特許第6014142号(P6014142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6014142N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドの投与に関するスキーム
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  • 特許6014142-N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドの投与に関するスキーム 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014142
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドの投与に関するスキーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20161011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 33/24 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20161011BHJP
   C07D 307/85 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61K31/343ZMD
   A61P35/00
   A61K45/00
   A61K31/65
   A61K33/24
   A61K31/138
   C07D307/85
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-529056(P2014-529056)
(86)(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公表番号】特表2014-526457(P2014-526457A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】FR2012052004
(87)【国際公開番号】WO2013034863
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年5月1日
(31)【優先権主張番号】1102727
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/573,585
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515255733
【氏名又は名称】ファーマサイクリックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クロース,イオアナ
(72)【発明者】
【氏名】ロベール,レナータ
(72)【発明者】
【氏名】ジャケ−ベスコン,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥピル,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】シュネル,マリロール
(72)【発明者】
【氏名】フリアール,シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】バラスバラマニアン,スリラム
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−522157(JP,A)
【文献】 Clin. Cancer Res.,2009年 5月15日,Vol.15,No.10,P.3472-3483
【文献】 Mol. Cancer Ther.,2006年 5月,Vol.5,No.5,P.1309-1317
【文献】 Cancer Res.,"Abstract 2631: The HDAC inhibitor PCI-24781 potentiates the anti-tumor activity of tamoxifen in ER-positive breast cancer cells",2011年 4月15日,Vol.71,No.8_Suppl.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/343
A61K 31/138
A61K 31/65
A61K 33/24
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化3】

で示されるN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、又は薬学的に許容しうる酸もしくは塩基とのその付加塩である癌治療剤であって、ヒト癌患者における癌の処置における使用のための、単独で、又は手術、化学療法、ホルモン療法処置もしくは放射線療法との組み合わせで、式(I)で示される化合物が連続4日間投与され、その期間の後に式(I)で示される化合物の投与なしが連続3日間続くことを特徴とする(但し、化学療法は、FOLFOX(オキサリプラチン/フォリン酸/5−フルオロウラシル)ではない)、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、又は薬学的に許容しうる酸もしくは塩基とのその付加塩である癌治療剤
【請求項2】
酸塩の形態で使用されることを特徴とする、請求項1記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項3】
式(I)で示される化合物が1日2回投与の割合で連続4日間投与され、その期間の後に式(I)で示される化合物の投与なしが連続3日間続くことを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項4】
化学療法又はホルモン療法処置又は放射線療法と組み合わせて投与される、請求項1〜3のいずれか一項記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項5】
癌腫、腫瘍、新生物、リンパ腫、黒色腫、神経膠腫、肉腫又は芽細胞腫の処置における使用のための、請求項1〜4のいずれか一項記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項6】
固形腫瘍の処置における使用のための、請求項1〜5のいずれか一項記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項7】
乳癌の処置における使用のための、請求項1〜5のいずれか一項記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項8】
卵巣上皮癌、卵管癌、又は原発性腹膜癌の処置における使用のための、請求項1〜5のいずれか一項記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項9】
化学療法処置が、シスプラチン、ドキソルビシン又はペグ化リポソームドキソルビシンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【請求項10】
ホルモン療法処置がタモキシフェンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の式(I)で示される化合物である癌治療剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

で示されるN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、又は薬学的に許容しうる酸もしくは塩基とのその付加塩の新規な投与方法であって、癌の処置のための、単独で、又は手術、化学療法、ホルモン療法処置もしくは放射線療法との組み合わせでの投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミドは、特許出願WO2004/092115に記載されている強力なヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤である。それは、細胞増殖の阻害を可能にし、かつインビトロで培養腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導し、またそれは異種移植モデルにおいてインビボで腫瘍増殖を阻害する(Buggy et al., Mol. Cancer Ther 2006 5(5) 1309)。その薬理学的プロファイルにより、癌の処置においてそれが大きな治療的価値を有している。
【0003】
本発明において、式(I)のN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドは、それが連続4日間投与され、その期間の後に式(I)で示される化合物の投与なしが連続3日間続く場合、癌の処置において非常に有利な治療指数を有するということが確立された。
【0004】
より具体的には、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドが連続4日間投与され、その期間の後に式(I)で示される化合物の投与なしが連続3日間続いた場合、該化合物の最大耐性用量は、癌患者において大幅に増加したということが示された。その投与サイクルは、癌処置にとって必要な回数だけ何回も繰り返される。あるいは、それらの週次投与サイクルは、処置なしの1週間によって、周期的に中断されてもよい。
【0005】
この投与方法によって、癌処置のための十分な曝露を許しながら、製品に固有の血小板毒性を最小限に抑えることを可能にするという点で、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドのより良い使用を想定することが可能になる。
【0006】
本発明は、式(I):
【化2】

で示されるN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、又は薬学的に許容しうる酸もしくは塩基とのその付加塩であって、癌の処置における使用のための、単独で、又は手術、化学療法、ホルモン療法処置もしくは放射線療法との組み合わせで、式(I)で示される化合物が連続4日間投与され、その期間の後に式(I)で示される化合物の投与なしが連続3日間続くことを特徴とする(但し、化学療法は、FOLFOX(オキサリプラチン/フォリン酸/5−フルオロウラシル)ではない)、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、又は薬学的に許容しうる酸もしくは塩基とのその付加塩に関する。
【0007】
本発明の文脈において、塩酸塩の形態のN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)−ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドを使用することが好ましい。
【0008】
N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]−エトキシ}ベンズアミドは、有利には1日2回投与の割合で連続4日間投与され、その期間の後に式(I)の化合物の投与なしが連続3日間続く。
【0009】
特定の実施態様において、本発明の投与方法に従って処置される癌は、癌腫、腫瘍、新生物、リンパ腫、黒色腫、神経膠腫、肉腫又は芽細胞腫でありえる。本発明による投与方法は、固形腫瘍の処置に特に有用であり、さらにより特に乳癌の処置に有用である。卵巣上皮癌、卵管癌、及び原発性腹膜癌もまた特異的に標的化される。
【0010】
好ましくは、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドは、化学療法又はホルモン療法処置又は放射線療法と組み合わせて、本発明の投与方法に従って投与される。
【0011】
特定の実施態様において、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドは、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、シスプラチン、シクロホスファミド、パクリタキセル、カルボプラチン、カルボプラチン/パクリタキセル、シスプラチン/ドキソルビシン/シクロホスファミド、ペグ化リポソームドキソルビシン/シスプラチンより選択される化学療法処置との組み合わせで連続4日間投与され、その期間の後に該化合物のさらなる投与なしが連続3日間続く。より好ましくは、組み合わせ化学療法処置は、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン又はシスプラチンである。
【0012】
あるいは、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドは、ホルモン療法処置としてのタモキシフェンと組み合わせて連続4日間投与され、その期間の後に該化合物のさらなる投与なしが連続3日間続く。
【0013】
好ましい実施態様において、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)−ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドは、経口投与される。
【0014】
有用な用量は、患者の性別、年齢及び体重、投与経路、癌の性質及び任意の組み合わせ処置に従って変化し、そして1日あたりN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾ−フラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩の30mg/m2〜210mg/m2を範囲とする。より一般的には、有用な用量は、塩基として表す、1日あたりN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾ−フラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドの20mg〜480mgを範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1である。
図2図2である。
【0016】
臨床試験1: (単独療法におけるN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド)
臨床試験は、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩の毒性及び有効性を試験するために行った。固形腫瘍を有する36人の患者をこの試験に含めかつ処置した。最初の投与方法は、4時間の間隔をあけて2回の経口投与を連続14日間行い、その後、処置なしの1週間が続く、1サイクル3週間で試験した。4つの用量レベルを、1日2回30〜75mg/m2(塩として表す)で連続的に試験した。
【0017】
様々なN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドの用量レベルの認容性を、第1サイクルの終わりに評価(特に、血液学的毒性)した。
【0018】
結果は、用量を増加させることを制限するすべての毒性がgrade 4の血小板減少(1リットルあたり25giga未満血小板レベル)であることを示し、これは、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド処置を停止した後、可逆的であった(図1を参照のこと)。この第1の投与方法に従って、最大耐性用量は、一日2回75mg/m2であることが確立された。
【0019】
その投与方法を用いて観察された血小板の数の大幅な減少を回避するために、試験プロトコルを修正して新しい投与方法を提案した: 4時間の間隔をあけて2回の経口投与を連続4日間行い、次いで処置なしの3日間が続くが、この投与方法は、投与サイクルに対応する3週間の各週に適用された。このサイクルは、癌の処置にとって必要な回数だけ何回も繰り返すことができる。この新しい投与方法は、以前の投与方法よりも少ない血小板毒性を示し、そして患者がより高い用量レベル(1日2回90〜105mg/m2)で処置されることを可能にした。比較してみると、図2は、血小板レベルに関して、第2の投与方法が、一日2回75mg/m2の用量の第1の投与方法より大幅に有害性が少ないことを示している。第2の投与方法において、推奨用量及び最大耐性用量は、1日2回、それぞれ90mg/m2及び105mg/m2であることが確立された。
【0020】
臨床試験2: (N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドとシスプラチンとの組み合わせ)
N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とシスプラチンとの組み合わせを試験するための第I相臨床試験を、様々な固形腫瘍を有する約40人の患者に対して実施した。患者は、組み合わせによる処置を最大6サイクル受け、それぞれのサイクルは以下の形態で行った: N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド塩酸塩は、連続4日間投与され、その後、処置なしが連続3日間続き、この形態を1サイクル3週間のうちの最初の2週間実行した。シスプラチンは、各処置サイクルの3日目に投与された。サイクルの第3週目は、どの処置も行われなかった。
【0021】
処置の該当日、一日量のN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、4時間の間隔をあけて2回の経口投与からなる、80〜320mg(両端値を含む)(塩基として表す)であった。シスプラチンは、一定用量75mg/m2で投与された。
【0022】
処置サイクルの終わりに、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とシスプラチンとを組み合わせて含むプロトコルの毒性を評価した。非常に高い毒性が観察されない場合、患者は処置を続行した。2回のサイクル毎に、処置の有効性を腫瘍応答の評価(CTスキャン、MRI等)によって評価した。また認容性プロファイルも評価した(特に、血液学的毒性及び心毒性)。患者は、組み合わせによる処置を最大6サイクルの間継続した。
【0023】
臨床試験3: (N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドとドキソルビシンとの組み合わせ)
進行性固形腫瘍の処置において、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とドキソルビシンとの組み合わせを試験するための第I相臨床試験を、約40人の患者に対して実行した。患者は、組み合わせによる処置を最大6サイクル受け、それぞれのサイクルは以下の形態で行った: N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、連続4日間投与され、その後、処置なしが連続3日間続き、この形態は1サイクル4週間のうちの最初の3週間実行した。ドキソルビシンは、該サイクルの最初の3週間の3日目に注入された。該サイクルの第4週目は、どの処置も行われなかった。
【0024】
処置の該当日、一日量のN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、4時間の間隔をあけて2回の経口投与からなる、60〜150mg/m2(両端値を含む)(塩として表す)であった。ドキソルビシンは、一定用量25mg/m2で投与された。
【0025】
処置サイクルの終わりに、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とドキソルビシンとを組み合わせて含むプロトコルの毒性を評価した。非常に高い毒性が観察されない場合、患者は処置を続行した。2回のサイクル毎に、処置の有効性を腫瘍応答の評価(CTスキャン、MRI等)によって評価した。また認容性プロファイルも評価した(特に、血液学的毒性及び心毒性)。患者は、組み合わせによる処置を最大6サイクルの間継続した。
【0026】
臨床試験4: (N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドとペグ化リポソームドキソルビシンとの組み合わせ)
原発性白金耐性及び部分的白金感受性、卵巣上皮癌、卵管癌又は原発性腹膜癌の処置において、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とペグ化リポソームドキソルビシンとの組み合わせを試験するための第I相臨床試験を、約70人の患者に対して実行した。患者は、組み合わせによる4週間の処置サイクルに付した。2種類のスケジュールを試験した:
― スケジュール1: N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、連続4日間投与され、その後、処置なしが連続3日間続き、この形態は1サイクル4週間のうちの最初の3週間実行した。ペグ化リポソームドキソルビシンは、該サイクルの第1週の3日目に注入された。該サイクルの第4週目は、どの処置も行われなかった。
― スケジュール2: N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、1サイクル4週間のうちの第1週に連続4日間投与され、その後、処置なしが連続3日間続いた。ペグ化リポソームドキソルビシンは、該サイクルの第1週の3日目に注入された。該サイクルの最後の3週間は、どの処置も行われなかった。
【0027】
処置の該当日、一日量のN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、4時間の間隔をあけて2回の経口投与からなる、60〜150mg/m2(塩として表す)であった。ペグ化リポソームドキソルビシンは、一定用量40mg/m2で投与された。
【0028】
処置サイクルの終わりに、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とペグ化リポソームドキソルビシンとを組み合わせて含むプロトコルの毒性を評価した。非常に高い毒性が観察されない場合、患者は処置を続行した。2回のサイクル毎に、処置の有効性を腫瘍応答の評価(CTスキャン、MRI等)によって評価した。また認容性プロファイルも評価した(特に、血液学的毒性及び心毒性)。
【0029】
臨床試験5: (N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミドとタモキシフェンとの組みあわせ)
【0030】
進行性乳癌の処置において、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とタモキシフェンとの組み合わせを試験するための第I相臨床試験を、約40人の患者に対して実行した。患者を、組み合わせによる処置のサイクルに付し、それぞれのサイクルは以下の形態で行った: N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、連続4日間投与され、その後、処置なしが連続3日間続いた。タモキシフェンは、処置の期間中、毎日投与された。
【0031】
処置の該当日、一日量のN−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩は、4時間の間隔をあけて2回の経口投与からなる、160〜320mg(両端値を含む)(塩基として表す)であった。タモキシフェンは、一定量20mgで投与された。
【0032】
2回の処置サイクルの終わりに、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド塩酸塩とタモキシフェンとを組み合わせて含むプロトコルの毒性を評価した。非常に高い毒性が観察されない場合、患者は処置を続行した。2回のサイクル毎に、処置の有効性を腫瘍応答の評価(CTスキャン、MRI等)によって評価した。また認容性プロファイルも評価した(特に、血液学的毒性及び心毒性)。
【0033】
本明細書の先に記載の様々な臨床試験は、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミドが連続4日間投与され、その期間の後、連続3日の投与なしが続く投与方法は、製品固有の血小板毒性を最小限にすることを可能にし、かつそれによって癌の処置のための治療用量を増加させることを可能にすること示している。
図1
図2