(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行手段を有する作業車に、予め敷設されたエリアワイヤによって画定される作業領域を自律走行させる自律走行作業車の制御装置であって、前記作業領域は、互いに対向するエリアワイヤ間の距離が所定長さ以上にわたって所定値以下である狭路エリアと該狭路エリアに連なる広路エリアとを含み、
前記エリアワイヤを流れる電流によって発生する磁界の強度を検出する磁界強度検出部と、
前記作業領域を走行中の前記作業車が前記エリアワイヤに到達する度に前記作業車が旋回かつ直進走行するように、前記磁界強度検出部の検出値に基づいて前記走行手段を制御する走行制御部と、
前記作業車が第1旋回後に第2旋回をするまでの間の前記磁界強度検出部の検出値が、前記狭路エリアにおける磁界強度の最小値に基づいて予め設定された第1の閾値より大きいとき、または前記第1旋回後、前記磁界強度検出部の検出値が所定時間継続して第2の閾値より大きいとき、前記作業車が前記狭路エリアを走行中であると判定する狭路判定部とを備えることを特徴とする自律走行作業車の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1〜
図19を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る自律走行作業車の全体構成を概略的に示す側面図であり、
図2は平面図である。本発明の自律走行作業車(以下、単に作業車と呼ぶ場合もある)は、種々の作業車に適用することができるが、本実施形態では、特に芝刈り作業を行う芝刈り機に適用する。なお、以下では、平面視における作業車の直進方向(長さ方向)および直進方向に垂直な車幅方向を、それぞれ前後方向および左右方向と定義するとともに、作業車の高さ方向を上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0009】
図1,2に示すように、自律走行作業車1は、シャシ11とフレーム12とを有する車体10と、車体10を接地面GRから走行可能に支持する左右一対の前輪13および左右一対の後輪14とを備える。前輪13は、ステー11aを介してシャシ11の前側に回転可能に取り付けられている。後輪14は、前輪13よりも大径であり、シャシ11の後側に直接、回転可能に取り付けられている。作業車1は、ユーザ自身が搬送可能な重量および寸法を有する。一例を挙げると、作業車1の全長(前後方向長さ)は500mm程度、全幅は300mm程度、高さは300mm程度である。
【0010】
シャシ11とフレーム12とで包囲された作業車1の内部空間15には、作業機16と、作業機駆動用の作業モータ17と、後輪駆動用の走行モータ18と、充電ユニット19と、バッテリ20と、収納ボックス30とが配置される。
【0011】
作業機16は、回転体と回転体に取り付けられた芝刈り用のブレードとを有し、全体が略円盤形状を呈する。作業機16は、回転体中央の回転軸を上下方向に向けて配置され、高さ調節機構21により接地面GRからのブレードの高さを調整可能に構成される。高さ調節機構21は、例えばユーザにより操作可能なねじを備える。作業モータ17は、作業機16の上方に配置された電動モータにより構成され、その出力軸が回転体の回転軸に連結され、回転体と一体にブレードを回転駆動する。
【0012】
走行モータ18は、左右の後輪14の左右内側に配置された一対の電動モータ18L,18Rにより構成される。走行モータ18L,18Rの出力軸は、左右の後輪14の回転軸にそれぞれ連結され、走行モータ18L,18Rは、左右の後輪14を互いに独立に回転駆動する。すなわち、作業車1は、前輪13を従動輪、後輪14を駆動輪として構成され、走行モータ18L,18Rは、左右の後輪14を互いに独立に正転(前進方向への回転)または逆転(後進方向への回転)させる。走行モータ18L,18Rは、作業車1の向きを変更する旋回部としての機能も有し、左右の後輪14の回転に速度差を生じさせることで、作業車1は任意の方向に旋回することができる。
【0013】
例えば、左右の後輪14をそれぞれ正転させた際に、右後輪14の回転速度が左後輪14の回転速度よりも速いと、その速度差に応じた旋回角で作業車1は左方に旋回する。一方、左後輪14の回転速度が右後輪14の回転速度よりも速いと、その速度差に応じた旋回角で作業車1は右方に旋回する。左右の後輪14を互いに同一速度で一方を正転、他方を逆転させると、作業車1はその場で旋回する。
【0014】
充電ユニット19は、AC/DC変換器を含み、フレーム12の前端部に設けられた充電端子22に配線を介して接続されるとともに、バッテリ20に配線を介して接続される。充電端子22は、接点22aを有し、充電端子22が接点22aを介して充電ステーション3(
図3参照)に接続されることで、バッテリ20に充電することができる。バッテリ20は、配線を介して作業モータ17と走行モータ18とに接続され、作業モータ17と走行モータ18とは、バッテリ20から供給される電力により駆動する。なお、バッテリ20の電圧は、図示しない電圧センサにより検出される。
【0015】
収納ボックス30は、作業車10の中央位置付近に配置される。収納ボックス30の内部には基板30a(
図5参照)が配置され、基板30a上に電子制御ユニット(以下、ECUと呼ぶ)31と、Yawセンサ32と、Gセンサ33と、温度センサ34とが実装される。
【0016】
ECU31は、CPU,ROM,RAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されるマイクロコンピュータである。Yawセンサ32は、作業車1の高さ方向の軸線(Z軸)回りに生じる角速度(ヨーレート)を示す信号を出力する角速度センサであり、Yawセンサ32の出力信号を用いて、作業車1のZ軸回りの旋回角を算出することができる。Gセンサ33は、作業車1に作用する直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサである。
【0017】
さらに作業車1は、接触センサ36と、一対の車輪速センサ37と、リフトセンサ38と、操作スイッチ25と、ディスプレイ28と、磁気センサ40とを備える。
【0018】
接触センサ36は、作業車1が障害物等に接触してフレーム12がシャシ11から離脱するとオン信号を出力する。一対の車輪速センサ37は、左右の後輪14の車輪速を示す信号をそれぞれ出力し、車輪速センサ37の出力信号を用いて作業車1の走行距離を算出することができる。リフトセンサ38は、フレーム12がシャシ11から持ち上げられたときにオン信号を出力する。操作スイッチ25は、ユーザにより操作され、作業車10の動作開始等を指令するメインスイッチ26と、非常停止を指令する非常停止スイッチ27とを含む。ディスプレイ28は、ユーザに提供するための各種情報を表示する。磁気センサ40は、磁界の大きさ(磁界強度)を示す信号を出力する。
【0019】
本実施形態では、作業車1の前側に左右方向に離間して2個の磁気センサ40(右磁気センサ40R,左磁気センサ40L)が配置されている。より具体的には、
図2に示すように、作業車10の車幅方向中心を通り直進方向に向かう中心線CLに対して左右対称に一対の磁気センサ40R,40Lが配置されている。したがって、磁気センサ40R,40L間の距離をd0とすると、中心線CLから磁気センサ40R,40Lまでの距
離は互いに等しく、d0/2である。なお、各磁気センサ40R,40Lは互いに同一構成であり、同一の磁界が作用した状態で互いに同一の信号を出力する。
【0020】
以上のように構成された作業車10は、予め定められた作業領域を自律走行する。
図3は、作業領域ARの一例を示す図である。作業領域ARは、予め敷設(例えば接地面GRから所定深さに埋設)されたエリアワイヤ2によって画定される。すなわち、作業領域ARはエリアワイヤ2によって全周を包囲された領域である。エリアワイヤ2には電流が流され、これにより作業領域ARに磁界が発生する。なお、エリアワイヤ2上には、バッテリ20を充電するための充電ステーション3が配置される。作業領域ARは、作業車1の走行範囲を規定し、作業予定領域の他、作業を行わない非作業の領域を含んでもよい。
【0021】
図3において、作業領域ARは、狭路エリアAR1と、狭路エリアAR1に連なる広路エリアAR2,AR3とを含む。例えば、敷地内の建物の前庭が広路エリアAR2、後庭が広路エリアAR3、前庭と後庭とを接続する通路が狭路エリアAR1に相当する。狭路エリアAR3は、互いに対向するエリアワイヤ2(ワイヤ部2a,2b)間の距離(エリア幅)Wが所定値Wa以下であり、かつ、エリア幅Wに直交する長さLが所定値La以上の領域である。エリア幅Wが所定値Waを超える場合、広路エリアAR2,AR3となる。所定値Waは、例えば作業車1の全幅の5〜10倍程度あるいは1m程度であり、所定値Laは、例えば作業車1の全長の1〜2倍程度である。
【0022】
なお、
図3では、狭路エリアAR1の両端がそれぞれ広路エリアAR2,AR3に接続するが、一端のみが接続する場合も狭路エリアAR1に含まれる。例えば、
図4に示すように、一端が広路エリアAR2に接続され、他端がエリアワイヤ2によって閉塞されている場合も、エリア幅Wが所定長さLa以上にわたって所定値Wa以下であれば、狭路エリアAR1に含まれる。
【0023】
作業エリアARには、エリアワイヤ2を流れる電流により磁界が発生する。
図5は、狭路エリアAR1の幅方向に沿った磁界強度Hの変化を示す図である。
図5の横軸は、ワイヤ部2aからワイヤ部2b
に向かう距離d1、およびワイヤ部2bからワイヤ部2a
に向かう距離d2である。特性f1は、ワイヤ部2aを流れる電流によって生じる磁界強度H1を示し、特性f2は、ワイヤ部2bを流れる電流によって生じる磁界強度H2を示す。
【0024】
磁界強度H1,H2はいずれも、エリアワイヤ2からの距離d1,d2に応じて変化する。すなわち、磁界強度H1は、ワイヤ部2a上において0となり、ワイヤ部2a,2bによって挟まれる作業領域ARの内側でプラス、外側でマイナスの値となる。磁界強度H2は、ワイヤ部2b上において0となり、作業領域ARの内側でプラス、外側でマイナスの値となる。
【0025】
作業領域ARの内側において、磁界強度H1は、ワイヤ部2aからの距離d1の増加に伴い急激に上昇し、その後、なだらかに低下する。同様に、磁界強度H2は、ワイヤ部2bからの距離d2の増加に伴い急激に上昇し、その後、なだらかに低下する。磁界強度H1が0から上昇する範囲および磁界強度H2が0から上昇する範囲(ピーク領域と呼ぶ)は狭く、磁気センサ40R,40L間の距離d0よりも短い。
【0026】
一対のワイヤ部2a,2bによって挟まれた作業領域ARにおける全体磁界強度H3は、ワイヤ部2aによって生じる磁界強度H1に、ワイヤ部2bによって生じる磁界強度H2を加算することにより得られる。
図5の特性f3(点線)は、磁界強度H1と磁界強度H2とを加算した合計磁界強度H3(=H1+H2)を示す。ワイヤ部2aとワイヤ部2bとは電流の向きが互いに反対であるため、作業領域ARにおいて磁界が強められ、合計磁界強度H3(特性f3)は、各磁界強度H1,H2(特性f1,f2)よりも大きい。
【0027】
ワイヤ部2a,2b近傍の磁界強度が急激に減少するピーク領域を無視すると、合計磁界強度H3は、ワイヤ部2aとワイヤ部2bの中間点P0辺りで最小、すなわち最小磁界強度Hminとなる。この最小磁界強度Hminは、ワイヤ部2a,2b間の距離(エリア幅W)が短いほど大きい。換言すると、狭路エリアAR1における合計磁界強度H3の最小値(最小磁界強度Hmin)は、広路エリアAR2,AR3における合計磁界強度H3の最小値よりも大きい。そこで、本実施形態では、最小磁界強度Hminを用いて後述するように作業車1が狭路走行中であるか否かを判定する。
【0028】
図6は、本発明の実施形態に係る自律走行作業車の制御装置の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、基板30aには、ECU31と、Yawセンサ32と、Gセンサ33と、温度センサ34と、作業モータドライバ17aと、走行モータドライバ18aとが実装されている。また、基板30aには、接触センサ36と、車輪速センサ37と、リフトセンサ38と、一対の磁気センサ40R,40Lと、操作スイッチ25と、ディスプレイ28と、充電ユニット19と、バッテリ20と、作業モータ17と、一対の走行モータ18L,18Rとが接続されている。
【0029】
Yawセンサ32と、Gセンサ33と、温度センサ34と、接触センサ36と、車輪速センサ37と、リフトセンサ38と、磁気センサ40L,40Rと、操作スイッチ25とからの信号は、それぞれECU31に入力される。ECU31はこれらからの入力信号に基づき所定の処理を実行し、作業モータドライバ17aを介して作業モータ17に制御信号を出力するとともに、走行モータドライバ18aを介して走行モータ18L,18Rに制御信号を出力する。
【0030】
図7は、ECU31の機能的構成の一部を示すブロック図であり、とくに走行制御に係る機能的構成を示す。ECU31は、走行制御部311と、狭路判定部312と、設定部313とを有する。
【0031】
走行制御部311は、走行モータドライバ18aを介して走行モータ18に制御信号を出力し、作業領域AR内における作業車1の走行動作を制御する。走行制御部311は、作業車1が狭路走行中であると判定される前(狭路走行判定前)と、狭路走行中であると判定された後(狭路走行判定後)とで、異なる態様で作業車1を走行させる。すなわち、狭路走行判定前には作業車1に通常作業モードで広路エリアAR2,AR3を走行させ、狭路走行判定後には作業車1に狭路作業モードで狭路エリアAR1を走行させる。なお、図示は省略するが、ECU31は作業制御部を有し、通常作業モードおよび狭路作業モードのいずれにおいても、作業制御部は、作業モータドライバ17aを介して作業モータ17に制御信号を出力し、作業車1を走行させながら作業機16により作業させる。
【0032】
図8は、通常作業モード時の作業車1の走行経路の一例を示す図である。通常作業モードにおいては、走行制御部311は、
図8の矢印a1に示すように、作業領域AR(広路エリアAR2)内において作業車1をランダムに直進走行(ランダム走行)させる。このとき、走行制御部311は、磁気センサ40L,40Rにより検出された磁界強度(これを単に検出値Hと呼ぶ場合もある)Hを監視し、作業車1がエリアワイヤ2に到達して(
図8の位置P1)、少なくとも一方の磁気センサ40L,40Rの検出値Hが0以下になると、
図8の矢印b1に示すように作業車1を作業領域ARの内側に向けて旋回させる。その後、再び作業車1がエリアワイヤ2に到達して(
図8の位置P2)、少なくとも一方の磁気センサ40L,40Rによる検出値が0以下になると、走行制御部311は、
図8の矢印c1に示すように作業車1を作業領域ARの内側に向けて再び旋回させる。
【0033】
図9は、狭路作業モード時の作業車1の走行経路の一例を示す図である。狭路作業モードにおいては、走行制御部311は、エリアワイヤ2に沿って、すなわちエリアワイヤ2に平行に作業車1を往復走行(パラレル走行)させる。具体的には、まず
図9の矢印a2に示すように、左右外側の磁気センサ(
図9では右磁気センサ40R)が互いに対向する一方のワイヤ部(
図9ではワイヤ部2a)上を通るように右磁気センサ40Rの検出値Hを監視しながら作業車1を直進走行させる。
【0034】
次いで、
図9の矢印b2に示すように、狭路エリアAR1の端部において作業車1をエリア幅方向に所定量ずつシフトさせながら狭路エリアAR1内を往復走行させる。作業車1が他方のワイヤ部2bまで到達すると、
図9の矢印c2に示すように、左右外側の磁気センサ(
図9では右磁気センサ40R)が他方のワイヤ部(
図9ではワイヤ部2b)上を通るように右磁気センサ40Rの検出値Hを監視しながら作業車1を直進走行させる。
【0035】
狭路判定部312は、通常作業モード時の磁気センサ40L,40Rの検出値Hに基づいて、作業車1が狭路エリアAR1を走行中であるか否かを判定する。
図10は、
図8の矢印b1、矢印c1に沿って作業車1が移動したときの磁気センサ40L,40Rの検出値(磁界強度)Hの一例を示す図である。横軸は位置P1からの時間tであり、時点t1が
図8の位置P1に、時点t3が
図8の位置P2にそれぞれ対応する。縦軸は磁気センサ40L,40Rの検出値Hのうち、ピーク領域の検出値を除いた小さい方の値を示す。なお、磁気センサ40L,40Rの出力信号(ボルト)を縦軸とした場合にも
図10と同様の特性となる。
【0036】
図10に示すように、磁界強度Hは、時点t1から時点t2にかけて減少し、その後、時点t3にかけて増大する。したがって、磁界強度Hは、時点t2で極小かつ最小となり、狭路エリアAR1の最小磁界強度Hminが得られる。なお、時点t3以降、磁界強度Hは時点t3から時点t4にかけて減少し、その後、時間経過に伴い増大するため、時点t4でも極小かつ最小となる。狭路判定部312は、作業車1の位置P1における旋回と位置P2における旋回との間の最少磁界強度Hminが予め定めた閾値Haよりも大きいときに、作業車1が狭路走行中であると判定する。
【0037】
設定部313は、狭路判定の基準となる閾値Haを設定し、メモリに記憶する。閾値Haは、例えば狭路エリアAR1の最小磁界強度Hminと広路エリアAR2,AR3の最大磁界強度との平均値である。広路エリアAR2,AR3では、対向するエリアワイヤ2同士が十分に離れているため、磁界強度は強まらず、単一のエリアワイヤ2によって最大磁界強度が生じる。例えば
図5の特性f1または特性f2の最大値が、広路エリアAR2,AR3の最大磁界強度となる。この場合、
図5に示すように、最小磁界強度Hminは最大磁界強度よりも大きい。
【0038】
したがって、狭路エリアAR1の最小磁界強度Hminよりも小さく、かつ、広路エリアAR2,AT3の最大磁界強度よりも大きい値に閾値Haを設定すれば、狭路判定部312が広路エリアAR2,AR3を誤って狭路エリアAR1と判定することがなく、精度よく狭路判定を行うことができる。この点を考慮し、本実施形態では、最小磁界強度Hminと最大磁界強度の平均値に閾値Haを設定する。具体的には、予め狭路エリアAR1内の最小磁界強度Hminを実験で測定またはシミュレーション等で算出するとともに、広路エリアAR2,AR3内の最大磁界強度を実験で測定またはシミュレーション等で算出する。そして、設定部313は、最小磁界強度Hminと最大磁界強度の平均値を閾値Haとして求める。なお、ユーザが閾値Haを入力し、これを設定部313がメモリに記憶することで設定してもよい。設定部313は、閾値Haだけでなく、狭路判定後の作業車1のパラレル走行の基準となる基準値B1も設定する。
【0039】
ところで、作業車1が広路エリアPA2,PA3の角部を通る場合においても、旋回と旋回との間で最小磁界強度Hminが閾値Haより大きくなることがある。
図11は、広路エリアAR3における作業車1の走行経路の一例を示す図であり、
図12は、そのときの磁界強度Hの変化を示す図である。
図11においては、広路エリアAR3を直進走行(ランダム走行)中の作業車1がエリアワイヤ2の角部の近傍の位置P11で旋回し、さらに位置P12で旋回する。
【0040】
図12の時点t13および時点t15はそれぞれ
図11の位置P11および位置P12に対応する。
図12に示すように、作業車1が矢印a3(
図11)に沿って走行中(時点t11〜時点t13)は、時点t12で磁界強度Hが最小となり、時点t12における最小磁界強度Hminは閾値Haよりも小さい。一方、作業車1が矢印b3に沿って走行中(時点t13〜t15)は、位置P11から位置P12までの距離が短いため、時点t14における最小磁界強度Hminは閾値Haよりも大きい。作業車1が矢印c3に沿って走行中(時点t15以降)、時点t
16で磁界強度が最小となり、時点t16における最小磁界強度Hminは閾値Haよりも小さい。
【0041】
このように作業車1がエリアワイヤ2の角部を走行中は、位置P
11から位置P
12までの直線走行区間で最小磁界強度Hminが閾値Haより大きくなるが、連続した2つの直線走行区間で最小次回強度Hminが連続して閾値Haより大きくなることはない。この点を考慮し、本実施形態では、狭路判定部312が、例えば
図8の位置P1から位置P2および位置P2から位置P3等、連続する2つの直線走行区間で最小磁界強度Hminがそれぞれ閾値Haより大きいと判定したときに、作業車1が狭路走行中であると判定する。これにより狭路判定の精度を高めることができる。なお、
図8では、作業車1が位置P1,P2,P3において順次旋回するが、これをそれぞれ第1旋回、第2旋回および第3旋回と呼ぶこともある。
【0042】
図13は、広路エリアAR2における作業車1の走行経路の一例を示す図であり、
図14は、そのときの磁界強度Hの変化を示す図である。
図13においては、広路エリアAR2を矢印a4に沿って直進走行(ランダム走行)中の作業車1が、位置P21で狭路エリアAR1内に狭路長さ方向に対しほぼ平行に進入する。この場合、作業車1は狭路エリアAR1で旋回せず、旋回と旋回の間の直進走行中の最小磁界強度Hminに基づく判定では、狭路走行を精度よく判定できないおそれがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、狭路判定部312が、磁気センサ40L,40Rの検出値Hが閾値Hbより大きい状態が所定時間Δt以上継続していか否かを判定し、所定時間Δt以上継続している場合に、作業車1が狭路走行中であると判定する。すなわち、作業車が位置P21に到達すると、
図14に示すように、時点t31で磁界強度Hが閾値Hbより大きくなるが、この状態が所定時間Δt継続した時点t32で、狭路判定部312は作業車1が狭路走行中と判定する。なお、閾値(第2閾値)Hb
は、閾値(第1閾値)Haと等しくてもよく、閾値Haより大きいまたは小さくてもよい。
【0044】
次に、本実施形態に係る自律走行作業車の制御装置の主要な動作を、フローチャートを用いて説明する。
図15〜17は、ECU31で実行される処理の一例を示すフローチャートである。ECU31は、主に狭路走行判定に関する処理(
図15)と、狭路走行判定後のパラレル走行に関する処理(
図16,17)とを行う。
【0045】
図15に示す処理は、通常作業モード時に実行される。まず、ステップS1で、最小磁界強度Hminを初期化する。すなわち、最小磁界強度Hminに初期値H0を代入する。なお、初期値H0は、少なくとも
図5の最小磁界強度Hminよりも大きい値に設定される。次いでステップS2で、走行制御部311が走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を直進走行させる。
【0046】
次いでステップS3で、最小磁界強度Hminを更新する。例えば、右磁気センサ40Rの検出値Hの変化量が0またはほぼ0で、かつ、右磁気センサ40Rの検出値Hが最小磁界強度Hmin(制御開始時は初期値H0に設定)よりも小さいとき、最小磁界強度Hminをその検出値Hにより更新する。さらに、左磁気センサ40Lの検出値Hの変化量が0またはほぼ0で、左磁気センサ40Lの検出値Hが最小磁界強度Hminよりも小さいとき、最小磁界強度Hminをその検出値Hにより更新する。これにより、ピーク領域を除いた作業車1の直進走行中の磁界強度Hの最小値が、最小磁界強度Hminとして設定される。
【0047】
次いでステップS4で、狭路判定部312での処理により、最小磁界強度Hminが予め定めた閾値Hbより大きい状態で所定時間Δtが経過したか否かを判定する。これは、例えば
図13に示すように作業車1が狭路エリアAR2の長さ方向に平行に進入したか否かの判定である。ステップS4で肯定されると、作業車1が狭路走行中であると判定され、ステップS9に進む。
【0048】
ステップS4で否定されると、ステップS5に進み、磁気センサ40L,40Rが作業領域ARの外側に出たか否か、すなわち磁気センサ40Lまたは40Rの検出値Hが0以下になったか否かを判定する。ステップS5で否定されるとステップS2に戻り、ステップS5で肯定されるまで同様の処理を繰り返す。
【0049】
ステップS5で肯定されるとステップS6に進み、狭路判定部312での処理により、ステップS3で設定された最小磁界強度Hminが予め定めた閾値Haよりも大きく、かつ、前回最小磁界強度Hminが閾値Haよりも大きいか否かを判定する。これは、例えば
図8に示すように、連続する2つの直進走行区間(位置P1〜P2,位置P2〜P3)におけるそれぞれの最小磁界強度Hminが閾値Haより大きいか否かの判定である。ステップS6で肯定されると、作業車1が狭路走行中であると判定されてステップS9に進み、否定されるとステップS7に進む。なお、初期状態では、前回最小磁界強度Hminは閾値Haよりも大きい初期値に設定されており、ステップS3で設定された最小磁界強度Hminが閾値Haより大きい場合にも、前回最小磁界強度Hmin>Haを満たさないため、ステップS7に進む。
【0050】
ステップS7では、ステップS3で設定された直進走行時の最小磁界強度Hminを前回最小磁界強度Hminとして設定する。次いでステップS8で、走行制御部311が走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を作業領域ARの内側に向けて旋回させる。この処理は、例えばランダムに定めた旋回時間が経過するまで作業車1を旋回動作させることで行う。これにより作業領域ARを作業車1がランダム走行する。次いで、ステップS1に戻って同様の処理を繰り返す。一方、ステップS9では、パラレル走行を開始させるための準備段階としてカウンタ値cを0にリセットし、
図16のステップS11に進む。
【0051】
図18は、互いに対向するワイヤ部2aとワイヤ部2bとの間の狭路エリアAR1における作業車1のパラレル走行の動作を説明する図である。以下、
図18を参照して
図16、17のフローチャートの処理を説明する。なお、以下では、左右の磁気センサ40L,40Rの検出値Hを区別するため、左磁気センサ40Lの検出値をHL,右磁気センサ40Rの検出値をHRで表す。
【0052】
図16のステップS11では、左磁気センサ40Lの検出値HLに基づき左磁気センサ40Lが作業領域ARの外側にあるか否か、具体的には検出値HLがマイナスになったか否かを判定する。ステップS11で肯定されるとステップS12に進み、否定されるとステップS21に進む。
【0053】
ステップS12では、
図18のA部に示すように、左磁気センサ40Lがエリアワイヤ2(ワイヤ部2a)上に位置し、かつ、作業車1がワイヤ部2aと平行になるように走行モータ18を制御するとともに、そのときの右磁気センサ40Rの検出値HRを閾値A1としてメモリに記憶する。
【0054】
次いでステップS13で、左磁気センサ40Lがワイヤ部2a上を移動するように、すなわち左磁気センサ40Lの検出値が0を維持するように、走行制御部311が左磁気センサ40Lの検出値HLを監視しながら走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を直進走行させる。
【0055】
次いでステップS14で、狭路判定部312が、右磁気センサ40Rの検出値HRがステップS12で設定された閾値A1より小さいか否かを判定する。作業車1が狭路エリアAR1を走行中は、検出値HRは閾値A1以上であり、ステップS14で否定される。ステップS14で否定されるとステップS15に進む。一方、作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達すると、検出値HRが閾値A1を下回るため、ステップS14で肯定され、ステップS15をパスしてステップS16に進む。
【0056】
ステップS15では、右磁気センサ40Rの検出値HRに基づき右磁気センサ40Rが作業領域ARの外側にあるか否かを判定する。ステップS15で肯定されるとステップS16に進み、否定されるとステップS13に戻る。
【0057】
ステップS16では、走行制御部311が走行モータ18に制御信号を出力し、
図18のB部に示すように、右磁気センサ40Rの検出値HRが一定となるよう右磁気センサ40Rを中心にして、作業車1を180度、右方向に旋回させる。これにより作業車1が反転するとともに、所定量、狭路エリアAR1のエリア幅方向内側(ワイヤ部2b側)にシフトする。なお、作業車1の旋回角度は、Yawセンサ32により検出された作業車1の旋回角速度をECU31が時間積分することにより得られ、走行制御部311は、Yawセンサ32の検出値を監視しながら、旋回角が180度となるように左右の走行モータ18L,18Rをフィードバック制御する。
【0058】
次いでステップS17で、設定部313での処理により、現在の右磁気センサ40Rの検出値HRを基準値B1としてメモリに記憶する。なお、基準値B1は、後述するステップS27
、ステップS37、ステップS47の処理によって更新される。次いでステップS18で、カウンタ値cに1を加算し(c=c+1)、ステップS19に進む。
【0059】
ステップS19では、狭路判定部312での処理により、カウンタ値cが2より小さいか否かを判定する。これは、作業車1がエリアワイヤ2上を2回走行したか否か、すなわち作業車1が一対のワイヤ部2a,2bをそれぞれ走行して狭路エリアAR1の全域にわたる走行を完了したか否かの判定である。ステップS19で肯定、すなわち狭路走行が完了したと判定されると、
図15のステップS1に戻り、ステップS19で否定されると、ステップS11に戻る。
【0060】
例えば作業車1が右回りに180度旋回した後は、左磁気センサ40Lが作業領域AR1外にないためステップS11で否定され、ステップS21に進む。ステップS21では、右磁気センサ40Rの検出値HRに基づき右磁気センサ40Rが作業領域ARの外側にあるか否か、具体的には検出値HRがマイナスになったか否かを判定する。例えば作業車1が右回りに180度旋回した後は、右磁気センサ40Rが作業領域ARの外側にないため、ステップS21で否定され、
図17のステップS31へ進む。
【0061】
ステップS31では、前回の旋回が左回りか否かを判定する。例えば
図18のB
部に示すように作業車1が右回りに180度旋回した後は、ステップS31で否定され、ステップS42に進む。
【0062】
ステップS42では、左磁気センサ40Lの検出値HLを閾値A4としてメモリに記憶する。次いで、ステップS43で、右磁気センサ40Rの検出値HRが前回の右旋回後の処理時(例えばステップS17)に記憶した右磁気センサ40Rの基準値B1となるように、走行制御部311が右磁気センサ40Rの検出値HRを監視しながら走行モータ18に制御信号を出力する。これにより
図18の矢印Cに示すように、作業車1がエリアワイヤ2に対し平行に直進走行する。
【0063】
次いでステップS44で、狭路判定部312での処理により、左磁気センサ40Lの検出値HLがステップS42で設定された閾値A4より小さいか否かを判定する。作業車1が狭路エリアAR1を走行中は、検出値HLは閾値A4以上であり、ステップS44で否定されてステップS45に進む。一方、作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達すると、検出値HLが閾値A4を下回るため、ステップS44で肯定され、ステップS45をパスしてステップS46に進む。
【0064】
ステップS45では、左磁気センサ40Lの検出値HLに基づき左磁気センサ40Lが作業領域ARの外側にあるか否かを判定する。ステップS45で肯定されるとステップS46に進み、否定されるとステップS43に戻る。
【0065】
ステップS46では、走行制御部311が走行モータ18に制御信号を出力し、
図18のD部に示すように、左磁気センサ40Lの検出値HLが一定となるよう左磁気センサ40Lを中心にして、作業車1を180度、左方向に旋回させる。これにより作業車1が反転するとともに、所定量、エリア部2b側にシフトする。次いでステップS47で、設定部313での処理により、現在の左磁気センサ40Lの検出値HLにより基準値B1を更新し、これをメモリに記憶した後、ステップS19に進む。
【0066】
図18のD部に示すように作業車1が左旋回した後は、ステップS31で肯定され、ステップS32に進む。ステップS32では、右磁気センサ40Rの検出値HRを閾値A3としてメモリに記憶する。次いで、ステップS33で、左磁気センサ40Lの検出値HLが前回の左旋回後の処理時(例えばステップS47)に記憶した左磁気センサ40Lの基準値B1となるように、走行制御部311が左磁気センサ40Lの検出値HLを監視しながら走行モータ18に制御信号を出力する。これにより
図18の矢印Eに示すように、作業車1がエリアワイヤ2に対して平行に直進走行する。
【0067】
次いでステップS34で、狭路判定部312が、右磁気センサ40Rの検出値HRがステップS32で設定された閾値A3より小さいか否かを判定する。作業車1が狭路エリアAR1を走行中は、検出値HRは閾値A3以上であり、ステップS34で否定されてステップS35に進む。一方、作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達すると、検出値HRが閾値A3を下回るため、ステップS34で肯定され、ステップS35をパスしてステップS36に進む。
【0068】
ステップS36では、右磁気センサ40Rの検出値HRに基づき右磁気センサ40Rが作業領域ARの外側にあるか否かを判定する。ステップS35で肯定されるとステップS36に進み、否定されるとステップS33に戻る。
【0069】
ステップS36では、走行制御部311が走行モータ18に制御信号を出力し、右磁気センサ40Rの検出値HRが一定となるよう右磁気センサ40Rを中心にして、作業車1を180度、右方向に旋回させる。次いでステップS37で、現在の右磁気センサ40Rの検出値HRにより基準値B1を更新し、これをメモリに記憶した後、ステップS19に進む。
【0070】
ステップS31〜ステップS37およびステップS42〜ステップS47の処理は、左右いずれかの磁気センサ40L,40Rが
図18のワイヤ部2bの外側に移動するまで、交互に繰り返される。例えば右磁気センサ40Rがワイヤ部2bの外側に移動すると、
図16のステップS21で肯定され、ステップS22に進む。なお、左磁気センサ40Lがワイヤ部2bの外側に移動すると、ステップS11で肯定され、ステップS11〜ステップS19の処理が行われる。
【0071】
ステップS22では、
図18のF部に示すように、右磁気センサ40Rがエリアワイヤ2(ワイヤ部2b)上に位置し、かつ、作業車1がワイヤ部2bと平行になるように走行モータ18を制御するとともに、そのときの左磁気センサ40Lの検出値HLを閾値A2としてメモリに記憶する。
【0072】
次いでステップS23で、右磁気センサ40Rがワイヤ部2b上を移動するように、走行制御部311が右磁気センサ40Rの検出値HRを監視しながら走行モータ18に制御信号を出力し、作業車1を直進走行させる。
【0073】
次いでステップS24で、狭路判定部312が、左磁気センサ40Lの検出値HLがステップS22で設定された閾値A2より小さいか否かを判定する。作業車1が狭路エリアAR1を走行中は、検出値HRは閾値A2以上であり、ステップS24で否定される。ステップS24で否定されるとステップS25に進む。一方、作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達すると、検出値HLが閾値A2を下回るため、ステップS24で肯定され、ステップS25をパスしてステップS26に進む。
【0074】
ステップS25では、左磁気センサ40Lの検出値HLに基づき左磁気センサ40Lが作業領域ARの外側にあるか否かを判定する。ステップS25で肯定されるとステップS26に進み、否定されるとステップS23に戻る。
【0075】
ステップS26では、走行制御部311が走行モータ18に制御信号を出力し、左磁気センサ40Lの検出値HLが一定となるよう左磁気センサ40Lを中心にして、作業車1を180度、左方向に旋回させる。これにより作業車1が反転するとともに、所定量、狭路エリアAR1のエリア幅方向内側(ワイヤ部2a側)にシフトする。
【0076】
次いでステップS27で、設定部313での処理により、左磁気センサ40Lの検出値HLを基準値B1としてメモリに記憶する。次いで、ステップS28で、カウンタ値cに1を加算し、ステップS19に進む。
図18の一対のワイヤ部2a,2b上における走行が完了すると、カウンタ値cが2となるため、ステップS19で肯定され、ステップS1に戻る。以上で、狭路エリアAR1内のパラレル走行が完了する。
【0077】
本発明の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)自律走行作業車の制御装置は、走行モータ18(走行手段の一例)を有する作業車1に、予め敷設されたエリアワイヤ2によって画定される作業領域ARを自律走行させるものであり、作業領域ARは、互いに対向するエリアワイヤ2(ワイヤ部2a,2b)間の距離Wが所定長さLa以上にわたって所定値Wa以下である狭路エリアAR1と狭路エリアAR1に連なる広路エリアAR2,AR3とを含む(
図3、4)。とくに、本実施形態に係る自律走行作業車の制御装置は、エリアワイヤ2を流れる電流によって発生する磁界の強度を検出する磁気センサ40L,40R(磁界強度検出部の一例)と、作業領域ARを走行中の作業車1がエリアワイヤ2に到達する度に作業車1が旋回かつ直進走行するように、磁気センサ40L,40Rの検出値Hに基づいて走行モータ18を制御する走行制御部311と、作業車1が第1旋回(
図8の位置P1)後に第2旋回(
図8の位置P2)をするまでの間の磁気センサ40L,40Rの検出値Hが、狭路エリアAR1における磁界強度Hの最小値(
図5のHmin)に基づいて予め設定された閾値Haより大きいとき(
図10)、または第1旋回後、磁気センサ40a,40bの検出値Hが所定時間Δt継続して閾値Hbより大きいとき(
図14)、作業車1が狭路エリアAR1を走行中であると判定する狭路判定部312とを備える。
【0078】
このように本実施形態では、狭路エリアAR1における磁界強度の最小値Hminが広路エリアAR2,AR3における磁界強度の最小値よりも大きい点に着目し、磁気センサ40L,40Rにより検出された最小磁界強度Hminと閾値Ha,Hbとの大小関係に基づき、作業車1の狭路走行を判定する。このため、GPSセンサや地磁気センサ等の高価な位置検出センサを用いることなく、かつ、作業領域ARのマップを構成することなく、簡易な構成により作業車1の狭路走行を良好に判定することができる。その結果、狭路エリアAR1に適した作業モード(パラレル走行モード)に切り換えることができ、狭路エリアAR1で作業車1に効率よく作業を行わせることができる。
【0079】
(2)狭路判定部312は、作業車1が第1旋回(
図8のP1)後に第2旋回(
図8の位置P2)をするまでの間、かつ、第2旋回後に第3旋回(
図8の位置P3)をするまでの間における磁気センサ40L,40Rの検出値H(最小磁界強度Hmin)が閾値Haより大きいとき、作業車1が狭路エリアARを走行中であると判定する(ステップS6)。
【0080】
このように連続する2つの直線走行区間で最小磁界強度Hminがそれぞれ閾値Haより大きいと判定したときに狭路走行と判定することにより、
図11に示すように作業車1が広路エリアAR3の角部を走行した際に、狭路判定部312が誤って狭路エリアAR1と判定することがなく、精度よい狭路走行の判定が可能である。
【0081】
(3)狭路エリアAR1における磁界強度Hの最小値(
図5のHmin)と広路エリアAR2,AR3における磁界強度Hの最大値との平均値を閾値Haとして設定する。したがって、狭路エリアAR1を確実に判定できるとともに、広路エリアAR2,AR3を狭路エリアAR1であると誤判定することもなく、精度よい狭路走行の判定が可能である。
【0082】
(4)走行制御部311は、狭路判定部312により作業車1が狭路エリアAR1を走行中であると判定されると、作業車1が狭路エリアAR1をエリアワイヤ2に沿って走行するように、磁気センサ40L,40Rの検出値HL,HRに基づいて走行モータ18を制御する(ステップS13、ステップS23、ステップS33、ステップS43)。
【0083】
このように作業車1が狭路エリアAR1をエリアワイヤ2に沿ってパラレル走行するように走行モータ18を制御することで、狭路エリアAR1の芝の刈り残しや刈りすぎ等を防止することができ、良好な作業が可能である。すなわち、例えば
図19に示すように、狭路エリアAR1をランダム走行させると、作業車1が旋回を繰り返し、狭路を通りすぎるのに時間がかかるだけでなく、芝の刈り残しや刈りすぎを生じるおそれがある。この点、本実施形態では、狭路走行判定後は作業車1をパラレル走行させるため、狭路エリアAR1における繰り返し旋回を防止でき、効率よく作業を行うことができる。
【0084】
(5)狭路判定部312は、磁気センサ40L,40Rの検出値Hに基づいて、エリアワイヤ2に沿って狭路エリアAR1を走行している作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達したか否かをさらに判定し(ステップS14,ステップS15,ステップS24,ステップS25,ステップS34,ステップS35,ステップS44,ステップS45)、走行制御部311は、狭路判定部312により作業車1が狭路エリアAR1を走行中であると判定されると、作業車1がエリアワイヤ2に沿った第1方向(
図18の矢印C)に向かって走行し、その後、作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達したと判定されると、作業車1が走行経路を狭路エリアAR1の幅方向に所定量シフトした状態で第1方向と反対の第2方向(
図18の矢印E)に向かって走行するように、磁気センサ40L,40Rの検出値HL,HRに基づいて走行モータ18を制御する(ステップS16,ステップS26,ステップS36,ステップS46)。
【0085】
このように作業車1を狭路エリアAR1の終端で反転させてエリア幅方向にシフトさせながら往復走行させることで、狭路エリアAR1の全域で万遍なく芝刈り作業を行うことができる。
【0086】
(6)磁気センサ40は、車幅方向に互いに離間して配置された右磁気センサ40R(第1磁界強度検出器の一例)および左磁気センサ40L(第2磁界強度検出器の一例)を有し、自律走行作業車の制御装置は、作業車1を第1方向(
図18の矢印C)および第2方向(
図18の矢印E)へ走行させるときの基準となる基準値B1を定める設定部313をさらに備える。走行制御部311は、右磁気センサ40Rの検出値HRが設定部313により定められた基準値B1を維持するように作業車を第1方向に向かって走行させるとともに(ステップS23,ステップS43)、左磁気センサ40Lの検出値HLが基準値B1を維持するように作業車1を第2方向に向かって走行させ(ステップS13,ステップS33)、狭路判定部312は、作業車1を第1方向に向かって走行させているときの左磁気センサ40Lの検出値HLおよび作業車1を第2方向に向かって走行させているときの右磁気センサ40Rの検出値HRに基づいて、作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達したか否かを判定する(ステップS14,ステップS15,ステップS24,ステップS25,ステップS34,ステップS35,ステップS44,ステップS45)。
【0087】
このように本実施形態では、狭路エリアAR内において、一方の磁気センサ(例えば40R)の検出値HRを用いて作業車1を直進走行させ、他方の磁気センサ(例えば40L)の検出値HLを用いて作業車1が狭路エリアAR1の終端に到達したか否かを判定する。したがって、ECU31での処理が容易であり、作業車1を安定的にパラレル走行させることができる。
【0088】
−変形例−
上記実施形態は、例えば以下のような変形が可能である。上記実施形態では、左右一対の走行モータ18L,18Rにより作業車を走行させるようにしたが、走行手段の構成はこれに限らない。例えば、作業車1に内燃機関を搭載し、内燃機関の動力により作業車1を走行するようにしてもよい。前輪13あるいは後輪14を操舵可能なアクチュエータを作業車1に搭載し、アクチュエータの駆動により作業車を旋回させるようにしてもよい。すなわち、走行モータ18L,18Rにより作業車1を走行可能かつ旋回可能として走行手段を構成したが、走行部と旋回部とを別々に設けて走行手段を構成してもよい。したがって、作業車1の構成は上述したものに限らない。
【0089】
上記実施形態では、磁気センサ40によりエリアワイヤ2を流れる電流によって発生する磁界の強度を検出したが、磁界強度検出部の構成はこれに限らない。上記実施形態では、一対の磁気センサ40L,40Rを中心線CLに対して左右対称となるように車体10に配置したが、磁気センサ40L,40Rは左右対称に配置しなくてもよく、第1磁界強度検出器としての磁気センサ(例えば右磁気センサ40R)および第2磁界強度検出器としての磁気センサ(例えば左磁気センサ40L)の配置は上述したものに限らない。
【0090】
上記実施形態では、Yawセンサ32により検出された作業車1の旋回角速度をECU31が時間積分して旋回角を検出(算出)したが、旋回角検出部の構成はこれに限らない。例えば旋回角を直接検出するセンサを設けてもよい。上記実施形態では、広路エリアAR2,AR3において作業車1をランダム走行させるようにしたが、狭路エリアAR1と同様、パラレル走行させるようにしてもよい。すなわち、作業領域ARを走行中の作業車1がエリアワイヤ2に到達する度に作業車1が旋回かつ直進走行するように、磁気センサ40の検出値に基づいて走行モータ18を制御するであれば、走行制御部の構成は上述したものに限らない。
【0091】
上記実施形態(
図15)では、作業車1の旋回後の磁気センサ40の検出値Hにより最小磁界強度Hminを随時更新し(ステップS3)、最小磁界強度Hminと閾値Ha,Hbとの大小を判定することで、狭路エリアを走行中か否かを判定するようにしたが(ステップS4,ステップS6)、最小磁界強度Hminを更新をせず、磁気センサ40が磁界強度Hを検出する度に、その検出値Hと閾値Ha,Hbとを比較して狭路走行を判定してもよい。
【0092】
上記実施形態(
図15)では、一例として、作業車1が第1旋回後に第2旋回をするまでの間(
図8の位置P1〜位置P2)、かつ、第2旋回後に第3旋回をするまでの間(
図8の位置P2〜位置P3)における磁気センサ40の検出値Hが閾値Haより大きいとき、すなわち各区間の最小磁界強度Hminが閾値Haよりも大きいときに、狭路判定部312が、作業車1が狭路エリアAR1を走行中であると判定した。しかしながら、作業車1が第1旋回後に第2旋回をするまでの間の磁気センサ40の検出値Hが、狭路エリアAR1における磁界強度の最小値Hminに基づいて予め設定された第1閾値Haより大きいとき、または第1旋回後、磁気センサ40の検出値Hが所定時間継続して、狭路エリアAR1における磁界強度の最小値Hminに基づいて予め設定された第2閾値Hbより大きいとき、作業車1が狭路エリアAR1を走行中であると判定するのであれば、狭路判定部の構成はいかなるものでもよい。
【0093】
上記実施形態では、狭路エリアAR1における磁界強度の最小値Hminと広路エリアAR2,AR3における磁界強度の最大値との平均値を閾値Haとして設定したが、閾値Haの設定はこれに限らない。例えば、狭路エリアAR1の最小磁界強度Hminが広路エリアAR2,AR3の最大磁界強度よりも小さいときは、最小磁界強度Hminに0より大きく1より小さい所定の係数を乗じた値、または最小磁界強度Hminから所定値を減じた値を閾値Haとして設定してもよい。
【0094】
上記実施形態は、芝刈り作業車に適用したが、本発明は、これに限らず種々の自律走行作業車に適用可能である。したがって、作業機16の構成は上述したものに限らない。
【0095】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。