(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書には、メニエール病および感覚神経性難聴を含む耳の疾患を処置するための制御放出型コルチコステロイド組成物および製剤が提供される。
【0036】
AIEDのような耳の疾患を処置するのに、数少ない治療用製品を利用することができるが、現時点では、これらの治療薬剤を送達するのに、経口経路、静脈内経路または筋肉内経路を経る全身経路が使用されている。薬物の全身投与は、血清中の濃度は高くなり、標的である中耳および内耳の臓器構造では濃度が低くなり、薬物濃度が潜在的に不十分であるという問題を生じることがある。結果として、十分に治療に有効な量を内耳に送達するために、この不十分さを克服するには、かなり大量の薬物が必要となる。それに加え、薬物の全身投与は、標的部位に十分に局所送達させるのに必要な血清濃度が高い結果、全身毒性および有害な副作用の可能性が増す場合もある。また、全身毒性は、肝臓の破壊、治療薬剤の処理の結果生じ、投与された治療薬によって付与される任意の利益を事実上打ち消してしまう場合もある。
【0037】
全身送達の毒性および付随する副作用を克服するために、本明細書には、標的となる耳構造に治療薬剤を局所送達するための方法および組成物およびデバイスが開示されている。例えば、前庭および蝸牛の器官への到達は、正円窓膜、正円窓/アブミ骨底板、輪状靱帯を含む中耳を通って、耳嚢/側頭骨を通って起こる。
【0038】
したがって、本明細書には、標的とする耳の構造を局所的に処置し、それにより、コルチコステロイド製剤および組成物の全身投与の結果生じる副作用を避けるための制御放出型コルチコステロイド製剤および組成物が提供される。局所的に適用されるコルチコステロイド製剤および組成物およびデバイスは、標的とする耳の構造と適合するものであり、所望の標的とする耳の構造、例えば、蝸牛領域、鼓室または外耳のいずれかに直接投与するか、または、内耳領域(限定されないが、正円窓膜、蝸牛窓稜または正円窓膜が挙げられる)に直接つながっている構造に投与する。耳の構造を特異的に標的とすることによって、全身的な処置の結果生じる有害な副作用が避けられる。さらに、臨床研究から、蝸牛の外リンパに薬物を長時間曝露することの利益は、例えば、治療薬剤を何度も与える場合に、突発性難聴の臨床上の有効性を高めることが示された。このようにして、制御放出型コルチコステロイド製剤または組成物を与えて耳の疾患を処置することによって、耳の疾患を患う個体または患者に、一定の供給源、変化する供給源、および/または広範囲の供給源のコルチコステロイドが与えられ、治療のばらつきが減るか、またはなくなる。したがって、本明細書に開示する1つの実施形態は、少なくとも1つの薬剤を連続的に放出するように、様々な速度または一定の速度で、少なくとも1つのコルチコステロイドを治療に有効な用量で放出させることが可能な製剤を与えるものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示するコルチコステロイドを、即効型の製剤または組成物として投与する。他の実施形態では、連続的に、または変化する様式またはパルス様式、またはこれらの変形で放出されるステロイドおよび/またはATPaseモジュレータ薬剤を、徐放性製剤として投与する。さらに他の実施形態では、連続的に、または変化する様式またはパルス様式、またはこれらの変形で放出されるコルチコステロイド製剤を、即効型製剤および徐放性製剤として投与する。この放出は、場合により、例えば、外部のイオン環境を含む環境的な条件または生理学的な条件によって変わる(例えば、Oros(登録商標)release system、Johnson & Johnsonを参照)。
【0039】
それに加え、標的とする耳の構造の局所的な処置は、pKプロフィールが悪く、吸収率が悪く、全身放出性が低く、および/または毒性の問題がある薬剤を含む、以前の望ましくない治療薬剤の使用も可能にする。コルチコステロイド製剤および組成物およびデバイスを局所的に標的化するため、さらに、生体の血液関門が内耳に存在するため、以前には、毒性があったか、または有効ではなかったという特徴のあるコルチコステロイドで処置した結果生じる副作用の危険性が減るであろう。したがって、耳の疾患の処置において、コルチコステロイドの副作用または効果の無さのために、以前は医師が拒絶していたコルチコステロイドを使用することも、本明細書の実施形態の範囲内にあると想定される。
【0040】
また、本明細書に開示したコルチコステロイド製剤および組成物およびデバイスと組み合わせた、耳に適合するさらなる薬剤を使用することも、本明細書に開示する実施形態の範囲内に含まれる。このような薬剤を使用する場合、このような薬剤は、めまい、耳鳴り、難聴、平衡障害、感染、またはこれらの組み合わせを含む、自己免疫障害の結果生じる難聴または平衡感覚の欠落、または聴覚または平衡感覚の機能不全の処置に役立つ。したがって、めまい、耳鳴り、難聴、平衡障害、感染、炎症反応、またはこれらの組み合わせを含む影響を改善するか、または減らす薬剤は、抗TNF薬剤、制吐薬、化学療法剤(シトキサン、アザチオプリン(azathiaprine)、またはメトトレキサートを含む))を含むコルチコステロイドと、コラーゲン、γ−グロブリン、インターフェロン、コパクソン、中枢神経系薬、局所的に作用する麻酔剤、抗生物質、血小板活性化因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、およびこれらの組み合わせを用いた処置と、組み合わせて使用することも想定されている。
【0041】
それに加え、本明細書に記載した耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤および処置を、処置の必要な個体の標的の耳領域(内耳を含む)に提供し、処置の必要な個体に経口用量のコルチコステロイドが投与される。いくつかの実施形態では、経口用量のコルチコステロイドを、耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤を投与する前に投与し、次いで、耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤が提供される時間中、用量を徐々に減らしていく。代替的に、経口用量のコルチコステロイドを、耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤を投与している間に投与し、次いで、耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤が提供される時間中、用量を徐々に減らしていく。代替的に、経口用量のコルチコステロイドを、耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤の投与を開始した後に投与し、次いで、耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤が提供される時間中、用量を徐々に減らしていく。
【0042】
それに加え、本明細書に含まれるコルチコステロイド医薬組成物または製剤またはデバイスは、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤も含む。このような担体、アジュバント、および他の賦形剤は、標的とする耳の構造中の環境に適合する。したがって、本明細書で想定される耳の疾患を効果的に処置し、標的とする領域または区域での副作用を最小限にすることを可能にするために、耳毒性をなくすか、または耳毒性が最小限の担体、アジュバントおよび賦形剤が特に想定される。耳毒性を防ぐために、本明細書に開示するコルチコステロイド医薬組成物または製剤またはデバイスは、場合によっては、標的とする耳の構造の別個の領域を標的とする。この別個の領域は、限定されないが、鼓室、前庭骨および前庭膜の迷路、蝸牛骨および蝸牛膜の迷路、内耳の中に位置する他の解剖学的構造または生理学的構造を含む。
【0043】
(特定の定義)
用語「耳に許容可能な」は、製剤、組成物または成分に関し、本明細書で使用される場合、処置される被験体の中耳(auris mediaまたはmiddle ear)および内耳(auris internaまたはinner ear)に対する有害な影響が持続しないことを含む。「医薬的に耳に許容可能な」とは、本明細書で使用される場合、中耳(auris mediaまたはmiddle ear)および内耳(auris internaまたはinner ear)に関連して、化合物の生体活性または性質を無効化せず、中耳(auris mediaまたはmiddle ear)および内耳(auris internaまたはinner ear)に対する毒性を相対的に減らすか、または減らす担体または希釈剤のような物質を指す。すなわち、望ましくない生物学的効果を生じないか、またはこの物質が含まれる組成物のいずれかの成分と有害に相互作用しないように、この物質を個体に投与する。
【0044】
本明細書で使用される場合、特定の化合物または医薬組成物を投与することによって、特定の耳の疾患、障害または疾病の症状を改善すること、または減らすことは、永久的であれ一時的であれ、上述の化合物または組成物の投与が原因で、または上述の化合物または組成物の投与に関連して、重篤度を下げること、発症を遅らせること、進行を遅らせること、持続時間を短くすること、を指す。
【0045】
「酸化防止剤」は、医薬的に耳に許容可能な酸化防止剤であり、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、トコフェロールが挙げられる。特定の実施形態では、酸化防止剤は、必要な場合、化学安定性を高める。また、本明細書に開示するコルチコステロイドと組み合わせて使用する薬剤を含む特定の治療薬剤の耳毒性の影響を中和するために、酸化防止剤を使用する。
【0046】
「内耳(auris interna)」は、蝸牛および前庭の迷路、蝸牛と中耳とを接続する正円窓を含む、内耳(inner ear)を指す。
【0047】
「耳のバイオアベイラビリティ」または「内耳のバイオアベイラビリティ」または「中耳のバイオアベイラビリティ」または「外耳のバイオアベイラビリティ」は、本明細書に開示する化合物の投与された用量が、試験される動物またはヒトの標的とする耳の構造で利用可能になる割合を指す。
【0048】
「中耳(auris media)」は、鼓室、耳小骨、中耳と内耳とを接続する正円窓を含む、中耳(middle ear)を指す。
【0049】
「外耳(auris externa)」は、耳介、耳道、外耳と中耳とを接続する鼓膜を含む、外耳(outer ear)を指す。
【0050】
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分における、本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
【0051】
「担体物質」は、コルチコステロイド、標的とする耳の構造、および耳に許容可能な医薬製剤の放出プロフィールと適合する賦形剤である。このような担体物質としては、例えば、バインダー、懸濁剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが挙げられる。「医薬的に耳に適合する担体物質」としては、限定されないが、アラビアゴム、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン塩ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、三リン酸カルシウム、リン酸二カリウム、セルロースおよびセルロース接合体、糖類、ナトリウムステアロイルラクチレート、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファー化デンプンなどが挙げられる。
【0052】
用語「希釈剤」は、送達前にコルチコステロイドを希釈し、標的とする耳の構造に適合させるために使用する化学化合物を指す。
【0053】
「分散剤」および/または「粘度調節剤」は、液体媒体を通るコルチコステロイドの拡散性および均質性を制御する物質である。拡散促進剤/分散剤の例としては、限定されないが、親水性ポリマー、電解質、Tween(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;商業的にはPlasdone(登録商標)として知られる)、炭水化物系分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC−SL、HPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、HPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、非結晶性セルロース、マグネシウムアルミニウムシリケート、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/ビニルアセテートのコポリマー(S630)、エチレンオキシドとホルムアルデヒドとを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポールとしても知られる)、ポロクサマー(例えば、プルロニックF127、プルロニックF68(登録商標)、F88(登録商標)、F108(登録商標)、これらは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーである);ポロキサミン(例えば、テトロニック908(登録商標)、ポロキサミン908(登録商標)としても知られ、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドが、エチレンジアミンに連続的に付加したものから誘導される四官能ブロックコポリマーである(BASF Corporation、Parsippany、N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテートのコポリマー(S−630)、ポリエチレングリコール(例えば、このポリエチレングリコールは、約300〜約6000、または約3350〜約4000、または約7000〜約5400の分子量を有する)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリソルベート−80、アルギン酸ナトリウム、ゴム(例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、グアーゴム)、キサンタンゴムを含むキサンタン、糖類、セルロース誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリソルベート−80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。セルロースまたはトリエチルセルロースのような可塑剤も、分散剤として使用される。本明細書に開示するコルチコステロイドのリポソーム分散物または自己乳化性分散物に有用な、任意の分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン(c8〜c18)、ホスファチジルエタノールアミン(c8〜c18)、ホスファチジルグリセロール(c8〜c18)、卵または大豆由来の天然のホスファチジルコリン、卵または大豆由来の天然のホスファチジルグリセロール、コレステロールおよびミリスチン酸イソプロピルである。
【0054】
「薬物吸収」または「吸収」は、コルチコステロイドが、投与した局所的な部位(ほんの一例として、内耳の正円窓膜)から、障壁(以下に示すような正円窓膜)を通り、内耳(auris internaまたはinner ear)構造へと移動するプロセスを指す。用語「同時投与」などは、本明細書で使用される場合、コルチコステロイドを単一の患者に投与することを包含する意味を有しており、コルチコステロイドが、同じ投薬経路または異なる投薬経路で投与されるか、または同時または異なるときに投与される処置計画を含むことを意図している。
【0055】
用語「有効な量」または「治療に有効な量」は、本明細書で使用される場合、処置される対象の1つ以上の疾患または疾病をある程度まで緩和すると予想されるのに十分な、投与されるコルチコステロイドの量を指す。例えば、本明細書に開示したコルチコステロイド薬剤を投与した結果、AIEDの徴候、症状または原因を減らし、および/または軽減するのに十分な量を指す。例えば、治療用途で「有効な量」は、過度の有害な副作用を生じずに、疾患症状を減らすか、または改善するのに必要なコルチコステロイド(本明細書に開示した製剤を含む)の量である。用語「治療に有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。本明細書に開示したコルチコステロイド組成物の「有効な量」は、過度の有害な副作用を生じずに、望ましい薬理学的効果または治療の向上を達成するのに有効な量である。「有効な量」または「治療に有効な量」は、いくつかの実施形態では、投与される化合物の代謝、被験体の年齢、体重、全身症状、処置される疾病、処置される疾病の重篤度、主治医の判断がばらつくことによって、被験体ごとに変わることが理解される。また、薬物動態および薬理学を考慮して、持続放出型の投薬形式における「有効な量」が、即効型の投薬形式における「有効な量」とは異なっていてもよいことも理解される。
【0056】
用語「高める」または「高めること」は、コルチコステロイドの望ましい効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか、または長くすること、または任意の有害な症状(例えば、治療薬剤を投与した結果生じる局所的な痛み)を減らすことを指す。したがって、本明細書に開示するコルチコステロイドの効果を高めることに関し、用語「高めること」は、本明細書に開示するコルチコステロイドと組み合わせて使用する他の治療薬剤の効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか、または長くする能力を指す。「高めるのに有効な量」は、本明細書で使用される場合、所望な系で別の治療薬剤またはコルチコステロイドの効果を高めるのに十分な、コルチコステロイドまたは他の治療薬剤の量を指す。患者に用いる場合、この用途で有効な量は、疾患、障害または疾病の重篤度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する応答、処置する医師の判断によって変わるであろう。
【0057】
用語「阻害すること」は、疾病(例えば、AIED)の進行、または処置を必要とする患者の状態が進むのを予防するか、遅らせるか、または逆行させることを指す。
【0058】
用語「キット」と「製造物品」は、同義語として用いられる。
【0059】
「薬理学」は、標的とする耳の構造内にある所望の部位での薬物濃度に対して、観察される生体応答を決定する因子を指す。
【0060】
「薬物動態」は、標的とする耳の構造内にある所望の部位で、適切な薬物濃度の獲得および維持を決定する因子を指す。
【0061】
予防的な用途では、本明細書に記載のコルチコステロイドを含有する組成物は、特定の疾患、障害または疾病(例えば、メニエール病)にかかりやすい患者、そうでなければ、それらのリスクを有する患者、またはAIEDに関連する疾患(ほんの一例として、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、コーガン病、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー肉芽腫症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、硬皮症、ベーチェット病)にかかっている患者に投与される。このような量は、「予防に有効な量または用量」であると定義される。この用途では、正確な量も、患者の健康状態、体重などによって変わる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「医薬デバイス」は、耳に投与する際に、本明細書に記載した活性薬剤を持続放出するための容器を提供する、本明細書に記載した任意の組成物を含む。
【0063】
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に変換されるコルチコステロイドを指す。特定の実施形態では、プロドラッグは、1つ以上の工程またはプロセスによって、上述の化合物の生物学的、薬学的または治療的に活性な形態へと酵素によって代謝される。プロドラッグを製造するために、インビボ投与すると活性化合物が再生されるように、薬学的に活性な化合物を修飾する。1つの実施形態では、プロドラッグは、薬物の代謝安定性または移動特性を変え、副作用または毒性を消すか、または薬物の他の特性または性質を変えるように設計される。本明細書で提供される化合物は、いくつかの実施形態では、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
【0064】
「正円窓膜」は、蝸牛窓(fenestrae cochlea、circular windowまたはfenestrae rotundaまたはround windowとしても知られる)を覆う、ヒトの膜である。ヒトでは、正円窓膜の厚みは、約70ミクロンである。
【0065】
「可溶化剤」は、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ショ糖エステル、アルキルグルコシド、ナトリウムドクセート、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200〜600、グリコフロール、トランスキトール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビドなどのような、耳に許容可能な化合物を指す。
【0066】
「安定化剤」は、任意の酸化防止剤、緩衝剤、酸、防腐剤などのような、標的とする耳の構造の環境と適合する化合物を指す。安定化剤としては、限定されないが、(1)賦形剤と、容器または送達系(シリンジまたはガラス瓶を含む)との適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、または(3)製剤の安定性を向上させる、いずれかの薬剤が挙げられる。
【0067】
「定常状態」は、本明細書で使用される場合、標的とする耳の構造に投与される薬物の量が、1回の投薬間隔の間に排泄される薬物の量と等しい場合、標的とする構造内での薬物曝露濃度が水平状態になるか、一定になることである。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」は、動物、好ましくは、ヒトまたは非ヒトを含む哺乳動物を意味するために使用される。患者という用語と被験体という用語は、同じ意味で用いられていてもよい。
【0069】
「界面活性剤」は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクセート、Tween(登録商標)60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート、ポロクサマー(polaxomer)、胆汁塩、グリセリルモノステアレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、例えば、プルロニック(登録商標)(BASF)などのような、耳に許容可能な化合物を指す。いくつかの他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;およびポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、他の目的のために物理的安定性を高めるために含まれる。
【0070】
用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、本明細書で使用される場合、疾患または疾病の症状を軽減し、弱めるか、または改善すること、さらなる症状を予防すること、症状の根本的な代謝原因を改善するか、または予防すること、疾患または疾病を抑制すること、例えば、疾患または疾病の進行を止めること、疾患または疾病を緩和すること、疾患または疾病を逆行させること、疾患または疾病によって生じる状態を緩和すること、または、疾患または疾病の症状を予防的および/または治療的のいずれかで止めることを含む。
【0071】
(耳の解剖学)
以下の図に示すように、外耳は、この臓器の外側部分であり、耳介(pinna、auricle)と、耳道(外耳道)と、鼓膜(tympanic menbrane、ear drumとしても知られている)の外側に面する部分とで構成されている。外耳の肉質部分であり、頭部の側面にある目に見える耳介は、音波を集め、音波を耳道に向かわせる。したがって、外耳の機能は、一部には、音波を集め、鼓膜および中耳に向かわせることである。
【0072】
中耳は、空気で満たされた空洞であり、鼓室と呼ばれ、鼓膜の背後にある。鼓膜(tympanic membrane、ear drumとしても知られている)は、外耳と中耳とを分ける薄い膜である。中耳は、側頭骨の中に位置しており、この空間の中に、槌骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳骨(耳小骨)が含まれている。耳小骨は、小さな靱帯によってともに結合しており、鼓室の空間を横切って架橋を形成している。槌骨は、一端で鼓膜に結合しており、前端でキヌタ骨に結合しており、次いで、アブミ骨に結合している。アブミ骨は、卵円窓に結合しており、2つの卵円窓の1つは、鼓室内に位置している。輪状靱帯として知られる線維組織層は、アブミ骨を卵円窓に接続している。外耳からの音波は、まず、鼓膜を振動させる。この振動が、耳小骨および卵円窓を通って蝸牛に伝わり、内耳液にこの動きが伝わる。したがって、耳小骨は、鼓膜と、流体に満たされた内耳の卵円窓とを機械的に結合するように配置されており、さらなる処理のために、音が内耳に伝わり、変換される。耳小骨、鼓膜または卵円窓が硬化し、硬直するか、または移動できなくなると、難聴、例えば、耳硬化症、またはアブミ骨の硬直を引き起こす。
【0073】
また、鼓室は、エウスタキオ管を経て、咽喉にも接続している。エウスタキオ管は、外気と中耳の空洞との圧力を等しくする能力を付与している。正円窓は、内耳の要素であるが、鼓室内にもつながっており、内耳の蝸牛に向かって開口している。正円窓は、外側層または粘液層、中間層または線維層、内側膜の3つの層からなる正円窓膜によって覆われており、蝸牛の流体に直接つながっている。したがって、正円窓は、内側の膜を介して、内耳と直接つながっている。
【0074】
卵円窓および正円窓での動きは、相互接続されており、すなわち、アブミ骨の骨が、鼓膜から正円窓へとこの動きを伝えることで、内耳の流体に対して内側に動くにつれて、正円窓(もっと正確には、正円窓膜)が、対応するように押し出され、蝸牛の流体とは離れる。正円窓のこの動きによって、蝸牛内の流体が動き、次いで、蝸牛の内側の有毛細胞が移動し、聴覚信号が変換される。正円窓膜が硬化し、硬直すると、蝸牛の流体が移動できなくなるため、難聴を引き起こす。近年の研究は、正円窓を通る正常な伝導経路を迂回させるとともに増幅させた入力を蝸牛空間に与える、正円窓に医療用変換器を移植することに注目が集まっている。
【0075】
聴覚信号の変換は、内耳で起こる。流体で満たされた内耳(auris internaまたはinner ear)は、蝸牛の器官および前庭の器官の2つの主要な要素からなる。内耳は、部分的に、頭蓋骨の側頭骨にある入り組んだ一連の経路である骨迷路(osseous labyrinthまたはbony labyrinth)内に位置している。前庭の器官は、平衡感覚の臓器であり、3つの半円状の管と、前庭とからなっている。この3つの半円状の管は、空間の3つの直交面に沿った頭部の動きを、流体の動きと、次いで、膨大部稜と呼ばれる半円状の管の感覚臓器による信号処理とによって検出することができるように、互いに対して配列されている。膨大部稜は、有毛細胞と支持細胞とを備えており、クプラと呼ばれる半円型のゼラチン状の塊によって覆われている。有毛細胞の毛は、クプラに包まれている。半円状の管は、動的平衡、回転または角度の動きの平衡状態を検出する。
【0076】
頭部を迅速に回転させると、半円状の管は、頭部とともに動くが、膜状の半円状の管の中にある内リンパ液は、動かないままである傾向がある。内リンパ液は、クプラに対して押し出され、片側に傾く。クプラが傾くにつれて、クプラが、膨大部稜の有毛細胞のいくつかの毛を曲げ、これが、知覚インパルスの引き金となる。それぞれの半円状の管は、異なる面に位置しているため、それぞれの半円状の管の対応する膨大部稜は、頭部の同じ動きに対して異なる応答をする。これにより、インパルスの寄せ集めが作られ、これが、内耳神経の前庭枝にある中枢神経系に伝わる。中枢神経系は、この情報を解釈し、平衡を維持するのに適切な反応を開始する。中枢神経系の中で、重要なのは小脳であり、平衡および均衡の感覚に介在する。
【0077】
前庭は、内耳の中心部分であり、静的平衡または重力に対する頭部の位置を確認する、有毛細胞を有する機械受容器を備えている。静的平衡は、頭部が動いていないか、または直線状に動いているときに役割をはたす。前庭の膜状迷路は、卵形嚢および球形嚢の2つの嚢状の構造に分かれる。それぞれの構造は、同様に、嚢斑と呼ばれる小さな構造を含有しており、これは、静的平衡の維持に関与している。嚢斑は、感覚有毛細胞からなり、感覚有毛細胞は、嚢斑を覆うゼラチン状の塊(クプラと似たもの)に包まれている。耳石と呼ばれる炭酸カルシウムの粒は、ゼラチン状の層表面に埋め込まれている。
【0078】
頭部が直立位置にある場合、毛は、斑に沿ってまっすぐになっている。頭部が傾くと、ゼラチン状の塊および耳石が、これに対応して傾き、斑の有毛細胞のいくつかの毛を曲げる。この曲げ動作によって、中枢神経系に対してシグナルのインパルスが開始され、これが、内耳神経の前庭枝を経て伝わり、次いで、平衡を維持するために、適切な筋肉に対し運動インパルスが中継される。
【0080】
蝸牛は、聴覚に関連する、内耳の部分である。蝸牛は、先が細くなった管状の構造であり、カタツムリに似た形状に巻かれている。蝸牛の内側は、3つの領域に分かれており、前庭膜および基底膜の位置によってさらに規定されている。前庭膜の上の位置は、前庭階であり、卵円窓から蝸牛頂部に延びており、カリウム濃度が低く、ナトリウム濃度が高い水溶液である外リンパ液を含有する。基底膜は、鼓室階の領域を規定しており、蝸牛頂部から正円窓に延びており、これも外リンパを含有している。基底膜は、数千の硬い繊維を含有しており、正円窓から蝸牛頂部に向かって、徐々に長くなっている。音によって活性化されると、基底膜の線維が振動する。前庭階と鼓室階との間に蝸牛管があり、蝸牛頂部で、嚢は閉じている。蝸牛管は、内リンパ液を含有しており、この内リンパ液は、脳脊髄液と似ており、カリウムが多い。
【0081】
聴覚器官であるコルチ器官は、基底膜上にあり、蝸牛管の方へ上方に向かって延びている。コルチ器官は、有毛細胞を含有しており、自由表面から延びる毛状突起を有しており、蓋膜と呼ばれるゼラチン状表面と接触している。有毛細胞には軸索が存在しないが、内耳神経の蝸牛枝を形成する感覚神経線維に囲まれている(脳神経VIII)。
【0082】
上述のように、楕円形の窓としても知られる卵円窓は、アブミ骨とつながっており、鼓膜から振動する音波を中継する。卵円窓に伝わった振動は、外リンパおよび前庭階/鼓室階を経て、流体で満たされた蝸牛の内圧を高め、次いで、正円窓膜が応答して膨らむ。卵円窓の内側が加圧されること/正円窓が外側に膨らむことが協働することによって、蝸牛の内圧が変わることなく、蝸牛内の流体を動かすことができる。しかし、振動が、外リンパを介して前庭階へと伝わるにつれて、前庭階壁内で対応する振幅が作られる。これらの対応する振幅は、蝸牛管の内リンパを介して伝わり、基底膜へと伝わる。基底膜が振幅するか、または上下に移動すると、コルチ器官が、それに伴って動く。次いで、コルチ器官の有毛細胞受容体が、蓋膜に対して動き、蓋膜が機械的に変形する。この機械的な変形によって、神経インパルスが開始し、内耳神経を経て中枢神経系に伝わり、受け取った音波は、後で中枢神経系によって処理されるシグナルへと機械的に変換される。
【0083】
(疾患)
内耳、中耳、外耳の疾患を含む耳の疾患が、限定されないが、難聴、眼振、めまい、耳鳴り、炎症、腫脹、感染、うっ血を含む症状を作り出す。これらの障害は、感染、損傷、炎症、腫瘍、薬物または他の化学薬剤に対する有害な反応のような多くの原因を有しているであろう。聴覚および/または平衡感覚の不全または炎症のいくつかの原因は、自己免疫障害および/またはサイトカインが介在する炎症反応による場合がある。1つの実施形態では、耳の疾患は、メニエール病である。1つの実施形態では、耳の疾患は、感覚神経性難聴である。1つの実施形態では、耳の疾患は、自己免疫性内耳疾患(AIED)である。1つの実施形態では、耳の疾患は、メニエール病である。さらなる実施形態では、耳の疾患は、メニエール症候群、前庭神経炎、体位性めまい、ラムゼイ・ハント症候群(帯状疱疹感染)、梅毒感染、薬物誘発型の内耳損傷、聴神経腫瘍、過剰な騒音による難聴、老人性難聴、耳硬化症、または顎関節疾患である。
【0084】
以下に示したものを含む、本明細書に提示した疾患は、本明細書に記載したステロイド医薬組成物を用いて処置される。
【0085】
(メニエール病)
メニエール病は、3〜24時間続くめまい、吐き気、嘔吐に突然襲われ、徐々におさまっていくことを特徴とする、特発性の疾病である。時間がたつにつれて、上述の疾患に、進行性の難聴、耳鳴り、および耳の圧迫感を伴う。メニエール病の原因は、よくわかっていないが、おそらく、内耳液の産生量の増加または再吸収量の減少を含む、内耳液のホメオスタシスのバランスが崩れることと関係がある。
【0086】
症状を緩和するために使用されている外科的手技としては、めまい症状を緩和するための、前庭機能および/または蝸牛機能の破壊が挙げられる。これらの手技は、内耳の液圧を下げることおよび/または内耳の平衡機能を破壊することのいずれかを目的とする。液圧を減らす内リンパシャント術は、前庭機能不全の症状を緩和するために、内耳に配置されてもよい。他の処置としては、有毛細胞の感覚機能を破壊するように鼓膜に注射し、それにより、内耳の平衡機能を完全になくすゲンタマイシン適用が挙げられる。前庭神経の切断を利用してもよく、聴覚を保持しつつ、めまいを制御することができる。
【0087】
メニエール病を手当てする標準法は、個体が低塩分食を守ることが必要である。特定の場合には、低塩分食は、抗生物質の投与によって補完される。特定の場合には、低塩分食は、ゲンタマイシン投与によって補完される。特定の場合には、低塩分食は、経口ステロイド投与によって補完される。特定の場合には、低塩分食は、経口プレドニゾン投与(25〜50mg PO/IM/PR 4〜6時間に1回)によって補完される。
【0088】
一連の実施形態では、上に示した手当ての標準法を用いてメニエール病を処置される患者は、その代わりに、本明細書に記載した、制御放出型コルチコステロイドの耳に許容可能な製剤および方法を用いて処置される。別の一連の実施形態では、上に示した手当ての標準法を用いてメニエール病を処置されるが、このような処置で難治性であるか、反応しない患者は、その代わりに、本明細書に記載した、制御放出型コルチコステロイドの耳に許容可能な製剤および方法を用いて処置される。
【0089】
いくつかの実施形態では、聴覚障害、平衡障害、または他の耳の疾患を監視するか、または観察するために、機械デバイスまたは造影デバイスが使用される。例えば、磁気共鳴映像(MRI)デバイスは、特に、実施形態の範囲内であると想定され、MRIデバイス(例えば、3 Tesla MRIデバイス)によって、メニエール病の進行を評価することができ、次いで、本明細書に開示する医薬製剤で処置する。また、ガドリニウム系染料、ヨウ素系染料、バリウム系染料なども、本明細書に記載する任意の耳に適合する組成物またはデバイスおよび/または本明細書に記載した任意の機械デバイスまたは造影デバイスを用いて使用することが想定されている。特定の実施形態では、ガドリニウム水和物を、MRIおよび/または任意の本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスと組み合わせて使用し、疾患の重篤度(例えば、内リンパ水腫の大きさ)、内耳への製剤の浸透、および/または本明細書に記載した耳の疾患(例えば、メニエール病)における医薬製剤/デバイスの治療効果を評価する。
【0090】
(メニエール症候群)
メニエール病と似た症状を示すメニエール症候群は、別の疾患プロセスの二次的な苦痛(例えば、梅毒感染による甲状腺疾患または内耳炎症)であると考えられる。したがって、メニエール症候群は、内分泌異常、電解質不均衡、自己免疫機能不全、医薬、感染(例えば、寄生虫感染)または脂質異状症を含む、内リンパの正常な産生または再吸収を妨害する種々のプロセスに対する二次的な影響である。メニエール症候群を患う患者の処置は、メニエール病と同様である。
【0091】
(感音難聴)
感音難聴は、内耳の要素または付随する神経要素が影響を受けると発生し、神経要素を含んでいてもよく、すなわち、聴神経または脳での聴神経経路が影響を受ける場合には、感覚要素を含んでいてもよい。感音難聴は、遺伝性である場合もあり、または、音響外傷(例えば、非常に大きな騒音)、ウイルス感染、薬物誘発型疾患またはメニエール病によって引き起こされる場合もある。神経性難聴は、脳腫瘍、感染、または種々の脳障害または神経障害(例えば、卒中)の結果として引き起こされる場合もある。いくつかの遺伝性疾患(例えば、レフサム病(分枝脂肪酸の蓄積障害)も、難聴を引き起こす神経障害を生じる場合がある。聴神経経路は、脱髄性疾患、例えば、特発性炎症性脱髄性疾患(多発性硬化症を含む)、横断性脊髄炎、デビック病、進行性多巣性白質脳症、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、抗MAG末梢神経障害によって損傷を受ける場合がある。
【0092】
突発性難聴または感音難聴の発生は、5000個体に約1個体で生じ、例えば、ムンプス、嚢虫、インフルエンザ、水痘、サイトメガロウイルス、梅毒または感染性単核球によるウイルス感染または細菌感染によって、または内耳臓器に対する物理的損傷によって引き起こされる場合がある。ある場合には、まったく原因が特定できない。突発性難聴には、耳鳴りおよびめまいが伴い、徐々に弱まっていく。感音難聴を処置するために、経口コルチコステロイドが処方される。ある場合には、外科的介入が必要な場合もある。
【0093】
本明細書に記載した製剤および方法は、感覚神経性難聴の処置を含む(特発性突発性の感覚神経性難聴を含む、突発性の感覚神経性難聴の処置を含む)。SSHLの場合、現時点での処置選択肢は、デキサメタゾン(4〜10mg/ml)またはメチル−プレドニゾロン(40〜62.5mg/ml)のいずれかを用いた、高用量の経口ステロイドでの2週間の処置(処置単位4〜7日+減薬期間7〜10日)である。本明細書に記載したように、高用量の経口ステロイドは、望ましくない副作用および有害な事象と関連がある。したがって、ステロイドを内耳に徐放性放出、局所送達することを目的とする本明細書に記載した方法および製剤は、経口/全身でのステロイド使用よりも副作用が顕著に少なくなると予想される。1つの実施形態では、ISSHLは、発症してから72時間未満の片側性の感音難聴を特徴とし、HLは、少なくとも3回の連続した試験回数で、30dBより大きいものと定義される。
【0094】
特発性の突発性感音難聴(ISSHL)を手当てする標準法は、高用量の経口ステロイドを用いた処置である。特定の場合には、個体を、高用量の経口ステロイドを用いて約2週間処置する。特定の場合には、個体を、高用量の経口ステロイドを用いて約2週間処置した後、経口ステロイドを約7〜約10日間で減薬する。特定の場合には、経口ステロイドは、デキサメタゾンである(4〜10mg/ml)。特定の場合には、経口ステロイドは、メチル−プレドニゾロンである(40〜62.5mg/ml)。
【0095】
一連の実施形態では、上に示した手当ての標準法を用いてISSHLを処置される患者は、その代わりに、本明細書に記載した、耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド製剤および方法を用いて処置される。別の一連の実施形態では、上に示した手当ての標準法を用いてISSHLを処置されるが、このような処置に対して難治性であるか、反応しない患者は、その代わりに、本明細書に記載した、制御放出型コルチコステロイドの耳に許容可能な製剤および方法を用いて処置される。
(過剰な騒音による難聴)
【0096】
難聴は、大きな騒音、例えば、大きな音楽、重機または機械類、飛行機、銃声または他のヒトによる騒音に長時間さらされることによっても生じる場合がある。難聴は、内耳の有毛細胞受容体が破壊されることによって引き起こされる。この難聴は、耳鳴りを伴うことが多い。難聴に至る永久的な損傷と診断されることも多い。
【0097】
騒音誘発型難聴については、現時点で処置法が存在しないが、インスリン様成長因子1(IGF−1)を用いた処置を含む、いくつかの処置計画が実験的に開発されている。Leeらによる文献「Otol.Neurotol.(2007)28:976−981」)。
【0098】
(老人性難聴)
老人性難聴または加齢性難聴は、通常の加齢の一部分として起こるとともに、内耳のコルチのらせん器にある受容体が変性した結果起こる。また、他の原因は、内耳神経の多くの神経線維の減少、および蝸牛にある基底膜の柔軟性喪失によるものである場合もある。老人性難聴または過剰な騒音の結果として生じる永久的な聴力損傷については、現時点での手当ては知られていない。
【0099】
(薬物誘発型の内耳損傷)
特定の抗生物質、利尿薬(例えば、エタクリン酸およびフロセミド)、アスピリン、アスピリン様物質(例えば、サリチレート)およびキニーネを含む薬物投与から生じる損傷としては、腎臓の機能不全によって促進される場合がある内耳器官の劣化が挙げられ、これにより、影響を及ぼす薬物のクリアランスが低下し、代謝が低下する。薬物は、聴覚および平衡感覚の両方に影響を及ぼす場合があるが、聴覚がより強く影響を受けるようである。
【0100】
例えば、ネオマイシン、カナマイシンおよびアミカシンは、平衡感覚よりも聴覚に大きな影響を及ぼす。抗生物質であるバイオマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシンは、聴覚と平衡感覚の両方に影響を及ぼす。別の一般的に投与される抗生物質であるストレプトマイシンは、難聴よりもめまいを誘発し、暗闇での歩行が困難になり、一歩ずつ動いているという環境的な感覚を誘発するダンディ症候群を引き起こす場合がある。アスピリンは、きわめて高用量で接種する場合、一時的な難聴、および外部の音が存在しない状態で音を認識する状態である耳鳴りを引き起こす場合がある。同様に、キニーネ、エタクリン酸、フロセミドは、一時的または永久的な難聴を引き起こすことがある。
【0101】
(自己免疫性内耳疾患)
自己免疫性内耳疾患(AIED)は、感音難聴の数少ない改善可能な原因の1つである。AIEDは、内耳の音声受信機能および前庭機能の両側性障害を含むことが多い、成人および子供の両方に起こるまれな障害である。多くの場合に、AIEDは、全身の自己免疫症状がない状態で起こるが、患者の3分の1は、炎症性腸疾患、関節リウマチ(Murdin、L.ら(2007)、Hearing difficulties are common in patients with rheumatoid arthritis、Clin Rheumatol、27(5):637−640)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、コーガン病、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー肉芽腫症、硬皮症のような全身の自己免疫疾患も患っている。ベーチェット病、多系統疾患も、一般的に、音声を受信する前庭に問題をかかえている。食物に関連するエネルギーが蝸牛および前庭の自己免疫の原因であるといういくつかの証拠が存在するが、この疾患の原因論の重要性については、現在では議論がまとまっていない。AIEDの分類スキームが開発されている(Harris及びKeithleyの文献「(2002)Autoimmune inner ear disease、Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery.91、18−32」)。
【0102】
コルチコステロイドを用いる処置は、AIED症状を緩和する。コルチコステロイドであるプレドニゾンの経口投与(60mg/日を4週間)によって、純音および発話の聴力測定の結果が顕著に向上することが示された。コルチコステロイドの影響による介在は、コルチコステロイド受容体または鉱質コルチコイド受容体のいずれかに生じる。
【0103】
(炎症性疾患)
耳の炎症性疾患としては、限定されないが、中耳炎、外耳炎、乳様突起炎、水疱性鼓膜炎、耳管カタルまたは耳管炎、内耳炎などが挙げられる。中耳炎(OM)としては、例として、急性中耳炎(AOM)、滲出性中耳炎(OME)および慢性中耳炎が挙げられ、中耳炎は、成人にも子供にも起こる疾病である。OMの感受性は、環境因子、微生物因子、宿主因子を含む多因子による複雑なものである。ある場合には、炎症性サイトカイン(例えば、インターロイキンおよびTNF)を含むサイトカイン産生量の増加が、OMを患う個体の流出媒体で観察されている。抗炎症性ステロイドを用いた処置は、耳の炎症性疾患(例えば、中耳炎、エウスタキオ管カタルなど)の症状を緩和する。ある場合には、細菌感染が、炎症性疾患(例えば、OM)の原因である。ある場合には、抗生物質を抗炎症性コルチコステロイドと組み合わせて投与すると、OMの症状を緩和する。
【0104】
(医薬品)
本明細書には、メニエール病、感覚神経性難聴、および/または炎症性疾患を含む耳の疾患、および限定されないが、難聴、眼振、めまい、耳鳴り、炎症、腫脹、感染、うっ血を含む付随する症状を改善するか、減らすステロイドを含む医薬組成物または製剤またはデバイスが提供される。AIEDまたはメニエール病および/または炎症性疾患を含む耳の疾患は、本明細書に開示する医薬品または他の医薬品に反応する原因および症状を有する。特定の実施形態では、ステロイドは、糖質コルチコステロイドおよび鉱質コルチコステロイドを含むコルチコステロイドである。本明細書に記載の任意のコルチコステロイド(遊離酸、遊離塩基、遊離アルコール、塩、プロドラッグ、またはこれらの任意の組み合わせを含む)は、本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスに適合する。本明細書に特定的に開示されてはいないが、耳の疾患の改善または根絶に有用なコルチコステロイドは、示されている実施形態の範囲内に明らかに含まれ、範囲内にあることが意図されている。
【0105】
さらに、全身適用または局所適用中に、他の臓器系において毒性があり、有害であるか、または有効ではないことが以前に示されている医薬品、例えば、肝臓で処理した後に生成する毒性代謝物によるもの、特定の臓器、組織または系における薬物の毒性、効力を得るのに必要な高濃度によるもの、全身経路によって放出されることが不可能なことによるもの、またはpK特性が悪いことによるものも、本明細書のいくつかの実施形態で有用である。例えば、デキサメタゾンの副作用としては、ナトリウム貯留、過剰な水分貯留、感染しやすい患者におけるうっ血性心不全、高血圧、筋力低下、筋萎縮、骨粗鬆症、腱断裂、消化性潰瘍、潰瘍性食道炎、皮膚の菲薄化、皮膚反応、創傷治癒不全、痙攣、めまい、頭痛、精神障害、クッシング症候群、子供の成長遅延、糖尿病、多毛症、白内障、緑内障、体重増加、食欲増進、吐き気が挙げられる。全身への放出が制限されているか、または全身への放出は行われず、全身に投与されると毒性があり、pK特性が悪いか、またはこれらを組み合わせた性質を有する医薬品(例えば、コルチコステロイド)は、本明細書に開示する実施形態の範囲内であることが明確に想定されている。
【0106】
本明細書で開示するコルチコステロイド製剤は、場合により、処置が必要な耳の構造を直接標的にする。例えば、想定される1つの実施形態は、本明細書で開示するコルチコステロイド製剤を、内耳の正円窓膜または蝸牛窓に直接適用し、内耳(auris internaまたはinner ear)の要素に直接到達させ、処置することである。他の実施形態では、本明細書で開示するコルチコステロイド製剤は、卵円窓に直接適用される。さらに他の実施形態では、内耳への直接的なマイクロインジェクション(例えば、蝸牛への微小かん流)により、直接的な到達が得られる。また、このような実施形態は、場合により、薬物送達デバイスを含み、この薬物送達デバイスは、針およびシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、インサイツで形成するスポンジ状物質、またはこれらの組み合わせを用いることによってコルチコステロイド製剤を送達する。さらに他の実施形態では、コルチコステロイド製剤の適用は、鼓室内膜に穿孔することによって中耳を標的とし、鼓室または耳小骨の壁を含む、影響を受ける中耳構造に直接コルチコステロイド製剤を適用する。こうすることによって、本明細書で開示するコルチコステロイド製剤が、標的とする中耳構造に閉じ込められ、例えば、エウスタキオ管または穿孔した鼓膜から拡散したり漏れたりして失われることはない。
【0107】
(コルチコステロイド/抗炎症性ステロイド)
コルチコステロイドは、薬剤の薬理学に依存して、鉱質コルチコイドおよび糖質コルチコイドの効果を特徴とする。鉱質コルチコイドは、アルドステロンに対する類似性、電解質濃度および水分平衡に及ぼす影響によって特徴づけられる。糖質コルチコイド(例えば、内因性糖質コルチコイドであるコルチゾール)は、代謝を制御し、サイトカインの放出を抑制する抗炎症性のものである。多くの薬剤は、鉱質コルチコイド活性および糖質コルチコイド活性の両方をある程度保有している。いくつかの合成糖質コルチコイドの相対的な効能および活性を、以下の表に示す。
【0109】
自己免疫性難聴に使用する現時点での治療法は、糖質コルチコイドによる全身処置である。典型的には、処置期間は、数ヶ月続き、全身処置による副作用は、かなり大きい場合がある。デキサメタゾンの場合、副作用としては、ナトリウム貯留、過剰な水分貯留、感染しやすい患者におけるうっ血性心不全、高血圧、筋力低下、筋萎縮、骨粗鬆症、腱断裂、消化性潰瘍、潰瘍性食道炎、皮膚の菲薄化、皮膚反応、創傷治癒不全、痙攣、めまい、頭痛、精神障害、クッシング症候群、子供の成長遅延、糖尿病、多毛症、白内障、緑内障、体重増加、食欲増進、吐き気が挙げられる。本明細書に記載した製剤を使用する1つの利点は、抗炎症性の糖質コルチコイドステロイドによる全身曝露がかなり減ることである。
【0110】
プレドニゾロンは、主に糖質コルチコイド活性を有し、鉱質コルチコイド活性が低いコルチコステロイド薬物である。プレドニゾロンは、内因性コルチゾールの約4〜5倍の効能を有する。プレドニゾロンは、経口投与したプレドニゾンの活性代謝物である。デキサメタゾンは、糖質コルチコイド活性を有するコルチコステロイド薬物である。デキサメタゾンは、内因性コルチゾールの約25〜30倍の効能を有する。デキサメタゾンナトリウムホスフェートは、デキサメタゾンの水溶性リン酸エステルプロドラッグである。蝸牛の外リンパ液中のリン酸デキサメタゾンを分析によって決定する方法は、公開されている(Liuらによる文献「J.of Chromatography B(2004)、805(2):255−60」)。トリアムシノロンは、経口、注射、吸入、または局所用クリームまたは軟膏によって投与されてきた合成糖質コルチコイド薬物である。トリアムシノロンアセトニドは、もっと強力なアナログである。トリアムシノロンヘキサアセトニドは、トリアムシノロンアセトニドのピバロイルエステルである。ジプロピオン酸ベクロメタゾンは、ベクロメタゾンとも呼ばれ、きわめて強力な糖質コルチコイド薬物である。クロベタゾールは、局所用製剤で使用する、きわめて強力なコルチコステロイドである。クロベタゾールは、抗炎症性、かゆみ止め性、血管収縮性、免疫調整性を有する。
【0111】
1つの実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、プレドニゾロンである。別の実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、デキサメタゾンである。別の実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、リン酸デキサメタゾンである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、ベクロメタゾンである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、ベタメタゾンである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、トリアムシノロンである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、トリアムシノロンアセトニドである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、クロベタゾールである。
【0112】
さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、糖質コルチコイドステロイドのホスフェートプロドラッグである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、糖質コルチコイドステロイドのエステルプロドラッグである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物の活性医薬成分は、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコルト(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセテート、フルプレドニデンアセテート、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル(formocortal)、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、ハロプレドンアセテート、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン(mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−アセテート、プレドニゾロンナトリウムホスフェート、プレドニゾン、プレドニバール(prednival)、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、またはトリアムシノロンヘキサアセトニド、またはこれらのホスフェートプロドラッグまたはエステルプロドラッグから選択される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物は、活性成分、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩が、製剤の約0.01重量%〜約20重量%、約0.01重量%〜約10重量%、約0.01重量%〜約8重量%、約0.05〜6重量%、約0.1〜5重量%、約0.2〜約3重量%、または約0.1〜約2重量%の活性医薬成分濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物は、活性成分、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩が、製剤の容積の約0.1〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約50mg/mL、約0.5mg/mL〜約20mg/mL、約1mg〜約70mg/mL、約1mg〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mL、または約1mg/mL〜約5mg/mLの活性医薬成分濃度を有する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物は、抗生物質をさらに含み、本明細書に記載した耳の疾患または疾病を処置するのに有用である。抗生物質としては、限定されないが、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン(geldanmycin)、ハービマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル(defprozil)、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レポフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン(trovfloxacin)、マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファミミリムド(sulfanimilimde)、スルフサラジン(sulfsalazine)、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌスプリスチン(quinuspristin)/ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、AL−15469A(Alcon Research)、AL−38905(Alcon Research)など、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0116】
(一般的な滅菌方法)
本明細書には、本明細書に記載した耳の疾患を改善するか、または減らす耳用組成物が提供される。さらに、本明細書には、上述の耳用組成物の投与を含む方法が提供されている。いくつかの実施形態では、組成物またはデバイスは、滅菌されている。ヒトに使用するための、本明細書に開示した医薬組成物またはデバイスを滅菌するための手段およびプロセスが、本明細書に開示する実施形態に含まれる。目標は、感染を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬製品を得ることである。米国食品医薬品局は、「Guidance for Industry: Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing」という刊行物で規制ガイダンスを提供しており、このガイダンスは、http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htmで入手可能であり、この全体が、参考として本明細書に組み込まれる。
【0117】
本明細書で使用される場合、滅菌は、生成物または包装に存在する微生物を破壊するか、または除去するプロセスを意味する。目的物および組成物を滅菌するために、利用可能な任意の適切な方法を使用する。微生物を不活性化するのに利用可能な方法としては、限定されないが、激しく熱を加えること、致死性の化学物質、またはγ線を適用することが挙げられる。いくつかの実施形態では、耳用治療製剤を調製するプロセスは、熱による滅菌、化学物質による滅菌、放射線による滅菌、または濾過滅菌から選択される滅菌方法に製剤を曝露する工程を含む。使用する方法は、滅菌対象のデバイスまたは組成物の性質に大きく依存する。多くの滅菌方法に関する詳細な記載は、文献「Chapter 40 of Remington:The Science and Practice of Pharmacy published by Lippincott、Williams & Wilkins」に与えられており、この課題に関し、参考として組み込まれる。
【0118】
(熱による滅菌)
激しく熱を加えることによって滅菌するために、多くの方法が利用可能である。1つの方法は、飽和蒸気によるオートクレーブを用いることによる方法である。この方法では、少なくとも121℃の温度での飽和蒸気を目的物と接触させて、滅菌することができる。目的物を滅菌する場合には、熱を微生物に直接的に移動させるか、または滅菌する水溶液の塊を加熱することによって、微生物に間接的に移動させる。この方法は、滅菌プロセスに柔軟性、安全性、経済性を与えるので、広範囲に実施される。
【0119】
乾熱滅菌は、高温で微生物を死滅させ、発熱物質の除去を行う方法である。このプロセスは、HEPAで濾過した微生物を含まない空気を、滅菌プロセスのために少なくとも130〜180℃の温度まで加熱し、発熱物質除去プロセスのために少なくとも230〜250℃の温度まで加熱するのに適した装置で行う。濃縮した製剤または粉末状製剤を再構築するための水も、オートクレーブで滅菌する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物は、例えば、粉末内部温度が130〜140℃で約7〜11時間、または、内温150〜180℃で1〜2時間加熱することによって、乾熱によって滅菌される微粉化した医薬品(例えば、コルチコステロイド、(例えば、デキサメタゾン微粉末))を含む。
【0120】
(化学物質による滅菌)
化学物質による滅菌方法は、激しい熱による滅菌に耐えられない生成物に対する代替法である。この方法では、殺菌性を有する種々の気体および蒸気、例えば、エチレンオキシド、二酸化塩素、ホルムアルデヒドまたはオゾンを抗アポトーシス薬として使用する。例えば、エチレンオキシドの殺菌活性は、エチレンオキシドが反応性アルキル化剤として作用する能力によるものである。したがって、滅菌プロセスは、エチレンオキシド蒸気を、滅菌対象の製品と直接接触させることが必要となる。
【0121】
(放射線による滅菌)
放射線による滅菌の1つの利点は、熱による分解または他の損傷を受けずに、多くの種類の生成物を滅菌できることである。一般的に使用される放射線は、60Co源由来のβ線であるか、またはγ線である。γ線の透過能は、溶液、組成物、不均質な混合物を含む多くの種類の製品を滅菌するのに使用することができる。この照射による殺菌効果は、γ線と生体高分子との相互作用によるものである。この相互作用によって、帯電している種と、遊離ラジカルとが生成する。その後の化学反応(例えば、転位および架橋プロセス)によって、上述の生体高分子の通常の機能が失われる。また、本明細書に記載した製剤が、場合によりβ線を用いて滅菌されることもある。
【0122】
(濾過)
濾過滅菌は、微生物を破壊するのではなく、溶液から除去するために用いられる方法である。膜フィルターを用い、熱に感受性の溶液を濾過する。このようなフィルターは、孔径が0.1〜0.22μmの、混合セルロース誘導体エステル(MCE)、フッ化ポリビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄く、強く、均質なポリマーである。種々の特性を有する溶液は、場合により、異なるフィルター膜を用いて濾過される。例えば、PVF膜およびPTFE膜は、有機溶媒を濾過するのに十分適しており、一方、水溶液は、PVF膜またはMCE膜によって濾過する。フィルター装置は、シリンジに取り付ける一点使用の使い捨てフィルターから、製造プラントで使用する商業規模のフィルターまで、多くの規模で使用するものが利用可能である。膜フィルターは、オートクレーブまたは化学滅菌で滅菌する。膜濾過システムの検証は、以下の標準化されたプロトコルにしたがって行い(文献「Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids、Vol 4、No.3.Washington、D.C: Health Industry Manufacturers Association、1981」)、Brevundimonas diminutaのような一般的ではないほど小さい微生物について、既知の量(約107cm2)を用いた膜フィルターのチャレンジ試験を含む(ATCC 19146)。
【0123】
医薬組成物は、場合により、膜フィルターを通すことによって滅菌される。ナノ粒子を含む製剤(米国特許第6,139,870号)または多重膜小胞(Richardら、International Journal of Pharmaceutics(2006)、312(1−2):144−50)は、この整った構造を破壊することなく、0.22μmフィルターを通して濾過することによって、滅菌することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、濾過滅菌を用いることによって、製剤(またはその成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、粒子製剤が、濾過滅菌に適するような粒子を含む。さらなる実施形態では、上述の粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満の粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子の滅菌性は、前駆体成分の溶液を滅菌濾過することによって確保される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子製剤の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。さらなる実施形態では、低温滅菌濾過は、0〜30℃、または0〜20℃、または0〜10℃、または10〜20℃、または20〜30℃の温度で行われる。
【0125】
別の実施形態では、粒子製剤を含有する水溶液を、滅菌フィルターを介して低温で濾過する工程と;この滅菌溶液を凍結乾燥する工程と;投与前に、この粒子製剤を滅菌水で再構築する工程とを含む、耳に許容可能な粒子製剤を調製するプロセスがある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、1個のバイアル製剤中、微粉化した活性医薬成分を含有する懸濁物として製造される。1個のバイアル製剤は、滅菌ポロクサマー溶液と、微粉化した滅菌活性成分(例えば、デキサメタゾン)と無菌状態で混合し、製剤を滅菌医薬容器に移すことによって調製される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤を懸濁物として含有する1個のバイアルを、分注および/または投与前に再び懸濁させる。
【0126】
特定の実施形態では、濾過手順および/または充填手順は、本明細書に記載した製剤のゲル温度(Tgel)よりも約5℃低い温度で、理論値が100cPの粘度で行われ、蠕動ポンプを用い、妥当な時間で濾過することができる。
【0127】
別の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、濾過滅菌に適したナノ粒子製剤を含む。さらなる実施形態では、ナノ粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満のナノ粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、ミクロスフェア製剤を含み、ミクロスフェアの前駆体の有機溶液および水溶液を滅菌濾過することによって滅菌性が確保される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、熱可逆性ゲル製剤を含み、このゲル製剤の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。さらなる実施形態では、低温滅菌濾過は、0〜30℃、または0〜20℃、または0〜10℃、または10〜20℃、または20〜30℃の温度で行われる。別の実施形態では、熱可逆性ゲル要素を含有する水溶液を、滅菌フィルターを介して低温で濾過する工程と;この滅菌溶液を凍結乾燥する工程と;投与前に、この熱可逆性ゲル製剤を再構築する工程とを含む、耳に許容可能な熱可逆性ゲル製剤を調製するプロセスがある。
【0128】
特定の実施形態では、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、緩衝剤)に溶解され、別個に滅菌される(例えば、熱処理、濾過、γ線によって)。ある場合には、活性成分は、乾燥状態で別個に滅菌される。ある場合には、活性成分は、懸濁物として、またはコロイド状懸濁物として滅菌される。残りの賦形剤(例えば、耳用製剤中に存在する流体ゲル成分)は、適切な方法(例えば、賦形剤の冷たい混合物を濾過および/または照射)によって別個の工程で滅菌され、次いで、別個に滅菌した2種類の溶液を無菌状態で混合し、最終的な耳用製剤を得る。ある場合には、本明細書に記載した製剤を投与する直前に最終的な無菌状態の混合を行う。
【0129】
ある場合には、従来から使用されている滅菌方法(例えば、熱処理(例えば、オートクレーブ中)、γ線、濾過)によって、ポリマー成分(例えば、熱硬化性、ゲル化性または粘膜接着性のポリマー成分)および/または製剤中の活性薬剤が不可逆的に分解する。ある場合には、耳用製剤を膜(例えば、0.2μM膜)によって滅菌することは、この製剤が、濾過プロセス中にゲル化するチキソトロピー性ポリマーを含む場合には、不可能である。
【0130】
したがって、本明細書には、ポリマー成分(例えば、熱硬化性および/またはゲル化性および/または粘膜接着性のポリマー成分)および/または活性薬剤が、滅菌プロセス中に分解するのを防ぐような、耳用製剤を滅菌する方法が提供される。いくつかの実施形態では、緩衝剤成分を特定のpH範囲で用いること、および特定の比率のゲル化剤を製剤に用いることによって、活性薬剤(例えば、本明細書に記載した任意の耳用治療薬剤)の分解が減るか、またはなくなる。いくつかの実施形態では、適切なゲル化剤および/または熱硬化性ポリマーを選択することによって、本明細書に記載した製剤を濾過によって滅菌することができる。いくつかの実施形態では、適切な熱硬化性ポリマーおよび適切なコポリマー(例えば、ゲル化剤)を、特定のpH範囲と組み合わせて用いることによって、治療薬剤またはポリマー賦形剤が実質的に分解することなく、記載の製剤を高温で滅菌することができる。本明細書に提供した滅菌方法の利点は、特定の場合には、製剤がオートクレーブによって最終滅菌され、滅菌工程中に活性薬剤および/または賦形剤および/またはポリマー要素が失われることなく、実質的に微生物および/または発熱物質を実質的に含まない状態にすることである。
【0131】
(微生物)
本明細書には、本明細書に記載した耳の疾患を改善するか、または減らす、耳に許容可能な組成物またはデバイスが提供される。さらに、本明細書には、上述の耳用組成物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、組成物またはデバイスは、実質的に微生物を含まない。許容可能な滅菌度は、限定されないが、米国薬局方1111章(以下参照)を含む、治療に許容可能な耳用組成物を規定する適用可能な標準に基づく。例えば、許容可能な滅菌度としては、製剤1gあたり約10コロニー形成単位(cfu)、製剤1gあたり約50cfu、製剤1gあたり約100cfu、製剤1gあたり約500cfu、または製剤1gあたり約1000cfuが挙げられる。いくつかの実施形態では、製剤の許容可能な滅菌度としては、微生物剤が、10cfu/mL未満、50cfu/mL未満、500cfu/mL未満、または1000cfu/mL未満が挙げられる。それに加え、許容可能な滅菌度としては、特定の好ましくない微生物剤が除外されていることが挙げられる。一例として、特定の好ましくない微生物剤としては、限定されないが、Escherichia coli(E.coli)、Salmonella sp.、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)および/または他の特定の微生物剤が挙げられる。
【0132】
耳に許容可能な耳用治療剤製剤の滅菌度は、米国薬局方61章、62章および71章にしたがい、滅菌保証プログラムで確認する。滅菌保証による品質コントロール、品質保証および検証プロセスの鍵となる要素は、滅菌試験方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は、試験対象の組成物サンプルを成長培地に加え、21日間までの期間インキュベートする、直接接種である。成長培地の濁りは、汚染を示す。この方法の欠点は、材料の塊からのサンプリング量が少量だと感度が下がること、微生物の検出が視覚的な観察に基づくことが挙げられる。代替法は、膜濾過による滅菌試験である。この方法では、所定容積の生成物を小さな膜濾紙に通す。次いで、濾紙を培地に入れ、微生物の成長を促進させる。この方法は、生成物の塊全体をサンプリングするので、感度が高くなるという利点を有する。場合により、膜濾過による滅菌試験によって決定するために、市販のMillipore Steritest滅菌試験システムを用いる。クリームまたは軟膏を濾過によって試験するために、TLHVSL210型のSteritestフィルターシステムが用いられる。エマルションまたは粘性生成物を濾過によって試験するために、TLAREM210型またはTDAREM210型のSteritestフィルターシステムが用いられる。あらかじめ充填したシリンジを濾過によって試験するために、TTHASY210型のSteritestフィルターシステムが用いられる。エアロゾルまたは泡状物として分散した物質を濾過によって試験するために、TTHVA210型のSteritestフィルターシステムが用いられる。可溶性粉末をアンプルまたはバイアルで濾過によって試験するために、TTHADA210型またはTTHADV210型のSteritestフィルターシステムが用いられる。
【0133】
E.coliおよびSalmonellaのための試験は、ラクトース培養液を用い、30〜35℃で24〜72時間インキュベートし、MacConkey寒天および/またはEMB寒天中、18〜24時間インキュベートすること、および/またはRappaport培地を用いることを含む。P.aeruginosaを検出するための試験は、NAC寒天の使用を含む。米国薬局方の62章は、特定の好ましくない微生物のための試験手順をさらに列挙している。
【0134】
特定の実施形態では、任意の本明細書に記載した制御放出型製剤は、製剤1gあたり、微生物剤のコロニー形成単位(CFU)が約60未満であり、コロニー形成単位が約50未満であり、コロニー形成単位が約40未満であるか、またはコロニー形成単位が約30未満である。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用製剤は、内リンパおよび/または外リンパと浸透圧が等しくなるように処方される。
【0135】
(エンドトキシン)
本明細書には、本明細書に記載した耳の疾患を改善するか、または減らす耳用組成物が提供される。さらに、本明細書には、上述の耳用組成物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、組成物またはデバイスは、実質的にエンドトキシンを含まない。滅菌プロセスのさらなる態様は、微生物を殺して生じる副生成物(以下、「生成物」)を除去することである。発熱物質除去プロセスによって、サンプルから発熱物質を除去する。発熱物質は、免疫応答を誘発するエンドトキシンまたはエクソトクシンである。エンドトキシンの例は、グラム陰性菌の細胞壁に見出されるリポ多糖体(LPS)分子である。オートクレーブまたはエチレンオキシドを用いる処理のような滅菌手順によって、細菌は死滅するが、LPS残基は、敗血性ショックのような炎症性免疫応答を誘発する。エンドトキシンの分子の大きさが広範囲にわたってさまざまなため、エンドトキシンの存在は、「エンドトキシン単位」(EU)であらわされる。1EUは、E.coliのLPS100ピコグラムに相当する。ヒトは、5EU/kg体重の応答を生じる場合がある。滅菌度は、当該技術分野で認識されているような任意の単位であらわされる。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、従来の許容可能なエンドトキシン濃度(例えば、被験体の体重について、5EU/kg)と比較して、低いエンドトキシン濃度を有する(例えば、被験体の体重について、4EU/kg未満)。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被験体の体重の約5EU/kg未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被験体の体重の約4EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被験体の体重の約3EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被験体の体重の約2EU/kg未満のEUを有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤またはデバイスは、製剤のEUが、約5EU/kg未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤のEUが、約4EU/kg未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤のEUが、約3EU/kg未満である。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」のEUが、約5EU/kg未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」のEUが、約1EU/kg未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」のEUが、約0.2EU/kg未満である。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約5EU/g未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約4EU/g未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約3EU/g未満である。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約5EU/mg未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約4EU/mg未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約3EU/mg未満である。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、約1〜約5EU/mLの製剤を含有する。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、約2〜約5EU/mLの製剤、約3〜約5EU/mLの製剤、または約4〜約5EU/mLの製剤を含有する。
【0137】
特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物またはデバイスは、従来の許容可能なエンドトキシン濃度(例えば、製剤について、0.5EU/mL)と比較して、低いエンドトキシン濃度を有する(例えば、製剤について、0.5EU/mL未満)。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤またはデバイスは、製剤について、約0.5EU/mL未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤について、約0.4EU/mL未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤について、約0.2EU/mL未満である。
【0138】
発熱物質の検出は、ほんの一例として、いくつかの方法で行われる。滅菌度に適した試験としては、米国薬局方(USP)71章の滅菌度試験(Sterility Tests)(第23版、1995)に記載されている試験が挙げられる。ウサギの発熱物質試験およびLimulus amebocyte溶解物試験は、両方とも、米国薬局方の85章および151章(USP23/NF 18、Biological Tests、The United States Pharmacopeial Convention、Rockville、MD、1995)に特定されている。代替的な発熱物質アッセイは、単球活性化−サイトカインアッセイに基づいて開発されている。品質制御用途に適した均一な細胞株が開発されており、ウサギ発熱物質試験およびLimulus amebocyte溶解物試験を合格したサンプルでの発熱を検出する能力を示す(Taktakらによる文献「J.Pharm.Pharmacol.(1990)、43:578−82」)。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤について、発熱物質除去を行う。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤を製造するプロセスは、発熱性について製剤を試験する工程を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載した組成物は、実質的に発熱物質を含まない。
【0139】
(pHおよび実際の浸透圧)
本明細書で使用される場合、「実際の浸透圧」は、活性薬剤と、ゲル化剤および/または増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、カルボキシメチルセルロースなど)を除くすべての賦形剤とを含むものによって測定される、製剤の浸透圧を意味する。本明細書に記載した製剤の実際の浸透圧は、任意の適切な方法、例えば、Viegasらによる文献「Int.J.Pharm.、1998、160、157−162」に記載されているような凝固点降下法によって測定される。ある場合には、本明細書に記載した組成物の実際の浸透圧は、これよりも高い温度で組成物の浸透圧を決定する、蒸気圧浸透圧法(例えば、蒸気圧降下法)によって測定される。ある場合には、蒸気圧降下法によって、ゲル化剤(例えば、熱可逆性ポリマー)を含む製剤の浸透圧を高い温度で決定することができ、ここで、ゲル化剤は、ゲルの形態である。本明細書に記載した耳用製剤の実際の浸透圧は、約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約320mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、実際の浸透圧が、約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約250mOsm/L〜約320mOsm/L、または約280mOsm/L〜約320mOsm/Lである。
【0140】
いくつかの実施形態では、標的作用部位(例えば、外リンパ)での浸透圧は、本明細書に記載する任意の製剤の送達される浸透圧(すなわち、正円窓膜を通るか、浸透する物質の浸透圧)とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、約150mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約370mOsm/L、または約250mOsm/L〜約320mOsm/Lの送達可能な浸透圧を有する。
【0141】
内リンパに存在する主なカチオンは、カリウムである。それに加え、内リンパは、高濃度の正に帯電したアミノ酸を有する。外リンパに存在する主なカチオンは、ナトリウムである。特定の場合には、内リンパおよび外リンパのイオン性組成物は、有毛細胞の電気化学インパルスを制御する。特定の場合には、内リンパまたは外リンパのイオン平衡におけるいかなる変化も、耳の有毛細胞に沿った電気化学インパルスの伝導が変化することによって、難聴を生じさせる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した組成物は、外リンパのイオン平衡をくずさない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した組成物は、外リンパと同じか、または実質的に同じイオン平衡を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した組成物は、内リンパのイオン平衡をくずさない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した組成物は、内リンパと同じか、または実質的に同じイオン平衡を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した耳用製剤は、内耳液(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)に適合するイオン平衡を与えるように処方される。
【0142】
内リンパおよび外リンパは、血液の生理学的pHに近いpHを有する。内リンパは、約7.2〜7.9のpH範囲を有し、外リンパは、約7.2〜7.4のpH範囲を有する。基部に近い内リンパのインサイツ pHは、約7.4であり、末梢に近い内リンパのpHは、約7.9である。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物のpHは、(例えば、緩衝剤を用いることによって)内リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。特定の実施形態では、本明細書に記載した組成物のpHは、外リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物のpHは、外リンパに適合する5.5〜約8.0、約6〜約8.0または約6.6〜約8.0の範囲のpHに調節される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物のpHは、外リンパに適合する約7.0〜7.6の範囲のpHに調節される。
【0144】
いくつかの実施形態では、有用な製剤は、1つ以上のpH調製剤または緩衝剤も含む。適切なpH調整剤または緩衝剤としては、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物が挙げられる。
【0145】
1つの実施形態では、本開示の製剤に1つ以上の緩衝剤を用いる場合、1つ以上の緩衝剤を、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと合わせ、最終製剤に、例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の量で存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝剤の量は、ゲル製剤のpHが、体内の天然の緩衝系を妨害しないような量である。
【0146】
1つの実施形態では、希釈剤によって、もっと安定な環境を得ることができるため、化合物を安定化させるために希釈剤も用いる。緩衝溶液に溶解させた塩(これにより、pHを制御するか、またはpHを維持することもできる)は、限定されないが、リン酸緩衝化食塩水溶液を、当該技術分野で希釈剤として利用される。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した任意のゲル製剤は、医薬品(例えば、ステロイド)またはゲルを含むポリマーが分解することなく、ゲル製剤を滅菌可能な(例えば、濾過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)によって)pHを有する。滅菌中の耳用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝剤のpHを、滅菌プロセス(例えば、高温でのオートクレーブ処理)中、製剤のpHを7〜8に維持するように設計する。
【0148】
特定の実施形態では、本明細書に記載した任意のゲル製剤は、医薬品(例えば、コルチコステロイド)またはゲルを含むポリマーが分解することなく、ゲル製剤の最終滅菌(例えば、熱処理および/またはオートクレーブ処理による)を可能にするpHを有する。例えば、オートクレーブ処理中の耳用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝剤のpHは、高温での製剤のpHを7〜8に維持するように設計される。製剤中で使用する耳用薬剤に依存して、任意の適切な緩衝剤を使用する。ある場合には、温度が約−0.03/℃で上がるにつれて、TRISのpKaが小さくなり、温度が約0.003/℃で上がるにつれて、PBSのpKaが大きくなるため、250°F(121℃)でのオートクレーブ処理によって、TRIS緩衝剤中でpHシフトが顕著に下がり(すなわち、より酸性になり)、一方、PBS緩衝剤中で、pHシフトは相対的にほとんど上がらず、したがって、PBS中よりもTRIS中で、耳用薬剤の加水分解および/または分解が高まる。本明細書に記載したような緩衝剤およびポリマー添加剤(例えば、P407、CMC)の適切な組み合わせを用いることによって、耳用薬剤の分解が減る。
【0149】
いくつかの実施形態では、pHが約5.0〜約9.0、約5.5〜約8.5、約6.0〜約7.6、約7〜約7.8、約7.0〜約7.6、約7.2〜約7.6、または約7.2〜約7.4である製剤が、本明細書に記載の耳用製剤の滅菌に適している(例えば、濾過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)によって)。特定の実施形態では、pHが約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、または約7.6である製剤が、本明細書に記載する任意の組成物の滅菌に適している(例えば、濾過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)によって)。
【0150】
いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載したようなpHを有し、例えば、非限定的な例として、本明細書に記載したセルロース系増粘剤のような増粘剤(例えば、粘度を高める薬剤)を含む。ある場合には、第2のポリマー(例えば、増粘剤)を加え、製剤のpHを上述のようにすると、耳用製剤中の耳用薬剤および/またはポリマー成分がなんら実質的に分解することなく、本明細書に記載した製剤を滅菌することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したpHを有する製剤中、増粘剤を基準とした熱可逆性ポロクサマーの比率は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載した徐放性製剤および/または持続放出型製剤は、ポロクサマー407(プルロニックF127)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせを、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1の比率で含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の合計重量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の合計重量の約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、または約25%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の合計重量の約1%、約5%、約10%、または約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の合計重量の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1ヶ月間少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、または少なくとも約6ヶ月間のうち任意の期間にわたって、pHに関して安定である。他の実施形態では、本明細書に記載した製剤は、少なくとも約1週間にわたって、pHに関して安定である。また、本明細書には、少なくとも約1ヶ月間にわたって、pHに関して安定な製剤が記載されている。
【0152】
(等張化剤)
概して、内リンパは、外リンパよりも浸透圧が高い。例えば、内リンパは、約304mOsm/kg H2Oの浸透圧を有し、一方、外リンパは、約294mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載した製剤に、耳用製剤の実際の浸透圧が約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgになるような量で、等張化剤を加える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、実際の浸透圧が約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約320mOsm/L、または約250mOsm/L〜約320mOsm/Lである。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤の送達可能な浸透圧は、標的とする耳の構造(例えば、内リンパ、外リンパなど)と浸透圧が等しくなるように設計される。特定の実施形態では、本明細書に記載した耳用組成物は、標的作用部位で、約250〜約320mOsm/L(浸透圧が約250〜約320mOsm/kg H2O);好ましくは、約270〜約320mOsm/L(浸透圧が約270〜約320mOsm/kg H2O)の外リンパに適した浸透圧を提供するように処方される。特定の実施形態では、製剤の送達可能な浸透圧/浸透圧(すなわち、ゲル化剤または増粘剤(例えば、浸透圧/熱可逆性ゲルポリマーが存在しない製剤の浸透圧/浸透圧)は、例えば、適切な濃度の塩(例えば、カリウム塩またはナトリウム塩の濃度)を用いることによって調節されるか、または標的部位に送達する際に、製剤を内リンパに適合性および/または外リンパに適合性にする(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等しい浸透圧を有する)ようにする等張化剤を用いることによって調節される。熱可逆性ゲルポリマーを含む製剤の浸透圧は、さまざまな量の水が、ポリマーのモノマー単位と会合するため、信頼できる値ではない。製剤の実際の浸透圧(すなわち、ゲル化剤または増粘剤(例えば、熱可逆性ゲルポリマーが存在しない製剤の浸透圧)は、信頼できる値であり、適切な方法(例えば、凝固点降下法、蒸気圧降下法)によって測定される。ある場合には、本明細書に記載した製剤は、投与した際に、内耳環境へのかく乱を最小限にして、哺乳動物への不快感(例えば、めまいおよび/または吐き気)を最小限にするように(例えば、標的部位(例えば、外リンパ)で)送達可能な浸透圧を提供する。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤は、外リンパおよび/または内リンパと浸透圧が等しい。等張性製剤は、等張化剤を加えることによって与えられる。適切な等張化剤としては、限定されないが、任意の薬学的に許容可能な糖、これらの塩または任意の組み合わせまたは混合物が挙げられ、例えば、限定されないが、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、他の電解質が挙げられる。
【0155】
有用な耳用組成物は、組成物の浸透圧を許容範囲にするのに必要な量の1つ以上の塩を含む。このような塩としては、ナトリウムカチオン、カリウムカチオンまたはアンモニウムカチオンと、クエン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、ホウ酸アニオン、リン酸アニオン、炭酸水素アニオン、硫酸アニオン、チオ硫酸アニオンまたは亜硫酸水素アニオンとを有する塩が挙げられ、適切な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際の浸透圧を有し、活性医薬成分の濃度が、約1μM〜約10μM、約1mM〜約100mM、約0.1mM〜約100mM、約0.1mM〜約100nMである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際の浸透圧を有し、活性医薬成分の濃度が、製剤の活性成分の重量の約0.1〜約20%、約0.1〜約10%、約0.1〜約7.5%、約0.1〜6%、約0.1〜5%、約0.2〜約3%、約0.1〜約2%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際の浸透圧を有し、活性医薬成分の濃度が、製剤の活性成分の容積の約0.1〜約70mg/mL、約1mg〜約70mg/mL、約1mg〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mL、約1mg/mL〜約5mg/mL、または約0.5mg/mL〜約5mg/mLである。
【0157】
(粒径)
表面積を大きくし、および/または製剤の分散性を調節するために、大きさを小さくする。また、本明細書に記載する任意の製剤について、一貫性のある平均粒径分布(PSD)(例えば、マイクロメートルの大きさの粒子、ナノメートルの大きさの粒子など)を維持するために、大きさを小さくする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤は、多微粒子を含み、すなわち、複数の粒径(例えば、微粉化した粒子、ナノの大きさの粒子、大きさが一定ではない粒子、コロイド状粒子)を有し、すなわち、この製剤は、多微粒子製剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤は、1つ以上の多微粒子の(例えば、微粉化した)治療薬剤を含む。微粉化は、固体物質粒子の平均直径を小さくするプロセスである。微粉化した粒子は、直径がほぼマイクロメートルの大きさからほぼナノメートルの大きさである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約0.5μm〜約500μmである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約1μm〜約200μmである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約2μm〜約100μmである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約3μm〜約50μmである。いくつかの実施形態では、微粉化した粒子状固体は、粒径が、約5ミクロン未満、約20ミクロン未満、および/または約100ミクロン未満である。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドの粒子状物質(例えば、微粉化した粒子)を用いると、多微粒子ではない(例えば、微粉化していない)コルチコステロイドを含む製剤と比較して、本明細書に記載する任意の製剤からコルチコステロイドが持続放出および/または徐放性放出が可能となる。場合によっては、多微粒子(例えば、微粉化した)コルチコステロイドを含有する製剤は、塞がったり、目詰まりしたりすることなく、27G針を取り付けた1mLシリンジから排出される。
【0158】
場合によっては、本明細書に記載する任意の製剤中の任意の粒子は、コーティングされた粒子(例えば、コーティングされた微粉化粒子、ナノ粒子)および/またはミクロスフェアおよび/またはリポソーム粒子である。粒径を小さくする技術としては、一例として、粉砕、製粉(例えば、空気摩擦による製粉(ジェットミルによる製粉)、ボールミルによる製粉)、コアセルベーション、複合コアセルベーション、高圧ホモジナイズ法、スプレー乾燥および/または超臨界流体による結晶化が挙げられる。ある場合には、粒子は、機械的衝撃(例えば、ハンマーミル、ボールミルおよび/またはピンミルによる)によって大きさが調節される。ある場合には、粒子は、流体エネルギー(例えば、スパイラルジェットミル、ループジェットミル、および/または流動床型ジェットミルによる)によって大きさが調節される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、結晶性粒子および/または等方性粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、アモルファス粒子および/または異方性粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、治療薬剤が、遊離塩基、または治療薬剤の塩、またはプロドラッグ、またはこれらの任意の組み合わせである治療薬剤粒子を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、ナノ粒子状物質を含む1つ以上のコルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、コルチコステロイドビーズ(例えば、デキサメタゾンビーズ)を含み、このビーズは、場合により、制御放出性賦形剤でコーティングされている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、顆粒化されたコルチコステロイド(corticsteroid)および/または径を小さくし、制御放出性賦形剤でコーティングされたコルチコステロイドを含む。次いで、場合により、顆粒化され、コーティングされたコルチコステロイド粒子状物質は、微粉化され、および/または、本明細書に記載のいずれかの組成物に処方される。
【0160】
場合によっては、遊離酸状態または遊離塩基状態のコルチコステロイドと、コルチコステロイド塩との組み合わせを用い、本明細書に記載した手順を用い、パルス放出方式の耳用薬剤製剤を調製する。ある製剤では、微粉化したコルチコステロイド(および/またはその塩またはプロドラッグ)と、コーティングされた粒子(例えば、ナノ粒子、リポソーム、ミクロスフェア)の組み合わせを用い、本明細書に記載した手順を用い、パルス放出方式の耳用薬剤製剤を調製する。または、コルチコステロイド(例えば、微粉化したコルチコステロイド、遊離アルコール、これらの遊離酸または塩またはプロドラッグ;多微粒子コルチコステロイド、これらの遊離アルコール、遊離酸または塩)を、シクロデキストリン、界面活性剤(例えば、ポロクサマー(407、338、188)、Tween(80、60、20、81)、PEG−水素化ヒマシ油、N−メチル−2−ピロリドンのような共溶媒などによって、送達する投薬に20%まで溶解し、本明細書に記載した任意の手順を用いて、パルス放出型製剤を調製することによって、パルス型の放出プロフィールが達成される。
【0161】
特定の実施形態では、任意の耳に適合する本明細書に記載した製剤は、1つ以上の微粉化した医薬品(例えば、ステロイド)を含む。このような実施形態のうちいくつかでは、微粉化した医薬品は、微粉化した粒子、コーティングされた(例えば、持続放出性コーティングで)微粉化した粒子、またはこれらの組み合わせを含む。このような実施形態のうちいくつかでは、微粉化した粒子、コーティングされた微粉化した粒子、またはこれらの組み合わせを含む微粉化した医薬品は、コルチコステロイドを、遊離酸、遊離塩基、塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせとして含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンを微粉化した粉末として含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、デキサメタゾンを、デキサメタゾン微粉末の形態で含む。
【0162】
本明細書に記載した多微粒子および/または微粉化したコルチコステロイドは、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックスを含む任意の種類のマトリックスを用い、耳の構造(例えば、内耳)に送達される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した多微粒子および/または微粉化したコルチコステロイドは、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックスを含む任意の種類のマトリックスを用い、鼓室内注射によって耳の構造(例えば、内耳)に送達される。
【0163】
(医薬製剤)
本明細書には、少なくとも1つのコルチコステロイドと、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体とを含む医薬組成物またはデバイスが提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、他の医療薬剤または医薬品、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、他の治療基質も含有する。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、適用するときにゲルの視覚化を高めるのに役立つ染料を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の耳に許容可能な組成物またはデバイスと適合する染料としては、エバンスブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の0.15%)、および/またはインドシアニングリーン(例えば、25mg/バイアル)が挙げられる。他の一般的な染料、例えば、FD&Cレッド40、FD&Cレッド3、FD&Cイエロー5、FD&Cイエロー6、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cグリーン3、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight Fluors)、および/またはMRI、CATスキャン、PETスキャンなどのような非侵襲性造影技術と組み合わせて視覚化可能な染料。ガドリニウム系MRI染料、ヨウ素系染料、バリウム系染料なども、本明細書に記載した任意の耳用製剤とともに使用することが想定されている。本明細書に記載の任意の製剤または組成物と適合する他の染料は、Sigma−Aldrichの染料に関するカタログに列挙されている(この開示については、本明細書に参考として組み込まれる)。
【0165】
本明細書に記載の任意の医薬組成物またはデバイスを、組成物またはデバイスを、蝸牛窓稜、正円窓、鼓室、鼓膜、中耳または外字と接触させた状態で配置することによって投与する。
【0166】
本明細書に記載の耳に許容可能な制御放出型コルチコステロイド医薬製剤の1つの特定の実施形態では、コルチコステロイドは、本明細書で「耳に許容可能なゲル製剤」、「内耳に許容可能なゲル製剤」、「中耳に許容可能なゲル製剤」、「外耳に許容可能なゲル製剤」、「耳用ゲル製剤」、またはこの変形で呼ばれるゲルマトリックスの状態で提供される。ゲル製剤のすべての要素は、標的とする耳の構造と適合しなければならない。さらに、ゲル製剤は、標的とする耳の構造内にある所望の部位にコルチコステロイドを制御放出する。いくつかの実施形態では、ゲル製剤は、コルチコステロイドを所望の標的部位に送達するための、短時間型または即効型の放出要素を有している。他の実施形態では、ゲル製剤は、コルチコステロイドを送達するための徐放性要素を有する。いくつかの実施形態では、ゲル製剤は、多微粒子(例えば、微粉化した)コルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、生分解性である。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、正円窓膜の外側粘液層に付着可能な粘膜付着性の賦形剤を含む。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、浸透を促進する賦形剤を含み、さらなる実施形態では、耳用ゲル製剤は、約500〜1,000,000センチポイズ、約750〜1,000,000センチポイズ;約1000〜1,000,000センチポイズ;約1000〜400,000センチポイズ;約2000〜100,000センチポイズ;約3000〜50,000センチポイズ;約4000〜25,000センチポイズ;約5000〜20,000センチポイズ;または約6000〜15,000センチポイズの粘度を与えるのに十分な粘度を高める薬剤を含有する。いくつかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、約50,0000〜1,000,000センチポイズの粘度を与えるのに十分な粘度を高める薬剤を含有する。
【0167】
さらなる実施形態または代替的な実施形態では、耳用ゲル製剤は、鼓室内注射を介して、正円窓膜または正円窓膜周囲に投与可能である。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、耳介後部の切開部を介して入れることで、正円窓または蝸牛窓稜に、またはこれらの周囲に投与され、正円窓または蝸牛窓稜の区域、またはこれらの周囲に外科的処置を施すことによって投与される。または、耳用ゲル製剤は、シリンジおよび注射針によって適用し、注射針を鼓膜に挿入し、正円窓または蝸牛窓稜の区域に導く。次いで、耳の自己免疫疾患を局所的に処置するために、正円窓または蝸牛窓稜に、またはこれらの周囲に耳用ゲル製剤を配置する。他の実施形態では、患者に移植したマイクロカテーテルによって耳用ゲル製剤を適用し、さらなる実施形態では、ポンプデバイスによって正円窓膜または正円窓膜の周囲に製剤を投与する。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、マイクロインジェクションデバイスよって正円窓膜または正円窓膜の近辺に投与される。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤を鼓膜内に適用する。いくつかの実施形態では、耳用ゲル製剤を鼓膜上に適用する。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤を耳道上に、または耳道中に適用する。
【0168】
さらに特定の実施形態では、任意の本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスは、液体マトリックス(例えば、鼓室内注射用または点耳薬用の液体組成物)中に多微粒子コルチコステロイドを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載した任意の医薬組成物は、固体マトリックス中に多微粒子コルチコステロイドを含む。
【0169】
(制御放出型製剤)
概して、制御放出型薬物製剤は、放出部位および体内の放出時間に関し、薬物の放出制御を付与する。本明細書に記載しているように、制御放出は、即効型放出、時限放出、徐放性放出、持続放出、可変型放出、パルス状放出、二峰性放出を含む。多くの利点が、制御放出によって得られる。第1に、医薬品の制御放出により、投薬回数が減り、これにより、繰り返し処置が最小限になる。第2に、制御放出型処置によって、薬物の利用がもっと効果的になり、残渣として残る化合物が減る。第3に、制御放出によって、疾患部位に送達デバイスまたは製剤を配置することによって、局所的な薬物送達の可能性が与えられる。さらに、制御放出によって、1個の投薬単位を用いることによって、それぞれ固有の放出プロフィールを有する2つ以上の異なる薬物を投与し、放出する機会が与えられるか、または同じ薬物を異なる速度または異なる持続時間で放出させる機会が与えられる。
【0170】
したがって、本明細書に開示した実施形態の1つの態様は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患を処置するために、耳に許容可能な制御放出型のコルチコステロイド組成物またはデバイスを提供することである。本明細書に開示した組成物および/または製剤および/またはデバイスを制御放出する態様は、限定されないが、内耳または他の耳の構造で使用するのに許容可能な賦形剤、薬剤または物質を含む種々の薬剤によって付与される。
【0171】
(耳に許容可能なゲル)
ゲル(ときに、ゼリーとも呼ばれる)は、種々の様式で規定される。例えば、米国薬局方は、ゲルを、小さな無機粒子または大きな有機分子のいずれかに液体がしみこんだ懸濁物からなる半固体系であると定義している。ゲルは、単相系または二相系を含む。単相ゲルは、分散した高分子と液体との間に明らかな境界が存在しない様式で、液体全体に均一に分布する有機高分子からなる。いくつかの単相ゲルは、合成高分子(例えば、カルボマー)または天然ゴム(例えば、トラガカント)から調製される。いくつかの実施形態では、単相ゲルは、一般的に水系であるが、アルコールおよび油を用いても作成されるであろう。二相ゲルは、小さな別個の粒子の網目構造からなる。
【0172】
また、ゲルは、疎水性ゲルまたは親水性ゲルに分類することができる。特定の実施形態では、疎水性ゲルの基材は、ポリエチレンを含む液体パラフィン、またはコロイド状シリカでゲル化した脂肪油、またはアルミニウム石鹸または亜鉛石鹸からなる。対称的に、疎水性ゲルの基材は、通常は、水、グリセロール、または適切なゲル化剤(例えば、トラガカント、デンプン、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、マグネシウム−アルミニウムシリケート)でゲル化したプロピレングリコールからなる。特定の実施形態では、本明細書に開示する組成物またはデバイスのレオロジーは、プラスチックに似ているか、プラスチックであるか、チキソトロピーであるか、またはダイラタントである。
【0173】
1つの実施形態では、本明細書に記載した、粘度が高められた耳に許容可能な製剤は、室温で液体ではない。特定の実施形態では、粘度が高められた製剤は、室温と体温(重篤な発熱、例えば、約42℃までの発熱している個体を含む)との間で相転移することを特徴とする。ある実施形態では、相転移は、体温より1℃低い温度で、体温より2℃低い温度で、体温より3℃低い温度で、体温より4℃低い温度で、体温より6℃低い温度で、体温より8℃低い温度で、または体温より10℃低い温度で起こる。ある実施形態では、相転移は、体温より約15℃低い温度で、体温より約20℃低い温度で、または体温より約25℃低い温度で起こる。特定の実施形態では、本明細書に記載する製剤のゲル化温度(Tgel)は、約20℃、約25℃、または約30℃である。特定の実施形態では、本明細書に記載する製剤のゲル化温度(Tgel)は、約35℃、または約40℃である。1つの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤をほぼ体温で投与すると、耳用製剤を鼓室内投与することに関連するめまいが減るか、または阻害する。体温の定義に含まれるのは、健康な個体、不健康な個体の体温である(約42℃までの発熱している個体を含む)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスは、ほぼ室温で液体であり、室温またはほぼ室温で投与され、例えば、めまいのような副作用を減らすか、または改善する。
【0174】
ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンで構成されるポリマーは、水溶液に組み込まれると、熱可逆性ゲルを形成する。これらのポリマーは、体温に近い温度で液体状態からゲル状態へと変化する能力を有し、したがって、標的とする耳の構造に有用な製剤を適用することを可能にする。液体状態とゲル状態の相転移は、ポリマー濃度、溶液中の成分に依存して変わる。
【0175】
ポロクサマー407(PF−127)は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーで構成される非イオン性界面活性剤である。他のポロクサマーとしては、188(F−68グレード)、237(F−87グレード)、338(F−108グレード)が挙げられる。ポロクサマー水溶液は、酸、アルカリ、金属イオン存在下で安定である。PF−127は、一般式E106P70E106を有し、平均分子量が13,000の、市販されているポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。このポリマーは、ポリマーのゲル化性を高めるような適切な方法によってさらに精製することができる。このポリマーは、約70%のエチレンオキシドを含有し、この部分が、親水性に相当する。このポリマーは、ポロクサマーABAブロックコポリマーの一種であり、このポリマー群は、以下に示す共通の化学式を有している。
【0177】
PF−127は、このコポリマーの濃縮溶液(>20% w/w)が、体温まで加熱すると、低粘度の透明溶液から固体ゲルに変換するため、特に興味深い。したがって、この現象は、身体と接触させて配置する場合、ゲル調製剤が、半固体構造を形成し、徐放性の放出デポ剤を形成することを示唆している。さらに、PF−127は、良好な可溶性を有し、毒性が低く、したがって、薬物送達系のための良好な媒体であると考えられる。
【0178】
代替的な実施形態では、熱ゲルは、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマーである(Jeongら、Nature(1997)、388:860−2;Jeongら、J.Control.Release(2000)、63:155−63;Jeongら、Adv.Drug Delivery Rev.(2002)、54:37−51)。このポリマーは、約5%w/w〜約40%w/wの濃度でゾル−ゲル挙動を示す。望ましい性質に依存して、PLGAコポリマー中のラクチド/グリコリドモル比は、約1:1〜約20:1の範囲内である。得られるコポリマーは、水に可溶性であり、室温では自由に流動する液体であるが、体温ではハイドロゲルを形成する。市販されているPEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheim製のRESOMER RGP t50106である。この物質は、50:50ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)のPGLAコポリマーで構成されており、PEGは、10%w/wであり、分子量は約6000である。
【0179】
ReGel(登録商標)は、米国特許第6,004,573号、第6,117949号、第6,201,072号、第6,287,588号に記載されているような可逆的な熱ゲル化性を有する、一連の低分子量の生分解性ブロックコポリマーに対するMacroMed Incorporatedの商標である。ReGel(登録商標)は、係属中の米国特許出願番号第09/906,041号、第09/559,799号、第10/919,603号に開示されている生分解性ポリマー薬物担体も含む。生分解性薬物担体は、ABA型またはBAB型のトリブロックコポリマーまたはこれらの混合物を含み、Aブロックは、相対的に疎水性であり、生分解性ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、Bブロックは、相対的に親水性であり、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、このコポリマーは、疎水性含量が50.1〜83重量%であり、親水性含量が17〜49.9重量%であり、最終的なブロックコポリマーの分子量は、2000〜8000ダルトンである。この薬物担体は、通常の哺乳動物の体温未満の温度では水溶性を示し、可逆的な熱ゲル化を受け、哺乳動物の生理学的体温と等しい温度では、ゲルとして存在する。生分解性の疎水性Aポリマーブロックは、ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、ここで、ポリエステルは、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε−カプロラクトン、ε−ヒドロキシヘキサン酸、γ−ブチロラクトン、γ−ヒドロキシ酪酸、δ−バレロラクトン、δ−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、およびこれらのコポリマーからなる群より選択されるモノマーから合成され、平均分子量が、約600〜3000ダルトンである。親水性Bブロックセグメントは、好ましくは、平均分子量が約500〜2200ダルトンのポリエチレングリコール(PEG)である。
【0180】
さらなる生分解性熱可塑性ポリエステルとしては、AtriGel(登録商標)(Atrix Laboratories、Inc.から得られる)および/または、例えば、米国特許第5,324,519号;第4,938,763号;第5,702,716号;第5,744,153号;第5,990,194号に開示されるものが挙げられ、ここで、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、熱可塑性ポリマーとして開示されている。適切な生分解性熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、これらのコポリマー、これらのターポリマー、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかのこのような実施形態では、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、これらのコポリマー、これらのターポリマー、またはこれらの組み合わせである。1つの実施形態では、生分解性熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有する、50/50 ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)であり、これが、組成物の約30重量%〜約40重量%で組成物中に存在し、約23,000〜約45,000の平均分子量を有する。または、別の実施形態では、生分解性熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有さない、75/25ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)であり、これが、組成物の約40重量%〜約50重量%で組成物中に存在し、約15,000〜約24,000の平均分子量を有する。さらなる実施形態または代替の実施形態では、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)の末端基は、重合法に依存し、ヒドロキシル、カルボキシルまたはエステルのいずれかである。乳酸またはグリコール酸の重縮合によって、末端がヒドロキシル基およびカルボキシル基のポリマーが得られる。環状ラクチドモノマーまたはグリコリドモノマーを、水、乳酸またはグリコール酸で開環重合させると、同じ末端基を有するポリマーが得られる。しかし、環状モノマーを、一置換アルコール(例えば、メタノール、エタノール、または1−ドデカノール)で開環重合させると、末端基の1つがヒドロキシル基であり、1つがエステル基であるポリマーが得られる。環状モノマーを、ジオール(例えば、1,6−ヘキサンジオールまたはポリエチレングリコール)で開環重合させると、末端基がヒドロキシルのみのポリマーが得られる。
【0181】
熱可逆性ゲルのポリマー系が、低温ではもっと完全に溶解するため、溶解方法は、低温で、使用する量の水に必要な量のポリマーを加えることを含む。一般的に、振り混ぜることによってポリマーを湿らせた後、混合物に蓋をし、ポリマーを溶解させるために、約0〜10℃で冷たいチャンバーに入れるか、または恒温容器に入れる。この混合物を撹拌するか、または振り混ぜ、もっと迅速に熱可逆性ゲルポリマーを溶解させる。その後に、コルチコステロイドおよび種々の添加剤(例えば、緩衝剤、塩および防腐剤)を加え、溶解し、ある場合には、コルチコステロイドおよび/または他の医薬活性薬剤を、水に不溶性な場合には懸濁させる。適切な緩衝剤を加えることによってpHを調節し、正円窓膜の粘膜付着特性が、場合により、正円窓膜の粘膜付着性カルボマー(例えば、カルボポール(登録商標)934P)を組成物に組み込むことによって、熱可逆性ゲルに付与する(Majithiyaらによる文献「AAPS PharmSciTech (2006)、7(3)、p.E1;EP0551626」。これらの開示について、両方とも本明細書に参考として組み込まれる)。
【0182】
1つの実施形態では、加えられる増粘剤の使用を必要としない、耳に許容可能な医薬ゲル製剤である。このようなゲル製剤には、少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝剤が組み込まれている。1つの態様では、コルチコステロイドと、薬学的に許容可能な緩衝剤とを含むゲル製剤である。別の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤または担体は、ゲル化剤である。
【0183】
他の実施形態では、内リンパまたは外リンパに適切なpHを与えるため、有用な耳に許容可能なコルチコステロイド医薬製剤は、1つ以上のpH調整剤または緩衝剤も含んでいる。適切なpH調整剤または緩衝剤としては、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物が挙げられる。このようなpH調整剤および緩衝剤は、組成物pHを、約5〜約9のpH、1つの実施形態では、約6.5〜約7.5のpH、さらに別の実施形態では、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5のpHに維持するのに必要な量で含まれる。1つの実施形態では、1つ以上の緩衝剤を本開示の製剤で利用する場合、1つ以上の緩衝剤を、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと合わせ、最終製剤中に、例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の範囲の量で存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝剤の量は、ゲル製剤のpHが、内耳(auris internaまたはinner ear)の天然の緩衝系を妨害せず、内リンパまたは外リンパの天然のpHを妨害しないような量であり、この量は、蝸牛中、コルチコステロイド製剤がどの箇所を標的にするかによって変わる。いくつかの実施形態では、約10μM〜約200mMの濃度の緩衝剤がゲル製剤に存在する。特定の実施形態では、約20mM〜約100mMの濃度の緩衝剤が存在する。1つの実施形態では、酢酸塩またはクエン酸塩が、わずかに酸性pHである緩衝剤である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約4.5〜約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝剤である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約5.0〜約8.0、または約5.5〜約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝剤である。
【0184】
代替的な実施形態では、使用する緩衝剤は、わずかに塩基性のpHで、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、炭酸水素塩、炭酸塩またはリン酸塩である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約6.5〜約8.5、または約7.0〜約8.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝剤である。別の実施形態では、緩衝剤は、約6.0〜約9.0のpHを有する二塩基性リン酸ナトリウム緩衝剤である。
【0185】
また、本明細書では、コルチコステロイドおよび増粘剤を含む制御放出製剤またはデバイスが記載されている。適切な増粘剤としては、ほんの一例として、ゲル化剤および懸濁剤が挙げられる。1つの実施形態では、粘度が高められた製剤は、緩衝剤を含んでいない。他の実施形態では、粘度が高められた製剤は、薬学的に許容可能な緩衝剤を含む。必要な場合、等張性を調節するために、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤を、場合により使用する。
【0186】
ほんの一例として、耳に許容可能な粘度剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ナトリウムコンドロイチンサルフェート、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。標的とする耳の構造に適合する他の増粘剤としては、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)、寒天、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ブラダーラック、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボポール、キサンタン、セルロース、微晶質セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチル化キトサン、コンドラス、デキストロース、フルセレラン(furcellaran)、ゼラチン、Ghattiゴム、グアーゴム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、カラヤゴム、キサンタンゴム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸のコポリマー(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチル−セルロース (CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、Splenda(登録商標)(デキストロース、マルトデキストリンおよびスクラロース)またはこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、粘度を高める賦形剤は、MCCとCMCとを組み合わせたものである。別の実施形態では、増粘剤は、カルボキシメチル化キトサンまたはキチンとアルギン酸塩とを組み合わせたものである。キチンおよびアルギン酸塩と、本明細書に開示するコルチコステロイドとの組み合わせは、制御放出型製剤として作用し、コルチコステロイドが製剤から拡散するのを制限する。さらに、カルボキシメチル化キトサンとアルギン酸塩との組み合わせを用いると、場合により、正円窓膜を通るコルチコステロイドの透過性を増やすのに役立つ。
【0187】
いくつかの実施形態では、約0.1mM〜約100mMのコルチコステロイド、薬学的に許容可能な粘度剤、注射用の水を含む、粘度が高められた製剤であり、水中の粘度剤の濃度は、粘度が高められた製剤が、約100〜約100,000cPの最終粘度を与えるのに十分である。特定の実施形態では、ゲルの粘度は、約100〜約50,000cP、約100cP〜約1,000cP、約500cP〜約1500cP、約1000cP〜約3000cP、約2000cP〜約8,000cP、約4,000cP〜約50,000cP、約10,000cP〜約500,000cP、約15,000cP〜約1,000,000cPの範囲である。他の実施形態では、さらに粘度が高い媒体が望ましい場合、生体適合性ゲルは、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約80重量%などのコルチコステロイドを含む。非常に濃縮されたサンプルでは、生体適合性の粘度が高められた製剤は、少なくとも約25重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%、またはそれ以上のコルチコステロイドを含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に提示されるゲル製剤の粘度は、任意の記載した手段で測定される。例えば、いくつかの実施形態では、LVDV−II+CP Cone Plate ViscometerおよびCone Spindle CPE−40を用い、本明細書に記載したゲル製剤の粘度を算出する。他の実施形態では、Brookfield(スピンドルおよびカップ)粘度計を用い、本明細書に記載したゲル製剤の粘度を算出する。いくつかの実施形態では、本明細書で参照する粘度範囲は、室温で測定したものである。他の実施形態では、本明細書で参照する粘度範囲は、体温(例えば、健康なヒトの平均体温)で測定したものである。
【0189】
1つの実施形態では、薬学的に許容可能な粘度が高められた耳に許容可能な製剤は、少なくとも1つのコルチコステロイドと、少なくとも1つのゲル化剤とを含む。ゲル製剤の調製に使用するのに適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーゴム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸)、シリケート、デンプン、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ペトロラタム、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。いくつかの他の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標))をゲル化剤として使用する。また、特定の実施形態では、本明細書に示したゲル製剤のためのゲル化剤として、本明細書に記載した増粘剤を利用する。
【0190】
いくつかの実施形態では、他のゲル製剤は、使用する特定のコルチコステロイド、他の医薬品または賦形剤/添加剤によっては有用であり、そのため、本開示の範囲に入ると考えられる。例えば、他の市販のグリセリン系ゲル、グリセリンから誘導される化合物、接合したゲルまたは架橋したゲル、マトリックス、ハイドロゲル、ポリマー、および、ゼラチンおよびゼラチン誘導体、アルギン酸塩、アルギン酸塩系ゲル、さらに、種々の天然および合成のハイドロゲルおよびハイドロゲルから誘導される化合物は、すべて、本明細書に記載のコルチコステロイド製剤で有用であると予想される。いくつかの実施形態では、耳に許容可能なゲルとしては、限定されないが、アルギン酸塩ハイドロゲルSAF(登録商標)−Gel(ConvaTec、Princeton、N.J.)、Duoderm(登録商標)Hydroactive Gel(ConvaTec)、Nu−gel(登録商標)(Johnson & Johnson Medical、Arlington、Tex.);Carrasyn(登録商標)(V)Acemannan Hydrogel(Carrington Laboratories、Inc.、Irving、Tex.);グリセリンゲルElta(登録商標) Hydrogel(Swiss−American Products、Inc.、Dallas、Tex.)およびK− Y(登録商標) Sterile(Johnson & Johnson)が挙げられる。さらなる実施形態では、生分解性の生体適合性ゲルは、本明細書に開示し、記載する、耳に許容可能な製剤中に存在する化合物も表している。
【0191】
哺乳動物に投与するために開発されたいくつかの製剤、およびヒトに投与するために処方された組成物の場合、耳に許容可能なゲルは、実質的に重量全体の組成物を含む。他の実施形態では、耳に許容可能なゲルは、組成物の重量の約98%、または約99%含まれる。耳に許容可能なゲルは、実質的に液体を含まないか、実質的に粘性の製剤が必要な場合に望ましい。さらなる実施形態では、粘性が低いか、またはわずかに流動性の高い耳に許容可能な医薬ゲル製剤が望ましい場合、製剤の生体適合性ゲル部分は、化合物を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、または90重量%含む。これらの範囲内にある中間的な整数はすべて、本開示の範囲内にあることが想定され、いくつかの代替的な実施形態では、さらに流動性の(その結果、粘性が低い)耳に許容可能なゲル組成物が処方され、例えば、混合物のゲル要素またはマトリックス要素が、組成物の約50重量%を超えない量で、約40重量%を超えない量で、約30重量%を超えない量で、または約15重量%を超えない量で、または約20重量%を超えない量で含まれる。
【0192】
(正円窓膜の粘膜接着剤)
また、正円窓膜の粘膜接着剤を、本明細書に開示するコルチコステロイド製剤および組成物およびデバイスとともに加えることも、実施形態の範囲内であることが想定される。用語「粘膜付着」は、生体膜のムチン層(例えば、3層の正円窓膜の外側の膜)に結合する物質に使用される。正円窓膜の粘膜付着性ポリマーとしての機能をはたすために、ポリマーはいくつかの一般的な物理化学的特徴を有しており、このような特徴は、例えば、多くの水素結合形成基との顕著なアニオン親水性、濡れた粘液/粘膜組織表面に適した表面特性、または粘液の網目を透過するのに十分な可撓性などである。
【0193】
耳に許容可能な製剤とともに使用される正円窓膜の粘膜接着剤としては、限定されないが、少なくとも1つの可溶性ポリビニルピロリドンポリマー(PVP);水膨潤性であるが、水に不溶な繊維状の架橋したカルボキシ官能化ポリマー;架橋したポリ(アクリル酸)(例えば、カルボポール(登録商標)947P);カルボマーホモポリマー;カルボマーコポリマー;親水性の多糖ゴム、マルトデキストリン、架橋したアルギネートゴムのゲル(alignate gum gel)、水分散性のポリカルボキシル化ビニルポリマー、二酸化チタン、二酸化ケイ素、クレイからなる群より選択される少なくとも2つの粒子状物質要素、またはこれらの混合物が挙げられる。正円窓膜の粘膜接着剤は、場合により、耳に許容可能な粘度を高める賦形剤と組み合わせて用いるか、または単独で用い、組成物と、標的とする耳要素の粘膜層との相互作用を高める。ある非限定的な例では、粘膜接着剤は、マルトデキストリンおよび/またはアルギネートゴムである。使用する場合、有効な量のコルチコステロイド組成物を、例えば、正円窓膜または蝸牛窓稜の粘膜層に送達するのに十分な濃度で、粘膜をコーティングする量で正円窓膜の粘膜接着剤の性質が組成物に付与され、その後、組成物を、ほんの一例として、内耳の前庭構造および/または蝸牛構造を含む患部に送達する。十分な粘膜付着性を決定するための1つの方法は、限定されないが、粘膜付着性の賦形剤が存在しない状態、および存在する状態で、組成物の存在場所または保持時間の変化を測定することを含む、組成物と粘膜層との相互作用の変化を監視することを含む。
【0194】
ある非限定的な実施例では、正円窓膜の粘膜接着剤は、マルトデキストリンである。マルトデキストリンは、場合により、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦または他の植物産物由来のデンプンの加水分解によって得られる炭水化物である。マルトデキストリンは、場合により、単独で使用されるか、または他の正円窓膜の粘膜接着剤と組み合わせて使用され、本明細書に開示する組成物に粘膜付着性を付与する。1つの実施形態では、マルトデキストリンとカルボポールポリマーとの組み合わせを用い、本明細書に開示する組成物またはデバイスの正円窓膜の粘膜付着特性を高める。
【0195】
別の実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル−グリコシドおよび/またはサッカライドアルキルエステルである。本明細書で使用される場合、「アルキル−グリコシド」は、任意の親水性サッカライド(例えば、スクロース、マルトースまたはグルコース)が、疎水性アルキルに結合した化合物を意味する。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、疎水性アルキル(例えば、炭素原子約6〜25個を含むアルキル)にアミド結合、アミン結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、および/またはウレイド結合によって結合した糖を含むアルキル−グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、オクタデシルのα−D−マルトシドまたはβ−D−マルトシド、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、オクタデシルのα−D−グルコシドまたはβ−D−グルコシド、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、およびオクタデシルのα−D−スクロシドまたはβ−D−スクロシド、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシルのβ−D−チオマルトシド、ヘプチル−またはオクチル−1−チオのα−D−グルコピラノシドまたはβ−D−グルコピラノシド、アルキルチオスクロース、アルキルマルトトリオシド、スクロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド、アルキル鎖にアミド結合によって結合したパラチノースまたはイソマルトアミンの誘導体、アルキル鎖に尿素によって結合したイソマルトアミン誘導体、スクロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド、およびスクロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、炭素原子が9〜16個のアルキル鎖にグリコシド結合によって結合するマルトース、スクロース、グルコース、またはこれらの組み合わせである、アルキル−グリコシドである(例えば、ノニル−、デシル−、ドデシル−、テトラデシルのスクロシド、ノニル−、デシル−、ドデシル−、テトラデシルのグルコシド、ノニル−、デシル−、ドデシル−、テトラデシルのマルトシド)。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルマルトシドである、アルキル−グリコシドである。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドがテトラデシル−β−D−マルトシドであるアルキル−グリコシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル−グリコシドが、少なくとも1つのグルコースを有する二糖類であるアルキル−グリコシドである。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、α−D−グルコピラノシル−β−グルコピラノシド、n−ドデシル−4−O−α−D−グルコピラノシル−β−グルコピラノシド、および/またはn−テトラデシル−4−O−α−D−グルコピラノシル−β−グルコピラノシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル−グリコシドが、純水中または水溶液中で、約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、アルキル−グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル−グリコシド内の酸素原子が、硫黄原子で置換されているアルキル−グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドがβアノマーであるアルキル−グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、または99.9%のβアノマーを含む、アルキル−グリコシドである。
【0196】
(耳に許容可能なシクロデキストリンおよび他の安定化製剤)
特定の実施形態において、耳に許容可能な製剤は、代替的にシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、6、7、又は8のグルコピラノース単位を含む環状オリゴ糖であり、夫々α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、又はγ−シクロデキストリンとも呼ばれている。シクロデキストリンは、水溶性を高める親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部とを備える。水性の環境下、他の分子の疎水性部分は、しばしばシクロデキストリンの疎水性空洞に入り込み、包接化合物を形成する。加えて、シクロデキストリンは、疎水性空洞内部ではない他種の分子との非結合性の相互作用も可能である。シクロデキストリンは、夫々のグルコピラノシル単位に3つの遊離水酸基、又はα−シクロデキストリン上に18水酸基、β−シクロデキストリン上に21水酸基、及びγ−シクロデキストリン上に24水酸基を備える。1又はそれより多いこれら水酸基は、任意の数の試薬と反応させ、ヒドロキシプロピルエーテル、スルホンサン塩、及びスルホアルキルエーテルを含む多種多様のシクロデキストリン誘導体を形成する。β−シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)の構造を以下に示す。
【0198】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される医薬組成物におけるシクロデキストリンの使用は、薬物の溶解性を改善する。改良された溶解性の多くの場合、包接化合物が含まれるが、シクロデキストリンと、不溶性化合物の間の他の相互作用もまた溶解性を改良する。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)は、ピロゲンが使われていない製品として市販されている。それは、水に容易に溶解する非吸湿性の白色粉末である。HPβCDは、熱安定性であり、中性のpHで分解しない。従って、シクロデキストリンは、組成物又は製剤において治療薬剤の溶解性を改善する。それ故、いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、本明細書中に記載される製剤中の耳に許容可能なコルチコステロイドの溶解性を増加させることが挙げられる。他の実施形態において、シクロデキストリンは、そのうえ、本明細書中に記載される製剤中の制御放出型賦形剤として機能する。
【0199】
ほんの一例として、使用するシクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、硫酸化α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを含む。
【0200】
本明細書中に開示される組成物及び方法で使用されるシクロデキストリンの濃度は、治療に有用な薬剤、もしくはその塩又はそのプロドラッグ、あるいはその組成物中の他の賦形剤の特性に関連する生理化学的特性、薬物動態特性、副作用又は有事事象、製剤考察(Formulation Consideration)、又は他の因子によって変化する。このようにして、特定の環境において、本明細書中に開示される組成物及び方法に従って使用されるシクロデキストリンの濃度又は量は、必要に応じて変化する。使用時、本明細書中に記載される任意の製剤において、コルチコステロイドの溶解性を増加させるため及び/又は、制御放出型賦形剤として機能するために必要とされるシクロデキストリンの量は、本明細書中に記載される原理、実施例、及び教示を使用して選択される。
【0201】
本明細書中に開示される耳に許容可能な製剤に有用である他の安定剤は、例えば、脂肪酸、脂肪酸アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、安定剤のアミドアナログもまた使用される。さらなる実施形態において、選択された安定剤は、製剤の疎水性を変え(例えば、オレイン酸、ワックス)、または製剤中の様々な成分の混合を改善し(例えば、エタノール)、製剤中の水分レベルを制御し(例えば、PVP又はポリビニルピロリドン)、相の移動を制御し(例えば、長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、アミド等、又はそれらの混合物の室温よりも高い融点を備える物質、ワックス)、及び/又は封入材料を有する製剤の親和性を改善する(例えば、オレイン酸、又はワックス)。別の実施形態において、これらの安定剤のいくつかは、溶媒/共溶媒(例えば、エタノール)として使用される。他の実施形態において、安定剤は、コルチコステロイドの分解を抑制するために十分な量が存在する。これら安定剤の例としては、限定されるものではないが、(a)約0.5%から約2%w/vまでのグリセロール、(b)約0.1%から約1%w/vまでのメチオニン、(c)約0.1%から約2%w/vまでのモノチオグリセロール、(d)約1mMから約10mMまでのEDTA、(e)約0.01%から約2%w/vまでのアスコルビン酸、(f)0.003%から約0.02%w/vまでのポリソルベート80、(g)0.001%から約0.05%w/vまでのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)へパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサン多硫酸及び他のへパリン類似物質、(m)マグネシウム及び亜鉛等の二価カチオン、又は(n)それらの組み合わせが挙げられる。
【0202】
さらなる有益な、コルチコステロイドの耳に許容可能な製剤は、1又はそれより多い抗凝集添加剤を含み、タンパク質凝集率を減少させることによりコルチコステロイド製剤の安定性を高める。選択される抗凝集添加剤は、コルチコステロイド、例えば、コルチコステロイド抗体が曝露される病気の特性に依存する。攪拌及び熱応力を受ける特定の製剤は、凍結乾燥及び再構成を受ける製剤とは異なる抗凝集添加剤を要求する。有益な抗凝集添加剤は、ほんの一例ではあるが、尿素、塩化グアニジン、例えばグリシン又はアルギニンのような単一のアミノ酸、糖、ポリアルコール、ポリソルベート、例えばポリエチレングリコール及びデキストランのようなポリマー、例えば、アルキルグリコシドのようなアルキルサッカライド、及び界面活性剤が挙げられる。
【0203】
他の有益な製剤としては、1又はそれより多い耳に許容可能な抗酸化剤を任意に含み、要求される場所での化学安定性を高める。適切な抗酸化剤としては、ほんの一例ではあるが、アスコルビン酸、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム及びメタ重亜硫酸ナトリウムが含まれる。1つの実施形態において、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、及び他の一般的な安定剤から選択される。
【0204】
さらに他の有益な組成物は、物理的安定性を高めるため又は他の目的のために、1又はそれより多い耳に許容可能な界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、限定されるものではないが、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油等の植物油、及び、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40等のポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテルが含まれる。
【0205】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される耳に許容可能な医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3カ月、少なくとも約4カ月、少なくとも約5カ月、又は少なくとも約6カ月の期間にわたって化合物分解に対して安定的である。他の実施形態において、本明細書中に記載される製剤は、少なくとも約1週間の期間にわたって化合物分解に対して安定的である。少なくとも約1か月の期間にわたって化合物分解に対して安定な製剤もまた、本明細書中に記載される。
【0206】
他の実施形態において、追加の界面活性剤(共界面活性剤)及び/又は緩衝剤は、本明細書中に上述される1又はそれより多い薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、これにより界面活性剤及び/又は緩衝剤が、安定性に最適なpHで製品を維持する。最適な共界面活性剤は、限定されるものではないが、a)例えばリン脂質、コレステロール、及びコレステロール脂肪酸エステル等の天然及び合成の親油性薬物、並びにそれらの誘導体と、b)非イオン性界面活性剤と、c)陰イオン界面活性剤と、d)例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム、及び塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤と、を含む。上記b)における非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステレート(Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンラウリル酸モノエステル(Tween20)、及び他のTween等)、ソルビタンエステル、グリセロールエステル例えば、Myrj及びグリセロールトリアセテート(トリアセチン)、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロクサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、Cremophor(登録商標)RH40、CremophorA25、CremophorA20、Cremophor(登録商標)EL)及び他のCremophor、スルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩(SLS)、PEGグリセリン脂肪酸エステル(例えば、PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリン(Labrasol)、PEG−4カプリル酸/カプリン酸グリセリン(Labrafac Hydro WL1219)、PEG−32ラウリル酸グリセリン(Gelucire444/14)、PEG−6グリセリンモノオレエート(Labrafil M 1944CS)、PEG−6リノール酸グリセリン(Labrafil M 2125CS)等)、プロピレングリコールモノ−及びジ−脂肪酸エステル(例えば、ラウリル酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸プロピレングリコール等)、Brij(登録商標)700、アスコルビル−6−パルミチン酸、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリコールトリリシノール酸、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物が挙げられる。上記c)における陰イオン界面活性剤としては、限定されるものではないが、カルシウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル酸カリウム、胆汁塩、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物が挙げられる。
【0207】
さらなる実施形態において、1又はそれより多い共界面活性剤が本発明で開示される耳に許容可能な製剤に利用される場合、界面活性剤は、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされるとともに、約0.1%から約20%の範囲、約0.5%から約10%の範囲の量で最終製剤中に存在する。
【0208】
1つの実施形態において、希釈剤はさらなる安定環境を提供するので、希釈剤はコルチコステロイド又は他の医薬化合物を安定化するためにも使用される。緩衝剤(pH制御又は維持を提供することもできる)中に溶解される塩は、希釈剤として利用され、その希釈剤としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水が含まれる。他の実施形態において、ゲル製剤は、内リンパ液又は外リンパ液と等張であり、コルチコステロイド製剤が標的とする蝸牛の部分に依存する。等張製剤は、等張化剤の添加により提供される。適切な等張化剤は、限定されるものではないが、任意の薬学的に許容可能な糖、塩又はそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含み、例えば、デキストロース及び塩化ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。等張化剤の量は、本明細書中に記載されるように、医薬製剤の標的構造に依存する。
【0209】
有益な等張化組成物は、組成物の浸透圧を内リンパ液又は外リンパ液の許容範囲にするのに必要な量の1又はそれより多い塩も含む。このような塩は、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、またはアンモニウムカチオン及び塩化物アニオン、クエン酸塩アニオン、アスコルビン酸塩アニオン、ほう酸塩アニオン、リン酸塩アニオン、重炭酸塩アニオン、硫酸塩アニオン、チオ硫酸塩アニオン又は亜硫酸水素塩アニオンを有するものを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムを含む。
【0210】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される耳に許容可能なゲル製剤は、代替的に又は追加的に防腐剤を含み、微生物の増殖を抑制する。本明細書中に記載の強化粘性製剤で使用する、耳に許容可能な適切な防腐剤は、安息香酸、ほう酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アルコール、第4化合物、安定化二酸化塩素、水銀剤例えばメルフィン(merfen)及びチオマーサル等、前述の混合物等を含むが、これらに限定されない。
【0211】
さらなる実施形態において、防腐剤は、ほんの一例として、本明細書中に記載される耳に許容可能な製剤中の抗菌剤である。1つの実施形態において、製剤は、例えば、ほんの一例として、メチルパラベン、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール及びそれ以外のものが挙げられる。もう1つ別の実施形態において、メチルパラベンは、約0.05%から約1.0%まで、約0.1%から約0.2%までの濃度である。さらなる実施例において、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及びクエン酸ナトリウムを混合することにより調製される。さらなる実施形態において、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及び酢酸ナトリウムを混合することにより調製される。さらなる実施形態において、混合物は、120℃で約20分間オートクレーブすることにより滅菌し、本明細書中に開示されるコルチコステロイドの適切な量を混合する前にpH、メチルパラベン濃度、及び粘度が試験される。
【0212】
薬物送達ビヒクルで用いられる、耳に許容可能な適切な水溶性防腐剤は、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェニルエタノール及びそれ以外のものを含む。これらの薬剤は、通常、重量約0.001%から約5%の量で、好ましくは重量約0.01%から約2%の量で存在する。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される耳に許容可能な製剤は、防腐剤が無い。
【0213】
(正円窓膜浸透促進剤)
もう1つ別の実施形態において、製剤は、1又はそれより多い正円窓膜浸透促進剤をさらに含む。正円窓膜を越える浸透は、正円窓膜浸透促進剤により高められる。正円窓膜浸透促進剤は、正円窓膜を越えて供用投与物質の輸送を促進する化学物質である。正円窓膜浸透促進剤は、化学構造に従って分類される。イオン性及び非イオン性の双方の界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐20‐セチルエーテル、ラウレス‐9、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル(PLE)、Tween(登録商標)80、ノニルフェノキシポリエチレン(NP−POE)、ポリソルベート、及びその他類似物等が、正円窓膜浸透促進剤として機能する。胆汁塩(例えば、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、及びその他類似物等)、脂肪酸及び誘導体(例えば、オレイン酸、カプリン酸、モノ及びジ−グリセリド、ラウリル酸、アシルコリン、アシルカルニチン、カプリル酸ナトリウム、及びその他類似物等)、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸、サリチル酸塩キレート及びその他類似物等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド及びその他類似物等)、及びアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロパンジオール及びその他類似物等)もまた正円窓膜浸透促進剤として機能する。
【0214】
(正円窓膜浸透リポソーム)
リポソーム又は脂質粒子は、コルチコステロイド製剤又は組成物をカプセル化することに使用され得る。水性溶媒中にゆっくりと分散されるホスホリン脂質は、脂質層を分ける封入水性溶媒の領域を有する多層構造の小胞を形成する。これらの多層構造の小胞の超音波処理又は激しい攪拌は、通常リポソームとして知られる約10−1000nmの大きさの単層の小胞の形成をもたらす。これらのリポソームは、コルチコステロイド又は他の医薬薬剤の担体として顕著な効果を備える。それらは、生物学的に挿入し、生分解性であり、非毒性であり、非抗原性である。リポソームは、様々な大きさで形成されるとともに、組成物及び表面特性を変えて形成される。その上、リポソームは、多種多様の薬剤を封入するとともに、リポソームが崩壊する部位でその薬剤を放出することができる。
【0215】
本明細書中の耳に許容可能なリポソームに使用される適切なリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、プラズマロゲン、ホスファチジン酸及びセレブロシド、特に、非毒性で、薬学的に許容可能な有機溶媒中に本明細書中のコルチコステロイドとともに可溶なものである。好適なリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及び、その他類似物、並びにそれらの混合物、特にレシチン、例えば、大豆レシチンである。本発明の製剤に使用されるリン脂質の量は、約10%から約30%、好ましくは約15%から約25%、特に約20%である。
【0216】
脂溶性添加剤は、リポソームの特性を選択的に修正するために有益に用いられる。このような添加剤は、ほんの一例として、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール、ヘミコハク酸コレステロール及びラノリン抽出物を含む。用いられる脂溶性添加剤は、0.5から8%までの範囲であり、好ましくは1.5から4%までの範囲であり、そして特に約2%である。一般的に、脂溶性添加剤の量の、リン脂質の量に対する比率は、約1:8から約1:12の範囲であり、特に約1:10である。リン脂質、脂溶性添加物及びコルチコステロイド及び他の医薬化合物は、成分(ingredients)を溶解している非毒性の、薬学的に許容可能な有機溶媒系とともに用いられる。溶媒系は、完全にコルチコステロイドを溶解しなければならないだけでなく、安定した単一の二層のリポソームの製剤を可能としなければならない。溶媒系は、約8%から約30%までの量で、ジメチルイソソルビド及びテトラグリコール(グリコフロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールエーテル)を備える。溶媒系において、ジメチルイソソルビドの量の、テトラグリコールの量に対する比率は、約2:1から約1:3までの範囲であり、特に約1:1から約1:2.5であり、好ましくは約1:2である。最終組成物におけるテトラグリコールの量は、従って、5から20%まで変化する、特に5から15%まで変化し、好ましくは約10%である。最終組成物におけるジメチルイソソルビドの量は、従って、3から10%の範囲であり、特に3から7%の範囲であり、好ましくは約5%である。
【0217】
以下に用いられる「有機成分」の用語は、リン脂質、脂溶性添加物及び有機溶媒を備える混合物を示す。コルチコステロイドは、有機組成物又は薬剤の完全活性化を維持するための他の手段において溶解されている。最終製剤におけるコルチコステロイドの量は、01.から5.0%の範囲である。さらに、抗酸化物質などの他の成分(ingredients)は、有機成分(component)に加えられる。例は、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸オレアートなどを含む。
【0218】
他の実施形態において、ゲル製剤及び粘度を強化した製剤を含む耳に許容可能な製剤は、さらに賦形剤、他の薬剤または医薬薬剤、担体、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤などのアジュバント、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせをさらに含む。
【0219】
本明細書に記載される耳に許容可能な製剤における使用に適切な担体は、限定するものではないが、標的である耳構造の生理環境に適合する任意の薬学的に許容可能な溶媒を含む。他の実施形態において、基剤は、薬学的に許容可能な界面活性剤及び溶媒の組み合わせである。
【0220】
いくつかの実施形態において、他の賦形剤は、フマル酸ステアリルナトリウム、ジエタノールアミンセチル硫酸、イソステアレート、ポリエトキシ化ヒマシ油、ノンオキシル10、オクトキシノール9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン)、レシチン、それらの薬学的に許容可能な塩、並びにそれらの組み合わせ又は混合物を含む。
【0221】
他の実施形態において、担体はポリソルベートである。ポリソルベートはソルビタンエステルの非イオン界面活性剤である。本開示において有益なポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween 80)並びにそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、ポリソルベート80は、薬学的に許容可能な担体として利用される。
【0222】
ある実施形態において、水溶性グリセリンをベースとした耳に許容可能な粘度を強化した製剤は、薬学的送達ビヒクルの調合に用いられ、この送達ビヒクルは、少なくとも0.1%又はそれより多い水溶性グリセリン化合物を含有する少なくとも1のコルチコステロイドを備える。いくつかの実施形態において、コルチコステロイドの比率は、全体の医薬製剤の約1%から約95%の間、約5%から約80%の間、約10%から約60%の間、もしくはそれより多い比率の重量又は体積で変化する。いくつかの実施形態において、治療に有用なコルチコステロイド製剤のそれぞれにおける化合物の量は、適切な容量が化合物の任意の一定の投与量で獲得されるように、調合される。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与ルート、製品貯蔵期間の他に、薬理学的考察などの因子が本明細書において熟慮される。
【0223】
必要に応じて、耳に許容可能な薬学的ゲルは、共溶媒及び緩衝剤を含有する。適切な耳に許容可能な水溶性緩衝剤は、アルカリ性である、又はアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ土類金属クエン酸塩、アルカリ土類金属ホウ酸塩、アルカリ土類金属酢酸塩、アルカリ土類金属コハク酸塩、アルカリ土類金属酢酸塩、アルカリ土類金属コハク酸エステルなどであり、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及びトロメタミン(TRIS)ナトリウムである。これらの薬剤は、系のPHを7.4±0.2、及び好ましくは7.4に維持するのに十分な量が存在する。このように、緩衝剤は、全体の組成物の重量ベースで5%もの量である。
【0224】
共溶媒はコルチコステロイドの溶解度を高めるのに用いられる、しかしながら、いくつかのコルチコステロイド又は他の医薬化合物は不溶性である。これらは、しばしば適切な懸濁化剤または粘度強化剤を用いて、ポリマービヒクルにおいて懸濁される。
【0225】
さらに、いくつかの薬学的賦形剤、希釈剤又は担体は、潜在的に耳毒性がある。例えば、塩化ベンザルコニウム、一般的な防腐剤は、耳毒性があり、従って、前庭又は蝸牛の構造に取り込まれると、潜在的に有害である。制御放出型コルチコステロイド製剤を処方する際に、適切な賦形剤、希釈剤又は担体を避ける又は組み合わせること、製剤から潜在的な耳毒性の化合物を減少させる又は除去すること、又は賦形剤、希釈剤又は担体などの量を減少させることが推奨される。任意で、制御放出型コルチコステロイド製剤は、特定の治療薬剤、賦形剤、希釈剤又は担体を使用することで生じる潜在的な耳毒性の影響を弱めるための、抗酸化物質、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳毒性防護剤を含む。
【0226】
(処置の形態)
投薬方法及びスケジュール
内耳に送達される薬物は、経口経路、静脈経路、筋肉内経路で投与されてきた。しかしながら、内耳での局所的な病理に対する全身投与は、全身への毒性及び副作用の可能性を増大させ、薬物の非生産的な分布を形成する。この分布では、高水準の薬物が血清において見出され、それに対応して、低水準の薬物が内耳で見出される。
【0227】
治療薬剤の鼓室内注射は、鼓膜の裏側に治療薬剤を注射し、中耳及び/又は内耳へと到達させる技術である。1つの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、鼓室内注射を介して正円窓膜に直接投与される。もう1つ別の実施形態において、本明細書に記載される耳に許容可能なコルチコステロイド製剤は、内耳への非鼓室内注射方法で正円窓膜に投与される。さらなる実施形態において、本明細書に記載される製剤は、蝸牛窓稜の変更を含む工程を備える正円窓膜への外科的方法を介して、正円窓膜に投与される。
【0228】
1つの実施形態において、送達システムは、鼓膜を貫通するとともに、直接的に正円窓膜又は内耳の蝸牛窓稜に到達可能なシリンジ及び注射針の装置である。いくつかの実施形態において、シリンジの注射針は、18ゲージ注射針より幅広い注射針である。もう1つ別の実施形態において、注射針ゲージは、18ゲージから31ゲージまでである。さらなる実施形態において、注射針ゲージは25ゲージから30ゲージまでである。コルチコステロイド化合物又は製剤の厚さ又は粘度に応じて、シリンジ又は皮下注射針のゲージの水準は、適宜変更される。
【0229】
もう1つ別の実施形態において、注射針はゲル製剤の即時送達に用いられる皮下注射針である。皮下注射針は、1回使いきりの注射針または使い捨ての注射針である。いくつかの実施形態において、シリンジは、本明細書に記載される薬学的に許容可能なゲルベースのコルチコステロイド含有化合物の送達に利用され、シリンジはプレスフィット(ルアー)又はツイストオン(ルアーロック)付属品を有する。ある実施形態において、シリンジは皮下注射シリンジである。もう1つ別の実施形態において、シリンジはプラスチック又はガラスでできている。さらなるもう1つ別の実施形態において、皮下シリンジは、単一の使用のシリンジである。さらなる実施形態において、ガラスシリンジは、滅菌可能である。さらなる実施形態において、滅菌はオートクレーブによって生じる。もう1つ別の実施形態において、シリンジは円筒形状のシリンジ本体を備え、ゲル製剤は使用前に保存される。他の実施形態において、シリンジは、円筒形状のシリンジ本体を備え、本明細書に開示されるコルチコステロイドの薬学的に許容可能なゲルをベースとした組成物は、使用前に保存され、該組成物は、適切な薬学的に許容可能な緩衝剤と都合よく混合することが可能である。他の実施形態において、シリンジは他の賦形剤、安定剤、懸濁化剤、希釈剤又はこれらの組み合わせを含有し、これらに含有されるコルチコステロイド又は他の薬学的化合物を安定させる、又はそうでなければ安定的に保存する。
【0230】
いくつかの実施形態において、シリンジは、円筒形状のシリンジ本体を備え、各仕切りが耳に許容可能なコルチコステロイドのゲル製剤の少なくとも1の化合物を保存することが可能なように、本体は区切られている。さらなる実施形態において、仕切られている本体を有するシリンジにより、中耳又は内耳に注射をする前に、化合物の混合を行なうことが可能である。他の実施形態において、送達システムは、多数のシリンジを備え、多数のシリンジの各々のシリンジは、ゲル製剤の少なくとも1の化合物を含有し、これにより、各化合物は注射前に事前に混合される、又は各化合物は注射の後に混合される前に、事前に混合される。さらなる実施形態において、本明細書に記載されるシリンジは、少なくとも1の容器を備え、少なくとも1の容器は、コルチコステロイド、又は薬学的に許容可能な緩衝剤又はゲル化剤又はこれらの組み合わせなどの粘度増強剤を備える。商業的に利用可能な注射装置は、シリンジ筒、注射針を有する注射針アセンブリ、プランジャ棒を有するプランジャ、及び、保持フランジを有するすぐに利用できるプラスチックシリンジとして最もシンプルな形状を任意で採用し、鼓室内注射を実行する。
【0231】
いくつかの実施形態において、送達装置は、中耳及び/又は内耳に対する治療薬剤の投与に設計される器具である。ほんの一例として、GYRUS Medical Gmbhは、正円窓ニッチの視覚化及び正円窓ニッチへの薬物送達のために、マイクロオトスコープが提供される。Arenbergは米国特許第5,421,818号、第5,474,529号及び第5,476,446号において、内耳構造に対して、流体を送達するための処置装置を記載した。これらのそれぞれは、開示目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。開示目的のために、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第08/874,208号は、内耳に対して治療薬剤を送達するための流体移動導管を埋め込むための外科的方法について記載している。開示のために、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開公報第2007/0167918号はさらに、中耳内の流体サンプリング及び薬物塗布のための耳吸引器及び医薬品取り出し容器の組み合わせを記載する。
【0232】
本明細書に記載される製剤及びその投与方法は、また、内耳部分の直接的な滴下又は灌流の方法に適用可能である。従って、本明細書に記載される製剤は、非限定的な例として、蝸牛形成術(cochleostomy)、内耳手術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、内リンパ球形嚢手術(endolymphatic sacculotomy)などを含む外科的手術において有益である。
【0233】
本明細書記載のコルチコステロイド化合物を含む耳に許容可能な組成物又は製剤は、予防的処置及び/又は処置として投与される。治療的用途において、コルチコステロイド組成物は、自己免疫疾患、症状又は疾病に既に苦しんでいる患者に対して、疾患、症状又は疾病の兆候を治癒、又は少なくとも部分的に進行を止めるのに十分な量で投与される。この使用に対する効果的な量は、疾患、症状又は疾病の重症度及び経過、薬歴、患者の健康状態及び薬物応答性及び処置する医師の判断による。
【0234】
患者の症状が改善しない場合、患者の疾患又は症状の兆候を寛解させる、またはそうでなくとも、制御又は制限するために、医者の判断に基づき、コルチコステロイド化合物は常習的に、即ち患者の寿命の間中などといった、長期間投与される。
【0235】
患者の症状が改善する場合、医者の判断に基づき、コルチコステロイド化合物の投与が、連続的に行なわれることで、代替的に投与される薬物の投与量は、一時的に減少される又は一時的に特定の期間停止される(即ち、休薬期間)。休薬期間は、2日から1年の間であり、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、及び365日を含む。休薬期間の投与量の減少は、10%から100%であり、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%及び100%を含む。
【0236】
患者の自己免疫疾病が改善されると、必要に応じて、コルチコステロイドの維持用量が投与される。症状に応じて、改善された疾患、症状又は疾病が維持される水準になるまで、連続的に、投与量もしくは投与頻度又はこれら両方が任意で減少される。特定の実施形態において、患者は、兆候のあらゆる再発の際に、長期間で間欠的な処置を必要とする。
【0237】
このような量に対応するコルチコステロイドの量は、例えば、投与された特定のコルチコステロイド、投与経路、処置すべき自己免疫疾病、処置すべき標的部位、及び、処置すべき被験体又は宿主などを含む疾病を取り囲む特定の環境に応じて、特定の化合物、疾病病状及びその重症度などの要因により依存して異なる。しかしながら、一般的に成人の処置に用いられる投与量は、概して1回の投与につき、0.02−50mgの幅であり、好ましくは1回の投与につき、1−15mgである。所望の投与量は、1回の投与量又は分割された投与量であらわされ、同時に(又は短期間をおいて)又は適切な間隔をおいて投与される。
【0238】
いくつかの実施形態において、最初の投与は、特定のコルチコステロイドであり、その次の投与は、異なる製剤又はコルチコステロイドである。
【0239】
(放出制御型製剤の薬物動態)
1つの実施形態において本明細書に開示される製剤は、製剤からコルチコステロイドの即時放出を、又は1分以内、又は5分以内、又は10分以内、又は15分以内又は30分以内又は60分以内又は90分以内の放出を追加的に付与する。他の実施形態において、治療に有用な少なくとも1のコルチコステロイドの量は、即時に、又は1分以内、又は5分以内、又は10分以内、又は15分以内、又は30分以内、又は60分以内又は90分以内に製剤から放出される。特定の実施形態において、製剤は、少なくとも1のコルチコステロイドの即時放出を付与する、耳に薬学的に許容可能なゲル製剤を備える。さらなる製剤の実施形態は、本明細書に記載される製剤の粘度を増大させる薬剤を同様に備えることもある。
【0240】
他の又はさらなる実施形態において、製剤は、少なくとも1のコルチコステロイドの持続放出型製剤を提供する。特定の実施形態において、製剤からの少なくとも1のコルチコステロイドの拡散は、5分、又は15分、又は30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は12時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、又は5日、又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月、又は3ヶ月、又は4ヶ月、又は5ヶ月、又は6ヶ月、又は9ヶ月、又は1年にわたって生じる。他の実施形態において、治療に有効な量の少なくとも1のコルチコステロイドが、5分、又は15分、又は30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は12時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、又は5日、又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月、又は3ヶ月、又は4ヶ月、又は5ヶ月、又は6ヶ月、又は9ヶ月、又は1年にわたって製剤から放出される。
【0241】
他の実施形態において、製剤は、即時放出性及び徐放性のコルチコステロイド製剤を提供する。さらに他の実施形態において、製剤は、0.25:1の割合、又は0.5:1の割合、又は1:1の割合、又は1:2の割合、又は1:3、又は1:4の割合、又は1:5の割合、又は1:7の割合、又は1:10の割合、又は1:15の割合、又は1:20の割合の即時放出性製剤及び徐放性製剤を含む。さらなる実施形態において、製剤は、即時放出性の第1のコルチコステロイド、及び、徐放性の第2のコルチコステロイド、又は他の治療薬剤を提供する。さらに他の実施形態において、製剤は、少なくとも1つのコルチコステロイドの即時放出性製剤及び徐放性製剤、及び少なくとも1つの治療薬剤を提供する。いくつかの実施形態において、製剤は、0.25:1の割合、又は0.5:1の割合、又は1:1の割合、又は1:2の割合、又は1:3、又は1:4の割合、又は1:5の割合、又は1:7の割合、又は1:10の割合、又は1:15の割合、又は1:20の割合の、第1コルチコステロイド及び第2治療薬剤の即時放出性製剤及び徐放性製剤を、それぞれ提供する。
【0242】
具体的な実施形態において、製剤は、基本的に全身曝露を伴わない疾患において、治療に有効な量の少なくとも1つのコルチコステロイドを提供する。追加の実施形態において、製剤は、基本的に検出可能な全身曝露を伴わない疾患において、治療に有効な量の少なくとも1つのコルチコステロイドを提供する。他の実施形態において、製剤は、基本的に検出可能な全身曝露を少ししか伴わない又は伴わない疾患において、治療に有効な量の少なくとも1つのコルチコステロイドを提供する。
【0243】
即時放出性、遅延放出性、及び/又は徐放性のコルチコステロイド組成物又は製剤の組み合わせは、賦形剤、希釈剤、安定剤、等張化剤、及び本明細書中に開示される他の組成物とだけでなく、他の医薬品とも組み合わせてもよい。このように、使用されるコルチコステロイド、所望の厚み又は粘度、あるいは選択される送達のモードに依存して、本明細書中に開示される実施形態の代替的な態様は、即時放出性、遅延放出性、及び/又は徐放性の実施形態に適宜組み合わされる。
【0244】
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるコルチコステロイド製剤の薬物動態は、試験動物(ほんの一例として、モルモット又はチンチラを含む)の正円窓膜又は正円窓膜の近辺に、製剤を注射することによって決定される。決定される期間(1週間にわたって製剤の薬物動態を試験するためであり、例えば、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、及び7日)で、試験動物は安楽死させられ、5mLのサンプルの外リンパ液が試験される。内耳は取り除かれ、コルチコステロイドが存在しているかどうか試験する。コルチコステロイドのレベルは、必要に応じて、他の器官で測定される。さらに、全身のコルチコステロイドのレベルは、試験動物から血液サンプルを引き出すことによって測定される。製剤が聴覚を妨げるかどうかを決定するために、試験動物の聴覚は任意に試験される。
【0245】
代替的に、内耳が提供され(試験動物から除去され)、コルチコステロイドのマイグレーションが測定される。さらにもう1つの実施形態において、正円窓膜のインビトロモデルが提供され、コルチコステロイドのマイグレーションが測定される。
【0246】
(キット/製造品)
この開示はまた、動物の疾患又は障害の症状を予防、処置、改善するためのキットを提供する。このようなキットは、一般的に1以上のコルチコステロイド制御放出性組成物、又は本明細書中に開示される機器、及びキットを使用するための指示書を備える。この開示はまた、内耳障害を有しているか、有していると疑われる、又は発症する危険があるヒトなどの動物の疾患、機能障害、又は障害の症状を処置する、和らげる、弱める、又は改善するための薬物の製造中に1以上のコルチコステロイド制御放出性組成物を使用することを意図している。
【0247】
いくつかの実施形態において、キットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器を収容するため区分化された運搬装置、パッケージ、又は容器を備え、容器の夫々は、本明細書中に記載される方法で使用される別個の要素の一つを含む。適切な容器は、例えば、瓶、バイアル、注射器、及び、試験管を含む。他の実施形態において、容器は、例えば、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0248】
本明細書中で提供される製造品は、包装材料を含む。医薬品を包装するのに使用される包装材料が同様に本明細書中に提示される。例えば、米国特許第5323907号、米国特許第5052558号、及び、米国特許第5033252号を参照のこと。医薬包装材料としては、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、及び、並びに、選択された製剤及び所望のモードによる投与や処置に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に提供される多様なコルチコステロイド製剤組成物は、内耳へのコルチコステロイドの制御放出性投与によって効果を得る任意の疾患、障害、又は疾病の多様な処置として意図されている。
【0249】
いくつかの実施形態において、キットは1以上の追加の容器を含み、夫々の容器は、本明細書中に記載の製剤の使用に関して、商業上の観点及びユーザーの観点から望ましい1以上の様々な材料(任意で濃縮された形態の試薬、及び/又はデバイスなど)を備える。これらの材料の非限定的な例としては、緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、運搬装置、パッケージ、容器、バイアル、及び/又は内容物を記載するチューブラベルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0250】
(例)
例1−熱可逆性ゲルデキサメタゾン製剤又はデバイスの調製
【0252】
2%のデキサメタゾンを含む1回分10gのゲル製剤が、5.00gのTRIS HCl緩衝剤(0.1M)中の1.80gのポロクサマー407(BASF社)を懸濁することによって調製され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。デキサメタゾン(200.0mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(100.0mg)、メチルパラベン(10mg)、及び追加のTRIS HCl緩衝剤(0.1M)(2.89g)が加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。混合液は、使用するまで室温以下で維持される。
【0253】
例2−粘膜付着性及び熱可逆性ゲルデキサメタゾン製剤又はデバイスの調製
【0255】
2%のプレドニゾロンを含む1回分10gのゲル製剤が、2.0mgのカルボポール934P、及び5.00gのTRIS HCl緩衝剤(0.1M)中の1.80gのポロクサマー407(BASF社)を懸濁することによって調製され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。プレドニゾロン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(100.0mg)、メチルパラベン(10mg)、及び追加のTRIS HCl緩衝剤(0.1M)(2.87g)が加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。混合液は、使用するまで室温以下で維持される。
【0256】
例3−シクロデキストリン含有熱可逆性ゲル2.5%デキサメタゾン製剤又はデバイスの調製
【0258】
ポロクサマー407(BASF社)は、TRIS HCl緩衝剤(0.1M)中で懸濁され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。シクロデキストリン溶液及びメチルパラベンが加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。混合液は、使用するまで室温以下で維持される。
【0259】
例4−シクロデキストリン含有粘膜付着性及び熱可逆性ゲルデキサメタゾン製剤又はデバイスの調製
【0261】
カルボポール934P及びポロクサマー407(BASF社)は、TRIS HCl緩衝剤(0.1M)中で懸濁され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。シクロデキストリン溶液及びメチルパラベンが加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。混合液は、使用するまで室温以下で維持される。
【0262】
例5−熱可逆性ゲルデキサメタゾン製剤又は微粉化されたデキサメタゾン粉末を備えるデバイスの調製
【0264】
2%の粉末化されたデキサメタゾン、13.8gのリン酸ナトリウム二塩基二水和物USP(Fisher Scientific.)、及び3.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物(Fisher Scientific.)、及び74mgの塩化ナトリウムUSP(Fisher Scientific.)が、8.2gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解され、pHは1M NaOHを用いて7.4に調整された。緩衝剤は冷却され、1.6gのポロクサマー407(BASF社、約100ppmのBHTを含む)は、混ぜる間、冷却されたPBS溶液中へ振り入れられ、溶液はポロクサマーが溶解するまで混ぜられた。ポロクサマーは、33mm PVDF 0.22μm無菌シリンジフィルター(Millipore社)を用いて無菌ろ過され、無菌環境下において、2mL無菌ガラスバイアル(Wheaton)へ送られた。バイアルは無菌ブチルゴムストッパー(Kimble)を用いて閉められ、13mmAlシール(Kimble)を用いて圧着密閉された。20mgの微粉化されたデキサメタゾン(Spectrum chemicals)は、区画化された清潔な脱発熱化されたバイアルに置かれた。バイアルは、無菌ブチルゴムストッパー(Kimble)を用いて閉められ、13mmAlシール(Kimble)を用いて圧着密閉され、バイアルは、7時間、140℃で乾熱滅菌(Fisher Scientific Isotemp oven)された。本明細書中に記載される実験用投与の前に、1mLの冷却ポロクサマー溶液は、1mL無菌シリンジに取り付けられた21G注射針を使用して、20mgの無菌微粉化デキサメタゾンを含むバイアルに送られ、懸濁が確実に均質になるように振ってよく混ぜられ懸濁された。その後、懸濁液は、21Gシリンジを用いて回収され、注射針は、投与用の27G注射針へ取り替えられた。
【0265】
例6−熱可逆性ゲル微粉化プレドニゾン製剤又は浸透促進剤を備えるデバイスの調製
【0267】
2%の微粉化されたプレドニゾンを含む1回分10gのゲル製剤が、5.00gのTRIS HCl緩衝剤(0.1M)中の1.80gのポロクサマー407(BASF社)を懸濁することによって調製され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。プレドニゾロン(200.0mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(100.0mg)、メチルパラベン(10mg)、及び追加のTRIS HCl緩衝剤(0.1M)(2.89g)が加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。混合液は、使用するまで室温以下で維持される。
【0268】
例67−PBS緩衝剤中のオートクレーブされた17%ポロクサマー407NF/2%デキサメタゾンリン酸塩(DSP)の分解産物に対する、pHの効果
【0269】
17%ポロクサマー407/2%デキサメタゾンリン酸塩(DSP)の保存液が、351.4gの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、302.1gのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、122.1mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)、及び2.062gのデキサメタゾンリン酸塩(DSP)を、79.3gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解させることにより調製された。溶液は、氷冷槽中で冷却され、その後17.05gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)が、混ぜる間、冷却された溶液中へ振り入れられた。混合液は、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混ぜられた。この溶液のpHが測定される。
【0270】
pH5.3のPBS中の17%ポロクサマー407/2%デキサメタゾン(DSP)
上記溶液の一定分量(約30mL)を取り出し、1M HClの追加によりpHを5.3に調整する。
【0271】
pH8.0のPBS中の17%ポロクサマー407/2%デキサメタゾン(DSP)
上記保存液の一定分量(約30mL)を取り出し、1M HClの追加によりpHを8.0に調整する。
【0272】
PBS緩衝剤(pH7.3)が、805.5gの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、606mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、247mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)を溶解させることで調製され、その後、無菌ろ過された蒸留水を用いて200gに定量化(QS)される。
【0273】
PBS pH7.3中のデキサメタゾンリン酸塩(DSP)の2%溶液が、PBS緩衝剤中の206mgのデキサメタゾンリン酸塩(DSP)を溶解させることで調製され、その後、PBS緩衝剤を用いて10gに定量化(QS)される。
【0274】
1mLのサンプルが、個々に、3mLねじ式キャップガラスバイアル(ゴム内張付き)中に配され、堅く閉められる。バイアルは、Market Forge‐sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)に配され、250°Fで15分間、滅菌される。 オートクレーブ後、サンプルは、室温まで冷却するために放置されその後、冷蔵庫に置かれた。サンプルは、冷却している間、バイアルを混ぜることによって均質化された。
【0275】
出現(例えば、変色及び/又は沈殿)が、観察され、記録された。ポロクサマーを含んでいるサンプルが、変色の兆候を示さなかったが、一方で、PBS内にある2%のDSPだけが、変色(うすい黄色)と、幾つかの沈殿と、を示した。ポロクサマーを含んでいるサンプルの内、沈殿はpH5.3のサンプルに認められた。
【0276】
HPLC解析は、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30乃至80のアセトニトリル勾配(1乃至10分)を用いる、Luna C18(2)(3μm、100Å、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて、実行された。主なピークは、下記の表に記録されている。サンプルは、サンプルの30μLを採ることによって希釈化され、1:1アセトニトリル水混合液の1.5mLで溶解された。オートクレーブ前のサンプルの純度は、常に99%以上であった。
【0277】
表1 デキサメタゾンリン酸ナトリウム(DSP)を含んでいるサンプルをオートクレーブした後に認められた特性
【0279】
オートクレーブ前の純度は、全てのサンプルで99%以上であった。
【0280】
例8−PBS内の、17%ポロクサマー407NFと2%デキサメタゾンリン酸塩(DSP)との、放出特性と粘性とに対する、オートクレーブ効果
【0281】
例6(オートクレーブされたものと、されていないもの)からのサンプルの一定分量は、ゲルの性質による加熱滅菌法の影響を評価するため、放出特性と粘性との測定値が評価された。
【0282】
溶解は、Snapwell(0.4μmの孔サイズの、6.5mm直径のポリカーボネート膜)内で、37℃で実行された。0.2mLのゲルが、snapwellへと置かれ、硬化させるために放置され、その次に、0.5mLが、リザーバに置かれ、70rpmでLabline orbit shakerを用いて振り混ぜられた。サンプルは、1時間毎に採取された(0.1mLが取り除かれ、暖かい緩衝剤に交換された)。外部の校正曲線に対して、サンプルは、チオシアン酸コバルト法を用いて、624nmのUVによって、ポロクサマー濃度が解析された。手短に説明すると、20μLのサンプルは、1980μLの15mMチオシアン酸コバルト溶液に混合させたものであり、吸収率は、分光光度計(Thermo Scientific)であるEvolution 160UV/Vを用いて、625nmで測定された。
【0283】
放出されたデキサメタゾンリン酸塩(DSP)は、Korsmeyer−Peppasの式に当てはめられた。
【0285】
Qは、時間tで放出された耳用薬剤の量であり、Qαは、耳用薬剤の総放出量であり、kは、n位の放出定数であり、nは、溶解機構に関する無次元数であり、bは、n=1が侵食制御機構を特徴付ける、初期バースト放出機構を特徴付けている、軸切片(axis intercept)である。平均溶解時間(MDT)は、薬物分子が放出される前にマトリックス内にある、異なる期間の合計を、総分子量で割ったものであり、次式で算出される。
【0287】
粘性物の測定は、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃から温度に勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s−1)0.08rpmで回転されるCPE−51スピンドルを備えているBrokfield viscometer RVDV−II+Pを用いて、実行された。Tゲルは、粘性の増加がソルゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定められている。
【0288】
表2.PBS内の、17%ポロクサマー407NFと2%デキサメタゾンリン酸ナトリウム(DSP)との、放出特性と粘性とに対する、オートクレーブ効果
【0290】
最大沈殿量は、0.31s−1のずり速度での(37℃までの)ゲル状態にある粘性の最大出現値である。
結果は、PBS内の、17%ポロクサマー407NFと2%デキサメタゾンリン酸ナトリウム(DSP)をオートクレーブした後の粘性と放出特性にあまり効果の無いことを示している。
【0291】
例9−加熱滅菌(オートクレーブ)後の2%デキサメタゾンリン酸塩(DSP)と17%ポロクサマー407NFとを含んでいる製剤の、分解生成物と粘性との、二次ポリマーの追加による効果
【0292】
溶液A:PBS緩衝剤内にカルボキシルメチルセルロース(CMC)を含んでいるpH7. 0の溶液は、178.35mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、300.5mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)、126.6mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)を78.4の無菌ろ過蒸留水で溶解することによって調製された。その次に、1gのBlanose 7M65 CMC(Hercules、5450cP@2%の粘性)が緩衝剤内へと振り入れられ、溶解を助けるため加熱され、そして、溶液は、その後、冷却された。
【0293】
PBS緩衝剤内に、17%ポロクサマー407NFと1%CMCと2%デキサメタゾンリン酸ナトリウム(DSP)とを備えている、pH7.0の溶液は、氷冷水浴槽内で8.1gの溶液Aを冷却し、その次に、205mgのデキサメタゾンリン酸ナトリウム(DSP)を加え、次に、混ぜる、ことによって作られた。1.74gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)は、混ぜられている間に、冷溶液内に振り入れられる。混合液は、更に、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混ぜられる。
【0294】
前記サンプルの2mLは、3mLのねじ口ガラスバイアル(ゴム内張付き)内に置かれ、きつく閉められた。バイアルは、Market Forge−sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置かれ、25分間250°Fで滅菌された。オートクレーブ後、サンプルは、室温になるまで放置され、その後、冷蔵庫に置かれた。サンプルは、バイアルが冷却されている間、混ぜることによって均質化された。
【0295】
オートクーブ後、何の沈殿又は変色も、認められなかった。HPLC解析は、例6に記載されたように実行された。デキサメタゾン生成物の加水分解に起因して1%以下の分解生成物が、検出された。即ち、製剤は、オートクレーブに安定なものであった。
【0296】
粘性測定が、例7に記載されたように実行された。結果は、オートクレーブがゲルの粘性、又はTゲルの温度にほとんど影響を与えないことを、示した。全体に少ない不純物が、対照サンプル(PBS内の2%のDSP)に比べて、製剤を含んでいるポロクサマー内に、認められた。
【0297】
溶解テストは、例7に記載されたように実行された。結果は、3.2時間のMDTに比べて、11.9時間のMDTに、CMCを含んでいない製剤を、示した。CMC又は二次ポリマーの追加は、デキサメタゾンの放出率を減少する(即ち、MDTを増加する)、拡散障壁を導入した。
【0298】
例10−加熱滅菌(オートクレーブ)後のポロクサマー407NFを含んでいる製剤の、分解生成物への緩衝剤タイプによる効果
【0299】
TRIS緩衝剤は、377.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scintific)と、602.9mgのTromethamine(Sigma Chemical Co.)と、を溶解し、その後、1Mの塩化水素によってpH7.4に調節された、無菌ろ過蒸留水(DI water)によって100gに定量化(QS)された。
【0300】
TRIS緩衝剤内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存液
【0301】
15gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を混ぜている間、重さ45gのTRIS緩衝剤は、氷冷浴槽内で冷やされ、その後、緩衝剤へと振り入れられた。混合液は、更に、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混ぜられた。
【0302】
PBS緩衝剤内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存液(pH7.3)
【0303】
704mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)と、601.2mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)と、242.7mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)とを、140.4gの無菌ろ過蒸留水で溶解した。溶液は、氷冷水浴槽で冷却され、その後、50gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)が、混ぜている間に、冷溶液内に振り入れられた。混合液は、ポロクサマーが完全に溶解し、半透明な溶液が得られるまで、更に、混ぜられた。この溶液で得られたpHは、7.3と測定された。
【0304】
一連の製剤は、前記保存液によって調製された。
Spectrum chemicalからの、デキサメタゾンリン酸塩(DSP)と微粒子化したデキサメタゾンUSPとが、全ての実験に用いられた。
【0305】
1mLのサンプルは、3mLのねじ口ガラスバイアル(ゴム内張付き)内に置かれ、きつく閉められた。バイアルは、Market Forge−sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置かれ、25分間250°Fで滅菌された。オートクレーブした後、サンプルは、室温になるまで放置された。バイアルは、冷蔵庫に置かれ、サンプルを均質化するため、バイアルが冷却されている間、混ぜられた。
【0306】
HPLC解析は、例6に記載されたように実行された。TRIS緩衝剤とPBS緩衝剤と内での製剤の安定性が、比較された。
【0307】
表3.製剤を含む、デキサメタゾンとデキサメタゾンリン酸塩の分解の、緩衝剤のタイプ による効果
【0309】
粘性の測定は、例7に記載したように実行された。
【0310】
結果は、オートクレーブの間、加水分解を減少させるために、緩衝剤は、評価温度で7乃至8の範囲のpHを維持する必要があることを示した。増加された薬物加水分解は、PBS緩衝剤よりもTRIS緩衝剤内のほうで認められた(表3)。他の分解生成物の発生は、本願に記載されている(例えばポロクサマー407)高分子添加物の使用によって減少された。分解生成物の減少は、ポロクサマー407の無いものに比べて20%ポロクサマー407を含んでいる製剤で認められた(表7)。
【0311】
懸濁された微粒子化されたデキサメタゾンを含んでいる製剤は、それらの溶液の対応物よりも、オートクレーブについて高い安定性を有している。
【0313】
デキサメタゾンとデキサメタゾンリン酸ナトリウム(DSP)との(1:1の比率)組み合わせは、本明細書に記載した手順を用いるパルス状の製剤放出を行なうのに用いられた。デキサメタゾンの20%の送達可能な投与量は、βシクロデキストリンの助けによって、例7の17%ポロクサマー溶液内で可溶化された。残り80%の送達可能なデキサメタゾンは、その後、混合液に加えられ、採取製剤は、本明細書に記載された任意の手順を用いて調整された。
【0314】
デキサメタゾンを備えている製剤のパルス状放出は、本明細書に記載の手順とサンプルとによって調整され、パルス状の放出特性を定めるため、本明細書に記載された手順を用いてテストされた。
【0315】
例12−PBS内の、17%ポロクサマー407と2%DSPと78ppmのEvans blueの調製
【0316】
PBS緩衝剤内のEvans Blueの保存溶液(5.9mg/mL)は、5.9mgのEvans Blue(Sigma Chemical Co)を、(例えば例61からの)1mLのPBS緩衝剤で溶解することによって調製された。
【0317】
例8からのPBS緩衝剤内に、25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存溶液が、研究に使用された。適切な量のDSPが、2%のDSPを備えている製剤を準備するために、例8からの保存溶液に加えられた(表4)。
【0318】
表4 例9からのPBS内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存溶液が、研究に使用された。
【0320】
前記製剤は、本明細書に記載された手順によってモルモットの中耳に投与され、接触しているゲルへの製剤能力と、ゲルの位置とは、投与後、そして、投与後24時間で確認された。
【0321】
例13−可視化染色を伴うものと、伴わないものと、についてのポロクサマー407製剤の最終滅菌
【0322】
pH7.3のリン酸塩緩衝剤内の17%ポロクサマー407と2%DSP
709mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)と、742mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物USP(Fisher Scientific)と、251.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)と、適切な量のDSPと、が158.1gの無菌ろ過蒸留水によって溶解された。溶液は、氷冷水浴槽内で冷却され、その後、34.13gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)は、混ぜられている間、冷溶液内に振り入れられた。混合液は、ポロクサマーが完全に溶解し、半透明の溶液が得られるまで、更に、混ぜられた。この溶液のpHは、7.3であった。
【0323】
リン酸塩緩衝剤内の17%ポロクサマー407と2%DSPと59ppmのEvans blue
17%ポロクサマー407と2%DSPとの入っているリン酸塩緩衝剤の2mLを採り、5.9mg/mLのEvans blue(Sigma−Aldrich chemical Co)溶液の入っているPBS緩衝剤の2mLを加えた。
【0324】
リン酸塩内の25%ポロクサマー407と2%DSP
330.5mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)と、334.5mgのリン酸ナトリウム二塩基二水和物USP(Fisher Scientific)と、125.9mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)と、2.01gのデキサメタゾンリン酸ナトリウムUSP(Spectrum Chemicals)とを、70.5gの無菌ろ過蒸留水で溶解した。
【0325】
溶液は、氷冷水浴槽内で冷却され、その後、25.1gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)は、混ぜられている間、冷溶液内に振り入れられた。混合液は、ポロクサマーが完全に溶解し、半透明の溶液が得られるまで、更に、混ぜられた。この溶液のpHは、7.3であった。
【0326】
リン酸塩緩衝剤内の25%ポロクサマー407と2%DSPと59ppmのEvans blue
25%ポロクサマー407と2%DSPとの入っているリン酸塩緩衝剤の2mLを採り、5.9mg/mLのEvans blue(Sigma−Aldrich chemical Co)溶液の入っているPBS緩衝剤の2mLを加えた。
【0327】
2mLの製剤を、2mLのガラスバイアル(Wheaton serum glass vial)に置き、13mm butyl str(kimble stoppers)によって密閉し、アルミニウムシールによって圧着させた。バイアルは、Market Forge−sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置かれ、25分間250°Fで滅菌された。オートクレーブした後、サンプルは、室温になるまで放置され、その後、冷蔵庫に置かれた。バイアルは、冷蔵庫に置かれ、サンプルを均質化するために冷却されている間、混ぜられた。オートクレーブ後のサンプル変色又は沈殿が、記録された。
【0328】
HPLC解析が、例6に記載されたように実行された。
【0329】
表5 可視化色素を含むもの及び含まないデキサメサゾンリン酸ナトリウムを含む製剤の精製におけるオートクレーブの効果
【0331】
粘度の測定は例7に記載されたとおりに行われる。結果は、可視化色素を含む製剤のオートクレーブが製品の変質及び製剤の粘度への影響を及ぼさなかったことを示した。
【0332】
25%ポロクサマー407製剤に対する(例7に記載のとおりに決定され、245nmの紫外線によって放出されたデキサメサゾンリン酸塩の量を測定する)平均溶解時間を測定した結果、5.6時間であり、17%ポロクサマー407製剤に対しては3.2時間を示した。
【0333】
例14−放出プロファイルのインビトロ比較
溶解はスナップウェル(0.4μmの大きさの孔をもつ直径6.5mmのポリカーボネートの膜)において37℃で行われ、本明細書に記載された0.2ミリリットルのゲル製剤がスナップウェルに配置され、放置されて硬化し、次いで、0.5ミリリットルの緩衝剤がリザーバー内に配置され、ラブリンオービットシェーカーを用いて70rpmで振動させる。サンプルは1時間毎に採取される(0.1ミリリットルが取り除かれ、緩衝剤と置換される)。サンプルは、外部較正標準曲線に向けて245nmの紫外線によってデキサメサゾン濃度で分析される。プルロニック(商品名)濃度はチオシアン酸コバルト法を用いて624nmで分析される。%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)の相対ランクオーダーが決定される。製剤平均溶解時間(MDT)とP407濃度との間の線形的な関係はデキサメサゾンが、ポリマーゲル(ポロクサマー)の侵食によって放出されるのであり、拡散を介さないことを示している。非線形の関係は拡散及び/又はポリマーゲルの変質の組み合わせを介したデキサメサゾンの放出を示す。
【0334】
代替的に、サンプルは、リー シン−ユーの論文:「アクタ ファーマシューティカ シニア、2008年、43(2)、208−203」に記載された方法を用いて分析され、%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)の相対ランクオーダーが決定される。
【0335】
図1はポロクサマー407の濃度を変化させることによるデキサメサゾン製剤の生体外放出プロファイルを示している。
図2は製剤の平均溶解時間(MDT)とP407濃度の間のほぼ線形的な関係(1:1の相関)を示している。結果は、ポリマーゲル(ポロクサマー)の侵食によって放出されるのであり、拡散を介さないことを示している。
【0336】
例15−ゲル化温度の生体外比較
ポロクサマー407のゲル化温度及び粘度におけるポロクサマー188及びデキサメサゾンの効果は、ゲル化温度を操作する目的で評価される。
【0337】
PBS緩衝剤(例9から)における25%ポロクサマー407保存液と例6からのPBS保存液が使用される。BASF社製のポロクサマー188NF(商品名)が用いられる。
【0338】
表6 ポロクサマー407/ポロクサマー188を含むサンプルの調製
【0340】
20%ポロクサマー407/10%ポロクサマー188の平均溶解時間(方法は例7記載)2.2時間と測定され、10%ポロクサマー407/5%ポロクサマー188は2.6時間であることを示した。粘度は例7に記載された手順を用いて決定される。オートクレーブは、ポロクサマー188を含む製剤の粘度又はT
gelに影響を及ぼさなかった。
【0341】
得られたデータに式が適合され、F127/F68混合物(17〜25%F127と0〜10%F68の間)のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(時間)を見積もるために利用され得る。
T
gel=−1.8(%F127)+1.3(%F68)+53
【0342】
得られたデータに式が適合され、例12と14で得られた結果を用いて、F127/F68混合物(17〜25%F127と0〜10%F68の間)のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(時間)を見積もるために利用され得る。
MDT=−0.2(T
gel)+8
【0343】
例16−滅菌ろ過のための温度範囲の決定
低温での粘度は、滅菌ろ過が目詰まりの可能性を減少させることを起こす必要がある温度範囲を導くことを助けるために測定される。
【0344】
粘度測定は、1、5及び10rpm(剪断速度7.5.37.5及び75s
−1)で、CPE−40のスピンドルを回転させるブルックフィールド粘度計RVDV−II+Pを用い、ジャケット水温度制御ユニット(温度勾配は1.6℃/分で10〜25℃)を取り付けて行う。
【0345】
17%プルロニックP407のゲルT
gelは耳用薬剤の濃度を増加させる関数として決定される。17%プルロニック製剤におけるT
gelの増加は、
ΔT
gel=0.93[%耳用薬剤]
によって見積もられる。
表7 製造/ろ過条件において可能な製剤の粘度
【0347】
※粘度は剪断速度37.5s
-1で測定した
【0348】
結果は、明細書において記載された製剤の滅菌ろ過が約19℃で実施され得ることを示している。
【0349】
例17−製造条件の決定
17%P407プラセボ8リットルのバッチが製造され、製造/ろ過条件を評価した。プラセボは、3ガロンのSS圧力容器内に蒸留水6.4リットルを充填して製造され、一晩冷蔵庫内に放置して冷ます。翌朝、タンクが取り出され(水温5℃、RT18℃)、塩化ナトリウム48g、二塩基二水和物リン酸ナトリウム29.6g、一塩基一水和物リン酸ナトリウム10gが添加され、オーバーヘッドミキサ(IKARW20(商品名)1720回転)によって溶解された。半時間後、緩衝剤が溶解すると(溶液温度8℃、RT18℃)、ポロクサマー407NF(スペクトル・ケミカル社)1.36kgが、15分間隔で緩衝剤の溶液中にゆっくりと散水され(溶液温度12℃、RT18℃)、ついで速度が2430rpmに増速された。さらに1時間混合後、混合速度が1062rpmに減速された(完全溶解)。
【0350】
室温は溶液の温度を19度で保持するために、25℃以下に維持される。溶液の温度は、容器の冷蔵/冷却を要することなく、製造開始の3時間まで19度以下に保持される。
【0351】
表面面積17.3cm
2の三つの異なるSartoscale(商品名)(Sartorius Stedim社)のフィルターが溶液の圧力20psi、温度14℃で評価された。
1)Sartopore(登録商標)2、0.2μm5445307HS−FF(PES)、流速16mL/min
2)Sartobran(登録商標)P、0.2μm5235307HS−FF(セルロースエステル)、流速12mL/min
3)Sartopore(登録商標)2XLI、0.2μm5445307IS−FF(PES)、流速15mL/min
【0352】
Sartopore(登録商標)2のフィルター5441307H4−SSが用いられ、圧力16psiで0.015m
2の表面積を有する0.45μm、0.2μmのSartopore(登録商標)2の150sterile capsule(商品名)Sartorius Stedim社)を用いてろ過を行った。流速を16psi、約100mL/minで測定したが流速には変化はなく、温度は6.5〜14℃の範囲に維持された。溶液の圧力降下と温度上昇が溶液の粘度上昇による流速の増加を引き起こした。工程中、溶液の変質が監視される。
【0353】
表8 Sartopore(登録商標)2の0.2μmフィルターを16psiの圧力で用いた、6.5乃至14℃の溶液温度範囲での17%ポロクサマー407プラセボの予測ろ過時間
【0355】
粘度、T
gel及びUV/Vis吸収が、ろ過評価の前にチェックされた。Pluronic(登録商標)のUV/Visスペクトルは、Evolution160UV/Vis(商品名)(Thermo Scientific社)によって得られた。250乃至300nmにおけるピークは、原材料(ポロクサマー)において存在するBHTスタビライザによる。
【0356】
上記工程は、17%P407製剤の製造に適用され、部屋の状況の温度分析を含んでいる。約19℃の温度は製造中の容器の冷却のコストを低減する。いくつかの場合において、ジャケット付きの容器が、さらなる溶液の温度制御のために用いられ、製造の諸問題を解決している。
【0357】
例18−オートクレーブされて微粒子化されたサンプルからのデキサメサゾンの遊離
TRIS緩衝剤中の17%P407/1.5%デキサメサゾン:塩化ナトリウム250.8mg(Fisher Scientific社)及びトロメタミン302,4mg(Sigma Chemical社)が滅菌ろ過された蒸留水39.3g中で溶解され、pHが1モルの塩酸で7.4で調整された。上記溶液4.9が用いられ、微粒子化されたデキサメサゾンUSP(商品名)(Spectrum Scientific社)75.5mgが懸濁され、良好に分散された。製剤2mLが2mLのガラス製バイアル(Wheaton serum glass vial社)に移され、13mmのブチルスチレン(kimble stoppers)によって封止され、13mmのアルミニウム・シールで圧着された。マーケット フォージ社の滅菌オートクレーブにバイアルを設置し(設定、緩慢な流速)、華氏250℃で25分間滅菌した。オートクレーブ後、サンプルを放置して室温まで冷ました。バイアルは冷蔵庫内に置かれ、混合し当該サンプルを均質化するために冷ました。オートクレーブ後のサンプル溶解又は沈殿が記録された。
【0358】
溶解はスナップウェル(孔の大きさが0.4μmで、直径6.5mmのポリカーボネート膜)により、37℃で行った。0.2mLのゲルがスナップウェルに置かれて、放置して硬化し、次いで、0.5mLのPBS緩衝剤がリザーバに置かれ、ラブリンオービットシェーカーを用いて70rpmで振動させる。サンプルは1時間毎に採取される[0.1ミリリットルが取り除かれ、デキサメサゾン溶解性を促進するために、2%PEG−40水素添加されたひまし油(BASF社)を含む暖かい緩衝剤と置換される]。サンプルは外部較正標準曲線に対して245nmの紫外線によるデキサメサゾン濃度のために分析された。遊離率が、本明細書において開示された他の製剤と比較された。MDT時間が各サンプルについて算出される。
【0359】
17%ポロクサマー系におけるデキサメサゾンの可溶化は、エッペンドルフ遠心器5424(商品名)を用いて、10分間15000rpmでサンプルを遠心処理後、上澄み中のデキサメサゾンの濃度を測定することによって評価した。上澄み中のデキサメサゾン濃度は、外部較正標準曲線に対して245nmの紫外線によって測定された。
図3は17%P407を含む種々のステロイド系製剤の遊離プロファイルを示している。表17はTRIS緩衝剤と17%P407溶液におけるデキサメサゾンの可溶性を記載している。
【0360】
表9 TRIS緩衝剤と17%P407溶液におけるデキサメサゾンの可溶性
【0362】
例19−カルボキルセルロースナトリウムを含む製剤の遊離率又はMDT及び粘度
17%ポロクサマー407/2%DSP/1%CMC(Hercules社のBlanose(登録商標)7M):PBS緩衝剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)溶液(pH7.0)が、滅菌ろ過された蒸留水78.1g中に、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)205.6mg、一塩基リン酸塩二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)372.1mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)106.2mgを溶解させることによって調製された。溶解を容易にするために、1gのBlanose(登録商標)7MCMC(Hercules社、粘度533cP@2%)が、緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)が冷却された溶液中に散布され、同時に混合した。PBS緩衝剤中の17%ポロクサマー407NF/1%CMC/2%DSPを含む製剤が、上記溶液9.8gにデキサメサゾン205mgを添加し/溶解して、すべてのデキサメサゾンが完全に溶解するまで混合して製造された。この溶液のpHは7.0であった。
【0363】
17%ポロクサマー407/2%DSP/0.5%CMC(Blanose(登録商標)7M65):PBS緩衝剤のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.2)が、滅菌ろ過された蒸留水78.7g中に、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)257mg、二塩基二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)375mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)108gを溶解させることによって調製された。溶解を容易にするために、0.502gのBlanose(登録商標)7M65CMC(Hercules社、粘度5600cP@2%)が緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)17.06gが冷却された溶液中に散布され、同時に混合した。PBS緩衝剤中の17%ポロクサマー407NF/1%CMC/2%DSP溶液が、上記溶液9.8gにデキサメサゾン201mgを添加し/溶解して、すべてのデキサメサゾンが完全に溶解するまで混合して製造された。この溶液のpHは7.2であった。
【0364】
17%ポロクサマー407/2%DSP/0.5%CMC(Blanose(登録商標)7H9):PBS緩衝剤のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.3)が、滅菌ろ過された蒸留水78.6g中に、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)256.5mg、二塩基二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)374mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)107mgを溶解させることによって調製され、次いで、溶解を容易にするために、0.502gのBlanose(登録商標)7H9CMC(Hercules社、粘度5600cP@1%)が緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)17.03gが冷却された溶液中に散布され、同時に混合した。PBS緩衝剤中の17%ポロクサマー407NF/1%CMC/2%DSP溶液が、上記溶液9.8gにデキサメサゾン203mgを添加し/溶解して、すべてのデキサメサゾンが完全に溶解するまで混合して、製造された。この溶液のpHは7.3であった。
【0365】
粘度測定は、例7に記載されたとおりに行った。溶解は例7に記載されたとおりに行った。
【0366】
図4は、平均溶解時間(MDT)と製剤の見かけの粘度との相関関係を示す。遊離率は、二次ポリマーの取り込みによって調節される。二次ポリマーのグレード及び濃度は市場で入手できる水溶性ポリマーに対して
図5及び6の以下に示されたようなグラフを使用することによって促進される。
例20−マイクロデキサメサゾンパウダーの乾燥滅菌
【0367】
微粒子化したデキサメタゾン粉末10mg(スペクトルロット(Spectrum lot)XD0385)を2mLのガラス製の小瓶に入れ、13mmのブチルstrゴム栓(Kimble)で封をし、7〜11時間、異なる温度で乾燥器の中に入れた。
【0368】
HPCL分析は、溶媒Bの30−95%(溶媒A:35%メタノール、35%の水、30%の酢酸緩衝剤、溶媒B:70%のメタノール、30%の酢酸緩衝剤、pH4)の勾配(1−6分)、その後の11分間の均一濃度(95%の溶媒B)を用いるLuna18(2)(3μm、100Å、250x4.6mmカラム)が備わったアジレント1200を用いて、合計で22分間行われた。サンプルはエタノール中で溶解され、分析された。微粒子化したデキサメタゾンの、最大138℃の温度での乾式加熱殺菌は、微粒子化したデキサメタゾンの粒径分布に影響を与えなかった。HPCL分析は、乾式加熱殺菌され、微粒子化したデキサメタゾンの99%の純度を示した。
【0369】
例21−正円窓膜上への増強した粘性コルチコステロイド製剤の適用
例1に記載の製剤が調整され、15ゲージのルアーロック(luer lock)の使い捨て注射針が付いた5mlのシリコン処理された注射筒に取り込まれる。リドカインは鼓膜に対して局所的に適用され、中耳の空洞を可視化するために小さい切込みが入れられる。針先は正円窓膜上へ導かれ、抗炎症性コルチコステロイド製剤が、正円窓膜上に直接適用された。
【0370】
例22−モルモットにおけるコルチコステロイド製剤の鼓室内注射のインビボでの検査
21匹のモルモットのコホート(チャールズ・リバー(Charles River)、重さ200〜300gの雌)に2%DSP製剤20〜120μLを鼓室内注射した。
図7は、鼓室内注射後5日までのモルモットの耳におけるゲルの遷移を示す。注射量を増加させて、最大で90μLまでの注射量に対してゲル貯留を増加させた。しかしながら、120μLの注射量では、少量のゲル貯留を示した。
【0371】
21匹のモルモットのコホート(チャールズ・リバー、重さ200〜300gの雌)に、本明細書に記載の異なるP407−DSP製剤50μLを鼓室内に注射した。P407−DSP製剤は0から6%のDSPを含む。
図8A及び8Bは、各々の製剤のゲル除去の時間経過を示す。6%のDSP製剤のゲル除去の時間経過は、DSPのより低い濃度(それぞれ0%、0.6%、及び2%)を含む他の製剤よりも早かった(さらに短い平均溶解時間(MDT))。更に、P407の濃度が、6%のDSP製剤(6%Dex−P(*))に関して、17%から19%まで増加すると、
図8Aにおいて示されるように、さらに迅速なゲル除去が観察された。したがって、本明細書に記載される製剤におけるコルチコステロイドの注射量と濃度が試験されることで、前臨床及び臨床研究の最適パラメータを決定する。高濃度のDSPを備える鼓室内製剤は、さらに低濃度のDSPを備える鼓室内製剤とは異なる放出特性を備えることが観察された。
【0372】
例23−インビボでの放出運動学
21匹のモルモットのコホート(チャールズ・リバー、重さ200〜300gの雌)は、280mOsm/kgで緩衝化されるとともに製剤の1.5重量%〜4.5重量%デキサメタゾンを含む50μLの17%プルロニックF−127製剤で鼓室内注射された。これらの動物は1日目に投与された。
図9は、外リンパの分析に基づいて試験された製剤用の放出プロファイルを示す。1.5%のデキサメタゾンのレジメンにおいて、7〜10日目の曝露レベルは、約3.5日の平均溶解時間で、最高血中濃度の約10%である。4.5%のデキサメタゾンのレジメンにおいて、曝露レベルは、計画された18日間以上の平均溶解時間で、1日目に見られたレベルと同じか又はそれよりも高いレベルで、少なくとも10日間維持された。
【0373】
例24−AIED動物モデルにおけるコルチコステロイド製剤の評価
(方法及び材料)
免疫反応の誘発
20〜24gの重さの、雌の白色種の国立衛生試験所のスイスマウス(Harlan Sprague―Dawley, Inc., Indianapolis, Inc.)が用いられる。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH;Pacific Biomarine Supply CO., Venice, CA)は、リン酸緩衝された生理食塩水(PBS)(pH6.4)中で懸濁され、PBSに対して無菌的に透析され、二度遠心分離が行われる。沈殿物(KLHに関連)はPBS中で溶解し、動物の背中の皮下に注射される(フロイント完全アジュバント中で乳化した0.2mg)。追加免疫(フロイント完全アジュバント中の0.2mgのKLH)を動物に与え、その後、蝸牛カプセル(cochlear capsule)を通るよう空けられた微小空孔を介して、10週後に5μlのPBS(pH6.4)中の0.1mgのKLHを注射する。蝸牛には手術用顕微鏡及び無菌操作を用いて近づけた。耳後部の切開を行い、蝸牛の基底回転の突起部、アブミ骨の動脈、及び、正円窓ニッチがよく見えるようにするため、水疱に穴が開けられる。アブミ骨の動脈は焼灼されて取り除かれ、蝸牛カプセルを通って外側基底回転の鼓室階に至る25μmの穴が開けられる。KLH又はPBS対照群は、プラスチック管と一体になったハミルトンシリンジを用いて、抗原又は対照群で満たされたガラス製のマイクロピペットへ注入される。穴は注入後に骨ろうで埋められ、余分な水分は除かれる。動物の片方の蝸牛のみがKLHで処置される。
【0374】
(処置)
KLH及び対照群マウスは、2つのグループへと分類される(それぞれのグループにおいてn=10)。デキサメタゾンを含む例1のコルチコステロイド製剤は、動物の1つのグループの正円窓膜に適用される。デキサメタゾンを含まない対照群製剤は、第2のグループに適用される。デキサメタゾン及び対照群製剤は、最初の適用から3日後に再度適用される。動物は7日目の処置後に殺処分する。
【0375】
(結果の分析)
電気生理学検査
各々の動物の、各々の耳へのクリック刺激に対する、聴覚脳幹反応閾値(ABR)の聴覚閾値が最初に測定され、実験手順の1週間後にも測定される。動物は、加温パッド上の単層の聴覚ブース(acoustic booth)(Industrial Acoustic Co, Bronx, NY, USA)内に入れられる。皮下電極(Astro−Med, Inc. Crass Instrument Division, West Waewick, RI, USA)が、頂点(探査電極)、乳様突起(照合)、及び、後肢(基底)に挿入された。クリック刺激(0.1ミリ秒)はコンピュータで処理され、外側の聴覚道に配置するため、耳鏡に取り付けられたBeyer DT 48,200オームスピーカーへ送達される。記録されたABRは、電池式のプリアンプにより増幅されるとともにデジタル化され、タッカーデービステクノロジーABR記録システムへ挿入される。この記録システムは、コンピュータに刺激、記録、及び、平均関数を提供する(Tucker Davis Technology, Gainesville, FL, USA)。続いて、減少する振幅刺激は動物に対する5-dB段階において表され、記録された刺激固定活性(stimulus―locked activity)は平均化され(n=512)、表示される。閾値は、明白に検出可能な反応がない記録と、明確に識別可能な反応を備える記録との間の刺激レベルとして定義される。
【0376】
(組織化学分析)
動物に麻酔をかけ、ヘパリン化された温生理食塩水の心臓内灌流、続いておよそ40mlの過ヨード酸リジン−パラホルムアルデヒド(4%のパラホルムアルデヒド終末濃度)固定剤で殺処分する。右側頭骨がすぐに取り除かれ、緩衝化した5%のエチレンジアミンテトラ酢酸(pH7.2)で14日間(4℃)石灰除去される。石灰除去の後、側頭骨は、
濃度を増加させた(50%、75%、100%)最適な切削温度(OCT)化合物(Tissue―Tek, Miles Inc., Elkhart, IN)に連続して浸漬させ、瞬間凍結し(snap―frozen)(−70℃)、蝸牛輪に対してクリオスタット分割した(4μm)。クリオスタットの切片は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)汚染及び免疫組織化学分析用に集められる。
【0377】
炎症の重症度は、鼓室階の細胞湿潤の量により評価され、無作為な点数が各々の蝸牛に与えられる。0点は炎症がないことを示し、5点は全ての蝸牛の回転が炎症細胞の著しい湿潤を備えたことを示す。
【0378】
例25−中耳炎動物モデルにおけるコルチコステロイド製剤の評価
中耳炎の誘発
体重が400〜600gで、正常な中耳を備え、耳鏡検査法及びティンパノメトリー検査により確認された健康な成体のチンチラが、このような研究に用いられる。接種材料が耳管から流れ出るのを防ぐため、耳管閉塞が予防接種の24時間前に行われる。4−h−対数期での1ミリメートルの3型S プネウモニア株(S.pneumoniae strain)(単位を形成するおよそ40の個体(CFU)を含む)は、チンチラの両中耳鼓室下の水疱中へ直接入れられる。対照群マウスは、1ミリメートルの無菌PBSで予防接種される。
【0379】
(処置)
接種されるS プネウモニア及び対照群マウスは、2つのグループへと分類される(各々のグループにおいてn=10)。例2のプレドニソロン製剤は、動物の1つのグループの鼓室腔の壁に適用される。プレドニソロンを含まない対照群製剤は、第2のグループに適用される。プレドニソロン及び対照群製剤は、最初の適用から3日後に再度適用される。動物は7日目の処置後、殺処分する。
【0380】
(結果の分析)
中耳液(MEF)は、肺炎球菌予防接種の1時間後、2時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、及び、72時間後に試料採取される。定量的なMEF培養が、羊血液寒天上で、50CFU/mlに定められた計量閾値で行われる。炎症細胞は血球計で定量化され、差動的な細胞をライト染色(Wright’s stainning)で列挙した。
【0381】
例26−デキサメタゾン製剤を用いるAIED臨床試験
全身的なデキサメタゾン治療に以前は応答したものの、現在では有害事象のため治療を中止した10人の成人患者が選択される。例1のデキサメタゾン温度可逆性(thermoreversible)ゲル製剤が、鼓膜の穴を通って各々の患者の正円窓膜に投与される。デキサメタゾンゲル製剤の再適用は、最初の適用の7日後に行われ、2週間及び3週間の処置にて再度行われる。
【0382】
純音聴力検査(250−8000Hz)及びフランス語の2音節の単語リストを用いる語音検査からなる聴覚評価が各々の患者に施行される。検査は、デキサメタゾンの適用前と、最初の処置の1週間後、2週間後、3週間後及び4週間後の両方に実行される。
【0383】
例27−音響外傷マウスモデルにおけるプレドニソロンの評価
(方法及び材料)
中毒性難聴の誘発
20から24gの重さの12匹のハーランスプラギュ-ダウレイ(Harlan Sprague−Dawley)のマウスが用いられる。4−20mHzでの聴性脳幹反応の基準値が測定される。マウスに麻酔をかけ、30分間、120dBの音の大きさで、6kHzの持続的な純音に曝露される。
【0384】
(処置)
対照群マウス(n=10)は音響外傷の後、生理食塩水を投与される。実験用のグループ(n=10)は音響外傷の後、例2において処方されたプレドニソロン(体重1kgにつき2.0mg)を投与される。
【0385】
各々の動物の各々の耳へのクリック刺激に対する聴覚脳幹反応閾値(ABR)の聴覚閾値がまず測定され、実験手順の1週間後にも測定される。動物は、加温パッド上の単層の聴覚ブース(acoustic booth)(Industrial Acoustic Co, Bronx, NY, USA)内に入れられる。皮下電極(Astro―Med, Inc. Crass Instrument Division, West Waewick, RI, USA)が、頂点(探査電極)、乳様突起(照合)、及び後肢(基底)に挿入された。クリック刺激(0.1ミリ秒)はコンピュータで処理され、外側の聴覚道に配置するため、耳鏡に取り付けられたBeyer DT 48,200オームスピーカーへ送達される。記録されたABRは、電池式のプリアンプにより増幅及びデジタル化され、タッカーデービステクノロジーABR記録システムへ挿入される。この記録システムは、コンピュータに刺激、記録、及び平均関数を提供する(Tucker Davis Technology, Gainesville, FL, USA)。続いて、減少する振幅刺激が動物に対する5-dB段階において表され、記録された刺激固定活性(stimulus―locked activity)は平均化され(n=512)、表示される。閾値は、明白に検出可能な反応がない記録と、明確に識別可能な反応を備える記録との間の刺激レベルとして定義される。
【0386】
例28―メニエール病患者におけるデキサメタゾンの臨床試験
(研究目的)
この研究の主な目的は、患者を悩ますメニエール病の耳鳴り症状の改善工程において、デキサメタゾンの安全性及び有効性を、プレドニソロンと比較して評価することである。
【0387】
(研究計画)
この研究は、JB004/Aを耳鳴りの処置におけるプラセボと対照する、第3相、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、3群研究(three―arm study)である。約250の被験体が本研究に登録され、スポンサーにより調整した無作為化順序に基づいた3つの処置グループの1つに対して無作為に選ばれる(1:1)。各々のグループは、温度可逆性ゲルに送達される300mgのデキサメタゾン、又は徐放型プラセボ製剤を与えられる。デキサメタゾンの放出は制御放出であり、30日にわたって生じる。投与経路は鼓室内注射である。
【0388】
(第1の評価項目)
投与後2時間における(又は投薬前の基準値に対する他の任意の時点での)測定時点で認識される、耳鳴りの大きさの変化を測定する視覚的アナログ尺度(VAS)。あるいは、聴力検査が健康な耳に用いられることで、影響を受けた耳の耳鳴りの音を一致させる。
【0389】
(第2の評価項目)
耳鳴りの高さ、苦痛、及び不安を測定するVSA。純音聴力検査及び心理音響評価。睡眠及び耳鳴りに関するアンケート。薬の安全性、耐容性、及び、薬物動態。[期限:投与後2時間での(又は投薬前の基準値に対する他の任意の時点での)測定の時点で認識される。]
【0390】
(試験対象患者基準)
以下の判断基準のいずれかを満たす者は、患者として含まれる。
・耳鳴りと診断された男性又は女性の被験体
・アルコール摂取を制限する意志のある被験体
・性交を控えるか、又は、受胎調節に同意する、出産可能な女性
・出産が可能でない女性
【0391】
(除外基準)
以下の判断基準のいずれかを満たす者は、患者から除外される。
・間欠性又は拍動性の耳鳴り
・病理的なレベルの不安又はうつを抱える被験体
・リドカイン点滴試験に反応せず、又は、点滴前の値が大きな可変性を示さない被験体
・薬物のPKに干渉する任意の外科的又は医学的な疾病の存在
・肝性機能障害又は肝機能障害の病歴がある被験体
・腎性機能障害のある被験体
・HIV、C型肝炎、又はB型肝炎が陽性の被験体
・検査異常、ECG、又は理学的検査所見のある被験体
・甲状腺機能が正常でない被験体
・肝臓の疾患、心臓の疾患、腎臓の疾患、神経の疾患、脳血管の疾患、代謝の疾患、又は肺の疾患を患っている被験体
・心筋梗塞にかかったことがある被験体
・発作性疾患の病歴がある被験体
・癌の病歴がある被験体
・薬又はその他のアレルギーの履歴がある被験体
・薬の使用、及び/又は、薬物乱用歴又は依存歴が陽性である被験体
・規定された時間枠内で、向精神薬又は抗うつ薬を服用した被験体
・肝酵素を妨げることが知られている薬物又は食品(例えば、グレープフルーツ又はグレープフルーツジュース)
・最近治験薬を使用した、又は最近試験に参加した被験体
・妊娠検査で陽性だった女性
・研究の最後の治験薬投与から次の4週間以内に、妊娠をするつもりの女性被験体、又は子供をもうけるつもりの男性被験体
・前の月に一単位量以上の血液を献血したか、又は、研究の終了後1カ月以内に献血をするつもりの被験体
【0392】
例29−内リンパ水腫動物モデルにおける、デキサメタゾン形成の評価
手順は、例1において調製されたデキサメタゾン製剤の有効性を測定するために用いられる。
【0393】
(材料及び方法)
プライエル反射が陽性で、約300グラムの重さの、35匹のハートレイ系モルモットを用いる。対照群(正常な耳のグループ)としての役割を果たす5体の動物に手術も処置も行わずに5週間餌を与える。残りの30匹は実験動物としての役割を果たす。全ての実験動物に内リンパ嚢の電気焼灼を行った(Leeらによる文献「Acta Otolaryngol. (1992) 112:658−666」、Takedaらによる文献「Equilib. Res. (1993) 9:139−143」)。手術の4週間後、これらの動物をそれぞれ10の動物から成る、非注入の(non−infusion)水腫耳、ビヒクル処置された水腫耳、及びデキサメタゾン処置された水腫耳の3つのグループに分ける。非注入水腫耳のグループは、内リンパ嚢の電気焼灼を除いて処置を受けない。ビヒクル処置された水腫耳、及びデキサメタゾン処置された水腫耳のグループにおいては、リポソーム製剤を正円窓膜に適用する。組成物の投与の1週間後、内リンパ腔の変化を評価するために全ての動物を殺処分する。全ての動物は、実験操作中を除いて、期間中静かな部屋の中の個別ケージの中で、平穏かつ自由に動き回れるようにしておく。
【0394】
内リンパ腔に対する変化を評価するため、ペントバルビタールを腹膜に注射することにより、全ての動物を深麻酔下において生理食塩水で経心的に灌流し、10%のホルマリンで固定化を行う。左側頭骨を取り除き、10日又はそれより長い間、10%のホルマリン溶液中において後固定(postfix)する。その後、それらを12日間、5%のトリクロロ酢酸で脱灰し、段階的なエタノール系列中で脱水する。これらをパラフィン及びセロイジンで包埋する。調製されたブロックを水平方向に6μm切片に切断する。この切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色し、光学顕微鏡下で観察する。内リンパ腔の変化の定量的評価は、Takeda(Takedaらによる論文「Hearing Res. (2003)182:9−18」)の方法に従って実施する。
【0395】
例30−特発性の突発性感音難聴(ISSHL)に対する鼓室内デキサメタゾンの評価
(研究目的)
本研究の主な目的は、経口的なステロイド処置、又は、鼓室内の(IT)ステロイド処置の、安全性及び有効性を評価することである。
【0396】
(主な評価項目)
等しく釣り合いのとれたエンドポイントでの純音聴力検査(PTA)、及び、単語認識;語音明瞭度採点法(Speech Discrimination Scoring)については、50語の単音節のシステムを採用する;PTAでの、又は、欠損が30dBより大きい周波数の全て又はいくつかにわたって、20dB以上の改善、及び/又は、WDSでの20%以上の著しい改善;絶対的変化に加え、対側耳に関する回復も同様に測定される。
【0397】
完全な回復−対側の語音明瞭度の、5%ポイント以内への回復、又は、対側PTAの5dB以内への回復。
【0398】
(研究計画)
この研究は、鼓室内デキサメタゾンを、ISHHLの処置におけるプラセボと比較する、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、平行グループ研究である。約140の被験体が本研究に登録され、無作為化順序に基づいた3つの処置グループの1つに対して無作為に選ばれる(1:1)。
a.グループIの被験体は、経口プレドニゾンを与えられる(14日間1mg/kg/日、その後、さらなるステロイドが与えられなくなるまで、投与量を毎日10mg減少)
b.グループIIの被験体は、ITデキサメタゾンリン酸ナトリウム(毎月投与されるビヒクルのmL当たり、1回の注入でデキサメタゾン0.3‐0.5mLを、最大3回の注射まで)を与えられ、同様に、経口プレドニゾン(14日間1mg/kg/日、その後、さらなるステロイドが与えられなくなるまで、投与量を毎日10mg減少)が与えられる。
c.グループIIIの被験体は、プラセボのIT注入(1回の注入で毎月投与されるビヒクルの0.3‐0.5mLを、最大3回までの注入)を受け、及び、経口プレドニゾンを与えられる。
【0399】
(聴覚評価)
聴覚評価は、以下を備える。
a.純音聴力検査(500Hz、1及び2kHz;4、6及び8kHz)
i.2つのPTA値がその後決定される:低周波数値(500Hz‐2kHz)及び高周波数値(4‐8kHz)
b.アブミ骨筋反射
c.ティンパノメトリー及び音の減衰
d.語音了解閾値
【0400】
処置を開始する前に、それぞれの被験体の難聴を(研究に割り当てる前に2回、無作為に選ぶ前に1回)測定する。処置の開始後1、2、4及び8週、4及び6カ月での聴覚評価
(主要な試験対象患者基準)
・年齢が18から75歳の男性又は女性患者
・72時間以内に発現する一側性のSHL(感音難聴)
・70dBを超えない任意の一つの周波数で難聴である被験体
(除外基準)
・先行する30日間の間に、何らかの理由で、10日間を超える先の経口ステロイド処置を受けること
・先行する14日間の間に、5日間以上のISSHLに対する先の経口ステロイド処置を受けること
・いずれかの耳に変動聴力の病歴があること
【0401】
例31−メニエール病に対する鼓室内デキサメタゾンの評価
(研究目的)
本研究の主要な目的は、鼓室内(IT)デキサメタゾン処置の安全性及び有効性を評価することである。
【0402】
(第1の評価項目)
めまい
a.以下のレジメンを用いた自己報告システム
i.めまいのない日−0点
ii.軽度の発作を伴う日−1点
iii.20分間以上持続する、中程度に重症な発作−2点
iv.1時間以上長く持続するか、又は、吐き気もしくは嘔吐を伴う重症な発作−3点
v.これまでで最も重い発作−4点
vi.毎月のめまい点数が、連続する2カ月間で50以上として定義される処置の失敗
(試験対象患者基準)
・1995年のAAO−HNS基準に従ったMDの臨床診断
b.少なくとも2回の決定的なめまいの発作
c.決定的な発作が少なくとも20分間持続する、自然発生的な(循環性の)めまい
(除外基準)
・アミノグリコシド又はマクロライド系抗生物質を用いた処置
・抗腫瘍薬を用いた処置
d.白金化合物
e.ジフルオロメチルオルニチン
【0403】
(研究計画)
この研究は、鼓室内デキサメタゾンを、ISSHLの処置におけるプラセボと比較する、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、平行グループ研究である。約140の被験体が本研究に登録され、無作為化順序に基づいた3つの処置グループの1つに対して無作為に選ばれる(1:1)。
a.グループIの被験体は、標準的な手当て(nmt1500mg/日のナトリウム食、キサンチン摂取の禁断、及び/又は利尿薬)を受ける
b.グループIIの被験体は、ITデキサメタゾンリン酸ナトリウム(毎月投与されるビヒクルのmL当たり、1回の注入でデキサメタゾン0.3‐0.5mL、最大3回の注入まで)を与えられ、及び、標準的治療を受ける
c.グループIIIの被験体は、プラセボのIT注入(1回の注入で毎月投与されるビヒクルの0.3‐0.5mLを、最大3回の注入まで)を受け、及び、標準的治療を受ける。
【0404】
(評価)
処置の開始前に、各々の被験体のメニエール病の重症度を(研究へ割り当てる前に2回、及び、無作為に選ぶ前に1回)測定する。
【0405】
処置開始後の、1、2、4及び8週、4及び6ヶ月でのメニエール病評価
【0406】
(評価)
a.めまい及び耳鳴りの発症日、頻度、持続時間、及び重症度
b.標準的VASアンケート及び、有効な評定プロトコル(rating protocols)を用いて測定した、減少した耳の圧覚
c.血清バソプレシンの測定
【0407】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示されるとともに記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものである。本明細書中に記載の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実行する際に任意に採用される。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内の方法及び構造がそれによって包含されるものであるということが意図されている。