特許第6014058号(P6014058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6014058共振リニア圧縮機用の作動システム、共振リニア圧縮機の作動方法および共振リニア圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014058
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】共振リニア圧縮機用の作動システム、共振リニア圧縮機の作動方法および共振リニア圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20161011BHJP
   F04B 35/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F04B49/06 341E
   F04B35/04
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-558273(P2013-558273)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公表番号】特表2014-511959(P2014-511959A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】BR2012000066
(87)【国際公開番号】WO2012122615
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】PI1101094-0
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】508020638
【氏名又は名称】ワールプール,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】パウロ セルジオ ダイネス
(72)【発明者】
【氏名】ディートマール エリッヒ ベルンハルト リリー
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−344708(JP,A)
【文献】 米国特許第7570464(US,B2)
【文献】 特開2001−286185(JP,A)
【文献】 特開平09−112438(JP,A)
【文献】 特開2002−44977(JP,A)
【文献】 特開2003−278665(JP,A)
【文献】 特開2003−74477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0241698(US,A1)
【文献】 特開2005−54768(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10314007(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/00 − 49/24
F04B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振リニア圧縮機(50)用の作動システムであって、
共振リニア圧縮機(50)が冷却回路の不可分の一部であり、
共振リニア圧縮機(50)が少なくとも1つのシリンダ(2)と、少なくとも1つのヘッド(3)と、少なくとも1つの電動機と、少なくとも1つのバネとを含み、シリンダ(2)が作動的にピストン(1)を収納している作動システムにおいて、
互いに結びつけられた少なくとも1つの制御回路(24)と少なくとも1つの作動回路(26)とを含み電動機を作動させるための少なくとも1つの電子作動制御(20)を含むことを特徴とし、
電子作動制御(20)が、リニア圧縮機(50)の電動機に電子的に結びつけられており、
電子作動制御(20)により測定または推定される少なくとも1つの電気的大きさを通して、リニア圧縮機(50)の少なくとも1つ過負荷条件を検出し、
過負荷制御モード電動機の作動周波数を電気機械的共振周波数に調整するように構成されている、
ことを特徴とする作動システム。
【請求項2】
測定または推定された電気的大きさがピストン速度値(VP)によって与えられる、ことを特徴とする請求項1に記載の作動システム。
【請求項3】
測定または推定された電気的大きさがピストン変位値(dP)によって与えられる、ことを特徴とする請求項1に記載の作動システム。
【請求項4】
過負荷制御が、最大基準変位(DREF)に対するピストン変位値(de(t))を基礎として考慮することにより電動機の作動周波数を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の作動システム。
【請求項5】
過負荷制御モードが、基準速度位相(φREF)に対する圧縮機(50)のモーターの速度位相値(ψv)を基礎として考慮することにより電動機の作動周波数を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の作動システム。
【請求項6】
過負荷制御モードが、基準変位位相(ψdREF)に対する圧縮機(50)のモーターの変位位相値(ψd)を基礎として考慮することにより電動機の作動周波数を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の作動システム。
【請求項7】
過負荷制御モードが、最大電流位相値(ψc)を基礎として考慮することにより電動機の作動周波数を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の作動システム。
【請求項8】
作動周波数の調整が、−180度前後の入力電圧位相値(Vint)とピストン変位値(de(t))間の位相差から出発して提供される、ことを特徴とする請求項6に記載の作動システム。
【請求項9】
作動周波数の調整が、−90度前後の入力電圧位相値(Vint)と速度位相値(ψv)の間の位相差から出発して提供される、ことを特徴とする請求項5に記載の作動システム。
【請求項10】
共振リニア圧縮機(50)用の作動方法であって、
共振リニア圧縮機(50)が少なくとも1つの電動機を含み、電動機が周波数インバータによって作動されており、
a−)共振リニア圧縮機(50)の動作サイクル(TR)毎に、作動周波数(FR)、共振リニア圧縮機(50)の最大ピストン変位(de(t))および/またはピストン変位位相(ψd)および/またはピストン速度位相(ψv)および/または電流位相(ψc)を測定または推定するステップと;
b−)最大ピストン変位(de(t))と最大基準変位(DREF)とを比較し、変位誤差(Err)を計算するステップと;
c−)先行サイクルの動作給電電圧値および先行ステップ(単複)で得た変位誤差(Err)から、電動機の動作給電電圧値(Ampop)を計算するステップと;
d−)先行ステップで計算した電動機の動作給電電圧値(Ampop)と最大給電電圧値(Amax)とを比較するステップと;
e−)ステップ「c」で計算した動作給電電圧値(Ampop)が最大給電電圧値(Amax)以下である場合には、電動機の過負荷制御モードを非活動化し、作動周波数(FR)を機械的共振周波数値まで減少させ、ステップa)に戻るステップと;
f−)ステップ「c」で計算した動作給電電圧値(Ampop)が最大給電電圧値(Amax)より高い場合には、過負荷制御モードを活動化し、作動周波数(FR)を電気機械的共振周波数まで増大させるステップと;
を含む、ことを特徴とする作動方法。
【請求項11】
過負荷制御モードがさらに、
g)最大ピストン変位(de(t))と、動作サイクル周期(TR)に先行するサイクル(de(t−1))のピストン変位値とを比較するステップと;
h)最大ピストン変位(de(t))が先行サイクルのピストン変位(de(t−1))よりも大きい場合には、作動周波数(FR)と先行サイクルの動作周波数(FR(t−1)とを比較するステップと;
i)作動周波数(FR)が先行サイクルの作動周波数(FR(t−1))より高い場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ増大させ、ステップa)に戻るステップと;
j)作動周波数(FR)が先行サイクルの作動周波数(FR(t−1))より高くない場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ減少させ、ステップa)に戻るステップと;
k)最大ピストン変位(de(t))が先行サイクルの最大ピストン変位(de(t−1))より大きくない場合には、作動周波数(FR)を先行サイクルの作動周波数(FR(t−1))と比較するステップと;
l)作動周波数(FR)が先行サイクルの作動周波数(FR(t−1))より低い場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ増大させ、ステップa)に戻るステップと;
m)作動周波数(FR)が先行サイクルの作動周波数(FR(t−1))より高くない場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ減少させ、ステップa)に戻るステップと;
を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の作動方法。
【請求項12】
ステップ「g」〜「m」が、圧縮機(50)の最大ピストン変位のための過負荷制御モードを定義している、ことを特徴とする請求項11に記載の作動システム。
【請求項13】
n)圧縮機(50)のピストンの速度位相(ψv)を計算するステップと;
o)圧縮機(50)のピストンの速度位相値(ψv)と基準速度位相値(ψVREF)とを比較するステップと;
p)速度位相(ψv)が基準速度位相(ψVREF)より高い場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ増大させ、ステップa)に戻るステップと;
q)速度位相(ψv)が基準速度位相(ψVREF)より高くない場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ減少させ、ステップa)に戻るステップと;
をさらに含む、ことを特徴とする請求項10に記載の作動方法。
【請求項14】
ステップ「n」〜「q」が、−90度前後の周波数速度位相の調整のための圧縮機(50)の過負荷制御モードを定義している、ことを特徴とする請求項13に記載の作動方法。
【請求項15】
n)圧縮機(50)のピストンの変位位相(ψd)を計算するステップと;
o)先行ステップで計算した変位位相(ψd)と基準変位位相値(ψDREF)とを比較するステップと;
p)変位位相(ψd)が基準変位位相(ψDREF)より大きい場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ増大させ、ステップa)に戻るステップと;
q)変位位相(ψd)が基準変位位相(ψDREF)より大きくない場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ減少させ、ステップa)に戻るステップと;
をさらに含む、ことを特徴とする請求項10に記載の作動方法。
【請求項16】
ステップ「n」および「q」が、−180度前後の基準変位位相の調整のための圧縮機(50)の過負荷制御モードを定義している、ことを特徴とする請求項15に記載の作動方法。
【請求項17】
過負荷制御モードがさらに、
n)圧縮機(50)の電流位相(ψc)を計算するステップと;
o)先行ステップで計算された電流位相(ψc)を動作サイクル周期(TR)に先行するサイクル(ψc−1)の電流位相値とを比較するステップと;
p)電流位相(ψc)が先行するサイクルの電流位相値(ψc−1)よりも高い場合には、作動周波数(FR)と先行するサイクルの作動周波数(FR(t-1))とを比較するステップと;
q)作動周波数(FR)が先行するサイクルの作動周波数(FR(t−1))より高い場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ増大させ、ステップa)に戻るステップと;
r)作動周波数(FR)が先行するサイクルの作動周波数(FR(t−1))より高くない場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ減少させ、ステップa)に戻るステップと;
s)電流位相値(ψc)が先行するサイクルの電流位相値(ψc−1)より高くない場合には、作動周波数(FR)と先行するサイクルの作動周波数(FR(t−1))とを比較するステップと;
t)作動周波数(FR)が先行するサイクルの作動周波数(FR(t−1))より低い場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ増大させ、ステップa)に戻るステップと;
u)作動周波数(FR)が先行するサイクルの作動周波数(FR(t−1)))より低くない場合には、作動周波数(FR)を周波数デルタ値(Tf)だけ減少させ、ステップa)に戻るステップと;
を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の作動方法。
【請求項18】
ステップ「n」〜「u」が、最小電流シフトのための圧縮機(50)の過負荷制御モードを定義している、ことを特徴とする請求項17に記載の作動方法。
【請求項19】
請求項1〜9に記載の作動システムを含むことおよび請求項10〜18に記載の作動方法を特徴とする共振リニア圧縮機(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに応用される共振リニア圧縮機のための作動システムに関し、ここでこの冷却システムは、詳細には、前記圧縮機の電気機械的周波数で動作するように設計されており、こうしてシステムは、前記冷却システムの過負荷条件の下で、リニアアクチュエータにより供給される最大出力を上昇させることができる。
【0002】
さらに、本発明は、共振リニア圧縮機のための作動方法にも関し、この方法の動作ステップにより、電気機械的共振周波数で機器を作動させることならびに過負荷条件下でその作動を制御することが可能となる。
【0003】
最後に、本発明は、請求項において提案されている作動システムを備える共振リニア圧縮機にも関する。
【背景技術】
【0004】
既知の交互ピストン圧縮機は、ピストンの軸方向運動を用いてシリンダ内部の気体を圧縮するための圧力を生成して、吸気圧力または蒸発圧力とも呼ばれる低圧側の気体が、吸気弁を通ってシリンダ内に入るように動作する。
【0005】
気体は次に、ピストン運動によりシリンダ内部で圧縮され、圧縮された後吐出弁を通ってシリンダから、吐出圧力または凝縮とも呼ばれる高圧弁へと出る。
【0006】
共振リニア圧縮機の場合、ピストンは、1つ以上のコイルによって作動され得る支持体および磁石によって形成されるリニアアクチュエータによって作動される。このようなリニア圧縮機はさらに1つ以上のバネを含み、これが可動部分(ピストン、支持体および磁石)を固定部分に連結し、この固定部分はシリンダ、固定子、コイル、ヘッドおよび構造によって形成される。可動部分およびバネは、圧縮機の共振アセンブリを形成する。
【0007】
リニアモータによって作動される前記共振アセンブリは、吐出弁を通って高圧側まで吐出され得るまで、吸気弁により取込まれた気体を圧縮する作用をシリンダ内部のピストンの動きによって及ぼす線形交互運動を発生させる機能を有する。
【0008】
リニア圧縮機の動作範囲は、圧縮機序が消費する電力とモーターが生成する動力の平衡によって調節されるが、このプロセス中に生成される損失は除く。最大の熱力学効率と最大の冷却能力を達成するためには、ピストンの最大変位が可能なかぎりストローク端部に接近して、圧縮プロセスにおける気体死容積を削減することが必要である。
【0009】
プロセスを実現可能にするためには、ピストンストロークを高い精度で認識し、ストローク端部においてピストンが機器ヘッドに衝突する危険性を防ぐことが必要となる。この衝突は、音響ノイズを発生させることに加えて、装置の効率の損失さらには圧縮機の破損を生起しかねない。
【0010】
こうして、ピストン位置の推定/測定誤差が大きくなればなるほど、圧縮機を安全に動作させるために最大変位とストローク端部の間に求められる安全係数は大きくなり、これが製品の性能の低下を招く。
【0011】
一方、冷却システムの需要が比較的低いことから圧縮機の冷却能力を削減する必要がある場合には、最大動作ピストンストロークを低減させて、圧縮機に対して供給される電力を削減することが可能であり、こうして、圧縮機の冷却能力を制御し、可変的能力を得ることが可能である。
【0012】
共振リニア圧縮機における追加のきわめて重要な特徴は、その作動周波数にある。
【0013】
一般に、共振圧縮機は、効率が最大となる条件であるいわゆる質量/バネシステムの共振周波数で機能するように設計されており、ここで、考慮対象の質量は可動部分(ピストン、支持体および磁石)の質量の合計によって与えられ、等価バネ(KT)は、システムの共振バネ(KML)に、非線形可変バネに類似する挙動を有し、かつ、冷却システムの蒸発および凝縮圧力ならびに前記システム内で使用される気体によって左右される気体の圧縮力によって生成される気体バネ(KG)を加えた合計から取り上げられる。
【0014】
先行技術の一部の解決法は、以下で記す通り、一定の動作条件についての共振圧縮機の作動周波数の問題を解決しようと試みている。
【0015】
特許文献1は、共振周波数を調整するためにモーターの逆起電力(CEMF)の検出を使用しているが、この技術には、CEMFのゼロ交差を検出するために最小限の無電流時間を必要とし、こうして電流の波形における歪みによって供給最大電力および効率を損うというデメリットがある。
【0016】
同様に、特許文献2は、電流を最小限におさえるための周波数制御および位置センサーでの制御を開示している。この解決法は、先行技術においてすでに利用可能なものと類似しており、作動周波数の調整のために定期的にシステムを妨害しなければならず、このことが最終製品の性能を大幅に損う可能性があるというデメリットを有する。
【0017】
特許文献3は、一定の電流についての電力を最大限にすることによる動作周波数の制御について記載している。この技術は、先行特許と同じ原理を利用しており、システムを絶えず妨害するという同じデメリットを有する。
【0018】
以上の解決法は全て、特許文献4、特許文献5および特許文献6により開示されているものに加えて、周波数調整方法の如何に関らず、機械的システムの共振周波数で圧縮機を作動させるという主要な目的を有し、この条件下で、変位と電流の間の関係は最大である(または速度と電流)。
【0019】
効率は機械的共振周波数において最大であるものの、給電電圧は最適点にはなく、すなわち変位と給電電圧の関係はこの周波数で最大ではない。したがって、アクチュエータの設計および冷却システム/および圧縮機の負荷条件に応じて、システムは、制御システムが供給できる最大電圧により制限されることもあり、システムの最大出力が限定されたり
、または冷却システムの内部温度を低下させるために応答時間が非常に長くなったりして、その結果システム内部の食品の保存が損なわれる可能性がある。
この過負荷の問題についての解決法は、リニアアクチュエータのサイズを特大にすることであるが、コストを上昇させ定格条件下でのシステムの効率を低減させる。
【0020】
以上のことに基づき、本発明は、冷却システムの過負荷条件において機器に対し最大限の動力を供給し、コストを削減しかつその定格動作条件下での圧縮機の効率を上昇させるように設計された、共振リニア圧縮機のピストンを作動させるためのシステムおよび方法を予見している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第00079671A1号
【特許文献2】米国特許第5,897,296号
【特許文献3】米国特許第6,832,898号
【特許文献4】米国特許第5,890,211号
【特許文献5】韓国特許第0237562号
【特許文献6】韓国特許第0176909号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の第1の目的は、その電気機械的共振周波数で圧縮機を作動させて、冷却システムの過負荷条件下で機器に対し最大の出力を提供できる、共振リニア圧縮機用の作動システムを提案することにある。
【0023】
本発明の第2の目的は、機器の圧縮機に対し供給される最大出力を上昇させることにより、冷蔵庫内に保管される食品の保存をより良くするために著しく貢献するように、共振リニア圧縮機用の作動システムを提供することにある。
【0024】
本発明の第3の目的は、そのリニアアクチュエータのサイズを最適化することにより、共振リニア圧縮機の製造コストを削減することにある。
【0025】
本発明のさらなる目的は、そのサイズ決定において得られる改善に基づいて定格動作条件におけるアクチュエータの効率を最適化することからなる。
【0026】
最後に、本発明の別の目的は、工業的規模でのその生産のために先行技術に比べて実質的により簡略化された解決法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の目的は、共振リニア圧縮機用の作動システムにおいて、共振リニア圧縮機が冷却回路の不可分の一部であり、共振リニア圧縮機が少なくとも1つのシリンダと、少なくとも1つのヘッドと、少なくとも1つの電動機と、少なくとも1つのバネとを含み、シリンダが作動的にピストンを収納している作動システムであって;互いに結びつけられた少なくとも1つの制御回路と少なくとも1つの作動回路とを含み;電動機の少なくとも1つの電子作動制御を含み;電子作動制御が、リニア圧縮機の電動機に電子的に結びつけられており;電子作動制御により測定または推定される少なくとも1つの電気的大きさを通して、リニア圧縮機の少なくとも1つ過負荷条件を検出し、過負荷制御モードから電動機の作動周波数を電気機械的共振周波数に、そして機械的共振と電気的共振の間の中間周波数に調整するように構成されている、作動システムを提供することによって達成される。
【0028】
本発明の目的はさらに、共振リニア圧縮機(50)用の作動方法において、共振リニア圧縮機(50)が少なくとも1つの電動機を含み、電動機が周波数インバータによって作動されており、
a)共振リニア圧縮機の動作サイクル毎に、作動周波数、共振リニア圧縮機のピストンの最大変位および/またはピストンストロークの変位位相および/またはピストンの速度位相および/または電流位相を測定または推定するステップと;
b)ピストンの最大変位と最大基準変位とを比較し、変位誤差を計算するステップと;
c)先行サイクルの動作給電電圧値および先行ステップで得た変位誤差から、電動機の動作給電電圧値を計算するステップと;
d)先行ステップで計算した電動機の動作給電電圧値と最大給電電圧値とを比較するステップと;
e)ステップ「c」で計算した動作給電電圧値が最大給電電圧値以下である場合には、電気制御の過負荷制御モードを非活動化し、作動周波数を機械的共振周波数値まで減少させ、ステップa)に戻るステップと;
f)ステップ「c」で計算した動作給電電圧値が最大給電電圧値より高い場合には、過負荷制御モードを活動化させ、作動周波数を電気機械的共振周波数まで増大させるステップと;
を含む作動方法を提供することによって達成される。
【0029】
本発明についてここで、添付図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】共振リニア圧縮機の概略図を表わす。
図2】本発明で利用される共振リニア圧縮機の機械的モデルの概略図を示す。
図3】本発明の共振リニア圧縮機の電気的モデルの概略図を示す。
図4】本発明の教示に係る電気的システム、機械的システムおよび完全なシステムの極の位置のグラフを示す。
図5】機械的システムの変位についてのボード線図を示す。
図6】機械的システムの速度についてのボード線図を示す。
図7】本発明の完全な電気機械的システムの電流のボード線図を示す。
図8】本発明の教示に係る、完全な電気機械的システムの変位のボード線図を示す。
図9】本発明の完全な電気機械的システムの速度のボード線図を示す。
図10】センサーでの制御の簡略化されたブロック図を表わす。
図11】センサーでの制御およびインバータのブロック図を示す。
図12】センサーによらない制御の簡略化されたブロック図を示す。
図13】センサーによらない制御およびインバータのブロック図を示す。
図14】標準的な制御の提案における過負荷モードを検出することのできる第1の流れ図を示す。
図15】第2の標準的な制御の提案における過負荷モードの検出用に意図された第2の流れ図を示す。
図16】最大変位についての過負荷−制御の流れ図を示す。
図17】速度位相の調整のための過負荷−制御の流れ図を示す。
図18】変位位相の調整のための過負荷−制御の流れ図を示す。
図19】最小電流シフトについての過負荷−制御の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の目的である共振リニア圧縮機50の概略図を示しており、機械的モデルなどのリニア圧縮機50のモデルが、以下の等式1に基づいて定義されており、前記電気的モデルは、等式2から定義されている。
【数1】
なお式中、
MT(i(t))=KMT・i(t)−モーター力[N];
ML(d(t))=KML・d(t)−バネ力[N];
AM(ν(t))=KAM・ν(t)−減衰力[N];
G(d(t))−シリンダ内の気体圧力の力[N];
MT−モーター定数
ML−バネ定数、
AM−減衰定数
m−可動パーの質量
ν(t)−ピストン速度
d(t)−ピストン変位
i(t)−モーター電流
【数2】
なお式中
R(i(t))=R・i(t)−抵抗電圧[V];
L(i(t))=L・(di(t)/dt)−誘起電圧[V];
MT(ν(t))=KMT・ν(t)−モーターまたはCEMF内で誘導された電圧[V];
R−モーターの電気抵抗
L−モーターインダクタンス
【0032】
気体圧力の力(FG(d(t))が、吸気圧力および吐出圧力、非線形ピストン変位と共に可変であり、機械的等式中の他の力についてはそれらはちょうど電気的等式内の全ての電圧と同様、全て線形である。システムの完全なモデルを得るためには、圧力の力を、それがシステム内でひき起こす(電力消費量および共振周波数の変動である)効果で置き換えることが可能である。
【0033】
電力消費量は等価減衰によってモデル化されてよく、共振周波数の変動は等価バネによってモデル化されてよい。
【0034】
こうして、上述の等式(1)を以下の通りに書き直すことができる:
【数3】
または
【数4】
なお式中
MLEq−等価バネ係数
AMEq−等価減衰係数
MLT=KML+KMLEq−合計バネ係数
AMT=KAM+KAMq−合計減衰係数
【0035】
等式(2)および(4)にラプラス変換を適用すると、周波数の最低値における電気的等式を表わす以下の等式(5)そして、それぞれに電流と変位および速度の間の伝達関数を表わす機械的等式(6)および(7)が得られる。
【数5】
【数6】
【数7】
【0036】
以下の等式(8)は、電気的システムの特徴的等式を表わし、こうして、等式(9)は機械的システムの特徴的等式を表わすことになる。この等式の極は、変位/電流または速度/電流の関係が最大である(したがって先行技術の他の解決法において記述されているものと全く同じように最大の効率を伴う)領域である機械的共振周波数を定義している。
【数8】
【数9】
【0037】
数学的に等式(5)〜(9)を解くと、本発明の教示にしたがった完全な電気機械的システムについての入力電圧の一関数としての圧縮機50の電流、変位および速度の伝達関数をそれぞれ表わす等式(10)、(11)および(12)を得ることができる。
【数10】
【数11】
【数12】
【0038】
本発明において設計された電気機械的システムの特徴的等式として、以下の等式(13)または(14)をさらに定義することができる。
【数13】
または
【数14】
【0039】
上述の電気機械的システムの特徴的等式の複素極の対は、電気機械的共振周波数、電流、変位および速度と入力電圧の間にさらに大きい関係がある領域を定義する。したがって、これは、本発明において提案されている通りの共振リニア圧縮機の最大出力を得ることが可能である領域である。
【0040】
以下でさらに詳細に説明する提案対象の作動システムおよび方法の特徴をより良く理解するために、下表1に、50Wの定格負荷について50Hzの機械的共振周波数で動作するように設計された共振リニア圧縮機の係数を定義する値を提示する。
【0041】
【表1】
【0042】
分離した形での電気的システムと機械的システムの極、および完全な電気機械的システムの極を計算して、下表2にしたがって、かつ図4からも、システムの極における改変を視覚化する。
【0043】
機械的共振周波数は、機械的システムの特徴的等式の複素極対のモジュールによって提供される(314.2rad/sまたは50Hz)。電気機械的共振周波数は、電磁システムの特徴的等式の複素極の対のモジュールによって提供される(326.6rad/sまたは51.97Hz)。
【0044】
【表2】
【0045】
図5および6に示されているものなどの機械的システムについての変位および速度の伝達関数のボード線図中では、機械的共振周波数において利得が最大であることを観察することができる。この場合、電流と変位間の位相は−90度であり(変位と電流は直角位相にある)、速度と電流の位相は、ゼロ度である(速度と電流は同相である)。
【0046】
さらに、それぞれ入力電圧の関数としての電流、変位または速度の伝達関数のボーダ線図を表わす図7、8および9の図から、本発明の教示によると電気機械的共振周波数において利得が最大であるということがわかる。
【0047】
その上、図7では、機械的共振周波数において電流の値が最小であり、このため効率が最大であることが認められる。機械的共振周波数と電気機械的共振周波数の間の中間点において、リニアアクチュエータの力率は、電流の位相が最短の遅延を有することから、最大である。
【0048】
上述の表1に提示されたデータについて、電気機械的共振周波数はつねに機械的共振周波数より上であり、電気機械的周波数において、変位と入力電圧の間の位相は、−176度前後であり、速度と入力電圧の間の位相は−86度前後である。電気機械的システムの複素極の対のモジュールと実数極の間の差が大きくなればなるほど、変位および速度のシフトは、それぞれ−180度と−90度に向かう。
【0049】
以上のことを考慮して、冷却システムの過負荷条件のために、共振リニア圧縮機50に最大の電力を供給することを主たる目的として、本発明が提案される。
【0050】
このようなシステムでは、リニア圧縮機50が少なくとも1つのシリンダ2と、少なくとも1つのヘッド3と、少なくとも1つの電動機と、少なくとも1つのバネを含み、こうしてシリンダ2がピストン1を作動的に収納するようになっていることが、考慮に入れられている。図1は、前記圧縮機50とその構成部品を示している。
【0051】
電子的構成に関しては、図10〜13に基づいて本作動システムの主要な特徴を指摘することが可能である。このようなシステムは、電動機の電子作動制御20を少なくとも1つ含み、この電子作動制御20には、互いに電気的に結びつけられた少なくとも1つの制御回路24と少なくとも1つの作動回路26が具備されている。
【0052】
同じ図は、電子作動制御20が、リニア圧縮機50の電動機に対し電子的に結びつけられており、この電子制御20が整流素子、インバータ(反転ブリッジ)およびデジタルプロセッサで構成されていることを示す。
【0053】
ここで請求されている発明の、先行技術と比べた場合にきわめて関連性の高い特徴は、作動システムが特に、電子作動制御20により測定または推定された少なくとも1つの電気的大きさを通してリニア圧縮機(50)の少なくとも1つの過負荷条件を検出し、かつ、過負荷の制御モードから、電気機械的共振周波数に電動機の作動周波数を調整するように構成されているという事実に関するものである。
【0054】
測定または推定された電気的大きさは、作動用ピストン速度値VPによって、さらにはピストン変位値dPによって与えられる。作動電子制御20は、本発明の教示にしたがって、1つの振幅および制御された範囲から出発してPWMソレノイド電圧で圧縮機50の電動機を作動させることができる。
【0055】
すでに前述した通り、本発明は、需要の大きい状況下での冷却システムの所望される制御を達成するために、規定の過負荷動作モードで前記電動機の作動周波数を調整する必要のある条件の下で、リニア圧縮機50の過負荷条件を検出することを、中心となる目的としている。
【0056】
この条件で圧縮機50のモーターを制御する第1の方法が、図16に示されている。図14および15は、標準的な制御の2つの異なる提案において過負荷モードを検出するように適応された2つの流れ図を示す。この場合、過負荷制御モードは、最大基準変位DREFとの関係において、((t))のピストン変位値またはDMAX[K]を基礎として考慮することにより電動機の作動周波数を調整するように構成されている。図14に示された関数F(第2のブロックA[k]=F(A[k=1]、Ed[k]を参照)は、制御P、PIまたはPIDであってよい、ということが認められる。
【0057】
図17に示されている通りの第2の態様において、過負荷制御は、基準速度ψREFとの関係において、圧縮機50mのモーターの速度位相ψvを基礎として考慮することにより電動機の作動周波数を調整するように構成されている。
【0058】
圧縮機50の作動周波数を調整するための第3の方法が、図18に示されている。この場合、過負荷制御モードは、基準変位位相ψdREFとの関係において、圧縮機のモーターの変位位相ψdの値を基礎として考慮することによって、電動機の作動周波数を調整するように構成されている。
【0059】
さらに、図19は、前記圧縮機50の作動周波数を調整する代替的方法を示す。これは、最小電流位相値ψcを基礎として考慮して電動機の作動周波数を調整するように構成された、過負荷制御方法である。
【0060】
上述の調整モードに関しては、これらのモードは、(表1のパラメータによって定義される圧縮機について)好ましくは−176度前後であるピストン変位値(de(t))と入力電圧位相(Vint.)の間の位相差によって提供される。一方、作動周波数の調整は、(表1のパラメータによって定義される圧縮機について)好ましくは−86度前後である速度位相値ψvと入力電圧位相値Vintの間の差から出発して提供される。
【0061】
先行技術に比べた本発明の革新的かつ示差的な特徴は、予見される過負荷制御モードについて効率の良いきわめて簡略化された形で圧縮機50の作動周波数を調整することのできる一組のステップにある。このような手法では、前記圧縮機が周波数インバータによって作動させられる少なくとも1つの電動機を含むという事実が考慮に入れられている。前記方法は、本質的に以下のステップを含む:
a−)共振リニア圧縮機50の動作サイクルTR毎に、作動周波数FR、共振リニア圧縮機50の最大ピストン変位de(t)および/またはピストン変位位相ψdおよび/またはピストン速度位相ψvおよび/または電流位相ψcを測定または推定するステップ;
b−)最大ピストン変位de(t)と最大基準変位DREFとを比較し、変位誤差Errを計算するステップ;
c−)先行サイクルの動作給電電圧値および先行ステップ(単複)で得た変位誤差Errから、電動機の動作給電電圧値Ampopを計算するステップ;
d−)先行ステップで計算した電動機の動作給電電圧値Ampopと最大給電電圧値Amaxとを比較するステップ;
e−)ステップ「c」で計算した動作給電電圧値Ampopが最大給電電圧値Amax以下である場合には、電動機の過負荷制御モードを非活動化し、作動周波数FRを機械的共振周波数値まで減少させ、ステップa− )に戻るステップ;
f−)ステップ「c」で計算した動作給電電圧値Ampopが最大給電電圧値Amaxより高い場合には、過負荷制御モードを活動化させ、作動周波数FRを電気機械的共振周波数まで増大させるステップ。
【0062】
図16に示されている第1の過負荷制御モードに関しては、それがさらに以下のステップを含むということができる:
n)最大ピストン変位de(t)と、動作サイクルTRに先行するサイクルde(t−1)の最大ピストン変位値とを比較するステップ;
o)最大ピストン変位de(t)が先行サイクルのピストン変位de(t)よりも高い場合には、作動周波数FRと先行サイクルの作動周波数FR((t-1)とを比較するステップ;
p)作動周波数FRが先行サイクルの作動周波数RF(t-1)より高い場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ増大させ、ステップa)に戻るステップ;
q)作動周波数FRが先行サイクルの作動周波数FR(t-1)より高くない場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ減少させ、ステップa)に戻るステップ;
r)最大ピストン変位de(t)が先行サイクルの最大ピストン変位de(t−1)より大きくない場合には、作動周波数FRを先行サイクルの作動周波数FR(t−1)と比較するステップ;
s)作動周波数FRが先行サイクルの作動周波数FR(t-1)より低い場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ増大させ、ステップa)に戻るステップ;
t)作動周波数FRが先行サイクルの作動周波数FR(t−1)より低くない場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ減少させ、ステップa)に戻るステップ。
【0063】
ステップn)〜ステップt)が、圧縮機50の最大ピストン変位値のための過負荷制御モードを定義していることを指摘しておかなければならない。
【0064】
図17に示されている第2の過負荷制御モードについては、以下のステップが予見される:
n)圧縮機50のピストンの速度位相ψvを計算するステップ;
o)先行ステップで計算された速度位相値ψvと基準速度位相値ψVREFとを比較するステップ;
p)速度位相ψvが基準速度位相ψVREFより高い場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ増大させ、ステップa)に戻るステップ;
q)速度位相ψvが基準速度位相ψVREFより高くない場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ減少させ、ステップa)に戻るステップ。
【0065】
この第2の制御モードについて、ステップn)〜ステップq)は、−90度(表1のパラメータにより定義されている圧縮機については−86度)前後の基準速度位相の調整のための圧縮機50の過負荷制御モードを定義している。
【0066】
本発明の教示にしたがい、図18に示されている通りの作動周波数を調整する第3の方法は、以下のステップを含む:
n)圧縮機50のピストン変位位相ψdを計算するステップ;
o)先行ステップで計算した変位位相ψdと基準変位位相値ψDREFとを比較するステップ;
p)変位位相ψdが基準変位位相ψDREFより高い場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ増大させ、ステップa)に戻るステップ;
q)変位位相ψdが基準変位位相ψDREFより高くない場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ減少させ、ステップa)に戻るステップ。
【0067】
最後のステップn)〜ステップq)は、−180度(表1のパラメータによって定義されている圧縮機については−176度)前後の基準変位位相の調整のための圧縮機50の過負荷制御モードを定義している。
【0068】
同様に、図19は、以下のステップからなる、電動機の作動周波数を調整する第4の方法を示す:
n)圧縮機50の電流位相ψcを計算するステップ;
o)先行ステップで計算された電流位相ψcを動作サイクル周期TRに先行する電流位相値ψc-1とを比較するステップ;
p)電流位相ψcが先行サイクルの電流位相値ψc-1よりも高い場合には、作動周波数FRと先行するサイクルの作動周波数FR(t−1)とを比較するステップ;
q)作動周波数FRが先行サイクルの作動周波数FR(t−1)より高い場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ増大させ、ステップa)に戻るステップ;
r)作動周波数FRが先行サイクルの作動周波数FR(−1)より高くない場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ減少させ、ステップa)に戻るステップ;
s)電流位相値ψcが先行サイクルの電流位相値ψc−1より高くない場合には、作動周波数FRと先行サイクルの作動周波数FR(t−1)とを比較するステップ;
t)作動周波数FRが先行サイクルの作動周波数FR(t−1)より低い場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ増大させ、ステップa)に戻るステップ;
u)作動周波数Frが先行サイクルの作動周波数FR(t−1)より低くない場合には、作動周波数FRを周波数デルタ値Tfだけ減少させ、ステップa)に戻るステップ。
【0069】
上述のステップn)〜ステップu)は、最小電流シフトのための圧縮機50の過負荷制御モードが定義されている。
【0070】
ピストン変位が最大基準値に達し再び共振周波数に達するにつれて、本システムおよび方法は、過負荷制御から退出するように構成されているという点を指摘しておかなければならない。
【0071】
一方、本発明は、現在設計されている作動システムおよび請求対象の目的において定義されている通りの作動方法が具備された共振リニア圧縮機50を予見している。
【0072】
最後に、以上で記載した共振リニア圧縮機50用の作動システムおよび方法は、同じ機器設計について高負荷または過負荷条件下で前記圧縮機に供給される最大出力を増大させることが可能であるかぎりにおいて、その目的を達成する、ということができる。
【0073】
その上、本発明は、前記圧縮機に供給される最大出力を増大させることによって冷却機器の優れた食品保存を可能にするという点を指摘しておくべきである。さらに、本発明の教示に基づいて、最終製品の製造コストを削減すること、ならびに、そのリニアアクチュエータのより良いサイズ決定を考慮に入れて、圧縮機50の定格動作条件での効率を増大させることが可能である。
【0074】
好ましい実施形態例について記述してきたが、本発明の範囲が、他の考えられる変形形態を包含するものであり、可能な等価物を含む添付の特許請求の範囲の内容によってのみ限定されるということを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
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