特許第6014092号(P6014092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014092
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20161011BHJP
   B60C 11/11 20060101ALI20161011BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B60C11/01 A
   B60C11/11 A
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 300E
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-185482(P2014-185482)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-55820(P2016-55820A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】末吉 満
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0107600(US,A1)
【文献】 特開2000−280711(JP,A)
【文献】 特開2001−055014(JP,A)
【文献】 特開平11−291718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/01,11/03,11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部のタイヤ半径方向外側の領域であるバットレス面を有する空気入りタイヤであって、
正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、
前記バットレス面には、タイヤ軸方向外側に突出しかつタイヤ周方向に並ぶ複数個の突状部が設けられ、
前記突状部は、タイヤ周方向の幅がタイヤ半径方向内側に向かって漸減する第1突状部と、タイヤ周方向の幅がタイヤ半径方向内側に向かって漸増する第2突状部とを含み、
前記第1突状部と前記第2突状部とは、タイヤ周方向に交互に設けられることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッド部の少なくとも一方の前記トレッド端側に、複数個のショルダーブロックがタイヤ周方向に並べられ、
前記ショルダーブロックは、その踏面のタイヤ軸方向外側の接地端を画定する第1エッジを有する第1ショルダーブロックと、その踏面のタイヤ軸方向外側の接地端を画定しかつ前記第1エッジよりもタイヤ軸方向外側に位置する第2エッジを有する第2ショルダーブロックとを含み、
前記第1突状部と、前記第1エッジとは、前記第1ショルダーブロックの側面を介して接続されている請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記第1ショルダーブロックの前記側面は、タイヤ赤道側に凹む凹円弧状である請求項2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記突状部は、タイヤ周方向の幅がタイヤ半径方向内側に向かって漸増しかつタイヤ半径方向外側を向いてタイヤ周方向にのびる外側面を有する第2突状部を含み、
前記第2突状部と、前記第2エッジとは、前記第2ショルダーブロックの側面を介して接続されている請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記第2ショルダーブロックの前記側面は、タイヤ外側に凸又は直線状である請求項4記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2突状部は、タイヤ半径方向の内方で2つに分岐している請求項5記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1エッジと前記第2エッジとの間のタイヤ軸方向の距離は、トレッド接地幅の4%〜7%である請求項2乃至6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記突状部は、タイヤ半径方向にのびる一対の縦縁を有し、
前記縦縁のタイヤ放射方向に対する角度は、8〜12度である請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第1突状部の前記縦縁は、前記第2突状部の前記縦縁と同じ角度である請求項8記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記突状部の突出高さは、5〜9mmである請求項1乃至9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記突状部のタイヤ半径方向の内端は、ビードベースラインからタイヤ断面高さの60%〜70%の位置に設けられる請求項1乃至10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量の増加を抑制しつつ、岩場での走行性能を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、四輪駆動車等に装着される空気入りタイヤにあっては、岩場等の路面を走行する機会があるため、このような路面でも十分なトラクション性能を発揮することが求められている(このような性能は、以下、「ロック性能」と呼ばれることがある。)。ロック性能を向上させるために、バットレス部にタイヤ軸方向に突出する複数の突状部を設けたタイヤが提案されている。このような空気入りタイヤは、突状部と岩とが接触することにより、トラクションを向上させている。
【0003】
ロック性能を高めるために、凸状部の突出高さを大きくする試みがなされている。しかしながら、このような方法は、タイヤの質量が過度に増加し、ひいては、舗装路での転がり抵抗が増加するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−119277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、バットレス部に設けられた突状部の形状を改善することを基本として、タイヤの質量増加を抑制しつつロック性能を向上し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、サイドウォール部のタイヤ半径方向外側の領域であるバットレス面を有する空気入りタイヤであって、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記バットレス面には、タイヤ軸方向外側に突出しかつタイヤ周方向に並ぶ複数個の突状部が設けられ、前記突状部は、タイヤ周方向の幅がタイヤ半径方向内側に向かって漸減する第1突状部を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記突状部が、タイヤ周方向の幅がタイヤ半径方向内側に向かって漸増する第2突状部を含み、前記第1突状部と前記第2突状部とは、タイヤ周方向に交互に設けられるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部の少なくとも一方の前記トレッド端側に、複数個のショルダーブロックがタイヤ周方向に並べられ、前記ショルダーブロックが、その踏面のタイヤ軸方向外側の接地端を画定する第1エッジを有する第1ショルダーブロックと、その踏面のタイヤ軸方向外側の接地端を画定しかつ前記第1エッジよりもタイヤ軸方向外側に位置する第2エッジを有する第2ショルダーブロックとを含み、前記第1突状部と、前記第1エッジとは、前記第1ショルダーブロックの側面を介して接続されているのが望ましい。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記第1ショルダーブロックの前記側面が、タイヤ赤道側に凹む凹円弧状であるのが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記突状部が、タイヤ周方向の幅がタイヤ半径方向内側に向かって漸増しかつタイヤ半径方向外側を向いてタイヤ周方向にのびる外側面を有する第2突状部を含み、前記第2突状部と、前記第2エッジとは、前記第2ショルダーブロックの側面を介して接続されているのが望ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記第2ショルダーブロックの前記側面が、タイヤ外側に凸又は直線状であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第2突状部が、タイヤ半径方向の内方で2つに分岐しているのが望ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1エッジと前記第2エッジとの間のタイヤ軸方向の距離が、トレッド接地幅の4%〜7%であるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記突状部が、タイヤ半径方向にのびる一対の縦縁を有し、前記縦縁のタイヤ放射方向に対する角度は、8〜12度であるのが望ましい。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記突状部の突出高さが、5〜9mmであるのが望ましい。
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記突状部のタイヤ半径方向の内端が、ビードベースラインからタイヤ断面高さの60%〜70%の位置に設けられるのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤは、バットレス面に、タイヤ軸方向外側に突出しかつタイヤ周方向に並ぶ複数個の突状部が設けられている。このような突状部は、岩との接触により、大きなトラクションを発揮することができる。
【0018】
一般に、岩場走行時、タイヤのバットレス面に設けられた突状部は、そのタイヤ半径方向外側で、より多く岩と接触する。本発明の空気入りタイヤは、突状部として、タイヤ周方向の幅がタイヤ半径方向内側に向かって漸減する第1突状部を含んでいる。このような第1突状部は、岩と接触しやすいタイヤ半径方向の外側部分で大きな容積を持つため、岩との接触時に大きなトラクションを発揮することができる。一方、岩との接触機会が少ない第1突状部のタイヤ半径方向の内側部分は、相対的に小さいタイヤ周方向の幅を有するため、その質量が低減される。
【0019】
このように、本発明の空気入りタイヤは、突状部による質量の増加を抑制しながら、優れたロック性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のタイヤの斜視断面図である。
図3】ショルダーブロックによる岩の挟み込みを説明する平面図である。
図4図1のA−A断面図である。
図5図1のタイヤのバットレス部を示す側面図である。
図6】他の実施形態のタイヤの斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1のトレッド部2の展開図が示される。図2には、図1のタイヤ1の斜視断面図が示される。図1及び図2に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、四輪駆動車用のオールシーズン用タイヤとして好適に利用される。
【0022】
本実施形態のトレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側をタイヤ周方向に並ぶセンターブロック3、及び、センターブロック3よりもトレッド端Te側をタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック4が設けられている。
【0023】
前記「トレッド端」Teは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、両トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0025】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、180kPaである。
【0026】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。タイヤが乗用車用の場合、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0027】
センターブロック3は、その踏面3aが、タイヤ赤道Cからタイヤ周方向の一方側へ傾斜する第1傾斜部3Aと、第1傾斜部3Aとは逆向きかつ第1傾斜部3Aよりも大きい第2傾斜部3Bとを含む略V字状である。なお、センターブロック3の形状は、このような態様に限定されるものではない。
【0028】
ショルダーブロック4は、その踏面4aが、トレッド端Te側からタイヤ赤道C側にタイヤ軸方向にのびる軸方向部4Aと、軸方向部4Aのタイヤ軸方向内側に連なりかつタイヤ周方向の一方側へ傾斜する傾斜部4Bとを含んでいる。なお、ショルダーブロック4の形状は、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態のショルダーブロック4は、タイヤ軸方向の外側の接地端4tよりもタイヤ軸方向外側かつタイヤ半径方向内側に傾斜する側面4s、及び、タイヤ周方向で隣り合うショルダーブロック4との間で溝5を形成する一対の壁面4h、4hを有している。
【0030】
本実施形態のショルダーブロック4は、第1ショルダーブロック6と、第2ショルダーブロック7とで構成されている。第1ショルダーブロック6と第2ショルダーブロック7とは、タイヤ周方向に交互に並べられている。
【0031】
第1ショルダーブロック6は、その踏面6aのタイヤ軸方向の外側の接地端6tを画定する第1エッジ8を有している。本実施形態の第1エッジ8は、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。
【0032】
第2ショルダーブロック7は、その踏面7aのタイヤ軸方向の外側の接地端7tを画定する第2エッジ9を有している。本実施形態の第2エッジ9は、タイヤ周方向に沿ってのび、トレッド端Teを形成している。
【0033】
第2エッジ9は、第1エッジ8よりもタイヤ軸方向外側に位置している。これにより、図3に示されるように、第1ショルダーブロック6のタイヤ周方向両側の第2ショルダーブロック7、7の壁面7h、7hと、第1ショルダーブロック6の第1エッジ8とで岩場路面の岩R等を大きく挟み込むことができる。従って、本実施形態のタイヤ1は、大きなトラクションを発揮して、優れたロック性能を有する。
【0034】
図4は、図1のA−A断面図である。図4に示されるように、タイヤ子午線断面において、第1ショルダーブロック6の側面6sは、好ましくはタイヤ赤道C側に凹む凹円弧状である。このような側面6sは、岩の挟み込む量を大きく確保できるため、さらに大きなトラクションを発揮することができる。なお、側面6sは、単一の曲率半径を有する円弧でも良いが、異なる曲率半径を有する複数の円弧を滑らかに連ねる態様でも良い。
【0035】
第2ショルダーブロック7の側面7sは、タイヤ子午線断面において、好ましくは直線状である。これにより、壁面7hの面積が大きく確保されるため、タイヤ周方向で隣り合う第2ショルダーブロック7、7間で、より一層、効果的に岩を挟み込むことができる。このような作用を効果的に発揮させる観点より、第2ショルダーブロック7の側面7sは、タイヤ外側に凸形状でも良い。
【0036】
第2エッジ9と第1エッジ8とのタイヤ軸方向の距離L1は、好ましくは、トレッド接地幅TWの4%〜7%である。距離L1がトレッド接地幅TWの4%未満の場合、岩を効果的に挟み込むことができなくなるおそれがある。距離L1がトレッド接地幅TWの7%を超える場合、第2ショルダーブロック7の剛性が過度に小さくなり、かえってトラクションが悪化するおそれがある。
【0037】
図1及び図2に示されるように、ショルダーブロック4には、接地端4tと交差してタイヤ軸方向内外にのびるサイピング10が設けられている。これにより、ショルダーブロック4の剛性が効果的に小さくなり、第1ショルダーブロック6のタイヤ軸方向内側への変形や第2ショルダーブロック7のタイヤ周方向への変形が容易になるため、岩等の掴みがさらに容易になる。このような観点より、第1ショルダーブロック6のサイピング10aは、側面6sを横断している。
【0038】
図5は、図1のタイヤ1の側面図である。図4及び図5に示されるように、タイヤ1は、サイドウォール部Swのタイヤ半径方向外側の領域であるバットレス面11を有している。
【0039】
バットレス面11は、ショルダーブロック4、4間の溝5の溝底5sとサイドウォール部Swの外表面Saとを滑らかに継ぐ基部14と、基部14からタイヤ軸方向外側に突出しかつタイヤ周方向に並ぶ複数個の突状部15とを有している。このような突状部15は、例えば、岩との接触により、大きなトラクションを発揮することができる。
【0040】
突状部15のタイヤ軸方向外側に配された外側面15sは、タイヤ半径方向にのびる一対の縦縁15a、15aと、タイヤ半径方向外側をタイヤ周方向にのびる外側横縁15bと、外側横縁15bよりもタイヤ半径方向内側をタイヤ周方向にのびる内側横縁15cとを有している。本実施形態では、縦縁15a、横縁15b、15cが直線状にのびている。このような突状部15は、剛性が大きく確保されるため、より大きなトラクションを発揮する。
【0041】
突状部15は、第1突状部16と第2突状部17とを含んでいる。第1突状部16は、タイヤ周方向の幅W1がタイヤ半径方向内側に向かって漸減している。このような第1突状部16は、岩と接触しやすいタイヤ半径方向の外側部分で大きな容積を持つため、岩との接触時に大きなトラクションを発揮することができる。一方、岩との接触機会が少ない第1突状部16のタイヤ半径方向の内側部分は、相対的に小さいタイヤ周方向の幅W1を有するため、その質量が低減される。従って、本発明の空気入りタイヤ1は、突状部15による質量の増加を抑制しながら、優れたロック性能を発揮することができる。
【0042】
第1突状部16は、第1エッジ8からのびる第1ショルダーブロック6の側面6sと接続されている。このように、第1突状部16は、第1ショルダーブロック6に接続されることによって、剛性が大きく確保される。また、第1ショルダーブロック6の側面6sは、上述の通り、凹円弧状であるため、岩と接触しやすいタイヤ半径方向外側部分で、大きな剛性を確保することができるため、一層大きなトラクションを発揮することができる。
【0043】
第2突状部17は、タイヤ周方向の幅W1がタイヤ半径方向内側に向かって漸増している。第2突状部17と第1突状部とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。これにより、第1突状部16と第2突状部17との間に、タイヤ半径方向が略平行にのびかつタイヤ放射方向に対して傾斜する凹部19が形成される。このような凹部19は、タイヤの回転に伴って、第1突状部16の縦縁16aと、これに隣り合う第2突状部17の縦縁17aとが大きな押圧力を発揮して、岩を効果的に挟むことができる。従って、さらに優れたロック性能が発揮される。
【0044】
このような作用を効果的に発揮させるため、突状部15の縦縁15aのタイヤ放射方向に対する角度αは、好ましくは8度以上である。なお、前記角度αが過度に大きい場合、かえって、凹部19内に岩を効率良く挟み込むことができないおそれがある。このため、前記角度αは、好ましくは12度以下である。なお、第1突状部16の縦縁16aと、第2突状部17の縦縁17aとは、同じ角度が望ましい。しかしながら、上記角度の範囲内であれば、第1突状部16の縦縁16aの角度α1と第2突状部17の角度α2が互いに異なっても良い。
【0045】
図2に示されるように、第2突状部17は、外側横縁17bを含みタイヤ半径方向外側を向く外側面21と、内側横縁17cを含みタイヤ半径方向内側を向く内側面22とを有している。外側面21は、外側横縁17bよりもタイヤ軸方向内側で外側横縁17bと平行にのびる内方縁21aを有している。
【0046】
第2突状部17は、第2エッジ9からのびる第2ショルダーブロック7の側面7sと接続されている。これにより、第2突状部17と第2ショルダーブロック7とで、大きな剛性が確保される。また、第2ショルダーブロック7の側面7sと外側面21とで岩との接触面積を大きく確保できる。このため、大きなトラクションが発揮される。
【0047】
図5に示されるように、第2突状部17は、タイヤ半径方向の内方で2つに分岐している。このような第2突状部17は、エッジ成分が増加するため、岩との接触機会が大きくなり、トラクションが向上する。本実施形態の第2突状部17の内側面22は、タイヤ周方向両側に配された外側部22a、22aと、両外側部22aに挟まれかつ外側部22aよりも急傾斜で基部14に接続される中央部22bとに区分されている。これにより、質量が大となりやすい第2突状部17のタイヤ半径方向内側部分の容積が小さくなるため、タイヤ質量の低減効果が大きく発揮される。
【0048】
上述の作用を効果的に発揮しつつ、第2突状部17の剛性を維持するため、中央部22bのタイヤ周方向の幅Waは、好ましくは第2突状部17のタイヤ周方向の最大幅Wbの30%〜50%である。
【0049】
図4に示されるように、このような突状部15の突出高さH1は、5〜9mmであるのが望ましい。突出高さH1が5mm未満の場合、岩との接触面積が小さくなり、大きなトラクションを発揮することができないおそれがある。突出高さH1が9mmを超える場合、タイヤの質量が大きくなり、ひいては、舗装路での転がり抵抗が増加するおそれがある。
【0050】
同様の観点より、突状部15のタイヤ半径方向の内端15iは、ビードベースラインからタイヤ断面高さ(図示省略)の60%〜70%であるのが望ましい。なお、突状部15のタイヤ半径方向の外端(外側縁)15eは、ビードベースラインからタイヤ断面高さの80%〜90%であるのが望ましい。
【0051】
トレッド部2のランド比は、好ましくは45%〜55%である。ランド比が45%未満の場合、各ブロック3、4の剛性が小さくなり、十分なトラクションを得ることができないおそれがある。ランド比が55%を超える場合、岩場等を挟み込むことができにくくなるおそれがある。ランド比は、トレッド部2の溝を埋めたと仮定したときのトレッド部2の仮想踏面の面積に対する各ブロック3、4の踏面3a、4aの全面積である。
【0052】
以上、本発明の実施形態について、詳述したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
【実施例】
【0053】
図1の基本パターンを有するサイズ37×12.50R17の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤのロック性能及びタイヤ質量がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0054】
<ロック性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量3600ccの四輪駆動車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、岩山等を含む岩場路面のテストコースを走行させ、このときのトラクション性能に関する走行特性が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
リム:9.0JJ
内圧:100kPa
突状部の内端位置:ビードベースラインと突状部の内端とのタイヤ半径方向長さ/タイヤ断面高さ
<タイヤ質量>
タイヤ1本当たりの質量を測定し、その数値を、比較例1を100とする指数で表示している。数値が小さいほど良好である。
【0055】
【表1】
【0056】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、タイヤ質量の増加を抑制しつつ、ロック性能が向上していることが確認できる。また、上記と異なるタイヤサイズについてもテストを行ったが、同じ傾向が示された。
【符号の説明】
【0057】
1 空気入りタイヤ
11 バットレス面
15 突状部
16 第1突状部
Sw サイドウォール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6