の好ましい化合物は、2,2,4−トリメチルヘキシレンジイソシアネート、ポリ(カプロラクタム)ジオール、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートから調製することができる。少なくともいくつかの場合では、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい脂肪族である。
【0031】
重合性組成物は、同じ又は異なる反応性官能基を有する様々なモノマー又はオリゴマーの混合物であってもよい。(メタ)アクリレート、エポキシ、及びウレタンを含む、少なくとも2つの異なる官能基を含む重合性組成物が使用されてもよい。異なる機能性が、異なるモノマー部分又はオリゴマー部分に、又は同じモノマー部分又はオリゴマー部分に含まれてもよい。例えば樹脂組成物は、エポキシ基又はヒドロキシ基を側鎖に有するアクリル又はウレタン樹脂、アミノ基を有する組成物、所望により、分子内にエポキシ基又はアミノ基を有するシラン化合物を含んでもよい。
【0032】
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化、光硬化(化学線による硬化)、又は電子ビーム硬化などの従来の方法を使用する重合性である。一実施形態では、樹脂は、それを紫外線(UV)又は可視光に暴露されることによって光重合する。従来の硬化剤又は触媒が、重合性組成物内で使用されてもよく、かつ組成物内の官能基に基づいて選択される。複数の硬化機能性が使用される場合は、複数の硬化剤又は触媒が必要となる場合がある。熱硬化、光硬化、及び電子ビーム硬化など1つ又は2つ以上硬化技法を組み合わせることは、本開示の範囲内である。
【0033】
更に、重合性樹脂は、少なくとも1つの他のモノマー又はオリゴマーを含む組成物であってもよい。(すなわち上記のもの以外、すなわち(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリレートオリゴマー及びウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)この他のモノマーは、粘度を低減させ、及び/又はサーモメカニカル特性を向上させ、及び/又は屈折率を増加させる。これらの特性を有するモノマーには、アクリルモノマー(すなわちアクリレート及びメタクリレートエステル、アクリルアミド、及びメタクリルアミド)、スチレンモノマー、並びにエチレン性不飽和窒素複素環が挙げられる。
【0034】
他の官能基を有する(メタ)アクリレートエステルが有用である。この種の代表的な化合物には、2−(N−ブチルカルバミル)エチル(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェノキシルエチルアクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルチオアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、アルコキシル化フェニルアクリレート、イソボルニルアクリレート及びフェノキシエチルアクリレートが挙げられる。テトラブロモビスフェノールAジエポキシド及び(メタ)アクリル酸の反応生成物もまた有用である。
【0035】
他の代表的なモノマーにはポリオールマルチ(メタ)アクリレートが挙げられる。そのような化合物は典型的に、2〜10の炭素原子を含有する脂肪族ジオール、トリオール、及び/又はテトラオールから調製される。好適なポリ(メタ)アクリレートの例は、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクレート、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールトリアクリレート(トリメチロールプロパントリアクリレート)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、相当するメタクリレート、及び前述のポリオールのアルコキシル化(通常はエトキシル化)誘導体の(メタ)アクリレートである。少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するモノマーは架橋剤としての働きをすることができる。
【0036】
他のモノマーとして使用に適したスチレン化合物には、スチレン、ジクロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、4−メチルスチレン及び4−フェノキシスチレンが挙げられる。エチレン性不飽和窒素複素環(N−ビニルピロリドン及びビニルピリジンなど)も有用である。
【0037】
放射線硬化性材料中の構成成分の比率は様々であってもよい。一般に、有機成分は、任意の残部である他のモノマー及び/又はオリゴマーを備えて、約30〜100%モノマー若しくはオリゴマー(メタ)アクリレート、又はオリゴマーウレタンマルチ(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0038】
表面平滑剤がマトリックスに添加されてもよい。平滑剤は、マトリックス樹脂の平滑化に使用されるのが好ましい。例には、シリコーン系平滑剤、アクリル系平滑剤、及びフッ素含有平滑剤が挙げられる。一実施形態では、シリコーン平滑剤は、ポリオキシアルキレン基が添加されるポリジメチルシロキサンを含む。
【0039】
第2層のナノスケール分散相に有用な無機材料には、ガラス、金属、金属酸化物及びセラミックスが挙げられる。好ましい無機材料には、酸化ケイ素、ジルコニア、五酸化バナジウム、及び炭化タングステンが挙げられる。
【0040】
第2層のナノスケール分散相は、マトリックス内にランダムに分散した非連続相である。ナノスケール分散相は、ナノ粒子(ナノスフェア、及びナノキューブなど)、ナノチューブ、ナノ繊維、かご状分子、多分岐分子、ミセル又は逆ミセルを含み得る。好ましくは、分散相は、ナノ粒子又はかご状分子を含み、より好ましくは、分散相はナノ粒子を含む。ナノスケール分散相は、会合しているか、会合していないか又は両方である。他のスケール分散相は、良好に分散され得る。良好に分散している、とは、凝集が殆ど無いことを意味する。
【0041】
第2層のナノ粒子は、約1nm〜約100nmの範囲の平均径を有する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、100nm未満(一部の実施形態では、5nm〜40nmの範囲)の平均粒径を有する。用語「ナノ粒子」は、約100nm未満の直径を有するコロイド(主要粒径又は会合粒子)を意味することが本明細書において更に定義され得る。本明細書で使用するとき、用語「会合した粒子」は、凝集及び/又は粒塊される2つ又はそれ以上の一次粒子の群を指す。本明細書において使用するとき、用語「凝集した」は、互いに化学的に結合し得る主要粒子間の強い会合を表す。凝集体のより小さい粒子への分解は、達成が困難である。用語「凝集した」とは、本明細書において使用するとき、電荷又は極性によって互いに保持され得、より小さい要素へと分解し得る、主要粒子の弱い会合を表す。用語「一次粒径」は、本明細書において、会合していない粒子単独の大きさとして定義される。ナノスケールの分散相の寸法(dimension)すなわち寸法(size)は、電子顕微鏡(透過電子顕微鏡(TEM)など)によって決定され得る。
【0042】
第2層の分散相に関するナノ粒子は、カーボン、金属、金属酸化物(例えば、SiO、ZrO、TiO、ZnO、ケイ酸マグネシウム、酸化インジウムスズ、及びアンチモン含有酸化スズ)、炭化物、窒化物、ホウ化物、ハロゲン化物、フッ化炭素固体(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン))、カーボネート(例えば、炭酸カルシウム)、及びこれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、ナノスケール分散相は、SiOナノ粒子、ZrOナノ粒子、TiOナノ粒子、ZnOナノ粒子、Alナノ粒子、炭酸カルシウムナノ粒子、ケイ酸マグネシウムナノ粒子、インジウムスズ酸化物ナノ粒子、アンチモンスズ酸化物、ポリ(テトラフルオロエチレン)ナノ粒子又はカーボンナノ粒子のうちの少なくとも1つを含む。金属酸化物ナノ粒子は、完全に圧縮され得る。金属酸化物ナノ粒子は、結晶質であり得る。
【0043】
典型的には、ナノ粒子/ナノ分散相は、約1wt.%〜約60wt.%(一部の実施形態では、約10wt.%〜約40wt.%、又は更には約20wt.%〜約40wt.%)の範囲の量で第2層のマトリックス中に存在する。典型的には、ナノ粒子/ナノ分散相は、約0.5体積%〜約40体積%の範囲の量で(一部の実施形態では、約5体積%〜約25体積%の範囲で、約1体積%〜約20体積%で、及び更には約2体積%〜約10体積%の範囲で)マトリックス中に存在するが、これらの範囲外の量も有用であり得る。
【0044】
代表的なシリカは市販品であり、例えば、Nalco Chemical Co.(Naperville,IL)から、製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329など商品名「NALCO COLLOIDAL SILICA」で市販されている。代表的なヒュームドシリカとしては、例えばEvonik Degusa Co.(Parsippany,NJ)から商品名「AEROSILシリーズOX−50」、並びに製品番号−130、−150、及び−200などで市販されているもの、並びにCabot Corp.(Tuscola,IL.)から商品名「CAB−O−SPERSE 2095」、「CAB−O−SPERSE A105」、及び「CAB−O−SIL M5」などで市販されているものが挙げられる他のコロイドシリカは、表記「IPA−ST」、「IPA−ST−L」及び「IPA−ST−ML」でNissan Chemicalsから入手することもできる。代表的なジルコニアは、例えばNalco Chemical Co.から商品名「NALCO OOSSOO8」で市販されている。
【0045】
任意により、ナノ粒子は、表面改質されたナノ粒子である。好ましくは、表面処理は、粒子が重合性樹脂中に良好に分散されて、実質的に均質な組成物を生じるように、ナノ粒子を安定させる。更に、安定した粒子が硬化中に、重合性樹脂と共重合又は反応できるように、ナノ粒子は、その表面の少なくとも一部分を表面処理剤で改質されてもよい。
【0046】
ナノ粒子は、好ましくは表面処理剤で処理される。一般に、表面処理剤には、粒子表面に結合(共有結合、イオン結合、又は、強力な物理吸着による結合)することになる第1末端部と、粒子に樹脂との相溶性をもたらすか、及び/又は、硬化中に樹脂と反応する、第2末端部が備わっている。表面処理剤の例としては、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シラン、及びチタネートが挙げられる。好ましいタイプの処理剤は、金属酸化物表面の化学的性質によりある程度は決定される。シリカに対してはシランが好ましく、ケイ酸質充填剤に対しては他のものが好ましい。ジルコニアのような金属オキシドに対しては、シラン及びカルボン酸が好ましい。表面変性は、モノマーとの混合に続いて又は混合後のいずれかで行うことができる。シランの場合、樹脂へ組み込む前にシランを粒子又はナノ粒子の表面と反応させるのが好ましい。表面改質剤の必要量は、粒子サイズ、粒子タイプ、改質剤の分子量、及び改質剤のタイプのようないくつかの要素に依存する。
【0047】
表面処理剤の代表的な実施形態としては、化合物、例えばイソオクチルトリ−メトキシ−シラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシ−エトキシエチルカルバメート(PEG3TES)、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート(PEG2TES)、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス−イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、ドデカン酸、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)酢酸(MEEAA)、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、メトキシフェニル酢酸、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な、代表的なシラン表面改質剤は、例えばOSI Specialties(Crompton South Charleston,WV)から商品名「SILQUEST A1230」で市販されている。
【0048】
コロイド状分散中の粒子の表面改質は、種々の方法で実現できる。そのプロセスは、無機分散液と表面改質剤との混合物を伴う。場合により、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1−メチル−2−ピロリジノンのような共溶媒をこの時点で添加できる。共溶媒は、表面改質剤並びに表面改質された粒子の溶解度を向上できる。無機ゾル及び表面改質剤を含む混合物は、その後、室温又は高温で、混合あり又はなしで、反応される。一方法では、混合物は約85℃で、約24時間反応されてもよく、表面改質されたゾルとなる。別の方法では、金属酸化物が表面改質されているところでは、金属酸化物の表面処理は、好ましくは、粒子表面への酸性分子の吸収を伴う場合がある。重金属酸化物の表面改質は、室温で実施するのが好ましい。
【0049】
シランでのZrOの表面改質は、酸性条件下又は塩基性条件下にて達成することができる。一実施例では、シランは、酸性条件下にて適した時間、加熱される。そのとき、分散物は、アンモニア水(又は他の塩基)と組み合わせられる。この方法は、ZrO表面からの酸対イオンの除去、及びシランとの反応を可能にする。他の方法では、粒子は、分散体から析出され、液相から分離される。
【0050】
表面改質剤の組み合わせが有用な可能性があり、薬剤の少なくとも1つは、硬化性樹脂と共重合が可能な官能基を有する。例えば重合化基は、エチレン性不飽和であるか、又は開環重合を起こす環式官能基であることができる。エチレン性不飽和重合化基は、例えばアクリレート基又はメタクリレート基、若しくは又はビニル基であることができる。開環重合を起こす環式官能基には一般的に、酸素、イオウ、又は窒素のようなヘテロ原子、及び好ましくは酸素を含有する3員環(エポキシドなど)を含む。
【0051】
ナノ分散相のための有用なかご状分子には、オリゴマー多面型シルセスキオキサン分子が挙げられ、これは、シリコーン及び酸素のかご様ハイブリッド分子である。オリゴマー多面型シルセスキオキサン(POSS)分子は、組成物及び命名法の共有システムの両方を介して、シリコーンに密接に関連する、連続して発展しているクラス由来である。POSS分子は2つの固有の特徴、(1)化学組成物は、シリカ(SiO)とシリコーン(RSiO)の間の、ハイブリッドで中間体(RSiO1.5)であり、(2)分子はポリマー径に対して物理的に大きく、大部分のポリマーセグメント及びコイルに対して、サイズはほぼ等しい。その結果、POSS分子は、シリカの、可能な最小粒子(約1〜1.5nm)として考えることができる。しかしながら、シリカ又は改質された粘土と異なり、それぞれのPOSS分子は、POSSモノマーをポリマー鎖に重合する又はグラフトするために好適な、共有結合した反応性官能基を含有する。更に、POSSアクリレート及びメタクリレートモノマーは、紫外線(UV)硬化に好適である。高機能性のPOSSアクリレート及びメタクリレート(例えばHybrid Plastics,Inc.(Hattiesburg,MA)から商品名「MA0735」及び「MA0736」で入手可能)は、ほとんどのUV硬化性のアクリルモノマー又はオリゴマー及びウレタンアクリルモノマー又はオリゴマーと混和性であり、機械的に耐久性のあるハードコートを形成し、ハードコート中のPOSS分子は、ナノ相を有機コーティングマトリックスに不均一に分散させる。
【0052】
炭素はまた、第2層のナノ分散相中で、グラファイト、カーボンナノチューブ、バルキーボール(bulky ball)、又はカーボンブラックの形態で、例えば米国特許第7,368,161号(McGurranら)に記載のように使用され得る。
【0053】
第2層のナノ分散相に使用することのできる更なる材料としては、例えばCiba Corporation(Tarrytown,NY)から商品名「IRGASTAT P18」で入手可能なもの及びAmpacet Corporation(Tarrytown,NY)から商品名「AMPACET LR−92967」で入手可能なものが挙げられる。
【0054】
本明細書に記載の多層の低干渉縞のナノ構造化物品は、反射防止特性、光吸収特性、防曇特性、改善された接着力、及び耐久性などの、1つ又は2つ以上の望ましい特性を示し得る。
【0055】
例えば、一部の実施形態では、ナノ構造化表面の表面反射率は、非処理表面の表面反射率の約50%以下である。表面特性の比較に関して本明細書で使用されるとき、用語「非処理表面」は、第2層で(それが比較されるとき本発明のナノ構造化表面と)同じマトリックス材料及び同じナノ分散相を含むが、ナノ構造化若しくはナノ多孔表面を含まない、物品の表面を意味する。
【0056】
一部の実施形態は、例えばインク、封止材、接着剤、若しくは金属を含む機能層は、第2層のナノ構造化表面に取り付けられ得る。機能層は、平滑な表面よりもナノ構造化表面に対して、改善された接着を有する。インク又は封入剤のコーティングを、溶媒、静電塗装、及び粉末印刷プロセスによって基材上に適用し、紫外線若しくは熱処理によって硬化させることができる。例えば、溶媒及びホットメルトコーティングプロセスを用いて、感圧接着剤又は構造用接着剤を基材上に適用することができる。プラスチックの金属化に関して、表面は一般的に、酸化によって前処理され、無電解銅若しくは無電解ニッケルをコーティングした後、銀、アルミ、金若しくはプラチナで更にめっきする。真空金属蒸着に関して、このプロセスは一般的に、真空チャンバ内でコーティング金属をその沸点まで加熱し(抵抗加熱、電子ビーム加熱、又はプラズマ加熱など)、基材の表面上に金属の凝縮物を堆積させることを伴う。
【0057】
本明細書に記載の一部の実施形態では、第2層(存在する場合)は、0.5マイクロメートル超の平均厚さを有する一方で、他の実施形態では、第2層は0.5マイクロメートルまで(一部の実施形態では0.4マイクロメートルまで、0.3マイクロメートルまで、0.25マイクロメートルまで、0.2マイクロメートルまで、0.15マイクロメートルまで、0.1マイクロメートルまで、又は更には0.075マイクロメートルまで)の平均厚さを有する。任意に第2層は、マトリックス(高分子マトリックスなど)及びナノスケール分散相を含む。マトリックス及びナノスケール分散相は、上から作製することができ、かつ当該技術分野において既知の方法(キャストドラムによるキャスティング硬化、ダイコーティング、フローコーティング、ディップコーティングなど)を使用して、基材上にコーティングされ、硬化され得る。コーティングは、0.5マイクロメートル超の平均厚さを有して、任意の望ましい厚さに調製することができる一方で、他では、コーティングは、0.5マイクロメートルまで(一部の実施形態では0.4マイクロメートルまで、0.3マイクロメートルまで、0.25マイクロメートルまで、0.2マイクロメートルまで、0.15マイクロメートルまで、0.1マイクロメートルまで、又は更には0.075マイクロメートルまで)の平均厚さを有する。更に、コーティングは、紫外線、電子ビーム、又は熱によって硬化されてもよい。プラズマを使用して、マトリックス及びナノ分散相の少なくとも一部をエッチングし、ランダムナノ構造化表面又はナノ多孔表面を形成することができる。これらの方法は典型的に、中程度の真空条件(例:約5ミリトール(0.67Pa)〜約10ミリトール(約1.3Pa)の範囲)で実施されるのが望ましい。
【0058】
典型的な反応性イオンエッチング(RIE)システムは、2つの平行な電極、「通電電極」(すなわち「サンプルキャリア電極」)、及びイオンを向けて加速する電場を生成する対電極を備える真空チャンバからなる。通電電極は、チャンバの底部分にあり、チャンバの残りから電気的に絶縁されている。ナノ構造化される予定の物品又はサンプルは、通電電極上に配置されている。反応ガス種は、例えばチャンバの頂部における小さな入口を介してチャンバに添加されてもよく、チャンバの底部の真空ポンプシステムに出ることができる。プラズマは、RF電磁場を通電電極に印加することによりシステム内に形成される。電磁場は典型的に、13.56MHz発振器を使用して作られるが、他のRF源及び周波数範囲が使用されてもよい。ガス分子は、破壊されて、プラズマ中にイオン化され、通電電極の方に加速し、サンプルをエッチングすることができる。大きな電圧差は、イオンを通電電極の方に向け、ここではイオンはエッチングされる予定のサンプルと衝突する。(大部分において)垂直なイオンの送達により、サンプルのエッチングのプロファイルは実質的に異方性である。通電電極は、通電電極に隣接するイオンシースにわたって、大きな電位差を作る対電極よりも小さいことが好ましい。エッチングは、約100nm超の深さであることが好ましい。
【0059】
プロセス圧力は、典型的に約20ミリトール(2.7Pa)より低いが(一部の実施形態では、約10ミリトール(1.3Pa)より低く)、約1ミリトール(0.13Pa)超に維持される。この圧力範囲は、費用効率のよい方法で異方性ナノ構造体の生成に非常に貢献する。圧力が約20ミリトール(2.7Pa)より高いとき、イオンエネルギーの衝突消失効果により、エッチングプロセスはより等方性となる。同様に、圧力が約1ミリトール(0.13Pa)より下であるとき、反応種の数密度における減少のために、エッチング速度は非常に遅くなる。また、ガス真空条件が非常に高くなる。
【0060】
エッチングプロセスのRF電力の電力密度は、好ましくは約0.1ワット/cm〜約1.0ワット/cm(一部の実施形態では、約0.2ワット/cm〜約0.3ワット/cm)の範囲である。
【0061】
使用されるガスの種類及び量は、エッチングされるマトリックス材料によって決まる。反応性ガス種は、分散相よりはむしろ、マトリックス材料を選択的にエッチングする必要がある。炭化水素のエッチング速度を向上させるために、又は非炭化水素材料エッチングのために、追加のガスが使用されてもよい。材料(例えばSiO、炭化タングステン、窒化ケイ素、及びアモルファスシリコン)をエッチングするために、例えばフッ素含有ガス(ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄、及び三フッ化窒素など)は酸素に添加されるか、あるいはそれら自体によって導入されてもよい。材料、例えばアルミニウム、イオウ、炭化ホウ素、及びII〜VI族の半導体(カドミウム、マグネシウム、鉛、イオウ、セレン、テルリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限られない)、及びIII〜V族の半導体(アルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素、リン、窒素、アンチモン、又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限られない)をエッチングする際に、塩素含有ガスが同様に添加されてもよい。材料(ガリウムヒ素、ガリウム、及びインジウムなと)をエッチングする際に、炭化水素ガス(メタンなど)が使用されてもよい。不活性ガス、特に、アルゴンなどの重ガスが添加されて、異方性エッチングプロセスを促進してもよい。
【0062】
本明細書に記載のナノ構造化表面を作製する方法は、連続的なロール・ツー・ロールプロセスを使用して実施することもできる。例えば、本方法は「円筒型」のRIEを使用して実施することができる。円筒型RIEは、回転している円筒型電極を利用して、第2層の表面上に異方性エッチングされたナノ構造体を提供する。
【0063】
一般的に、本明細書に記載のナノ構造化物品を作製するための円筒型RIEは以下のように説明され得る。回転可能な円筒型電極(「ドラム電極」)は、高周波(RF)によって通電され、接地した対電極は減圧容器の内部に提供される。対電極は減圧容器それ自体を構成してもよい。エッチャントを含むガスは、減圧容器内に供給され、プラズマが着火され、ドラム電極と接地した対電極の間に維持された。この条件は、十分なイオン衝突がドラムの周囲に垂直に向けられるように、選択される。ナノ分散相を含有するマトリックスを含む連続性物品は、ドラムの周囲において巻き付けられ、マトリックスは、物品の面に垂直な方向でエッチングされ得る。マトリックスは、物品上のコーティングの形態であってもよい(例えば薄膜若しくはウェブ上などのコーティングであってもよく、又はマトリックスは物品それ自体であってもよい)。物品の露出時間は、得られるナノ構造体の所定のエッチング深さが得られるように制御され得る。プロセスは、約10ミリトール(1.3Pa)の動作圧力で実施されてもよい。
【0064】
図1及び2には、本明細書に記載のナノ構造化物品を作製する代表的な方法に適した円筒型RIE装置が例示されている。プラズマ生成及びイオン加速のための一般的な要素は、10として一般に示されている。このRIE装置10は、支持構造体12と、1つ又は2つ以上のドア18の前側パネル16を含むハウジング14と、1つ又は2つ以上の区画に分けられた内側チャンバ24をその中に画定する側壁20及び後側プレート22と、回転可能にチャンバ内に取り付けられたドラム26と、回転可能にチャンバ内に取り付けられ、全体として28として参照される複数のスプール機構と、ドラム26を回転可能に駆動させるための駆動機構37と、チャンバ内に回転可能に取り付けられたアイドラーローラー32と、チャンバに流体連通した真空ポンプ34と、を含む。
【0065】
支持構造体12は、この場合では、垂直に直立した方式で、ハウジング14を望ましい構成で支持するための、当該技術分野において既知の任意の手段である。図1及び図2で示されるように、ハウジング14は、以下でより詳細に記載されるように2部のハウジングであってもよい。本実施形態では、支持構造体12は、装置10を支持するための2部のハウジングの各側に取り付けられるクロス支持体40を含む。特に、クロス支持体40は、装置10をそれぞれ移動させ、支持するためのホイール42及び調整可能な脚部44の両方を含む。図1及び2に示される実施形態では、クロス支持体40は、アタッチメント支持体46を介して、ハウジング14のそれぞれの側に取り付けられる。特に、クロス支持体40は、側壁20の1つに、すなわち底部の側壁に、アタッチメント支持体46を介して接続され、一方でハウジング14の他方の側上のクロス支持体40は、アタッチメント支持体46によって後側プレート22に接続される。更なるクロスバー47が、図1に示されるように装置10の右側部分のクロス支持体40間に供給される。これは更なる構造的強化をもたらすことができる。
【0066】
ハウジング14は、排気、排気後に導入されたガスの封じ込め、ガスからのプラズマ生成、イオン衝撃、及びエッチングすることができる、制御された環境を提供する任意の手段であってもよい。図1及び図2に示す実施形態では、ハウジング14は前側パネル16、4つの側壁20、及び後側プレート22を含む外壁を有する。外壁は、チャンバ24と示されている中空の内部を備える箱を画定する。側壁20及び後側プレート22は、当該技術分野において既知の任意の方法で一緒に締結され、側壁20及び後側プレート22を、チャンバ24の排気、プラズマ生成のための流体の封じ込め、プラズマ生成、イオン加速、及びエッチングを可能にするのに十分な方法で、互いに厳密に固定される。前側パネル16は、基材材料の搭載及び除荷のため及びメンテナンス実施のためのチャンバ24へのアクセスを提供するように、固定されていない。前側パネル16は、ヒンジ50(又は同等な接続手段)を介して、一対のドア18を画定する側壁20のうちの1つに接続される2つのプレートに分離される。これらのドアは、真空封止の使用によって(Oリングなど)側壁20の縁部に封止するのが好ましい。ロック機構52は選択的にドア18を側壁20に固定し、チャンバ24の排気、プラズマ生成のための流体の保管、プラズマ生成、イオン衝撃、及びエッチングを可能にする方法で、ドア18を壁20に固定することができる任意の機構であってもよい。
【0067】
一実施形態では、チャンバ24は、分離壁54によって2つの区画56及び58に分離される。壁54内の通路又は穴60は、区画間の流体又は基材の通路を提供する。あるいは、チャンバは、1つの区画のみ、又は3つ以上の区画であってもよい。チャンバは1つの区画のみであることが好ましい。
【0068】
ハウジング14は、密閉可能にポート62を被覆し、その中で発生しているエッチングプロセスを観察することができる、高圧の、透明なポリマープレート64を備える、複数の観察ポート62を含む。ハウジング14はまた、内部で様々なセンサー(例:温度、圧力等)が固定され得る、複数のセンサーポート66を含む。ハウジング14は、それを介して流体が、必要に応じてチャンバ24内に導入され得る導管接続を提供するための入口ポート68を更に含む。ハウジング14はまた、ガス及び液体を送り出すか、ないしは別の方法でチャンバ24から排出することを可能にする、ポンプポート70及び72を含む。
【0069】
ポンプ34は、側部20の1つから、好ましくは底部(図2に示されるように)から延びているように示される。ポンプ34は、ハウジング14内の制御された環境に流体可能に接続される、例えばターボイオンポンプであってもよい。下方の区画58を排気し、その中の圧力を維持するために、他のポンプ、例えば拡散ポンプ又は低温ポンプが使用されてもよい。エッチング工程中のプロセス圧力は、異方性エッチングを提供するために、約1ミリトール(0.13Pa)〜約20ミリトール(2.7Pa)の範囲であるように選択されるのが好ましい。摺動バルブ73は、この流体接続部に沿って配置され、ポンプ34とハウジング14の内部の間の流体連通を選択的に交差するか、又は遮断することができる。摺動バルブ73は、ポンプポート62が十分に開いて、部分的に開いて、又はポンプ34との流体連通に対して閉じているように、ポンプポート62の上を移動可能である。
【0070】
ドラム26は好ましくは、環状表面82及び2つの平坦な端面84を備える円筒型電極80である。電極は、任意の導電性材料で作製されてもよく、金属であるのが好ましい(例えばアルミニウム、銅、スチール、ステンレス鋼、銀、クロム、又はこれらの合金で)。好ましくは、製造の容易さ、低スパッタ収率、及び低コストから、電極はアルミニウムである。
【0071】
ドラム26は、電界が外側に浸透できるようにする、コーティングされていない導電性の領域と、並びに、電界の浸透を防ぐための非導電性の絶縁領域とを含むよう、したがって電極の非絶縁性若しくは導電性部分へのフィルムのコーティングを制限するように更に作製されてもよい。非導電性材料は典型的に絶縁体、例えばポリマー(ポリテトラフルオロエチレンなど)である。導電性領域として小さなチャンネルのみ(典型的にはコーティングされるべき、透明な、導電性オキシド基材の幅)を提供するように、この非導電性であるという目的を満たす様々な実施形態は、当業者であれば想定し得る。
【0072】
図1は、ドラム26の実施形態を示し、ドラム26の環状表面82及び端面84は、非導電性又は絶縁性材料でコーティングされている(コーティングされないまま残ることによって導電性である環状表面82内の環状チャネル90を除く)。更に、暗部シールド86及び88の対は環状表面82上の絶縁材料を被覆し、一部の実施形態では端面84を被覆する。絶縁性材料は、それに沿ってプラズマ生成及び負バイアスが発生し得る電極の表面を限定する。しかしながら、絶縁性材料は、ときにはイオン衝撃によって汚染されるため、暗部シールド86及び88は、絶縁材料の部分又は全てを被覆してもよい。これらの暗部シールドは、金属(アルミニウムなど)から作製されてもよいが、これらは、絶縁材料(図示せず)によって電極から分離されているので、導電剤として作用しない。これは、電極へのプラズマの封じ込めを可能にする。
【0073】
ドラム26の別の実施形態は、図3及び図4に示されており、ここではドラム26は、ドラム26の環状表面82に取り付けられた、一対の絶縁性リング85及び87を含む。一部の実施形態では絶縁性リング87は、端面84を被覆するようにも作用するキャップである。ボルト92は、平坦なプレート又はストラップとして具体化された支持手段94を後側プレート22に固定する。ボルト92及び支持体94は、ドラム26の様々な部分を支持するのを促進することができる。一対の絶縁性リング85及び87は、環状表面82に取り付けられると、チャネル90として具体化された、露出した電極部分を画定する。
【0074】
透明の、導電性オキシド基材が電極と接触する箇所(すなわち、電極のプラズマ暗部限界に接触する、又は電極のプラズマ暗部限界内の(例えば、約3mm))を除き、電極80は、すべての領域において絶縁性材料によって、何らかの方法で被覆される。この被覆により、透明の導電性オキシド基材と密接させることができる電極の露出部分が画定される。電極の残部は、絶縁性材料によって被覆される。電極が通電され、得られるプラズマに対して負にバイアスされたとき、この比較的厚い絶縁性材料は、それが被覆する表面上のエッチングを防ぐ。結果として、エッチングは、被覆されていない領域(すなわち、絶縁性材料で被覆されていない領域、チャンネル90)に限定され、被覆されていない領域は、好ましくは、比較的薄い透明な導電性オキシド基材によって被覆されている。
【0075】
図1及び図2を参照すると、ドラム26は、磁性流体フィードスルー、及び後側プレート22における穴の中に固定される回転継手38(又は同等の機構)を介して後側プレート22に取り付けられる。磁性流体フィードスルー及び回転継手は、真空封止を保持しながら、標準的な冷却剤流体導管及び電気ワイヤから、回転中の回転可能ドラム26の、中空の冷却剤経路及び導電電極それぞれへ、別個の流体及び電気的接続を提供する。回転継手はまた、必要な応力を供給して、ドラムを回転させ、この応力は、ブラシレスDCサーボモーターなど、任意の駆動手段から供給される。しかしながら、後側プレート22並びに導管及びワイヤへのドラム26の接続は、そのような接続を供給することができ、かつ磁性流体フィードスルー及び回転継手に制限されないような任意の手段によって実施されてもよい。かかる磁性流体フィードスルー及び回転継手の一例は、Ferrofluidics Co.(Nashua,NH.)製の、内径約2インチ(約5cm)の中空のシャフトフィードスルーである。
【0076】
ドラム26は、駆動アセンブリ37によって回転可能に駆動され、これは回転運動をドラム26に転換できる任意の機械的又は電気的システムであってもよい。図2に示される一実施形態では、駆動アセンブリ37は、ドラム26に硬く接続されている駆動プーリー39に機械的に接続されている駆動プーリー31で終端する駆動シャフトを備える、モーター33を含む。ベルト35(又は同等の構造体)は、駆動プーリー31からの回転運動を駆動プーリー39に転換する。
【0077】
複数のスプール機構28が、後側プレート22に回転可能に取り付けられる。複数のスプール機構28は、一対の基材スプール28A及び28Bを備える基材スプール機構を含み、一部の実施形態では、一対のスペーシングウェブスプール28C及び28Dを備えるスペーシングウェブスプール機構を備える、スペーシングウェブスプールと、一対のマスキングウェブスプール28E及び28Fを備えるマスキングウェブスプール機構を含み、ここではそれぞれの対は、1つの送達及び1つの巻取りスプールを含む。図2で明らかなように、少なくとも各巻取りスプール28B、28D及び28Fは、エッチング中に、必要に応じて、スプールを選択的に回転させる回転力を供給するための、これに機械的に接続された駆動機構27(例えば以下に記載のように標準モーター)を含む。更に、選択された実施形態における各送達スプール28A、28C、及び28Eは、ウェブ又は駆動機構29に緊張をもたらすためのテンショナーを含む。
【0078】
各スプール機構は、送達及び巻取りスプールを含み、これらは、互いに同一又は異なる区画内にあってもよく、これは次いで電極がある同じ区画にあってもよく、あるいはそうでなくてもよい。各スプールは、溝を画定しながら、それぞれの端部から半径方向に延びる、軸方向のロッド及びリムを備える標準的な構造体であり、そこでは、細長い部材(この場合では基材又はウェブ)が巻かれる又は巻き付けられる。各スプールは、後側プレート22を通じて延びる回転可能なステムに密封可能に固定して取り付けられる。スプールが駆動される場合では、ステムはモーター27(例:ブラシレスDCサーボモーター)に機械的に接続される。非駆動スプールの場合では、スプールは単に回転可能な方式で、駆動機構29を介して、後側プレート22に連結され、また、ゆるみを防ぐために伸張機構を含んでもよい。
【0079】
RIE装置10はまた、チャンバ内で回転可能に取り付けられるアイドラーローラー32と、このチャンバに流体接続するポンプ34と含む。アイドラーローラーは、ドラム26上で基材スプール28Aからチャネル90に、チャネル90から巻取り基材スプール28Bに基材を案内する。更に、スペーシングウェブ及びマスキングウェブが使用され、アイドラーローラー32は、これらのウェブ及び基材を、基材スプール28A及びマスキングウェブスプール28Eからチャネル90に、並びにチャネル90から巻取り基材スプール28B及び巻取りマスキングウェブスプール28Fにそれぞれ案内する。
【0080】
RIE装置10は、磁性流体フィードスルー38を介して、温度制御液を電極80に供給するための温度制御システムを更に含む。温度制御システムは、装置10上に供給されてもよく、又は別の方法としては、別個のシステムから供給されて、温度制御液が、電極80内の経路と流体接続している限り、導管を介して、装置10に送り出されてもよい。温度制御システムは、エッチングのための正確な温度の電極を供給するために必要とされる場合、電極80を加熱する、又は冷却してもよい。一実施形態では、温度制御システムは、冷却材(例えば水、エチレングリコール、クロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、及び液化ガス(例:液体窒素))を使用する冷却システムである。
【0081】
RIE装置10はまた、排気ポート70に流体的に接続された排気ポンプを含む。このポンプはチャンバの排気を可能にする、任意の真空ポンプ、例えばルーツ式送風機、ターボ分子ポンプ、拡散ポンプ、低温ポンプであってもよい。更に、このポンプは機械式ポンプによって補助又はバックアップされてもよい。排気ポンプは、装置10上に供給されてもよく、又は別の方法としてあるいは、別個のシステムとして供給され、チャンバに流体接続されてもよい。
【0082】
RIE装置10はまた、薄膜を作製するのに使用される流体を制御する、好ましくはマスフローコントローラーの形態の、流体フィーダーを含み、この流体はチャンバ内に、その排気後に送られる。フィーダーは、装置10上に供給されてもよく、又は別の方法として、別個のシステムとして供給され、チャンバに流体接続されてもよい。フィーダーは、エッチング中に、正確な容積率又は質量流量の流体をチャンバに供給する。エッチングガスには、例えば酸素、アルゴン、塩素、フッ素、四フッ化炭素、四塩化炭素、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、三フッ化窒素、六フッ化硫黄、メタン、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0083】
RIE装置10はまた、電気端子30を介して、電極80に電気的に接続された電源を含む。電源は、装置10上に供給されてもよく、又は別の方法として、別個のシステム上に供給されて、電気端子(図2に示されるように)を介して電極に電気的に接続されてもよい。いずれの場合においても、電源は、十分な電力を供給することができる任意の発電又は送電システムである。(以下の記載を参照。)
様々な電源が可能であるが、RF電力が好ましい。これは、自己バイアスを、適切に構成された通電された電極上に形成するのに、周波数は十分高いが、得られるプラズマに定在波を作るには十分高くないためである。RF電力は、高出力(幅の広いウェブ又は基材、急速なウェブ速度)に対して測定可能である。RF電力が使用されるとき、電極上の負バイアスは、負自己バイアスであり、すなわち電極上に負バイアスを誘発するために使用される、別個の電源は必要ない。RF電力が好ましいため、本記載の残りはそのタイプについてのみ焦点を当てる。
【0084】
RF電源は、電極80を、0.01〜50MHz、好ましくは13.56MHzの範囲で、又は任意の、その数倍(1、2、又は3倍など)の範囲の周波数で通電する。このRF電力は電極80に供給されると、チャンバ内のガスからプラズマを作る。RF電源は、同軸送電線を通じて効果的にRF電力を送電するように、電力供給のインピーダンスが、送電線のインピーダンス(通常は50オーム抵抗)と一致するように働くネットワークを介して、電極に接続された13.56MHz発振器などのRF発生装置であってもよい。
【0085】
RF電力を電極に適用すると、プラズマが確立される。15RFプラズマでは、通電した電極は、プラズマに対して負バイアスとなる。このバイアスは一般的に、500ボルト〜1400ボルトの範囲である。このバイアスはプラズマ内のイオンを電極80に向けて加速させる。加速するイオンは、以下により詳細に記載されるように、電極80と接触する。
【0086】
操作時に、エッチングが望ましい基材の上に、全体スプールが、スプール28Aとしてステムの上に挿入される。図1及び図2では、スプールは下方の区画58に配置されており、一方で、エッチングは上方の区画56で生じているため、これらのスプールへのアクセスは下方のドア18を通じて供給される。更に、エッチングが生じた後に、巻取りスプールとして機能するように、空のスプールが、スプール28Bとして、スプールを保持する基材と反対側で締結される。
【0087】
スペーサーウェブが、巻き付け又は巻き出し中に基材を弛緩させるために必要とされており、スペーサーウェブ送達及び/又は巻取りスプールは、スプール28C及び28Dとして供給されてもよい(図中に示される特定の場所内のスプールの位置は問題ではない)。同様に、エッチングが、パターン、あるいは部分的な方式で必要とされる場合に、マスキングウェブが、スプール28Eとして入力スプール上に配置され、空のスプールが、巻取りスプール、スプール28Fとして配置される。
【0088】
基材若しくはウェブを備えたスプール、及びこれらを備えないスプールの全てが配置された後、その上でエッチングが生じる(及び任意のマスキングウェブがそれとともに電極周囲で移動する)基材は、織られるか、あるいは巻取りスプールにシステムを介して引っ張られる。スペーサーウェブは概して、システムを介して織られていないが、代わりに、この工程のちょうど前及び/又はこの工程がちょうど供給された後に、基材から分離される。基材は特に、チャネル90における電極80の周辺に巻き付けられ、したがって、露出した電極部分を被覆する。基材は、十分に張って電極と接触した状態のままであり、かつ基材の長さが常に、エッチングのために電極と接触しているように、電極が回転するにつれて、電極と共に移動する。これは、基材が、ロールの一方の端部から他方へと連続プロセスにおいてエッチングされるのを可能にする。基材は、エッチングのために定置され、下方のドア18は密閉される。
【0089】
チャンバ24は、全ての空気及び他の不純物を取り除くために排気される。いったんエッチャントガス混合物が、排気されたチャンバ内に送られると、装置は、エッチングプロセスを開始する準備が整う。RF電源は、電極80にRF電界を供給するために活性化される。このRF電界は、ガスをイオン化させ、その中で、結果としてイオンとプラズマの形成が得られる。これは特に、13.56MHz発信器を使用して作られるが、他のRF源及び周波数範囲が使用されてもよい。
【0090】
いったんプラズマが作られると、RF電力で電極を通電し続けることによって、負DCバイアス電圧が電極80上に作られる。このバイアスは、電極80のチャネル90(非絶縁電極部分)に向けてイオンを加速させる(電極の残部は絶縁されているか、シールドされているかのいずれかである)。イオンは、マトリックス材料を(分散相に対して)、電極80のチャネル90と接触する基材の長さにおいて選択的にエッチングし、物品のその長さ上のマトリックス材料の異方性エッチングを生じさせる。
【0091】
連続エッチングに関して、物品及び任意のマスキングウェブを、上方区画56を通じて、かつ電極80の上で引っ張るように、巻取りスプールが駆動され、よってマトリックスのエッチングは、環状チャネル90と接触する、任意のマスキングされていない基材部分上で発生する。基材はしたがって、上方区画を通じて連続的に引っ張られ、同時に連続的なRF場が電極上に配置され、十分な反応性ガスがチャンバ内に存在する。結果は、細長い物品上、及び実質的に物品上のみの連続的エッチングになる。エッチングは、電極の絶縁された部分上に発生しなければ、チャンバの他の箇所でも発生しない。プラズマに供給された有効電力が、円筒型電極の末端部プレートにおいて消散するのを防ぐために、接地された暗部シールド86及び88が使用されてもよい。暗部シールド86及び88は、潜在的な汚染の低減に貢献する、任意の形状、寸法、及び材料であってもよい。図1及び2に示される実施形態では、暗部シールド86及び88は、ドラム26の上及びその上の絶縁体上でフィットする金属リングである。暗部シールド86及び88は、暗部シールド86及び88がドラム26に接触する領域において、ドラム26を被覆する絶縁材料のために、バイアスしない。このリング様の実施形態における暗部シールドは、非環状方式で、ドラム26から離れて延びるその各端部上のタブを更に含む。これらのタブは、チャネル90内で物品を位置合わせするのに役立ち得る。
【0092】
好ましくは、温度制御システムは、流体を電極80を通じてプロセス全体で、送り出し、電極を望ましい温度に維持する。典型的に、これは前述のように、クーラントを用いて電極を冷却することを伴うが、一部では、加熱が望ましい場合がある。更に、基材は、電極と直接接触しているため、プラズマから基材への熱移動は、この冷却システムを介して管理されることより、温度に敏感である薄膜のコーティング、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのコーティングを可能にする。
【0093】
エッチングプロセスの完了後、スプールは、壁にそれらを支持しているシャフトからはずされてもよい。ナノ構造化物品をその中に備える基材は、スプール28B上にあり、使用のための準備が整っている。
【0094】
本明細書に記載されるナノ構造化物品の一部の実施形態では、ナノ構造化物品は追加の層を含む。例えば物品は追加のフルオロケミカル層を含んで、この物品に改善された撥水及び/又は撥油特性を付与してもよい。ナノ構造化表面はまた、(例えば追加のプラズマ処理で)後処理されてもよい。プラズマ後処理は、ナノ構造体上に存在し得る化学官能基を変更するために、又はナノ構造体の性能を向上させる薄膜の堆積のために、表面改質を含んでもよい。表面改質は、メチル、フッ化物、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、シラノール、アミン、又は他の官能基の結合を含んでよい。堆積した薄膜は、フルオロカーボン、ガラス様、ダイヤモンド様、オキシド、炭化物、及び窒化物を含んでもよい。表面改質処理が適用されるとき、異方性にエッチングされたナノ構造化表面の大きな表面積により、表面官能基の密度は高い。アミン官能基が使用される場合、生物学的薬剤(抗体、タンパク質、及び酵素など)は、アミン官能基に容易にグラフトされ得る。シラノール官能基が使用されるとき、シラン化学は、シラン基のその高密度のために、ナノ構造化表面に容易に適用され得る。シランの化学的性質に基づく抗菌、洗浄容易、及び耐汚染表面処理は、市販されている。抗菌性処理は、シラン末端基を備える第四級アンモニウム化合物を含んでもよい。易洗浄性化合物としては、ペルフルオロポリエーテルシラン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)シランなどのフルオロカーボン処理剤を挙げることができる。耐汚染処理は、ポリエチレングリコールシランを含んでもよい。薄膜が使用されるとき、これらの薄膜は更なる耐久性をナノ構造体に提供することができ、又は薄膜の屈折率に応じて固有の光学効果を提供することができる。特定のタイプの薄膜は、ダイヤモンド様カーボン(DLC)、ダイヤモンド様ガラス(DLG)、アモルファスシリコン、窒化ケイ素、プラズマ重合シリコーン油、アルミニウム、銅等を含んでもよい。
【0095】
本明細書に記載の複合体は、順番に基材、第1層、ナノ構造化表面を含む第2層、及び機能層を含み、複合体は、例えば
第1層を含む基材を提供することと、
マトリックス材料及び第一マトリックス材料中のナノスケール分散相を含む、コーティング可能な組成物を、基材の第1層にコーティングすることと、
必要に応じて、コーティングを乾燥させることで(及び、乾燥させたコーティングを必要に応じて硬化させることで)、マトリックス及びマトリックス中のナノスケール分散相を含む物品を提供することと、
物品の主表面を反応性イオンエッチングに暴露することとを含む方法により製造することができ、イオンエッチングは、
真空管中で円筒形の電極上に物品を配置すること、
既定の圧力にて(例:1ミリトール(0.13Pa)〜20ミリトール(2.7Pa)の範囲で)エッチングガスを真空管に導入すること、
円筒形の電極と対電極の間にプラズマ(例:酸素プラズマ)を生成すること、
円筒形の電極を回転させて、基材を移動させること、及び
コーティングを異方性エッチングして、第1ランダムナノ構造化異方性表面を提供すること、及び
ランダムナノ構造化異方性表面上に機能層を配置することを含む。
【0096】
基材に対して順番に、第2ナノ構造化表面及び第2機能層を更に含む複合体に関し、前述の方法は、例えば機能層上に第2ナノ構造化表面を適用することと、次いで機能層を、第2ナノ構造化表面の主表面上に機能層(これは同一であっても異なっていてもよい)を配置することによって実施することができる。一部の実施形態では、第2ナノ構造化表面は、第1ナノ構造化表面と同時に適用される。一部の実施形態では、第2機能層は、第1ナノ構造化表面が適用された後に提供される一方で、他方では、例えば第1ナノ構造化表面の適用時に提供される。
【0097】
本明細書に記載の複合体は、順番に基材、第1層、ナノ構造化表面を含む第2層、機能層、及び他のナノ構造化表面層を含み、複合体は、例えば
第1層を含む基材を提供することと、
第1層上にコーティングされた機能層を配置することと、
マトリックス材料、及びマトリックス材料中のナノスケール分散層を含むコーティング可能な組成物を、順番に基材、第1層、ナノ構造化表面を含む第2層、及び上記の方法によって作製された機能層を含む複合体の機能層上にコーティングすることと、
必要に応じて、コーティングを乾燥させることで(及び、乾燥させたコーティングを必要に応じて硬化させることで)、マトリックス及びマトリックス中のナノスケール分散相を含む物品を提供することと、
物品の主表面を反応性イオンエッチングに暴露することとを含む方法により製造することができ、イオンエッチングは、
真空管中で円筒形の電極上に物品を配置すること、
既定の圧力にて(例:1ミリトール(0.13Pa)〜20ミリトール(2.7Pa)の範囲で)エッチングガスを真空管に導入すること、
円筒形の電極と対電極の間にプラズマ(例:酸素プラズマ)を生成すること、
円筒形の電極を回転させて、基材を移動させること、及び
コーティングを異方性エッチングして、ランダムナノ構造化異方性表面を提供することを含む。
【0098】
基材に対して順番に、第2ナノ構造化表面上の機能層を更に含む複合体に関し、前述の方法は、例えばナノ構造化表面層上に第2ナノ構造化表面の第2機能層を適用することと、次いでナノ構造化表面層(これは同一であっても異なっていてもよい)を、第2ナノ構造化表面上の第2機能層の主表面上に配置することによって実施することができる。一部の実施形態では、第2ナノ構造化表面上の第2機能層は、第1ナノ構造化表面上の機能層と同時に適用される。一部の実施形態では、第2ナノ構造化表面層は、第1ナノ構造化表面が適用された後に提供される一方で、他方では、例えば第1ナノ構造化表面の適用時に提供される。
【0099】
透明な導電薄膜を成長させるために使用される、化学蒸着(CVD)、マグネトロンスパッタリング、蒸着、及びスプレー熱分解などの複数の堆積技術が存在する。有機発光ダイオードの製造の際にはガラス基材が広範に使用されてきた。しかしながら、ガラス基材は、ある種の用途(カーナビ及びポータブル・コンピュータなど)に関しては望ましくない傾向がある。ガラスは脆性であることから、柔軟性が所望される場合には望ましくない。同様に、一部の用途(例:巨大ディスプレイ)に関しては、ガラスはあまりにも重量が重すぎる。プラスチック基材は、ガラス基材の代替基材である。低温(25℃〜125℃)スパッタリングによるプラスチック基材上での透明な導電薄膜の成長は、例えばGilbertらの「47th Annual Society of Vacuum Coaters Technical Conference Proceedings」(1993)、T.Minamiらの「Thin Solid Film」(Vol.270,p.37、1995)、及びJ.Maの「Thin Solid Films」(vol.307,p.200、1997)に報告されている。他の成膜技術、パルスレーザー堆積が、例えば米国特許第6,645,843号(Kimら)に記載され、この特許中ではなめらかで低電気抵抗性の酸化インジウムスズ(ITO)コーティングがポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に形成される。導電層は、導電性元素金属、導電性金属合金、又は導電性金属酸化物、導電性金属窒化物、導電性金属炭化物、又は導電性金属ホウ化物、及びこれらの組み合わせを含み得る。好ましい導電性金属としては、銀、銅、アルミニウム、金、パラジウム、プラチナ、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、及び亜鉛などの元素が挙げられる。銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−金−パラジウム合金、又はお互いとの又は他の金属との混合物としてこれらの金属を含有している分散体などの、これらの金属の合金もまた、使用することができる。酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な導電性酸化物(TCO)、インジウム酸化亜鉛(IZO)、並びにアルミニウム、ガリウム及びホウ素などのドーパントを含む又はこれらのドーパントを含まない酸化亜鉛、他のTCO、及びこれらの組み合わせもまた導電層として用いることができる。好ましくは、導電性金属層の物理的な厚さは約3nm〜約50nmであり(一部の実施形態では、約5nm〜約20nm)、一方、透明な導電性酸化物層の物理的な厚さは約10nm〜約500nm(一部の実施形態では約20nm〜約300nm)の範囲である。得られた導電層は、典型的には、300オーム/sq未満のシート抵抗を提供し得る。(一部の実施形態では、200オーム/sq、更には100オーム/sq)。ナノ構造化表面に適用される機能層に関し、層は、ナノ構造化表面と堆積層の間の境界面にて、並びに空気を含有している機能性コーティング層の第2表面にて、又は他の機材表面にて、反射防止機能が生成されるようにナノ構造化表面の輪郭に沿うものであり得る。
【0100】
透過の導電薄膜は、例えば透過の導電ポリマーから製造することができる。導電ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、PETOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)、又はポリチオフェンの誘導体が挙げられる。(例えばSkotheimらの「Handbook of Conducting Polymers」(1998)を参照されたい)。理論に束縛されることを望むものではないが、これらのポリマーは、伝導を可能にする共役二重結合を有するものと考えられる。更に、理論に束縛されることを望むものではないが、ポリチオフェンはバンド構造を操作することにより、可視光線に対し透過性のHUMO−LUMO分離が生じるよう改質されているものと考えられる。ポリマーにおいて、バンド構造は分子軌道により決定される。有効なバンドギャップは、最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)間を分離する。
【0101】
透明な導電層は、例えば中実又は中空であり得る異方性ナノスケール材料を含み得る。中実の異方性ナノスケール材料としては、ナノ繊維及びナノプレートレットが挙げられる。中空の異方性ナノスケール材料としては、ナノチューブが挙げられる。典型的には、ナノチューブは10:1超のアスペクト比(長さ:直径)を有する(一部の実施形態では50:1超、又は更には100:1超)。ナノチューブの長さは、典型的には500nm超である(一部の実施形態では、1マイクロメートル超、又は更には10マイクロメートル超)。これらの異方性のナノスケール材料は、任意の導電材料から製造することができる。ほとんどの場合、導電材料は金属である。金属材料は、金属原子(例:遷移金属)又は金属化合物(例:金属酸化物)であり得る。金属材料はまた、金属合金又はバイメタル材料(2種以上の金属を含む材料)であってもよい。好適な材料としては、銀、金、銅、ニッケル、金めっき銀、プラチナ、及びパラジウムが挙げられる。導電材料は、非金属であってもよい(炭素又はグラファイト(炭素の同素体)など)。
【0102】
ガス(例:水蒸気及び酸素)バリア薄膜は、典型的に、薄膜表面上に比較的薄い(例、約100nm〜約300nm)金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は酸化ケイ素)層を含む。ガスバリア薄膜を提供するための、薄膜上の他の代表的な層としては、セラミックス、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化アルミニウム(aluminum oxide nitride)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム、及びアルミニウムをドープした酸化亜鉛が挙げられる。ガスバリア薄膜は、単一のバリア層であっても、又は複数のバリア層からなる構成体であってもよい。バリア層は、導電機能など、複数の機能特性を含んでもよい。
【0103】
必要に応じて、本明細書に記載の物品は、基材の第2表面上に配置された光学的に透明な接着剤を更に含む。本開示に使用され得る光学的に透明な接着剤は、好ましくは光学的に透明な接着剤のためのヘイズ及び透過率試験の実施例の項で、以下に記載されている内容において、25マイクロメートル厚のサンプルで測定されたとき、少なくとも約90%以上の光学透過率と、約5%未満のヘイズ値を呈するものである。適した光学的に透明な接着剤は、帯電防止特性を有してもよく、腐食感受性の層と適合性があってもよく、接着剤を延伸することによって基材から剥離することができてもよい。例示の光学的に透明な接着剤としては、帯電防止の光学的に透明な感圧接着在に関するPCT公開番号WO 2008/128073号(Everaertsら)に記載のもの;延伸剥離型の光学的に透明な接着剤に関する米国特許出願公開第2009/0229732(A1)号(Determanら)に記載のもの;酸化インジウムスズと相溶性の光学的に透明な接着剤に関する米国特許出願公開第2009/0087629号(Everaertsら)に記載のもの;光学的に透過性な接着剤を有する帯電防止性の光学的な構成体に関する米国特許出願公開第2010/0028564号(Everaertsら)に記載のもの;腐食感受性層と適合性のある接着剤に関する米国特許出願公開第2010/0040842号(Everaertsら)に記載のもの;光学的に透明な延伸剥離型接着剤テープに関するPCT公開番号WO 2009/114683号(Hamerskiら)に記載のもの、及び延伸剥離型テープに関するPCT公開番号WO 2010/078346号(Hamerskiら)に記載のものが挙げられる。一実施形態では、光学的に透明な接着剤は、約5マイクロメートルまでの厚さを有する。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書に記載のナノ構造化物品は、マルチ(メタ)アクリレート、ポリエステル、エポキシ、フルオロポリマー、ウレタン、又はシロキサン(これらのブレンド又はコポリマーを包含する)のうちの少なくとも1つを含む架橋可能なマトリックスに分散させた、SiOナノ粒子又はZrOナノ粒子を少なくとも1つ含む、ハードコートを更に含む。市販されている液体−樹脂系材料(典型的に「ハードコート」と呼ばれる)は、マトリックスとして、又はマトリックスの構成要素として使用され得る。このような材料としては、California Hardcoating Co.(San Diego,CA)から商品名「PERMANEW」で市販されているもの;及びMomentive Performance Materials(Albany,NY)から商品名「UVHC」で市販されているものが挙げられる。加えて、Nanoresins AG(Geesthacht Germany)から商品名「NANOCRYL」及び「NANOPOX」で入手可能なものなどの、ナノ粒子を充填された市販のマトリックスを使用することもできる。
【0105】
更に、ハードコートフィルムを含むナノ微粒子、例えば東レフィルム加工株式会社(東京、日本)から商品名「THS」で入手可能なもの、リンテック株式会社(東京、日本)からの「FPD用ハードコートフィルムOPTERIA」、ソニーケミカル株式会社(東京、日本)からの「SONY OPTICAL FILM」、SKC Haas(Seoul,Korea)からの商品名「HARDCOATED FILM」及びTekra Corp.(Milwaukee,WI)からの商品名「TERRAPPIN G FILM」などのハードコートフィルムを含むナノ微粒子が、マトリックスとして、又はマトリックスの成分として使用されてもよい。
【0106】
一部の実施形態では、本明細書に記載の第1層を含む物品の干渉縞の出現は、第1層の組成物を有さない物品と比較して、著しく低減される。150nm〜300nmのナノ粒子を含む第1層は、第1層、及びナノ構造化又はナノ多孔質表面を含む第2層を通る基材からの境界面の反射を効果的に減少させ、これは同様にナノ構造化表面を通る全反射を低減させる。更に、第1層の150nm〜300nmのナノ粒子により生じるナノ−艶消構造化表面は、基材と第2層の間の屈折率の不一致及び第2層の厚さの変化により引き起こされる干渉縞を低減することができる。
【0107】
図5は、本明細書に開示される多層の(低干渉縞の)ナノ構造化反射防止物品を使用する、例示のディスプレイ100(例、液晶ディスプレイ(LCD))の概略断面図を示す。一実施形態では、複合体102は、反対向きの第1表面104a及び第2表面104bを有する基材104を含み、第1表面104a上には第1層が配置され、第2表面104b上には光学的に透明な接着剤108が配置されている。ナノ構造化反射防止層(第2層)106は第1層105上に配置されている。任意により、剥離ライナー(図示されない)が、光学的に透明な接着剤を保護するために使用されてもよく、かつプレマスク(図示されない)がプロセス及び保管中に反射防止コーティングを保護するために使用されてもよい。光学的に透明な接着剤108がガラス基材110に直接接触するように、複合体102は次いでガラス基材110に積層され、このガラス基材は次いで典型的にはエアギャップ114が反射防止コーティング106と液晶モジュール112の間に配置された状態で、液晶モジュール112へと組み立てられる。
【0108】
一部の実施形態では、本明細書に記載の物品は、フィルムの一方の側の表面の面積全体に剥離可能な接着剤層を有する表面保護接着シート(ラミネートが予めマスキングされたフィルム)、例えばナノ構造化物品の表面に対するポリエチレンフィルム、塩化ビニルフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムを、あるいはナノ構造化物品の表面に上述のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、塩化ビニルフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムを重ねることによって更に含む。
【0109】
代表的な実施形態
1.物品は、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する基材と、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する第1層であって、この第1層は、第1層の第2主表面から突出し、かつ基材の第1層から離れているナノ粒子を備える高分子材料を含み、第1層は、突出するナノ粒子を考慮することなく、50ナノメートル〜150ナノメートルの範囲の平均厚さを有する、第1層と、
第1主表面及び第2主表面を有する第2層であって、この第2層の第1主表面は、第1層の第2主表面上にあり、第2主表面は第1ナノ構造化表面である、第2層とを含む。
【0110】
2.第1層が、突出するナノ粒子を考慮することなく、75ナノメートル〜125ナノメートルの範囲の平均厚さを有する、実施形態1に記載の物品。
【0111】
3.第2層の第2主表面が、ランダムナノ構造化表面である、実施形態1又は2のいずれかに記載の物品。
【0112】
4.ナノ粒子が150ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の寸法である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の物品。
【0113】
5.ナノ粒子が150ナノメートル〜250ナノメートルの範囲の寸法である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の物品。
【0114】
6.ナノ粒子がシリカナノ粒子を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の物品。
【0115】
7.第2層がマトリックス及びナノスケール分散相を含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の物品。
【0116】
8.第2層のマトリックスが高分子マトリックスである、実施形態7に記載の物品。
【0117】
9.第2層が0.5マイクロメートル超の平均厚さを有する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の物品。
【0118】
10.第2層は0.5マイクロメートルまでの平均厚さを有する(一部の実施形態では、0.4マイクロメートルまでの、0.3マイクロメートルまでの、0.25マイクロメートルまでの、0.2マイクロメートルまでの、0.1マイクロメートルまでの、0.15マイクロメートルまでの、又は更には0.075マイクロメートルまで)、実施形態1〜8の実施形態に記載の物品。
【0119】
11.第1ナノ構造化表面が異方性である、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の物品。
【0120】
12.第1異方性表面が、0.5%未満の反射率(%)を有する、実施形態11に記載の物品。
【0121】
13.基材が偏光子である、実施形態1〜12のいずれかに記載の物品。
【0122】
14.偏光子は反射性偏光子である、実施形態13に記載の物品。
【0123】
15.偏光子は吸収性偏光子である、実施形態13に記載の物品。
【0124】
16.偏光子が拡散性である、実施形態13〜15のいずれか1つに記載の物品。
【0125】
17.第1層の第1主表面と第2層の間に配置された機能層を更に含み、この機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の物品。
【0126】
18.第1ナノ構造化表面上に配置された機能層を更に含み、この機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の物品。
【0127】
19.基材の第2主表面と第2層の間に配置された機能層を更に含み、この機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、実施形態18に記載の物品。
【0128】
20.第2ナノ構造化表面上に配置された機能層を更に含み、この機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、実施形態19に記載の物品。
【0129】
21.基材の第2表面上に配置された光学的に透明な接着剤を更に含み、この光学的に透明な接着剤が、少なくとも90%の可視光透過率及び5%未満のヘイズを有する、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の物品。
【0130】
22.干渉縞の出現が低減される、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の物品。
【0131】
23.第1ナノ構造化主表面上に配置された予め被覆された薄膜を更に含む、実施形態1〜16、21又は22のいずれか1つに記載の物品。
【0132】
本発明の利点及び実施形態は、以下の実施例により更に例示されるが、これらの実施例に列挙したその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に限定すると解釈されるべきではない。すべての部及びパーセンテージは、特に記載されていない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0133】
手順1−プラズマ処理
プラズマ処理は、米国特許第5,888,594号(Davidら)に説明されているシステムで実施され、この特許の開示は、参照により本明細書を援用するものとし、一部の変更は以下の記載のとおりである。ドラム電極の幅は、42.5インチ(106.3cm)に増加され、プラズマシステム内の2つの区画間の分離は取り除かれ、これによって、全排気はターボ分子ポンプによって実施され、したがって、プラズマプロセスで従来実施される動作圧力よりもはるかに低い動作圧力での操作だった。高分子フィルムのシートサンプルは、ドラム電極上の縁部の周囲にテープで止められた。
【0134】
チャンバのドアは閉鎖され、チャンバは基準圧5×10−4トール(0.07Pa)まで排気された。酸素及びアルゴンは、以下の例示に記載される様々な条件下でチャンバ内に導入された。動作圧は公称10ミリトール(1.3Pa)だった。プラズマは、5500ワットの電力で高周波電力をドラムに適用することでプラズマを生じさせた。ドラムは一定速度で回転させられ、その後、特定の実施例において記載されるように、異なる時間の長さでプラズマ処理が行われた。
【0135】
手順2−平均パーセント反射率の測定
この手順の結果により、プラズマ処理された薄膜表面の平均反射率(%R)の測定値が得られた。薄膜のサンプルは、サンプルの裏側に黒いビニルテープ(Yamato International Corporation(Woodhaven,MI)から商標名「200−38」として得られる)を適用することによって調整された。この黒いテープは、ブラックテープとサンプルの間に捕捉された気泡が、確実にないようにするために、ローラーを用いて適用された。同じ黒いビニルテープを、似通った方法で透明のガラススライドに適用した。この透明のガラススライドの両面の反射率は、対照サンプルに単独で黒色ビニルテープのパーセント反射率を確率させるよう予め設定されていた。光学的に透明な接着剤を含む複合物品を測定するために、この手順が使用されたとき、複合物品が透明のガラススライドに最初に予め積層され、その後、黒いテープでガラス表面上に更に積層された。
【0136】
次に、テープを積層した第1サンプルの非テープ積層面及び続いて対照を、カラーガイドスフィア(BYK−Gardiner(Columbia,MD)から商品名「SPECTRO−GUIDE」で入手)の開口部に対して配置し、前側表面の合計反射率(%)(反射及び拡散)を測定した。次いで400〜700nmの波長範囲において、10°の入射角でパーセント反射率が測定され、平均パーセント反射率は、対照のパーセント反射率を引くことによって算出された。
【0137】
手順3−平均%透過率及びヘイズの測定
平均%透過率及びヘイズの測定は、分光光度計(モデル9970;BYK Gardnerから商品名「BYK GARDNER TCS PLUS SPECTROPHOTOMETER」)を使用して測定された。
【0138】
手順4−屈折率(RI)測定
分光エリプソメーター(J.A.Woollam Co.(Lincoln,NE)から商品名「M2000−U」で入手可能である)を使用し、サンプルの屈折率を測定した。測定に先立って、サンプルの裏側は、裏面の反射を取り除くために粗面化した。55°、65°、及び75°の入射角及び350nm〜1000nmの波長に関して反射分光偏光解析(RSE)データを収集した。屈折率を測定する解析において、プライマーはコーシーの素材として、基材は2軸延伸の素材として扱われた。
【0139】
(実施例1)
第1層から突出するナノ粒子を備える、高分子材料からなるこの第1層を上部に有する、2ミル(50.8マイクロメートル)の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レフィルム加工株式会社(東京、日本)から商品名「U48」で入手した)。第1層は透過型電子顕微鏡によって特徴付けられ、150nmのシリカナノ粒子からなり、突出するナノ粒子を考慮することなく62ナノメートルの平均厚さを有すると測定された。走査型電子顕微鏡を使用して更に測定されたシリカナノ粒子の濃度は、約0.11wt.%だった。第1層の屈折率は、手順4によると632.8ナノメートルの波長において1.576であると推定された。
【0140】
50wt.%のシリカナノ粒子を含むトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)組成物(Hanse Chemie USA(Hilton Head Island,SC)から商品名「NANOCRYL C150」で入手)を、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer(Exton,PA)から商品名「SR351H」で入手)により希釈し、10wt.%のシリカナノ粒子コーティング溶液を作製した。10wt.%シリカナノ粒子コーティングの濃度は、イソプロパノール(IPA)で更に希釈し、70wt.%固体のコーティング混合物を形成した。コーティング混合物の固形分含量に対して、2wt.%の光開始剤(BASF Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)から商品名「IRGACURE 184」で入手)をコーティング混合物に添加して、最終的なコーティング溶液を形成した。次いで#8メイヤーロッドにより、コーティングを2ミル(50.8マイクロメートル)で塗布し、その後、1分当たり50フィート(fpm)(1分当たり15.24m(mpm))のライン速度において、Hバルブによる紫外線放射により硬化させた(直線インチ当たり300ワット(直線センチメートル当たり118ワット);(Fusion Systems,Rockville,MD)から入手した)。干渉縞を検査するために、ブラックテープ(「200−38」)をコーティングされていない面に積層させた。手順3による光学特性、及び干渉縞の出現は以下の表1に示す。
【0141】
比較実施例A
米国特許第6,376,590号(Kolbら)における実施例1に従って作製された10ナノメートルのZrOナノ粒子をポリアクリレートマトリックス(Sartomerから商品名「SR494」で入手)中に分散させて、20wt.% ZrOのコーティング混合物を作製した。2wt.%の光開始剤(「IRGACURE 184」)をこのコーティング混合物に添加して、イソプロピルアルコール(IPA)で更に、2.5wt.%固体のコーティング混合物へと希釈した。コーティング混合物を2ミル(50.8マイクロメートル)のPETフィルム(DuPont(Wilmington,DE)から商品名「692」で入手)のプライマー処理されていない表面にシリンジポンプで注入した。120℃に設定したオーブンにコーティングを通過させて乾燥させ、次いで60fpm(18.29m/分)でHバルブによって硬化させた。乾燥させ、硬化したコーティング厚さは約100ナノメートルであり、その屈折率は手順4によると632.8ナノメートルの波長で1.57であると推定された。
【0142】
50wt.%のシリカナノ粒子(「NANOCRYL C150」)を含むトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)組成物を、トリメチロールプロパントリアクリレート(「SR351H」)で希釈し、10wt.%のシリカナノ粒子コーティング溶液を作製した。10wt.%のシリカナノ粒子コーティング濃縮物をIPAで更に希釈し、固形分70wt.%のコーティング混合物を作製した。コーティング混合物の固形分含量に対して2wt.%の光開始剤(「IRGACURE 184」)をコーティング混合物に添加し、最終的なコーティング溶液を作製した。コーティングを次いで、#8メイヤーロッドにより、比較実施例Aからのサンプルのコーティングされた面に塗布し、その後、紫外線照射(Hバルブ)によって、50fpm(1分当たり15.24m)のライン速度で硬化させた。干渉縞を検査するために、ブラックテープ(「200−38」)をコーティングされていない面に積層させた。手順3による光学特性、及び干渉縞の出現は以下の表1に示す。
【0143】
【表1】
実施例2及び比較実施例B
実施例1及び比較実施例Aからのサンプルは、手順1に従って反応性イオンエッチングによって75秒間、更に処理され、実施例2及び比較実施例Bをそれぞれ作製した。反応性イオンエッチング後の、手順2による平均反射率及び干渉縞の出現を以下の表2に示す。
【0144】
【表2】
本開示の範囲及び趣旨から外れることなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者には自明であろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される各実施形態に限定されるべきものではない。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[10]に記載する。
[1]
物品であって、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する基材と、
概して反対向きの第1主表面及び第2主表面を有する第1層であって、前記第1層は、前記第1層の前記第2主表面から突出し、かつ前記基材の前記第1主表面から離れているナノ粒子を備える高分子材料を含み、前記第1層は、前記突出するナノ粒子を考慮することなく、50ナノメートル〜150ナノメートルの範囲の平均厚さを有する、第1層と、
第1主表面及び第2主表面を有する第2層であって、前記第2層の前記第1主表面は、前記第1層の前記第2主表面上にあり、前記第2主表面は第1ナノ構造化表面である、第2層とを含む、物品。
[2]
前記第1層が、前記突出するナノ粒子を考慮することなく、75ナノメートル〜125ナノメートルの範囲の平均厚さを有する、項目1に記載の物品。
[3]
前記第2層の前記第2主表面が、ランダムナノ構造化表面である、項目1又は2に記載の物品。
[4]
前記ナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の物品。
[5]
前記第2層が、マトリックス及びナノスケール分散相を含む、項目1〜4のいずれか一項に記載の物品。
[6]
前記第1ナノ構造化表面が、異方性である、項目1〜5のいずれか一項に記載の物品。
[7]
前記第1層の前記第1主表面と前記第2層の間に配置された機能層を更に含み、前記機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、項目1〜6のいずれか一項に記載の物品。
[8]
前記第1ナノ構造化表面上に配置された機能層を更に含み、前記機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、項目1〜6のいずれか一項に記載の物品。
[9]
前記基材の前記第2主表面と前記第2層の間に配置された機能層を更に含み、前記機能層が透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、項目8に記載の物品。
[10]
前記第2ナノ構造化表面上に配置された機能層を更に含み、前記機能層が、透明な導電層又はガスバリア層のうちの少なくとも1つである、項目9に記載の物品。
図1
図2
図3
図4
図5