特許第6014277号(P6014277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6014277成形体及びその製造方法、α−オレフィン二量化用触媒、並びにα−オレフィン二量体の製造方法
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  • 特許6014277-成形体及びその製造方法、α−オレフィン二量化用触媒、並びにα−オレフィン二量体の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014277
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】成形体及びその製造方法、α−オレフィン二量化用触媒、並びにα−オレフィン二量体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/232 20060101AFI20161011BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 11/113 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 2/24 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 2/14 20060101ALI20161011BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   B01J27/232 Z
   B01J35/04 C
   B01J35/10 301G
   B01J37/00 C
   B01J32/00
   C07C11/113
   C07C2/24
   C07C2/14
   !C07B61/00 300
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-553503(P2015-553503)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2014082757
(87)【国際公開番号】WO2015093378
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-260226(P2013-260226)
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】市川 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚也
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅美
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−038240(JP,A)
【文献】 特開平7−222927(JP,A)
【文献】 特開平3−042043(JP,A)
【文献】 特開2012−062987(JP,A)
【文献】 特開平8−109144(JP,A)
【文献】 特開平8−034749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 2/14
C07C 2/24
C07C 11/113
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NaCO及びKCOから選ばれる少なくとも1種の炭酸化合物(A1)を含み、細孔直径が0.05μm〜10μmの範囲にある細孔容積が0.10mL/g〜0.30mL/gであり、かつ、圧壊強度が1.8kgf〜10.0kgfである、成形体。
【請求項2】
前記炭酸化合物(A1)の含有率が70質量%以上である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
NaY又はKY(式中のYはSO、SiO、F、Cl、又はBrであり、nはYの価数によって決定される1又は2の整数である。)で表される少なくとも1種の化合物(B1)を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
前記細孔容積が0.14mL/g〜0.28mL/gであり、かつ、前記圧壊強度が2.2kgf〜8.5kgfである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項5】
前記炭酸化合物(A1)がKCOである、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項6】
グラファイト(C)を更に含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の成形体にアルカリ金属(D)を担持して得られる、α−オレフィン二量化用触媒。
【請求項8】
請求項7に記載のα−オレフィン二量化用触媒の存在下でα−オレフィンの二量化反応を行う、α−オレフィン二量体の製造方法。
【請求項9】
AHCO(式中のAはNa又はKである。)で表される少なくとも1種の炭酸水素化合物(A)10質量部〜100質量部と、
X(式中のBはNa又はKであり、XはCO、SO、SiO、F、Cl、又はBrであり、nはXの価数によって決定される1又は2の整数である。)で表される少なくとも1種の化合物(B)0質量部〜90質量部と、
を含んでなる混合物((A)と(B)との合計100質量部)を成形した後、100℃〜500℃の温度で熱処理し、前記炭酸水素化合物(A)の97質量%以上を熱分解する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
前記混合物が水を含有しない、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
前記混合物の成形を打錠成形で行う、請求項9又は請求項10に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
前記混合物の体積統計値でのメジアン径(d50)が5μm〜600μmの範囲にある、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
前記混合物中、粒子径40μm以下の粒子の含有率が3質量%〜30質量%である、請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体として有用な成形体及びその製造方法、該成形体を用いて製造されるα−オレフィン二量化用触媒、並びに該触媒を用いたα−オレフィン二量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−メチル−1−ペンテンに代表されるα−オレフィンの二量体(共二量体を含む。以下同じ。)は、ポリオレフィン製造用の単量体として利用されている。α−オレフィンの二量化反応(共二量化反応を含む。以下同じ。)によって相応する二量体を製造するための触媒として、多くの塩基性触媒が従来から提案されている。特に、無水カリウム化合物を主成分とする担体にアルカリ金属を担持して得られる触媒が多く用いられている。
【0003】
これらの触媒に関し、活性や目的物質への選択性を更に高くするための研究が継続して行われている。また、初期活性が高くても触媒寿命が充分ではないことから、触媒寿命を延ばすための研究も継続して行われている。例えば、特開昭58−114737号公報、特開平3−42043号公報、特開平7−222927号公報、特開2006−326418号公報、特開2008−149275号公報、及び米国特許第5081094号明細書では、使用する無水カリウム化合物の物性や担体の物性を調整することにより、活性の向上、選択性の向上、触媒寿命の改良が進められてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記特許文献に代表される触媒について、種々の検討を行った。その結果、特開昭58−114737号公報、特開平3−42043号公報、特開平7−222927号公報、特開2006−326418号公報、及び特開2008−149275号公報に開示されている触媒は、活性の向上や選択性の向上についてはある程度の改善効果がみられるものの、長期の反応において触媒担体が崩壊し、運転継続が困難になる傾向にあることが明らかとなった。
また、米国特許第5081094号明細書に開示されている炭酸水素カリウムを含む担体を用いた触媒は、紛体状であるため工業生産に適さないものであった。米国特許第5081094号明細書には、担体をペレット状等に成形してもよいことの開示があるものの、成形に水を用いるため炭酸水素カリウムが溶解し、成形金型への充填がスムーズにできず、成形体の物性が不均一となることが推定された。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、α−オレフィン二量化反応中に崩壊し難く、長期間にわたり安定的に反応を継続することができ、反応活性が高く、反応選択率も高い、α−オレフィン二量化用触媒の担体に用いられる高強度かつ多孔性の成形体、及びその製造方法を提供することである。更に、本発明が解決しようとする課題は、当該成形体を用いたα−オレフィン二量化用触媒、及び該触媒を用いたα−オレフィン二量体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために検討を重ねた結果、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムの少なくとも1種を含み、特定の細孔容積及び圧壊強度をもつ成形体を触媒担体に用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。また、触媒担体に用いられる成形体の原料に炭酸水素化合物を含有させ、この原料を成形して特定の温度で熱処理することにより、上記の特定の成形体が得られ、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
[1] NaCO及びKCOから選ばれる少なくとも1種の炭酸化合物(A1)を含み、細孔直径が0.05μm〜10μmの範囲にある細孔容積が0.10mL/g〜0.30mL/gであり、かつ、圧壊強度が1.8kgf〜10.0kgfである、成形体。
[2] 上記炭酸化合物(A1)の含有率が70質量%以上である、上記[1]に記載の成形体。
[3] NaY又はKY(式中のYはSO、SiO、F、Cl、又はBrであり、nはYの価数によって決定される1又は2の整数である。)で表される少なくとも1種の化合物(B1)を更に含む、上記[1]又は[2]に記載の成形体。
[4] 上記細孔容積が0.14mL/g〜0.28mL/gであり、かつ、上記圧壊強度が2.2kgf〜8.5kgfである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の成形体。
[5] 上記炭酸化合物(A1)がKCOである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の成形体。
[6] グラファイト(C)を更に含む、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の成形体。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の成形体にアルカリ金属(D)を担持して得られる、α−オレフィン二量化用触媒。
[8] 上記[7]に記載のα−オレフィン二量化用触媒の存在下でα−オレフィンの二量化反応を行う、α−オレフィン二量体の製造方法。
[9] AHCO(式中のAはNa又はKである。)で表される少なくとも1種の炭酸水素化合物(A)10質量部〜100質量部と、
X(式中のBはNa又はKであり、XはCO、SO、SiO、F、Cl、又はBrであり、nはXの価数によって決定される1又は2の整数である。)で表される少なくとも1種の化合物(B)0質量部〜90質量部と、
を含んでなる混合物((A)と(B)との合計100質量部)を成形した後、100℃〜500℃の温度で熱処理し、上記炭酸水素化合物(A)の97質量%以上を熱分解する、上記[1]に記載の成形体の製造方法。
[10] 上記混合物が水を含有しない、上記[9]に記載の成形体の製造方法。
[11] 上記混合物の成形を打錠成形で行う、上記[9]又は[10]に記載の成形体の製造方法。
[12] 上記混合物の体積統計値でのメジアン径(d50)が5μm〜600μmの範囲にある、上記[9]〜[11]のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
[13] 上記混合物中、粒子径40μm以下の粒子の含有率が3質量%〜30質量%である、上記[9]〜[12]のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の成形体は、高強度かつ多孔性である。該成形体をα−オレフィン二量化用触媒の担体に用いたα−オレフィン二量化用触媒は、公知の触媒に比べて反応活性が高く、反応選択率も高く、更には反応中に崩壊し難く触媒寿命を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における熱処理前の成形体と熱処理後の成形体との細孔分布の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の成形体及びその製造方法、該成形体を用いて製造されるα−オレフィン二量化用触媒、並びに該触媒を用いたα−オレフィン二量体の製造方法について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、特に断らない限り、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本明細書における圧壊強度の単位[kgf]は、1kfg=9.8Nの関係式により[N]に変換可能である。
【0011】
<成形体>
本発明の成形体は、NaCO及びKCOから選ばれる少なくとも1種の炭酸化合物(A1)を含み、細孔直径が0.05μm〜10μmの範囲にある細孔容積が0.10mL/g〜0.30mL/gであり、かつ、圧壊強度が1.8kgf〜10.0kgfである。
【0012】
上記細孔容積が0.10mL/g以上であることにより、アルカリ金属の担持量を多くすることができ、上記細孔容積が0.30mL/g以下であることにより、成形体の強度を高めることができる。
また、上記圧壊強度が1.8kgf以上であることにより、触媒寿命を改善することができ、上記圧壊強度が10.0kgf以下であることにより、細孔容積の減少を抑えることができる。
【0013】
細孔直径が上記範囲にある細孔容積は、一般的には水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法で測定することができる。細孔容積は好ましくは0.14mL/g〜0.28mL/gであり、より好ましくは0.15mL/g〜0.25mL/gである。細孔容積は、成形体の原料となる混合物中における炭酸水素化合物(A)の配合比率により調整可能である。また、後述する打錠成形体密度を調整することによっても細孔容積を調整可能である。
【0014】
本明細書において圧壊強度は、成形体の半径方向の強度を示す。後述する、ヌードル状、円柱状、コンベックス状、リング状、及び球状のいずれも半径方向に相当する方向が存在するが、半径方向に相当する方向のない形状の成形体の場合、最も弱い方向の強度を圧壊強度とする。なお、圧壊強度は、造粒物の耐圧強度を表す物性として一般的に知られており、通常、ペレット、タブレット等の成型体1個を胴方向に加圧し、圧壊する時の力を測定するものである。JIS Z8841「造粒物−強度試験法」には試験方法の規定がある。
圧壊強度は好ましくは1.8kgf〜8.5kgfであり、より好ましくは2.2kgf〜8.5kgfであり、更に好ましくは4.6kgf〜8.4kgfである。
【0015】
本発明の成形体は、NaY又はKY(式中のYはSO、SiO、F、Cl、又はBrであり、nはYの価数によって決定される1又は2の整数である。)で表される少なくとも1種の化合物(B1)を更に含んでいてもよい。
また、本発明の成形体は、グラファイト(C)を更に含んでいてもよい。
【0016】
以下、成形体の各構成要素につき説明する。
【0017】
〔NaCO及びKCOから選ばれる少なくとも1種の炭酸化合物(A1)〕
炭酸化合物(A1)は、炭酸ナトリウム(NaCO)及び炭酸カリウム(KCO)から選ばれ、いずれか1種のみであってもよく、2種であってもよい。2種である場合、その混合割合は特に限定されない。炭酸化合物(A1)としてはKCOが好ましい。
炭酸化合物(A1)の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0018】
〔NaY又はKYで表される少なくとも1種の化合物(B1)〕
NaY又はKYで表される式中のYはSO、SiO、F、Cl、又はBrであり、nはYの価数によって決定される1又は2の整数である。すなわち、化合物(B1)は、ナトリウム又はカリウムの、硫酸塩、亜硫酸塩、フッ化物、塩化物、又は臭化物である。化合物(B1)としては、NaY又はKYで表される化合物のいずれか1種であってもよく、2種以上であってもよい。2種以上である場合、その混合割合は特に限定されない。
成形体中に化合物(B1)が含まれる場合、その含有率は0質量%超30質量%以下であることが好ましく、0質量%超20質量%以下であることがより好ましく、0質量%超10質量%以下であることが更に好ましい。
【0019】
〔グラファイト(C)〕
成形体に含まれてもよいグラファイト(C)としては、「混合物の成形」の項で後述するグラファイト(C)に相当する。成形体の原料となる混合物に添加されたグラファイト(C)は、熱処理温度及び雰囲気によっては酸化することもありうるが、原料に添加されたグラファイト(C)のうち任意の量が成形体中に残存していてよい。
成形体中にグラファイト(C)が含まれる場合、その含有率は0質量%超10質量%以下であることが好ましく、0質量%超5質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
<成形体の製造方法>
本発明の成形体の製造方法は、AHCOで表される少なくとも1種の炭酸水素化合物(A)10質量部〜100質量部と、BXで表される少なくとも1種の化合物(B)0質量部〜90質量部と、を含んでなる混合物((A)と(B)との合計100質量部)を成形した後、100℃〜500℃の温度で熱処理し、上記炭酸水素化合物(A)の97質量%以上を熱分解するものである。
【0021】
以下、該成形体の原料及び製造条件について詳説する。
【0022】
〔AHCOで表される少なくとも1種の炭酸水素化合物(A)〕
AHCOで表される式中のAはNa又はKである。すなわち、炭酸水素化合物(A)は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも1種の化合物である。炭酸水素化合物(A)としては、AHCOで表される化合物のいずれか1種であってもよく、2種以上であってもよい。2種以上である場合、その混合割合は特に限定されない。
【0023】
なお、本発明の製造方法では、後述するとおり熱処理工程が必須となる。炭酸水素化合物(A)は当該工程において熱分解する化合物であることが特徴である。
【0024】
上記炭酸水素化合物の中でも特に、式中のAがKである炭酸水素カリウムが好ましく用いられる。
【0025】
〔BXで表される少なくとも1種の化合物(B)〕
Xで表される式中のBはNa又はKであり、XはCO、SO、SiO、F、Cl、又はBrであり、nはXの価数によって決定される1又は2の整数である。すなわち、化合物(B)は、ナトリウム又はカリウムの、炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、フッ化物、塩化物、又は臭化物である。化合物(B)としては、BXで表される化合物のいずれか1種であってもよく、2種以上であってもよい。2種以上である場合、その混合割合は特に限定されない。
【0026】
上記化合物の中でも特に、式中のBがKであり、XがCOであり、nが2である炭酸カリウムが好ましく用いられる。
【0027】
〔混合物〕
本発明の成形体の原料となる混合物は、上記炭酸水素化合物(A)と上記化合物(B)とを含んでなる。炭酸水素化合物(A)と化合物(B)との合計100質量部当たり、炭酸水素化合物(A)は10質量部〜100質量部であり、30質量部〜100質量部であることが好ましく、40質量部〜100質量部であることがより好ましい。また、炭酸水素化合物(A)と化合物(B)との合計100質量部当たり、化合物(B)は0質量部〜90質量部であり、0質量部〜70質量部であることが好ましく、0質量部〜60質量部であることがより好ましい。
【0028】
なお、本発明において化合物(B)は0質量部の場合、すなわち混合物中に化合物(B)が含まれない場合を包含する。この理由は前述のとおり、炭酸水素化合物(A)が熱処理工程により熱分解すると炭酸化合物(A1)に相当する化合物が成形体中に存在することになり、後述するα−オレフィン二量化用触媒の担体として好適に用いられるものになるからである。
【0029】
また、炭酸水素化合物(A)と化合物(B)との合計100質量部当たり、BXで表される式中のXがSO、SiO、F、Cl、又はBrである化合物は、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0030】
本発明の成形体の原料となる混合物は、上記細孔容積が0.10mL/g〜0.30mL/gであり、かつ、上記圧壊強度が1.8kgf〜10.0kgfである成形体が得られる限り、上記炭酸水素化合物(A)及び上記化合物(B)以外の他の化合物を含んでいてもよい。このような他の化合物の例としては炭酸水素アンモニウムが挙げられる。混合物が炭酸水素アンモニウムを含むことにより、成形体の細孔容積を大きくすることができる。
【0031】
本発明の製造方法においては、炭酸水素カリウム10質量部〜100質量部と炭酸カリウム0質量部〜90質量部とを合計量が100質量部となるように混合した混合物を用いることが特に好ましい。
【0032】
〔混合物の特徴〕
上記炭酸水素化合物(A)と上記化合物(B)とを含んでなる混合物は、体積統計値でのメジアン径(d50)が5μm〜600μmであることが好ましく、20μm〜500μmであることがより好ましく、50μm〜450μmであることが更に好ましく、50μm〜300μmであることが特に好ましい。
【0033】
上記範囲のメジアン径を有する粉体は、良好な流動性を有することから安定に成形体を製造することが可能である。
【0034】
また、上記炭酸水素化合物(A)と上記化合物(B)とを含んでなる混合物は、粒子径40μm以下の粒子の含有率が3質量%〜30質量%であることが好ましい。
一般的に、小粒径の粒子は打錠成形時に粒子の動きが悪いために排除されることが望ましいことが知られているが、粒子径40μm以下の粒子の含有率を上記範囲内とすることにより、より高い成形体強度を得ることができる。また、粒子径40μm以下の粒子の含有率が上記範囲内であれば、成形体原料の流動性が確保され、混合物を成形する際、途中に詰まるなどしてブロッキングを起こしにくく、均一に充填できる。なお、炭酸水素化合物(A)の粒径分布と化合物(B)の粒径分布とに違いがあっても、混合後に全体として粒子径40μm以下の粒子の含有率が上記範囲内となっていればよい。
【0035】
〔混合物の成形〕
本発明において、混合物の成形法としては特に限定されず、押出成形、圧縮成形、造粒成形等の方法が採用される。上記炭酸水素化合物(A)は水に溶解するため、混合物には水を添加しないこと(すなわち、混合物が水を含有しないこと)が好ましい。
【0036】
押出成形する場合には、上記混合物に液体を加えて形状を維持できる程度の粘度を持たせた成形原料を、型に通して成形する。上記炭酸水素化合物(A)は水に溶解するため、押出成形を行う際には、炭酸水素化合物(A)が溶解しない溶媒(有機溶媒等)を使うことが好ましい。
【0037】
圧縮成形する場合には、通常、上記混合物を型となる臼に充填し、杵で圧縮して成形する。
【0038】
本発明において成形法としては、成形体の原料となる混合物の性状から、圧縮成形が好ましく、特に打錠成形が好ましい。打錠成形を行う場合、上述した混合物の特徴を満たす原料を用いると、臼の中に原料が均一に充填されるため、密度のばらつきが小さい成形体が得られる傾向にある。
【0039】
また、打錠成形を行う場合、臼と杵との動きを滑らかにする目的で、炭酸水素化合物(A)と化合物(B)とを含む混合物に、必要に応じてグラファイト(C)を添加することができる。グラファイト(C)の性状については特に制限はなく、一般に打錠時の滑材として使われるものであればいずれのものでも構わない。一般に使用されるのは、体積統計値でのメジアン径(d50)が5μm〜500μmの範囲にあって、BET法で測定した比表面積が0.1m/g〜300m/gの広い範囲のものである。グラファイト(C)は、天然グラファイトであっても人造グラファイトであってもよい。
【0040】
成形体の原料となる混合物へのグラファイト(C)の添加量は、打錠成形が行える範囲であれば任意に設定することができるが、混合物100質量部当たり0.3質量部〜10質量部であることが好ましく、0.5質量部〜5質量部であることがより好ましい。グラファイトの添加量がこの範囲内であれば、添加量が多すぎて成形体の強度が低下する問題が生じることは殆どない。また、添加量が少なすぎて臼や杵との摩擦が大きくなり、装置の動きが悪くなって成形体の密度が安定しない等の問題が生じることも殆どない。したがって、良好に成形することが可能となる。
打錠成形体密度は、好ましくは1.6g/mL〜2.3g/mLであり、より好ましくは1.8g/mL〜2.2g/mLである。打錠成形体密度は、圧縮強度を制御することにより調整できる。
【0041】
成形体の大きさ及び形状には特に制限はない。成形装置等の条件によって種々選択され、ヌードル状、円柱状、コンベックス状、リング状、及び球状のいずれも取りうる。打錠成形する場合には、円柱状、コンベックス状、及びリング状が好ましく、成形のしやすさや強度の観点から円柱状がより好ましい。打錠機は市販されているものが使用でき、ロータリー式でもプレス式でもよく、適宜、生産量に応じて最適なスケールの装置が選択できる。成形体を円柱状とする場合、通常、直径2mm〜5mm、高さ2mm〜6mmに成形される。成形体の大きさがこの範囲であれば、成形体が小さすぎて打錠数が増え、生産性が低下しコスト高になる問題が生じることは少なくなる。また、成形体が大きすぎて触媒担体として利用した場合に反応系内での原料及び生成物の拡散が遅くなり、反応活性及び選択性が低下する問題が生じることも少なくなる。
【0042】
〔熱処理工程〕
上記成形法により得られた成形体は、熱処理工程を経て最終的に本発明の成形体となる。
【0043】
当該熱処理工程の温度は100℃〜500℃であり、好ましくは150℃〜450℃であり、より好ましくは180℃〜400℃である。当該温度は、使用する炭酸水素化合物(A)の種類によって任意に決めることができる。なお、炭酸水素化合物(A)に相当する炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムの分解開始温度は、それぞれ、270℃、100℃である。
熱処理により、炭酸水素化合物(A)の97質量%以上、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上が熱分解される。
熱分解率は、熱処理工程の温度及び熱処理時間により調整される。熱処理温度が比較的低い場合は、熱処理時間を長くすることにより上記の熱分解率を得ることができる。炭酸水素化合物(A)の熱分解率が上記範囲にあることによって、十分な細孔容積を持ち、α−オレフィン二量化用触媒の担体として好ましい成形体を得ることができる。
【0044】
成形体を熱処理する際は、熱分解によって生成したガスを滞留しないようにしておけば、熱処理装置の仕様に特に制限はない。熱処理装置としては、熱分解によって生成したガスを強制的に排出できるようにしておくことが好ましい。生成したガスを強制的に排出する方法としては、空気、還元ガス、又は不活性ガスを導入することが挙げられる。これらの中で、特に空気を用いることが操作上、望ましい。また、熱処理装置の構造についても特に制限はなく、一般的な加熱炉、電気炉、ベルト炉、熱風循環炉等を用いることができる。
【0045】
本発明の製造方法では、上記のように原料の成形後に熱処理を行うことで、炭酸水素化合物(A)が熱分解され、生成したガスが除去された部分に空孔が形成される。従来技術では、成形時の圧縮強度を弱め、粒子間に形成される空間を確保することによって多孔質の成形体を得てきたが、その場合、成形体の強度が弱くなる傾向にあった。一方、本発明では、成形体を成形した後に内部に存在する炭酸水素化合物(A)を熱分解することで多孔質の成形体を得る手法を取ることから、従来技術のように強度を犠牲にした成形をする必要はない。本発明の製造方法では、高い強度を得るために圧縮強度を最適化して成形し、その後に多くの細孔を形成できるため、高強度で多孔性の成形体を形成することが可能となる。このような方法によって得られた成形体は驚くべきことに、成形体内部に多数の細孔が存在しているにもかかわらず、熱処理工程前の成形体と比べて強度低下は殆どなく、従来技術で製造された成形体と比べて細孔容積が大きくかつ高い強度の成形体が得られる。
【0046】
以上のように、本発明の製造方法で製造される成形体は、強度、形状の均一性に優れるため、触媒担体、特にα−オレフィン二量化用触媒の担体として好適である。
【0047】
<α−オレフィン二量化用触媒>
本発明のα−オレフィン二量化用触媒は、本発明の成形体にアルカリ金属(D)を担持して得られるものである。
【0048】
アルカリ金属(D)としては、ナトリウム、カリウム、又はナトリウムとカリウムとの混合物が好ましい。ここでアルカリ金属(D)とは、イオン化されていない0価の金属であり、アルカリ金属純度として90%以上であれば、アルカリ金属以外の成分が含まれていてもよい。アルカリ金属以外の成分としては、リチウム、カリウム等の周期表第1族元素、各種酸化物又は水酸化物、周期表第1族元素以外の金属元素等が挙げられる。
【0049】
本発明の成形体からなる担体にアルカリ金属(D)を担持させる方法としては、種々の方法を採用することができる。担持処理時の温度は通常150℃〜400℃の範囲である。触媒活性、触媒寿命、及びα−オレフィン二量化生成物への選択性に優れた触媒を得る観点から、担持処理する際の温度は200℃〜350℃の範囲が好ましく、200℃〜300℃の範囲がより好ましい。担持処理時の雰囲気は、水分及び酸化雰囲気でなければ、還元雰囲気であっても不活性雰囲気であってもよい。安全性や経済性を考慮すれば、窒素雰囲気で処理するのが好ましい。
【0050】
担持処理時、アルカリ金属(D)を均一に担持させるために、担体は、振動、回転、又は撹拌するのが好ましい。担持されたアルカリ金属(D)は、担体と加熱下に接触することにより担体中のアルカリ金属と交換反応を起こすことが知られている。
【0051】
α−オレフィン二量化用触媒中のアルカリ金属(D)の含有率(担持率)は、アルカリ金属(D)と担体との合計量を100質量%とするときに、通常0.5質量%〜10質量%の範囲であり、好ましくは1質量%〜6質量%の範囲である。
【0052】
本発明の成形体は、従来技術で製造した成形体に比べて、より高い成形体強度とより大きい細孔容積とを有することが特徴である。このように大きな細孔容積を有することで、アルカリ金属(D)をより多く担持することが可能となる。アルカリ金属(D)の担持率と触媒活性とには相関があるので、本発明のα−オレフィン二量化用触媒はより高活性で反応を行うことが可能となる。また、一般的に、活性が高くなると担体への負荷が大きくなり、触媒担体の崩壊が進む可能性が高まってくる傾向があるが、本発明の成形体は強度が非常に高く、このような問題が発生し難いため特に好ましい。
【0053】
<α−オレフィン二量体の製造方法>
本発明のα−オレフィン二量体の製造方法は、本発明のα−オレフィン二量化用触媒の存在下でα−オレフィンの二量化反応を行うものである。
【0054】
α−オレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン等の低級α−オレフィンが挙げられる。これらの二量化反応の中でも、プロピレンの二量化による4−メチル−1−ペンテンの製造、1−ブテンとエチレンとの共二量化による3−メチル−1−ペンテンの製造に、本発明のα−オレフィン二量化用触媒を使用することが好ましい。
【0055】
本発明のα−オレフィン二量化用触媒を使用したα−オレフィンの二量化反応における反応温度は、通常、0℃〜300℃、好ましくは50℃〜200℃である。また、反応圧力は、通常、常圧ないし19.6MPa(200kg/cm−G)、好ましくは1.96MPa〜14.7MPa(20kg/cm−G〜150kg/cm−G)の範囲である。
反応器内のα−オレフィンの状況は当該反応条件及びα−オレフィンの種類によって異なるが、一般的に液相状態、気相状態、超臨界状態が取りうる。これらの中でも、気相状態又は超臨界状態で反応を実施することが好ましい。また、反応は固定床方式で行うこともできるし、流動床方式で行うこともできるが、固定床方式で行うことが好ましい。固定床方式で反応を行う場合に、α−オレフィンの液空間速度(LHSV)は通常0.1hr−1〜10hr−1、好ましくは0.5hr−1〜5hr−1の範囲である。反応終了後の混合物から定法に従って未反応のα−オレフィン及び生成物が分離され、未反応のα−オレフィンは反応に循環再利用される。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
[メジアン径(d50)の測定]
窒素を流通させたグローブボックス中、20μm〜850μmの網ふるいの上部に30gの粉体を入れ、手動でふるいにかけた。ふるい分けした後の各ふるい上での粉体の質量を測定することにより、メジアン径(d50)を算出した。
【0058】
[粒子径40μm以下の粒子の含有率の測定]
窒素を流通させたグローブボックス中、40μmの網ふるいの上部に30gの粉体を入れ、手動でふるいにかけた。ふるいをパスした粉体質量を測定し、最初に入れた30gで割ることにより、粒子径40μm以下の粒子の含有率を算出した。
【0059】
[炭酸水素化合物(A)の熱分解率の測定]
得られた成形体を示差熱天秤(Rigaku製 8120)で400℃まで昇温して重量減少量を測定し、成形時の炭酸水素化合物(A)の含有量と重量減少量との関係から、熱分解率を計算した。なお、化学量論的に、2モルの炭酸水素化合物(A)から、1モルの水と1モルのCOとが発生する。熱分解率が100質量%の場合は、それ以上の熱分解が起こらないため、示差熱天秤での重量減少は認められない。
【0060】
[細孔容積の測定]
水銀ポロシメーター(マイクロメトリクス社製、Auto PoreIV)を用いて水銀圧入法によって、細孔直径が0.05μm〜10μmの範囲にある細孔容積を測定した。
【0061】
[成形体の圧壊強度の測定]
デジタル硬度計(藤原製作所製、KHT−40N)を用い、JIS Z8841「造粒物−強度試験法」に記載の方法に従って、成形体の半径方向(円柱状成形体の胴方向)の圧壊強度を測定した。実施例8については成形体の縦方向(円柱状成形体の軸線方向)の圧壊強度も測定した。
圧壊強度の測定原理は、静止している試料台の上に、被測定対象である円柱状成形体を載置し、可動式の加圧面を上部から一定速度で下降させ、円柱状成形体に押し付けて破壊するときの強度を測定するものである。
【0062】
[触媒粉化の有無の確認]
α−オレフィン(プロピレン)の二量化反応終了後、反応器内よりα−オレフィン二量化用触媒を取り出し、目視にて触媒の粉化の有無を確認した。
【0063】
[実施例1]
〔成形体の製造〕
炭酸水素化合物(A)であるKHCO(純正化学製、純度99%、カタログ番号43300−1201)70質量部と、化合物(B)であるKCO(純度99%、BET法で測定した比表面積1.3m/g、嵩密度0.46g/mL)30質量部とを混合し、100質量部の混合物粉体を得た。混合物粉体のメジアン径(d50)は120μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は7.5質量%であった。
【0064】
100質量部の混合物粉体に0.9質量部のグラファイト(純度98%、メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として打錠成形体密度が2.0g/mLとなるように圧縮強度を制御して打錠成形し、直径3mm、高さ3mmの円柱状の打錠成形体を得た。打錠成形体の細孔容積は0.03mL/gであり、半径方向の圧壊強度は5.7kgfであった。得られた打錠成形体を300℃で2時間、乾燥空気中で熱処理し、熱処理成形体(成形体(1))を得た。KHCOの熱分解率は100質量%であった。また、得られた熱処理成形体の細孔容積は0.21mL/gであり、半径方向の圧壊強度は7.0kgfであった。熱処理成形体(成形体(1))及び熱処理前の成形体について細孔容積を測定した際の細孔分布の測定結果を図1に示す。
【0065】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
上記成形体(1)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(1)を調製した。
【0066】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は3.5質量%であった。
【0067】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(1)4gを単管型反応器(直径18mm)に充填し、反応器内温度140℃、反応圧力9.8MPa、プロピレン流量4g/hで触媒層に連続的にプロピレンを供給し、プロピレンの二量化反応による4−メチル−1−ペンテン(以下、4MP−1と略す)の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表1に示す。
【0068】
[実施例2]
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
実施例1において得られた成形体(1)94質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム6質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(2)を調製した。
【0069】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は6.0質量%であった。
【0070】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(2)4gを用いて実施例1と同様の方法によりプロピレンの二量化反応による4MP−1の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
〔成形体の製造〕
炭酸水素化合物(A)としてKHCO(純正化学製、純度99%以上、カタログ番号43300−1201)を用いた。KHCOのメジアン径(d50)は150μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は3.0質量%であった。
【0072】
100質量部のKHCOに0.9質量部のグラファイト(純度98%、メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として打錠成形体密度が2.0g/mLとなるように圧縮強度を制御して打錠成形し、直径3mm、高さ3mmの円柱状の打錠成形体を得た。得られた打錠成形体を300℃で2時間、乾燥空気中で熱処理し、熱処理成形体(成形体(2))を得た。KHCOの熱分解率は100質量%であった。また、得られた成形体の細孔容積は0.25mL/gであり、半径方向の圧壊強度は6.0kgfであった。
【0073】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
上記成形体(2)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(3)を調製した。
【0074】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は3.5質量%であった。
【0075】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(3)4gを用いて実施例1と同様の方法によりプロピレンの二量化反応による4MP−1の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表1に示す。
【0076】
[実施例4]
〔成形体の製造〕
KHCOの使用量を50質量部とし、KCOの使用量を50質量部とした以外は実施例1と同様にして100質量部の混合物粉体を得た。混合物粉体のメジアン径(d50)は100μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は13.0質量%であった。
【0077】
100質量部の混合物粉体に0.9質量部のグラファイト(純度98%、メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として打錠成形体密度が1.9g/mLとなるように圧縮強度を制御して打錠成形した以外は、実施例1と同様の方法により熱処理成形体(成形体(3))を得た。KHCOの熱分解率は100質量%であった。また、得られた熱処理成形体の細孔容積は0.21mL/gであり、半径方向の圧壊強度は4.6kgfであった。
【0078】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
上記成形体(3)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(4)を調製した。
【0079】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は3.5質量%であった。
【0080】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(4)4gを用いて実施例1と同様の方法によりプロピレンの二量化反応による4MP−1の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表1に示す。
【0081】
[実施例5]
〔成形体の製造〕
乳鉢で軽く押し潰して粉砕した後、212μmのふるいを通過したKCOを使用した以外は実施例1と同様にして100質量部の混合物粉体を得た。混合物粉体のメジアン径(d50)は100μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は23.0質量%であった。
【0082】
100質量部の混合物粉体に0.9質量部のグラファイト(純度98%、メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として打錠成形体密度が2.0g/mLとなるように圧縮強度を制御した以外は、実施例1と同様の方法により熱処理成形体(成形体(4))を得た。KHCOの熱分解率は100質量%であった。また、得られた熱処理成形体の細孔容積は0.20mL/gであり、半径方向の圧壊強度は8.4kgfであった。
【0083】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
上記成形体(4)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(5)を調製した。
【0084】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は3.5質量%であった。
【0085】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(5)4gを用いて実施例1と同様の方法によりプロピレンの二量化反応による4MP−1の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表2に示す。
【0086】
[実施例6]
〔成形体の製造〕
乳鉢で軽く押し潰して粉砕した後、212μmのふるいを通過したKCOを使用した以外は実施例4と同様にして100質量部の混合物粉体を得た。混合物粉体のメジアン径(d50)は90μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は26.5質量%であった。
【0087】
100質量部の混合物粉体に0.9質量部のグラファイト(純度98%、メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として打錠成形体密度が1.9g/mLとなるように圧縮強度を制御した以外は、実施例1と同様の方法により熱処理成形体(成形体(5))を得た。KHCOの熱分解率は100質量%であった。また、得られた熱処理成形体の細孔容積は0.20mL/gであり、半径方向の圧壊強度は7.8kgfであった。
【0088】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製方法〕
上記成形体(5)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(6)を調製した。
【0089】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は3.5質量%であった。
【0090】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(6)4gを用いて実施例1と同様の方法によりプロピレンの二量化反応による4MP−1の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表2に示す。
【0091】
[実施例7]
〔成形体の製造〕
炭酸水素化合物(A)であるKHCO(純正化学製、純度99%、カタログ番号43300−1201)を乳鉢で粉砕して得られた粉体(メジアン径(d50)15μm)13質量部と、化合物(B)であるKCO(純度99%、BET法で測定した比表面積が1.2m/g、嵩密度0.94g/mL)87質量部とを混合し、100質量部の混合物粉体を得た。混合物粉体のメジアン径(d50)は260μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は14.6質量%であった。
【0092】
100質量部の混合物粉体に0.9質量部のグラファイト(メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として、成形体密度が1.8g/mLとなるように圧縮強度を制御して打錠成形し、直径3mm、高さ3mmの円柱状の成形体を得た。打錠成形の間、圧縮強度は安定的に推移し、安定な打錠成形が可能であった。得られた打錠成形体を300℃で2時間、乾燥空気中で熱処理し、熱処理成形体(成形体(6))を得た。KHCOの熱分解率は100質量%であった。また、得られた熱処理成形体の細孔容積は0.15mL/gであり、半径方向の圧壊強度は5.9kgfであった。
【0093】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
上記成形体(6)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(7)を調製した。
【0094】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は3.5質量%であった。
【0095】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(7)4gを単管型反応器(直径18mm)に充填し、反応器内温度140℃、反応圧力9.8MPa、プロピレン流量4g/hで触媒層に連続的にプロピレンを供給し、プロピレンの二量化反応による4MP−1の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表2に示す。
【0096】
[実施例8]
〔成形体の製造〕
KHCOの使用量を80質量部とし、KCOの使用量を20質量部とした以外は実施例1と同様にして100質量部の混合物粉体を得た。混合物粉体のメジアン径(d50)は120μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は5.0質量%であった。
【0097】
100質量部の混合物粉体に0.9質量部のグラファイト(純度98%、メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として打錠成形体密度が2.0g/mLとなるように圧縮強度を制御した以外は、実施例1と同様の方法により熱処理成形体(成形体(7))を得た。得られた熱処理成形体の細孔容積は0.24mL/gであった。また、半径方向の圧壊強度は5.2kgfであり、縦方向の圧壊強度は22.5kgfであった。
【0098】
[比較例1]
〔成形体の製造〕
化合物(B)としてKCO(旭硝子製、純度99%)を用いた。KCOのメジアン径(d50)は110μmであり、粒子径40μm以下の粒子の含有率は4.0質量%であった。
【0099】
100質量部のKCOに0.9質量部のグラファイト(メジアン径(d50)0.6μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、これを打錠原料として打錠成形体密度が2.0g/mLとなるように圧縮強度を制御して打錠成形し、直径3mm、高さ3mmの円柱状の打錠成形体を得た。得られた打錠成形体を300℃で2時間、乾燥空気中で熱処理し、熱処理成形体(成形体(C1))を得た。得られた熱処理成形体の細孔容積は0.05mL/gであった。また、半径方向の圧壊強度は6.0kgfであった。
【0100】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
上記成形体(C1)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(C1)を調製した。
【0101】
添加したナトリウムが担持容器内部及び成形体の外表面に固着して、容器からの排出が一部困難なものが存在した。これより、添加したナトリウムは成形体へ全量担持はされていないと判断した。この際の担持率は3.5質量%に満たないと考えられる。
【0102】
[比較例2]
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製方法〕
比較例1において得られた成形体(C1)99質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム1質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(C2)を調製した。
【0103】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は1.0質量%であった。
【0104】
〔プロピレンの二量化反応〕
上記調製方法により得られたα−オレフィン二量化用触媒(C2)4gを用いて実施例1と同様の方法によりプロピレンの二量化反応による4MP−1の合成反応を行った。流通反応を180時間実施したときのプロピレン転化率及び4MP−1選択率を表3に示す。
【0105】
[比較例3]
〔成形体の製造〕
打錠成形体密度が1.55g/mLとなるように圧縮強度を制御して打錠成形した以外は、比較例1と同様にして熱処理成形体(成形体(C2))を得た。得られた熱処理成形体の細孔容積は0.21mL/gであった。また、半径方向の圧壊強度は1.1kgfであった。
【0106】
〔α−オレフィン二量化用触媒の調製〕
上記成形体(C2)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα−オレフィン二量化用触媒(C3)の調製を試みた。しかし、担持中に成形体(C2)が粉化したため、触媒としての回収が不可能になった。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
表1〜表3に、実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた成形体の物性、並びにナトリウム担持の結果及びプロピレンの二量化反応の結果を示した。本発明によれば、細孔容積が大きく、かつ高い圧壊強度を有する成形体が得られることがわかる。成形体の強度が高いことから、その後のアルカリ金属担持工程及びα−オレフィンの二量化反応工程での触媒の粉化が抑制され、長寿命触媒を調製することが可能になる。また、成形体の細孔容積が大きいことから、ナトリウムの担持量を多くしても全量が成形体に担持される。よって、反応活性(ここではプロピレンの転化率)が高い触媒が得られることがわかる。
【0111】
2013年12月17日に出願された日本出願2013−260226の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1