特許第6014326号(P6014326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014326
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 99/00 20090101AFI20161011BHJP
   B62K 25/26 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B62J99/00 J
   B62K25/26
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-289000(P2011-289000)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136330(P2013-136330A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀成
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−176218(JP,A)
【文献】 特開2010−155480(JP,A)
【文献】 特開2010−155479(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0220285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 99/00
B62K 25/00−25/32
B60G 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車であって、
車体フレームと、
前記車体フレームに対して揺動可能に支持され、車輪を支持するスイングアームと、
前記車体フレームと前記スイングアームとの間に設けられるリンク機構と、
前記リンク機構に支持され、前記スイングアームの揺動に応じて伸縮する緩衝器と、
前記リンク機構の回転角を検出する回転角検出部と、
を備え、
前記回転角検出部は、ケースを備え、
前記ケースは前記リンク機構に固定されており、
前記リンク機構は、
前記車体フレームに回転可能に接続される第1リンクと、
前記第1リンクに回転可能に接続され、かつ、前記スイングアームに回転可能に接続される第2リンクと、
を備えており、
前記回転角検出部は、前記車体フレームと前記第1リンクとの相対的な回転角、前記第1リンクと前記第2リンクとの相対的な回転角、および、前記第2リンクと前記スイングアームの相対的な回転角のいずれかを検出する自動二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記リンク機構は、車幅方向と平行な軸心周りに回転可能に構成され、
前記回転角検出部は、前記ケースに対して回転可能な入力軸部を備え、
前記入力軸部が前記リンク機構の車幅方向と平行な軸心周りに回転可能に、前記ケースが前記リンク機構に固定されている自動二輪車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動二輪車において、
前記ケースは前記第1リンクに固定されている自動二輪車。
【請求項4】
請求項3に記載の自動二輪車において、
前記入力軸部は前記車体フレームに接続されている自動二輪車。
【請求項5】
請求項4に記載の自動二輪車において、
前記第1リンクは、車幅方向に平行な貫通孔を有し、
前記車体フレームは、前記貫通孔に挿入され、前記第1リンクを回転可能に支持する支持軸部を有し、
前記回転角検出部は、前記第1リンクの一側方であって前記貫通孔の一端側に面する位置に配置され、
前記入力軸部は前記支持軸部の一端部に接続される自動二輪車。
【請求項6】
自動二輪車であって、
車体フレームと、
前記車体フレームに対して揺動可能に支持され、車輪を支持するスイングアームと、
前記車体フレームと前記スイングアームとの間に設けられるリンク機構と、
前記リンク機構に支持され、前記スイングアームの揺動に応じて伸縮する緩衝器と、
前記リンク機構の回転角を検出する回転角検出部と、
を備え、
前記回転角検出部は、
ケースと、
前記ケースに対して回転可能な入力軸部と、
を備え、
前記リンク機構は、
前記車体フレームに回転可能に接続される第1リンクと、
前記第1リンクに回転可能に接続され、かつ、前記スイングアームに回転可能に接続される第2リンクと、
を備えており、
前記ケースは前記第1リンクに固定されており、
前記第1リンクは、車幅方向に平行な貫通孔を有し、
前記車体フレームは、前記貫通孔に挿入され、前記第1リンクを回転可能に支持する支持軸部を有し、
前記回転角検出部は、前記第1リンクの一側方であって前記貫通孔の一端側に面する位置に配置され、
前記入力軸部は前記支持軸部の一端部に接続される自動二輪車。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の自動二輪車において、
前記第1リンクに支持され、前記ケースを前記第1リンクに固定する保持部材を備えている自動二輪車。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の自動二輪車において、
前記第1リンクは、さらに前記緩衝器に回転可能に接続される自動二輪車。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の自動二輪車において、
前記第2リンクは、さらに前記緩衝器に回転可能に接続される自動二輪車。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の自動二輪車において、
前記回転角検出部は、前記スイングアームの車幅方向内方に配置されている自動二輪車。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の自動二輪車において、
車幅方向における前記回転角検出部の位置は、車幅方向において前記車輪が位置する範囲内である自動二輪車。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の自動二輪車において、
前記リンク機構および前記回転角検出部は、側面視で前記スイングアームのピボット軸部の軸心と前記車輪の回転中心軸線とを結ぶ仮想線の下方に配置されている自動二輪車。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の自動二輪車において、
前記緩衝器はさらに、前記車体フレームまたは前記スイングアームのいずれかに回転可能に接続される自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動二輪車に係り、特に、スイングアームの揺動や緩衝器の伸縮など懸架機構の動きを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の技術
特許文献1は、スイングアームの揺動に応じて伸縮する緩衝器と、緩衝器と並ぶように設けられるストロークセンサとを備えている自動二輪車を開示している。ストロークセンサは、シリンダ部と、シリンダ部の内部を摺動するピストン部とを備えている。シリンダ部およびピストン部はそれぞれ、緩衝器の両端部に取り付けられている。緩衝器の伸縮に伴って、ピストン部はシリンダ部に対してスライド移動する。ストロークセンサは、シリンダ部に対するピストン部の位置に応じた信号を出力する。ストロークセンサの検出結果によれば、緩衝器の伸縮、または、スイングアームの揺動を好適に検出することできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7ー208529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、ストロークセンサの配置は、緩衝器に隣接した位置とする必要がある。また、ストロークセンサは緩衝器と略同等の長さを有している。このように、ストロークセンサの大きさ(サイズ)は、緩衝器と比べても小さくない。したがって、自動二輪車を外部から見たとき、ストロークセンサが目立ってしまい、自動二輪車の外観が損なわれるという不都合がある。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、自動二輪車の外観を損なうことなく、懸架機構の動きを検出することができる自動二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、自動二輪車であって、車体フレームと、前記車体フレームに対して揺動可能に支持され、車輪を支持するスイングアームと、前記車体フレームと前記スイングアームとの間に設けられるリンク機構と、前記リンク機構に支持され、前記スイングアームの揺動に応じて伸縮する緩衝器と、前記リンク機構の回転角を検出する回転角検出部と、を備え、前記回転角検出部は、ケースを備え、前記ケースは前記リンク機構に固定されており、前記リンク機構は、前記車体フレームに回転可能に接続される第1リンクと、前記第1リンクに回転可能に接続され、かつ、前記スイングアームに回転可能に接続される第2リンクと、を備えており、前記回転角検出部は、前記車体フレームと前記第1リンクとの相対的な回転角、前記第1リンクと前記第2リンクとの相対的な回転角、および、前記第2リンクと前記スイングアームの相対的な回転角のいずれかを検出する自動二輪車である。
【0007】
[作用・効果]本発明に係る自動二輪車によれば、スイングアームが揺動すると、リンク機構が動く。リンク機構の動きに伴って緩衝器は伸縮する。回転角検出部は、リンク機構の回転を検出する。リンク機構の回転はスイングアームの揺動および緩衝器の伸縮と対応している。よって、回転角検出部の検出結果によれば、緩衝器の伸縮または/およびスイングアームの揺動(以下、適宜「懸架機構の動き」という)を好適に検出することができる。
【0008】
回転角検出部は、スイングアーム、リンク機構、緩衝器、その他の部材に比べて比較的小型である。勿論、従来技術で説明したストロークセンサと比べても回転角検出部のサイズは小さい。よって、自動二輪車を外部から見たときに回転角検出部が目立ちにくい。
【0009】
なお、リンク機構等は、専ら回転角検出部のみのために設けられる部材ではない。リンク機構の主たる機能は、スイングアームの揺動と緩衝器の伸縮とを連動させることである。回転角検出部は、このようなリンク機構の動きを利用して、懸架機構の動きを検出する。同様に、その他の構成要素である車体フレーム、スイングアーム等も、回転角検出部に付随して新たに設けられる部材ではない。よって、回転量検出部以外の構成要素によって、自動二輪車の外観がさらに損なわれることはない。
【0010】
また、リンク機構は上述した機能を有するので、リンク機構自体は比較的に剛性が高く、撓みにくい。よって、リンク機構の回転は懸架機構の動きと精度よく対応しており、リンク機構の動きに含まれる誤差は極めて小さい。よって、回転角検出部は、懸架機構の動きを精度良く検出することができる。
【0011】
上述した発明において、前記リンク機構は、車幅方向と平行な軸心周りに回転可能に構成され、前記回転角検出部は、前記ケースに対して回転可能な入力軸部を備え、前記入力軸部が前記リンク機構の車幅方向と平行な軸心周りに回転可能に、前記ケースが前記リンク機構に固定されていることが好ましい。
【0012】
上述した発明において、前記ケースは前記第1リンクに固定されていることが好ましい。
【0013】
上述した発明において、前記入力軸部は前記車体フレームに接続されていることが好ましい。第1リンクが車体フレームに対して回転すると、ケースは入力軸部に対して回転する。入力軸部の回転角は第1リンクの回転角と同じである。よって、回転角検出部は、第1リンクの回転量を好適に検出することができる。
【0014】
また、本発明は、自動二輪車であって、車体フレームと、前記車体フレームに対して揺動可能に支持され、車輪を支持するスイングアームと、前記車体フレームと前記スイングアームとの間に設けられるリンク機構と、前記リンク機構に支持され、前記スイングアームの揺動に応じて伸縮する緩衝器と、前記リンク機構の回転角を検出する回転角検出部と、を備え、前記回転角検出部は、ケースと、前記ケースに対して回転可能な入力軸部と、を備え、前記リンク機構は、前記車体フレームに回転可能に接続される第1リンクと、前記第1リンクに回転可能に接続され、かつ、前記スイングアームに回転可能に接続される第2リンクと、を備えており、前記ケースは前記第1リンクに固定されており、前記第1リンクは、車幅方向に平行な貫通孔を有し、前記車体フレームは、前記貫通孔に挿入され、前記第1リンクを回転可能に支持する支持軸部を有し、前記回転角検出部は、前記第1リンクの一側方であって前記貫通孔の一端側に面する位置に配置され、前記入力軸部は前記支持軸部の一端部に接続される自動二輪車である。
【0015】
[作用・効果]本発明に係る自動二輪車によれば、スイングアームが揺動すると、リンク機構が動く。リンク機構の動きに伴って緩衝器は伸縮する。回転角検出部は、リンク機構の回転を検出する。リンク機構の回転はスイングアームの揺動および緩衝器の伸縮と対応している。よって、回転角検出部の検出結果によれば、緩衝器の伸縮または/およびスイングアームの揺動(以下、適宜「懸架機構の動き」という)を好適に検出することができる。
【0016】
回転角検出部は、スイングアーム、リンク機構、緩衝器、その他の部材に比べて比較的小型である。勿論、従来技術で説明したストロークセンサと比べても回転角検出部のサイズは小さい。よって、自動二輪車を外部から見たときに回転角検出部が目立ちにくい。
【0017】
なお、リンク機構等は、専ら回転角検出部のみのために設けられる部材ではない。リンク機構の主たる機能は、スイングアームの揺動と緩衝器の伸縮とを連動させることである。回転角検出部は、このようなリンク機構の動きを利用して、懸架機構の動きを検出する。同様に、その他の構成要素である車体フレーム、スイングアーム等も、回転角検出部に付随して新たに設けられる部材ではない。よって、回転量検出部以外の構成要素によって、自動二輪車の外観がさらに損なわれることはない。
【0018】
また、リンク機構は上述した機能を有するので、リンク機構自体は比較的に剛性が高く、撓みにくい。よって、リンク機構の回転は懸架機構の動きと精度よく対応しており、リンク機構の動きに含まれる誤差は極めて小さい。よって、回転角検出部は、懸架機構の動きを精度良く検出することができる。
【0019】
さらに、第1リンクは支持軸部周りに回転可能である。また、回転角検出部は、貫通孔の一端側に面する位置に配置されているので、回転角検出部の入力軸部に、貫通孔の一端側から突出する支持軸部を容易に接続することができる。
【0020】
上述した発明において、前記第1リンクに支持され、前記ケースを前記第1リンクに固定する保持部材を備えていることが好ましい。保持部材を備えているので、回転角検出部を所定の位置に簡易に設置することができる。
【0021】
上述した発明において、前記第1リンクは、さらに前記緩衝器に回転可能に接続されることが好ましい。第1リンクの回転角に応じて緩衝器は伸縮する。よって、回転角検出部は、緩衝器の伸縮を好適に検出することができる。
【0022】
上述した発明において、前記第2リンクは、さらに前記緩衝器に回転可能に接続されることが好ましい。緩衝器は第2リンクの回転角に応じて伸縮する。第2リンクの回転角は、第1リンクの回転量と対応している。よって、回転角検出部は、緩衝器の伸縮であっても好適に検出することができる。
【0023】
上述した発明において、前記回転角検出部は、前記スイングアームの車幅方向内方に配置されていることが好ましい。この配置によれば、スイングアームは、回転角検出部の車幅方向の両側方にそれぞれ張り出している。よって、回転角検出部を外部から見えにくくすることができる。
【0024】
上述した発明において、車幅方向における前記回転角検出部の位置は、車幅方向において前記車輪が位置する範囲内であることが好ましい。これによれば、回転角検出部は、自動二輪車の車幅方向における中心線に非常に近い位置となる。このため、回転角検出部を外観上、一層見えにくくすることができる。
【0025】
上述した発明において、前記リンク機構および前記回転角検出部は、側面視で前記スイングアームのピボット軸部の軸心と前記車輪の回転中心軸線とを結ぶ仮想線の下方に配置されていることが好ましい。これによれば、回転角検出部は比較的に低い位置に位置する。よって、回転角検出部は目立ちにくい。また、リンク機構も仮想線の下方に配置されているので、回転角検出部を低い位置に容易に設置することができる。
【0026】
上述した発明において、前記緩衝器はさらに、前記車体フレームまたは前記スイングアームのいずれかに回転可能に接続されることが好ましい。これによれば、緩衝器は好適に衝撃を吸収することができる。
【0027】
上述した発明において、前記車輪は後輪であり、前記回転角検出部は、平面視で前記後輪の前方に配置されていることが好ましい。回転角検出部は、好適に後輪用の懸架機構の動きを検出することができる。
【0028】
上述した発明において、前記回転角検出部は、前記車体フレームに対する前記第1リンクの回転角を検出することが好ましい。これによれば、回転角検出部はリンク機構の回転角を好適に検出することができる。また、車体フレーム自体は非常に剛性が高く、撓みにくい。よって、車体フレームと第1リンクとの相対的な回転は、懸架機構の動きと精度よく対応している。このため、回転角検出部の検出結果を基に、懸架機構の動きを精度良く得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る自動二輪車によれば、回転角検出部は、比較的に剛性が高いリンク機構の回転を検出するので、懸架機構の動きを精度良く検出することができる。回転角検出部は比較的に小型であるので、目立ちにくい。また、リンク機構等は回転角検出部に付随して新たに設置される部材ではないので、自動二輪車全体の外観がさらに損なわれるおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1に係る自動二輪車の左側面図である。
図2】後輪の懸架機構の左側面図である。
図3図2におけるa−a矢視断面図である。
図4】リンク機構およびロータリーポテンショメータの詳細図である。
図5】後輪の懸架機構を左斜め方向から見上げたときの斜視図である。
図6図6(a)は、ロータリーポテンショメータの平面図であり、図6(b)はロータリーポテンショメータの正面図であり、図6(c)はロータリーポテンショメータの側面図である。
図7】ロータリーポテンショメータの裏面を示す斜視図である。
図8図8(a)は通常の状態における後輪の懸架機構を示す図であり、図8(b)はスイングアームが上向きに揺動したときの後輪の懸架機構を示す図である。
図9】実施例2に係る自動二輪車の後輪の懸架機構の左側面図である。
図10図9におけるb−b矢視断面図である。
図11図11(a)は通常の状態における後輪の懸架機構を示す図であり、図11(b)はスイングアームが上向きに揺動したときの後輪の懸架機構を示す図である。
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の自動二輪車について説明する。
【0032】
1.自動二輪車の概略構成
図1は、実施例1に係る自動二輪車の左側面図である。各図において、x方向は車体の前後方向であり、y方向は車体の車幅方向であり、z方向は車体の上下方向である。車体の前後方向x、車幅方向y、及び、上下方向zは互いに直交している。水平な路面Gに車体が直立している状態では車体の前後方向x、及び、車幅方向yはそれぞれ水平となり、車体の上下方向zは鉛直となる。なお、前後、左右、上下とは、自動二輪車1に乗車したライダーにとっての「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を意味する。
【0033】
図1を参照する。本実施例に係る自動二輪車1は、車体フレーム3を備えている。車体フレーム3の前端部には、不図示のステアリングシャフトが回転自在に支持されている。ステアリングシャフトの上端部にはハンドル11が取り付けられている。ステアリングシャフトの下端部には、フロントフォーク13が取り付けられている。フロントフォーク13の下端部には、単一の前輪15が回転可能に支持されている。前輪15は、ハンドル11の操作によって操舵可能である。
【0034】
車体フレーム3には、エンジン21、燃料タンク23、および、シート25などが支持されている。エンジン21は車体フレーム3の下部に配置されている。燃料タンク23は車体フレーム3の上部の配置されている。シート25は車体フレーム3の上部であって、燃料タンク23の後方に配置されている。
【0035】
2.スイングアーム
車体フレーム3には、さらに、スイングアーム27が支持されている。スイングアーム27は後輪29を回転可能に支持する。
【0036】
図2は、後輪29の懸架機構の左側面図である。車体フレーム3は、ピボット軸部4を有する。ピボット軸部4は車幅方向yと平行である。スイングアーム27はこのピボット軸部4に保持されている。スイングアーム27は、ピボット軸部4周りに回転可能である。スイングアーム27は、ピボット軸部4から後方に向かって延びている。
【0037】
図3は、図2におけるa−a矢視断面図である。図3では、車幅方向yのみを示すとともに、便宜上、車幅方向yの右側を「RIGHT」で示し、車幅方向yの左側を「LEFT」で示す。
【0038】
スイングアーム27は、二叉に分岐した形状を有している。スイングアーム27は前部27Aと右アーム部27Rと左アーム部27Lとを有する。前部27Aは、車体フレーム3に支持されている。右アーム部27Rは、前部27Aから後輪29の右側方に延びている。左アーム部27Lは、前部27Aから後輪29の左側方に延びている。左アーム部27Lの後端部には、ギヤケース31が固定されている。ギヤケース31と右アーム部27Rの後端部は、車軸33を支持する。車軸33は、車幅方向yと平行である。車軸33には後輪29が保持されている。後輪29は、車軸33周りに回転可能である。
【0039】
後輪29には、エンジン21で発生した動力がシャフトドライブ方式で伝達される。具体的には、エンジン21の動力は、ドライブシャフトやリヤギヤ機構等(不図示)を介して、後輪29に伝達される。これにより、後輪29は回転駆動される。ドライブシャフトは、スイングアーム27の内部(具体的には、前部27Aおよび左アーム部27Lの内部)に回転可能に保持されている。リヤギヤ機構はギヤケース31内に収容されている。
【0040】
2.リンク機構と緩衝器
図2を参照する。自動二輪車1は、さらに、緩衝器35とリンク機構41とを備えている。緩衝器35は、スイングアーム27の揺動に応じて伸縮し、衝撃を吸収、減衰する。スイングアーム27と緩衝器35とはリンク機構41を介して接続されている。リンク機構41は、スイングアーム27と緩衝器35の間に設けられ、スイングアーム27の揺動と緩衝器35の伸縮を連動させる。
【0041】
リンク機構41は、アーム43とロッド45とを備えている。アーム43は車体フレーム3に回転可能に接続される。ロッド45は、アーム43に回転可能に接続されるとともに、スイングアーム27に回転可能に接続される。緩衝器35は、車体に回転可能に接続されるとともに、アーム43に回転可能に接続されている。これらスイングアーム27、緩衝器35およびリンク機構41などは、後輪29の懸架機構30を構成する。以下、具体的に説明する。
【0042】
図3を参照する。車体フレーム3は、左右1対のステー5R、5Lと、支持軸部6とを有している。ステー5R、5Lは、支持軸部6の両端部を保持する。ステー5R、5Lは、自動二輪車1の車幅方向yにおける中心線(以下、単に「車体中心線」という)Cの右側、左側にそれぞれ配置されている。支持軸部6は、自動二輪車1の車体中心線Cと交わる位置に配置される。支持軸部6はステー5R、5Lに固定されている。支持軸部6は、ステー5R、5Lに対して回転不能である。支持軸部6の軸心D1は、車幅方向yと平行である。
【0043】
図4は、図3の要部を拡大した図であり、リンク機構およびロータリーポテンショメータの詳細図である。アーム43の前端部には、貫通孔Aが形成されている。貫通孔Aは車幅方向yと略平行である。貫通孔Aには支持軸部6が挿入されている。これにより、アーム43は支持軸部6(車体フレーム3)周りに回転可能に保持されている。
【0044】
本実施例では、貫通孔A内にニードル軸受47がそのシェル形外輪を介して圧入されている。カラー48は、ニードル軸受47のニードルローラーにより支持され、アーム43に対して相対回転可能である。カラー48の内部に支持軸部6が挿入されている。カラー48の右端部とステー5Rの間、および、カラー48の左端部とステー5Lとの間には、スペーサ49がそれぞれ設けられている。カラー48およびスペーサ49は、ステー5Rおよびステー5L間の距離を適切に保つ。
【0045】
本実施例1では、アーム43の取付作業を容易にするために、支持軸部6はステー5R、5Lと着脱可能である。支持軸部6は、ボルト7とナット8となどで構成されている。ボルト7は、頭部7aと軸部7bを有する。車体フレーム3にアーム43を取り付ける際には、ステー5R、5Lから支持軸部6を外した状態において、ニードル軸受47内にカラー48を挿入し、アーム43の前端部をステー5R、5Lの間に差し込む。さらに、アーム43の前端部とステー5R、5Lの各隙間に、スペーサ49をそれぞれ配置する。続いて、ボルト7の軸部7bをステー5R、5L、カラー48およびスペーサ49に対して貫通させる。その後、ボルト7の一端部にナット8を装着し、ボルト7の頭部7aとナット8とで、ステー5R、5L、カラー48およびスペーサ49を締め上げる。これにより、支持軸部6およびカラー48は、ステー5R、5Lに対して回転不能に固定される。
【0046】
図3に示すように、アーム43は、平面視で車体中心線C上に位置している。アーム43は、平面視で、前端部から前後方向xに沿って後方に延びる。図2に示すように、アーム43は、側面視でわずかに屈曲した形状を呈している。アーム43の後端部は、支持軸部6の後方で、かつ、下方に位置する(なお、図2では、軸心D1の位置が支持軸部6の位置に相当する)。
【0047】
アーム43の前端部と後端部の間にあたる中央部には、ロッド45の前端部が接続されている。ロッド45はアーム43に対して車幅方向yと平行な軸心D2周りに回転可能である。ロッド45は、屈曲しておらず、長手方向に直線的に延びた形状をしている。ロッド45の後端部は、スイングアーム27の底部に接続されている。ロッド45は、スイングアーム27に対して車幅方向yと平行な軸心D3周りに回転可能である。ロッド45は、側面視で後端部に比べて前端部が低くなるように傾けて設けられている。
【0048】
図3に示すように、本実施例では、ロッド45は、右ロッド45Rと左ロッド45Lとを有する。右ロッド45Rおよび左ロッド45Lは、アーム43を挟んで車幅方向yに並ぶように配置されている。右ロッド45Rおよび左ロッド45Lの長手方向は、平面視で前後方向xと略平行である。右ロッド45Rおよび左ロッド45Lは、アーム43の中央部の右側面、左側面にそれぞれ接続されている。以下、右ロッド45Rと左ロッド45Lを特に区別しない場合は、単に「ロッド45」と呼ぶ。
【0049】
ここで、ピボット軸部4の軸心Pと後輪29の回転中心軸線Bとを結ぶ仮想的な線を仮想線Lと呼ぶ。なお、回転中心軸線Bは、車軸33の軸心と同義である。そうすると、アーム43およびロッド45は仮想線Lの下方に位置する。軸心D1乃至D3も、仮想線Lの下方に位置する。軸心D1の位置から明らかなとおり、支持軸部6の位置も仮想線Lの下方である。
【0050】
アーム43は、本発明における第1リンクに相当する。ロッド45は、本発明における第2リンクに相当する。
【0051】
図2に示すように、緩衝器35はピボット軸部4の後方において、略鉛直方向に伸縮可能に設けられている。図3に示すように、スイングアーム27の前部27Aには開口Eが形成されている。緩衝器35は、この開口Eを通じて、スイングアーム27を貫通するように設けられている。緩衝器35は、平面視で車体中心線Cと交わる位置に配置されている。
【0052】
図5は、後輪29の懸架機構30を左斜め下方向から見上げたときの斜視図である。図5では、車体フレーム3やステー5R、5L等の図示を省略している。図5等に示すように、緩衝器35は、右ロッド45Rと左ロッド45Lの間に挿入されるように設けられている。緩衝器35の下端部は、アーム43の他端部に接続されている。図2に示すように、緩衝器35は、アーム43に対して車幅方向yと平行な軸心D4周りに回転可能である。緩衝器35の上端部は、車体フレーム3に接続されている。緩衝器35は、車体フレーム3に対して車幅方向yと平行な軸心D5周りに回転可能である。軸心D4は仮想線Lの下方に位置し、軸心D5は仮想線Lの上方に位置する。
【0053】
3.ロータリーポテンショメータの構成
自動二輪車1は、さらに、ロータリーポテンショメータ51を備えている。ロータリーポテンショメータ51は、リンク機構41の回転角を検出する。
【0054】
図6(a)は、ロータリーポテンショメータ51の平面図であり、図6(b)はロータリーポテンショメータ51の正面図であり、図6(c)はロータリーポテンショメータ51の側面図である。また、図7は、ロータリーポテンショメータ51の裏面を示す斜視図である。
【0055】
ロータリーポテンショメータ51は、ケース53と入力軸部55とを有している。入力軸部55はケース53に対して回転可能である。ロータリーポテンショメータ51は、ケース53に対する入力軸部55の回転角を検出する。検出結果は、ケース53外に引き出されている電気配線(不図示)を通じて出力される。
【0056】
より具体的には、ケース53の内部には、抵抗素子(不図示)と、抵抗素子と滑り接触する摺動子(不図示)とが設けられている。摺動子は入力軸部55と一体に回転可能である。入力軸部55の回転に応じて、抵抗素子と摺動子の接触点が変わり、ロータリーポテンショメータ51の抵抗値が変わる。すなわち、ロータリーポテンショメータ51は、回転角に応じて電気抵抗が変わる可変抵抗器の一種である。
【0057】
図示するとおり、ロータリーポテンショメータ51は扁平な外形形状を有し、表面および裏面の寸法に比べて厚みが薄い。図7では、直交する3軸方向におけるロータリーポテンショメータ51の寸法s1、s2、s3を示している。ここで、寸法s1、s2は、ロータリーポテンショメータ51の表面寸法の一例である。また、寸法s3は、ロータリーポテンショメータ51の厚みに相当する。図7から明らかなとおり、ロータリーポテンショメータ61の表面寸法(s1、s2)に比べて、厚み(寸法s3)は小さい。
【0058】
入力軸部55は、ロータリーポテンショメータ51の裏面の中央に設けられている。入力軸部55は、ケース53からわずかに突出している。入力軸部55の一端面には凹部55aが形成されている。ロータリーポテンショメータ51は、本発明における回転角検出部に相当する。
【0059】
図4、5に示すように、ロータリーポテンショメータ51は保持部材57に保持されている。保持部材57は、薄い板形状を有する取付板58と、この取付板58をアーム43に固定する固定具59とを有する。固定具59は、アーム43の前端部の左側方であって、アーム43から僅かに離間した位置に取付板58を固定する。固定具59は、ボルトやスリーブ等で構成されている。取付板58は、車幅方向yと略直交する取付面を有する。
【0060】
この取付板58にケース53が固定されている。取付板58の取付面には、ケース53の底面の一部(入力軸部55を除いた部分)が接触している。これにより、ロータリーポテンショメータ51は、アーム43の左側方であって、貫通孔Aの一端側に面する位置に配置される。
【0061】
入力軸部55の凹部55aには、貫通孔Aから突出した支持軸部6の先端が挿入されている。これにより、入力軸部55は、支持軸部6に固定される。入力軸部55は、車体フレーム3と一体となって、車体フレーム3に対して相対的に回転不能である。
【0062】
本実施例では、図7に示すように、入力軸部55の凹部55aは、異形断面を有している。また、図4に示すように、支持軸部6のボルト7は、頭部7aと一体に形成されたピン7cを有している。ピン7cは、凹部55aに対応した異形断面を有している。このピン7cの先端が凹部55aに嵌め込まれることによって、入力軸部55と支持軸部6とは、一体化される。
【0063】
ここで、ロータリーポテンショメータ51等と他の部材との位置関係をまとめる。
【0064】
図2に示すように、ロータリーポテンショメータ51は、スイングアーム27の下方に位置する。ロータリーポテンショメータ51は、側面視において、仮想線Lの下方に位置する。
【0065】
ロータリーポテンショメータ51の大部分は、側面視において、アーム43の前端部と重なっている。言い換えれば、ロータリーポテンショメータ51の表面寸法(例えば、上述した寸法s1、s2)は、アーム43の前端部の側面の外形寸法と略同程度である。さらに、ロータリーポテンショメータ51の全部が、側面視において、アーム43または車体フレーム3の少なくともいずれかと重なっている。すなわち、ロータリーポテンショメータ51は、側面視において、アーム43および車体フレーム3からはみ出していない。
【0066】
また、保持部材57の全部は、側面視において、アーム43の前端部と重なっている。言い換えれば、保持部材57の表面寸法も、アーム43の前端部の側面の外形寸法内に収まっている。保持部材57も、側面視において、アーム43および車体フレーム3からはみ出していない。
【0067】
図3に示すように、ロータリーポテンショメータ51は、スイングアーム27の車幅方向y内方に位置する。なお、車幅方向y内方とは、車体中心線Cに近づく向きをいう。反対に、車幅方向y外方は、車体中心線Cから遠ざかる向きをいう。上述した位置関係を言い換えれば、スイングアーム27は、下面視において、ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yの両側方に張り出している。このことは、上面視においても同様である。以下の説明では、上面視においても下面視と同様である場合には、適宜に「平面視において」等と記載することとする。
【0068】
図3では、車幅方向yにおいてロータリーポテンショメータ51が位置する範囲(本明細書では、適宜に、「ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yにおける位置」と呼ぶ)W1を示している。併せて、スイングアーム27の車幅方向yにおける幅W3を示している。幅W3は、例えば、スイングアーム27が支持軸部6の軸心D1と交わる2点によって区画される範囲である。図3から明らかなとおり、ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yにおける位置W1は、スイングアーム27の車幅方向yにおける幅W3内に収まっている。
【0069】
また、ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yにおける位置W1は、車幅方向yにおいて後輪29が位置する範囲W2内に収まっている。ロータリーポテンショメータ51は、後輪29の前方に位置している。
【0070】
5.動作
図8は、後輪29の懸架機構30の動きを示す図であり、(a)は通常の状態を示し、(b)はスイングアーム27が上向きに揺動した状態を示す。
【0071】
まず、図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態に移るときの懸架機構30の動きを説明する。スイングアーム27が上向きに揺動する。スイングアーム27の揺動に伴って、ロッド45は略後方に移動する。アーム43は、その後端部が上向きに揺動するように、支持軸部6周りに回転する。緩衝器35は収縮する。これにより、緩衝器35は衝撃を吸収、減衰する。
【0072】
ロータリーポテンショメータ51のケース53はアーム43と一体に回転する。入力軸部55は支持軸部6(車体フレーム3)と相対回転不能であるので、ケース53は入力軸部55に対して回転する。ロータリーポテンショメータ51は、ケース53と入力軸部55との相対的な回転角(回転量)を検出する。ケース53と入力軸部55との相対的な回転角は、車体フレーム3に対するアーム43の回転角と等しい。よって、ロータリーポテンショメータ51の検出結果は、スイングアーム27の揺動量および緩衝器35の伸縮量と対応している。
【0073】
他方、図8(b)に示す状態から図8(a)に示す状態に移るときの懸架機構30の動きは以下のとおりである。スイングアーム27が下向きに揺動する。これに伴い、ロッド45が略前方に移動する。アーム43は支持軸部6周りに回転する。アーム43の後端部は下向きに揺動する。緩衝器35は伸張する。
【0074】
アーム43の車体フレーム3に対する回転に伴い、ケース53は入力軸部55に対して回転する。ロータリーポテンショメータ51は、ケース53と入力軸部55との相対的な回転角を検出する。
【0075】
このようにして得られたロータリーポテンショメータ51の検出結果は、種々の設定、調整または制御に用いられる。たとえば、緩衝器35の減衰力の設定、自動二輪車1の車高の調整、または、電子制御によって懸架機構30の特性を変えるアクティブサスペンションや姿勢制御等などが例示される。
【0076】
このように、実施例1に係る自動二輪車1によれば、ロータリーポテンショメータ51は、リンク機構41の回転を検出するので、緩衝器35の伸縮やスイングアーム27の揺動(以下、適宜「懸架機構30の動き」という)を好適に検出できる。
【0077】
また、ロータリーポテンショメータ51は比較的に小型である。具体的には、ロータリーポテンショメータ51の表面寸法はアーム43の前端部の側面と同程度である。また、ロータリーポテンショメータ51の厚みは表面寸法に比べてさらに小さい。このように、ロータリーポテンショメータ51は、緩衝器35やスイングアーム27等と比べて非常に小さい。よって、自動二輪車1を外部から見たときに、ロータリーポテンショメータ51は目立ちにくい。また、ロータリーポテンショメータ51はコンパクトであるので、路面G上の障害物や前輪15が跳ね上げた小石などの異物がロータリーポテンショメータ51に当たりにくい。よって、ロータリーポテンショメータ51が異物の衝突によって損傷することを好適に防止することができる。さらに、ロータリーポテンショメータ51の設置スペースは小さくて済むので、ロータリーポテンショメータ51の配置の自由度を高めることができる。
【0078】
また、ロータリーポテンショメータ51は、側面視でアーム43および車体フレーム3からはみ出さないように配置されている。よって、ロータリーポテンショメータ51は、一層目立ちにくい。
【0079】
また、保持部材57も、側面視において、アーム43および車体フレーム3からはみ出さないように設けられている。よって、保持部材57も外部から見たときに見えにくい。保持部材57によって自動二輪車1の外観が損なわれることも好適に抑制されている。
【0080】
また、ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yにおける位置W1は、スイングアーム27の車幅方向yにおける範囲W3内に収まっている。言い換えれば、ロータリーポテンショメータ51は、スイングアーム27よりも車幅方向y内方に配置されている。よって、ロータリーポテンショメータ51は外観上見えにくい。さらに、ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yに置ける位置W1は、後輪29の車幅方向yにおける範囲W2内にも収まっている。このように、ロータリーポテンショメータ51が車体中心線Cの近くに配置されているので、外観上見えにくい。
【0081】
また、ロータリーポテンショメータ51は、仮想線Lの下方に位置しているので、ロータリーポテンショメータ51は外部から見えにくい。さらに、ロータリーポテンショメータ51は、スイングアーム27の下方に位置しているので、ロータリーポテンショメータ51は、一層外部から見えにくい。
【0082】
上述のとおり、ロータリーポテンショメータ51は、手の届きにくい位置に配置されているので、いたずら等によって損傷することも好適に防止できる。
【0083】
また、リンク機構41も仮想線Lの下方に配置されているので、ロータリーポテンショメータ51を低い位置に容易に設置することができる。
【0084】
また、ロータリーポテンショメータ51は、スイングアーム27の揺動と緩衝器35の伸縮とを連動させるリンク機構41の動作を利用して、懸架機構30の動きを検出する。スイングアーム27、緩衝器35またはリンク機構41は、ロータリーポテンショメータ51に付随して新たに設けられる部材ではない。よって、これらの部材(27、35、41)が、実施例1に係る自動二輪車1の外観をさらに低下させることはない。
【0085】
また、リンク機構41は、上述したように、スイングアーム27の揺動と緩衝器35の伸縮とを連動させるので、リンク機構41自体は比較的に剛性が高く、撓みにくい。このため、リンク機構41の動作は懸架機構30の動きと精度よく一致しており、リンク機構41の動作に含まれる誤差は極めて小さい。よって、ロータリーポテンショメータ51は、懸架機構30の動きを精度良く検出することができる。
【0086】
また、リンク機構41は、車体フレーム3に直接的に接続されるアーム43を備え、ロータリーポテンショメータ51は、車体フレーム3に対するアーム43の回転角を検出する。よって、ロータリーポテンショメータ51は、リンク機構41の回転角を好適に検出することができる。
【0087】
また、ロータリーポテンショメータ51はケース53と入力軸部55を備え、ケース53はアーム43に固定され、入力軸部55はアーム43を保持する支持軸部6(車体フレーム3)に接続されている。よって、ロータリーポテンショメータ51は、車体フレーム3に対するアーム43の回転角を好適に検出することができる。
【0088】
また、ロータリーポテンショメータ51は、アーム43の一側方であって、かつ、支持軸部6が挿入される貫通孔Aの一端側と向かい合う位置に配置されている。このため、支持軸部6と入力軸部55とを好適に接続することができる。
【0089】
また、ケース53を保持する保持部材57を備えているので、ケース53をアーム43に好適に固定することができる。
【0090】
また、アーム43は、緩衝器35の下端部と直接的に接続されているので、ロータリーポテンショメータ51は、緩衝器35の伸縮を好適に検出することができる。
【実施例2】
【0091】
以下、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。実施例2に係る自動二輪車1は、後輪29用の懸架機構60の構成が実施例1の懸架機構30と異なっているほかは、実施例1と略同様な構成を備えている。そこで、実施例2に係る自動二輪車1については、後輪29用の懸架機構60を中心に説明し、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0092】
1.スイングアーム
なお、図9は、実施例2に係る後輪の懸架機構の左側面図である。車体フレーム3には、スイングアーム61が支持されている。具体的には、スイングアーム61は、ピボット軸部4に保持されている。スイングアーム61は、ピボット軸部4周りに回転可能である。スイングアーム61は、ピボット軸部4から後方に向かって延びている。
【0093】
図10は、図9におけるb−b矢視断面図である。図10では、車幅方向yのみを示すとともに、便宜上、車幅方向yの右側を「RIGHT」で示し、車幅方向yの左側を「LEFT」で示す。スイングアーム61は、二叉に分岐した形状を有している。スイングアーム61は前部61Aと右アーム部61Rと左アーム部61Lとを有する。前部61Aは、車体フレーム3に支持されている。右アーム部61Rは、前部61Aから後輪29の右側方に延びている。左アーム部61Lは、前部61Aから後輪29の左側方に延びている。右アーム部61Rの後端部と左アーム部61Lの後端部は、車軸33を支持する。
【0094】
2.リンク機構と緩衝器
図9を参照する。自動二輪車1は、さらに、緩衝器35とリンク機構71とを備えている。緩衝器35は、スイングアーム61の揺動に応じて伸縮し、衝撃を吸収、減衰する。スイングアーム61と緩衝器35とはリンク機構71を介して接続されている。リンク機構71は、スイングアーム61と緩衝器35の間に設けられ、スイングアーム61の揺動と緩衝器35の伸縮を連動させる。
【0095】
リンク機構71は、ロッド73とアーム75とを備えている。ロッド73は車体フレーム3に回転可能に接続される。アーム75は、ロッド73に回転可能に接続されるとともに、スイングアーム61に回転可能に接続される。緩衝器35は、車体に回転可能に接続されるとともに、アーム75に回転可能に接続されている。これらスイングアーム61、緩衝器35およびリンク機構71などは、後輪29の懸架機構60を構成する。以下、具体的に説明する。
【0096】
図10を参照する。ロッド73の前端部には、貫通孔A(不図示)が形成されている。貫通孔には支持軸部6が挿入されている。支持軸部6は、実施例1と同様に、ステー5R、5Lに固定されている。これにより、ロッド73は支持軸部6(車体フレーム3)周りに回転可能に保持されている。
【0097】
ロッド73は、平面視で車体中心線Cから僅かに左側にずれた位置に配置されている。ロッド73は、平面視で、前端部から前後方向xに沿って後方に延びる。ロッド73は、屈曲しておらず、長手方向に直線的に延びた形状をしている。ロッド73は、側面視で略水平となるように傾けて設けられている。ロッド73の前端部および後端部は、側面視で、それらの間にあたる本体部に比べて、やや大きく膨らんだ円形状を有している。
【0098】
ロッド73の後端部には、アーム75の下端部が接続されている。アーム75はロッド73に対して車幅方向yと平行な軸心D6周りに回転可能である。アーム75は、側面視で略三角形状を有し、上述した下端部と、上端部と前端部とを有する。上端部は下端部の上方に位置する。前端部は、下端部および上端部の前方に位置する。前端部の高さ位置は、下端部の上方で、かつ、上端部の下方である。アーム75の上端部は、スイングアーム61の底部に接続されている。アーム75は、スイングアーム61に対して車幅方向yと平行な軸心D7周りに回転可能である。アーム75の前端部は、緩衝器35の下端部に接続されている。アーム75は、緩衝器35に対して車幅方向yと平行な軸心D8周りに回転可能である。
【0099】
ロッド73は、本発明における第1リンクに相当する。アーム75は、本発明における第2リンクに相当する。
【0100】
緩衝器35は、緩衝器35はピボット軸部4の後方において、略垂直方向に伸縮可能に設けられている。図10に示すように、スイングアーム61の前部61Aには開口Eが形成されている。緩衝器35は、この開口Eを通じて、スイングアーム61を貫通するように設けられている。図10では、開口Eを通過する緩衝器35を点線で示している。図示するように、緩衝器35は、平面視で車体中心線Cと交わる位置に配置されている。
【0101】
緩衝器35の上端部は、車体フレーム3に接続されている。緩衝器35は、車体フレーム3に対して車幅方向yと平行な軸心D9周りに回転可能である。
【0102】
上述したロッド73およびアーム75は仮想線Lの下方に配置されている。また、支持軸部6および軸心D1、D6乃至D8も、仮想線Lの下方に配置されている。軸心D9は仮想線Lの上方に位置する。
【0103】
3.ロータリーポテンショメータの構成
ロータリーポテンショメータ51は保持部材57に保持されている。これにより、ロータリーポテンショメータ51は、ロッド73の左側方に配置されている。ロータリーポテンショメータ51の裏面中央は、ロッド73の前端部に形成される貫通孔A(不図示)の一端側と向かい合う。
【0104】
ロータリーポテンショメータ51は、ケース53と入力軸部55とを有する(図9、10において図示を省略する)。入力軸部55は、支持軸部6と接続されている。入力軸部55は、実施例1と同様に、支持軸部6(車体フレーム3)と相対的に回転不能である。
【0105】
ロータリーポテンショメータ51は、スイングアーム61の下方に位置する。ロータリーポテンショメータ51は、側面視において、仮想線Lの下方に位置する。また、ロータリーポテンショメータ51の大部分が、側面視において、ロッド73の前端部と重なっている。言い換えれば、ロータリーポテンショメータ51の表面寸法は、ロッド73の前端部の側面の外形寸法と略同程度である。さらに、ロータリーポテンショメータ51の大部分が、側面視において、ロッド73または車体フレーム3の少なくともいずれかと重なっている。この結果、側面視において、ロータリーポテンショメータ51がロッド73および車体フレーム3からはみ出している部分は、非常に小さい。
【0106】
また、保持部材57の大部分が、側面視において、ロッド73の前端部と重なっている。よって、側面視において、保持部材57がロッド73および車体フレーム3からはみ出している部分も、非常に小さい。
【0107】
図10に示すように、ロータリーポテンショメータ51は、スイングアーム61の車幅方向y内方に位置する。図10では、車幅方向yにおいてロータリーポテンショメータ51が位置する範囲W1と、スイングアーム61の車幅方向yにおける幅W3を示している。図10に明示するように、ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yにおける位置W1は、スイングアーム27の車幅方向yにおける幅W3内に収まっている。
【0108】
さらに、ロータリーポテンショメータ51の車幅方向yにおける位置W1は、車幅方向yにおいて後輪29が位置する範囲W2内に収まっている。また、ロータリーポテンショメータ51は、平面視で後輪29の前方に位置している。
【0109】
5.動作
図11は、後輪29の懸架機構60の動きを示す図であり、(a)は通常の状態を示し、(b)はスイングアーム61が上向きに揺動した状態を示す。
【0110】
図(a)に示す状態から図(b)に示す状態に移るとき、スイングアーム61は上向きに揺動する。スイングアーム61の揺動に伴って、アーム75は略上方に移動する。ロッド73は、その後端部が上向きに揺動するように、支持軸部6周りに回転する。緩衝器35の下端部は上向きに移動し、緩衝器35は収縮する。これにより、緩衝器35は衝撃を吸収、減衰する。
【0111】
ロータリーポテンショメータ51のケース53はロッド73と一体に回転する。入力軸部55は支持軸部6(車体フレーム3)と相対回転不能であるので、ケース53は入力軸部55に対して回転する。ロータリーポテンショメータ51は、ケース53と入力軸部55との相対的な回転角(回転量)を検出する。ケース53と入力軸部55との相対的な回転角は、車体フレーム3に対するロッド73の回転角と等しい。よって、ロータリーポテンショメータ51の検出結果は、スイングアーム61の揺動量および緩衝器35の伸縮量と対応している。
【0112】
他方、図(b)に示す状態から図(a)に示す状態に移るとき、スイングアーム61が下向きに揺動する。これに伴い、アーム75が略下方に移動する。ロッド73は支持軸部6周りに回転し、ロッド73の後端部は下向きに揺動する。緩衝器35は伸張する。
【0113】
アーム75の車体フレーム3に対する回転に伴い、ケース53は入力軸部55に対して回転する。ロータリーポテンショメータ51は、ケース53と入力軸部55との相対的な回転角を検出する。
【0114】
このように、実施例2に係る自動二輪車1においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。このことから明らかなように、種々のリンク機構41、71に対してロータリーポテンショメータ51を好適に設置することができる。
【0115】
また、実施例2に係る自動二輪車1では、側面視において、ロータリーポテンショメータ51がロッド73および車体フレーム3からはみ出している部分は、非常に小さい。よって、ロータリーポテンショメータ51は、外部から目立ちにくい。
【0116】
また、側面視において、保持部材57がロッド73および車体フレーム3からはみ出している部分は、非常に小さい。よって、保持部材57も、外部から目立ちにくい。
【0117】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0118】
(1)上述した実施例1、2では、ロータリーポテンショメータ51を例示したが、これに限られない。回転角を検出する検出部であれば、適宜に変更することができる。たとえば、ロータリーエンコーダに変更してもよい。また、ロータリーポテンショメータ51の入力軸部55は、直接的に、被測定物の一つである車体フレーム3と接触することによって、回転角を検出したが、これに限られない。すなわち、入力軸部55が、被測定物と非接触の状態で回転角を検出する検出部に変更してもよい。
【0119】
(2)上述した実施例1、2では、緩衝器35は、リンク機構41(71)と車体フレーム3との間に設けられていたが、これに限られない。たとえば、緩衝器35をリンク機構41(71)とスイングアーム27(61)との間に設けるように構成してもよい。これによって、緩衝器35は、路面から受ける衝撃を好適に吸収、減衰することができる。
【0120】
(3)上述した実施例1、2では、ロータリーポテンショメータ51は、車体フレーム3に対するアーム43(ロッド73)の相対的な回転角を検出していたが、これに限られない。たとえば、ロータリーポテンショメータ51によって、アーム43とロッド45との相対的な回転角を検出するように変更してもよい。あるいは、ロッド45とスイングアーム27との相対的な回転角を検出するように変更してもよい。同様に、ロータリーポテンショメータ51によって、ロッド73とアーム75との相対的な回転角を検出するように変更してもよい。あるいは、アーム75とスイングアーム61との相対的な回転角を検出するように変更してもよい。
【0121】
(4)上述した実施例1では、車体フレーム3に直接的にアーム43が接続されていたが、これに限られない。すなわち、車体フレーム3に間接的にアーム43を接続するように変更してもよい。同様に、上述した実施例2では、車体フレーム3に直接的にロッド73が接続されていたが、これに限られない。すなわち、車体フレーム3に間接的にロッド73を接続するように変更してもよい。
【0122】
(5)上述した実施例1、2では、ロータリーポテンショメータ51は、後輪29の懸架機構30、60の動きを検出するものであったが、これに限られない。たとえば、前輪用の懸架機構が、スイングアーム、緩衝器およびリンク機構を含む場合には、ロータリーポテンショメータによって前輪用の懸架機構の動きを検出するように変更してもよい。
【0123】
(6)上述した実施例1、2では、自動二輪車1は動力源としてエンジン21を備えていたが、これに限られない。例えば、動力源として、電動モータを含むように変更してもよい。
【0124】
(7)上述した実施例1、2では、後輪29をシャフトドライブ方式によって駆動していたが、これに限られない。たとえば、チェーンドライブ方式によって後輪29を駆動してもよいし、ベルトドライブ方式によって後輪29を駆動してもよい。
【0125】
(8)上述した各実施例および上記(1)から(7)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1:自動二輪車
3:車体フレーム
4:ピボット軸部
6:支持軸部
27、61:スイングアーム
29:後輪
30、60:懸架機構
33:車軸
35:緩衝器
41、71:リンク機構
43:アーム(第1リンク)
45:ロッド(第2リンク)
45R:右ロッド
45L:左ロッド
73:ロッド(第1リンク)
75:アーム(第2リンク)
51:ロータリーポテンショメータ
53:ケース
55:入力軸部
55a:凹部
57:保持部材
A:貫通孔
B:後輪の回転中心軸線(車軸の軸心)
C:車体中心線
L:仮想線
P:ピボット軸の軸心
W1:ロータリーポテンショメータの車幅方向における位置
W2:車幅方向において後輪が位置する範囲
W3:スイングアームの車幅方向における幅
x:車体の前後方向
y:車体の車幅方向
z:車体の上下方向
図1
図2
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