(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014063
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】立体像表示装置及び立体像表示方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/22 20060101AFI20161011BHJP
G02B 5/124 20060101ALI20161011BHJP
G03B 35/24 20060101ALI20161011BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
G02B27/22
G02B5/124
G03B35/24
G09F9/00 358
G09F9/00 359
G09F9/00 361
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-17274(P2014-17274)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143785(P2015-143785A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】
右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/059605(WO,A1)
【文献】
特開2009−025776(JP,A)
【文献】
特開2009−300623(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/123473(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0153577(US,A1)
【文献】
特開2009−053713(JP,A)
【文献】
特開2005−128421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/22 − 27/26
G02B 5/12 − 5/136
G03B 35/24
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏に抜ける反射光出口をそれぞれ有するキュービックコーナー体を軸心を平行にして配置した再帰性反射材の入光側に、光反射部と光透過部が混在した部分透過ミラーを設け、前記光透過部を通って、前記再帰性反射材によって反射した対象物からの光を前記光反射部で再反射させ、前記反射光出口から外部に出光させて結像したことを特徴とする立体像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の立体像表示装置において、前記キュービックコーナー体は、互いに直角に交わる3つの反射面を有し、該3つの反射面の角部側に前記反射光出口が設けられていることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の立体像表示装置において、前記反射光出口は、前記キュービックコーナー体の仮想角部から一定高さ位置まで除去されて形成されていることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の立体像表示装置において、前記キュービックコーナー体は該キュービックコーナー体の仮想角部を基準とした高さをhとした場合、前記反射光出口が前記仮想角部から(0.3〜0.8)hの高さ範囲の位置に形成されていることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の立体像表示装置において、前記キュービックコーナー体は透明プラスチック又はガラスからなって、前記3つの反射面は鏡面処理が行われていることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項6】
互いに直角に交わる3つの反射面を有し、該3つの反射面の角部側に反射光出口が設けられたキュービックコーナー体を、該キュービックコーナー体の軸心を平行にして平面状に複数並べて再帰性反射材を形成し、前記再帰性反射材の入光面に光反射部と光透過部が混在した部分透過ミラーを配置した立体像表示装置を用い、前記キュービックコーナー体に前記光透過部から対象物からの光を入れて前記キュービックコーナー体で再帰反射をさせ、その再帰反射光を前記光反射部で反射させて、前記反射光出口から外部に出光して結像させることを特徴とする立体像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立法体の3面を有するコーナーキューブ(以下、キュービックコーナー体と称する)を用いた立体像表示装置及び立体像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体画像を表示する装置及び方法として、特許文献1記載の立体像の表示装置、及び特許文献2記載の光学結像装置及び方法が知られている。特許文献1記載の技術は、多数のキュービックミラーを格子状に並べ、各キュービックミラーの一面で反射した光をキュービックミラーの直交面で反射させて、表示装置の反対側の空間に実像として立体像を形成させるものである。
【0003】
また、特許文献2記載の光学結像装置60は、
図7に示すように、表裏面に対して直交する帯状の平面反射部63、64を多数備えた第1、第2の光制御部材65、66を、それぞれの平面反射部63、64が直交するようにして並べ、表裏面の一方側に配置された立体像67を他方側に実像68として形成するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−300623号公報
【特許文献2】WO2009/131128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の光学結像装置60(特許文献1記載の表示装置においても同じ)においては、立体像67を表裏面に対して斜め方向に配置し、立体像67からの光を入れて、表裏面から斜め方向に実像68を形成させることが基本原理であるので、光学結像装置60の表裏面の正面(対向位置)にある立体像の実像形成は困難であるという問題があった。
勿論、鏡等を置いて、結像位置を変えることは可能であるが、構造が複雑となり、全体として装置自体が厚みを有するという問題点があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、装置を正面視して立体像(実像)を形成可能な立体像表示装置及び立体像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る立体像表示装置は、表裏に抜ける反射光出口をそれぞれ有するキュービックコーナー体を軸心を平行にして配置した再帰性反射材の入光側に、光反射部と光透過部が混在した部分透過ミラーを設け、前記光透過部を通って、前記再帰性反射材によって反射した対象物からの光を前記光反射部で再反射させ、前記反射光出口から外部に出光させて結像した。
【0008】
第1の発明に係る立体像表示装置において、前記キュービックコーナー体は、互いに直角に交わる3つの反射面(直角2等辺三角形の一部)を有し、該3つの反射面の角部側に前記反射光出口が設けられているのが好ましい。
【0009】
なお、部分透過ミラーの透光率(透過領域面積/全面積)は30〜70%の範囲であるのが好ましい。また、光透過部と光反射部の形状は多角形(三角形を含む)であるのが好ましいが、縞状、散在状であってもよい。一つの光透過部又は光反射部の大きさは、一つのキュービックコーナー体の入光面(例えば、正三角形の平面)の1/1000〜1/50程度(より好ましくは、1/200〜1/50)であるのが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る立体像表示装置において、前記反射光出口は、前記キュービックコーナー体の仮想角部から一定高さ位置まで除去されて形成されているのが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る立体像表示装置において、前記キュービックコーナー体は該キュービックコーナー体の仮想角部を基準とした高さをhとした場合、前記反射光出口が前記仮想角部から(0.3〜0.8)hの高さ範囲の位置に形成されているのが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る立体像表示装置において、前記キュービックコーナー体は透明プラスチック又はガラスからなって、前記3つの反射面は鏡面処理が行われているのが好ましい。
【0013】
そして、第2の発明に係る立体像表示方法は、互いに直角に交わる3つの反射面を有し、該3つの反射面の角部側に反射光出口が設けられたキュービックコーナー体を、該キュービックコーナー体の軸心を平行にして平面状に複数並べて再帰性反射材を形成し、前記再帰性反射材の入光面に光反射部と光透過部が混在した部分透過ミラーを配置した立体像表示装置を用い、前記キュービックコーナー体に前記光透過部から対象物からの光を入れて前記キュービックコーナー体で再帰反射をさせ、その再帰反射光を前記光反射部で反射させて、前記反射光出口から外部に出光して結像させる。
【発明の効果】
【0014】
第1、第2の発明に係る立体像表示装置及び立体像表示方法は、例えば、対象物(被写体及び光源を含む)からの光を再帰性反射材で入射方向に反射させ、再度部分透過ミラーで反射させているので、立体像表示装置に対して一方側の垂直位置に置いた立体像(対象物)を、立体像表示装置の他方側の垂直位置に実像として形成させることができる。
ここで、部分透過ミラーを使用することによって、通常のハーフミラーに比較して光を通過する領域と光を反射する領域を明確に分けることができ、設計製作が容易となる。
【0015】
従って、立体像表示装置を正面視して立体像を鑑賞することができ、装置全体の薄型化が可能となる。
特に、本発明においては、立体像表示装置の裏面側に配置された対象物(電気信号等による仮想画像も含む)を、立体像表示装置の表面側に結像できるので、例えば、携帯電話又は他のディスプレイに容易に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る立体像表示装置の正断面図、(B)は
図1(A)における矢視K−K拡大図である。
【
図3】(A)〜(C)はそれぞれ異なるタイプの部分透過ミラーの説明図である。
【
図4】(A)、(B)はそれぞれ同立体像表示装置の動作説明図である。
【
図5】同立体像表示装置のキュービックコーナー体の説明図である。
【
図7】従来例に係る立体像表示装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1(A)、(B)、
図2、
図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る立体像表示装置10は、頂部11が欠損して反射光出口11aを形成する多数のキュービックコーナー体12が隙間なく隣接して配置された光制御部材13と、光制御部材13の入光側に設けられた部分透過ミラー14とを有している。なお、キュービックコーナー体12はコーナーキューブと称され、多数並べて再帰性反射材として一般に利用されている。なお、反射光出口11aはキュービックコーナー体12の表裏を光が抜ける構造となっている。
【0018】
キュービックコーナー体12は、ガラス又はプラスチックからなる透明体を主体とし、
図4(A)、(B)、
図5に示すように立方体16の直交する3つの面(反射面)17〜19を有している。3つの面17〜19は、直角2等辺三角形の頂部11が一定の高さh1で水平に切除されている(
図4(A))。これによって、キュービックコーナー体12は等脚台形からなる3つの面17〜19と、3つの面17〜19の底辺(又は天井辺)20〜22によって囲まれる正三角形23と、3つの面17〜19の角部側の頂部平面24とを有している。
【0019】
図5においては、立方体16の角部をそれぞれA〜Hとして以下の説明を行う。立方体16の一陵(辺)の長さをaとし、AEの中点をQとすると、AQ=a/√2となり、QC=a・√(3/2)、QB=a/√2、cosθ=QB/QC=1/√3となる。従って、キュービックコーナー体12の仮想角部(立方体16の角部B)を基準として、垂直に中心線mを配置した場合、水平面Nに対する各面17〜19の傾きθは、arccos(1/√3)≒54.736度となる。
【0020】
キュービックコーナー体12は中心線mを垂直にした場合、平面視して正三角形となるので、
図1(A)に示すように多数のキュービックコーナー体12を軸心mを平行にして平面状に隙間なく敷きつめることができる。この場合、キュービックコーナー体12の頂部には、
図4(A)に示すように角部Bから高さh1の位置で頂部11を除去し、中心線mに垂直な頂部平面24を形成している。この頂部平面24はこの実施の形態においては表裏に抜ける反射光出口11aとなる。また、キュービックコーナー体12の外側の面17〜19には鏡面処理(ハーフミラーではない、通常は蒸着処理によって)が行われて、反射面が形成される。これによって、光制御部材13は入射光と反射光が水平又は垂直に対して同一角度(平行)にある再帰性反射材として機能する。
【0021】
頂部平面24を形成するカット高さh1は、キュービックコーナー体12を中心線mを垂直にして立てた場合の角Bを基準とした高さh(=BS)の0.3〜0.8倍(より好ましくは0.35〜0.5倍)の高さとするのが好ましい。高さh1を大きくすると、キュービックコーナー体12の反射面積が減少し、高さh1を小さくすると、反射光出口11aを通る反射光が減少し結像された実像の光量が不足する。
【0022】
この状態で、多数敷きつめられたキュービックコーナー体12によって構成される光制御部材13の入光側は正三角形の平面13a(入光面)から構成されるので、その上に部分透過ミラー14を形成又は配置する。部分透過ミラー14の一つを
図1(B)に示すが、それぞれ多数の三角形の光透過部14aと三角形の光反射部14bが隣り合って配置されている。部分透過ミラー14は、光透過部14aにマスクをかけて非マスク部に銀、アルミニウム、チタン等の白色金属を蒸着して、その後マスクを除去して形成される。
【0023】
光透過部14aと光反射部14bの一辺の長さは、正三角形の平面13aの1/1000〜1/50程度(より好ましくは、1/200〜1/50)となっている。
光透過部14aと光反射部14bの一辺の長さを小さくすると、製造が難しくなり、光の干渉が生じる。また、光透過部14aと光反射部14bの一辺の長さを大きくすると、像が不鮮明になるので、適正範囲にするのが好ましいが、キュービックコーナー体12の大きさによって異なるので、本発明はこの範囲に限定されるものではない。
【0024】
これによって、対象物(平面又は立体のディスプレイ画像を含む)26からの光は部分透過ミラー14の光透過部14aを介して光制御部材13に入り、同一角度で反射するが、部分透過ミラー14の光反射部14bで反射し、反射光出口11aから出て、立体像表示装置10の外側位置で実像27を結像する。
【0025】
図3(A)〜(C)には、部分透過ミラー14の変形例を示すが、(A)は光透過部14cと光反射部dの形状を四角形としたもの、(B)は光透過部14eと光反射部14fの形状を縞状としたもの、(C)は多角形を同心状に配置して光透過部14gと光反射部14hを形成したものである。
それぞれの光透過部と光反射部の最小寸法は平面13aの1/1000〜1/50程度(より好ましくは、1/200〜1/50)とするのがよい。
この場合の部分透過ミラー14の光透過率は50%となるが、光透過部と光反射部の割り合い、又は形状を変えて40〜60%とすることもできる。
【0026】
なお、キュービックコーナー体12の入光側に直接部分透過ミラーを形成するのが好ましいが、光制御部材13の入光側に光反射部を散在させた透明板材(シート材、フィルムを含む)を配置することもできる。この透明板材の裏面(場合によっては表面)に部分透過ミラーを形成することになる。
また、多数のキュービックコーナー体12を並べた状態で金型成形すると共に、これらの入光面を連結する部材を透明にして、部分透過ミラーを形成する。各キュービックコーナー体12の頂部(仮想角部)を切断して頂部平面24を形成することもできる。
【0027】
続いて、この立体像表示装置10の動作を説明し、本発明の一実施の形態に係る立体像表示方法についても説明する。
以上の構成となった立体像表示装置10の表側に、
図1、
図4、
図6に示すように、対象物26を一定距離離しておくと、対象物26からの光は、部分透過ミラー14を通過して光制御部材13に入光する。光制御部材13自体は再帰性反射材となっているので、キュービックコーナー体12の3つの面17〜19を介して入射方向に再帰性反射材で光(即ち、再帰反射光)を反射し、部分透過ミラー14に届く。即ち、対象物26からの光Lが、1)部分透過ミラー14の光透過部14aを通り抜けて、2)面19のP1点で反射、3)面18のP2点で反射、4)面17のP3点で反射する。面17のP3点での反射光は、光Lと平行になり、部分透過ミラー14の光反射部14bであるP4点で反射して、反射光出口11aから外部に出て結像する。
【0028】
部分透過ミラー14の光透過部14aによって一部の光は透過するが、他の光は光反射部14bで反射し、反射光出口11aから
図1で示す下側(外部)に抜けて、実像(立体像)27を結像する。この場合の実像27は部分透過ミラー14の光反射部14bの反射率が高いほど、反射光出口11aの面積が大きい程、理論的には明るくなるが、部分透過ミラー14の反射率を上げると対象物26からの光が減少し、反射光出口11aの面積が大きくなると、再帰性反射材の機能が低下する。従って、部分透過ミラー14の透過率は40〜60%に近い程良く、反射光出口11aの面積は正三角形23の面積の20〜36%とするのがよい。正三角形23の面積は高さh1の二乗に比例する。
【0029】
なお、頂部をカットされていないキュービックコーナー体を軸心を平行にして平面状に並べて、光制御部材を設け、この光制御部材と対象物との間に、一枚のハーフミラー又は部分透過ミラーを斜めに配置すると、対象物からの光はハーフミラー又は部分透過ミラーを通過し、光制御部材内に進入して、再帰性反射を行い、ハーフミラー又は部分透過ミラーによって反射して、実像を形成することになるが、光制御部材と対象物の間でその外側位置に結像するので、実像を正面視できない。従って、本発明に係る立体像表示装置10の場合は、実像を正面視できるので、より応用範囲が広い。
【0030】
また、前記実施の形態においては、部分透過ミラーの代わりに、従来からのハーフミラーを使用することもできるが、ハーフミラーの場合、透光率の制御が難しく、部分透過ミラーの方が均一な製品を製造できる。
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
【符号の説明】
【0031】
10:立体像表示装置、11:頂部、11a:反射光出口、12:キュービックコーナー体、13:光制御部材、13a:平面、14:部分透過ミラー、14a:光透過部、14b:光反射部、14c:光透過部、14d:光反射部、14e:光透過部、14f:光反射部、14g:光透過部、14h:光反射部、16:立方体、17〜19:面、20〜22:底辺、23:正三角形、24:頂部平面、26:対象物、27:実像