(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスを始めとする、微細加工を必要とする各種電子デバイスの分野ではデバイスの高密度化、高集積化の要求がますます高まっている。これらの要求を満たすにはパターンの微細化が必須となってきている。このような半導体デバイスの製造工程において、フォトリソグラフィ技術は微細パターン形成に重要な役割を果たしている。
【0003】
フォトリソグラフィの解像度を上げるためには、露光に用いる光源の波長を小さくするか、投影レンズの開口数を大きくする必要がある。開口数を大きくすると解像度は上がるが、焦点深度は浅くなる。その結果、焦点深度以上の凹凸のある表面への露光に対して、所定の解像度が得られなくなるので、基板の平面度を向上する必要がある。更なる微細化のため、光源の波長λを短波長にすることが求められている。露光に用いられる光源の波長λは、g線(436nm)からi線(365nm)へと短波長化され、現在では、エキシマレーザ(248nm、193nm)がその主流となっている。しかし、フォトリソグラフィ技術においては、光源の回折限界が解像度の限界となるため、波長193nmのArFエキシマレーザ液浸露光技術を用いても、線幅10nm以下のパターン作製は困難と言われている。
【0004】
より微細化を行うためには、X線リソグラフィ技術や電子線リソグラフィ技術を用いる必要がある。X線リソグラフィ技術は、エキシマレーザを用いて露光を行う場合に比べて、1桁程度の解像度の向上が可能である。しかし、X線リソグラフィ技術はマスクの作成が難しく、かつ装置コストが高いという問題がある。
【0005】
電子線リソグラフィ技術は、ナノメータオーダーのパターンの形成を高精度で制御することができ、光学系に比べて深い焦点深度をもっている。電子線リソグラフィは、ウェハ上にマスク無しで直接描画が可能である利点を有しているが、スループットが低く、コストもかかることから、量産レベルにはほど遠いという問題がある。
【0006】
さらに、X線や電子線を用いたリソグラフィでは、その露光方法に合わせてレジストを開発する必要があり、感度、解像度、エッチング耐性等の面において課題が多い。
【0007】
これらの課題を解決するために、照射する光の波長よりも十分小さな径の開口からしみ出す近接場光を光源とし、レジストを感光させ、現像することにより、微細なパターンを形成する方法が提案されている。この方法の特徴は、光源の波長に関わらず、ナノメータオーダーの空間分解能を得られることである。このような近接場光を用いる方法は、光の回折限界の制約を受けないため、光源波長の3分の1以下の空間分解能を得ることができる。また、光源として水銀灯や半導体レーザを使えば、光源自体を小さくすることができることから、装置の小型化を図ることができ、コストも安くすることが可能となる。
【0008】
近接場光を用いたリソグラフィ技術の一つとして、光源波長より狭い開口が形成された遮光層を有する近接場露光用マスクを、レジストに対して近接場領域である100nm以下となるまで密着させ、上記マスク上の微細パターンを一括露光によってレジストに転写する方法が知られている。このとき密着性が重要である。近接場露光用マスクとしてメンブレンマスクを用いることが知られている。また、近接場露光用マスクとして樹脂マスクを用いることが知られている。
【0009】
メンブレンマスクを使用して密着させて露光を行う方法では、弾性変形可能な程度までにマスクの厚さを薄くし、この薄い部分に制御された圧力をかけて弾性変形させることで、露光用マスクと被露光基板を密着させる近接場露光方法が開示されている。しかしながら、この方法では、薄膜構造のマスクを製造するために多くの工程からなる作製プロセスを必要とし、また圧力印加時または圧力解放時にマスクの薄い部分が壊れる恐れがある。
【0010】
一方、樹脂マスクを用いて露光を行う方法では、使用するレジストによってはマスクの遮光層との密着性が高く、マスク剥離時にマスクが破損したり、レジストが基板から剥がれたりする、という可能性もある。
【0011】
また、化学増幅型レジストや、光カチオン重合型レジストのように、露光で発生する酸を触媒とした反応により現像コントラストを生じるレジストを用いた場合、発生した酸によりマスクとなる遮光層が腐食されるため、マスクの寿命が短くなる可能性もある。
【0012】
このように従来の近接場露光用マスクについては、被露光基板と大面積にわたって良好な密着性を得ること、作製プロセスの工程を削減すること、耐久性の向上させることに改善の余地がある。
【0013】
近接場露光の一つとしてレジストを構成する分子の共鳴エネルギに相当する光の波長の共鳴光を用いて近接場露光を行う方法が知られている。この共鳴光を用いた近接場露光は以下のように、行われる。
【0014】
フォトレジスト層が形成された第1基板と、透明な第2基板上にマスクパターンを形成したマスクとを用意する。そしてマスクパターンをレジスト層に密着させる。フォトレジスト層にマスクを密着させた状態でマスクの裏面からi線(365nm)を照射する。その結果、i線の照射によりマスクパターンの開口部から近接場光が浸みだし、露光が行なわれる。露光されたレジスト部分が感光される。
【0015】
露光後、マスクをフォトレジスト層から外し、フォトレジスト層を現像液で現像することにより露光された部分が溶け、パターンが形成される。
【0016】
また、他の近接場露光として、レジストを構成する分子の共鳴エネルギに相当する光の波長よりも長い非共鳴光を用いて近接場露光を行う方法が知られている。このような非共鳴波長を用いたときの近接場露光によるマスクパターンの転写方法は、以下のように行われる。第1基板にレジスト層を形成するとともに、透明な第2基板上に開口部を有するマスクパターンを形成したマスクを用意する。続いて、マスクパターンをレジスト層に密着させる。レジスト層にマスクパターンを密着させた状態でマスクの裏面からレジストを構成する分子の共鳴エネルギに相当する光の波長よりも長い非共鳴光を照射する。
【0017】
その結果、非共鳴光の照射によりマスクパターンの開口部から近接場光が浸み出すものの、レジスト層は非共鳴光によって感光されることはない。しかし、マスクパターンのエッジ部において、電子分極が強く生じ、非共鳴光による近接場光が発生する。レジストを構成する分子は、非共鳴光による近接場光によって複数回の光吸収による励起(多段階遷移過程)を経て解離する。
【0018】
露光後、マスクをレジスト層から外し、レジスト層を現像液で現像することにより非共鳴光による近接場露光された部分が溶け、パターンが形成される。共鳴光による露光の違いは、マスクパターンのエッジ部に沿ってパターンが形成されることである。従って、非共鳴光を用いるとより微細なパターンを形成することができる。
【0019】
一般的に、フォトレジストの感光波長は可視域のため、透明な第2基板はガラス材料が使用されている。露光プロセスの効率を上げるためには、透明な第2基板の大きさを大きくする必要がある。近年、半導体製造プロセスで用いられているウェハーサイズは直径300mmであり、非共鳴光を用いて近接場露光方法は密着露光方式なので、透明な第2基板の大きさも直径300mm程度にする必要がある。マスクパターンとレジスト層は密着させる必要があることから、透明な第2基板は表面粗さが小さくかつ反りが小さい条件を満たさなければならない。
【0020】
ところが、透明な第2基板としてガラス材料を直径300mm程度にすると、広い面積にわたって十分小さな表面粗さ、反りを有するものの作製は困難である。一方、Siウェハは直径300mmでも表面粗さと反りともに小さい条件を満たしているが、可視光はSiを透過することができないのでマスクとして使用することはできない。
【0021】
さらに、露光において、光源からの光は第1基板に対して垂直に入射される。透明な第2基板がガラスの場合では、空気とガラスとの界面での反射率は4%であり、入射光エネルギの損失は小さい。一方、空気とSiとの界面での反射率は30%と増加してしまい、露光時間が増大してしまう。従って、露光プロセスにおいて、生産性が低下してしまう。
【0022】
また、半導体の微細化、高密度化、高速化に伴い、半導体パッケージ、インターポーザ、プリント基板等に対してもより高密度な微細加工が求められている。また特に近年、ストレージメディアの微細構造パターン形成時において、或いはバイオチップのナノ構造体の形成時において、高密度微細加工のニーズが高まっている。このような技術的要求を満たす量産手段として、近年においてナノインプリント技術が研究されている。
【0023】
このナノインプリント技術は、金型を用いたプレス工法をナノスケールに応用したものであり、微細な凹凸のあるモールドを被加工材に押し付けて成形するナノスケールの成型加工技術である。ナノインプリント技術は、数十ナノメートル幅のパターン形成が可能であり、電子ビームを用いた同等の加工技術と比較して、非常に安価にかつ大量に成形することができる利点がある。
【0024】
このようなナノインプリント技術においても、近接場光を用いることが提案されている。 近接場光を用いたナノインプリント技術においては特に10nm以下の超微細なパターンを高精度に転写することが可能となっている。Si基板を加工する場合、ガラステンプレート側から光を照射する必要がある。しかしながら、この照射の向きでは近接場光の発生効率が低くなるという問題点があった。
【0025】
また、ナノインプリント技術におけるテンプレート及びパターン形成方法において、近接場光を用いることが提案されている。しかし、微細パターンを転写する際に、テンプレートとSi基板との密着性の向上の必要もあるなど、パターン形成方法の最適化について十分な検討がなされているとは言えない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。
【0034】
(第1実施形態)
第1実施形態による近接場露光用マスクについて
図1(a)乃至
図1(f)を参照して説明する。
図1(a)乃至
図1(f)は、第1実施形態による近接場露光用マスクの製造工程を示す断面図である。
【0035】
まず、例えば厚さが600μmのシリコン基板2を用意し、厚さが例えば10nm〜30nmとなるレジスト層4を塗布する(
図1(a)、1(b))。続いて、電子線リソグラフィ技術、もしくはEUV(Extreme Ultra-Violent)リソグラフィ技術を用いてレジスト層4にレジストパターン4aを形成する(
図1(c))。このレジストパターン4aは、ライン幅W
1が例えば10nmでスペース幅W
2が例えば10nmのライン・アンド・スペース・パターンとする。したがって、レジストパターン4aの高さは10nm〜30nmとなる。
【0036】
その後、レジストパターン4aのスペースを埋め込むようにレジストパターン4a上に近接場光発生膜6を堆積する(
図1(d))。近接場光発生膜6としては、Au、Al、Ag、Cu、Cr、Sb、W、Ni、In、Ge、Sn、Pb、Zn、Pd、およびCの群から選択された少なくとも1つの元素を含む層、もしくはこれらの層の積層膜が用いられる。
【0037】
続いて、CMP(chemical mechanical polishing)を用いて、近接場光発生膜6を研磨し、レジストパターン4aの上面を露出させる(
図1(e))。その後、レジスト剥離剤を用いてレジストパターン4aを剥離し、近接場露光用マスク1を作製する(
図1(f))。
【0038】
このようにして形成された近接場露光用マスク1は、シリコン基板2上に形成された近接場光発生膜パターン6aを有している。そして、この近接場光発生膜パターン6aは、ライン幅W
2が10nmでスペース幅W
1が10nmのライン・アンド・スペース・パターンとなる。そして、近接場光発生膜パターン6aのラインの高さ(厚さ)は10nm〜30nmとなる。なお、近接場光発生膜パターン6aのラインの高さ(厚さ)は、近接場光が被露光レジストに到達するためには100nm以下であるが、50nm以下であることが好ましい。そして、近接場光発生膜パターン6aは、ライン幅W
2が5nm以上でスペース幅W
1が5nm以上のパターンであってもよい。なお、近接場光発生膜パターンの好ましいサイズは、この近接場露光用マスクを用いて形成されるデバイスによって異なる。
【0039】
また、大面積にわたってマスクと被露光物との密着を確保することを可能にするためには、近接場露光用マスク用母材として用いられるシリコン基板2の厚さは、300μm〜1mmであることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態においては、マスク1はシリコン基板と、近接場光発生膜パターン6aとから構成されているので、耐久性を向上させることができるとともに、簡単な製造工程で作成することができる。
【0041】
(第2実施形態)
第2実施形態による近接場露光装置について
図2(a)、2(b)を参照して説明する。この第2実施形態の近接場露光装置20は、第1実施形態の近接場露光用マスク1を用いて露光するものであって、レジスト14が塗布された被露光基板(被加工基板)12が設置される載置台22aと、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aが形成された側の面を支持する支持台22bと、光源26からの光が近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aが形成された領域を照射するマスク24とを備えている。
図2(a)、2(b)に示すように、近接場露光用マスク1のシリコン基板2側から光源からの光が照射され、近接場光発生膜パターン6aと、被露光基板12上に塗布されたレジスト14が対向するように、配置される。
【0042】
なお、
図2(a)は、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aと、被露光基板12上に塗布されたレジスト14が密着していないときの状態を示す断面図であり、
図2(b)は、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aと、被露光基板12上に塗布されたレジスト14が密着しているときの状態を示す断面図である。
【0043】
この第2実施形態の近接場露光装置20は、近接場露光に用いられる光源26と、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aと、被露光基板12上に塗布されたレジスト14とを密着させるため密着機構28(例えば、真空ポンプ等)と、を備えている。
【0044】
図2(a)に示すように、近接場光発生膜パターン6aと、被露光基板12上に塗布されたレジスト14が密着していないときは、密着機構28は動作せず、かつ光源26はオフ状態となっている。一方、
図2(b)に示すように、近接場光発生膜パターン6aと、被露光基板12上に塗布されたレジスト14が密着しているときは、密着機構28は動作しかつ光源26はオン状態となっている。すなわち、密着機構28を動作させることにより、近接場光発生膜パターン6aと、レジスト14とを密着させる。そして、密着させた状態で近接場露光用マスク1の裏面から光源26からの光を照射する。なお、光源26としては、波長1100nm以上の光を発生する光源を用いる必要がある。その理由は、波長1100nm以上の光はSiを透過することができるからである。
【0045】
その結果、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aの開口部から近接場光が発生し、被露光基板12上のレジスト14にパターンの潜像が転写される。なお、露光は、近接場露光用マスク1と被露光基板12に形成されたレジスト14が、パターンを形成する領域で良好に密着した状態(非密着領域がない状態)で行うことが好ましい。なお、この第2実施形態においては、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aが形成された側と反対側から光を入射して露光したが、後述するように、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aが形成された側から光を入射して露光することもできる。
【0046】
この第2実施形態において用いられるレジスト14として、ポジ型レジストまたはネガ型レジストのいずれも用いることができる。ポジ型レジストとしては、例えば、ジアゾナフトキノン−ノボラック型レジスト、化学増幅ポジ型レジストが挙げられる。ネガ型レジストとしては、化学増幅ネガ型レジスト、光カチオン重合型レジスト、光ラジカル重合型レジスト、ポリヒドロキシスチレン−ビスアジド型レジスト、環化ゴム−ビスアジド型レジスト、ポリケイ皮酸ビニル型レジスト、等が挙げられる。化学増幅ポジ型および化学増幅ネガ型のレジストを使用すると、ライン・エッジ・ラフネスの小さいパターンが形成されるため、本実施形態では特に好ましい。
【0047】
また、本実施形態では、近接場露光の光源26としては、公知の光源を用いることができる。例えば、1μm以上20μm以下の波長を有するレーザなどが用いられる。これら光源は1つまたは複数で使用できる。半導体レーザが低コスト、高出力であるので、半導体レーザを用いることが本実施形態においてはより好ましい。
【0048】
(第3実施形態)
第3実施形態によるレジストパターンの形成方法およびデバイスの製造方法について
図3(a)乃至3(d)を参照して説明する。
【0049】
この第3実施形態においては、第1実施形態の近接場露光用マスク1および例えば第2実施形態の近接場露光装置20を用いる。
【0050】
まず、被加工基板12を用意し、この被加工基板12上にレジスト層14を塗布する。このレジスト層14は1層でもよいが、本実施形態においては、第1レジスト層15と第2レジスト層16とがこの順序で被加工基板12上に積層された2層レジスト構造とする。その後、被加工基板12および第1実施形態による近接場露光用マスク1を第2実施形態による近接場露光装置(図示せず)に載置する。このとき、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aが被加工基板12のレジスト層14に対向するように配置する(
図3(a))。続いて、近接場露光用マスク1の近接場光発生膜パターン6aと被加工基板12のレジスト層14とを密着させ、近接場露光を行う。すると、近接場光発生膜パターン6aのエッジ部に沿って近接場光が浸み出し、レジスト層14を露光する。なお、本実施形態においては、レジスト層14は2層構造となっているので、近接場光によって露光されるのは、上層のレジスト層16が露光される。
【0051】
次に、近接場露光用マスク1を被加工基板12から離し、露光されたレジスト層16を現像する。これにより、
図3(b)に示すように、レジスト層15上にレジストパターン16aが形成される。続いて、レジストパターン16aをマスクとしてリソグラフィ技術を用いてレジスト層15をパターニングし、レジストパターン15aを形成する(
図3(c))。これにより、レジストパターン15aおよびレジストパターン16aの積層構造を有するレジストパターン14aが被加工基板12上に形成される(
図3(c))。
【0052】
次に、レジストパターン14aをマスクとして、ドライエッチング、ウエットエッチングを行う。続いて、マスクを除去した後、被加工基板12上に金属蒸着、リフトオフ、めっき等の半導体プロセスを行うことで被加工基板12を加工する。これにより被加工基板12に所望のデバイスが製造される。
【0053】
本実施形態に用いられるレジスト14としては、使用する光源に対して光感度を有するものであれば、ポジ型、ネガ型を問わずに使用できる。ポジ型レジストとしては、例えば、ジアゾナフトキノン−ノボラック型、化学増幅ポジ型が挙げられる。ネガ型レジストとしては、例えば、化学増幅ネガ型、光カチオン重合型、光ラジカル重合型、ポリヒドロキシスチレン−ビスアジド型、環化ゴム−ビスアジド型、ポリケイ皮酸ビニル型などが挙げられる。ここで、化学増幅ポジ型及び化学増幅ネガ型のレジストを使用すると、線幅精度の高いパターンが形成される。
【0054】
また、被加工基板12としては、Si、GaAs、InP等の半導体基板や、ガラス、石英、BNなどの絶縁性基板、またはこれらの基板上にレジスト、金属、酸化物、窒化物など1種類あるいは複数種類を成膜したものなど、広い範囲のものを使用することができる。
【0055】
近接場光の伝搬深さは、通常100nm以下である。そこで、近接場光リソグラフィで高さ100nm以上のレジストパターン14aを形成するためには、多層構造のレジスト層を用いることが好ましい。すなわち、被加工基板12上に塗布されたドライエッチングにより除去可能な下層レジスト層15の上に酸素ドライエッチング耐性を有するレジスト層16が塗布された構成による2層構造のレジスト層14を用いることが好ましい。あるいは、被加工基板12上に塗布されたドライエッチングにより除去可能な下層レジスト層15、その上に酸素プラズマエッチング耐性層(図示せず)、さらにその上にレジスト層16が塗布された構成による3層構造のレジスト層を用いてもよい。
【0056】
なお、レジスト14、15、16の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータなどのような公知の塗布装置、方法を使用して行なうことができる。
【0057】
膜厚は、被加工基板12の加工深さとレジストのプラズマエッチ耐性及び光強度プロファイルを考慮して総合的に決定される。通常、プリベーク後で10nm〜300nmとなるように塗布するのが望ましい。
【0058】
さらに、レジスト14、15、16の塗布前に、プリベーク後膜厚を薄くすることを目的として、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を1種以上添加することもできる。
【0059】
なお、レジスト層は、塗布後に80℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃でプリベークされる。プリベークにはホットプレート、熱風乾燥機などの加熱手段を用いることができる。
【0060】
近接場露光の後、露光後の加熱を行う。露光後の加熱は80℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃で行う。露光後の加熱にはホットプレート、熱風乾燥機などの加熱手段を用いることができる。
【0061】
近接場露光されたレジスト層は必要に応じて被加工基板12を加熱した後、アルカリ性水液、水系現像液、有機溶剤などで現像される。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。これにより近接場レジストパターンが形成される。
【0062】
近接場露光により形成されたレジストパターン16aを2層積層構造のレジスト層により高アスペクト化する場合、パターン16aをマスクとして酸素プラズマエッチングを行う。酸素プラズマエッチングに使用する酸素含有ガスとしては、例えば、酸素単独、酸素とアルゴン等の不活性ガスとの混合ガス、または酸素と一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、一酸化二窒素、二酸化硫黄などとの混合ガスを用いることができる。
【0063】
近接場露光により形成されたレジストパターン16aを3層積層構造のレジスト層により高アスペクト化する場合、パターンをマスクとして酸素プラズマエッチング耐性層のエッチングを行なう。エッチングにはウエットエッチング、ドライエッチングが適用できるが、ドライエッチングの方が微細パターン形成に適しており、より好ましい。
【0064】
ウエットエッチング剤としては、エッチング対象に応じてフッ酸水溶液、フッ化アンモニウム水溶液、リン酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液、硝酸セリウムアンモニウム水溶液等を挙げることができる。
【0065】
ドライエッチング用ガスとしては、CHF
3、CF
4、C
2F
6、CF
6、CCl
4、BCl
3、Cl
2、HCl、H
2、Ar等を挙げることができ、必要に応じてこれらのガスを組み合わせて使用される。
【0066】
酸素プラズマエッチング耐性層のエッチングの後、2層積層構造のレジスト層の場合と同様に酸素プラズマエッチングを行ない、下層レジスト層15にパターンを転写する。
【0067】
本実施形態のデバイスの製造方法を用いると、例えば、つぎの(1)〜(6)のデバイス、あるいは素子等を製造することができる。
(1)半導体デバイス。
(2)50nmサイズのGaAs量子ドットを50nmの間隔で2次元に並べた構造を有する量子ドットレーザ素子。
(3)50nmサイズの円錐状のSiO
2部材をSiO
2基板上に50nm間隔で2次元に並べた構造を有する、光反射防止機能を備えたサブ波長素子(SWS)。
(4)GaNや金属からなる100nmサイズの部材を100nm間隔で2次元に周期的に並べた構造を有するフォトニック結晶光学デバイス、プラズモン光学デバイス。
(5)50nmサイズのAu微粒子をプラスティック基板上50nm間隔で2次元に並べた構造を有する、局在プラズモン共鳴(LPR)や表面増強ラマン分光(SERS)を利用したバイオセンサやマイクロトータル解析システム(μTAS)素子。
(6)トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、近接場光学顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡(SPM)に用いられる50nm以下のサイズの尖鋭な構造を有するSPMプローブ等のナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)素子。
【0068】
(実施例)
第3実施形態の実施例を以下に説明する。
【0069】
近接場露光用マスクの近接場光発生膜パターン側に、レジストが塗布された被加工基板を設置した。ここで用いた被加工基板12はシリコン基板である。ここで、レジストとしては、i−線レジストを用いた。シリコン基板上に上記レジストをスピンコータで塗布し、雰囲気温度が90℃でかつ熱処理時間が90秒となる条件下においてホットプレート上でベークした。レジスト層の膜厚は100nmであった。近接場露光用マスクと被露光基板が、パターンを形成する領域で良好に密着した状態(非密着領域がない状態)で露光した。
【0070】
近接場露光の光源として、1.5μmの赤外線レーザを用いた。照度はマスク上面で、i線において約85mJ/cm
2であった。
【0071】
近接場露光された被加工基板を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38%水溶液に室温で10秒間浸漬することで現像した。露光時間2分でハーフピッチ20nm、深さ約100nmのパターン、露光時間1分でハーフピッチ50nm、深さ約100nmのライン・アンド・スペース・パターンが得られた。
【0072】
(第4実施形態)
第4実施形態による近接場露光方法について
図4(a)乃至
図7(b)を参照して説明する。この第4実施形態の近接場露光方法は、空気とSiとの界面での反射率を低減することで露光時間を短縮する方法である。
【0073】
まず、
図4(a)に示すように、シリコン基板(Si基板ともいう)52上にスピンコート法を用いてレジスト層54を形成する。ここではレジスト形成方法としてスピンコート法を用いたが、この方法に限定されることは無い。レジストとして、i線用レジストを用い、レジスト層54の厚さは50nm程度である。ここではi線用レジスト層54の厚さとして50nmを使用したが、これに限定されることは無い。
【0074】
続いて、
図4(a)に示すように、Si基板62上に近接場光発生膜パターン66aが形成された近接場露光用マスク61を用意し、レジスト層54と近接場光発生膜パターン66aが対向するように、配置する。この近接場露光用マスク61は、次のように作製される。
図4(b)に示すように、Si基板62にレジスト64を塗布する。電子線描画装置でレジスト64に電子線が照射されたパターン64bを描画する(
図4(c))。このとき、レジスト64には電子線が照射されない領域64aも存在する。パターン形成は、電子線描画装置に限定されることは無い。パターン64bの描画後、現像液を用いて現像を行う。現像後は、超純水にて洗浄を行い、エアブローで水分を除去する。すると、電子線が照射されない領域からなるパターン64aが残置される。なお、レジスト64として、電子線が照射されない領域からなるパターンが除去され、電子線が照射された領域からなるパターンが残置される材料を用いることができる。パターン64aが形成されたSi基板62上に、蒸着法やスパッタリング法で近接場光発生膜66を形成する。近接場光発生膜66の材料としてはCrを使用し、ライン幅200nm、スペース幅200nm、高さ40nmのものを作製した。残ったレジスト64aはアセトンなどの有機溶媒で除去する。完成した近接場露光用マスク61を
図4(e)に示す。
【0075】
次に、
図5(a)に示すように、近接場露光用マスク61の近接場光発生膜パターン66aをレジスト層54と密着させる。続いて、
図5(b)に示すように、マスク61の裏面から波長が1550nmの光を照射する。このとき、斜めの角度で入射すると空気とマスク61のSi基板62との界面における反射率を減少させることができる。また、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に近接場光を励起するために入射偏光はp偏光である。空気とSi基板62との界面における反射率R
pは次の(1)式で与えられる。
【数1】
【0076】
ここで、N
tはSiの複素屈折率、N
iは空気の複素屈折率を表す。N
tiは複素屈折率の比である。また、n
tはSiの屈折率、κ
tはSiの消光係数、n
iは空気の屈折率、κ
iは空気の消光係数、θ
iは入射角を表す。空気とSi基板との界面における反射率を求めるために、n
t=3.48、κ
t=0、n
i=1、κ
i=0を代入すると、
図6に示す、反射率R
pの入射角θ
iに対する依存特性が得られる。
図6から分かるように、特に入射角が74度のときに反射率が約10
−6に低減され、垂直入射に比べ反射率が大幅に低減される。また、入射角を74度以外にすると反射率が増加するので露光時間が増加してしまう。露光プロセスを効率良く行うために、入射角度としては反射率10%以内を満たす57度以上、82度以下にすることが望ましい。
【0077】
その結果、
図7(a)に示すように、Si基板62の内部に多くの入射光が伝搬し、近接場露光用マスク61の近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光が効率良く発生する。近接場光が発生した部分68の近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。この第4実施形態においては、波長が1550nmのLEDを用い、入射パワー60mWにて1時間露光を行う。露光をされたレジスト層54を有するSi基板52は現像液に浸積して30秒間の現像が行われ、続いて純水で洗浄され、その後、エアブローで水分が除去される。
図7(b)に示すように、露光されたレジスト部分54aは現像液に溶けて溝部55が形成され、近接場露光用マスク61の近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に対応した、幅50nm、深さ50nmのパターン54bをSi基板52上に作製することができる。深さ50nmという値は、近接場露光用マスク61の近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で発生した近接場光強度の浸み出し長に対応している。
【0078】
以上説明したように、第4実施形態によれば、空気とSiとの界面での反射率を低減することが可能となり、露光時間を短縮することができる。
【0079】
(第5実施形態)
第4実施形態では、近接場露光用マスク61の裏面(近接場光発生膜パターン66aが形成された側と反対側のSi基板の面)から光を照射して露光を行ったが、第5実施形態による近接場露光方法は、近接場露光用マスク61の表側、すなわち近接場光発生膜パターン66aが形成された側の面から光を照射する方法である。この第5実施形態の近接場露光方法について
図8(a)乃至
図8(d)を参照して説明する。
【0080】
まず、
図8(a)に示すように、第4実施形態と同様に、Si基板52上にレジスト層54をスピンコート法などによる塗布方法を用いて形成する。続いて、
図8(a)に示すように、Si基板62に近接場光発生膜パターン66aを形成した近接場露光用マスク61を用意する。この近接場露光用マスク61は第4実施形態で用いたものと同じ構成を有している。
【0081】
次に、
図8(b)に示すように、近接場光発生膜パターン66aをレジスト層54と密着させる。続いて
図8(c)に示すように、近接場露光用マスク61の表面から波長が1550nmの光を照射する。入射偏光はp偏光である。また、入射光は斜めの角度θ
iで入射する。光はレジスト層54を伝播するが、使用している波長はレジストが感光する波長よりもずっと長いために感光されることはない。しかし、近接場露光用マスク61の近接場光発生膜パターン66aとレジスト層54との界面に到達した光は、
図8(d)に示すように、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光69に変換される。近接場光69が発生した近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。従って、近接場露光用マスク61の表側から光を照射した場合でも微細パターンを形成することができる。
【0082】
近接場露光用マスク61の裏面から波長が1550nmの光を照射したときに近接場露光用マスク61の近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に近接場光が効率良く発生させるためには、空気とSi基板62との界面での反射率を抑え、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に伝搬する光量を大きくする必要がある。この第5実施形態においても第4実施形態と同様に(1)式を用いて計算すると、
図9に示すように、入射角θ
iに対するSi基板52を伝搬する入射光の割合が得られる。ここで、レジスト54の屈折率=1.70、消光係数=0とした。
図9からわかるように、特に入射角が38度のときに透過率77%が得られ、垂直入射に比べ光量が45%増加する。また、入射角を38度からずれると透過率が減少するので露光時間が増加してしまう。露光プロセスを効率良く行うために、入射角度としては透過率90%以上を満たすために、26度以上、47度以下にすることが望ましい。その結果、
図8(d)に示すように、レジスト層54の内部に多くの入射光が伝搬し、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に近接場光69が効率良く発生する。近接場光69が発生した近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。露光光源として波長が1550nmのLEDを用い、入射パワー30mWにて2時間の露光を行った。露光されたレジスト層54を含むSi基板52は、現像液に浸積して30秒間の現像を行い、純水で洗浄し、エアブローで水分を除去する。露光されたレジスト部分54aは現像液に溶け、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に対応したパターンが形成される。近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に沿って幅50nm、深さ50nmのパターンを作製することができる。
【0083】
また、第5実地形態のように近接場露光用マスク61の表側から光を照射した場合は、第4実施形態のように近接場露光用マスク61の裏面から光を照射した場合と比較すると、近接場露光用マスク61の近接場光発生膜パターン66aのエッジ部での近接場光が励起しやすい。その理由は、近接場露光用マスク61の裏面から光を照射したときは、Si基板62側における近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光が発生し、その近接場光がレジスト層54側における近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に移動することでレジスト層54が感光される。近接場光がSi基板62側における近接場光発生膜パターン66aのエッジ部からレジスト層54側における近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に移動するときに近接場光発生膜パターン66aによって近接場光の一部が吸収され、近接場光の強度が減少してしまう。一方、近接場露光用マスク61の表側から光を照射した場合は、レジスト層54を伝搬後、レジスト層54側における近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光が発生するため、近接場露光用マスク61の裏面から光を照射したときと比較すると近接場光発生膜パターン66aによる近接場光の強度の減少は起きない。
【0084】
以上説明したように、第5実施形態によれば、空気とSiとの界面での反射率を低減することが可能となり、露光時間を短縮することができる。
【0085】
(第6実施形態)
第1および第2実施形態では、近接場光発生膜パターン66aの材料としてCrを用いたが、第6実施形態による近接場露光方法は、近接場光発生膜パターン66aの材料としてAuを用いた場合を用いた方法である。第6実施形態による近接場露光方法について
図10(a)乃至
図11(d)を参照して説明する。
【0086】
まず、
図10(a)に示すように、第4実施形態と同様にSi基板52にレジスト層54をスピンコート法などによる塗布方法を用いて形成する。続いて、
図10(a)に示すように、Si基板62にAuからなる近接場光発生膜パターン67aを形成した近接場露光用マスク61Aを用意する。
【0087】
この近接場露光用マスク61Aは、以下のように作製される。
図10(b)に示すように、Si基板62にレジスト層64を塗布する。続いて
図10(c)に示すように、例えば電子線描画装置(図示せず)を用いてレジスト層64にパターン64bを描画する。パターン形成においては、電子線描画装置に限定されることは無い。パターン描画後、現像液を用いてレジスト層64の現像を行う。現像後は、超純水にて洗浄を行い、エアブローで水分を除去する。このとき、電子線が照射されない領域からなるパターン64aがSi基板62上に残置する。その後、
図10(d)の示すように、パターン64aが形成されたSi基板40に蒸着法やスパッタリング法で近接場光発生膜67を形成する。近接場光発生膜67の材料としてはAuを使用し、ライン幅100nm、スペース幅100nm、高さ40nmのパターン67aを作製した。残ったレジスト64aはアセトンなどの有機溶媒で除去する。完成した近接場露光用マスク61Aを
図10(e)に示す。
【0088】
このようにして形成された近接場露光用マスク61Aの近接場光発生膜パターン67aをレジスト層54と密着させる(
図11(a))。続いて、
図11(b)に示すように、近接場露光用マスク61Aの上面(裏面)から、波長が1550nmのLEDを用い、入射パワー60mWにて15分の露光を行った。入射偏光はp偏光で、入射角は74度で行った。
【0089】
近接場露光用マスク61Aの近接場光発生膜パターン67aのエッジ部で近接場光68が発生し、近接場光68が発生した近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。露光をされたサンプルは、現像液で30秒の現像を行い、純水で洗浄し、エアブローで水分を除去した。
図11(d)に示すように、露光されたレジスト部分54aは現像液に溶け、近接場光発生膜パターン67aのエッジ部に対応した、幅50nm、深さ50nmのパターン54bを作製することができた。
【0090】
以上説明したように、第6実施形態によれば、空気とSiとの界面での反射率を低減することが可能となり、露光時間を短縮することができる。
【0091】
(第7実施形態)
第7実施形態による近接場露光方法について
図12(a)乃至12(e)を参照して説明する。この第7実施形態は、第4実施形態の近接場露光用マスク61上に反射防止膜を形成した構成の近接場露光用マスクを用いる。
【0092】
まず、
図12(a)に示すように、第4実施形態と同様にSi基板52にレジスト層54をスピンコート法などによる塗布方法を用いて形成する。続いて、
図12(a)に示すように、Si基板62に近接場光発生膜パターン66aと反射防止膜70を形成した近接場露光用iマスク61Bを用意する。反射防止膜70は、近接場光発生膜パターン66aが形成された側と反対側のSi基板62の面に、蒸着法で作製する。この第7実施形態では反射防止膜70を蒸着法で作製したが、この方法に限定されるものではない。反射防止膜70としては、MgF
2、SiO
2、TiO
2、ZnO
2、CeF
3などが使用可能である。また、反射防止膜70は単層、または多層構造であってもよい。
【0093】
次に、
図12(b)に示すように、近接場光発生膜パターン66aをレジスト層54と密着させる。続いて
図12(c)に示すように、近接場露光用マスク61Bの上面(裏面)から波長が1550nmのLEDを用い、入射パワー60mWにて1時間の露光を行う。入射偏光はp偏光で、入射角は45度で行った。第4実施形態のように、入射角が74度から大きく異なる場合、反射率は増加するが、近接場露光用マスク61B上に反射防止膜70を形成することで入射光パワーの反射率を減少することができる。露光が行われると、
図12(d)に示すように、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光68が発生し、近接場光68が発生した近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。露光をされたサンプルは、現像液で30秒間の現像を行い、純水で洗浄し、エアブローで水分を除去した。
【0094】
次に、
図12(e)に示すように、露光されたレジスト部分54aは現像液に溶け、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に対応した、幅50nm、深さ50nmのパターン54bを作製することができる。
【0095】
以上説明したように、第7実施形態によれば、空気とSiとの界面での反射率を低減することが可能となり、露光時間を短縮することができる。
【0096】
(第8実施形態)
第8実施形態による近接場露光方法について
図13(a)乃至13(e)を参照して説明する。この第8実施形態は、(a)乃至12(e)に示す第7実施形態における反射防止膜としてサブ波長構造を有する構成としたものである。
【0097】
まず、
図13(a)に示すように、第4実施形態と同様にSi基板52上にレジスト層54をスピンコート法などによる塗布方法を用いて形成する。続いて、
図13(a)に示すうに、Si基板62に近接場光発生膜パターン66aと、サブ波長構造72を形成した近接場露光用マスク61Cを用意する。
【0098】
なお、サブ波長構造72は次のように作成した。Si基板62の裏面、すなわち近接場光発生膜パターン66aが形成された側の面と反対側の面に電子線レジストを塗布し、例えば電子ビーム描画装置で電子線レジストをパターニングした後、このパターニングされた電子線レジストをマスクとして、例えばSF
6ガスでSi基板62をエッチングすることで、2次元円錐構造を有するサブ波長構造72を得ることができた。円錐構造体の周期は例えば400nm、円錐構造体の高さは例えば700nmである。この第8実施形態ではサブ波長構造72を有する反射防止膜を電子ビーム描画で作製したが、本実施形態ではこの方法に限定されるものではない。
【0099】
次に、
図13(b)に示すように、近接場露光用マスク61Cの近接場光発生膜パターン66aをレジスト層54と密着させる。続いて、
図13(c)に示すように、近接場露光用マスク61Cの裏面から波長が1550nmのLEDを用い、入射パワー60mWにて1時間の露光を行う。入射偏光はp偏光で、入射角は45度で行う。第4実施形態のように、入射角が74度から大きく異なる場合、反射率は増加するが、近接場露光用マスク上にサブ波長構造72を形成することで入射光パワーの反射率を減少することができる。露光することにより、
図13(d)に示すように、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光68が発生し、近接場光68が発生した近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。露光をされたレジスト層54を有するSi基板52は、現像液で30秒間の現像を行い、純水で洗浄し、エアブローで水分を除去する。すると
図13(e)に示すように、露光されたレジスト部分54aは現像液に溶け、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に対応した、幅50nm、深さ50nmのパターン54bがSi基板52上に作製することができる。
【0100】
以上説明したように、第8実施形態によれば、空気とSiとの界面での反射率を低減することが可能となり、露光時間を短縮することができる。
【0101】
(第9実施形態)
第9実施形態による近接場露光方法について
図14(a)乃至14(e)を参照して説明する。この第9実施形態の近接場露光方法は、
図12(a)乃至12(e)に示す第7実施形態において、反射防止膜として、多層構造の反射防止膜を近接場露光用マスクの裏面に形成した構成となっている。
【0102】
まず、
図14(a)に示すように、第4実施形態と同様にSi基板52にレジスト層54をスピンコート法などによる塗布方法を用いて形成する。続いて、
図14(a)に示すように、Si基板62に近接場光発生膜パターン66aと、多層構造の反射防止膜74とを設けた近接場露光用マスク61Dを用意する。多層構造の反射防止膜74は近接場光発生膜パターン66aが形成された側の面とは反対側のSi基板62の面に形成され、光が入射する側(Si基板62から最も遠い側)からSi基板62に向かって屈折率が例えば1から3.48に変化するように構成する層が配置された構造を有している。本実施形態においては、多層構造の反射防止膜74は、層数が例えば10層、それぞれの層の膜厚が50nmであり、スパッタリング法で作製する。スパッタ時にSiターゲットにO
2ガス混合比を調整することで、各層の屈折率を変化させた。この第9実施形態では反射防止膜をスパッタリング法で作製したが、この方法に限定されるものではない。反射防止膜の材料としては、MgF
2、SiO
2、TiO
2、ZnO
2、CeF
3、As
2S
3、SrTiO
3、AgClなどが使用可能である。また、反射防止膜の層数は限定されない。
【0103】
次に、
図14(b)に示すように、近接場露光用マスク61Dの近接場光発生膜パターン66aをレジスト層54と密着させる。続いて
図14(c)に示すように、近接場露光用マスク61Dの裏面から波長が1550nmのLEDを用い、入射パワー60mWにて1時間の露光を行う。入射偏光はp偏光で、入射角は45度で行う。第4実施形態のように、入射角が74度から大きく異なる場合、反射率は増加するが、近接場露光用マスク上に多層構造の反射防止膜74を形成することで入射光パワーの反射率を減少することができる。露光を行うと、
図14(d)に示すように、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光68が発生し、近接場光68が発生した近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。露光をされたレジスト層54を有するSi基板52は、現像液で30秒間の現像を行い、純水で洗浄し、エアブローで水分を除去する。すると、
図14(e)に示すように、露光されたレジスト部分54aは現像液に溶け、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に対応した、幅50nm、深さ50nmのパターン54aをSi基板52上に作製することができる。
【0104】
以上説明したように、第9実施形態によれば、空気とSiとの界面での反射率を低減することが可能となり、露光時間を短縮することができる。
【0105】
(第10実施形態)
第10実施形態による近接場露光方法について
図15(a)乃至15(e)を参照して説明する。この第10実施形態の近接場露光方法は、
図12(a)乃至12(e)に示す第7実施形態において、反射防止膜として、多層構造の反射防止膜76を近接場露光用マスクの裏面に形成した構成となっている。
【0106】
まず、
図15(a)に示すように、第4実施形態と同様にSi基板52上にレジスト層54をスピンコート法などによる塗布方法を用いて形成する。続いて、
図15(a)に示すように、Si基板62に近接場光発生膜パターン66aと、低い屈折率を持つ薄膜と高い屈折率を持つ薄膜を交互に積層した構造を有する反射防止膜76と有する近接場露光用マスク61Eを用意する。本実施形態においては、反射防止膜76は、スパッタリング法を用い、SiO
2とTiO
2を交互に積層し、層数が4、膜厚をそれぞれ50nmとする。この実施形態では反射防止膜をスパッタリング法で作製したが、この方法に限定されるものではない。反射防止膜としては、MgF
2、SiO
2、TiO
2、ZnO
2、CeF
3、As
2S
3、SrTiO
3、AgClなどが使用可能である。また、反射防止膜の層数は限定されない。
【0107】
次に、
図15(b)に示すように、近接場露光用マスク61Eの近接場光発生膜パターン66aをレジスト層54と密着させる。続いて
図15(c)に示すように、近接場露光用マスク61Eの裏面から波長が1550nmのLEDを用い、入射パワー60mWにて1時間の露光を行う。入射偏光はp偏光で、入射角は45度で行う。第4実施形態のように、入射角が74度から大きく異なる場合、反射率は増加するが、近接場露光用マスク上に多層構造の反射防止膜76を形成することで入射光パワーの反射率を減少することができる。
【0108】
このようにして露光を行うと、
図15(d)に示すように、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部で近接場光68が発生し、近接場光68が発生した近傍のレジスト部分54aは多段階遷移過程を経て解離する。露光をされたサンプルは、現像液で30秒間の現像を行い、純水で洗浄し、エアブローで水分を除去する。すると、
図15(e)に示すように、露光されたレジスト部分54aは現像液に溶け、近接場光発生膜パターン66aのエッジ部に対応した、幅50nm、深さ50nmのパターン54bをSi基板52上に作製することができる。
【0109】
以上説明したように、第9実施形態によれば、空気とSiとの界面での反射率を低減することが可能となり、露光時間を短縮することができる。
【0110】
(第11実施形態)
第11実施形態によるパターン形成方法について
図16(a)乃至
図18を参照して説明する。この第11実施形態のパターン形成方法は、ナノインプリント法と近接場露光方法を組み合わせた方法である。
【0111】
まず、
図16(a)、16(b)に示すようにSi基板80を用意し、このSi基板80上に光硬化樹脂膜82を形成する。この光硬化樹脂膜82の形成には、例えばスピンナー法を採用してもよい。このスピンナー法では、光硬化樹脂82の粘度、固形分含有量及び溶剤の蒸発速度を参照しつつ、スピンナーの回転数を制御することにより、所望の膜厚を得ることができる。ちなみに、光硬化樹脂膜82の形成後、膜中に含まれている溶剤を除去すべくプリベークを行うようにしてもよい。
【0112】
次に、
図16(c)に示すように、Si基板92上に近接場光発生膜パターン94が形成されたテンプレート90を用意する。このテンプレート90は、第1実施形態、第4乃至第10実施形態で説明した近接場露光用マスクを用いることができる。そして、Si基板80上に形成された光硬化樹脂膜82と、テンプレート90の近接場光発生膜パターン94とを密着させる(
図16(d))。
【0113】
続いて、密着させた状態で、
図16(e)に示すように、シリコン基板80の裏面側、すなわち光硬化樹脂膜82が形成された側と反対側から光を照射する。この光の照射は、0.1秒乃至20秒程度照射する。すると、テンプレート90の近接場光発生膜パターン94のエッジ部から近接場光は発生し、発生させた近接場光が光硬化樹脂膜に到達する。ちなみに、本実施形態において照射する光は、いわゆる非共鳴光であるため、光硬化樹脂膜82は、照射された光により直接的に感応するが、照射時間および強度を調整することにより、全体に亘り化学変化することはない。なお、
図16(d)に示すステップにおいて、光硬化樹脂膜82が塗布されたSi基板80とテンプレート90との間隔については、照射する光の波長に基づいて決定してもよい。また、本実施形態においては、テンプレート90としては、Si基板92上に近接場光発生膜パターン94が形成されたテンプレートを用いたが、凹凸モールドであってもよく、この凹凸モールドの材料はSiであってもよい。
【0114】
テンプレート90のパターン94に応じた凹凸のエッジ部分において、近接場光が発生していることを示す写真を
図18に示す。
図18から分かるように、凹凸のエッジ部分において近接場光の光強度がより高くなっている。この発生させた近接場光により、光硬化樹脂膜82が感応する結果、
図17(a)に示すように、上記エッジ部分に応じた局所領域82aにおいて光硬化樹脂膜82が硬化することになる。
【0115】
次に、
図17(b)に示すように、テンプレート90をSi基板80から剥離させる。
図16(e)に示すステップにおいて発生した近接場光によって光硬化樹脂膜82が硬化しているエッジ近傍82aは、テンプレート90にそのまま固く付着していることから、かかる硬化した光硬化樹脂膜82aはテンプレートとともにSi基板から剥離することになる。これに対して、
図16に示すステップにおいて近接場光が発生しないエッジ近傍以外の光硬化樹脂膜82bが硬化することもなく軟らかい状態にあるため、テンプレートとともに剥離することなくSi基板80上に残存することになる(
図17(b))。
【0116】
次に、Si基板80上に残存した光硬化樹脂膜82bをマスクとしてSi基板80をエッチングすることにより、微細なパターンを有するシリコン基板80aを得ることができる。
【0117】
テンプレート90の近接場光発生膜パターン94は、Au、Al、Ag、Cu、Crの群から選択された少なくとも1つの元素を含む金属から形成され、膜厚が0nmより大きく40nm以下であってもよい。照射する光は、波長が1μm乃至5.0μmであってもよい。また、テンプレート90側から光を照射してもよい。また光硬化樹脂膜82は波長1μm乃至5.0μmの光で硬化しなくてもよい。
【0118】
また、
図18に示すように凹凸モールドの凹部のエッジ部位がさらに微細なパターンとしての役割を果たすことになる。即ち、本実施形態を適用したナノインプリント方法では、凹凸のエッジ部分において急激に増強された近接場光により光硬化樹脂膜を局所的に硬化させ、剥離時において急峻な剥離面を作り出すことができ、これにより凹凸からなるパターンと比較してはるかに微細なパターンを作り出すことが可能となる。この凹凸のエッジ部分では、照射される光に基づいてより急峻な電場勾配が存在するところ、かかる領域のみで反応する非断熱過程が利用可能となるため、10nm以下の微細なパターニングを精度よく実現することが可能となる。
【0119】
なお、本実施形態による実施例1乃至実施例8に用いられる、テンプレート材料、基板材料、露光光源の波長、ならびに光硬化樹脂の波長を
図19に示す。また、本実施形態の比較例1乃至比較例4に用いられるテンプレート材料、基板材料、露光光源の波長、ならびに光硬化樹脂の波長を
図20に示す。
図19および
図20において、テンプレート材料はテンプレートの基板92の材料を示し、基板材料は露光される側の基板80の材料を示し、いずれもSiの他にガラスも用いている。また、
図19および
図20において、また、二重丸は非常に良好であることを示し、一重丸は良好であることを示し、三角はあまり良好ではないことを示している。
【0120】
以上説明したように、第11実施形態によれば、ナノインプリント方法と近接場露光方法と組み合わせてパターンを転写しているので、微細なパターンを形成することができる。
【0121】
(第12実施形態)
第12実施形態による近接場光リソグラフィ方法について
図21を参照して説明する。
【0122】
近接場露光方法や近接場光ナノインプリント方法は、近接場光が発生する部材をマスクやテンプレートに用いて行うリソグラフィ技術であり、通常照射する伝播光の波長よりも長波長の光で近接場光を発生させる。近接場光を用いると、本来反応しない、より短波長での光化学反応がレジストで起きることが知られている。したがって、近接場光が発生しない伝播光のみ照射されている部位では反応は起こらず、近接場光が存在する部位のみで光化学反応を起こし、パターニングできる。これは近接場露光方法および近接場光ナノインプリント方法の双方で起こる現象である。
【0123】
近接場光は、局所的に表面の曲率半径の小さい箇所に強く集中する。すなわち、角部近傍で、近接場光の電場強度が強くなる傾向がある。したがって、通常、ナノインプリントやマスクを用いた光露光では、マスクやテンプレートのラインの形状に依存したパターニングが行われる。しかし、マスク上のライン幅の両脇でのみ、露光やインプリントの硬化が起きれば、パターニングされるライン幅は半分以下になり、ライン数は倍になる。すなわち、近接場光を利用することにより、より高微細化のパターニングの結果が得られる。
【0124】
第12実施形態の近接場光リソグラフィ方法は、近接場露光用マスクまたはテンプレートとして、
図21に示す近接場発生部材100を用いる。この近接場発光部材100は、透明な基板102の対向する一方の面上に少なくとも1個の凸構造104が形成されている。基板102と凸構造104は、異なる材料で形成してもよいし、同じ材料で形成してもよい。それぞれの基板材料はSi、SiO
2、サファイア、フッ化マグネシウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、フッ化カルシウム等がある。そして、この凸構造104は、先端部104aと、側部104bとを有している。側部104bは先端部104aと、基板102とを接続する側面となっている。そして、先端部104aと側部104bは、金属、CNT(Carbon nanotube)、またはグラフェンからなる近接場光発生層106によって覆われている。すなわち、近接場発生層106は、凸構造104の先端部を覆う第1の層106aと、凸構造104の側部104bを覆う第2の層106bとを備えている。なお、基板102の凸構造104が形成された面であって、凸構造104以外の領域にも金属、CNT(Carbon nanotube)、またはグラフェンからなる第3の層106cが形成されていてもよいし、形成されていなくともよい。
【0125】
この近接場光発生部材100は、感光性樹脂層(レジスト層)122が形成された基板120と、感光性樹脂122が凸構造104と対向するように配置される。そして、この状態で、近接場光発生部材100の裏面、すなわち凸構造104が形成された面と反対側の面から光が照射されることにより、近接場光発生層106から近接場光が発生され、この近接場光によって感光性樹脂122が露光される。なお、基板120が透明基板であれば、基板120側から光を照射してもよい。
【0126】
金属、CNT(Carbon nanotube)、グラフェンは近接場光を発生させ、導波させる機能を有している。これらの材料によって発生された近接場光は、進行方向と垂直な、平面波伝播光の一般的な偏光成分よりも、進行方向(凸構造の側面内で基板から凸構造の先端部へ向けた方向)の偏光成分、いわゆるz偏光(進行方向の偏光)が、リソグラフィ技術に用いるにはより良く、ダブルパターニングの特徴を有している。したがって、リソグラフィ技術におけるレジスト、あるいはナノインプリント方法における硬化樹脂の重合開始剤反応がz偏光に強く反応するものであるとより強くダブルパターニングの形成が可能となる。
【0127】
また、凸構造の幅を細くすることにより、ダブルパターニングでなくとも細いパターニングを行うことが可能となる。
【0128】
(実施例1)
近接場光発生部材100として近接場光発生層106の各部の膜厚を変えた試料1乃至試料4を用意する。なお、近接場光発生層106の材料としてCrを用いた。そして、基板102側から波長532nmの光を照射し、近接場光学顕微鏡で近接場光発生部材100の凸構造104の光強度の分布を調査した。凸構造104は100nm/100nmのライン・アンド・スペース構造であり、凸構造の高さは450nmである。なお、光強度の分布は、ライン・アンド・スペース構造のサイズおよび凸構造の高さには依存しない。
【0129】
調査結果を下記の表1および
図22A乃至22Dに示す。表1中のa、b、cは、近接場光発生層106の第1の層106a、第2の層106b、第3の層106cの膜厚を示している。
図22A乃至22Dはそれぞれ、試料1乃至試料4の光強度の分布を示す図である。
【0130】
ダブルパターニングで形成されるラインの間隔を同一に近い間隔とするには、近接場光発生部材100の凸構造104の幅は、スペース間隔の半分程度が良いことになる。
【表1】
【0131】
試料4はきれいなダブルパターニングにはなっていなかったが、試料1乃至試料3はダブルパターニングになっていた。ダブルパターニング構造のピーク強度比は試料1:試料2:試料3:試料4=8:27:22:2であった。したがって、試料2、3が好ましく、特に試料2が良かった。これは、側部104bで発生した近接場光が先端部104a方向へ導波し、先端部104aの角部に到達してその角部の光電場が増強されている。同様の構造をFDTD法(Finite-difference time-domain method)でシミュレーションしたところ、z偏光成分が、特に角部位での電場が増強されていた。したがって、リソグラフィにおけるレジスト、あるいはナノインプリントにおける硬化樹脂の重合開始剤反応がz偏光に強く反応するものであると、より強くダブルパターニングの形成が可能となる。スピンコートでは、面内、特に動径方向(中心から外側への方向)に樹脂の主鎖が並びやすいため、レジスト樹脂の構造を工夫することにより、上記特徴を起こすことができる。
【0132】
上記試料1乃至試料4をマスクとして用い、
図21に示すように、近接場露光用マスク100の、遮光膜側に、レジスト122が塗布された被露光基板120を配置し、露光を行った。このポジ型レジストとしては、例えば、ジアゾナフトキノン−ノボラック型レジスト、化学増幅ポジ型レジストが挙げられる。ここで用いるネガ型レジストとしては、化学増幅ネガ型レジスト、光カチオン重合型レジスト、光ラジカル重合型レジスト、ポリヒドロキシスチレン−ビスアジド型レジスト、環化ゴム−ビスアジド型レジスト、ポリケイ皮酸ビニル型レジスト、等が挙げられる。これらに対して露光を実施したところ、ダブルパターニング形状は上記表1の評価順にきれいにパターニングが可能となった。
【0133】
ラインをパターニングする場合は照射する光の偏光はp偏光が望ましい。この場合、p偏光とはパターンの長さ方向と照射する光の電場方向が垂直の偏光である。
【0134】
金属種は、Crの他、Au、Al、Ag、Cu、Cr、Sb、W、Ni、In、Ge、 Sn、Pb、Zn、Pdを用いることができる。金属の代わりにグラフェンを成膜したところ、これでもダブルパターニングが確認できた。カーボンナノチューブを成膜したところ、カーボンナノチューブでもダブルパターニングの効果が確認できた。
【0135】
(実施例2)
実施例1でのダブルパターニングが可能なパラメータの範囲を調べたところ、aは15nm〜80nm、bは2nm〜20nm、cは0nm〜80nmであった。a>c、b>cである方がより明確なダブルパターニング構造が確認できた。第3の層106cの膜厚が存在する、あるいは厚いと、側面に発生する近接場光の強さが減少する。これは第3の層106cにおいて、近接場光を発生させる前に光が吸収され、減少することが理由である。また、a>bの方がより良い結果を得られた。これは、側面の膜厚が先端部の膜厚より薄い方が、凸構造104の内側と凸構造の外側の両方の近接場光を利用できることによる。
【0136】
上記条件の成膜を行うためには、
図23(a)、23(b)に示すように、線源方向を斜めからと設定し、両方向から成膜を行えば良い。成膜方法は蒸着、スパッタ、MBEが一般的であるが、これらに限らない。照射線源からの照射角度を調整することにより、第1の層106a、第2の層106b、第3の層106cの膜厚や膜厚比を調整することができる。
【0137】
(実施例3)
実施例1に用いた試料1乃至試料4の近接場光発生部材100をナノインプリントのテンプレートとして利用し、インプリントリソグラフィを行った。紫外線効果樹脂には、母材をアクリル酸エステル、重合開始剤をベンゾフェノン、あるいはチオキサントン、あるいは2,4ジエチルチオキサントンを用いたが、これに限らない。紫外線硬化樹脂の前駆体溶液を基板に塗布し、重りとして、厚み5cmのガラスを載せ、テンプレートを基板に押し付けた。照射光は紫外線の代わりに488nmの光を用いた。その結果、照射後、テンプレートを剥離し、固化していない前駆体溶液を除いたところ、ダブルパターニングの形状が確認できた。
【0138】
(実施例4)
実施例3でのダブルパターニングが可能なパラメータの範囲を調べたところ、a:15nm〜80nm、b:2nm〜20nm、c:0nm〜80nmの範囲であった。a>c、b>cである方がより明確なダブルパターニング構造が確認できた。また、a>bの方がより明確なダブルパターニング構造が得られた。
【0139】
以上説明したように、第12実施形態によれば、レジストを利用した近接場光露光方法やナノインプリント方法において、ダブルパターニングを効率よく行うことができ、マスクやインプリントテンプレートの加工精度を向上させることができる。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。