(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め、射出充填時に金型の可動型と固定型間に所定の隙間となるパーティング開量が生じ、かつ良品成形可能な射出圧力である成形射出圧力及び良品成形可能な型締力である成形型締力を求めて設定するとともに、生産時に、前記成形型締力により型締装置を型締し、かつ前記成形射出圧力をリミット圧力として設定した射出装置を駆動して前記金型に樹脂を射出充填する特定の成形方式により成形を行う際における射出成形機の制御方法であって、前記パーティング開量を検出するパーティング開量検出器を設けるとともに、生産時に、前記型締装置による型締後における、少なくとも、ノズルタッチ動作が終了すること,金型温度が安定状態に達すること,の一方又は双方を含む所定の射出準備が完了したことを条件に、射出開始時の前後所定期間の範囲における予め設定したリセットタイミングに達したなら、前記パーティング開量検出器をゼロリセットするリセット制御を行うことを特徴とする射出成形機の制御方法。
成形機コントローラに付属するディスプレイの画面の波形表示部に、前記パーティング開量検出器により検出した射出開始以降から前記金型の冷却終了までの変化データを表示することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御方法。
前記リセットタイミングは、一成形サイクルにおける成形条件として設定し、ショット毎に前記リセット制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形機の制御方法。
射出充填時に金型の可動型と固定型間に所定の隙間となるパーティング開量が生じ、かつ良品成形可能な射出圧力である成形射出圧力及び良品成形可能な型締力である成形型締力を求めて設定するとともに、前記成形型締力により型締装置を型締し、かつ前記成形射出圧力をリミット圧力として設定した射出装置を駆動して前記金型に樹脂を射出充填する特定の成形方式により成形を行う射出成形機に備える射出成形機の制御装置であって、前記パーティング開量を検出するパーティング開量検出器と、前記型締装置による型締後における、少なくとも、ノズルタッチ動作が終了すること,金型温度が安定状態に達すること,の一方又は双方を含む所定の射出準備が完了したことを条件に、射出開始時の前後所定期間の範囲における予め設定したタイミングに達したなら、前記パーティング開量検出器をゼロリセットするリセット制御を行う成形機コントローラとを具備してなることを特徴とする射出成形機の制御装置。
前記パーティング開量検出器には、前記金型に付設することにより前記可動型と前記固定型の相対位置を検出する位置検出器を用いることを特徴とする請求項4記載の射出成形機の制御装置。
前記成形機コントローラは、前記パーティング開量検出器により検出した射出開始以降から前記金型の冷却終了までの変化データを、当該成形機コントローラに付属するディスプレイの画面における波形表示部に表示する動作波形表示手段を備えることを特徴とする請求項4又は5記載の射出成形機の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る制御装置1の理解を容易にするため、同制御装置1を備える射出成形機Mの全体構成について、
図3を参照して説明する。
【0021】
図3において、Mは射出成形機であり、射出装置Miと型締装置Mcを備える。射出装置Miは、前端に射出ノズル21nを、後部にホッパ21hをそれぞれ有する加熱筒21を備え、この加熱筒21の内部にはスクリュ22を挿入するとともに、加熱筒21の後端にはスクリュ駆動部23を配設する。スクリュ駆動部23は、片ロッドタイプの射出ラム24rを内蔵する射出シリンダ(油圧シリンダ)24を備え、射出シリンダ24の前方に突出するラムロッド24rsはスクリュ22の後端に結合する。また、射出ラム24rの後端には、射出シリンダ24に取付けた計量モータ(オイルモータ)25のシャフトがスプライン結合する。26は、射出装置Miを進退移動させて金型2に対するノズルタッチ又はその解除を行う射出装置移動シリンダを示す。これにより、射出装置Miは、射出ノズル21nを金型2にノズルタッチし、金型2のキャビティ内に溶融(可塑化)した樹脂R(
図13)を射出充填することができる。
【0022】
一方、型締装置Mcには、型締シリンダ(油圧シリンダ)27の駆動ラム27rにより可動型2mを変位させる直圧方式の油圧式型締装置を用いる。型締装置Mcに、このような油圧式型締装置を用いれば、射出充填時に射出圧力により可動型2mを変位させ、必要な隙間(パーティング開量)Lm(Lmp,Lmr)を生じさせる場合に最適である。型締装置Mcは、位置が固定され、かつ離間して配した固定盤28と型締シリンダ27間に架設した複数のタイバー29…にスライド自在に装填した可動盤30を有し、この可動盤30には型締シリンダ27から前方に突出したラムロッド27rsの先端を固定する。また、固定盤28には固定型2cを取付けるとともに、可動盤30には可動型2mを取付ける。この固定型2cと可動型2mは金型2を構成する。これにより、型締シリンダ27は金型2に対する型開閉及び型締を行うことができる。なお、31は金型2を開いた際に、可動型2mに付着した成形品100(
図13)の突き出しを行うエジェクタシリンダを示す。
【0023】
他方、35は油圧回路であり、油圧駆動源となる可変吐出型油圧ポンプ36及びバルブ回路37を備える。油圧ポンプ36は、ポンプ部38とこのポンプ部38を回転駆動するサーボモータ39を備える。40はサーボモータ39の回転数を検出するロータリエンコーダを示す。また、ポンプ部38は、斜板型ピストンポンプにより構成するポンプ機体41を内蔵する。したがって、ポンプ部38は、斜板42を備え、斜板42の傾斜角(斜板角)を大きくすれば、ポンプ機体41におけるポンプピストンのストロークが大きくなり、吐出流量が増加するとともに、斜板角を小さくすれば、同ポンプピストンのストロークが小さくなり、吐出流量が減少する。よって、斜板角を所定の角度に設定することにより、吐出流量(最大容量)が所定の大きさに固定される固定吐出流量を設定することができる。斜板42には、コントロールシリンダ43及び戻しスプリング44を付設するとともに、コントロールシリンダ43は、切換バルブ(電磁バルブ)45を介してポンプ部38(ポンプ機体41)の吐出口に接続する。これにより、コントロールシリンダ43を制御することにより斜板42の角度(斜板角)を変更することができる。
【0024】
さらに、ポンプ部38の吸入口は、オイルタンク46に接続するとともに、ポンプ部38の吐出口は、バルブ回路37の一次側に接続し、さらに、バルブ回路37の二次側は、射出成形機Mにおける射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に接続する。したがって、バルブ回路37には、射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26にそれぞれ接続する切換バルブ(電磁バルブ)を備えている。なお、各切換バルブは、それぞれ一又は二以上のバルブ部品をはじめ、必要な付属油圧部品等により構成され、少なくとも、射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する作動油の供給,停止,排出に係わる切換機能を有している。
【0025】
これにより、サーボモータ39の回転数を可変制御すれば、可変吐出型油圧ポンプ36の吐出流量及び吐出圧力を可変でき、これに基づいて、上述した射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する駆動制御を行うことができるとともに、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行うことができる。このように、斜板角の変更により固定吐出流量を設定可能な可変吐出型油圧ポンプ36を使用すれば、ポンプ容量を所定の大きさの固定吐出流量(最大容量)に設定できるとともに、固定吐出流量を基本として吐出流量及び吐出圧力を可変できるため、制御系による制御を容易かつ円滑に実施できる。
【0026】
次に、本実施形態に係る制御装置1の構成について、
図3〜
図5を参照して具体的に説明する。
【0027】
制御装置1は主要部を構成する
図4に示す成形機コントローラ4を備え、この成形機コントローラ4にはディスプレイ5が付属する。また、成形機コントローラ4は、
図4に示すように、サーボアンプ52を内蔵し、このサーボアンプ52の出力部に上述したサーボモータ39を接続するとともに、サーボアンプ52のエンコーダパルス入力部にはロータリエンコーダ40を接続する。さらに、
図3に示すように、成形機コントローラ4の制御信号出力ポートには上述したバルブ回路37を接続する。
【0028】
一方、金型2の外側面には位置検出器3sを付設する。位置検出器3sは、可動型2mと固定型2cの相対位置、即ち、パーティング開量Lmの大きさを検出する機能を有し、例えば、
図4に示すように、固定型2c(又は可動型2m)に取付けた反射板3spと、可動型2m(又は固定型2c)に取付けることにより、光又は電波を反射板3spに投射して測距する反射型測距センサ3ssの組合わせにより構成できる。この際、位置検出器3sを、金型2の上面に設ける場合は、左右方向中央付近に、金型2の側面に設ける場合は、上下方向中央付近に配することが望ましい。この位置検出器3sは、本実施形態に係る制御装置1の、成形時における時間に対するパーティング開量Lm…の変化データを検出するパーティング開量検出器3を構成する。このように、パーティング開量検出器3として、金型2に付設することにより、可動型2mと固定型2cの相対位置を検出する位置検出器3sを用いれば、パーティング開量Lmの大きさを直接検出できるため、位置検出器3s以外の誤差要因を極力排した正確なパーティング開量Lm、更にはその変化データを得ることができる利点がある。さらに、油圧回路35におけるバルブ回路37の一次側には、油圧を検出する圧力センサ11を付設するとともに、油温を検出する温度センサ12を付設する。そして、位置検出器3s,圧力センサ11及び温度センサ12は成形機コントローラ4のセンサポートに接続する。
【0029】
また、成形機コントローラ4には、コントローラ本体51とサーボアンプ52が含まれる。コントローラ本体51は、CPU及び内部メモリ等のハードウェアを内蔵するコンピュータ機能を備えている。したがって、内部メモリには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため制御プログラム(ソフトウェア)51pを格納するとともに、各種データ(データベース)類を記憶可能なデータメモリ51mが含まれる。特に、制御プログラム51pには、本実施形態に係る制御方法を実行するための制御プログラムが含まれる。
【0030】
さらに、射出成形機Mは、特定の成形方式(特定成形モード)による成形動作を行うため、内部メモリには、その成形動作を行うための制御プログラム(シーケンス制御プログラム)が含まれる。この場合、特定成形モードとは、予め、射出充填時に金型2における可動型2mと固定型2c間に所定の隙間、即ち、パーティング開量Lmが生じ、かつ良品成形可能な成形射出圧力Pi及び成形型締力Pcを求めて設定するとともに、成形時(生産時)に、成形型締力Pcにより型締装置Mcを型締し、かつ成形射出圧力Piをリミット圧力Psとして設定した射出装置Miを駆動して、金型2に樹脂Rを射出充填するとともに、射出充填後、金型2における所定の冷却時間Tcが経過したなら成形品の取出しを行う成形モードである。本実施形態に係る制御装置1は、この特定成形モードを前提とした制御を行うものであり、この特定成形モードについては後に詳述する。
【0031】
一方、ディスプレイ5は、ディスプレイ本体5d及びこのディスプレイ本体5dに付設したタッチパネル5tを備え、このディスプレイ本体5d及びタッチパネル5tは表示インタフェース53を介してコントローラ本体51に接続する。したがって、このタッチパネル5tにより各種設定操作及び選択操作等を行うことができる。このディスプレイ5には、本実施形態に係る制御装置1に関連して、
図5に示す画面5vが表示される。この画面5vは射出・計量画面である。この場合、射出・計量画面5vの上段と下段には、画面を切換える複数の画面切換キーK1,K2…を表示する。この画面切換キーK1…は、使用頻度の高さを考慮してランク分けされ、上段に、「型開閉画面」切換キーK1,「エジェクタ画面」切換キーK2,
図5に示す射出・計量画面5vを表示する「射出・計量画面」切換キーK3,「温度画面」切換キーK4,「モニタ画面」切換キーK5,「主要条件画面」切換キーK6,「条件切換画面」切換キーK7を有する成形機の動作条件の設定に係わる第一のグループGaを横一列に配するとともに、下段に、これ以外となる「操作スイッチ画面」切換キーK8,「工程監視画面」切換キーK9,「生産情報画面」切換キーK10,「波形画面」切換キーK11,「履歴画面」切換キーK12,「支援画面」切換キーK13を有する第二のグループGbを横一列に配する。各切換キーK1…は、射出・計量画面5vを型開閉画面等の他の画面に切換えた場合でも同じ位置に同じ形状で表示される。なお、Kcは第二階層画面に切換えるための切換キーを示す。
【0032】
また、射出・計量画面5vには、成形モード切換キーKmを備え、この成形モード切換キーKmをタッチすることにより、特定成形モードと汎用成形モードを切換えることができる。射出・計量画面5vは、
図5に示すように、射出速度に係わる設定を行う射出速度設定部71,射出圧力に係わる設定を行う射出圧力設定部72,計量に係わる設定を行う計量設定部73,その他の設定及び表示を行う補助設定部74を備えている。この場合、これらの各設定部71,72,73,74は、特定成形モードと汎用成形モードの双方に兼用して用いられる。
【0033】
さらに、射出・計量画面5vには、少なくとも金型2への射出開始時ts以降から金型2の冷却終了(冷却時間終了)teまでの位置検出器3sにより検出した変化データを表示する波形表示部6を備え、この波形表示部6は動作波形表示手段Fdを構成する。波形表示部6は、横軸が、時間〔秒〕軸となり、縦軸が、パーティング開量Lm〔mm〕,射出圧力Pi〔MPa〕,射出速度Vi〔mm/s〕となる。特に、横軸の時間〔秒〕は、少なくとも金型2への樹脂充填開始となる射出開始時ts以降から金型2の冷却終了teまでの時間をプロットできる時間長を確保する。このため、波形表示部6の下側には、三つの時間設定部75,76,77を備える。75は射出開始からの波形表示開始時間を設定する開始時間設定部であり、例えば、「0.000」〔秒〕を設定すれば、波形は射出開始時点(0.000〔秒〕)から表示される。76は波形時間軸目盛間隔を設定する目盛時間設定部であり、例えば、「1.000」を設定すれば、1目盛は「1.000」〔秒〕に設定される。77は射出開始からの波形表示終了時間を設定する全表示時間設定部であり、例えば、「15.000」〔秒〕を設定すれば、波形は射出開始時点から「15.000」〔秒〕間表示される。一方、縦軸となるパーティング開量Lm〔mm〕,射出圧力Pi〔MPa〕,射出速度Vi〔mm/s〕は波形画面切換キーK11をタッチして表示される波形画面により設定できる。なお、
図5は、四ショット分のパーティング開量Lm…、即ち、パーティング開量Lma,Lmb,Lmc,Lmdを重ね表示した状態を示している。
【0034】
ところで、三つの各時間設定部75,76,77は、波形表示部6における時間軸(横軸)上の任意の一部区間を指定して拡大表示可能な部分拡大表示機能を構成する。即ち、開始時間設定部75と全表示時間設定部77を使用して一部区間を指定し、さらに、目盛時間設定部76により目盛時間を設定することにより、波形における任意の区間を拡大表示できる。したがって、このような部分拡大表示機能を設ければ、波形における任意の一部区間を拡大表示できるため、例えば、パーティング開量Lmが最大となる付近を拡大することにより、重要部位をより緻密に確認できるとともに、射出に係わる条件設定(変更)及び型締力に係わる条件設定(変更)を容易に行える利点がある。
【0035】
この波形表示部6は、特定成形モードにのみ用いられる。したがって、汎用成形モードの場合には、この波形表示部6とは異なる表示、即ち、従来より公知の一般的な波形表示が行われる。このように、特定成形モードと汎用成形モードを切換可能に構成し、波形表示部6(動作波形表示手段Fd)を、特定成形モードに切換えたときのみ用いることができるようにすれば、汎用成形モードを犠牲にすることなく、特定成形モードに対する最適化が可能になるため、成形品や成形材料の種類等が異なる様々な成形シーンに適合する成形方式の選択が可能となり、射出成形機Mの多機能性、更には付加価値及び商品性を高めることができるとともに、ユーザサイドの使い勝手をより高めることができる。
【0036】
また、動作波形表示手段Fdには、成形時における時間に対する射出圧力Pdの変化データを、
図5に示すように、パーティング開量Lmの変化データに重畳して波形表示部6に表示する重畳表示機能を備える。この射出圧力Pdの変化データには、圧力センサ11の検出データを利用できる。このような重畳表示機能を設ければ、パーティング開量Lmの時間に対する変化を、射出圧力Pdの時間に対する変化と対比して把握できるため、パーティング開量Lmの変化データに対して、より的確なモニタリングを行うことができるとともに、成形条件を最適化するための微調整等を容易に行える利点がある。さらに、動作波形表示手段Fdには、成形時における時間に対する射出速度Vdの変化データを、
図5に示すように、パーティング開量Lmの変化データに重畳して波形表示部6に表示する重畳表示機能を備える。この射出速度Vdの変化データには、
図4に示す速度変換部61の出力結果を利用できる。このような重畳表示機能を設ければ、パーティング開量Lmの時間に対する変化を、射出速度Vdの時間に対する変化と対比して把握できるため、パーティング開量Lmの変化データに対して、より的確なモニタリングを行うことができるとともに、成形条件を最適化するための微調整等を容易に行える利点がある。
【0037】
他方、波形表示部6の下方には特定成形設定部81を隣接させて設ける。この特定成形設定部81は特定成形モードに用いられる。この特定成形設定部81も動作波形表示手段Fdの一部となる。特定成形設定部81には、型締力設定部81sとアナログ表示部81dを備える。型締力設定部81sは、型締力Pc〔tonf〕を設定する機能を備え、波形表示部6の下方に隣接して配される。このように波形表示部6に隣接させた型締力設定部81sを設ければ、波形表示部6に表示されるパーティング開量Lmの波形(変化)を確認しながら、型締力設定部81sを用いて設定できるため、パーティング開量Lmの変化に大きく影響を及ぼす型締力Pcの設定をより的確かつ容易に行うことができる。
【0038】
アナログ表示部81dは、リアルタイムで得られるパーティング開量Lmをアナログ表示する機能を備え、波形表示部6の下方に隣接して配される。例示のアナログ表示部81dは、アナログ表示するための円形の目盛81dsを付し、精密計測器であるダイヤルゲージに似せて描いている。したがって、このようなアナログ表示部81dを設ければ、波形表示部6に表示されるパーティング開量Lmの時間に対する変化状態とアナログ表示部81dに表示されるパーティング開量Lmのリアルタイムの数値(大きさ)を同時に確認できるため、両者に基づく相乗効果によりパーティング開量Lmに対する最適なモニタリングを実現できる利点がある。その他、特定成形設定部81において、82は型変位モニタであり、アナログ表示部81dに表示されるパーティング開量Lmの絶対値を数値で表示する機能を備える。83は回転速度表示部、84は樹脂圧表示部、85はスクリュ位置表示部をそれぞれ示す。
【0039】
他方、サーボアンプ52は、圧力補償部56、速度リミッタ57、回転速度補償部58、トルク補償部59、電流検出部60及び速度変換部61を備え、圧力補償部56にはコントローラ本体51から、成形射出圧力Pi(リミット圧力Ps)又は成形型締力Pcが付与されるとともに、速度リミッタ57には速度限界値VLが付与される。これにより、圧力補償部56からは圧力補償された速度指令値が出力し、速度リミッタ57に付与される。この速度指令値はリミット圧力Psにより制限されるとともに、速度リミッタ57から出力する速度指令値は、速度限界値VLにより制限される。さらに、速度リミッタ57から出力する速度指令値は、回転速度補償部58に付与されるとともに、この回転速度補償部58から出力するトルク指令値はトルク補償部59に付与される。そして、トルク補償部59から出力するモータ駆動電流がサーボモータ39に供給され、サーボモータ39が駆動される。なお、ロータリエンコーダ40から得るエンコーダパルスは、速度変換部61により速度検出値Vdに変換され、コントローラ本体51に付与されるとともに、さらに、回転速度補償部58に付与されることにより、回転速度に対するマイナループのフィードバック制御が行われる。
【0040】
次に、本実施形態に係る制御方法を含む射出成形機Mによる成形方法について、
図1〜
図13を参照して具体的に説明する。
【0041】
最初に、成形方法の概要について説明する。
【0042】
(A) まず、生産時に使用する成形型締力Pcと成形射出圧力Piを求め、成形条件として設定する。この際、
(x) 射出充填時に、固定型2cと移動型2m間に適切なパーティング開量(自然隙間)Lmが生じること、
(y) 成形品には、バリ,ヒケ及びソリ等の成形不良が発生しないこと、
を条件とする。
【0043】
また、自然隙間Lmは、ガス抜き及び樹脂Rの圧縮(自然圧縮)が行われること、さらに、最大時のパーティング開量を成形隙間Lmpとし、冷却時間Tcが経過した後のパーティング開量を残留隙間Lmrとして、
(xa) 成形隙間Lmpは、0.03〜0.30〔mm〕、
(xb) 残留隙間Lmrは、0.01〜0.10〔mm〕、
の各許容範囲を満たすことを条件とする。したがって、成形隙間Lmpはパーティング開量Lmの最大量(max)となり、残留隙間Lmrはパーティング開量Lmの最小量(min)となる。
【0044】
(B) 生産時には、設定した成形型締力Pcにより型締を行うこと、成形射出圧力Piをリミット圧力Psに設定すること、の成形条件により樹脂Rは単純に射出する。
【0045】
したがって、このような成形方法によれば、射出充填時には、金型2において自然隙間Lm及び自然圧縮が発生する。この結果、射出装置Miにより射出充填される樹脂Rの挙動が不安定であっても、型締装置Mcが不安定な樹脂Rの挙動に適応し、高度の品質及び均質性を有する成形品が得られる。
【0046】
次に、具体的な処理手順について説明する。まず、予め、成形条件となる成形射出圧力Piと成形型締力Pcを求めるとともに、成形条件として設定する。
図6に、成形射出圧力Piと成形型締力Pcを求めて設定する処理手順を説明するためのフローチャートを示す。
【0047】
最初に、成形モード切換キーKmにより、成形モードを特定成形モードに切換える。そして、射出装置Mi側の射出条件となる射出圧力を、射出圧力設定部72により初期設定する。このときの射出圧力は、射出装置Miの能力(駆動力)に基づく射出圧力を設定できる(ステップS21)。この場合、射出圧力は、射出シリンダ24に接続した油圧回路35における圧力センサ11により検出した油圧Poにより求めることができる。射出圧力は、絶対値として正確に求める必要がないため、検出した油圧Poの大きさを用いてもよいし、演算により射出圧力に変換して用いてもよい。また、型締装置Mc側の型締条件となる型締力を、型締力設定部81sにより初期設定する。このときの型締力は、型締装置Mcの能力(駆動力)に基づく型締力を設定できる(ステップS22)。この場合、型締力は、型締シリンダ27に接続した油圧回路35における圧力センサ11により検出した油圧Poにより求めることができる。型締力は、絶対値として正確に求める必要がないため、検出した油圧Poの大きさを用いてもよいし、演算により型締力に変換して用いてもよい。なお、油圧回路35はバルブ回路37により切換えられ、型締時には型締装置Mc側の油圧回路として機能するとともに、射出時には射出装置Mi側の油圧回路として機能する。射出圧力及び型締力として、このような油圧Poを用いれば、成形型締力Pc及び成形射出圧力Piに係わる設定を容易に行うことができる。しかも、絶対値としての正確な成形型締力Pc及び成形射出圧力Piの設定は不要となるため、より誤差要因の少ない高精度の動作制御を行うことができる。
【0048】
次いで、初期設定した射出圧力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形射出圧力Piを求めるとともに、初期設定した型締力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形型締力Pcを求める(ステップS23,S24)。型締力及び射出圧力を最適化する方法の一例について、
図7を参照して説明する。
【0049】
まず、初期設定した型締力及び射出圧力を用いて試し成形を行う。成形開始ボタンを押すことにより、型締動作が行われ、初期設定した条件により、金型2による試し成形が行われる。例示の場合、初期設定した型締力は40〔kN〕である。初期設定した型締力(40〔kN〕)及び射出圧力を用いた試し成形の結果を
図7に示す。この場合、成形隙間Lmp及び残留隙間Lmrはいずれも0であることを示している。また、初期設定では型締力が大きめになるため、バリは発生しないレベル0(最良)であるとともに、ヒケはレベル4(不良)、ソリはレベル3(稍不良)、ガス抜きに関してはレベル3(稍不良)になったことを示している。
【0050】
さらに、型締力の大きさ及び射出圧力の大きさを、
図7に示すように、段階的に低下させ、それぞれの段階で試し成形を行うことにより、固定型2cと移動型2m間のパーティング開量Lm(Lmp,Lmr)を測定するとともに、成形品100(
図13(c)参照)の良否状態を観察する(ステップS25,S26)。なお、
図7に、射出圧力のデータはないが、射出圧力の最適化は、射出充填時に移動型2mと固定型2c間にパーティング開量Lmが生じ、かつ良品成形可能となることを条件に、設定し得る最小値又はその近傍の値を成形射出圧力Piとすることができる。具体的には、
図7に示すように、型締力を低下させた際に、適宜、射出圧力も低下させ、樹脂Rが金型2に対して正常に充填しなくなる手前の大きさを選択することができる。成形射出圧力Piとして、このような最小値又はその近傍の値を選択すれば、これに伴って、成形型締力Pcも最小値又はその近傍の値に設定可能となるため、省エネルギ性を高める観点から最適なパフォーマンスを得ることができるとともに、機構部品等の保護及び長寿命化を図ることができる。そして、求めた成形射出圧力Piは、生産時の射出圧力に対するリミット圧力Psとして設定する(ステップS27)。
【0051】
図7の結果を見れば、仮想線枠Zuで囲まれる14,15,16〔kN〕の型締力のとき、成形隙間Lmp及び残留隙間Lmrはいずれも許容範囲を満たしている。即ち、成形隙間Lmpは、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲、更には、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲をも満たしている。また、残留隙間Lmrは、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲、更には、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲をも満たしている。加えて、バリ,ヒケ及びソリのいずれも発生しないレベル0(最良)であるとともに、ガス抜きもレベル0(最良)となり、良品成形品を得るという条件を満たしている。したがって、成形型締力Pcは、三つの型締力14,15,16〔kN〕から選択できる。選択した型締力は、生産時に金型2で型締を行う際の成形型締力Pcとして設定する(ステップS28)。
【0052】
ところで、
図7の場合、成形隙間Lmpが、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲を満たすとともに、残留隙間Lmrが、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲を満たすことがバリの発生しない最良成形品を得ることができるが、バリは、成形品取出後に除去することができるとともに、少しのバリがあっても良品として使用できる場合もあるため、
図7に、レベル1(良)やレベル2(普通)で示す低度のバリ発生は、即不良品となるわけではない。したがって、
図7に示すデータを考慮すれば、成形品の種類等によっては、仮想線枠Zusで囲まれる型締力12,13〔kN〕の選択も可能である。即ち、成形隙間Lmpが、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲を満たすとともに、残留隙間Lmrが、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲を満たせば、良品成形品を得ることが可能となる。
【0053】
なお、
図7は、成形型締力Pcと成形射出圧力Piを設定するための説明用データである。したがって、実際の設定に際しては、例えば、型締力を、40,30,20,10等のように、数回程度の変更実施により目的の成形型締力Pc及び成形射出圧力Piを求めることができる。この場合、型締力及び射出圧力の大きさは、オペレータが任意に設定してもよいし、射出成形機Mに備えるオートチューニング機能等を併用しつつ自動又は半自動により求めてもよい。オートチューニング機能を利用した場合には、バリが発生する直前の型締力を容易に求めることができる。
【0054】
また、射出装置Miの射出速度Vdに対する速度限界値VLを設定する(ステップS29)。この速度限界値VLは、必ずしも設定する必要はないが、設定することにより、万が一、射出速度Vdが過度に速くなった場合でも、金型2や射出スクリュ等に対して機械的な保護を図ることができる。したがって、速度限界値VLには、金型2や射出スクリュ等に対して機械的な保護を図ることができる大きさを設定する。
【0055】
さらに、パーティング開量Lmを検出する位置検出器3sのゼロリセット条件を設定する(ステップS30)。本実施形態に係る制御方法(制御装置1)では、後述する生産時に、少なくとも型締装置Mcによる型締後における所定の射出準備が完了したことを条件に、予め設定したリセットタイミングtrに達したなら、位置検出器3sをゼロリセットするリセット制御を行うため、ゼロリセット条件としては、このリセット制御を行うタイミングを、リセットタイミングtrとして設定する。
【0056】
通常、ゼロリセットを行うリセット制御は、金型2の型締時、即ち、型締直後の閉鎖位置で行うため、射出開始までは少なからず射出待機時間が存在する。この射出待機時間は、設定した成形型締力Pcを維持した状態となるため、本来、パーティング開量Lmに影響することはない。しかし、この射出待機中には、少なからず外乱要因が存在し、正確なパーティング開量Lmを得る観点からは無視できない存在となり、結局、この外乱要因はパーティング開量Lmの誤差要因となる。そこで、本実施形態に係る制御方法では、少なくとも型締装置Mcによる型締後における所定の射出準備が完了したことを条件として、リセット制御を行うリセットタイミングtrを設定したものである。この場合、所定の射出準備が完了したこと、には、少なくとも、ノズルタッチ動作が終了したこと,金型温度が安定状態に達すること,の一方又は双方の条件を含ませることができる。
【0057】
図9及び
図10は、射出待機中における実際の外乱要因による影響を実験結果として示している。
図9は、金型温度を変化させた場合のパーティング開量Lmに対する影響、即ち、位置検出器3sの検出出力に対応したパーティング開量Lmの大きさの変動を示している。同図から明らかなように、射出待機中におけるパーティング開量Lmの大きさは、勾配Qsにより変動している。一方、tsは射出開始時を示しているため、この射出開始時tsと同時に、位置検出器3sをゼロリセットするリセット制御を行えば、
図9に示すように、金型温度による誤差要因を排除した状態となるパーティング開量Lm=0から射出を開始することができる。
【0058】
また、
図10は、射出待機中におけるノズルタッチ動作のパーティング開量Lmに対する影響を示している。同図中、Lmx,Lmy,Lmzは、異なる三回のショット時におけるノズルタッチ動作を行った後のパーティング開量Lmの大きさを示している。これより明らかなように、ノズルタッチ動作を行うことによりパーティング開量Lmも影響を受け、実際、ノズルタッチ動作毎にパーティング開量Lmの大きさが変動する。したがって、各ショット毎に異なるパーティング開量Lmx,Lmy,Lmzであっても、
図9の場合と同様、射出開始時tsと同時に位置検出器3sをゼロリセットするリセット制御を行えば、
図10に示すように、ノズルタッチ動作による誤差要因を排除した状態となり、パーティング開量Lm=0から射出を開始することができる。
【0059】
以上は、リセットタイミングtrを射出開始時tsに一致させた例を示したものである。このリセットタイミングtrは、基本的に、射出開始時tsに一致させることが合理的となるが、パーティング開量Lmに対して外乱要因による無用な誤差が入り込まない状態であれば、必ずしも射出開始時tsに一致させる必要はなく、
図11に示すように、この射出開始時tsの前後所定期間Zsの範囲に設定可能である。
【0060】
図11において、tsf時点は、ノズルタッチ動作が終了し、かつ金型温度が安定して一定状態になった時点を示している。したがって、このtsf時点から射出開始時tsの期間でリセット制御を行ったとしても、射出開始時tsと同時に行う場合と同様の効果を得ることができる。一方、射出開始時tsの経過後であっても、金型2に対する樹脂Rの充填満了時付近tseまでは、パーティング開量Lm(Lmx,Lmy,Lmz)は、ほとんど変動しない状態を維持する。
図11の場合、tsd時点までは、パーティング開量Lm(Lmx,Lmy,Lmz)がほとんど変動しない状態を例示している。したがって、射出開始時tsからtsd時点の期間でリセット制御を行ったとしても、射出開始時tsと同時に行う場合と同様の効果を得ることができる。このように、リセットタイミングtrは、tsf時点からtsd時点までの期間、即ち、射出開始時tsの前後所定期間Zsの範囲に設定可能である。
【0061】
ところで、リセットタイミングtrの設定は、いわば一成形サイクルに係わる成形条件の一つとして設定し、ショット毎にリセット制御を行う。したがって、各種外乱要因による誤差分を最も効果的に排除でき、各ショット毎のパーティング開量Lm…の大きさを常に正確かつ安定に収集することができる。
【0062】
その他、必要事項があれば、その設定を行う(ステップS31)。例示の射出成形機Mは、成形型締力Pcを、油圧回路35における温度センサ12により検出した油温Toの大きさにより補正する補正機能を備えている。この補正機能は、成形型締力Pcに対する温度ドリフト等による油温Toの影響を排除するための機能であり、成形型締力Pcを常に一定に維持できるため、動作制御の更なる高精度化及び安定化を図れるとともに、成形品の高度の品質及び均質性に寄与できる。したがって、他の必要事項の設定としては、補正機能により補正する際に使用する補正係数等を適用できる。
【0063】
次に、本実施形態に係る制御方法を用いた生産時の具体的な処理手順について、各図を参照しつつ
図1及び
図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0064】
図1及び
図2は、成形射出圧力Pi及び成形型締力Pcを用いた生産時の処理手順を示し、
図1は、射出準備から射出開始までの充填前工程Saを示すとともに、
図2は、充填開始から成形品をエジェクトするまでの充填成形工程Sbを示す。
【0065】
まず、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、射出装置Miの計量モータ25を駆動し、樹脂Rを可塑化処理する(ステップS1)。この成形方法では、一般的な成形方法のように、樹脂Rを正確に計量する計量工程は不要である。即ち、本実施形態における成形方法の場合、射出工程では、キャビティ内に樹脂Rが満たされるまで射出動作を行うのみでよいため、計量工程における樹脂Rは多めに計量しておけば足りる。したがって、一般的な計量工程における計量動作は行うが、正確な計量値を得るための計量制御は不要となる。また、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、型締装置Mcの型締シリンダ27を駆動し、型締力が成形型締力Pcとなるように、金型2に対する型締を行う(ステップS2,S3)。このときの金型2の状態を
図13(a)に示す。
【0066】
型締の終了により射出準備に係わる処理が行われる(ステップS4,S5)。この処理にはノズルタッチ動作によるノズルタッチ及び金型温度に対する制御が含まれる。ノズルタッチ動作では、射出装置移動シリンダ26が駆動制御され、射出装置Miが前進移動して金型2に対してノズルタッチする制御が行われる。また、金型温度に対する制御処理は、型開きにより変動した金型温度が正規の設定温度になるように制御される。
【0067】
そして、射出準備に係わるこれらの処理が終了すれば、射出装置Miは射出待機状態となる(ステップS6)。一方、成形機コントローラ4では、設定されたリセットタイミングtrに達したか否かを監視する(ステップSd1)。例示のように、リセットタイミングtrを射出開始時tsに一致させる設定を行った場合、射出開始時tsに達したタイミングにより射出を開始するとともに(ステップS7,S8)、位置検出器3sをゼロリセットするリセット制御を行う(ステップSd2,Sd3)。
【0068】
射出開始時tsには、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、射出装置Miの射出シリンダ24を駆動し、
図8に示す射出開始時tsから樹脂Rの射出を行う。この場合、スクリュ22は定格動作により前進させればよく、スクリュ22に対する速度制御及び圧力制御は不要である。また、射出開始時tsには、同時にリセットタイミングtrに達するため、成形機コントローラ4により位置検出器3sをゼロリセットするリセット制御を行う。この結果、
図5に示すように、リセットタイミングtr時点において、各ショットにおけるパーティング開量Lm…(Lma,Lmb,Lmc,Lmd)の全てがゼロリセットされ、パーティング開量Lm(Lma…)=0となる。
【0069】
以上により充填前工程Saが終了し、次いで充填成形工程Sbに移行する。上述した射出の開始により、加熱筒21内の可塑化溶融した樹脂Rは金型2のキャビティ内に充填される(ステップS9)。また、樹脂Rの充填に伴い、
図8に示すように、射出圧力Pdが上昇する。そして、リミット圧力Psに近づき、リミット圧力Psに達すれば、リミット圧力Psに維持するための制御、即ち、オーバーシュートを防止する制御が行われ、射出圧力Pdはリミット圧力Ps(成形射出圧力Pi)に維持される(ステップS10,S11)。したがって、射出動作では実質的な一圧制御が行われる。なお、
図8中、Vdは射出速度を示す。
【0070】
また、金型2のキャビティ内に樹脂Rが満たされることにより、金型2は樹脂Rに加圧され、固定型2cと可動型2m間に型隙間Lmが生じるとともに、最大時には成形隙間Lmpが生じる(ステップS12)。この成形隙間Lmpは、予め設定した成形型締力Pc及び成形射出圧力Piにより、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲、望ましくは、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲となり、良好なガス抜きが行われるとともに、不良の排除された良品成形が行われる。このときの金型2の状態を
図13(b)に示す。
【0071】
他方、少なくとも射出開始時tsから金型2の冷却終了teまでの期間においては、パーティング開量Lmの変化データを検出する。具体的には、可動型2mと固定型2cの相対位置を検出する位置検出器3sを用いて、一定のサンプリング時間間隔により、時間に対するパーティング開量Lmの大きさ(変化データ)を検出する。これにより、検出されたパーティング開量Lmの変化データはコントローラ本体51に付与される。
【0072】
一方、ディスプレイ5には、
図5に示す射出・計量画面5vが表示され、横軸に時間軸を有する波形表示部6には、パーティング開量Lmの変化データが成形工程の進行に従って随時波形表示される。この場合、横軸の時間軸は、少なくとも射出開始時tsから金型2の冷却終了teまでの時間が確保される。表示の際には、成形機コントローラ4における動作波形表示手段Fdにより、位置検出器3sにより検出した、少なくとも金型2への射出開始以降から金型2の冷却終了までの変化データが表示される。これにより、オペレータは、波形表示部6により、型締装置Mc側の動作波形である金型2のパーティング開量Lmの波形変化をモニタリングすることができる。
図5は、異なる四回の各ショットにおける成形隙間(パーティング開量)Lma,Lmb,Lmc,Lmdを示している。
【0073】
このように、成形機コントローラ4に、パーティング開量検出器3により検出した射出開始以降から金型2の冷却終了までの変化データを、当該成形機コントローラ4に付属するディスプレイ5の画面5vにおける波形表示部6に表示する動作波形表示手段Fdを設ければ、型締装置Mc側の動作波形である金型2のパーティング開量Lmの変化状況を視覚により容易かつ効果的にモニタリングできることに加え、前述したゼロリセット効果により、各パーティング開量Lm…のゼロポイントが一致する正確な波形を表示(及び重ね表示)することができる。
【0074】
この結果、型締後から射出開始までの射出待機中に、設定した成形型締力Pcを維持するとともに、ショット毎の金型温度の変動や並行して行われる他の工程における動作等に伴う外乱要因が存在する場合であっても、パーティング開量Lmの大きさに対する無用な影響を排除可能となり、パーティング開量Lmに係わる正確なデータを安定して収集できる。これにより、ゼロポイントが一致する各パーティング開量Lm…の的確なモニタリング及び成形品に対する的確な良否判別処理を行うことができ、歩留まり率の向上にも寄与できる。
【0075】
しかも、ゼロリセットするリセット制御は、射出準備が終了したことを条件とし、この射出準備が終了したことには、少なくとも、ノズルタッチ動作が終了したこと,金型温度が安定状態に達すること,の一方又は双方を含ませたため、パーティング開量Lmの大きさに影響する最も大きな外乱要因となる二つの要因を排除でき、前述した各パーティング開量Lm…の的確なモニタリング及び成形品に対する的確な良否判別処理に係わる効果を有効に確保できる。
【0076】
一方、
図12に示すように、パーティング開量(型変位置)Lm、特に、最大値Lmpと最小値Lmrは、トレンドグラフにより表示するとともに、正常範囲となる監視幅を設定することにより良否判別を行う(ステップSm1,Sm2)。したがって、常に的確な良否判別を行うことができる。なお、良否判別処理において、正常範囲(監視幅)を外れた場合には、必要なエラー処理を行うことができる(ステップSm3)。
【0077】
なお、
図5に示すように、重畳表示機能により、波形表示部6には、時間に対する射出圧力Pd、即ち、圧力センサ11により検出される射出圧力Pdの変化データが、パーティング開量Lmの変化データに重畳して表示されるとともに、時間に対する射出速度Vd、即ち、速度変換部61から得られる射出速度Vdの変化データが、パーティング開量Lmの変化データに重畳して表示される。したがって、このような重畳表示機能により、パーティング開量Lmの時間に対する変化を、射出圧力Pd及び射出速度Vdの時間に対する変化と対比して把握し、パーティング開量Lmの変化データに対して、より的確なモニタリングを行うことができる。また、波形表示部6の下方には、隣接するアナログ表示部81dにより、リアルタイムで得られるパーティング開量Lmがアナログ表示される。したがって、波形表示部6に表示されるパーティング開量Lmの時間に対する変化状態とアナログ表示部81dに表示されるパーティング開量Lmのリアルタイムの数値(大きさ)を同時に確認し、両者に基づく相乗効果によりパーティング開量Lmに対する最適なモニタリングを実現できる。
【0078】
他方、時間の経過に伴って金型2のキャビティ内における樹脂Rの固化が進行するとともに、この固化に伴って樹脂Rの圧縮(自然圧縮)が行われる(ステップS13)。そして、設定した冷却時間Tcが経過すれば、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、型締シリンダ27を駆動し、可動型2mを後退させることにより型開きを行うとともに、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、エジェクタシリンダ31を駆動し、可動型2mに付着した成形品100の突き出しを行う(ステップS14,S15)。これにより、成形品100が取り出され、一成形サイクルが終了する。なお、冷却時間Tcは、射出開始タイミングtsからの経過時間として予め設定することができる。また、
図8に示すように、冷却時間Tcの経過した時点teでは、樹脂Rの自然圧縮により、固定型2cと可動型2m間の残留隙間Lmrは、予め設定した成形型締力Pc及び成形射出圧力Piにより、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲、望ましくは、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲となり、金型2のキャビティ内における樹脂Rに対する自然圧縮が確実に行われるとともに、成形品100における高度の品質及び均質性が確保される。このときの金型2の状態を
図13(c)に示す。
【0079】
この後、次の成形が継続する場合には、同様に、樹脂Rを可塑化して射出準備を行うとともに、以降は、型締、射出、冷却等の処理を同様に行えばよい(ステップSr,S1,S2…)。このような特定の成形方式(特定成形モード)による成形方法によれば、予め、射出充填時に可動型2mと固定型2c間に所定の型隙間Lmが生じ、かつ良品成形可能な成形射出圧力Piと成形型締力Pcを求めて設定するとともに、生産時に、成形型締力Pcにより型締装置Mcを型締し、かつ成形射出圧力Piをリミット圧力Psとして設定し、射出装置Miを駆動して金型2に対する樹脂Rの射出充填を行うため、金型2に充填された樹脂Rに対して、常に設定した成形射出圧力Piを付与できる。この結果、一定の成形型締力Pcと一定の成形射出圧力Piとの相対的な力関係により所定の型隙間Lmを生じさせることができるとともに、樹脂Rの射出充填が終了した後も成形型締力Pcによる自然圧縮を生じさせることができ、成形品100の高度の品質及び均質性を確保できる。したがって、温度や圧力等に敏感に影響を受けやすい特性を有する低粘性の樹脂Rの成形に最適となる。特に、型締装置Mcとして、型締シリンダ27の駆動ラム27rにより可動型2mを変位させる直圧方式の油圧式型締装置を使用したため、型締装置Mc自身の油圧挙動を直接利用して金型2内の樹脂Rに対する自然圧縮を行わせることができ、これにより、良好な自然圧縮を確実に実現できるとともに、制御の容易化にも寄与できる。
【0080】
さらに、この成形方法によれば、成形射出圧力Piと成形型締力Pcを設定すれば足りるため、相互に影響し合う、射出速度,速度切換位置,射出圧力,保圧力等の正確性の要求される射出条件をはじめ、正確な計量が要求される計量値等の計量条件を含む各種成形条件の設定は不要となる。したがって、成形条件のシンプル化及び設定容易化、更には品質管理の容易化を図ることができるとともに、生産時における動作制御も容易に行うことができる。しかも、射出速度に対する多段の制御や保圧に対する制御などの一連の制御が不要となるなど、成形サイクル時間の短縮を図れるとともに、量産性及び経済性を高めることができる。
【0081】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0082】
例えば、位置検出器3sとして反射型測距センサ3ssを例示したが、近接センサ等の非接触かつ隙間等を精度よく検出できる各種センサを利用できる。また、冷却時間Tcの経過後における可動型2mと固定型2c間に所定の残留隙間Lmrを生じさせることが望ましいが、残留隙間Lmrを生じさせない場合を排除するものではない。他方、射出成形機Mとして、直圧方式の油圧式型締装置を用いた場合を例示したが、トグル方式の電動式型締装置を用いてもよい。この場合、トグルリンク機構を非ロックアップ状態にして型締を行うようにすれば、本来の使用態様では自然圧縮を実現できないトグル方式の型締装置Mcであっても自然圧縮が可能となり、特定の成形方式(特定成形モード)による成形を、直圧方式の油圧式型締装置を用いた場合と同様に実現することができる。さらに、成形隙間Lmpとして、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲を、残留隙間Lmrとして、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲をそれぞれ例示したが、これらの範囲に限定されるものではなく、新しい樹脂Rの種類等に応じて変更可能である。また、成形射出圧力Piは、良品成形可能な最小値又はその近傍の値に設定することが望ましいが、このような最小値又はその近傍の値以外となる場合を排除するものではない。一方、射出準備が終了したことには、ノズルタッチ動作が終了したこと,金型温度が安定状態に達すること,の一方又は双方を含ませることができるが、他の射出準備を排除するものではない。さらに、ショット毎にリセット制御を行うことが望ましいが、一ショットおきにリセット制御するなど、必ずしもショット毎にリセット制御することに限定するものではない。